(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044253
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ふきとり用化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/55 20060101AFI20240326BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240326BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
A61K8/55
A61K8/34
A61Q19/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149670
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】591230619
【氏名又は名称】株式会社ナリス化粧品
(72)【発明者】
【氏名】浅井 健史
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB032
4C083AB312
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC442
4C083AC532
4C083AC542
4C083AC581
4C083AC582
4C083AC901
4C083AC902
4C083AD042
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD282
4C083AD332
4C083BB43
4C083CC04
4C083CC24
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD41
4C083EE10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ふきとり時に肌に負担をかけることなくふきとれ、かつ皮膚刺激を伴わずに老化角質を取り除くことができるふきとり化粧料を提供することを課題とする。
【解決手段】(A)リン酸と直鎖構造を有する高級アルコールとのモノエステル、またはそれらの塩
(B)塩基性化合物
(C)直鎖構造を有する1価の高級アルコール
を含有し、(A)の酸価に対する(B)の中和度が、0.1以上1.0以下であることを特徴とするふきとり用化粧料。
【効果】これにより皮膚に本来の潤い、滑らかさを取り戻し、くすみを改善することが期待できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)リン酸と直鎖構造を有する高級アルコールとのモノエステル、またはそれらの塩
(B)塩基性化合物
(C)直鎖構造を有する1価の高級アルコール
を含有し、(A)の酸価に対する(B)の中和度が、0.1以上~1.0以下であることを特徴とするふきとり用化粧料。
【請求項2】
(B)塩基性化合物が、塩基性アミノ酸および/又は有機塩基である、請求項1に記載のふきとり用化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ふきとり時に肌に負担をかけることなくふきとれ、かつ皮膚刺激を伴わずに老化角質を取り除くことができるふきとり化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の老化において、正常な新陳代謝においては垢となって落屑されるはずの角質層(以後老化角質と称する)が、落屑せず滞留する現象がしばしば見られるようになる。この老化角質は固く乾燥した状態をしており、保湿能も著しく低下しているものである。また老化角質には排泄されるべきメラニン色素も含まれている。それ故、老化角質が落屑せず滞留すると、角質層全体としても固く肥厚した状態となり、皮膚は潤いや滑らかさを失い、更には透明感の低下したくすみのある外観へと変化する。
【0003】
上記のような状況から、老化角質を除去することにより皮膚に本来の潤い、滑らかさを取り戻し、くすみを改善することができることが考えられる。この効果を目的とした化粧料がふきとり用化粧料である。ふきとり用化粧料の使用方法は限定されないが、一般的にコットンなどの化粧用具に含ませて肌をふきとる使用方法をとることが多い。
【0004】
一般的な洗顔料による洗顔は、洗浄成分の働きで、肌に蓄積した皮脂やメイクなど油溶性の汚れを中心に様々な汚れを落とすことを目的としている。この洗浄成分による洗顔の際には、コレステロールや皮脂など、種々の皮膚中成分が除去されることが知られている(非特許文献1)。また、一般的にクレンジングやメイク落としと呼ばれる化粧料は、油性成分であるメイクアップ化粧料を肌から除去する目的で作られていることが知られている。一方、ふきとり用化粧料は一般的な洗浄料およびクレンジングとは異なり、コレステロールや皮脂など油性の汚れを除去する目的はなく、水溶性の汚れ、特に老化角質を取り除く作用を有するものである(非特許文献2)。
