(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044254
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】検出装置、モデル生成装置、検出方法および検出プログラム
(51)【国際特許分類】
G06V 10/70 20220101AFI20240326BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240326BHJP
【FI】
G06V10/70
G06T7/00 610
G06T7/00 350B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149672
(22)【出願日】2022-09-21
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 翔
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096AA02
5L096BA03
5L096BA20
5L096DA02
5L096EA37
5L096GA41
5L096HA07
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】実際の印刷物における階調くずれを精度よく検出することができる検出装置、モデル生成装置、検出方法および検出プログラムを提案すること。
【解決手段】本開示に係る一形態の検出装置は、印刷物を撮像した画像データを取得する取得部と、予め定められた彩度別分類基準に基づき、前記画像データにおける検出対象領域が当該彩度別分類基準によって区分けされる群のいずれに属するか分類する分類部と、印刷物の階調くずれを識別する学習モデルであって、前記彩度別分類基準によって区分けされる群ごとに学習された学習モデルを用いて、前記分類された検出対象領域における階調くずれを検出する検出部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷物を撮像した画像データを取得する取得部と、
予め定められた彩度別分類基準に基づき、前記画像データにおける検出対象領域が当該彩度別分類基準によって区分けされる群のいずれに属するか分類する分類部と、
印刷物の階調くずれを識別する学習モデルであって、前記彩度別分類基準によって区分けされる群ごとに学習された学習モデルを用いて、前記分類された検出対象領域における階調くずれを検出する検出部と、
を備えることを特徴とする検出装置。
【請求項2】
前記分類部は、
予め定められた形状に基づく輪郭検出によって前記検出対象領域を特定するとともに、前記検出対象領域に含まれない前記画像データの画素値を所定の基準値に変換する、
ことを特徴とする請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記分類部は、
前記検出対象領域に含まれない前記画像データの画素値を所定の基準値に変換したのちに、前記画像データに含まれる画素における彩度の平均値に基づいて、当該検出対象領域が前記彩度別分類基準によって区分けされる群のいずれに属するか分類する、
ことを特徴とする請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
階調くずれが発生しているか否かを予めラベル付けされた画像データを取得する取得部と、
予め定められた彩度別分類基準に基づき前記画像データを複数の群に分類し、分類された当該画像データを学習データとして、印刷物の階調くずれを検出する学習モデルを当該複数の群ごとに生成する生成部と、
を備えることを特徴とするモデル生成装置。
【請求項5】
コンピュータが、
印刷物を撮像した画像データを取得し、
予め定められた彩度別分類基準に基づき、前記画像データにおける検出対象領域が当該彩度別分類基準によって区分けされる群のいずれに属するか分類し、
印刷物の階調くずれを識別する学習モデルであって、前記彩度別分類基準によって区分けされる群ごとに学習された学習モデルを用いて、前記分類された検出対象領域における階調くずれを検出する、
ことを含むことを特徴とする検出方法。
【請求項6】
コンピュータを、
印刷物を撮像した画像データを取得する取得部と、
予め定められた彩度別分類基準に基づき、前記画像データにおける検出対象領域が当該彩度別分類基準によって区分けされる群のいずれに属するか分類する分類部と、
印刷物の階調くずれを識別する学習モデルであって、前記彩度別分類基準によって区分けされる群ごとに学習された学習モデルを用いて、前記分類された検出対象領域における階調くずれを検出する検出部と、
