(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044230
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】燃焼装置および燃焼装置の運転方法
(51)【国際特許分類】
F23N 1/02 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
F23N1/02 E
F23N1/02 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149639
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000154668
【氏名又は名称】株式会社ヒラカワ
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 浩之
(72)【発明者】
【氏名】川端 朋子
(72)【発明者】
【氏名】七里 敦哉
(72)【発明者】
【氏名】木下 正成
【テーマコード(参考)】
3K003
【Fターム(参考)】
3K003AA01
3K003AB06
3K003AC01
3K003BB02
3K003CA05
3K003CC03
(57)【要約】
【課題】燃焼装置の運転停止後の運転再開時に、燃焼用空気のための送風機の起動電流を低減できるようにするとともに、比較的低温の大量の空気が燃焼室の内部を通過することよる熱損失を低減できるようにする。
【解決手段】燃焼装置11であって、燃料15をバーナ12で燃焼させるための燃焼用空気17の供給路18と、この燃焼用空気17の供給路18に設けられた空気量調節用の空気ダンパ22とを備える。空気ダンパ22は、バーナ12の運転停止後の運転再開時に、燃料15の供給を止めてバーナ12の運転を停止したときよりも開度が下げられるように制御される。空気ダンパ22は、バーナ12の運転停止後の運転再開時に開度ゼロに制御されるものであることが好適である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料をバーナで燃焼させるための燃焼用空気の供給路と、この燃焼用空気の供給路に設けられた空気量調節用の空気ダンパとを備え、
前記空気ダンパは、前記バーナの運転停止後の運転再開時に、燃料の供給を止めて前記燃焼装置の運転を停止したときよりも開度が下げられるように制御されるものであることを特徴とする燃焼装置。
【請求項2】
空気ダンパは、バーナの運転停止後の運転再開時に開度ゼロに制御されるものであることを特徴とする請求項1記載の燃焼装置。
【請求項3】
燃料をバーナで燃焼させるための燃焼用空気の供給路と、この燃焼用空気の供給路に設けられた空気量調節用の空気ダンパとを備えた燃焼装置を運転するに際し、
前記バーナの運転停止後の運転再開時に、前記空気ダンパの開度を、燃料の供給を止めて前記バーナの運転を停止したときの開度よりも下げることを特徴とする燃焼装置の運転方法。
【請求項4】
バーナの運転停止後の運転再開時に、空気ダンパを開度ゼロとすることを特徴とする請求項3記載の燃焼装置の運転方法。
【請求項5】
バーナをオン・オフ運転することを特徴とする請求項3または4記載の燃焼装置の運転方法。
【請求項6】
制御装置によって、
(イ)バーナが運転中であるか、
(ロ)バーナが設けられた燃焼室内がパージ中か、
(ハ)バーナが運転停止中であるか、
を判断し、
バーナが運転停止中であると制御装置が判断したときに、空気ダンパの開度を、燃料の供給を止めて前記バーナの運転を停止したときの開度よりも下げることを特徴とする請求項3または4記載の燃焼装置の運転方法。
【請求項7】
バーナの燃焼開始時における、供給路に燃焼用空気の空気流を発生させる送風機の起動後に、空気ダンパを高燃焼位置まで開いて、燃焼装置が設けられた燃焼室内のパージを行うことを特徴とする請求項3または4記載の燃焼装置の運転方法。
【請求項8】
バーナの燃焼停止時における、供給路に燃焼用空気の空気流を発生させる送風機の停止前に、空気ダンパを高燃焼位置まで開いて、燃焼装置が設けられた燃焼室内のパージを行うことを特徴とする請求項3または4記載の燃焼装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃焼装置および燃焼装置の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラなどに用いられる燃焼装置は、燃料を燃焼させるためのバーナと、バーナに燃焼用の空気を供給するための供給路とを備え、供給路にはバーナへ送る空気の量を調節するための空気ダンパが設けられていることが一般的である(たとえば特許文献1)。
