(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044228
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】防振装置
(51)【国際特許分類】
F16F 1/38 20060101AFI20240326BHJP
F16F 15/08 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
F16F1/38 S
F16F15/08 K
F16F1/38 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149636
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】黒田 康裕
【テーマコード(参考)】
3J048
3J059
【Fターム(参考)】
3J048AA01
3J048AB01
3J048BA18
3J048BA19
3J048DA01
3J048EA15
3J059AD04
3J059AE04
3J059BA42
3J059BB01
3J059BC06
3J059BD01
3J059CA07
3J059CA14
3J059EA03
3J059GA05
(57)【要約】
【課題】ブッシュの体積の増加を抑制しつつブッシュの軸直角方向の静ばね定数を向上できる防振装置を提供すること。
【解決手段】ブッシュ20の軸方向の端面には、貫通孔21に対し下方向の位置に下台座24が形成されている。この下台座24は、ブッシュ20の外周面22までを、下方向へ向かうにつれて軸方向の外側へ傾斜させている。この下台座24によって、ブッシュ20の体積の増加を抑制しつつ、下方向の圧縮変形に対するブッシュ20の静ばね定数を向上できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸状の第1部材の外周面と、筒状の第2部材の内周面との間で軸直角方向に圧縮される弾性体から構成されると共に、軸を取り囲む筒状に形成されたブッシュを備える防振装置であって、
前記ブッシュは、前記第1部材を挿入可能であり前記ブッシュの内周面を形成する貫通孔と、
前記ブッシュの軸方向の少なくとも一端面において前記貫通孔に対し軸直角方向のうち第1方向の位置に形成される第1台座と、を備え、
前記第1台座は、前記第2部材に接触可能な前記ブッシュの外周面までを、前記第1方向へ向かうにつれて軸方向の外側へ傾斜させていることを特徴とする防振装置。
【請求項2】
前記第1台座は、前記ブッシュの軸方向の両端面にそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1記載の防振装置。
【請求項3】
前記ブッシュは、前記ブッシュの軸方向の少なくとも一端面において前記貫通孔に対し前記第1方向とは逆の第2方向の位置に形成される第2台座を備え、
前記第2台座は、前記第2部材に接触可能な前記ブッシュの外周面までを、前記第2方向へ向かうにつれて軸方向の外側へ傾斜させていることを特徴とする請求項1記載の防振装置。
【請求項4】
前記ブッシュの軸方向の端面には、軸方向および前記第1方向に垂直な第3方向の全長に亘って前記第1台座が形成されていることを特徴とする請求項1記載の防振装置。
【請求項5】
前記第1台座は、軸方向および前記第1方向に垂直な第3方向の全長に亘って断面形状が同一であることを特徴とする請求項1記載の防振装置。
【請求項6】
前記ブッシュの軸方向の端面は、前記軸に垂直な平坦面を備え、
前記平坦面と前記第1台座との境界は、軸方向視において前記第1方向に垂直な直線であって前記貫通孔の内周縁の接線であることを特徴とする請求項1記載の防振装置。
【請求項7】
前記ブッシュの外周面に非接着で接触する前記第2部材を備えることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防振装置に関し、特にブッシュの体積の増加を抑制しつつブッシュの軸直角方向の静ばね定数を向上できる防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばスタビライザバー等の軸状の第1部材と、ブラケット等の筒状の第2部材とを弾性体製の筒状のブッシュで連結する防振装置が知られている。ブッシュの中央に設けた貫通孔に第1部材が挿入され、ブッシュの外周面が第2部材に接触した状態で、ブッシュが軸直角方向に圧縮される。特許文献1に開示されたブッシュは、無荷重状態において、軸方向の一端面が平坦に形成され、軸方向の他端面の内周面(貫通孔)側が軸方向に張り出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術のように、ブッシュの軸方向の端面が平坦である場合にブッシュを軸直角方向に圧縮すると、軸方向の端面が内周面と外周面との間の中央部で盛り上がる。この盛り上がった部分は、ブッシュの静ばね定数に殆ど影響せず、ブッシュの体積を大きくしてしまう。また、軸方向の端面の内周面側を張り出させた場合も同様に、ブッシュの外周面と第2部材との接触面よりも軸方向の外側に盛り上がった部分は、静ばね定数に殆ど影響せず、ブッシュの体積を大きくしてしまう。