を備える検出装置として機能させることを特徴とする検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、印刷物の階調くずれを検出するための検出装置、モデル生成装置、検出方法および検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷物では、色階調が段階的に変化する箇所で極端な色の差が発生してしまい縞模様のような表示となる、いわゆる階調くずれ(階調飛び、トーンジャンプ等とも称される)という現象が起こりうる。階調くずれは印刷物の品質の低下につながるため、印刷業者等は、納品前に印刷された用紙を熟練者が目視すること等で検出を試みている。
【0003】
このような階調くずれを防止する技術として、隣接する色の色差から階調崩れを検出する技術が知られている(例えば、特許文献1)。また、色変換特性を用いて色変換された前後の画像を用いて作成された色変換モデルを用いて階調飛びの箇所を特定し、その結果得られた画像データから、さらに色変換モデルを再生成する技術が知られている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-114653号公報
【特許文献2】特開2021-145271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術によっても、階調くずれを高い精度で検出することは困難である。例えば、インクジェットプリンタを用いて印刷を行う場合、印刷物は、印刷に用いられたインクの量や種類に影響を受ける。このため、印刷に用いられる画像データを用いて検出処理を行っても、実際の印刷物において階調くずれが発生しているか否かを正確に検出することは難しい。
【0006】
また、階調くずれ有無の判断は属人的要素が大きく、判定する熟練者の判断によって結果が変わることもあるため、一定の品質を担保することが難しいという課題も存在する。
【0007】
そこで、本開示では、実際の印刷物における階調くずれを精度よく検出することができる検出装置、モデル生成装置、検出方法および検出プログラムを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本開示に係る一形態の検出装置は、印刷物を撮像した画像データを取得する取得部と、予め定められた彩度別分類基準に基づき、前記画像データにおける検出対象領域が当該彩度別分類基準によって区分けされる群のいずれに属するか分類する分類部と、印刷物の階調くずれを識別する学習モデルであって、前記彩度別分類基準によって区分けされる群ごとに学習された学習モデルを用いて、前記分類された検出対象領域における階調くずれを検出する検出部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
実施形態の一態様によれば、実際の印刷物における階調くずれを精度よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る検出システムの概要を示す図である。
【
図2】実施形態に係る検出システムにおける処理の流れを示す概念図である。
【
図3】実施形態に係る検出装置が実行する処理の流れを示す概念図である。
【
図4】実施形態に係るトリミング処理の手順を示すフローチャートである。
【
図5】実施形態に係る分類処理を説明するための図である。
【
図6】実施形態に係る検出装置の構成例を示す図である。
【
図7】実施形態に係る学習データ記憶部の一例を示す図である。
【
図8】実施形態に係る検出結果の一例を示す図である。
【
図9】検出装置の機能を実現するコンピュータの一例を示すハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示の実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態において、同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0012】
(1.実施形態)
(1-1.実施形態に係る検出処理の概要)
図1は、実施形態に係る検出システム1の概要を示す図である。実施形態に係る検出処理は、
図1に示す検出システム1によって実行される。
【0013】
図1に示すように、検出システム1は、撮像装置10と、検出装置100とを含む。撮像装置10は、画像データが印刷された印刷物(例えば印刷済み用紙)を撮像するための装置である。例えば、撮像装置10は、カメラ20を固定可能な枠組みと、印刷物を固定するための留め具とを含む。カメラ20は、印刷物を撮像した場合に、当該印刷物を撮像した画像データを取得し、取得した画像データを検出装置100に送信する機能を有する。
