(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044252
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】断熱シリコーンスポンジおよびその製造方法ならびに断熱シリコーンスポンジを備えるユニット
(51)【国際特許分類】
F16L 59/02 20060101AFI20240326BHJP
C08J 9/04 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
F16L59/02
C08J9/04 101
C08J9/04 CFH
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149669
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(72)【発明者】
【氏名】前田 賢宏
【テーマコード(参考)】
3H036
4F074
【Fターム(参考)】
3H036AA09
3H036AB18
3H036AB25
3H036AC03
3H036AE01
4F074AA90
4F074AA91
4F074AA95
4F074BA13
4F074BA14
4F074BB01
4F074CA11
4F074CC04Y
4F074CC22X
4F074CE02
4F074CE45
4F074CE46
4F074CE59
4F074CE64
4F074DA14
4F074DA19
4F074DA20
4F074DA32
4F074DA47
(57)【要約】
【課題】
熱源からシリコーンスポンジへの熱伝達を抑制するとともに、シリコーンスポンジの固定部材への固定をより確実にする。
【解決手段】
本発明は、熱源に片面を対向配置させて当該熱源から外部へ熱の伝達を抑制可能な多孔性のシリコーンスポンジであって、シリコーンスポンジ2の厚さ方向の片面を、複数の孔の開口面3を有する有孔面5aとし、厚さ方向の片面と反対側の面5bに、当該片面より緻密なスキン層6を備える断熱シリコーンスポンジ1、その製造方法、ならびに断熱シリコーンスポンジ1を備えるユニットに関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源に片面を対向配置させて当該熱源から外部へ熱の伝達を抑制可能な多孔性のシリコーンスポンジであって、
前記シリコーンスポンジの厚さ方向の前記片面を、複数の孔の開口面を有する有孔面とし、
前記厚さ方向の前記片面と反対側の面に、前記片面より緻密なスキン層を備えることを特徴とする断熱シリコーンスポンジ。
【請求項2】
前記スキン層は、シリコーン硬化体の層であることを特徴とする請求項1に記載の断熱シリコーンスポンジ。
【請求項3】
前記シリコーンスポンジ中の孔は、主として、前記シリコーンスポンジの厚さ方向に細長い孔であることを特徴とする請求項1に記載の断熱シリコーンスポンジ。
【請求項4】
前記シリコーンスポンジ中の孔は、主として、前記シリコーンスポンジの厚さ方向に細長い孔であることを特徴とする請求項2に記載の断熱シリコーンスポンジ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の断熱シリコーンスポンジを製造する方法であって、
厚さ方向の両面に前記スキン層を備えるシリコーン発泡体を製造するシリコーン発泡体製造工程と、
前記シリコーン発泡体を、その厚さ方向の任意の位置から2つに分割するカッティング工程と、
を含むことを特徴とする断熱シリコーンスポンジの製造方法。
【請求項6】
前記シリコーン発泡体製造工程は、
硬化時に発泡するシリコーンコンパウンドを成形用の部材にて挟持する挟持工程と、
前記シリコーンコンパウンドを加熱して、前記シリコーンコンパウンドの厚さ方向の両面に前記スキン層を形成するスキン層形成工程と、
前記スキン層の形成中または形成後に、前記シリコーンコンパウンドを発泡させながら硬化する発泡・硬化工程と、
を含むことを特徴とする請求項5に記載の断熱シリコーンスポンジの製造方法。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか1つに記載の断熱シリコーンスポンジを備え、前記有孔面に対向配置される前記熱源と、前記スキン層に対向配置される固定部材とで前記断熱シリコーンスポンジを挟持した構造を持つユニット。
【請求項8】