【0005】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、ブッシュの体積の増加を抑制しつつブッシュの軸直角方向の静ばね定数を向上できる防振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の防振装置は、軸状の第1部材の外周面と、筒状の第2部材の内周面との間で軸直角方向に圧縮される弾性体から構成されると共に、軸を取り囲む筒状に形成されたブッシュを備えるものである。前記ブッシュは、前記第1部材を挿入可能であり前記ブッシュの内周面を形成する貫通孔と、前記ブッシュの軸方向の少なくとも一端面において前記貫通孔に対し軸直角方向のうち第1方向の位置に形成される第1台座と、を備える。前記第1台座は、前記第2部材に接触可能な前記ブッシュの外周面までを、前記第1方向へ向かうにつれて軸方向の外側へ傾斜させている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の防振装置によれば、ブッシュの軸方向の少なくとも一端面には、貫通孔に対し第1方向の位置に第1台座が形成されている。この第1台座は、第2部材に接触可能なブッシュの外周面までを、第1方向へ向かうにつれて軸方向の外側へ傾斜させている。この第1台座によって、ブッシュの軸方向の一端面を内周面と外周面との間の中央部で盛り上がり難くできると共に、ブッシュの外周面と第2部材との接触面積を大きくできる。その結果、ブッシュの体積の増加を抑制しつつ、第1方向の圧縮変形に対するブッシュの静ばね定数を向上できる。
【0008】
請求項2記載の防振装置によれば、請求項1記載の防振装置が奏する効果に加え、次の効果を奏する。第1台座は、ブッシュの軸方向の両端面にそれぞれ形成されている。これにより、ブッシュの体積の増加を抑制しつつ、ブッシュの第1方向の静ばね定数をより向上できる。
【0009】
請求項3記載の防振装置によれば、請求項1記載の防振装置が奏する効果に加え、次の効果を奏する。ブッシュの軸方向の少なくとも一端面には、貫通孔に対し第1方向とは逆の第2方向の位置に第2台座が形成されている。第2台座は、第2部材に接触可能なブッシュの外周面までを、第2方向へ向かうにつれて軸方向の外側へ傾斜させている。この第2台座によって、第1台座と同様に、ブッシュの体積の増加を抑制しつつ、第2方向の圧縮変形に対するブッシュの静ばね定数を向上できる。
【0010】
請求項4記載の防振装置によれば、請求項1記載の防振装置が奏する効果に加え、次の効果を奏する。ブッシュの軸方向の端面には、軸方向および第1方向に垂直な第3方向の全長に亘って第1台座が形成されている。これにより、例えばブッシュの外周面が第2部材の内周面と非接着である場合に、第1方向にブッシュが圧縮変形したとき、第3方向の全長に亘って第2部材に対し軸方向へブッシュを滑らせ難くできる。これにより、その滑りに起因したブッシュの静ばね定数の変化などを低減できる。
【0011】
請求項5記載の防振装置によれば、請求項1記載の防振装置が奏する効果に加え、次の効果を奏する。第1台座は、軸方向および第1方向に垂直な第3方向の全長に亘って断面形状が同一である。これにより、第3方向に型割れする金型を用いてブッシュを成形し易くできる。
【0012】
請求項6記載の防振装置によれば、請求項1記載の防振装置が奏する効果に加え、次の効果を奏する。ブッシュの軸方向の端面は、ブッシュの軸に垂直な平坦面を備える。この平坦面と第1台座との境界は、軸方向視において第1方向に垂直な直線であって貫通孔の内周縁の接線である。これにより、ブッシュの第1方向の静ばね定数の向上に寄与し易い部分から第1台座を設けることができると共に、その寄与が少ない部分を平坦面にできる。その結果、ブッシュの体積の低減と、ブッシュの第1方向の静ばね定数の向上とのバランスを良くできる。
【0013】
請求項7記載の防振装置によれば、請求項1から6のいずれかに記載の防振装置が奏する効果に加え、次の効果を奏する。防振装置は、ブッシュの外周面に接触する第2部材を備える。ブッシュの外周面が第2部材と非接着であるため、軸直角方向に圧縮変形したブッシュが軸方向へ逃げるように膨張しながら、第2部材に対しブッシュが軸方向に滑ることがある。但し、第1方向にブッシュが圧縮変形したときでも、第2部材側が広がる第1台座の傾斜によって、第2部材に対し軸方向へブッシュを滑らせ難くできる。これにより、その滑りに起因したブッシュの静ばね定数の変化などを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態における防振装置のブッシュの斜視図である。
【
図3】
図2のIII-III線におけるブッシュの断面図である。
【
図4】スタビライザバー及びブラケットにブッシュを組み付けた防振装置の断面図である。
【
図5】(a)は第2実施形態における防振装置のブッシュの正面図であり、(b)は
図5(a)の矢印Vb方向視におけるブッシュの底面図である。
【
図6】
図5(a)のVI-VI線におけるブッシュの断面図である。
【
図7】第3実施形態における防振装置のブッシュの正面図である。
【
図8】(a)は
図7のVIIIa-VIIIa線におけるブッシュの断面図であり、(b)は
図7のVIIIb-VIIIb線におけるブッシュの断面図である。
【
図9】(a)は第4実施形態における防振装置のブッシュの正面図であり、(b)は
図9(a)のIXb-IXb線におけるブッシュの断面図である。