【0005】
従来、角質除去効果を有する化粧料として、アルカリ性化粧料(特許文献1)が知られている。アルカリ性化粧料は、水酸化カリウムや炭酸カリウム等の塩基性物質を配合することによって、老化角質に対して水及び水溶性成分の浸透性を高め、老化角質を取り除きやすい状態にする作用がある。しかしながら、アルカリ性の化粧料は、皮膚刺激を生じる場合があり、安全性の懸念があった。
【0006】
また、ふきとり動作時に皮膚を摩擦することによる皮膚刺激も起こり得る課題である。従来は化粧料に用いられる高分子成分として、キサンタンガムなどの天然多糖類、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10―30))クロスポリマーなどの合成系陰イオン性化合物などを配合し、製剤に粘度を付与することで、摩擦による皮膚刺激の抑制が図られてきた。しかし、基本的に高分子成分の配合では、ふきとり化粧料を含ませたコットンのすべりが良くなる反面、コットンの物理的接触によって回収できる老化角質が少なくなってしまう。つまり、高分子成分の配合と老化角質除去効果はトレードオフの関係にあるため、ふきとり動作時の摩擦を低減しながらも、老化角質を取り除きやすくする技術が求められていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】橋本文章, 春山道子, 山下登喜雄, 磯 敏明, 界面活性剤の皮膚への吸着性と洗顔料による選択洗浄性, J.Soc.Cosmet.Chem.Japan.Vol.23,No.2 1989
【非特許文献2】堀辻麻衣,森田美穂,井上明典,北谷典丈,ふきとりケアの有用性評価,J.Soc.Cosmet.Chem.Japan.Vol.53, No.3 2019
【特許文献】
【0008】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ふきとり時に肌に負担をかけることなくふきとれ、かつ皮膚刺激を伴わずに老化角質を取り除くことができるふきとり化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、課題について鋭意研究した結果、(A)リン酸と直鎖構造を有する高級アルコールとのモノエステル、またはそれらの塩、(B)塩基性化合物、(C)直鎖構造を有する1価の高級アルコールを組み合わせ、(A)の酸価に対する(B)の中和度が、0.1以上~1.0以下にすることにより、ふきとり時に肌に負担をかけることなく、老化角質を取り除くことができるふきとり化粧料を得るに至った。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ふきとり時に肌に負担をかけることなく、老化角質を取り除くことができる。これにより皮膚に本来の潤い、滑らかさを取り戻し、くすみを改善することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】人工皮膚の概略図(左:平面図の一部、右:側面図の一部)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明によれば、(A)リン酸と直鎖構造を有する高級アルコールとのモノエステル、またはそれらの塩に対して、(B)塩基性化合物を用い、(A)の酸価に対する(B)の中和度が0.1以上~1.0以下の範囲で中和反応した界面活性剤を形成することで、塩基性成分の皮膚への浸潤を防ぎ、皮膚刺激を抑制しながらも優れた角質除去効果を発揮する。さらに、この界面活性剤に加え、(C)直鎖構造を有する1価の高級アルコールで調製した水中油型乳化粒子がふきとり時の物理的な摩擦を低減する効果を発揮する。
【0014】
本発明に用いる(A)は、リン酸と直鎖構造を有する高級アルコールとのモノエステル、またはそれらの塩である。(A)は、通常の化粧料に用いられるものであれば制限されない。(A)は、モノエステル、またはあらかじめ塩基性化合物で部分中和された塩を用いてもよい。モノエステルの具体例としては、例えば、ラウリルリン酸、リン酸セチルなどが挙げられる。あらかじめ塩基性化合物で部分中和された塩の具体例としては、例えば、ラウリルリン酸ナトリウム、ラウリルリン酸二ナトリウム、ラウリルリン酸カリウム、セチルリン酸カリウム、セチルリン酸ジエタノールアミンなどが挙げられる。(A)中の高級アルコールは、ふきとり時の摩擦の少なさや角質除去効果の観点から直鎖構造が望ましい。高級アルコールの炭素数は特に限定されないが、炭素数12以上が好ましい。市販品としては、リン酸セチルである商品名「Hostaphat CC100(酸価:250~400)」(クラリアント社製)、セチルリン酸カリウムである商品名「Hostaphat CK100(酸価:130~155)」(クラリアント社製)、「AMPHISOL K(酸価:130~155)」(DSM ニュートリション社製)などが挙げられる。