前記スキン層と前記固定部材との間に、粘着層を介在させてなる請求項7に記載のユニット。
【請求項9】
前記熱源をバッテリーセルとすることを特徴とする請求項7に記載のユニット。
【請求項10】
前記熱源をバッテリーセルとすることを特徴とする請求項8に記載のユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱シリコーンスポンジおよびその製造方法ならびに断熱シリコーンスポンジを備えるユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷の少ない製品やサービスが求められてきている。自動車を例に挙げると、ガソリンあるいは軽油を燃料とするエンジンを唯一の動力源とする自動車から、バッテリーの電力を利用して回転するモータを動力源に加えたハイブリット車、さらにはモータのみを動力源とする電気自動車へと移行しつつある。ここで、重要な役割を有するのはバッテリーである。例えば、電気自動車用のバッテリーとして有用なリチウムイオンバッテリーは、複数のバッテリーセルを備える。1つのバッテリーセルが異常発熱すると、隣のバッテリーセルにも熱が伝わり、バッテリー全体が発火または破裂するリスクがある。このようなリスクを低減するには、バッテリーセル同士の断熱を確実にするのが好ましい。
【0003】
上記のような断熱を図るには、バッテリーセル等の熱源の形状に合わせて変形しやすく、かつ耐熱性に優れた材料が好ましい。このような材料の候補としては、シリコーンゴムが優れている。加えて、断熱性を高めるには、空気を含むスポンジ状のシリコーンエラストマー(シリコーンスポンジともいう。)が好ましい(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、シリコーンスポンジを断熱材として用いるだけでは、断熱性が不十分である。また、熱源からシリコーンスポンジへの熱伝達を抑制するとともに、シリコーンスポンジの固定部材への固定をより確実にすることも重要である。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、熱源からシリコーンスポンジへの熱伝達を抑制するとともに、シリコーンスポンジの固定部材への固定をより確実にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係る断熱シリコーンスポンジは、熱源に片面を対向配置させて当該熱源から外部へ熱の伝達を抑制可能な多孔性のシリコーンスポンジであって、
前記シリコーンスポンジの厚さ方向の前記片面を、複数の孔の開口面を有する有孔面とし、
前記厚さ方向の前記片面と反対側の面に、前記片面より緻密なスキン層を備える。
(2)別の実施形態に係る断熱シリコーンスポンジにおいて、好ましくは、前記スキン層は、シリコーン硬化体の層であっても良い。
(3)別の実施形態に係る断熱シリコーンスポンジにおいて、好ましくは、前記シリコーンスポンジ中の孔は、主として、前記シリコーンスポンジの厚さ方向に細長い孔であっても良い。
(4)上記目的を達成するための一実施形態に係る断熱シリコーンスポンジの製造方法は、上記いずれかの断熱シリコーンスポンジを製造する方法であって、
厚さ方向の両面に前記スキン層を備えるシリコーン発泡体を製造するシリコーン発泡体製造工程と、
前記シリコーン発泡体を、その厚さ方向の任意の位置から2つに分割するカッティング工程と、を含む。
(5)別の実施形態に係る断熱シリコーンスポンジの製造方法において、好ましくは、前記シリコーン発泡体製造工程は、
硬化時に発泡するシリコーンコンパウンドを成形用の部材にて挟持する挟持工程と、
前記シリコーンコンパウンドを加熱して、前記シリコーンコンパウンドの厚さ方向の両面に前記スキン層を形成するスキン層形成工程と、
前記スキン層の形成中または形成後に、前記シリコーンコンパウンドを発泡させながら硬化する発泡・硬化工程と、
を含んでも良い。
(6)上記目的を達成するための一実施形態に係るユニットは、上述のいずれかの断熱シリコーンスポンジを備え、前記有孔面に対向配置される前記熱源と、前記スキン層に対向配置される固定部材とで前記断熱シリコーンスポンジを挟持した構造を持つ。
(7)別の実施形態に係るユニットは、好ましくは、前記スキン層と前記固定部材との間に、粘着層を介在させてなるものでも良い。
