(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044233
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】基板処理装置、および基板の処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 643A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149643
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(72)【発明者】
【氏名】出村 健介
(72)【発明者】
【氏名】中村 聡
(72)【発明者】
【氏名】神谷 将也
(72)【発明者】
【氏名】中村 美波
(72)【発明者】
【氏名】高居 康介
(72)【発明者】
【氏名】田邊 万奈
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 華織
【テーマコード(参考)】
5F157
【Fターム(参考)】
5F157AB02
5F157AB14
5F157AB33
5F157AB90
5F157AC01
5F157AC26
5F157BB23
5F157BB44
5F157BH19
5F157CB13
5F157CE07
5F157CF04
5F157CF14
5F157CF16
5F157CF38
5F157CF60
5F157CF74
5F157CF99
5F157DB02
(57)【要約】
【課題】凍結膜に取り込まれていた汚染物の移動を容易にすることができる基板処理装置、および基板の処理方法を提供することである。
【解決手段】実施形態に係る基板処理装置は、基板の表面に形成した液膜を凍結させて凍結膜を形成し、前記基板の表面に付着している汚染物を前記凍結膜に取り込む基板処理装置である。前記基板処理装置は、前記基板を回転可能な載置部と、ノズルを有し、前記ノズルを介して、前記汚染物を含む前記凍結膜に液体を供給可能な液体供給部と、前記基板の表面に平行な方向における、前記ノズルの位置を移動可能な移動部と、前記載置部による前記基板の回転、前記液体供給部による前記液体の供給、および、前記移動部による前記ノズルの移動を制御可能なコントローラと、を備えている。前記コントローラは、前記載置部を制御して、前記基板を回転させ、前記液体供給部を制御して、前記液体を前記凍結膜に供給させ、前記移動部を制御して、前記ノズルを前記基板の周縁側から、前記基板の回転中心側に移動させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に形成した液膜を凍結させて凍結膜を形成し、前記基板の表面に付着している汚染物を前記凍結膜に取り込む基板処理装置であって、
前記基板を回転可能な載置部と、
ノズルを有し、前記ノズルを介して、前記汚染物を含む前記凍結膜に液体を供給可能な液体供給部と、
前記基板の表面に平行な方向における、前記ノズルの位置を移動可能な移動部と、
前記載置部による前記基板の回転、前記液体供給部による前記液体の供給、および、前記移動部による前記ノズルの移動を制御可能なコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記載置部を制御して、前記基板を回転させ、
前記液体供給部を制御して、前記液体を前記凍結膜に供給させ、
前記移動部を制御して、前記ノズルを前記基板の周縁側から、前記基板の回転中心側に移動させる基板処理装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記移動部を制御して、前記ノズルの移動速度を一定にする、または、前記ノズルの移動速度を変化させる請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記移動部を制御して、前記ノズルの、前記基板の回転中心側における移動速度を、前記ノズルの、前記基板の周縁側における移動速度よりも速くする請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記移動部を制御して、前記ノズルの移動速度を漸増させる、または、前記ノズルの移動速度を段階的に増加させる請求項3記載の基板処理装置。
【請求項5】
基板の表面に形成した液膜を凍結して凍結膜を形成し、前記基板の表面に付着している汚染物を前記凍結膜に取り込む工程と、
前記基板を回転するとともに、ノズルを介して前記汚染物を含む前記凍結膜に液体を供給して、前記凍結膜を解凍する工程と、
を備え、
前記凍結膜を解凍する工程において、前記基板の表面に平行な方向における前記ノズルの位置を、前記基板の周縁側から、前記基板の回転中心側に移動させる基板の処理方法。
【請求項6】
前記凍結膜を解凍する工程において、前記ノズルの移動速度を一定にする、または、前記ノズルの移動速度を変化させる請求項5記載の基板の処理方法。
【請求項7】
前記凍結膜を解凍する工程において、前記ノズルの、前記基板の回転中心側における移動速度を、前記ノズルの、前記基板の周縁側における移動速度よりも速くする請求項5または6に記載の基板の処理方法。
【請求項8】
前記凍結膜を解凍する工程において、前記ノズルの移動速度を漸増させる、または、前記ノズルの移動速度を段階的に増加させる請求項7記載の基板の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、基板処理装置、および基板の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インプリント用テンプレート、フォトリソグラフィ用マスク、半導体ウェーハなどの基板の表面に付着したパーティクルなどの汚染物を除去する方法として、凍結洗浄法が提案されている。
【0003】
凍結洗浄法においては、一般的に、洗浄に用いる液体として純水が用いられる。例えば、凍結洗浄法においては、まず、回転させた基板の表面に純水と冷却ガスを供給する。次に、純水の供給を止め、供給した純水の一部を排出して基板の表面に水膜を形成する。水膜は、供給された冷却ガスにより凍結される。水膜が凍結して氷膜が形成される際に、パーティクルなどの汚染物が氷膜に取り込まれることで基板の表面から汚染物が分離される。次に、氷膜に純水を供給して氷膜を溶融し、純水とともに汚染物を基板の表面から除去する。
凍結洗浄法を行えば、汚染物の除去率を高めることができる。しかしながら、近年においては、汚染物の除去率のさらなる向上が求められている。