【0014】
検出装置100は、本開示に係る検出装置およびモデル生成装置の一例であり、例えば、PC(Personal Computer)やサーバ、タブレット端末等、任意の情報処理機器により実現される。検出装置100は、印刷物を撮像した画像データをカメラ20から取得し(ステップS1)、取得した画像データに基づいて、印刷物の階調くずれを検出する。
【0015】
上述のように、印刷物の出来は、インクジェットプリンタ等の印刷に用いる機器や、印刷に用いられたインクの量や種類に影響を受ける。このため、印刷に用いられる画像データを用いて検出処理を行っても、実際の印刷物において階調くずれが発生しているか否かを正確に検出することは難しい。
【0016】
そこで、検出装置100は、実施形態に係る検出処理により、上記課題を解決する。すなわち、検出装置100は、印刷に用いる元画像のデータを用いて検出を行うのではなく、実際に印刷が行われたのちの印刷物を撮像した画像データを用いて階調くずれを検出する。さらに後述するように、検出装置100は、予め定められた彩度別分類基準に基づき区分けされた群ごとに学習された学習モデルを用いて、印刷物の階調くずれを検出する。これにより、検出装置100は、実際の印刷物において階調くずれが発生しているか否かを精度よく検出できる。
【0017】
上記処理について、
図2以下を用いて説明する。
図2は、実施形態に係る検出システム1における処理の流れを示す概念図である。
【0018】
検出システム1における撮像環境において、カメラ20は、印刷物を撮像する(ステップS20)。カメラ20は、撮像により得られた画像データを検出装置100に送信する(ステップS21)。
【0019】
検出装置100は、検出装置100のユーザの操作等に従い、GUI(Graphical User Interface)にて、検出対象となる画像データを選択する(ステップS22)。検出装置100は、画像データが選択されると、選択された画像データを検出処理に送る(ステップS23)。
【0020】
検出装置100は、後述する複数の処理を経て、対象の画像データにおいてトーンジャンプが発生しているか否かを検出する(ステップS24)。その後、検出装置100は、トーンジャンプ検出に関する判定結果をGUIに送り(ステップS25)、その結果をGUIで表示する(ステップS26)。
【0021】
続いて、
図3を用いて、実施形態に係る検出処理を流れに沿って説明する。
図3は、実施形態に係る検出装置100が実行する処理の流れを示す概念図である。
【0022】
まず、検出装置100は、検出対象となる画像データ30を取得すると、画像データ30をトリミングモジュール35に入力する。トリミングモジュール35は、画像データのうち、検出の対象となる特定の範囲を切り出す(トリミングする)。また、トリミングモジュール35は、トリミングされた範囲以外の領域について、画素を基準値(例えば白色など)に変換する。これにより、検出装置100は、検出範囲と、その他の領域とを明確に区別することができるので、後段のトーンジャンプ判定の精度を高めることができる。
【0023】
続いて、検出装置100は、トリミングされた範囲の画像データを、彩度分類モジュール40に入力する。彩度分類モジュール40は、予め定められた彩度別分類基準に基づき、トリミングされた範囲の画像が彩度別分類基準によって区分けされる群のいずれに属するかを分類する。なお、実施形態では、彩度とは、HSV色空間モデル(Hue-Saturation-Value model)における彩度(Saturation)を示すパラメータである。一般に、かかる彩度値は、数値で示される値と人間が感じる彩度との相関性が高いことで知られている。
【0024】
例えば、彩度分類モジュール40は、検出領域に含まれる画素の彩度値の平均値に基づいて、複数の群に画像データを分類する。一例として、彩度分類モジュール40は、彩度値が0から100までの数値で表される場合、彩度値の平均値が75を超える画像を第1群に分類する。また、彩度分類モジュール40は、彩度値の平均値が50を超える画像を第2群に分類し、彩度値の平均値が25を超える画像を第3群に分類し、彩度値の平均値が25以下の画像を第4群に分類する。なお、かかる分類手法は例示であり、検出装置100は、任意の基準に基づき検出対象の画像を分類してもよい。
【0025】
分類された画像は、それぞれの彩度分類基準に基づき分類された学習データにより学習された学習モデルである、トーンジャンプ判定モデルに入力される。例えば、第1群に分類された画像(