(8)別の実施形態に係るユニットは、好ましくは、前記熱源をバッテリーセルとするものでも良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、熱源からシリコーンスポンジへの熱伝達を抑制するとともに、シリコーンスポンジの固定部材への固定をより確実にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る断熱シリコーンスポンジをその厚さ方向に切断したときの断面図を示す。
【
図2】
図2は、
図1の断熱シリコーンスポンジの製造方法の例示的なフロー図を示す。
【
図3】
図3は、
図2のフロー図に対応する製造物の状態を断面図で示す。
【
図4】
図4は、
図3の製造方法をさらに具体化した例示的なフロー図を示す。
【
図5】
図5は、
図4のフロー図に対応する製造物の状態を断面図で示す。
【
図6】
図6は、
図1の断熱シリコーンスポンジの断面の一部の光学顕微鏡写真(6A)および熱源から断熱シリコーンスポンジへと伝わる熱の流れの模式図(6B)を示す。
【
図7】
図7は、
図1の断熱シリコーンスポンジの各種方向から撮影した写真(7A,7B,7C)を示す。
【
図8】
図8は、断熱シリコーンスポンジの有孔面に対向配置される熱源と、スキン層に対向配置される固定部材とで断熱シリコーンスポンジを挟持した構造を持つユニットを示す。
【
図9】
図9は、断熱シリコーンスポンジの有孔面に対向配置される熱源と、スキン層に対向配置される固定部材とで断熱シリコーンスポンジを挟持し、さらには、スキン層と固定部材との間に粘着層を介在させた構造を持つユニットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る断熱シリコーンスポンジをその厚さ方向に切断したときの断面図を示す。
【0012】
この実施形態に係る断熱シリコーンスポンジ1は、熱源に片面を対向配置させて当該熱源から外部へ熱の伝達を抑制可能な多孔性のシリコーンスポンジである。ここで、「シリコーンスポンジ」とは、スポンジ状のシリコーンエラストマーを意味する。断熱シリコーンスポンジ1は、シリコーンスポンジ2の厚さ方向の片面を、複数の孔4の開口面3を有する有孔面5aとし、シリコーンスポンジ2の厚さ方向の片面と反対側の面に、その片面より緻密なスキン層6を備える。シリコーンスポンジ2は、断熱シリコーンスポンジ1におけるスキン層6以外の部分をいう。スキン層6を備える面は、有孔面5aに対して、緻密面5bと称する。本願では、「対向配置」は、向かい合って配置されていることを意味し、接触の場合の他、別の部材を介在させて直接的には接触していない場合も含む。
【0013】
スキン層6は、有孔面5aよりも孔の少ない緻密な面であれば、その材質を問わない。スキン層6としては、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ニトリルゴム(NBR)あるいはスチレンブタジエンゴム(SBR)等の熱硬化性エラストマー; ウレタン系、エステル系、スチレン系、オレフィン系、ブタジエン系、フッ素系等の熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの複合物等を含むように構成される。この実施形態では、好ましくは、スキン層6は、耐熱性にすぐれる層であるシリコーン硬化体の層である。ここで、「シリコーン硬化体」は、「シリコーンエラストマー」と読み替えても良い。
【0014】
この実施形態において、シリコーンスポンジ2中の孔4は、好ましくは、主として、シリコーンスポンジ2の厚さ方向に細長い孔である。ここで、「主として」は、孔4の総数の50%を超えること、好ましくは当該総数の70%を超えること、より好ましくは当該総数の90%を超えることを意味する。このため、厚さ方向に細長い孔4以外の形態を持つ孔は、シリコーンスポンジ2中に、孔4の総数の半数未満で含まれていても良い。シリコーンスポンジ2は、その厚さ方向に細長い孔4を有すると、厚さ方向に弾性変形しやすい。すなわち、シリコーンスポンジ2をその厚さ方向に力を加えて圧縮しても、力を減じたときに元の形状に戻りやすい。
【0015】
シリコーンスポンジ2は、その全体の体積に対して、好ましくは20~70体積%、より好ましくは30~60体積%の孔4(開口面3の有無を問わない孔)を有する。シリコーンスポンジの孔4の中の空気は、断熱シリコーンスポンジ1に優れた断熱性を付与する。このため、断熱シリコーンスポンジ1は、有孔面5aに対向する熱源(例えば、バッテリーセル)からの熱を伝達しにくくする断熱材として有望である。