【0003】
燃焼装置のバーナは、連続運転することが効率面で最適であるが、負荷によって連続運転が行われない場合がほとんどである。その場合には、バーナをオン・オフ運転せざるを得ない。
【0004】
バーナをオフ状態とする場合には、その直前までたとえば低燃焼の状態が持続している。燃焼状態を持続させるためには、空気ダンパがそれに見合う最低限度以上の開度に保たれていることが必要である。このため、燃焼状態をオフ状態とするときには、空気ダンパの開度は、ゼロ(すなわちダンパの回転角度で0度)ではなく、低燃焼時の開度のままとなっている。その結果、オフ状態の後にバーナを再度オン状態とするための燃焼開始時、つまりバーナに燃焼用の空気を供給するための送風機のモータの起動時も、空気ダンパの開度はゼロではない。
【0005】
したがって、バーナを再度オン状態とするときには、空気ダンパは、開度ゼロではなく、たとえば低燃焼状態の開度となっており、この開度の状態で送風機のモータを起動している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、空気ダンパがたとえば低燃焼の開度となっている状態で送風機のモータを起動させると、同モータの起動負荷が高く、したがって同モータの起動電流が必要以上に大きくなり電力量に損出が生じる。また、たとえば燃焼停止中であっても、低燃焼の開度となっている空気ダンパから、煙突のドラフト(通風力)により過大な量の空気がバーナに導入される。すると、燃焼室、ボイラが冷却されることで、ボイラ全体の熱損失となる。またバーナが再度オン状態となった直後は、発熱量がそれほど大きくなく、したがって比較的低温の大量の空気が、バーナが設けられた燃焼室の内部を通過することになる。このため、燃焼室、ボイラ装置が冷却されてしまって、熱損失が大きくなる。
【0008】
そこで本発明は、このような問題点を解決して、燃焼装置の運転停止後の運転再開時に、燃焼用空気のための送風機の起動電流を低減できるようにするとともに、比較的低温の大量の空気が燃焼室の内部やボイラの伝熱面を通過することによる熱損失を低減できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するため本発明の燃焼装置は、燃料をバーナで燃焼させるための燃焼用空気の供給路と、この燃焼用空気の供給路に設けられた空気量調節用の空気ダンパとを備え、前記空気ダンパは、前記バーナの運転停止後の運転再開時に、燃料の供給を止めて前記燃焼装置の運転を停止したときよりも開度が下げられるように制御されるものであることを特徴とする。
【0010】
本発明の燃焼装置によれば、空気ダンパは、バーナの運転停止後の運転再開時に開度ゼロに制御されるものであることが好適である。
【0011】
本発明の燃焼装置の運転方法は、燃料をバーナで燃焼させるための燃焼用空気の供給路と、この燃焼用空気の供給路に設けられた空気量調節用の空気ダンパとを備えた燃焼装置を運転するに際し、前記バーナの運転停止後の運転再開時に、前記空気ダンパの開度を、燃料の供給を止めて前記バーナの運転を停止したときの開度よりも下げることを特徴とする。
【0012】
本発明の燃焼装置の運転方法によれば、バーナの運転停止後の運転再開時に、空気ダンパを開度ゼロとすることが好ましい。
【0013】
本発明の燃焼装置の運転方法によれば、バーナがオン・オフ運転を多く繰り返す場合に、好ましい機能を実現することができる。
【0014】
また本発明の燃焼装置の運転方法によれば、
制御装置によって、
(イ)バーナが運転中であるか、
(ロ)バーナが設けられた燃焼室内がパージ中か、
(ハ)バーナが運転停止中であるか、
を判断し、
【0015】
バーナが運転停止中であると制御装置が判断したときに、空気ダンパの開度を、燃料の供給を止めて前記バーナの運転を停止したときの開度よりも下げることが好ましい。ここで、空気ダンパの開度を下げることは、空気ダンパを開度ゼロとすることも含む。
【0016】
さらに本発明の燃焼装置の運転方法によれば、バーナの燃焼開始時における、供給路に燃焼用空気の空気流を発生させる送風機の起動後に、空気ダンパを高燃焼位置まで開いて、バーナが設けられた燃焼室内のパージを行うことが好適である。
【0017】