【0004】
ここで、本発明者らの検討の結果、氷膜に純水を供給して氷膜を溶融した際に、氷膜に取り込まれていた汚染物の移動がし難くなることが判明した。氷膜に取り込まれていた汚染物の移動がし難くなると、汚染物の除去率を向上させるのが困難となる。
そこで、氷膜に取り込まれていた汚染物の移動を容易にすることができる技術の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、凍結膜に取り込まれていた汚染物の移動を容易にすることができる基板処理装置、および基板の処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る基板処理装置は、基板の表面に形成した液膜を凍結させて凍結膜を形成し、前記基板の表面に付着している汚染物を前記凍結膜に取り込む基板処理装置である。前記基板処理装置は、前記基板を回転可能な載置部と、ノズルを有し、前記ノズルを介して、前記汚染物を含む前記凍結膜に液体を供給可能な液体供給部と、前記基板の表面に平行な方向における、前記ノズルの位置を移動可能な移動部と、前記載置部による前記基板の回転、前記液体供給部による前記液体の供給、および、前記移動部による前記ノズルの移動を制御可能なコントローラと、を備えている。前記コントローラは、前記載置部を制御して、前記基板を回転させ、前記液体供給部を制御して、前記液体を前記凍結膜に供給させ、前記移動部を制御して、前記ノズルを前記基板の周縁側から、前記基板の回転中心側に移動させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、凍結膜に取り込まれていた汚染物の移動を容易にすることができる基板処理装置、および基板の処理方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施の形態に係る基板処理装置を例示するための模式図である。
【
図2】基板処理装置の作用を例示するためのタイミングチャートである。
【
図3】基板の表面に供給された液体の温度変化を例示するためのグラフである。
【
図4】液体ノズルの移動形態と、汚染物の移動率との関係を例示するためのグラフである。
【
図5】(a)、(b)は、比較例1に係る解凍工程を例示するための模式工程図である。
【
図6】(a)、(b)は、比較例1に係る解凍工程を例示するための模式工程図である。
【
図7】(a)、(b)は、比較例2に係る解凍工程を例示するための模式工程図である。
【
図8】(a)、(b)は、比較例2に係る解凍工程を例示するための模式工程図である。
【
図9】(a)、(b)は、本実施の形態に係る解凍工程を例示するための模式工程図である。
【
図10】(a)、(b)は、本実施の形態に係る解凍工程を例示するための模式工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0011】
(基板処理装置)
まず、本実施の形態に係る基板処理装置1について例示する。
以下に例示をする基板100は、例えば、半導体ウェーハ、インプリント用テンプレート、フォトリソグラフィ用マスク、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)に用いられる板状体などとすることができる。なお、基板100は、例示をしたものに限定されるわけではない。
また、基板100の面には、パターンである凹凸部が形成されていてもよいし、凹凸部が形成されていなくてもよい。凹凸部が形成されていない基板100は、例えば、いわゆるバルク基板などとすることができる。
【0012】
また、基板処理装置は、基板100の表面側(例えば、後述する液膜が形成される側)に冷却ガスを供給するものであってもよいし、基板100の裏面側(例えば、液膜が形成される側とは反対側)に冷却ガスを供給するものであってもよいし、基板100の表面側と裏面側に冷却ガスを供給するものであってもよい。
そのため、以下においては、一例として、基板100の裏面側に冷却ガスを供給する基板処理装置について説明する。
【0013】
図1は、本実施の形態に係る基板処理装置1を例示するための模式図である。
図1に示すように、基板処理装置1は、例えば、載置部2、冷却部3、第1液体供給部4、第2液体供給部5、チャンバ6、送風部7、コントローラ9、および排気部11を備えている。なお、
図1においては、第1液体供給部4と、第2液体供給部5が、液体を吐出するノズルを兼用する場合を例示する。
【0014】
載置部2は、例えば、載置台2a、回転軸2b、および駆動部2cを有する。
載置台2aは、チャンバ6の内部に回転可能に設けられている。載置台2aは、板状を呈している。載置台2aの一方の主面には、基板100を支持する複数の支持部2a1が設けられている。基板100を複数の支持部2a1に支持させる際には、基板100の表面100b(洗浄を行う側の面)が、載置台2a側とは反対の方を向くようにする。
また、載置台2aの中央部分には、載置台2aの厚み方向を貫通する孔2aaが設けられている。
【0015】
回転軸2bの一方の端部は、載置台2aの孔2aaの内壁に設けられている。回転軸2bの他方の端部は、チャンバ6の外部に設けられている。回転軸2bは、チャンバ6の外部において駆動部2cと接続されている。
【0016】
回転軸2bは、筒状を呈している。回転軸2bの載置台2a側の端部には、吹き出し部2b1が設けられている。吹き出し部2b1は、載置台2aの、複数の支持部2a1が設けられる面に開口している。吹き出し部2b1の開口側の端部は、孔2aaの内壁に接続されている。吹き出し部2b1の開口は、載置台2aに載置された基板100の裏面100aに対向している。回転軸2bの中心軸に直交する方向において、吹き出し部2b1の断面積は、載置台2a側(開口側)になるに従い大きくなっている。
【0017】
吹き出し部2b1を設ければ、放出された冷却ガス3a1を、基板100の裏面100aのより広い領域に供給することができる。また、冷却ガス3a1の放出速度を低下させることができる。そのため、基板100が部分的に冷却されたり、基板100の冷却速度が速くなりすぎて、後述する液体101の過冷却状態が生じ難くなったりするのを抑制することができる。
【0018】
回転軸2bの、載置台2a側とは反対側の端部には、冷却ノズル3dが取り付けられている。回転軸2bの、載置台2a側とは反対側の端部と、冷却ノズル3dとの間には、図示しない回転軸シールが設けられている。そのため、回転軸2bの、載置台2a側とは反対側の端部は、気密となるように封止されている。