【0015】
本発明に用いられる(A)は、中和度を確認する趣旨であらかじめ酸価測定法にて酸価を測定して用いることができる。あるいは市販品を用いる場合は試験成績書に記載の酸価の値を用いてもよい。酸価測定法は、特に限定されないが、例えば、厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課が発行する医薬部外品原料規格2021にて、試料1g を中和するに要する水酸化カリウム(KOH:56.11)のmg数を測定する方法を用いることができ、数1から算出することができる。本操作法の第1法は下記の通り定められている。
第1法
別に規定するもののほか、各条で規定する試料の量を精密に量り、250mLのフラスコに入れ、エタノール(95)又はエタノール(95)/ジエチルエーテル混液(1:1)あるいはエタノール(95)/ジエチルエーテル混液(2:1)50mLを加え、加温して溶かし、時々振り混ぜながら0.1mol/L水酸化カリウム液で滴定する。(指示薬:フェノールフタレイン試液1mL)ただし、滴定の終点は、液の淡紅色が30秒間持続する点とする。同様の方法で空試験を行って補正する。
【0016】
【0017】
本発明では、あらかじめ酸価測定法にて測定した(A)の酸価に対して、(B)の1g当量を用いて算出する中和度を数2で定義する。数2中、(B)の1g当量とは、塩基の1モル当たりの質量を、塩基の価数で割った数である。例えば、水酸化ナトリウム(NaOH:40.00)の場合、塩基としての価数は1であるので、水酸化ナトリウムの1g当量は40.00となる。
【0018】
【0019】
本発明に用いられる(A)は、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。本発明に用いられる(A)の配合量は特に限定されないが、特にふきとり時の摩擦の少なさや角質除去効果の観点から、含有量は組成物総量に対して0.1~3質量%が好適であり、特に0.3~2質量%がより好適である。
【0020】
本発明に用いる(B)塩基性化合物は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、アルカリ金属の水酸化物、塩基性アミノ酸、有機塩基などが挙げられる。前記アルカリ金属の水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。前記塩基性アミノ酸としては、例えば、リジン、アルギニンなどが挙げられる。前記有機塩基としては、例えば、アンモニウムモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールなどが挙げられる。特に安全性の観点から、塩基性アミノ酸および/又は有機塩基が望ましく、さらに具体的にはアルギニン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールが望ましい。
【0021】
本発明に用いられる(B)は、中和度をもとに数2を変形した数3を用いて、あらかじめ配合量を決定することができる。中和度は、塩基性成分の皮膚への浸潤を防ぎ、皮膚刺激を抑制しながらも優れた角質除去効果を発揮する観点から、0.1以上~1.0以下が好適であり、特に0.3以上~0.8以下がより好適である。この中和度の範囲について、数3から算出される(B)の配合量が望ましい。
【0022】
【0023】
本発明に用いる(B)は、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。2種以上の(A)および(B)を組み合わせる場合は、数2を拡張した数4にて複数の(A)および(B)の情報から中和度を算出することができる。
【0024】
【0025】
数4の具体例を挙げる。(A1)のセチルリン酸カリウムの酸価は143、質量%は0.8%、(A2)のラウリルリン酸カリウムの酸価は125、質量%は0.2%、(B1)のアルギニンの1g当量は174.2、質量%は0.22%、(B2)の2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールの1g当量は89.14、質量%は0.1%とした場合の中和度は数4から0.960と算出できた。
【0026】
【0027】
本発明に用いる(C)直鎖構造を有する1価の高級アルコールの炭素数は特に限定されないが、炭素数16~22の1価の直鎖状飽和アルコールが好ましい。例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールなどが挙げられる。