【
図10】(a)は
図9(a)のXa-Xa線におけるブッシュの断面図であり、(b)は
図9(a)のXb-Xb線におけるブッシュの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。
図1は、第1実施形態における防振装置10(
図4参照)のブッシュ20の斜視図である。
図2は、ブッシュ20の正面図である。
図3は、
図2のIII-III線におけるブッシュ20の断面図である。
【0016】
各図面の矢印U、矢印D、矢印L、矢印R、矢印F、矢印Bは、それぞれブッシュ20の上方向、下方向、左方向、右方向、前方向、後方向を示している。上下方向と、左右方向と、前後方向とは互いに垂直な関係にある。また、
図1から
図3のブッシュ20はいずれも、重力以外の荷重が付与されていない無荷重状態が示されている。
図1から
図3を用いた説明では、特に指定が無い限り、無荷重状態のブッシュ20について説明する。
【0017】
図1及び
図2に示すように、ブッシュ20は、軸Cを取り囲む筒状の部材であり、ゴムや熱可塑性エラストマ等の弾性体によって構成される。本明細書では、この軸Cに平行な方向を単に軸方向と称し、軸Cに垂直な方向を軸直角方向と称す。なお、ブッシュ20の前後方向と軸方向とが同一であり、ブッシュ20の上下方向および左右方向は軸直角方向の一部である。
【0018】
ブッシュ20には、ブッシュ20の内周面を形成する貫通孔21が軸方向に貫通している。この貫通孔21は、軸方向視(
図2)において軸Cを中心とした円形状である。軸Cから貫通孔21の内周面までの半径は全周に亘って略同一である。
【0019】
ブッシュ20の外周面22は、軸方向視において、上半分が軸Cを中心とした円弧状に形成され、下半分が矩形状に形成されている。言い換えれば、外周面22は、軸方向視において逆U字状に形成されている。また、外周面22には、底面を除く略全周において、軸方向の中央部分を軸直角方向の内側に凹ませた凹面22aが形成されている。
【0020】
更に、外周面22の軸方向の端部は、ブッシュ20の軸方向の端面と滑らかに繋がるような湾曲面22bによって形成されている。即ち、湾曲面22bは、ブッシュ20の軸方向の端面から軸直角方向へ離れるにつれて軸方向の中央側へ傾斜している。
【0021】
図1及び
図3に示すように、ブッシュ20の軸方向の端面は、軸Cに垂直な平坦面23と、貫通孔21から離れるにつれて軸方向の外側へ傾斜した下台座(第1台座)24及び上台座(第2台座)26と、によって形成されている。本実施形態におけるブッシュ20では、軸方向の両端面が互いに同一に形成されている。
【0022】
平坦面23は、貫通孔21に対し左右方向の両側に設けられる。下台座24は、貫通孔21に対し下方向(第1方向)の位置に設けられる。上台座26は、貫通孔21に対し上方向(第2方向)の位置に設けられる。なお、
図3には、貫通孔21に対し上下方向の両側へ平坦面23を延長した場合を二点鎖線で示している。
【0023】
下台座24は、ブッシュ20の外周面22の湾曲面22bまでを下方向へ向かうにつれて軸方向の外側へ傾斜させている。上台座26は、湾曲面22bまでを上方向へ向かうにつれて軸方向の外側へ傾斜させている。平坦面23に対する下台座24の傾斜角度よりも、平坦面23に対する上台座26の傾斜角度が大きい。これにより、下台座24に対し上台座26の一部が軸方向の外側へ張り出している。
【0024】
図2に示すように、平坦面23と下台座24との境界25は、軸方向視において上下方向に垂直な直線であって貫通孔21の内周縁の接線である。平坦面23と上台座26との境界27は、軸方向視において上下方向に垂直な直線であって貫通孔21の内周縁の接線である。即ち、軸方向視において、貫通孔21の内周縁上の最下点Lにおける接線が境界25であり、貫通孔21の内周縁上の最上点Hにおける接線が境界27である。また、境界25が下台座24の傾斜の起点であり、境界27が上台座26の傾斜の起点である。
【0025】
下台座24及び上台座26は、ブッシュ20の軸方向の端面における左右方向(第3方向)の全長に亘って形成されている。更に、下台座24及び上台座26は、左右方向に垂直な断面形状が左右方向の全長に亘って同一に形成されている。これにより、左右方向の中央で型割れする金型を用いてブッシュ20を成形し易くできる。
【0026】
次に
図4を参照してブッシュ20を含む防振装置10の使用方法について説明する。
図4は、スタビライザバー11及びブラケット12にブッシュ20を組み付けた防振装置10の断面図である。なお、本実施形態では、ブッシュ20の上下方向、左右方向および前後方向は、ブッシュ20が搭載される車両の上下方向、前後方向および左右方向とそれぞれ一致する。但し、これらのブッシュ20の各方向と、車両の各方向とを異ならせても良い。
【0027】
スタビライザバー11は、車体のローリングを抑えるための部材であり、車両の左右方向に沿って配置される。スタビライザバー11は、断面円形状の軸状の鋼材である。このスタビライザバー11がブッシュ20の貫通孔21に挿入されて嵌まり、スタビライザバー11の外周面とブッシュ20(貫通孔21)の内周面とが密着する。
【0028】
防振装置10は、スタビライザバー11を車体に弾性支持するためのものであり、ブラケット12と、上述したブッシュ20と、を備える。ブラケット12は、スタビライザバー11が挿入されたブッシュ20を軸直角方向に圧縮しつつ、ブッシュ20を車体に組み付けるための筒状の部材である。