【0019】
駆動部2cは、チャンバ6の外部に設けられている。駆動部2cは、回転軸2bと接続されている。駆動部2cの回転力は、回転軸2bを介して載置台2aに伝達される。そのため、駆動部2cにより載置台2a、ひいては載置台2aに載置された基板100を回転させることができる。
【0020】
また、駆動部2cは、回転の開始と回転の停止のみならず、回転数(回転速度)を変化させることができる。駆動部2cは、例えば、サーボモータなどの制御モータを備えたものとすることができる。
【0021】
冷却部3は、載置台2aと、基板100の裏面100aと、の間の空間に、冷却ガス3a1を供給する。冷却部3は、例えば、冷却液部3a、フィルタ3b、流量制御部3c、および冷却ノズル3dを有する。冷却液部3a、フィルタ3b、および流量制御部3cは、チャンバ6の外部に設けられている。
【0022】
冷却液部3aは、冷却液の収納、および冷却ガス3a1の生成を行う。冷却液は、冷却ガス3a1を液化したものである。冷却ガス3a1は、基板100の材料と反応し難いガスであれば特に限定はない。冷却ガス3a1は、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスなどの不活性ガスとすることができる。
【0023】
冷却液部3aは、冷却液を収納するタンクと、タンクに収納された冷却液を気化させる気化部とを有する。タンクには、冷却液の温度を維持するための冷却装置が設けられている。気化部は、冷却液の温度を上昇させて、冷却液から冷却ガス3a1を生成する。気化部は、例えば、外気温度を利用するものとしたり、熱媒体による加熱を行うものとしたりすることができる。冷却ガス3a1の温度は、液体101の凝固点以下の温度であればよく、例えば、-170℃とすることができる。
【0024】
なお、窒素ガスなどの不活性ガスをチラーなどで冷却して、冷却ガス3a1を生成することもできる。この様にすれば、冷却液部を簡素化できる。
【0025】
フィルタ3bは、配管を介して、冷却液部3aに接続されている。フィルタ3bは、冷却液に含まれていたパーティクルなどの汚染物が、基板100側に流出するのを抑制する。
【0026】
流量制御部3cは、配管を介して、フィルタ3bに接続されている。流量制御部3cは、冷却ガス3a1の流量を制御する。流量制御部3cは、例えば、MFC(Mass Flow Controller)などとすることができる。また、流量制御部3cは、冷却ガス3a1の供給圧力を制御することで冷却ガス3a1の流量を間接的に制御するものであってもよい。この場合、流量制御部3cは、例えば、APC(Auto Pressure Controller)などとすることができる。
【0027】
冷却液部3aにおいて冷却液から生成された冷却ガス3a1の温度は、ほぼ所定の温度となっている。そのため、流量制御部3cにより、冷却ガス3a1の流量を制御することで基板100の温度、ひいては基板100の表面100bにある液体101の温度を制御することができる。この場合、流量制御部3cにより、冷却ガス3a1の流量を制御することで、後述する冷却工程において液体101の過冷却状態を生じさせることができる。
【0028】
冷却ノズル3dは、筒状を呈している。冷却ノズル3dの一方の端部は、流量制御部3cに接続されている。冷却ノズル3dの他方の端部は、回転軸2bの内部に設けられている。冷却ノズル3dの他方の端部は、吹き出し部2b1の、載置台2a側(開口側)とは反対側の端部の近傍に位置している。
【0029】
冷却ノズル3dは、流量制御部3cにより流量が制御された冷却ガス3a1を基板100に供給する。冷却ノズル3dから放出された冷却ガス3a1は、吹き出し部2b1を介して、基板100の裏面100aに直接供給される。
【0030】
なお、前述した様に、基板処理装置は、基板100の表面100b側に冷却ガス3a1を供給するものであってもよいし、基板100の表面100b側と裏面100a側に冷却ガス3a1を供給するものであってもよい。基板100の表面100b側に冷却ガス3a1を供給する場合には、冷却ノズル3dを基板100の表面100b側に設ければよい。
【0031】
ただし、基板100の表面100b側に冷却ガス3a1を供給すると、基板100の表面100bに形成された液膜の表面から凍結が開始されることになる。液膜の表面から凍結が開始されると、基板100の表面100bに付着している汚染物が基板100の表面100bから分離されにくくなる。
そのため、汚染物の除去率を向上させるためには、基板100の裏面100a側に冷却ガス3a1を供給する基板処理装置1とすることが好ましい。
【0032】
第1液体供給部4は、基板100の表面100bに液体101を供給する。液体101は、基板100の材料と反応し難いものであれば特に限定はない。例えば、液体101は、水(例えば、純水や超純水など)、水を主成分とする液体、ガスを溶存させた液体などとすることができる。
ここで、後述する凍結工程(固液相)において、液体101の凍結の起点(固体に変化する際の起点)は、汚染物となる場合がある。例えば、過冷却状態の液体101は、液膜の温度不均一による密度変化、パーティクルなどの汚染物の存在、振動などが、凍結開始の起点となる。つまり、凍結開始の起点の何割かは、汚染物となる。
【0033】
また、汚染物が基板100の表面100bから分離されるメカニズムは、以下の様に考えることができる。例えば、液体101が凍結時に体積膨張すると、凍結の起点となった汚染物に、基板100の表面100bから引き離す方向の力が加わる。また、液体101が凍結した際に体積が変化すると圧力波が生じる。この圧力波により、基板100の表面100bに付着している汚染物が分離されると考えられる。
【0034】
第1液体供給部4は、例えば、液体収納部4a、供給部4b、流量制御部4c、および液体ノズル4dを有する。液体収納部4a、供給部4b、および流量制御部4cは、チャンバ6の外部に設けられている。
【0035】
液体収納部4aは、液体101を収納する。液体収納部4aには、凝固点よりも高い温度の液体101が収納される。液体収納部4aに収納される液体101の温度は、例えば、常温(例えば、20℃)である。
【0036】
供給部4bは、配管を介して、液体収納部4aに接続されている。供給部4bは、液体収納部4aに収納されている液体101を液体ノズル4dに向けて供給する。供給部4bは、例えば、液体101に対する耐性を有するポンプなどとすることができる。