図3の例では、第1条件を満たした画像)は、最も彩度の高い学習データに基づき学習された、トーンジャンプ判定第1モジュール41に入力される。あるいは、第2群に分類された画像(
図3の例では、第2条件を満たした画像)は、第2群に分類されるべき彩度を有する学習データに基づき学習された、トーンジャンプ判定第2モジュール42に入力される。あるいは、第3群に分類された画像(
図3の例では、第3条件を満たした画像)は、第3群に分類されるべき彩度を有する学習データに基づき学習された、トーンジャンプ判定第3モジュール43に入力される。なお、図示は省略するが、第4群や第5群など、より多くの分類がある場合、検出装置100は、それぞれの分類に対応したトーンジャンプ判定モジュールに画像を入力する。
【0026】
トーンジャンプ判定モジュールは、検出対象の画像の特定の範囲において、トーンジャンプが発生しているか否かを判定する。すなわち、トーンジャンプ判定モジュールは、画像においてトーンジャンプが発生している確度を求める画像識別モデルである。トーンジャンプ判定モジュールは、例えば、トーンジャンプが発生しているとラベル付けされた画像と、トーンジャンプが発生していないとラベル付けされた画像とを学習データとする、教師有り学習により生成される。
【0027】
その後、検出装置100は、トーンジャンプ判定モジュールから返された判定結果に基づき、その結果をGUIに出力する。
【0028】
続いて、
図4を用いて、実施形態に係るトリミング処理の詳細を説明する。
図4は、実施形態に係るトリミング処理の手順を示すフローチャートである。
図4で示す例では、検出装置100は、トリミング処理によって、元の画像データ50から、トーンジャンプ判定の対象となる範囲(この例では円形状)と、範囲外を基準値に変換した画像データ51を得る。
【0029】
まず、検出装置100は、対象となる画像データを取得し、そのデータを読み込む(ステップS30)。続けて、検出装置100は、画像データの画素数を取得したり、画素をグレースケールに変換したり、ノイズ除去をしたりする等の前処理を行う(ステップS31)。続けて、検出装置100は、検出対象とする印字部(実施形態の例では円形)を粗くトリムするため、ハフ変換(Hough Transformation)を行う(ステップS32)。
【0030】
検出装置100は、ハフ変換に基づき1つの円(すなわち検出対象)を検出したか否かを判定する(ステップS33)。1つの円が検出できない場合(ステップS33;No)、検出装置100は、ハフ変換のパラメータを調整する等の処理を行う。
【0031】
一方、1つの円が検出できた場合(ステップS33;Yes)、検出装置100は、検出対象をより正確に抽出するための前処理を行う(ステップS34)。例えば、検出装置100は、検出対象とする形状(検出円)をマスク処理により抽出するためのマスクを作成したり、マスクと合成された元画像の画素のグレースケール化等を行う。そして、検出装置100は、輝度値に基づき、検出対象とする円の輪郭を検出する(ステップS35)。
【0032】
検出装置100は、輪郭検出に基づき1つの円(すなわち検出対象)を検出したか否かを判定する(ステップS36)。1つの円が検出できない場合(ステップS36;No)、検出装置100は、データの前処理におけるパラメータを調整する等の処理を行う。
【0033】
一方、1つの円が検出できた場合(ステップS36;Yes)、検出装置100は、検出された円を検出対象として、楕円フィッティングを行う(ステップS37)。その後、検出装置100は、楕円サイズのマスクを作成し(ステップS38)、元画像とマスクを合成する(ステップS39)。さらに、検出装置100は、中心を基準として正方形トリミングを行い(ステップS40)、最終的な画像データ51を出力する(ステップS41)。
【0034】
なお、上述したトリミング処理は一例であり、検出装置100は、任意の手法を採用して、検出対象となる範囲をトリミングしてもよい。上記のようなトリミング処理により、検出装置100は、検出範囲とその他の領域とを明確に区別した画像データ51を後段に送ることができるので、後段の処理の精度を向上させることができる。
【0035】
続いて、
図5を用いて、彩度分類処理について説明する。
図5は、実施形態に係る分類処理を説明するための図である。
【0036】
上述のように、検出装置100は、彩度分類ごとに学習モデルを生成しておき、検出対象の彩度に応じて、いずれかの学習モデルに検出対象の画像を入力することで、トーンジャンプの有無を判定する。
【0037】