さらに本発明の燃焼装置の運転方法によれば、バーナの燃焼停止時における、供給路に燃焼用空気の空気流を発生させる送風機の停止前に、空気ダンパを高燃焼位置まで開いて、バーナが設けられた燃焼室内のパージを行うことが好適である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、バーナの運転停止後の運転再開時に、空気ダンパの開度を、燃料の供給を止めて前記バーナの運転を停止したときの開度よりも下げることで、燃焼用空気のための送風機を起動するときの送風負荷を低減することができて、送風機の起動電流を低減することができる。また本発明によれば、空気ダンパの開度を、燃料の供給を止めて前記バーナの運転を停止したときの開度よりも下げることで、燃焼装置の運転停止後の運転再開時に、比較的低温の大量の空気が燃焼室の内部を通過することよる熱損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態の燃焼装置の構成を示す図である。
【
図2】
図1の燃焼装置におけるダンパ開度の変化の例を示す図である。
【
図3】バーナの運転停止後の運転再開時に空気ダンパの開度を変更したときの、送風機の起動電流の変化の例を示す図である。
【
図4】バーナの運転停止後の運転再開時に空気ダンパを開度ゼロとしたときの熱損失率と、ゼロとしなかったときの熱損失率との例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、ボイラ10のための、本発明の実施の形態の燃焼装置11を示す。燃焼装置11はボイラ10の内部に燃焼室13を有し、バーナ12からの燃焼ガスが燃焼室13を通ることで、ボイラ10の内部の水が蒸発して蒸気が発生する。燃焼装置11は、バーナ12へ燃料と燃焼用空気とを供給するための風箱14を有する。風箱14には、この風箱14を経てバーナ12へ燃料15を供給するための燃料供給路16と、風箱14を経てバーナ12へ燃焼用の空気17を供給するための空気供給路18とが接続されている。
【0021】
空気供給路18には、図外のモータで駆動される送風機19が接続されている。送風機19は、燃焼装置11の系内に空気17の流れを発生させる。かつ空気供給路18の内部には、ダンパモータ21にて駆動される空気ダンパ22が設けられている。空気ダンパ22は、ダンパモータ21より駆動されることで、その開度を調節されることができる。
【0022】
ボイラ11には煙道23が接続され、煙道23は、燃焼装置11からの排ガス24を大気に排出させるための煙突25に接続されている。
【0023】
図1に示す燃焼装置11は、さらに制御装置27を有する。制御装置27は、図示の燃焼装置11の各部を制御する。特に制御装置27は、燃焼装置11やその他の機器から様々な情報を受け取り、その受け取った情報にもとづいて、空気ダンパ22を駆動するためのダンパモータ21を制御する。制御装置27が受け取る情報としては、バーナ12が運転中であるか、あるいは運転停止中であるか、燃焼室13の内部が送風機19からの空気によってパージ中であるか否かなどを制御装置27が判断するのに必要な情報が挙げられる。
【0024】
ボイラ10をオン・オフ運転する場合について説明する。燃焼装置11のバーナ12が運転を停止する場合には、制御装置27は、たとえば定格運転状態から低燃焼状態まで燃焼量を落としたうえで、燃料15の供給を遮断する。あるいは、定格運転状態のまま燃料15の供給を遮断して、燃焼装置11の運転を停止することもできる。よって、燃料15の供給を遮断した時点およびその後の燃焼停止時においては、空気供給路18における空気ダンパ22の開度は、バーナ12の運転を停止する直前の開度のままである。
【0025】
バーナ12の運転を次に再開するときには、制御装置27は、まず、ダンパモータ21を制御して、空気ダンパ22の開度を、バーナ12の運転を停止したときの開度よりも下げる。この空気ダンパ22の開度は、バーナ12の運転を停止したときの開度よりもできるだけ下げることが好ましく、開度ゼロとすることが最も好ましい。次に、制御装置27は、バーナ12を起動させて燃焼装置11の燃焼を行う。こうすることで、バーナ12は、前回の運転状態の終了の時点における空気ダンパ22の開度に対応した多量の空気17が導入されることが防止される。すなわち、バーナ12が起動するときには、そのときの燃焼量に応じた少量の空気17だけが、バーナ12に供給される。
【0026】
上述のように、燃焼再開時には、空気ダンパ22の開度を下げたうえで、好ましくは全閉状態としたうえで、送風機19を起動させる。このとき、起動後の一定の設定時間内に、制御装置27によりダンパモータ21を作動させて、空気ダンパ22を高燃焼時の開度となるように大きく開ことが好ましい。このようにすると、前回の燃焼の停止によって燃焼室13内に残存した未燃ガスをボイラ装置外へ排出することができて、未燃ガスが残存することによる不都合の発生を防止することができる。この操作は、燃焼装置11すなわちバーナ12の運転開始時のプリパージと称することもできる。
【0027】
