(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044256
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ヒートシンク、電子機器および電力変換器
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240326BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H05K7/20 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149676
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099933
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 敏
(74)【代理人】
【識別番号】100124028
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 公雄
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野 直美
(72)【発明者】
【氏名】加悦 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】梅原 猛
(72)【発明者】
【氏名】鵜殿 直嗣
(72)【発明者】
【氏名】初川 聡
【テーマコード(参考)】
5E322
5H770
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322BC05
5E322EA03
5E322EA05
5H770AA21
5H770PA22
5H770PA24
5H770PA42
5H770QA01
5H770QA02
5H770QA08
5H770QA27
5H770QA37
(57)【要約】
【課題】筐体内部の電子部品を効率的に冷却でき、筐体内に水が浸入した場合にも電子部品の損傷を防止できるヒートシンク、電子機器および電力変換器を提供する。
【解決手段】電子機器は、筐体と、放熱部が筐体の外部に位置し、部品面が筐体内に位置するように筐体に取付けられたヒートシンクと、部品面に取付けられる電子部品とを含み、ヒートシンクおよび筐体の接続部は、防水処理がなされ、ヒートシンクは、部品面の第1の辺が鉛直線の上方に位置し、第1の辺に対向する部品面の第2の辺が鉛直線の下方に位置するように縦置きに配置され、部品面において、電子部品が取付けられる部品配置領域の上側に、部品配置領域への水の侵入を抑制する抑制部が形成されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
放熱部が前記筐体の外部に位置し、部品面が前記筐体内に位置するように前記筐体に取付けられたヒートシンクと、
前記部品面に取付けられる電子部品とを含み、
前記ヒートシンクおよび前記筐体の接続部は、防水処理がなされ、
前記ヒートシンクは、前記部品面の第1の辺が鉛直線の上方に位置し、前記第1の辺に対向する前記部品面の第2の辺が前記鉛直線の下方に位置するように縦置きに配置され、
前記部品面において、前記電子部品が取付けられる部品配置領域の上側に、前記部品配置領域への水の侵入を抑制する抑制部が形成されている、電子機器。
【請求項2】
前記抑制部は、鉛直方向に段差を有する、請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記段差は、前記部品面に形成される溝を構成する、請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記溝を画定する周縁部のうちの上側部分には、前記部品面に対して鈍角を成す面が形成されている、請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記抑制部は、前記部品配置領域の外側において、鉛直方向に延伸する鉛直部分を含む、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項6】
前記部品面には、前記抑制部が複数形成され、
前記鉛直部分は、隣接する前記抑制部により共有される、請求項5に記載の電子機器。
【請求項7】
前記抑制部は、前記部品面から突出した凸部を含む、請求項1に記載の電子機器。
【請求項8】
前記凸部は、前記部品面に形成された溝から突出するように前記溝内に配置された撥水性部材を含む、請求項7に記載の電子機器。
【請求項9】
前記抑制部は、鉛直方向の高さが、
前記抑制部の第1の端部から第2の端部まで単調増加もしくは単調減少する形状、または、