彩度の分類は、一例として、検出対象となる範囲に含まれる画素の彩度値の平均値に基づき実行される。
図5には、検出対象としてトリミングされた画像データのうち、最も彩度値の高い画像データ55、次に彩度値の高い画像データ56、次に彩度値の高い画像データ57、最も彩度値の低い画像データ58を示す。これら画像データは、それぞれ、彩度分類モジュールにおいて分類され、それぞれが異なる学習モデル(トーンジャンプ判定モジュール)に入力される。
【0038】
なお、彩度は、
図5に示すHSV色空間モデル60において、色空間の外周に近付くほど高い値をとるパラメータである。なお、実施形態では、HSV色空間モデル60の彩度を分類の基準値として採用しているが、検出装置100は、その他のパラメータを基準値として採用することも可能である。
【0039】
(1-2.実施形態に係る検出装置の構成)
次に、実施形態に係る検出処理を実行する検出装置100の構成について説明する。
図6は、実施形態に係る検出装置100の構成例を示す図である。
【0040】
図6に示すように、検出装置100は、通信部110と、記憶部120と、制御部130とを有する。なお、検出装置100は、検出装置100を管理する管理者等から各種操作を受け付ける入力部(例えば、タッチパネルやキーボードやマウス等)や、画像データや判定結果を表示するための表示部(例えば、液晶ディスプレイ等)を有してもよい。
【0041】
通信部110は、例えば、NIC(Network Interface Card)やネットワークインタフェースコントローラ等によって実現される。通信部110は、ネットワークN(例えばインターネット)と有線または無線で接続され、ネットワークNを介して、カメラ20等の外部機器との間で情報の送受信を行う。例えば、通信部110は、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth、SIM(Subscriber Identity Module)、LPWA(Low Power Wide Area)等の任意の通信規格もしくは通信技術を用いて、情報の送受信を行ってもよい。
【0042】
記憶部120は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。記憶部120は、学習データ記憶部121と、画像データ記憶部122とを有する。
【0043】
図7に、学習データ記憶部121が記憶する情報の一例を示す。
図7は、実施形態に係る学習データ記憶部121の一例を示す図である。
図7に示した例では、学習データ記憶部121は、「学習データID」、「画像データ」、「彩度」、「トーンジャンプ判定」といった各項目を有する。なお、
図7に示す例では、格納される情報を「A01」のように概念的に示す場合があるが、実際には、後述する各情報が記憶部120に記憶されるものとする。
【0044】
「学習データID」は、学習データを識別する識別情報を示す。「画像データ」は、画素値等、画像を構成する各種情報を示す。「彩度」は、画像データにおける彩度を示す値(例えば、画像全体の彩度の平均値)を示す。「トーンジャンプ判定」は、正解データとしてラベル付けされたトーンジャンプ判定の結果を示す。トーンジャンプ判定は、例えば、予め画像を閲覧した人間によって人為的に付けられた正解データ(教師データ)である。
【0045】
図6に戻り、説明を続ける。制御部130は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等によって、検出装置100内部に記憶されたプログラムがRAM等を作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部130は、コントローラ(controller)であり、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現される。
【0046】
図6に示すように、制御部130は、取得部131と、生成部132と、分類部133と、検出部134と、表示制御部135とを含む。
【0047】
取得部131は、各種情報を取得する。例えば、取得部131は、モデル生成段階においては、トーンジャンプ判定モジュールに対応する学習モデルを生成するための学習データを取得する。例えば、取得部131は、階調くずれが発生しているか否かを予めラベル付けされた画像データを取得する。また、取得部131は、トーンジャンプ判定段階においては、カメラ20から、印刷物を撮像した画像データを取得する。取得部131は、取得したデータを記憶部120に記憶する。
【0048】