【0029】
ブラケット12は、ブッシュ20の外周面22のうち底面が非接着で接触する平板部材13と、外周面22のうち上面および左右両面が非接着で接触する曲板部材14と、を備える。曲板部材14は、ブッシュ20の外周面22と同様に、前後方向視において逆U字状に形成される。また、曲板部材14の内周面は、ブッシュ20の外周面22における凹面22a及び湾曲面22bの形状に合わせて形成され、それらの凹面22a及び湾曲面22bと密着する。
【0030】
曲板部材14の内側にブッシュ20が挿入されると、ブッシュ20が左右方向に圧縮される。更に、平板部材13と曲板部材14とでブッシュ20を上下に挟んだ状態で、締結部材(図示せず)により平板部材13と曲板部材14とを締結すると、ブッシュ20が上下に圧縮される。なお、この締結部材によってブラケット12(平板部材13及び曲板部材14)が車体にも締結される。
【0031】
このように、スタビライザバー11及びブラケット12にブッシュ20が組み付けられた状態を、ブッシュ20の組付状態と言う。この組付状態では、ブッシュ20が主にスタビライザバー11の上下で圧縮され、その圧縮された部分が無荷重状態に対し軸方向に膨張する。特に、スタビライザバー11及びブラケット12から離れた部分であって、ブッシュ20の軸方向の端面のうち軸直角方向の中央部が盛り上がろうとする。
【0032】
このブッシュ20の膨張により、軸Cを含む断面においてブッシュ20とブラケット12との接触面よりも軸方向の外側へ盛り上がった部分は、軸直角方向の圧縮変形に対するブッシュ20の静ばね定数に殆ど影響せず、ブッシュ20の体積を増加させてしまう。なお、ブッシュ20の圧縮変形とは、スタビライザバー11及びブラケット12に組み付けられることでブッシュ20が圧縮した状態から、防振装置10への振動の入力によってブッシュ20が軸直角方向へ更に圧縮したことを言う。
【0033】
本実施形態におけるブッシュ20の軸方向の端面には、スタビライザバー11(貫通孔21)の上下の位置であって、上下の圧縮により軸方向へ膨張する位置に、下台座24及び上台座26が形成されている。下台座24及び上台座26は、無荷重状態(
図3等の状態)において、スタビライザバー11(貫通孔21)から上下へそれぞれ離れるにつれ、ブラケット12に接触する外周面22の湾曲面22bまでを軸方向の外側へ傾斜させている。
【0034】
この下台座24及び上台座26により、スタビライザバー11の上下において、ブッシュ20の軸方向の端面の中央部を盛り上がり難くできると共に、ブッシュ20とブラケット12との接触面積を大きくできる。その結果、ブッシュ20の体積の増加を抑制しつつ、上下方向の圧縮変形に対するブッシュ20の静ばね定数を向上できる。
【0035】
例えば、ブラケット12の近傍に位置する部材にブッシュ20を接触させないため、ブッシュ20が上下方向に最大まで圧縮変形した時でも、ブラケット12からブッシュ20を軸方向にはみ出させないことが求められる場合がある。このような要求を達成するためにブッシュ20の体積を増加させ難くても、下台座24及び上台座26によってブッシュ20の上下方向の静ばね定数を向上できる。
【0036】
下台座24及び上台座26は、ブッシュ20の軸方向の両端面にそれぞれ形成されている。そのため、下台座24及び上台座26が軸方向の一端面のみに形成されている場合と比べて、ブッシュ20の上下方向の静ばね定数をより向上できる。
【0037】
また、ブッシュ20の外周面22とブラケット12の内周面とが非接着である。そのため、軸直角方向へ圧縮変形したブッシュ20が軸方向へ逃げるように膨張しながら、ブラケット12に対しブッシュ20が軸方向へ滑ることがある。
【0038】
但し、本実施形態におけるブッシュ20は、スタビライザバー11からの上下方向の荷重を、ブラケット12との接触面に向かうにつれて広がる下台座24及び上台座26によって受けることができる。そのため、ブッシュ20が上下方向に圧縮変形したとき、ブラケット12に対し軸方向へブッシュ20を滑らせ難くできる。よって、その滑りに起因したブッシュ20の静ばね定数の変化などを低減できる。
【0039】
なお、ブッシュ20の上下方向の静ばね定数の向上には、上下方向視において貫通孔21と重なる領域A内の下台座24及び上台座26が寄与し易く、その領域A外の下台座24及び上台座26が寄与し難い。
図2には、領域Aの左右方向の端縁を二点鎖線で示している。
【0040】
しかし、領域A外の下台座24及び上台座26は、ブラケット12に対し軸方向へブッシュ20を滑らせ難くする効果を発揮できる。よって、領域A内だけでなく領域A外にも下台座24及び上台座26を設けることで、ブッシュ20が上下方向に圧縮変形したときに、ブラケット12に対し軸方向へブッシュ20が滑り難くなる範囲を広くできる。
【0041】
更に、ブッシュ20の軸方向の端面には、左右方向の全長に亘って下台座24及び上台座26が形成されている。そのため、ブッシュ20が上下方向に圧縮変形したとき、左右方向の全長に亘ってブラケット12に対し軸方向へブッシュ20を滑らせ難くできる。よって、その滑りに起因したブッシュ20の静ばね定数の変化などを更に低減できる。
【0042】