【0037】
流量制御部4cは、配管を介して、供給部4bに接続されている。流量制御部4cは、供給部4bにより供給される液体101の流量を制御する。流量制御部4cは、例えば、流量制御弁とすることができる。また、流量制御部4cは、液体101の供給の開始と供給の停止をも行うことができる。
【0038】
液体ノズル4dは、チャンバ6の内部に設けられている。液体ノズル4dは、筒状を呈している。液体ノズル4dの一方の端部は、配管を介して、流量制御部4cに接続されている。液体ノズル4dの他方の端部は、載置台2aに載置された基板100の表面100bと対向している。液体ノズル4dから吐出した液体101は、基板100の表面100bに供給される。
【0039】
後述する液膜を形成する際には、液体ノズル4dの他方の端部(液体101の吐出口)が、基板100の回転中心の位置に設けられる。すなわち、液体101は、基板100の表面100bの略中央に供給される。基板100の表面100bの略中央に供給された液体101は、基板100の表面100bの周縁側に拡がり、基板100の表面100bに略一定の厚みを有する液膜が形成される。なお、本明細書においては、基板100の表面100bに形成された液体101の膜を液膜と称することにする。
【0040】
第2液体供給部5は、基板100の表面100bに液体102を供給する。
液体102は、後述する解凍工程において用いられる。そのため、液体102は、基板100の材料と反応し難く、且つ、後述する乾燥工程において基板100の表面100bに残留し難いものであればよい。液体102は、例えば、前述した液体101と同様に、水(例えば、純水や超純水など)、水を主成分とする液体、ガスを溶存させた液体などとすることができる。この場合、液体102は、液体101と同じであってもよいし、液体101と異なっていてもよい。
【0041】
第2液体供給部5は、例えば、液体収納部5a、供給部5b、流量制御部5c、液体ノズル4d、および移動部5dを有する。
【0042】
液体収納部5aは、前述した液体収納部4aと同様とすることができる。供給部5bは、前述した供給部4bと同様とすることができる。流量制御部5cは、前述した流量制御部4cと同様とすることができる。
【0043】
また、
図1においては、液膜の形成に用いる液体101の供給と、解凍に用いる液体102の供給において、液体ノズル4dを兼用する場合を例示したが、液体101を供給する液体ノズルと、液体102を供給する液体ノズルを別々に設けることもできる。以下においては、液体ノズル4dを兼用する場合を説明する。
【0044】
移動部5dは、解凍に用いる液体102を供給する際に用いることができる。移動部5dは、基板100の表面100bに平行な方向において、液体ノズル4dの位置を移動させる。移動部5dは、例えば、液体ノズル4dを保持するアームと、アームを旋回させるモータと、を有する。また、移動部5dは、例えば、液体ノズル4dを保持するホルダと、ホルダを直線状に移動させるためのガイドおよびモータと、を有するものとしてもよい。また、モータをサーボモータなどの制御モータとすれば、液体ノズル4dの移動速度を変化させることができる。
【0045】
前述した様に、液体102は液体101と同じとすることができる。液体102が液体101と同じである場合には、第2液体供給部5を省くことができる。第2液体供給部5が省かれる場合には、解凍工程においても、第1液体供給部4が用いられる。つまり、解凍工程においても液体101が用いられる。後述するように、解凍工程においては、液体ノズル4dの位置を移動させる。そのため、第2液体供給部5を省く場合には、移動部5dを第1液体供給部4に設けるようにする。
【0046】
また、液体102の温度は、液体101の凝固点よりも高い温度とすることができる。例えば、液体102の温度は、凍結した液体101を解凍できる温度であればよい。液体102の温度は、例えば、常温(例えば、20℃)程度である。また、液体102の温度を常温を超えた温度とすれば、解凍時間の短縮を図ることができる。液体102の温度を常温を超えた温度とする場合には、例えば、ヒータと温度制御装置が液体収納部5aに設けられる。
【0047】
なお、解凍工程においても液体101が用いられる場合、液体101の温度を常温を超えた温度とすると、後述する冷却工程の前に形成される液膜の温度が高くなる。液膜の温度が高くなると、冷却工程の所要時間が長くなる。そのため、解凍工程に用いる液体の温度を常温を超えた温度とする場合には、液体102が液体101と同じであっても、第2液体供給部5を設けることが好ましい。
【0048】
チャンバ6は、箱状を呈している。チャンバ6の内部にはカバー6aが設けられている。カバー6aは、基板100に供給され、基板100が回転することで基板100の外側に排出された液体101、102を受け止める。チャンバ6の内部には仕切り板6bが設けられている。仕切り板6bは、カバー6aの外面と、チャンバ6の内面との間に設けられている。
【0049】
チャンバ6の底面側の側面には複数の排出口6cが設けられている。使用済みの冷却ガス3a1、液体101、および液体102と、送風部7により供給された空気7aとは、排出口6cからチャンバ6の外部に排出される。排出口6cには排気管6c1が接続され、排気管6c1には使用済みの冷却ガス3a1、空気7aを排気するポンプなどの排気部11が接続されている。また、排出口6cには液体101、102を排出する排出管6c2が接続されている。
【0050】
送風部7は、チャンバ6の天井面に設けられている。なお、送風部7は、天井側であれば、チャンバ6の側面に設けることもできる。送風部7は、例えば、ファンなどの送風機とフィルタを備えている。フィルタは、例えば、HEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)などである。
【0051】
コントローラ9は、基板処理装置1に設けられた各要素の動作を制御する。コントローラ9は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などの演算部と、半導体メモリなどの記憶部とを有する。コントローラ9は、例えば、コンピュータである。記憶部には、基板処理装置1に設けられた各要素の動作を制御する制御プログラムが格納されている。演算部は、記憶部に格納されている制御プログラムに基づいて、後述する予備工程、液膜の形成工程、冷却工程、解凍工程、および乾燥工程を順次実行する。