前記第1の端部から前記第1の端部および前記第2の端部の間に位置する特定の点まで単調増加し、前記特定の点から前記第2の端部まで単調減少する形状を有する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項10】
電力変換を行う電子部品群と、
回路基板と、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電子機器とを含み、
前記電子部品群および前記回路基板は、前記電子機器の前記筐体内に位置し、
前記電子部品群は、前記ヒートシンクの前記部品面に取付けられた前記電子部品を含み、
前記ヒートシンクの前記部品面に取付けられた前記電子部品は、前記回路基板に搭載されている、電力変換器。
【請求項11】
放熱部と、
電子部品が取付けられる部品面とを含み、
前記部品面には、前記電子部品が取付けられる部品配置領域の外側に、前記部品配置領域への水の侵入を抑制する抑制部が形成されている、ヒートシンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヒートシンク、電子機器および電力変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電システム等の発電電力を変換して負荷等に供給するパワーコンディショナは、屋外に設置され得る。屋外設置型のパワーコンディショナは防水性能を必要とするため、筐体には密閉型または略密閉型の構造が採用される。また、パワーコンディショナ等の電力変換装置においては、大電力が流されることにより発熱する半導体素子を冷却するために、ヒートシンクが採用される。
【0003】
下記特許文献1には、発熱機器を収納する密閉筐体における結露対策として、筐体内部に吸水材(吸湿材でも可能)を設けることが開示されている。下記特許文献2には、屋外に設置される壁掛け式の電力調整器が開示されている。この電力調整器は内部に、垂直に立ててヒートシンクを収容している。ヒートシンクには半導体が設置され、半導体の発熱はヒートシンクにより放熱される。下記特許文献3には、ある程度までの水の侵入によっては電気回路部品が故障することがない、車載バッテリを充電するための設置型電力変換装置が開示されている。この電力変換装置は、筐体の内部に、垂直に立ててヒートシンクを収容している。ヒートシンクは、基板の部品搭載面の裏側の放熱面に設けられている。筐体背面の上方にファンを設け、下方に設けられた吸気口から吸入した空気の流れにより、ヒートシンクは空冷される。下記特許文献4には、複数の放熱体の結合部における防水性能の低下を抑制しながらコストを低減できるヒートシンクおよびそれを用いたパワーコンディショナが開示されている。ヒートシンクは、第1の放熱体の蟻ほぞ状の凸部と、第2の放熱体の蟻溝状の凹部とが嵌合して一体に形成される。ヒートシンクは、発熱素子に取付けられてパワーコンディショナの筐体内部に収容され、ヒートシンクの下方に設けたファンにより筐体内に吸入される外気により冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-198676号公報
【特許文献2】特開2013-110911号公報
【特許文献3】特開2020-36456号公報
【特許文献4】国際公開第2014/013573号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された密閉型の筐体、および、特許文献2に開示された略密閉型の筐体においてはヒートシンクを筐体内部に配置すると内部に熱がこもり冷却が困難である問題がある。特許文献3および特許文献4のように、ファンを設け、筐体内に外気を取込み、ヒートシンクを冷却することが必要になるが、雨水等の侵入の防止が難しい問題がある。
【0006】
筐体にヒートシンクを取付け、筐体内部に半導体素子を取付け、フィン等の放熱部を筐体外側に配置できれば、ヒートシンクの冷却性能を確保できる。ヒートシンクと筐体との間はコーキング材等により防水性能を確保する。しかし、コーキング材は製造時に品質維持が難しく、経年劣化等により使用中にコーキング材が剥がれることにより筐体内に雨水が侵入することがある。また、コーキング材の品質確保には検査装置等の費用および作業工数が多くかかり高額となる。また、コーキングを二重にする場合には、それに応じたスペースが必要となり、筐体が大型化してしまい、コスト増加の原因となる。
【0007】