ブッシュ20のうち最下点Lの直下の部位の形状と、最上点Hの直上の部位の形状とが、ブッシュ20の上下方向の静ばね定数に最も寄与し易い。この最下点Lから下方向に下台座24が設けられ、最上点Hから上方向に上台座26が設けられているので、ブッシュ20の上下方向の静ばね定数をより向上できる。
【0043】
また、最下点Lにおける接線(境界25)と、最上点Hにおける接線(境界27)との間のブッシュ20は、上下方向の振動時にスタビライザバー11と一緒に動き易い。よって、それらの間のブッシュ20の形状は、ブッシュ20の上下方向の静ばね定数に寄与し難い。
【0044】
一方、それらの接線(境界25,27)よりも上下方向の外側におけるブッシュ20の形状は、ブッシュ20の上下方向の静ばね定数に寄与し易い。本実施形態では、それらの接線である境界25,27から、それぞれ下台座24及び上台座26の傾斜が始まっている。即ち、ブッシュ20の上下方向の静ばね定数の向上に寄与し易い部分から下台座24及び上台座26が設けられ、その寄与が少ない部分を平坦面23にできる。その結果、ブッシュ20の体積の低減と、ブッシュ20の上下方向の静ばね定数の向上とのバランスを良くできる。
【0045】
スタビライザバー11よりも下側では、スタビライザバー11とブラケット12との間で上下方向に圧縮されたブッシュ20が、平面状の平板部材13の上面に沿って主に軸方向に膨張する。これに対し、スタビライザバー11よりも上側では、スタビライザバー11とブラケット12との間で上下方向に圧縮されたブッシュ20が、軸方向に膨張するだけでなく、曲板部材14の内周面の凹凸形状に密着するように軸直角方向などへも膨張する。
【0046】
そのため、ブッシュ20を無荷重状態から組付状態にしたときにおける、平坦面23からの軸方向の張出量の変化が、上側の上台座26よりも下側の下台座24で大きくなる。但し、予め無荷重状態において、平坦面23からの軸方向の最大張出量を、下台座24に対し上台座26の一部で大きくしている。そのため、組付状態では、その最大張出量を下台座24と上台座26とで同一に近づけることができる。その結果、ブッシュ20の下方向の静ばね定数と上方向の静ばね定数とを互いに近づけて、上下方向の静ばね定数をバランス良くできる。
【0047】
次に
図5(a)から
図6を参照して第2実施形態について説明する。第1実施形態では、下台座24及び上台座26を有するブッシュ20について説明した。これに対し第2実施形態では、下台座31を有するが、上台座26を有しないブッシュ30について説明する。なお、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0048】
図5(a)は、第2実施形態における防振装置のブッシュ30の正面図である。
図5(b)は、
図5(a)の矢印Vb方向視におけるブッシュ30の底面図である。
図6は、
図5(a)のVI-VI線におけるブッシュ30の断面図である。
【0049】
ブッシュ30は、スタビライザバー11及びブラケット12(
図4参照)に組み付けられる弾性体製の部材である。ブッシュ30は、軸Cを取り囲む筒状に形成されている。ブッシュ30は、スタビライザバー11を挿入可能な貫通孔21と、ブラケット12が接触(密着)可能な外周面22と、を備える。
【0050】
ブッシュ30の軸方向の端面は、軸Cに垂直な平坦面23と、貫通孔21から離れるにつれて軸方向の外側へ傾斜した下台座(第1台座)31と、によって形成される。本実施形態におけるブッシュ30では、軸方向の両端面が互いに同一に形成されている。
【0051】
平坦面23は、貫通孔21に対し左右方向の両側と上方向とに設けられている。即ち、第1実施形態において上台座26が形成されていた部位が、第2実施形態では平坦面23となっている。
【0052】
下台座31は、貫通孔21に対し下方向(第1方向)の位置に設けられる。下台座31は、ブッシュ30の外周面22の湾曲面22bまでを下方向へ向かうにつれて軸方向の外側へ傾斜させている。これにより、第1実施形態と同様に下台座31によって、ブッシュ30の体積の増加を抑制しつつ、下方向の圧縮変形に対するブッシュ30の静ばね定数を向上できる。更に、下台座31によって、ブッシュ30が下方向に圧縮変形したとき、ブラケット12に対し軸方向へブッシュ30を滑らせ難くできる。
【0053】
平坦面23と下台座31との境界32は、軸方向視において、貫通孔21の内周縁上の最下点Lを頂点とし、その頂点から左右方向に離れるにつれて下方向へ湾曲した円弧状に形成されている。より具体的に、境界32は、最下点Lと、ブッシュ30の軸方向の端面における右下および左下の角と、を通る円弧状に形成されている。
【0054】
ここで、ブッシュ30の下方向の静ばね定数には、ブッシュ30の形状のうち、最下点Lの直下の部位が最も寄与し易く、最下点Lから左右方向に離れるにつれて寄与し難くなる。最下点Lを頂点とする円弧状の境界32によれば、ブッシュ30の下方向の静ばね定数の向上に最も寄与し易い部分の略全体に下台座31を設けつつ、その寄与が少なくなるほど平坦面23の割合を多くできる。その結果、ブッシュ30の体積の低減と、ブッシュ30の下方向の静ばね定数の向上とのバランスを良くできる。
【0055】