【0052】
以上に例示したように、本実施の形態に係る基板処理装置1は、基板100の表面100bに形成した液膜を凍結させて凍結膜101aを形成し、基板100の表面100bに付着している汚染物103を凍結膜101aに取り込む(
図5(a)参照)。
また、基板処理装置1は、基板100を回転可能な載置部2と、液体ノズル4dを有し、液体ノズル4dを介して、汚染物103を含む凍結膜101aに液体101(102)を供給可能な液体供給部と、基板100の表面100bに平行な方向における、液体ノズル4dの位置を移動可能な移動部5dと、載置部2による基板100の回転、液体供給部による液体101(102)の供給、および、移動部5dによる液体ノズル4dの移動を制御可能なコントローラ9と、を備えている。
コントローラ9は、載置部2を制御して、基板100を回転させ、液体供給部を制御して、液体101(102)を凍結膜101aに供給させ、移動部5dを制御して、液体ノズル4dを基板100の周縁側から、基板100の回転中心側に移動させる。
【0053】
次に、基板処理装置1の作用についてさらに説明する。
図2は、基板処理装置1の作用を例示するためのタイミングチャートである。
図3は、基板100の表面100bに供給された液体101の温度変化を例示するためのグラフである。
なお、
図2、および
図3は、基板100が6025クオーツ(Qz)基板(152mm×152mm×6.35mm)、液体101および液体102が純水の場合である。
なお、解凍に用いる液体102は、液膜の形成に用いる液体101と同じとしている。そのため、
図2、および
図3においては、解凍工程においても、液体101を用いている。
【0054】
まず、チャンバ6の図示しない搬入搬出口を介して、基板100がチャンバ6の内部に搬入される。搬入された基板100は、載置台2aの複数の支持部2a1の上に載置、支持される。
【0055】
基板100が載置台2aに支持された後に、
図2、および
図3に示すように、予備工程、液膜の形成工程、冷却工程、解凍工程、および乾燥工程を含む凍結洗浄工程が行われる。
【0056】
まず、
図2、および
図3に示すように予備工程が実行される。
予備工程においては、コントローラ9が、供給部4bおよび流量制御部4cを制御して、基板100の表面100bに、所定の流量の液体101を供給する。また、コントローラ9が、流量制御部3cを制御して、基板100の裏面100aに、所定の流量の冷却ガス3a1を供給する。また、コントローラ9が、駆動部2cを制御して、基板100を第2の回転数で回転させる。
【0057】
ここで、冷却ガス3a1が供給されてチャンバ6の内部の雰囲気が冷やされると、雰囲気中のダストを含んだ霜が基板100に付着して、汚染の原因となるおそれがある。そのため、予備工程においては、基板100の表面100bに液体101を供給し続ける様にしている。すなわち、予備工程においては、基板100を冷却するとともに、霜が基板100の表面100bに付着するのを防止している。
【0058】
第2の回転数は、例えば、50rpm~500rpm程度である。液体101の流量は、例えば、0.1L/min~1.0L/min程度である。冷却ガス3a1の流量は、例えば、40NL/min~200NL/min程度である。予備工程の工程時間は、1800秒程度である。
【0059】
予備工程における液膜の温度は、液体101が供給され続けている状態であるため、供給される液体101の温度とほぼ同じとなる。例えば、供給される液体101の温度が常温(20℃)程度である場合、液膜の温度は常温(20℃)程度となる。
【0060】
次に、
図2、および
図3に示すように液膜の形成工程が実行される。
液膜の形成工程においては、予備工程において供給されていた液体101の供給を停止する。基板100の回転は維持されているので、基板100の表面100bにある液体101が排出される。この場合、遠心力により液膜の厚みがばらつくのを抑制することができる第1の回転数まで基板100の回転数を減速させる。第1の回転数は、例えば、0rpm~50rpmである。
【0061】
基板100の回転数を第1の回転数とした後に、所定の量の液体101を基板100に供給して液膜を形成する。液膜の厚み(冷却工程を行う際の液膜の厚み)は、例えば、300μm~1300μm程度である。
【0062】
なお、液膜の形成工程の間、冷却ガス3a1の流量は、予備工程と同じ流量に維持されている。前述した予備工程において、基板100の面内温度は略均一となっている。液膜の形成工程において、冷却ガス3a1の流量を予備工程と同じ流量に維持すれば、基板100の面内温度が略均一となった状態を維持することができる。
【0063】
次に、
図2、および
図3に示すように冷却工程が実行される。
なお、本明細書においては、冷却工程が、「過冷却工程」、「凍結工程(固液相)」、および「凍結工程(固相)」を含むものとしている。「過冷却工程」は、液体101が過冷却状態となり、過冷却状態となった液体101の凍結が始まる前までの工程である。過冷却工程では、基板100の表面100bの全体に、液体101のみが存在する。「凍結工程(固液相)」は、過冷却状態の液体101の凍結が開始し、凍結が完全に完了する前までの工程である。凍結工程(固液相)では、基板100の表面100bの全体に、液体101と、液体101が凍結したものとが存在する。「凍結工程(固相)」は、液体101が完全に凍結した後の工程である。凍結工程(固相)では、基板100の表面100bの全体に、液体101が凍結したもののみが存在する。なお、液膜が完全に凍結したものを凍結膜101aとする。
【0064】
また、液膜の形成工程の後に、過冷却工程を経ずに、凍結工程(固液相)を実行して、凍結膜101aを形成する前に解凍工程を実行する場合もある。また、液膜の形成工程の後に、過冷却工程を経ずに、凍結工程(固液相)、および凍結工程(固相)を順次実行させる場合もある。すなわち、過冷却工程、および凍結工程(固相)は、省かれる場合がある。過冷却工程、および凍結工程(固相)を省いても、汚染物103を基板100の表面100bから分離することができる。過冷却工程、および凍結工程(固相)を省けば、冷却工程の簡易化、ひいては冷却工程の所要時間の短縮を図ることができる。また、後述するように、凍結工程(固相)を行えば、凍結膜101aに応力が発生する。基板100の表面100bに微細な凹凸部があると、発生した応力により、凹凸部が破損するおそれがある。この場合、凍結工程(固相)を省けば、凹凸部が破損するのを抑制することができる。