したがって、本開示は、筐体内部の電子部品を効率的に冷却でき、筐体内に水が侵入した場合にも電子部品の損傷を防止できるヒートシンク、電子機器および電力変換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のある局面に係る電子機器は、筐体と、放熱部が筐体の外部に位置し、部品面が筐体内に位置するように筐体に取付けられたヒートシンクと、部品面に取付けられる電子部品とを含み、ヒートシンクおよび筐体の接続部は、防水処理がなされ、ヒートシンクは、部品面の第1の辺が鉛直線の上方に位置し、第1の辺に対向する部品面の第2の辺が鉛直線の下方に位置するように縦置きに配置され、部品面において、電子部品が取付けられる部品配置領域の上側に、部品配置領域への水の侵入を抑制する抑制部が形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、筐体内部の電子部品を効率的に冷却でき、筐体内に水が侵入した場合にも電子部品の損傷を防止できるヒートシンク、電子機器および電力変換器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係る電力変換器を前面から見た外観を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2に示した電力変換器のIII-III断面を示す鉛直断面図である。
【
図4】
図4は、
図2に示した電力変換器のIV-IV断面を示す鉛直断面図である。
【
図5】
図5は、
図3に示した楕円内を拡大して示す鉛直断面図である。
【
図6】
図6は、
図2に示した電力変換器のVI-VI断面を示す鉛直断面図である。
【
図7】
図7は、ヒートシンクに形成された溝を示す鉛直断面図である。
【
図8】
図8は、筐体内部に水が侵入した場合における水の流れを示す鉛直断面図である。
【
図9】
図9は、第1変形例に係るヒートシンクを示す正面図である。
【
図12】
図12は、第2変形例に係るヒートシンクを示す正面図である。
【
図13】
図13は、第3変形例に係るヒートシンクを示す正面図である。
【
図14】
図14は、傾斜面を有する溝を示す鉛直断面図である。
【
図15】
図15は、ヒートシンクに配置された凸部を示す鉛直断面図である。
【
図16】
図16は、ヒートシンクに形成された段差を示す鉛直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施の形態の内容を列記して説明する。以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0012】
(1)本開示の第1の局面に係る電子機器は、筐体と、放熱部が筐体の外部に位置し、部品面が筐体内に位置するように筐体に取付けられたヒートシンクと、部品面に取付けられる電子部品とを含み、ヒートシンクおよび筐体の接続部は、防水処理がなされ、ヒートシンクは、部品面の第1の辺が鉛直線の上方に位置し、第1の辺に対向する部品面の第2の辺が鉛直線の下方に位置するように縦置きに配置され、部品面において、電子部品が取付けられる部品配置領域の上側に、部品配置領域への水の侵入を抑制する抑制部が形成されている。これにより、筐体内部の電子部品を効率的に冷却でき、筐体内に水が侵入した場合にも電子部品の損傷(例えば、短絡および発火事故)を防止できる。
【0013】
(2)上記(1)において、抑制部は、鉛直方向に段差を有するにことができる。これにより、筐体内に侵入した水を段差に沿って移動させ、電子部品が配置されていない部分に流すことができ、電子部品が水により損傷されることを防止できる。
【0014】
(3)上記(2)において、段差は、部品面に形成される溝を構成してもよい。これにより、比較的多くの水が筐体内に侵入しても、侵入した水を溝内において移動させ、電子部品が配置されていない部分に流すことができ、電子部品が水により損傷されることを防止できる。
【0015】
(4)上記(3)において、溝を画定する周縁部のうちの上側部分には、部品面に対して鈍角を成す面が形成されていてもよい。これにより、筐体内に侵入した水を容易に溝に入り込ませ、電子部品が配置されていない部分に流すことができ、電子部品が水により損傷されることを防止できる。
【0016】
(5)上記(1)から(4)のいずれか1つにおいて、抑制部は、部品配置領域の外側において、鉛直方向に延伸する鉛直部分を含んでいてもよい。これにより、筐体内に侵入した水が、電子部品が配置されていない部分を確実に流れるようにでき、電子部品が水により損傷されることを防止できる。
【0017】
(6)上記(5)において、部品面には、抑制部が複数形成され、鉛直部分は、隣接する抑制部により共有されていてもよい。これにより、ヒートシンクの部品面に抑制部を形成する作業量を軽減できる。
【0018】
(7)上記(1)において、抑制部は、部品面から突出した凸部を含んでいてもよい。これにより、筐体内に侵入した水を凸部に沿って移動させ、電子部品が配置されていない部分に流すことができ、電子部品が水により損傷されることを防止できる。