図5(b)に示す底面視において、下台座31は、左右方向の両端から中央(最下点Lの直下)へ向かうにつれて、平坦面23からの軸方向の張出量が次第に大きくなるように湾曲している。従って、下台座31は、ブッシュ30の下方向の静ばね定数の向上に最も寄与し易い部分で軸方向の張出量が大きく、その寄与が少なくなるほど軸方向の張出量が小さくなる。よって、ブッシュ30の体積の低減と、ブッシュ30の下方向の静ばね定数の向上とのバランスを更に良くできる。
【0056】
次に
図7から
図8(b)を参照して第3実施形態について説明する。第1実施形態では、下台座24及び上台座26を有するブッシュ20について説明した。これに対し第3実施形態では、下台座24及び上台座26に代えて、左右方向の両側にそれぞれ右台座41及び左台座43が設けられたブッシュ40について説明する。なお、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0057】
図7は、第3実施形態における防振装置のブッシュ40の正面図である。
図8(a)は、
図7のVIIIa-VIIIa線におけるブッシュ40の断面図である。
図8(b)は
図7のVIIIb-VIIIb線におけるブッシュ40の断面図である。
【0058】
ブッシュ40は、スタビライザバー11及びブラケット12(
図4参照)に組み付けられる弾性体製の部材である。ブッシュ40は、軸Cを取り囲む筒状に形成されている。ブッシュ40は、スタビライザバー11を挿入可能な貫通孔21と、ブラケット12が接触(密着)可能な外周面22と、を備える。
【0059】
ブッシュ40の軸方向の端面は、軸Cに垂直な平坦面23と、貫通孔21から離れるにつれて軸方向の外側へ傾斜した右台座(第1台座)41及び左台座(第2台座)43と、によって形成される。本実施形態におけるブッシュ40では、軸方向の両端面が互いに同一に形成されている。平坦面23は、貫通孔21に対し上下方向の両側に設けられる。
【0060】
右台座41は、貫通孔21に対し右方向(第1方向)の位置に設けられる。右台座41は、ブッシュ40の外周面22の湾曲面22bまでを右方向へ向かうにつれて軸方向の外側へ傾斜させている。
【0061】
左台座43は、貫通孔21に対し左方向(第2方向)の位置に設けられる。左台座43は、ブッシュ40の外周面22の湾曲面22bまでを左方向へ向かうにつれて軸方向の外側へ傾斜させている。
【0062】
これらの右台座41及び左台座43によって、スタビライザバー11及びブラケット12(
図4参照)に組み付けられたブッシュ40は、第1実施形態と同様の効果を奏する。具体的に右台座41及び左台座43によって、左右方向の圧縮変形時にスタビライザバー11(貫通孔21)の左右でブッシュ40の軸方向の端面の中央部を盛り上がり難くできる。更に、右台座41及び左台座43により、ブッシュ40とブラケット12との接触面積を大きくできる。これらの結果、右台座41及び左台座43によって、ブッシュ40の体積の増加を抑制しつつ、左右方向の圧縮変形に対するブッシュ40の静ばね定数を向上できる。また、右台座41及び左台座43によって、ブッシュ40が左右方向に圧縮変形したとき、ブラケット12に対し軸方向へブッシュ40を滑らせ難くできる。
【0063】
貫通孔21の内周縁上の最右点S1と、貫通孔21の内周縁上の最左点S2と、軸Cとを通る断面(
図8(a))におけるブッシュ40の形状が、ブッシュ40の左右方向の静ばね定数に最も寄与し易い。これらの最右点S1及び最左点S2から左右方向にそれぞれ右台座41及び左台座43が設けられているので、ブッシュ40の左右方向の静ばね定数をより向上できる。
【0064】
平坦面23と右台座41との境界42は、軸方向視において左右方向に垂直な直線であって、貫通孔21の最右点S1における接線である。平坦面23と左台座43との境界44は、軸方向視において左右方向に垂直な直線であって、貫通孔21の最左点S2における接線である。また、境界42が右台座41の傾斜の起点であり、境界44が左台座43の傾斜の起点である。
【0065】
最右点S1における接線(境界42)と、最左点S2における接線(境界44)との間のブッシュ40は、左右方向の振動時にスタビライザバー11と一緒に動き易い。よって、それらの間のブッシュ40の形状は、ブッシュ40の左右方向の静ばね定数に寄与し難い。一方、それらの接線(境界42,44)よりも左右方向の外側におけるブッシュ40の形状は、ブッシュ40の左右方向の静ばね定数に寄与し易い。
【0066】
よって、本実施形態では、ブッシュ40の左右方向の静ばね定数の向上に寄与し易い部分から右台座41及び左台座43が設けられ、その寄与の少ない部分が平坦面23である。その結果、ブッシュ40の体積の低減と、ブッシュ40の左右方向の静ばね定数の向上とのバランスを良くできる。
【0067】
また、右台座41及び左台座43は、左右方向視において貫通孔21と重なる領域に設けられている。その領域から上下方向(第3方向)に離れた部分は、平坦面23によって形成されている。この右台座41及び左台座43よりも上下方向の両側は、ブッシュ40の左右方向の静ばね定数の向上に寄与し難い。よって、右台座41及び左台座43を上下方向の全長に亘って設けないことで、ブッシュ40の体積の低減と、ブッシュ40の左右方向の静ばね定数の向上とのバランスをより良くできる。
【0068】
右台座41及び左台座43は、上下方向に垂直な断面形状が上下方向の略全長に亘って(上下方向の端部を除いて)同一に形成されている。なお、右台座41及び左台座43の上下方向の端部は、平坦面23と滑らかに連なるように、平坦面23からの軸方向の張出量が次第に小さくなる。これらの結果、上下方向の中央で型割れする金型を用いてブッシュ40を成形し易くできる。