生成部132は、予め定められた彩度別分類基準に基づき画像データを複数の群に分類し、分類された画像データを学習データとして、印刷物の階調くずれを検出する学習モデルを複数の群ごとに生成する。
【0049】
例えば、生成部132は、HSV色空間モデルの彩度を用いて、画像データに含まれる画素の彩度値の平均値を算出し、平均値に基づいて画像データを複数の群に分類する。そして、生成部132は、既知の学習ライブラリを用いて、例えば教師有りデータを用いた2クラス分類を実行するための学習モデルを生成する。具体的には、生成部132は、モデルに入力された画像データにおいてトーンジャンプが発生しているか否かの2値を判定するモデルを生成する。なお、画像データに基づいてトーンジャンプ判定を行うことが可能なモデルであれば、学習モデルの学習手法は、既知のいずれの技術が用いられてもよい。
【0050】
分類部133は、トーンジャンプ判定段階において、予め定められた彩度別分類基準に基づき、画像データにおける検出対象領域が彩度別分類基準によって区分けされる群のいずれに属するか分類する。分類部133は、例えば
図5に示したように、画像データの画素値の彩度値に基づいて、画像データを複数の群に分類する。
【0051】
なお、分類部133は、予め定められた形状に基づく輪郭検出によって検出対象領域を特定するとともに、検出対象領域に含まれない画像データの画素値を所定の基準値(例えば、明度を最大値とした白色)に変換してもよい。かかる処理は、
図4に示したトリミング処理に対応する。さらに、分類部133は、検出対象領域に含まれない画像データの画素値を所定の基準値に変換したのちに、画像データに含まれる画素における彩度の平均値に基づいて、検出対象領域が彩度別分類基準によって区分けされる群のいずれに属するか分類する。分類部133は、処理対象となる特定範囲の彩度に基づいて分類を行うことで、後段の判定処理の精度をより向上させることができる。
【0052】
検出部134は、印刷物の階調くずれを識別する学習モデルであって、彩度別分類基準によって区分けされる群ごとに学習された学習モデルを用いて、分類された検出対象領域における階調くずれを検出する。すなわち、検出部134は、単一の学習モデルを用いるのではなく、彩度ごとに分類された学習データを用いて生成された複数の学習モデルを用いて、検出処理を行う。これにより、検出部134は、トーンジャンプの判定精度を向上させる。
【0053】
かかる彩度ごとに分類したのちの判定処理に関して、実験結果を例示して説明する。
図8は、実施形態に係る検出結果の一例を示す図である。
【0054】
図8に示すデータテーブル140は、実施形態に係る検出処理における、トーンジャンプ判定モジュールに入力されるまでの間の工程と、トーンジャンプ検出結果との関係性を示すものである。すなわち、データテーブル140は、トリミング工程および彩度分類工程を経て実行されるトーンジャンプ検出において、これらの工程の有無により検出結果にどのような影響がでるかを検証した結果である。
【0055】
なお、
図8に示した検証において、使用した印刷物(画像データ)は、色相が網羅されており、彩度値がグラデーションとなっているものを使用している。学習データにおいては、グラデーションイメージに一定の黒色(K)を追加するなど、画像データを増加させる処理を行っている。検出装置100は、これら画像データのうち、各彩度分類群につき、トーンジャンプ有無それぞれ50000枚を用いて、各彩度分類における学習モデルを生成した。また、検証の際には、検出装置100は、学習には使用していない画像データを、各彩度分類群につき、トーンジャンプ有無それぞれ250枚利用した。なお、
図8に示した検証では、彩度分類の群を5つとした。
【0056】
学習モデルにおける2クラス分類の検証精度は、混同行列を用いて評価を実施した。すなわち、検証では、真陽性(TP)、真陰性(TN)、偽陰性(FN)、偽陽性(FP)のそれぞれの結果に基づき、正解率を(TP+TN)/(TP+TN+FN+FP)で求めた。
【0057】
図8に示した例において、第1の態様は、トリミング工程と彩度分類工程とのいずれをも実施しトーンジャンプ検出を行ったものであり、その正解率は99.6%である。第2の態様は、トリミング工程と彩度分類工程とのいずれをも実施せずにトーンジャンプ検出を行ったものであり、その正解率は43.4%である。第3の態様は、トリミング工程のみを実施し、彩度分類工程を実施せずにトーンジャンプ検出を行ったものであり、その正解率は57.0%である。第4の態様は、トリミング工程を実施せずに彩度分類工程のみを実施してトーンジャンプ検出を行ったものであり、その正解率は91.8%である。以上のように、検証対象となるデータを彩度分類し、分類した群に対応した学習モデルを利用することにより、検出装置100は、非常に高い正解率でトーンジャンプを検出することができる。