【0019】
(8)上記(7)において、凸部は、部品面に形成された溝から突出するように溝内に配置された撥水性部材を含んでいてもよい。これにより、ヒートシンクの部品面に凸部を容易に形成できる。
【0020】
(9)上記(1)から(5)、(7)および(8)のいずれか1つにおいて、抑制部は、鉛直方向の高さが、抑制部の第1の端部から第2の端部まで単調増加もしくは単調減少する形状、または、第1の端部から第1の端部および第2の端部の間に位置する特定の点まで単調増加し、特定の点から第2の端部まで単調減少する形状を有していてもよい。これにより、筐体内に侵入した水を抑制部に沿って移動させ、電子部品が配置されていない部分に流すことができ、電子部品が水により損傷されることを防止できる。
【0021】
(10)本開示の第2の局面に係る電力変換器は、電力変換を行う電子部品群と、回路基板と、上記(1)から(9)のいずれか1つの電子機器とを含み、電子部品群および回路基板は、電子機器の筐体内に位置し、電子部品群は、ヒートシンクの部品面に取付けられた電子部品を含み、ヒートシンクの部品面に取付けられた電子部品は、回路基板に搭載されていてもよい。これにより、筐体内部の電子部品を効率的に冷却でき、筐体内に水が侵入した場合にも電子部品の損傷を防止できる。
【0022】
(11)本開示の第3の局面に係るヒートシンクは、放熱部と、電子部品が取付けられる部品面とを含み、部品面には、電子部品が取付けられる部品配置領域の外側に、部品配置領域への水の侵入を抑制する抑制部が形成されている。これにより、ヒートシンクが、放熱部が電子機器の筐体の外部に位置し、部品面が筐体内に位置し、部品面の抑制部が形成された部分が鉛直線の上方に位置するように縦置きに配置された場合、筐体内部の電子部品を効率的に冷却でき、筐体内に水が侵入した場合にも電子部品の損傷を防止できる。
【0023】
[本開示の実施形態の詳細]
以下の実施の形態においては、同一の部品には同一の参照番号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0024】
(全体構成)
図1を参照して、本開示の実施形態に係る電力変換器100は、筐体102およびヒートシンク104を含む。電力変換器100は、例えば、PV(Photovoltaic)パネルと共に太陽光発電システムを構成する。電力変換器100は、例えば住宅の屋根に設置されたPVパネルにより発電された直流電力を交流電力に変換して、住宅内の家電製品等の電気機器に供給する。電力変換器100は、例えば住宅の外壁(図示せず)に、ヒートシンク104が当該外壁に対向するように、取付部材(図示せず)により固定設置される。
【0025】
図1の左下には直交軸を示している(
図2以降に関しても同様)。X軸は、電力変換器100の背面から前面に向かう方向を正方向とする軸である。同様に、Y軸およびZ軸はそれぞれ、電力変換器100の左側面から右側面に向かう方向、および、底面から天面に向かう方向を正方向とする軸である。「左」および「右」とは、電力変換器100を正面から見た場合の表記である。電力変換器100が住宅の壁面に設置される場合、通常、Z軸が鉛直線に沿い、上方(即ち重力方向の逆方向)がZ軸の正方向になるように設置される。
【0026】
図2を参照して筐体102は、前面パネル110、背面パネル112、天面パネル114、底面パネル116、左側面パネル118および右側面パネル120を含み、略直方体に形成されている。前面パネル110、背面パネル112、天面パネル114、底面パネル116、左側面パネル118および右側面パネル120は、ネジ等により相互に固定されている。相互の接合部の隙間には防水処理(例えば、コーキング材等による封止)が施されている。背面パネル112、天面パネル114、底面パネル116、左側面パネル118および右側面パネル120は溶接等により接合されていてもよい。前面パネル110が、背面パネル112、天面パネル114、底面パネル116、左側面パネル118および右側面パネル120に対して、ネジ等により着脱可能に取付けられていれば、電力変換器100のメンテナンスが容易になる。ヒートシンク104は、直方体のベース部130および複数の薄板が平行に配置された放熱フィン132を含む。ベース部130は、筐体102の背面パネル112に固定されている。電力変換器100は、電力を変換するための電力変換基板140と制御のための制御基板142とを含む。
【0027】
図3を参照して、ヒートシンク104のベース部130は、複数のネジ160により筐体102の背面パネル112に固定されている。ヒートシンク104の放熱フィン132は、筐体102の外部に位置する。具体的には後述するように、背面パネル112の中央部には開口が形成されており、ベース部130の背面パネル112側に位置する部品面134は、筐体102の内部に対して開放されている。即ち、放熱フィン132が筐体102の外部に位置するのに対して、ベース部130の部品面134は筐体102の内部に位置する。部品面134には、具体的には後述するように、溝136が形成されている。