【0016】
シリコーンスポンジ2は、シリコーンエラストマーを主材とする。ここで、「主材」は、構成材料全体に対して50質量%を超えるものを意味するように解釈される。断熱シリコーンスポンジ1は、熱伝導性をより低くするように、難燃材、例えば、カーボン(アモルファスカーボン、グラファイトを含む)、ハロゲン化物、リン化合物、白金、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等の無機化合物を含んでいても良い。かかる難燃材は、断熱シリコーンスポンジ1の全質量に対して、好ましくは1~20質量%、より好ましくは5~20質量%含まれている。
【0017】
断熱シリコーンスポンジ1は、その厚さに制約はないが、この実施形態では、好ましくは1mm以上100mm以下、より好ましくは10mm以上50mm以下である。スキン層6の厚さは、好ましくは0.1μm以上1000μm、より好ましくは1μm以上100μm以下である。
【0018】
図2は、
図1の断熱シリコーンスポンジの製造方法の例示的なフロー図を示す。
図3は、
図2のフロー図に対応する製造物の状態を断面図で示す。
【0019】
断熱シリコーンスポンジ1は、シリコーン発泡体製造工程(S100)と、カッティング工程(S200)と、を含む。シリコーン発泡体製造工程は、シリコーンスポンジ2の厚さ方向の両面にスキン層6を備えるシリコーン発泡体10を製造する工程である。この工程では、例えば、シリコーン発泡体10の製造前に、スキン層6に相当するフィルムを金型内にセットしてから、金型内にシリコーンスポンジ2の形成用のシリコーンコンパウンドを入れて加熱することによって発泡・成形させて得ることができる。また、別の例としては、金型内にシリコーンコンパウンドを入れて加熱することで、シリコーン硬化体から成るスキン層6が形成され、その途中もしくはその後に発泡・成形させることができる。
【0020】
シリコーン発泡体10の製造方法としては、特に制約はないが、例えば、化学発泡剤を用いる方法と、自己発泡方法と、を挙げることができる。化学発泡剤を用いる方法では、加熱によって発泡および成形してシリコーンスポンジ2を形成できるように、シリコーンコンパウンド中に、硬化剤を加えると共に、好ましくは有機発泡剤を含む。シリコーンコンパウンド中の有機発泡剤は、加熱により分解して窒素ガス等を発生させる。化学発泡剤を用いる方法は、窒素ガス等のガス圧で発泡を行う方法である。発泡剤としては、公知のものを用いることができ、例えば、ジアゾアミノ誘導体、アゾニトリル誘導体、アゾジカルボン酸誘導体等の有機アゾ化合物等を用いることができる。さらに、有機アゾ化合物としては、アゾジカルボン酸アミド、アゾビス-イソブチロニトリル等を好適に用いることができる。
【0021】
自己発泡方法は、2液の液状シリコーン材料を用いる方法である。2液の液状シリコーン材料を混合・撹拌すると硬化反応が開始する。自己発泡方法は、硬化反応で発生したガスにより発泡させる方法である。用いられる主なシリコーン材料としては、分子中に水酸基を持つシリコーン成分とケイ素に直結する水素を持つシリコーン成分が挙げられる。かかる2種のシリコーン成分が反応することで水素ガスが発生する。
【0022】
シリコーン発泡体10は、化学発泡剤を用いる方法、自己発泡方法の他、シリコーンコンパウンドに塩類を練り込んでおき、硬化後に水で塩類を溶出させ空隙を形成する方法、二酸化炭素などの気体に圧力、温度をかけて超臨界状態にしてシリコーンコンパウンド中に当該気体を溶解させ、その後減圧することによって気泡を形成する方法、または液状シリコーンと水を乳化してW/O型エマルジョンを用意して、硬化後に水と空気を置換して気泡を形成する方法でも製造可能である。
【0023】
カッティング工程は、シリコーン発泡体10を、その厚さ方向の任意の位置から2つに分割する工程である(
図3のラインLを参照。)。シリコーン発泡体10の厚さ方向の任意の位置は、好ましくは、当該厚さの半分の位置である。シリコーン発泡体10の厚さを半分にするようにカッティングすることで、同じ形態の断熱シリコーンスポンジ1を2つ得ることができる。断熱シリコーンスポンジ1と同じ厚さのシリコーン発泡体10を製造して、1つのスキン層6だけをカットする方法も考えられる。しかし、この方法では、成形工程数が多くなる他、スキン層6のカッティングに失敗が生じやすく、歩留まりが低下しやすい。このような問題を解消する上では、断熱シリコーンスポンジ1の2倍の厚さを有するシリコーン発泡体10を製造してから厚さを半分にするようにカッティングを行い、2つの断熱シリコーンスポンジ1を製造する方が好ましい。ただし、「厚さ方向の任意の位置」は、当該厚さの半分の位置に限定されない。厚さの異なる断熱シリコーンスポンジ1を製造する場合には、当該厚さの半分以外の位置からカットしても良い。