【0069】
次に
図9(a)から
図10(b)を参照して第4実施形態について説明する。第1実施形態では、下台座24及び上台座26を有するブッシュ20について説明した。これに対し第4実施形態では、下台座51、上台座52、右台座53及び左台座54を有するブッシュ50について説明する。なお、第1,3実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0070】
図9(a)は、第4実施形態における防振装置のブッシュ50の正面図である。
図9(b)は、
図9(a)のIXb-IXb線におけるブッシュ50の断面図である。
図10(a)は、
図9(a)のXa-Xa線におけるブッシュ50の断面図である。
図10(b)は、
図9(a)のXb-Xb線におけるブッシュ50の断面図である。なお、
図9(b)から
図10(b)には、ブッシュ50の軸方向の端面の全体が平坦面23である場合を二点鎖線で示している。
【0071】
ブッシュ50は、スタビライザバー11及びブラケット12(
図4参照)に組み付けられる弾性体製の部材である。ブッシュ50は、軸Cを取り囲む筒状に形成されている。ブッシュ50は、スタビライザバー11を挿入可能な貫通孔21と、ブラケット12が接触(密着)可能な外周面22と、を備える。
【0072】
ブッシュ50の軸方向の端面は、軸Cに垂直な平坦面23と、貫通孔21から離れるにつれて軸方向の外側へ傾斜した下台座(第1台座)51、上台座(第2台座)52、右台座53及び左台座54と、によって形成される。本実施形態におけるブッシュ50では、軸方向の両端面が互いに同一に形成されている。平坦面23は、貫通孔21の周囲のうち右上、左上、右下および左下に設けられている。
【0073】
下台座51は、貫通孔21に対し下方向(第1方向)の位置に設けられる。下台座51は、ブッシュ50の外周面22の湾曲面22bまでを下方向へ向かうにつれて軸方向の外側へ傾斜させている。上台座52は、貫通孔21に対し上方向(第2方向)の位置に設けられる。上台座52は、湾曲面22bまでを上方向へ向かうにつれて軸方向の外側へ傾斜させている。
【0074】
右台座53は、貫通孔21に対し右方向(第3方向の一方)の位置に設けられる。右台座53は、湾曲面22bまでを右方向へ向かうにつれて軸方向の外側へ傾斜させている。左台座54は、貫通孔21に対し左方向(第3方向の他方)の位置に設けられる。左台座54は、湾曲面22bまでを左方向へ向かうにつれて軸方向の外側へ傾斜させている。
【0075】
これらの各台座51~54によって、第1,3実施形態と同様に、ブッシュ50の体積の増加を抑制しつつ、上下方向および左右方向の圧縮変形に対するブッシュ50の静ばね定数を向上できる。更に各台座51~54によって、ブッシュ50が上下方向や左右方向に圧縮変形したとき、ブラケット12に対し軸方向へブッシュ50を滑らせ難くできる。
【0076】
右台座53の傾斜の起点であって、右台座53と平坦面23との境界42は、貫通孔21の最右点S1における接線である。左台座54の傾斜の起点であって、左台座54と平坦面23との境界44は、貫通孔21の最左点S2における接線である。これにより、第3実施形態と同様に、ブッシュ50の体積の低減と、ブッシュ50の左右方向の静ばね定数の向上とのバランスを良くできる。
【0077】
下台座51の傾斜の起点は、貫通孔21の下縁に沿った曲線55aと、その曲線55aの両端からそれぞれ左右方向へ延びた直線55bとによって形成されている。上台座52の傾斜の起点は、貫通孔21の上縁に沿った曲線56aと、その曲線56aの両端からそれぞれ左右方向へ延びた直線56bとによって形成されている。
【0078】
このように、曲線55a,56aと直線55b,56bとを組み合わせることで、下台座51や上台座52の傾斜の起点を全体的に貫通孔21へ近づけることができる。これにより、上下方向の圧縮変形に対するブッシュ50の静ばね定数をより向上できる。
【0079】
下台座51には、曲線55aの近傍に傾斜調整部51aが設けられている。傾斜調整部51aは、貫通孔21の下縁を平坦面23に対して張り出すことなく、下台座51の軸方向の張出量を、曲線55aの下側と直線55bの下側とで左右方向に合わせ易くするための部位である。そのため、平坦面23に対する傾斜角度は、傾斜調整部51a以外の下台座51よりも、傾斜調整部51aで大きくされている。
【0080】
この傾斜調整部51aにより、貫通孔21の下縁を平坦面23に対して張り出さなくすることで、ブッシュ50の体積を低減できる。更に、傾斜調整部51a以外の下台座51の軸方向の張出量を左右方向に合わせることで、下台座51を形成し易くできる。
【0081】
同様に、上台座52には、曲線56aの近傍に傾斜調整部52aが設けられている。平坦面23に対する傾斜角度は、傾斜調整部52a以外の上台座52よりも、傾斜調整部52aで大きくされている。傾斜調整部52aによって、貫通孔21の上縁を平坦面23に対して張り出さなくすることで、ブッシュ50の体積を低減できる。更に、傾斜調整部52a以外の上台座52の軸方向の張出量を左右方向に合わせることで、上台座52を形成し易くできる。
【0082】