【0028】
本発明に用いる(C)は、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。本発明に用いられる(C)の配合量は特に限定されないが、水中油型乳化粒子を形成させてふきとり時の物理的な摩擦を低減する効果を発揮するという観点から、含有量は組成物総量に対して0.1~6質量%が好適であり、特に0.5~4質量%がより好適である。
【0029】
本発明のふきとり用化粧料には、上記必須成分以外に、必要に応じて本発明の効果を阻害しない質的、量的範囲内で、水、界面活性剤、多価アルコール、低級アルコール、増粘剤、水溶性高分子、防腐剤、キレート剤、薬効成分、油剤、シリコーン、酸化防止剤、紫外線吸収剤、香料、色素等、通常化粧品に用いられている必須成分以外の成分も配合することができる。
【0030】
本発明のふきとり用化粧料の使用方法は特に限定されないが、例えば化粧用コットンなどの化粧用具に含ませ、肌をふきとる使用方法が挙げられる。そのため、本発明のふきとり用化粧料は、化粧用具に含ませることができる液状であることが好ましい。
【実施例0031】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に説明する。なお、これらは本発明を何ら限定するものではない。配合量は組成物全量に対する質量%である。
【0032】
実施例および比較例について、下記表1に示す処方のふきとり用化粧料を用いて効果試験を行った。
[ふきとり用化粧料の製法]
表中の成分A、C、その他油性成分を80℃で加熱溶解し、同様に80℃で加熱溶解した成分B、その他水性成分と混合し、ホモモキサーで処理した後、室温まで冷却して試料を調製した。尚、表中成分A’、成分C’1は、それぞれ成分A、成分Cに準じて投入した。また、成分C’2は、水性成分と混合して投入した。
【0033】
(ふきとり時の摩擦の少なさ)
[評価方法]
実施例及び比較例で作製した化粧料を用い、表面性測定器(新東科学株式会社製:TYPE-14)を用いて、静摩擦係数(μS)を測定した。指の曲率を模したR50mmの人工皮膚ホルダーに、直径30mmの円状にカットしたふきとり用コットン(ピュアタッチコットン:株式会社ナリス化粧品社製:310g/m2)を挟み、コットンに化粧料1.5mlを滴下した。このホルダーを測定器のアームにセットし、水平荷重として50g重の分銅を置いた。測定器の移動台には下記で述べる人工皮膚をセットした。移動速度3,000mm/minにて、静摩擦係数を測定した。
[評価基準]
静摩擦係数を4段階に分け、評価値とした。なお、この4段階は専門パネラーによる官能評価で明確に差を認知できる評価幅である。
◎:1.3未満(肌に対する摩擦が特に少なく、非常に優れている)
〇:1.3以上~1.4未満(肌に対する摩擦が少なく、優れている)
△:1.4以上~1.5未満(肌に対する摩擦が感じられる)
×:1.5以上(肌に対する摩擦が多い)
【0034】
図1は測定に用いた人工皮膚の概略図である。50mm×90mm×10mmの平板に皮溝皮丘の紋様を有する人工皮膚を、UV硬化性アクリル樹脂を用いて3Dプリンターにより造形した。人工皮膚は、同図左側に示すような紋様を有し、各紋様は、1辺が0.6mmの正方形で、0.15mmの幅の皮溝(断面は底辺がやや狭まったほぼ矩形状である。)及び0.025mmの皮溝深さとなるように造形した。
【0035】
(角質除去効果)
[評価方法]
実施例及び比較例で作製した化粧料を用い、ふきとった際に除去した老化角質の量をタンパク質定量で確認した。化粧水を1mLずつコットンに含ませ、温水で洗浄したヒトの背部にコットンで5cm×14cmの面積を20回一定方向にふきとった。このとき、一定の力でふきとるように行った。ふきとったコットンをチューブに入れ、そこに8Mの尿素 を1.5mL加え、37℃で一晩インキュベートし、タンパク質を抽出した。抽出液をシリンジで搾り出し、試料液を回収して、BCA法にてタンパク質定量を行い、ふきとれたタンパク質量を測定した。96Cell Culture Clusterに回収したサンプル液40μLを加え、試薬A(1%ビシンコニン酸、2%Na2CO3、0.16%酒石酸、0.4%NaOH、0.95%NaHCO3水溶液)と試薬B(4%CuSO4・5H2O水溶液)を50:1の割合で混合し、200μLずつ添加した。37℃で30分インキュベートした後、540nmの吸光度を測定した。同時に、牛血製アルブミン(BSA)を濃度0.4mg/mLから2倍希釈ずつ3段階希釈して検量線を作成した。この検量線からタンパク溶解量を算出した。この方法を用いれば、数値が高いほどふきとれたタンパク質量が多く、老化角質の除去効果が高いと判断出来る。
[評価基準]
タンパク質定量結果を4段階に分け、評価値とした。
◎:0.28mg以上(老化角質除去効果が特に高く、非常に優れている)