【0028】
図3においては、電力変換基板140は、複数のスペーサ150を介してネジ162により、ヒートシンク104の部品面134(即ちベース部130)に固定されている。電力変換基板140は、筐体102の背面パネル112に固定されていてもよい。電力変換基板140には、電力変換を実現するための回路(例えば、DC/ACコンバータおよびDC/DCコンバータ)が形成されている。電力変換を実現するための回路は、例えば半導体スイッチング素子を用いたブリッジ回路である。電力変換基板140には、回路を構成する半導体スイッチング素子等の複数の発熱部品154が搭載されている。発熱部品154は、例えば、FET(Field Effect Transistor)である。発熱部品154は、リード線により電力変換基板140に接続されており、発熱部品154の本体部分は、ヒートシンク104の部品面134(即ちベース部130)にネジにより取付けられている。電力変換時に発熱部品154が通電されることにより、発熱部品154は発熱し高温になる。発熱部品154が発生する熱はベース部130に伝達され、さらに放熱フィン132に伝達されて放熱フィン132から放熱される。これにより、発熱部品154は冷却され、電力変換を実行中、損傷されない程度の温度に維持される。
【0029】
制御基板142は、複数のスペーサ152を介してネジ164により基板固定部材144に固定されている。基板固定部材144は、背面パネル112、天面パネル114、底面パネル116、左側面パネル118および右側面パネル120のいずれかに、固定部材(図示せず)により取付けられている。制御基板142に搭載される電子部品は、例えば、電力変換機能とは直接関係せず、通電されても発熱部品154ほどには高温にはならない。
【0030】
図4を参照して、上記したように、背面パネル112には、縁部170により画定される開口172が形成されている。
図4は、
図2に示したように、制御基板142と(より具体的には基板固定部材144と(
図3参照))電力変換基板140との間において電力変換器100を破断した断面図である。
図4は、電力変換器100から前面パネル110、制御基板142および基板固定部材144を取外した正面図とも言える。ヒートシンク104の部品面134(即ちベース部130)は、上記したように、複数のネジ160により背面パネル112に取付けられている。複数(即ち3枚)の電力変換基板140の各々は、複数(即ち4個)のネジ162により、ヒートシンク104の部品面134(即ちベース部130)に取付けられている。
図4において網掛けした部分は、防水処理のために、背面パネル112と部品面134とが接合される部分に設けられたコーキング材174を示す。即ち、
図5を参照して、コーキング材174は、背面パネル112と部品面134との間に配置されている。コーキング材は、撥水性の部材であり、雨水が筐体102の内部に侵入することを防止する。コーキング材は、縁部170の全周にわたって、縁部170と部品面134との間に配置されていればよく、縁部170に沿った幅は任意である。
【0031】
図6を参照して、上記したように、ヒートシンク104の部品面134(即ちベース部130)には、線分状の溝136が形成され、複数(即ち12個)の発熱部品154がネジ166により取付けられている(
図5参照)。
図6は、電力変換基板140と部品面134との間において電力変換器100を破断した断面図である。
図6は、電力変換器100から前面パネル110、制御基板142、基板固定部材144および電力変換基板140を取外した正面図とも言える。
図6には、
図4に示した3枚の電力変換基板140の各々に形成された回路(図示せず)に接続される複数(即ち4個)の発熱部品154を1組として、3組の発熱部品154が示されている。
図5を参照して、各発熱部品154は、リード線156により電力変換基板140の回路にハンダ等により接続されている。部品面134において、各組の発熱部品154が取付けられる部品配置領域(一点鎖線部分参照)の上側(即ちZ軸の正方向)に各溝136が形成されている。溝136は、所定の深さおよび幅を有する。各溝136は、右上から左下に傾いた直線状に形成されている。即ち、溝136は、YZ平面内において、Y座標に対してZ座標が単調増加する形状に形成されている。溝136は、例えばヒートシンク104の部品面134を切削加工することにより形成できる。
【0032】