【0024】
図4は、
図3の製造方法をさらに具体化した例示的なフロー図を示す。
図5は、
図4のフロー図に対応する製造物の状態を断面図で示す。
【0025】
図4のフロー図は、
図3のフロー図中のシリコーン発泡体製造工程(S100)をさらに複数の工程としたものである。すなわち、シリコーン発泡体製造工程(S100)は、挟持工程(S110)と、スキン層形成工程(S120)と、発泡・硬化工程(S130)と、を含む。このフロー図は、化学発泡剤を用いたときの例示的なフロー図である。
【0026】
挟持工程(S110)は、硬化時に発泡するシリコーンコンパウンド8を、成形用の部材(「挟持用の部材」ともいう。)7,7にて挟持する工程である。シリコーンコンパウンド8は、予め一次成形を行って直方体形状に賦形されていても良い。その場合、挟持工程(S110)に先立ち、一次成形工程を行うことができる。挟持用の部材7,7としては、シリコーンコンパウンド8の硬化時にその形状を保つことが可能であれば、その構成材料に制約はなく、例えば、アルミニウム製の板に代表される金属板、またはポリエチレンテレフタレート製の板に代表される樹脂板を用いることができる。スキン層形成工程(S120)は、シリコーンコンパウンド8を加熱して、シリコーンコンパウンド8の厚さ方向(成形用の部材7,7で挟持した方向と同じ)の両面にスキン層6,6を形成する工程である。発泡・硬化工程(S130)は、スキン層6,6の形成中または形成後に、シリコーンコンパウンド8を発泡させながら硬化する工程である。シリコーンコンパウンド8の加熱温度は、シリコーンコン発泡体10の形成が可能であれば特に制約はないが、好ましくは100℃以上240℃以下、さらに好ましくは150℃以上200℃以下である。加熱方法としても、特に制約はないが、例えば、所定の温度に加熱可能な熱風乾燥機の中に、挟持用の部材7,7にてシリコーンコンパウンド8を挟持した状態のものを入れる方法を挙げることができる。
【0027】
かかる製法では、発泡に先立ち、シリコーンコンパウンド8の挟持用の部材7,7近傍が硬化を開始してスキン層6,6が形成される。スキン層6,6は、ガスを閉じ込める機能を有する。スキン層6,6の形成途中または形成後に発泡によって形成される孔(「セル」ともいう。)4は、挟持用の部材7,7の方向、すなわち、シリコーンコンパウンド8の厚さ方向(挟持方向)に細長く形成される(
図5を参照。)。
【0028】
図6は、
図1の断熱シリコーンスポンジの断面の一部の光学顕微鏡写真(6A)および熱源から断熱シリコーンスポンジへと伝わる熱の流れの模式図(6B)を示す。
図6(6A)において、上が切断面側であり、下がスキン層側である。
【0029】
図6(6A)の写真によれば、セルと称する孔4は、スキン層側と切断面側とを結ぶ方向に細長く形成されている様子がわかる。このような細長い孔4を形成すると、切断面に平行な方向に細長い孔を形成している場合と比べて、切断面(有孔面5a)における開口面3は、小さく、かつ切断面内に比較的均等に分散しやすい。この結果、熱源から断熱シリコーンスポンジ1への熱伝達を抑制しやすい。また、断熱シリコーンスポンジ1の厚さ方向に対する加圧とその解除による弾性的な形状回復もしやすくなる。
【0030】
図6(6B)に示すように、断熱シリコーンスポンジ1のカッティングによって形成した有孔面5a側に熱源15を接触させ、有孔面5aに対して断熱シリコーンスポンジ1の厚さ方向反対側のスキン層6に固定部材16を接触させると、熱源15からの熱は、孔4を避けながら固定部材16側に伝わる傾向がある(
図6(6B)の矢印を参照。)。これは、孔4の内部の空気が非常に高い断熱効果を有するからである。有孔面5aには、多くの孔4の開口面3が存在している。すなわち、有孔面5aと熱源15との接触面積は、スキン層6と固定部材16との接触面積に比べて、開口面3の総面積の分だけ小さい。このため、断熱シリコーンスポンジ1は、有孔面5aの存在に起因して、熱源15からの熱を伝えにくくする。