【0065】
ただし、後述するように、過冷却工程、および凍結工程(固相)を実行すれば、汚染物103を基板100の表面100bから効率良く分離することができる。近年においては、汚染物103の除去率を向上させることが望まれている。そのため、本明細書においては、過冷却工程、凍結工程(固液相)、および凍結工程(固相)を順次実行する場合を説明する。
【0066】
過冷却工程では、基板100の裏面100aに供給され続けている冷却ガス3a1により、基板100上の液膜の温度が、液膜の形成工程における液膜の温度よりもさらに下がり、過冷却状態となる。この場合、液体101の冷却速度が余り速くなると液体101が過冷却状態とならず、すぐに凍結してしまう。そのため、コントローラ9は、基板100の回転数、冷却ガス3a1の流量、および、液体101の流量の少なくともいずれかを制御することで、基板100の表面100bの液体101が過冷却状態となるようにする。
【0067】
液体101が過冷却状態となる制御条件は、基板100の大きさ、液体101の粘度、冷却ガス3a1の比熱などの影響を受ける。そのため、液体101が過冷却状態となる制御条件は、実験やシミュレーションを行うことで適宜決定することが好ましい。
【0068】
なお、前述した様に、過冷却工程を実行しない場合もある。この場合には、コントローラ9は、基板100の回転数、冷却ガス3a1の流量、および、液体101の流量の少なくともいずれかを制御して、液体101の冷却速度を速める。その結果、過冷却工程を経ずに、凍結工程(固液相)が実行されるようにする。
【0069】
過冷却状態の液体101の凍結が開始すると、過冷却工程から凍結工程(固液相)に移行する。過冷却状態においては、例えば、液膜の温度、パーティクルなどの汚染物や気泡の存在、振動などにより、液体101の凍結が開始する。例えば、パーティクルなどの汚染物が存在する場合、液体101の温度Tが、-35℃以上、-20℃以下になると液体101の凍結が開始する。また、基板100の回転を変動させるなどして液体101に振動を加えることで、液体101の凍結を開始させることもできる。
【0070】
前述したように、過冷却状態の液体101においては、凍結開始の起点の何割かが汚染物となる。凍結開始の起点となった汚染物は、凍結膜101aに取り込まれる。そのため、過冷却工程を実行すれば、汚染物の除去率を向上させることができる。また、液体101が固体に変化した際の体積変化に伴う圧力波や、体積増加に伴う物理力などにより、基板100の表面100bに付着している汚染物が分離されると考えられる。
【0071】
次に、
図2、および
図3に示すように解凍工程が実行される。
解凍工程の開始は、例えば、予備工程の開始時点や凍結工程(固液相)の開始時点からの経過時間によって決定することができる。ただし、これは一例であるため、検出部等により、基板100の表面100bの液体101(凍結膜101a)の表面状態を検出し、表面状態の変化から解凍開始のタイミングを決定することもできる。
【0072】
なお、解凍工程の詳細については後述する。
【0073】
次に、
図2、および
図3に示すように乾燥工程が実行される。
乾燥工程においては、コントローラ9が、供給部4bおよび流量制御部4cを制御して、液体101の供給を停止させる。なお、液体101と液体102が異なる液体の場合には、コントローラ9が、供給部5bおよび流量制御部5cを制御して、液体102の供給を停止させる。
【0074】
また、コントローラ9が、駆動部2cを制御して、基板100の回転数を、解凍工程における基板100の回転数(後述する第3の回転数)よりも速い第4の回転数にする。基板100の回転が速くなれば、基板100の乾燥時間を短縮することができる。なお、第4の回転数は、乾燥ができるのであれば特に限定はない。
【0075】
以上の様にすることで、凍結洗浄工程が終了する。なお、凍結洗浄工程は、複数回行うこともできる。
凍結洗浄が終了した基板100は、チャンバ6の図示しない搬入搬出口を介して、チャンバ6の外部に搬出される。
【0076】
次に、解凍工程についてさらに説明する。
解凍工程においては、コントローラ9が、供給部4bおよび流量制御部4cを制御して、凍結膜101aに、液体101を供給する。なお、液体101と液体102が異なる場合には、コントローラ9が、供給部5bおよび流量制御部5cを制御して、凍結膜101aに、液体102を供給する。
またこのとき、
図2に示すように、コントローラ9は、移動部5dを制御して、液体ノズル4dを、基板100の表面100bの上方で、且つ、基板100の周縁の位置から基板100の回転中心まで移動させる。
【0077】
また、前述したように、コントローラ9は、移動部5dを制御して、液体ノズル4dの移動速度を一定にすることもできるし、
図2に一点鎖線で示すように、液体ノズル4dの移動速度を変化させることもできる。
【0078】
この場合、
図2に示すように、コントローラ9は、移動部5dを制御して、液体ノズル4dの、基板100の回転中心側における第2の移動速度を、液体ノズル4dの、基板100の周縁側における第1の移動速度よりも速くすることができる。例えば、第2の移動速度は、第1の移動速度の2倍程度とすることができる。
また、
図2に示すように、コントローラ9は、移動部5dを制御して、液体ノズル4dの移動速度を漸増させることもできるし、液体ノズル4dの移動速度を段階的に増加させることもできる。
【0079】
この様にすれば、基板100の周縁側にある凍結膜101aの上方を、液体ノズル4dが移動する時間が、基板100の回転中心側にある凍結膜101aの上方を、液体ノズル4dが移動する時間よりも長くなる。そのため、基板100の回転中心側よりも凍結膜101aの表面積が大きい周縁側での液体101の供給時間を長くし、解凍に供される時間を長くすることができるので、基板100の周縁側にある凍結膜101aを確実に解凍することができる。
【0080】
なお、液体ノズル4dの移動速度の適正値や、移動速度の変速条件の適正値などは、凍結膜101aの厚み、凍結膜101aの温度、基板100の回転速度、解凍に用いる液体101(102)の温度や流量などの影響を受ける。そのため、液体ノズル4dの移動速度や、移動速度の変速条件などは、実験やシミュレーションを行うことで適宜決定することが好ましい。
【0081】
液体101または液体102の流量は、解凍ができるのであれば特に限定はない。液体101または液体102の温度は、常温(例えば、20℃)とすることができる。なお、前述した様に、液膜の形成に用いる液体101の温度を常温(例えば、20℃)とし、解凍に用いる液体102の温度を常温を超えた温度とすることもできる。