【0058】
図6に戻り、説明を続ける。表示制御部135は、検出装置100におけるGUIを制御する。すなわち、表示制御部135は、カメラ20から取得した画像データを表示し、ユーザの選択等に基づき、検出対象とする画像データを選択することができるGUIを提供する。また、表示制御部135は、トーンジャンプの判定結果が出力された際には、かかる判定結果をGUIに表示する。
【0059】
(1-3.実施形態の変形例)
上記実施形態では、トリミング工程において円形状で検出範囲を特定する例を示した。しかし、検出範囲の形状は任意であり、円や楕円に限るものではない。
【0060】
また、
図8で示した検証結果は学習データの枚数等を限定して実施した検証の一例に過ぎず、学習データの量や品質等に応じて、検出装置100は、より精度の高い学習モデルを生成することが可能である。
【0061】
また、上記実施形態では、検出システム1が検出装置100やカメラ20を備える例を示したが、これら装置構成は任意に変更可能である。例えば、検出装置100は、カメラ20を自装置内に備えた情報処理装置(スマートフォン等)の態様で実現されてもよい。
【0062】
また、検出装置100は、PCやサーバ等の態様でなく、クラウドサーバ等、ネットワーク上に設置されるアプリケーションのような態様で実現されてもよい。
【0063】
(2.その他の実施形態)
上述した実施形態に係る処理は、上記実施形態以外にも種々の異なる形態にて実施されてよい。
【0064】
例えば、上記実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。例えば、各図に示した各種情報は、図示した情報に限られない。
【0065】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0066】
また、上述してきた実施形態および変形例は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0067】
また、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、他の効果があってもよい。
【0068】
(3.本開示に係る検出装置の効果)
上述してきたように、本開示に係る検出装置(実施形態では検出装置100)は、取得部(実施形態では取得部131)と、分類部(実施形態では分類部133)と、検出部(実施形態では検出部134)とを含む。取得部は、印刷物を撮像した画像データを取得する。分類部は、予め定められた彩度別分類基準に基づき、画像データにおける検出対象領域が当該彩度別分類基準によって区分けされる群のいずれに属するか分類する。検出部は、印刷物の階調くずれを識別する学習モデルであって、彩度別分類基準によって区分けされる群ごとに学習された学習モデルを用いて、分類された検出対象領域における階調くずれを検出する。
【0069】
このように、本開示に係る検出装置は、印刷前の画像データではなく、実際に印刷がなされた印刷物を撮像した画像データに対して階調くずれを検出する。また、検出装置は、印刷物を彩度別分類基準によって区分けして処理を行うことにより、検出精度を向上させる。これにより、検出装置は、実際の印刷物における階調くずれを精度よく検出することができる。
【0070】
また、分類部は、予め定められた形状に基づく輪郭検出によって検出対象領域を特定するとともに、検出対象領域に含まれない画像データの画素値を所定の基準値に変換する。
【0071】
このように、検出装置は、予めトリミング処理を行うことにより、検出範囲を特定したうえで階調くずれの検出を行う。これにより、検出装置は、検出精度を向上させることができる。
【0072】
また、分類部は、検出対象領域に含まれない画像データの画素値を所定の基準値に変換したのちに、画像データに含まれる画素における彩度の平均値に基づいて、当該検出対象領域が彩度別分類基準によって区分けされる群のいずれに属するか分類する。
【0073】
このように、検出装置は、トリミングした周囲の画素値を白色等の基準値に変換した上で、検出範囲を彩度分類する。これにより、検出装置は、検出精度をより向上させることができる。
【0074】
また、本開示に係るモデル生成装置(実施形態では検出装置100)は、取得部と、生成部(実施形態では生成部132)とを備える。取得部は、階調くずれが発生しているか否かを予めラベル付けされた画像データを取得する。生成部は、予め定められた彩度別分類基準に基づき画像データを複数の群に分類し、分類された当該画像データを学習データとして、印刷物の階調くずれを検出する学習モデルを当該複数の群ごとに生成する。