上記したように、電力変換器100が住宅の壁面に配置されると、ヒートシンク104は部品面134が鉛直線(即ちZ軸)に沿うように配置される。即ち、ヒートシンク104は、長方形である部品面134の第1の辺134aが鉛直線の上方に位置し、第1の辺134aに対向する第2の辺134bが鉛直線の下方に位置するように縦置きに配置される。
図7を参照して、溝136の深さdおよび幅Wは任意である。例えば、深さdは3mmから10mmであり、幅Wは3mmから10mmである。
【0033】
電力変換器100が住宅の壁面に配置された後、コーキング材174に経年劣化等が生じると、劣化した部分から雨水が筐体102内部、即ち電力変換器100内部に侵入する。
図8を参照して、電力変換器100内部に侵入した少量の水は、破線の矢印により示すように流れる。即ち、侵入した水は、部品面134を鉛直下方に流れ、溝136の上側縁部138に到達しても表面張力により溝136には入らずに、部品面134上を上側縁部138に沿って斜め下方に流れる。その後、溝136の左端部から部品面134上を鉛直下方に流れる。これにより、コーキング材174の劣化した部分から電力変換器100内部に侵入した水が、部品面134に取付けられている発熱部品154に接触することを抑制できる。即ち、溝136は抑制部として機能する。したがって、発熱部品154が雨水の影響を受けて、損傷されることを防止できる。
【0034】
侵入した水は、微量であれば部品面134の鉛直下方に流れる過程において、発熱部品154の発熱がベース部130に伝達されて部品面134の温度が上昇することにより、自然に乾燥する。部品面134上を鉛直下方に流れる水は、縁部170および部品面134により形成される段差部分(
図8に示した一点鎖線部分参照)に、表面張力により滞留する。水の量が増えて滞留できなくなれば、背面パネル112上を流れて底面パネル116上に滞留する。したがって、例えば、底面パネル116に水抜き穴等を設けておけば、侵入した水を電力変換器100の外部に排出させることができる。
【0035】
なお、電力変換器100の内部に侵入し溝136の上側縁部138に到達した水が、溝136に入った場合には、水は溝136内を斜め下方に、左端部に向かって流れる。その後、水は溝136の左端部から溝136の外に出て、部品面134上を鉛直下方に流れる。したがって、水が部品面134上を上側縁部138に沿って斜め下方に流れる場合と同様に、水が部品面134に取付けられている発熱部品154に接触することを抑制できる。
【0036】
上記したように、電力変換器100は、筐体102およびヒートシンク104を含み、ヒートシンク104の放熱フィン132が筐体102の外部に位置するように構成されていることにより、筐体102内部の電子部品(即ち発熱部品154)を効率的に冷却できる。また、ベース部130の部品面134に溝136を設けることにより、コーキング材の劣化等により電力変換器100の内部に雨水が侵入した場合にも、部品面134に取付けられている発熱部品154に水が接触することを抑制し、発熱部品154の損傷を防止できる。
【0037】
上記においては、複数の部品面134が全て右上から左下方向に斜めに形成される場合を説明した。この場合、溝を形成する加工が最も簡単であるが、これに限定されない。複数の溝の少なくとも1つの溝は、左上から右下方向に斜めに形成されていてもよい。
【0038】
上記においては、部品面134上に溝が直線状に形成される場合を説明したが、これに限定されない。部品面134上において、溝は円弧状に形成されてもよい。即ち、部品面134が鉛直線に沿うように配置された場合に、溝の鉛直方向の高さが、溝の両端部のうち第1の端部から第2の端部まで単調増加または単調減少する形状であればよい。これにより、筐体102およびヒートシンク104の接続部から筐体102の内部に侵入した水を、部品面134に形成された溝に沿って移動させ、電子部品(即ち発熱部品154)が配置されていない部分に流すことができる。したがって、電子部品が水により損傷されることを防止できる。
【0039】
(第1変形例)
上記においては、
図6および
図8に示したように、ヒートシンク104の部品面134上に、直線状の溝136が形成される場合を説明したが、これに限定されない。
図9を参照して、第1変形例に係るヒートシンク180は、ベース部と放熱フィンとを含みヒートシンク104と同様に形成されている。ヒートシンク180がヒートシンク104と異なる点は、ベース部の部品面182に形成されている複数の溝200の各々が、2本の線分が相互に端部において接続された山形に形成されている点だけである。溝200は溝136と同様に、所定の深さおよび幅の溝である。ヒートシンク180は、ヒートシンク104と同様に筐体102の縁部170にネジにより固定され、筐体102とヒートシンク180の部品面182との間にはコーキング材が配置される。また、ヒートシンク180の部品面182には、発熱部品154がネジにより取付けられる。