【0082】
液体ノズル4dが基板100の回転中心に移動し、解凍工程が完了すると、コントローラ9が、流量制御部3cを制御して、冷却ガス3a1の供給を停止させる。また、コントローラ9が、駆動部2cを制御して、基板100の回転数を第1の回転数から第3の回転数に増加させる。第3の回転数は、例えば、200rpm~700rpm程度である。基板100の回転が速くなれば、液体101と液体101が凍結したものとを遠心力で振り切ることができる。そのため、液体101と液体101が凍結したものとを基板100の表面100bから排出し易くなる。この際、基板100の表面100bから分離された汚染物103も、液体101と液体101が凍結したものとともに排出される。
【0083】
図4は、液体ノズル4dの移動形態と、汚染物103の移動率との関係を例示するためのグラフである。
比較例1に係る液体ノズル4dの移動形態は、基板100の表面100bの上方、且つ、基板100の回転中心の位置から、液体101(102)を凍結膜101aに供給する場合である。この場合、液体ノズル4dは、基板100の回転中心の位置から移動させない様にしている。
比較例2に係る液体ノズル4dの移動形態は、基板100の表面100bの上方、且つ、基板100の回転中心の位置から、液体101(102)を凍結膜101aに供給する場合である。この場合、液体ノズル4dは、基板100の回転中心の位置から、基板100の周縁に向けて移動させる様にしている。
本実施の形態に係る液体ノズル4dの移動形態は、基板100の表面100bの上方、且つ、基板100の周縁の近傍の位置から、液体101(102)を凍結膜101aに供給する場合である。この場合、液体ノズル4dは、基板100の周縁の近傍の位置から、基板100の回転中心に向けて移動させる様にしている。
汚染物103の移動率は、解凍前にあった汚染物が解凍後に移動した割合を表している。汚染物103の移動率が高くなることは、汚染物103の除去率が高くなることを意味する。
【0084】
図4から分かるように、本実施の形態に係る液体ノズル4dの移動形態とすれば、基板100の全域において、比較例1および比較例2に係る液体ノズル4dの移動形態に比べて汚染物103の移動率を大幅に高くすることができる。また、比較例1および比較例2に係る液体ノズル4dの移動形態においては、基板100の周縁側の汚染物103の移動率が低くなるのに対し、本実施の形態に係る液体ノズル4dの移動形態とすれば、基板100の周縁側の汚染物103の移動率高くすることができる。
すなわち、本実施の形態に係る液体ノズル4dの移動形態とすれば、基板100の全域において、汚染物103の除去率を向上させることができる。
【0085】
また、以下に説明するように、液体ノズル4dの移動形態が異なれば、凍結膜101aを解凍した際の汚染物103の挙動も異なるものとなる。
【0086】
図5(a)~
図6(b)は、比較例1に係る解凍工程を例示するための模式工程図である。
【0087】
まず、
図5(a)に示すように、基板100の回転中心の位置にある凍結膜101aに液体101(102)が供給される。
図5(b)に示すように、基板100の回転中心の近傍にある凍結膜101aが、液体101(102)により溶解する。
【0088】
図6(a)、および
図6(b)に示すように、解凍が進むに従い、凍結膜101aの解凍された部分が、基板100の回転中心の位置から外側に向けて拡がっていく。
図6(a)に示すように、基板100の周縁側に凍結膜101aが残っている場合には、供給された液体101(102)が、凍結膜101aの回転中心側の端部に当たる。この場合、液体101(102)の一部は、凍結膜101aの端部を乗り越えて基板100の外部に排出される。液体101(102)の残りの一部は、凍結膜101aの端部に当たることで、基板100の回転中心側に戻される。
【0089】
凍結膜101aに取り込まれていた汚染物103が、基板100の外部に排出される液体101(102)の流れに乗れば、汚染物103を排出することができる。
ところが、
図6(a)、および
図6(b)に示すように、汚染物103が、基板100の回転中心側に戻される液体101(102)の流れに乗れば、汚染物103が基板100の表面100b側に移動する。
【0090】
すなわち、単に、基板100の回転中心の位置にある凍結膜101aに液体101(102)を供給すると、汚染物103の移動率が低くなる。
【0091】
図7(a)~
図8(b)は、比較例2に係る解凍工程を例示するための模式工程図である。
【0092】
まず、
図7(a)に示すように、基板100の回転中心の位置にある凍結膜101aに液体101(102)が供給される。
図7(b)に示すように、基板100の回転中心の近傍にある凍結膜101aが、液体101(102)により溶解する。
【0093】
また、コントローラ9が、移動部5dを制御して、液体ノズル4dを、基板100の回転中心の位置から、基板100の周縁に向けて移動させる。この場合、液体ノズル4dは、基板100の表面100bに平行な方向に移動する。
そのため、
図7(b)に示すように、凍結膜101aは、基板100の回転中心の位置から外側に向けて解凍されていく。
【0094】
図7(b)、および
図8(a)に示すように、解凍が進むに従い、凍結膜101aの解凍された部分が、基板100の回転中心の位置から外側に向けて拡がっていく。この場合、液体ノズル4dは基板100の周縁に向けて移動するので、液体ノズル4dが凍結膜101aの回転中心側の端部の近傍に位置することになる。
【0095】
そのため、
図7(b)、および
図8(a)に示すように、液体ノズル4dから供給された液体101(102)の一部が、凍結膜101aの回転中心側の端部に沿って基板100の表面100b側に流れやすくなる。凍結膜101aの表面を流れる液体101(102)は、基板100の外部に排出される。凍結膜101aに取り込まれていた汚染物103が、基板100の外部に排出される液体101(102)の流れに乗れば、汚染物103を排出することができる。
【0096】
ところが、汚染物103が、基板100の表面100b側に流れる液体101(102)の流れに乗れば、汚染物103が基板100の表面100b側に移動する。
【0097】
すなわち、液体ノズル4dを、基板100の回転中心の位置から、基板100の周縁に向けて移動させても、汚染物103の移動率が低くなる。