【0031】
一方、固定部材16は、緻密なスキン層6と接触している。このため、固定部材16を有孔面5aに接触させる場合と比べて、固定部材16はスキン層6に固定されやすい。特に、スキン層6がシリコーン硬化体で形成されている場合には、固定部材16とスキン層6との間のずれを防止する効果が大きくなる。
【0032】
図7は、
図1の断熱シリコーンスポンジの各種方向から撮影した写真(7A,7B,7C)を示す。この写真は、
図6と同様、光学顕微鏡で撮影したものである。
図7では、各写真の上に、断熱シリコーンスポンジと人の目を模式的に示して、断熱シリコーンスポンジを見た方向を示している。
【0033】
図7の3種類の写真から、スキン層6が緻密な面を形成していること、および多くの孔4が断熱シリコーンスポンジの厚さ方向に細長い形状を有することがわかる。
【0034】
図8は、断熱シリコーンスポンジの有孔面に対向配置される熱源と、スキン層に対向配置される固定部材とで断熱シリコーンスポンジを挟持した構造を持つユニットを示す。
【0035】
図8に示すユニット20は、有孔面5a側に対向配置(ここでは、接触)される熱源15から固定部材16への熱の伝達を抑制でき、かつ固定部材16への断熱シリコーンスポンジ1の固定を確実にしたものである。熱源15としては、例えば、リチウムイオンバッテリーに代表されるバッテリー内のバッテリーセルを挙げることができる。また、固定部材16としては、熱源15と反対側の別の熱源への断熱を高め、熱源15から別の熱源への延焼を防止できるような断熱性の高い断熱板(例えば、アルミナ等のセラミックスの板やガラスウール製のシート)を例示できる。
【0036】
図9は、断熱シリコーンスポンジの有孔面に対向配置される熱源と、スキン層に対向配置される固定部材とで断熱シリコーンスポンジを挟持し、さらには、スキン層と固定部材との間に粘着層を介在させた構造を持つユニットを示す。
【0037】
図9に示すユニット30は、
図8に示すユニット20と同様に熱源15と固定部材16との間に配置されている。しかし、ユニット30は、ユニット20と唯一異なる点として、スキン層6と固定部材16との間に粘着層35を介在させている。このため、断熱シリコーンスポンジ1を固定部材16に対してより強固に固定できる。粘着層35は、繰り返し着脱可能な粘着性のある層であればその材質を問わない。粘着層35は、例えば、粘着性の高いシリコーンゴムでも良い。粘着層35に代えて、着脱不可の接着層を採用しても良い。熱源15としては、ユニット20と同様、例えば、リチウムイオンバッテリーに代表されるバッテリー内のバッテリーセルを挙げることができる。また、固定部材16としては、ユニット20と同様、断熱性の高い断熱板(例えば、アルミナ等のセラミックスの板やガラスウール製のシート)を例示できる。
【0038】
上記実施形態は、本発明の好適な形態である。本発明の目的から逸脱しない限り、種々変形して実施可能である。
【0039】
例えば、孔4は、断熱シリコーンスポンジ1の厚さ方向に細長く配向している形態に限定されず、断熱シリコーンスポンジ1の面と平行の方向に細長く配向していても良い。また、孔4は、細長い形状ではなく、球形または球形に限りなく近い形状でも良い。
【0040】
ユニット20,30において、熱源15の面積は、有孔面5aの面積より大きく、小さくまたは同一のいずれでも良い。有孔面5aの一部が熱源15によって覆われていなくとも、あるいは熱源15によって完全に覆われていても良い。同様に、ユニット20,30において、固定部材16の面積は、緻密面5bの面積より大きく、小さくまたは同一のいずれでも良い。緻密面5bの一部が固定部材16によって覆われていなくとも、あるいは固定部材16によって完全に覆われていても良い。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係る断熱シリコーンスポンジは、熱源から外部への熱伝達を抑制するのに利用できる。
【符号の説明】
【0042】
1・・・断熱シリコーンスポンジ、2・・・シリコーンスポンジ、3・・・開口面、4・・・孔、5a・・・有孔面、5b・・・緻密面(反対側の面)、6・・・スキン層(例えば、シリコーン硬化体の層)、7・・・挟持用の部材(成形用の部材)、8・・・シリコーンコンパウンド、10・・・シリコーン発泡体、15・・・熱源(例えば、バッテリーセル)、16・・・固定部材(例えば、断熱板)、20,30・・・ユニット、35・・・粘着層。