〇:0.24mg以上~0.28mg未満(老化角質除去効果が高い)
△:0.20mg以上~0.24mg未満(老化角質除去効果がほとんどない)
×:0.20mg未満(老化角質除去効果がない)
【0036】
(皮膚刺激)
[評価方法]
実施例処方及び比較例処方で調製した化粧水を用い、過去にふきとり用化粧料で皮膚トラブルを経験したことのあるモニター10名に1週間使用してもらい、かゆみや赤みなどの皮膚トラブルの有無についてアンケートを行い、安全性の評価を行った。
[安全性の評価基準]
〇:皮膚トラブルが有ったと回答したモニターが、10名中0名だった。
△:皮膚トラブルが有ったと回答したモニターが、10名中1~2名だった。
×:皮膚トラブルが有ったと回答したモニターが、10名中3名以上だった。
【0037】
【0038】
表1によると、実施例1~5では、(A)の酸価に対する(B)の中和度が0.1以上~1.0以下の範囲で中和反応した界面活性剤と(C)で形成した水中油型乳化粒子が、塩基性成分の皮膚への浸潤を防ぎ、皮膚刺激を抑制しながらも優れた角質除去効果、かつふきとり時の物理的な摩擦を低減する効果を発揮した。実施例6、実施例7では、(A)、(B)および(C)の種類を変えた場合でも同様の効果が得られることを確認した。また、実施例8は(B)を2種類用いた場合、実施例9は(A)を2種類、かつ(B)を2種類用いた場合でも同様の効果が得られることを確認した。
一方、比較例1は、(A)の酸価に対する(B)の中和度が0.1以下であり、角質除去効果が十分なものが得られなかった。比較例2は、(A)の酸価に対する(B)の中和度が1.0以上であることから、塩基性成分が皮膚へ浸潤して皮膚刺激を誘発したと考えられる。比較例3は、(A)成分ではなく、アルキル基をもつ脂肪酸とグルタミン酸からなる(A)成分に類似した構造のアニオン界面活性剤を用いた場合であるが、調製した水中油型乳化粒子が不安定で、調製24時間後には油水が分離した状態となったことから、ふきとり時の物理的な摩擦を低減する効果を示さなかった。比較例4は、酸価が1以下のノニオン界面活性剤を用いた場合である。調製した水中油型乳化粒子の状態は良好であったが、ふきとり時の物理的な摩擦を低減する効果を示さなかった。また、このノニオン界面活性剤は塩基性化合物を中和する官能基がないため、塩基性成分が皮膚刺激を誘発した。比較例5は、(C)成分ではなく、分岐構造を有する1価の高級アルコールを用いた場合であり、比較例3と同様に調製した水中油型乳化粒子が不安定で、ふきとり時の物理的な摩擦を低減する効果を示さなかった。比較例6は、(C)成分ではなく、高分子成分を配合した場合である。ふきとり時の物理的な摩擦を低減する効果を示したが、角質除去効果は阻害してしまうことを確認した。
【0039】
表1の結果から、実施例のふきとり用化粧料は、皮膚刺激を生じることなく、肌への摩擦低減と老化角質の除去効果を両立した組成物が得られた。本発明を用いることで、ふきとり時に肌に負担をかけることなくふきとれ、かつ皮膚刺激を伴わずに老化角質を取り除くことができるふきとり化粧料を提供できる。
【0040】
常法にて、各処方の組成物を作製した。いずれの処方においても本発明の効果を奏することが確認された。
【0041】
(1)ふきとり用ジェル:処方例1
成分名 配合量(%)
リン酸セチル 3
2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール 0.7
ベヘニルアルコール 6
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.05
ポリエチレングリコール(平均分子量:1540) 1
メチルフェニルポリシロキサン 2
1,3-ブチレングリコール 8
防腐剤 適量
精製水 残分
合計 100
中和度0.997
【0042】
(2)ふきとり用化粧水:処方例2
成分名 配合量(%)セチルリン酸カリウム 1
水酸化ナトリウム 0.05
セタノール 0.5
1,3-ブチレングリコール 8
グリセリン 4
トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル 0.2
PEG-50水添ヒマシ油 0.5
PPG-6デシルテトラデセス-30 0.5
炭酸ナトリウム 0.025
炭酸水素ナトリウム 0.05
防腐剤 適量
精製水 残分
合計 100
中和度0.490
【0043】
(3)ふきとり用美容液:処方例3
成分名 配合量(%)
ラウリルリン酸(酸価:400) 0.1
アルギニン 0.05
水酸化カリウム 0.02
ステアリルアルコール 1
1,3-ブチレングリコール 5
ポリソルベート20 1
ヒアルロン酸ナトリウム 0.05
カルボキシビニルポリマー 0.01
エタノール 5
エデト酸二ナトリウム 適量
防腐剤 適量
精製水 残分
合計 100
中和度0.903