燃焼停止時にも、バーナ12による燃焼を停止する直前の所定の時間内に、制御装置27によりダンパモータ21を作動させて、空気ダンパ22を高燃焼時の開度となるように大きく開くことが好ましい。このようにした場合にも、同様に、燃焼の停止によって燃焼室13内に残存する未燃ガスの量を低減することができて、次回の燃焼開始時に未燃ガスが残存することによる不都合の発生を防止することができる。この操作は、燃焼装置11すなわちバーナ12の運転停止時のポストパージと称することもできる。
【0028】
制御装置27は、バーナ12の燃焼中は、バーナ12の燃焼量に応じた適切なダンパ開度となるように、空気ダンパ22を制御する。
【0029】
図2は、
図1の燃焼装置11におけるダンパ開度の変化の例を示す。横軸は、時間の経過に伴う燃焼装置11の燃焼状態の変化を表し、縦軸はダンパ開度を表す。図中、太い実線が、
図1の燃焼装置11におけるダンパ開度の変化の様子を示す。太い2点鎖線は、従来公知の燃焼停止時のダンパ開度を示す。
【0030】
図2の例では、運転開始時のプリパージの際と、高燃焼時と、運転停止時のポストパージの際とにおいて、ダンパ開度が65%になるように設定している。また低燃焼時には、ダンパ開度が20%になるように設定している。
図1の燃焼装置11では、バーナ12の運転停止時のダンパ開度は0%である。これは、
図2において太い二点鎖線で示す従来公知の運転停止時のダンパ開度が、運転停止直前の低燃焼時と同じ20%であることとの相違点である。
【0031】
このようにバーナ12の運転停止時のダンパ開度を0%とすることで、空気供給路18に燃焼用の空気17を送給するための送風機19のモータの起動負荷を低減させることができる。
図3は、バーナ12の運転停止後の運転再開時に空気ダンパ22の開度を変更したときの、送風機19のモータの起動電流の変化を示す。横軸はダンパ開度、縦軸は送風機19のモータの起動電流である。なお、試験に用いた空気ダンパは全開時の開度が90%であったため、横軸は、実際の開度をXとしてX/90で目盛ってある。図示のように、バーナ12の運転停止後の運転再開時に空気ダンパ22の開度を20以下まで下げることで、特に10以下とすることで、さらに可能な限りゼロに近づけることで、特にゼロとすることで、送風機19のモータの起動電流が大きく低下することがわかる。
【0032】
またバーナ12の起動時に、空気ダンパ22の開度を、バーナ12の運転を停止したときの開度よりもできるだけ下げることで、燃焼室13が冷却されることによる熱損失を低減させることができる。バーナ12の起動時に、空気ダンパ22が必要以上に開いていると、燃焼に必要な量を超えた量の空気17がパーナ12と燃焼室13とに送り込まれる。すると、それによってボイラ10が冷やされてしまうため、結果として熱損失となる。特にボイラ10が設置されている建物が高いと、それにあわせて
図1に示した煙突25も高くしなければならない。煙突25が高くなると、煙突25の吸い上げ圧力すなわちドラフト圧も高くなって、通風量も多くなりやすくなる。このことも原因して、バーナ12の起動時に空気ダンパ22が必要以上に開いていると、多量の空気17が燃焼室13に送り込まれてボイラ10が過度に冷却されることになり、熱損失が大きくなる。
【0033】
これに対し、バーナ12の起動時に、空気ダンパ22の開度を、バーナ12の運転を停止したときの開度よりもできるだけ下げることで、好ましくは開度ゼロとすることで、ボイラ10が過度に冷却されることにより発生する熱損失を低減することができる。
図4は、煙突25のドラフト圧を変化させたときの、バーナ12の運転停止後の運転再開時に空気ダンパ22を開度ゼロすなわち全閉としたときの熱損失率と、運転停止直前の低燃焼時の開度のままバーナ12の運転を再開したときの熱損失率との例を示す図である。横軸は煙突ドラフト圧、縦軸は熱損失率である。
図4から、煙突ドラフト圧が高い時の方が低い時よりも熱損失率が高いことがわかるとともに、運転停止直前の低燃焼時の開度のままバーナ12の運転を再開したときに比べて、運転再開時に空気ダンパ22を開度ゼロとしたときの方が、熱損失率が低くなることがわかる。
【0034】
このように、バーナ12の起動時に、空気ダンパ22の開度を、バーナ12の運転を停止したときの開度よりも下げることで、送風機19のモータの起動電流を下げることができるとともに、ボイラ10の熱損失を低減することができて、ボイラ10の運転効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0035】
10 ボイラ
11 燃焼装置
12 バーナ
13 燃焼室
17 燃焼用の空気
18 空気供給路
22 空気ダンパ
27 制御装置