【0075】
このように、モデル生成装置は、彩度別分類基準に基づき画像データを複数の群に分類した学習データを用いて、階調くずれを検出する学習モデルを群ごとに生成する。これにより、モデル生成装置は、検出対象に対応した複数の学習モデルを生成することにより、後段の検出処理において、階調くずれの検出精度を向上させることができる。
【0076】
(4.ハードウェア構成)
上述してきた実施形態に係る検出装置100等の情報機器は、例えば
図9に示すような構成のコンピュータ1000によって実現される。以下、実施形態に係る検出装置100を例に挙げて説明する。
図9は、検出装置100の機能を実現するコンピュータ1000の一例を示すハードウェア構成図である。コンピュータ1000は、CPU1100、RAM1200、ROM(Read Only Memory)1300、HDD(Hard Disk Drive)1400、通信インターフェイス1500、および入出力インターフェイス1600を有する。コンピュータ1000の各部は、バス1050によって接続される。
【0077】
CPU1100は、ROM1300またはHDD1400に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。例えば、CPU1100は、ROM1300またはHDD1400に格納されたプログラムをRAM1200に展開し、各種プログラムに対応した処理を実行する。
【0078】
ROM1300は、コンピュータ1000の起動時にCPU1100によって実行されるBIOS(Basic Input Output System)等のブートプログラムや、コンピュータ1000のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。
【0079】
HDD1400は、CPU1100によって実行されるプログラム、および、かかるプログラムによって使用されるデータ等を非一時的に記録する、コンピュータが読み取り可能な記録媒体である。具体的には、HDD1400は、プログラムデータ1450の一例である本開示に係る検出処理を実行するプログラムを記録する記録媒体である。
【0080】
通信インターフェイス1500は、コンピュータ1000が外部ネットワーク1550(例えばインターネット)と接続するためのインターフェイスである。例えば、CPU1100は、通信インターフェイス1500を介して、他の機器からデータを受信したり、CPU1100が生成したデータを他の機器へ送信したりする。
【0081】
入出力インターフェイス1600は、入出力デバイス1650とコンピュータ1000とを接続するためのインターフェイスである。例えば、CPU1100は、入出力インターフェイス1600を介して、キーボードやマウス等の入力デバイスからデータを受信する。また、CPU1100は、入出力インターフェイス1600を介して、ディスプレイやスピーカーやプリンタ等の出力デバイスにデータを送信する。また、入出力インターフェイス1600は、所定の記録媒体(メディア)に記録されたプログラム等を読み取るメディアインターフェイスとして機能してもよい。メディアとは、例えばDVD(Digital Versatile Disc)、PD(Phase change rewritable Disk)等の光学記録媒体、MO(Magneto-Optical disk)等の光磁気記録媒体、テープ媒体、磁気記録媒体、または半導体メモリ等である。
【0082】
例えば、コンピュータ1000が実施形態に係る検出装置100として機能する場合、コンピュータ1000のCPU1100は、RAM1200上にロードされた検出プログラムを実行することにより、制御部130等の機能を実現する。また、HDD1400には、本開示に係る検出処理を実行するプログラムや、記憶部120内のデータが格納される。なお、CPU1100は、プログラムデータ1450をHDD1400から読み取って実行するが、他の例として、外部ネットワーク1550を介して、他の装置からこれらのプログラムを取得してもよい。
【0083】
以上、本願の実施形態を図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【符号の説明】
【0084】
10 撮像装置
20 カメラ
100 検出装置
110 通信部
120 記憶部
121 学習データ記憶部
122 画像データ記憶部
130 制御部
131 取得部
132 生成部
133 分類部
134 検出部
135 表示制御部