各台座51~54は、互いに周方向に連結されている。各台座51~54同士の境界Mは、軸Cと、ブッシュ50の右下の角または左下の角とを通る断面(例えば
図10(b)の断面)上に位置する。
【0083】
境界Mの両側におけるブッシュ50の軸方向の端面はいずれも、各台座51~54によって、湾曲面22bまでを、境界Mが延びる方向(以下「境界M方向」と称す)へ向かうにつれて軸方向の外側へ傾斜している。
【0084】
この境界M方向へ向かうにつれて傾斜する部分(以下「境界M台座」と称す)は、傾斜の起点が貫通孔21から離れている。この傾斜の起点が、貫通孔21から湾曲面22bまでの境界M方向の最短距離の半分よりも貫通孔21側に位置するので、各台座51~54と同様に、ブッシュ50の体積の増加を抑制しつつ、境界M方向の圧縮変形に対するブッシュ50の静ばね定数を向上できる。
【0085】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、軸方向視における外周面22の形状を円形状としても良く、多角形状としても良い。また、外周面22の凹面22aを省略しても良い。
【0086】
上記実施形態では、ブッシュ20,30,40,50が、スタビライザバー11とブラケット12との間で軸直角方向に圧縮されるスタビライザブッシュである場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、エンジンやモータ等の振動源側に取り付けられる軸状の第1部材と、車体等の振動受側に取り付けられる筒状の第2部材との間で、軸直角方向に圧縮される弾性体製の筒状のブッシュに本発明を適用しても良い。なお、この第1部材を振動受側に取り付け、第2部材を振動源側に取り付けても良い。第1部材および第2部材の形状に合わせて、貫通孔21や外周面22の形状を適宜変更しても良い。
【0087】
上記実施形態では、例えば貫通孔21に対し下方向に位置する下台座24が、下方向へ向かうにつれて軸方向の外側へ傾斜する場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。貫通孔21に対し軸直角方向のうち第1方向に位置する第1台座が、その第1方向へ向かうにつれて軸方向の外側へ傾斜すれば良く、その第1方向は下方向に限らない。例えば第1方向を、軸直角方向のうち上方向や右方向、左方向としても良く、上下左右に対する斜め方向としても良い。上方向を第1方向とした場合には、上台座26が第1台座となる。
【0088】
更に、貫通孔21に対し第1方向とは逆の第2方向の位置に、その第2方向へ向かうにつれて軸方向の外側へ傾斜する第2台座を設けても良い。例えば下台座24を第1台座とした場合には、第2方向が上方向となり、上台座26が第2台座となる。また、貫通孔21に対して、軸直角方向のうち第1方向や第2方向とは異なる方向に台座を設けても良い。この方向としては、第1方向と垂直な第3方向や、第1方向から45°傾いた方向が例示される。
【0089】
上記実施形態では、下台座24,31,51や上台座26,52、右台座41,53、左台座43,54の傾斜の起点(境界25,27,32,42,44や曲線55a,56a、直線55b,56b)が、貫通孔21の内周縁に接する場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。これらの傾斜の起点を軸直角方向へ平行移動させても良い。
【0090】
例えば、貫通孔21から第1方向へ離れた位置に第1台座を設ける場合、第1台座の傾斜の起点が、貫通孔21から外周面22までの第1方向の最短距離の半分よりも貫通孔21側に位置することが好ましい。この場合には、ブッシュの第1方向の静ばね定数を第1台座によって十分に向上させることができる。
【0091】
また、軸方向視における各台座の傾斜の起点の形状を適宜変更しても良い。その形状としては、1又は複数の直線、1又は複数の曲線、直線と曲線との組み合わせが例示される。但し、台座の傾斜の起点が直線のみであり、特に1本の直線のみである方が、その台座を製造し易くできる。
【0092】
上記実施形態では、例えば下台座24や上台座26の断面形状が、左右方向(第3方向)の全長に亘って同一である場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば下台座24や上台座26を、第2実施形態のように左右方向の中央で軸方向に膨らませても良く、左右方向の中央で軸方向に凹ませても良い。これは、下台座24や上台座26以外の各台座においても同様である。
【0093】
上記実施形態では、ブッシュ20,30,40,50の軸方向の両端面が同一に形成される場合を説明したが、その両端面を異ならせても良い。例えば、ブッシュ20,30,40,50の軸方向の一端面を平坦面のみにしても良い。また、ブッシュの軸方向の一端面を上記実施形態のいずれかと同一にしつつ、それとは別の上記実施形態とブッシュの軸方向の他端面とを同一にしても良い。
【符号の説明】
【0094】
10 防振装置
11 スタビライザバー(第1部材)
12 ブラケット(第2部材)
20,30,40,50 ブッシュ
21 貫通孔
22 外周面
23 平坦面
24,31,51 下台座(第1台座)
25,27,32,42,44 境界
26,52 上台座(第2台座)
41,53 右台座(第1台座)
43,54 左台座(第2台座)
C 軸