【0098】
図9(a)~
図10(b)は、本実施の形態に係る解凍工程を例示するための模式工程図である。
【0099】
まず、
図9(a)に示すように、基板100の周縁の近傍の位置にある凍結膜101aに液体101(102)を供給する。
図9(b)に示すように、基板100の周縁の近傍にある凍結膜101aが、液体101(102)により溶解する。
【0100】
また、解凍に用いた液体101(102)と、凍結膜101aが解凍されることで生じた液体101は、遠心力により、基板100の外部に排出される。そのため、
図9(b)に示すように、凍結膜101aの、基板100の周縁側に取り込まれていた汚染物103が、基板100の外部に排出され易くなる。
【0101】
また、コントローラ9が、移動部5dを制御して、液体ノズル4dを、基板100の周縁の位置から、基板100の回転中心の位置に向けて移動させる。この場合、液体ノズル4dは、基板100の表面100bに平行な方向に移動する。
そのため、
図10(a)、および
図10(b)に示すように、解凍が進むに従い、凍結膜101aの解凍された部分が、基板100の周縁の位置から基板100の回転中心の位置に向けて拡がっていく。
【0102】
また、液体ノズル4dは、基板100の回転中心の位置に向けて移動するので、
図10(a)に示すように、液体ノズル4dが凍結膜101aの周縁側の端部の近傍に位置することになる。
【0103】
そのため、
図10(a)に示すように、液体ノズル4dから供給された液体101(102)の一部が、凍結膜101aの周縁側の端部に当たって、基板100の周縁側に流れやすくなる。基板100の周縁側にあった凍結膜101aは解凍されている。そのため、解凍に用いた液体101(102)と、凍結膜101aが解凍されることで生じた液体101は、凍結膜101aに遮られること無く、遠心力により、基板100の外部にそのまま排出される。
【0104】
凍結膜101aに取り込まれていた汚染物103は、基板100の外部に排出される液体101(102)の流れに乗るので、汚染物103を円滑に排出することができる。
【0105】
すなわち、液体ノズル4dを、基板100の周縁側から、基板100の回転中心側に移動させれば、汚染物103の移動率を高くすることができる。
【0106】
前述したように、本実施の形態に係る解凍工程においては、基板100の表面100bに形成された凍結膜101aが基板100の周縁側から回転中心側に向けて順次解凍される。基板100の周縁側から凍結膜101aの解凍を行なえば、
図4から分かるように、基板100の表面100bの全域で、付着していた汚染物103を移動させることができる。また、基板100の周縁側にあった凍結膜101aが解凍されていれば、解凍に用いた液体101(102)と、凍結膜101aが解凍されることで生じた液体101は、凍結膜101aに遮られること無く、遠心力により、基板100の外部にそのまま排出される。そのため、汚染物103の移動率を高くすることができ、ひいては汚染物の除去率を向上させることができる。
【0107】
また、前述した様に、過冷却工程、および凍結工程(固相)を実行すれば、凍結膜101aの内部により多くの汚染物103が取り込まれることになる。本実施の形態に係る解凍工程によれば、凍結膜101aの内部に多くの汚染物103が取り込まれていても、汚染物103の移動率を高くすることができる。そのため、過冷却工程、凍結工程(固相)、および本実施の形態に係る解凍工程を実行すれば、汚染物103の除去率をさらに向上させることができる。
【0108】
また、解凍に用いる液体101(102)は、水とアルカリ溶液の混合液とすることもできる。この様にすれば、解凍に用いる液体101(102)のゼータ電位を低下させることができるので、凍結膜101aの内部に取り込まれていた汚染物103が移動しやすくなる。
【0109】
解凍に用いる液体101(102)は、水と酸性溶液の混合液とすることもできる。この様にすれば、凍結膜101aの内部に取り込まれていた有機物を含む汚染物103(例えば、レジスト残渣など)を溶解することができる。
【0110】
(基板の処理方法)
次に、本実施の形態に係る基板の処理方法について例示する。
本実施の形態に係る基板の処理方法は、例えば、前述した基板処理装置1を用いて実行することができる。
【0111】
基板の処理方法は、例えば、以下の工程を備えることができる。
基板100の表面100bに形成した液膜を凍結して凍結膜を形成し、基板100の表面100bに付着している汚染物103を凍結膜に取り込む工程。
基板100を回転するとともに、液体ノズル4dを介して汚染物103を含む凍結膜に液体101(102)を供給して、凍結膜を解凍する工程。
そして、凍結膜を解凍する工程において、基板100の表面100bに平行な方向における液体ノズル4dの位置を、基板100の周縁側から、基板100の回転中心側に移動させる。
【0112】
また、凍結膜を解凍する工程において、液体ノズル4dの移動速度を一定にする、または、液体ノズル4dの移動速度を変化させることができる。
【0113】
また、凍結膜を解凍する工程において、液体ノズル4dの、基板100の回転中心側における移動速度を、液体ノズル4dの、基板100の周縁側における移動速度よりも速くすることができる。
【0114】
また、凍結膜を解凍する工程において、液体ノズル4dの移動速度を漸増させる、または、液体ノズル4dの移動速度を段階的に増加させることができる。
なお、各工程の内容は、前述した基板処理装置1において例示をしたものと同様とすることができるので詳細な説明は省略する。
【0115】
以上、実施の形態について例示をした。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述した実施形態に関して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
【0116】
例えば、基板処理装置1が備える各要素の形状、寸法、数、配置などは、例示をしたものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0117】
1 基板処理装置、2 載置部、2a 載置台、3 冷却部、3a1 冷却ガス、4 第1液体供給部、4d 液体ノズル、5 第2液体供給部、5d 移動部、6 チャンバ、9 コントローラ、100 基板、100a 裏面、100b 表面、101 液体、101a 凍結膜、102 液体、103 汚染物