図9には、ヒートシンク180が筐体102に取付けられた場合の背面パネル112の縁部170および発熱部品154を破線により示している。
【0040】
図9には、ヒートシンク180が筐体102に取付けられ、
図1に示した電力変換器100と同様の電力変換器が構成された場合に、上記したように筐体102を構成する各面を基準として定められるXYZ軸を示している。溝200は、YZ平面内において、溝200の両端部の間に位置する点のうち、Z座標が最大である点Aを特定の点として、溝200の左端部から特定の点AまでZ座標が単調増加し、特定の点Aから溝200の右端部までZ座標が単調減少する形状に形成されている。溝200が筐体102に取付けられた電力変換器が住宅の壁面に配置されると、Z軸の正方向は鉛直上方になる。コーキング材に経年劣化等が生じると、劣化した部分から雨水が筐体102の内部に侵入する。その場合、
図8と同様に、侵入した水を、溝200の上側縁部に沿って、左右いずれかの端部の方向に流すことができる。溝200の端部(即ち右端部または左端部)に到達した水は、端部から部品面182上を鉛直下方に流れる。これにより、コーキング材の劣化した部分から電力変換器内部に侵入した水が、部品面182に取付けられている発熱部品154に接触することを抑制できる。即ち、溝200は抑制部として機能する。したがって、発熱部品154が雨水の影響を受けて、損傷されることを防止できる。
【0041】
なお、
図9においては、点Aが溝200の左右方向の中央に位置し、溝200の左端部のZ座標と右端部のZ座標とが等しい場合、即ち、点Aを通るZ軸に沿った線を基準として、溝200が線対称である場合を示しているが、これに限定されない。溝202は、点Aが、溝200の左端部と右端部の間の任意の位置にある形状であってもよい。また、溝200の左端部のZ座標と右端部のZ座標とが異なっていてもよい。点AのZ座標が、溝200の左端部のZ座標および右端部のZ座標のいずれよりも大きければよい。
図9に示した溝200の少なくとも1つが、
図10に示す溝202により代替されていてもよい。
図10には、
図9と同様に、ヒートシンクの部品面(即ちベース部)に溝202が形成された場合のXYZ軸を示し、YZ平面内において、溝202の両端部の間に位置する点のうち、Z座標が最大である特定の点Aを示している。溝202において、点AのZ座標は、溝200の左端部に位置する点BのZ座標および右端部に位置する点CのZ座標のいずれよりも大きい。溝202が形成されたヒートシンクが筐体102に取付けられた電力変換器が住宅の壁面に配置されると、Z軸の正方向は、鉛直線の上方になる。コーキング材に経年劣化等が生じると、劣化した部分から雨水が電力変換器100の内部に侵入する。その場合、
図8と同様に、侵入した水を、溝202の上側縁部に沿って、左右いずれかの端部の方向に流すことができる。溝202の端部(即ち右端部または左端部)に到達した水は、端部から部品面上を鉛直下方に流れる。これにより、コーキング材の劣化した部分から電力変換装置内部に侵入した水が、ヒートシンクの部品面に取付けられている発熱部品に接触することを抑制できる。
【0042】
また、
図6、
図8から
図10に示したような線分状または線分が組み合わされた形状の溝に限定されない。
図11に示すように、円弧状の溝204であってもよい。
図11には、
図10と同様にXYZ軸を示し、YZ平面内において、溝204の両端部の間に位置する点のうち、Z座標が最大である特定の点Aを示している。溝204は、溝204の左端部から特定の点AまでZ座標が単調増加し、特定の点Aから溝204の右端部までZ座標が単調減少する形状に形成されている。溝204が形成されたヒートシンクが筐体102に取付けられた電力変換器が住宅の壁面に配置されると、Z軸の正方向は、鉛直線の上方になる。したがって、上記したように、雨水が電力変換器100の内部に侵入すると、侵入した水を、溝204の上側縁部に沿って、左右いずれかの端部の方向に流すことができる。溝204の端部(即ち右端部または左端部)に到達した水は、端部から部品面上を鉛直下方に流れる。これにより、コーキング材の劣化した部分から電力変換装置内部に侵入した水が、ヒートシンクの部品面に取付けられている発熱部品に接触することを抑制できる。
【0043】
なお、
図11においては、点Aが溝204の中央に位置し、溝204の左端部のZ座標と右端部のZ座標とが等しい場合、即ち、点Aを通るZ軸に沿った線を基準として、溝204が線対称である場合を示しているが、これに限定されない。点Aは、溝204の左端部と右端部の間の任意の位置にあればよい。また、溝204の左端部のZ座標と右端部のZ座標とが異なっていてもよい。点AのZ座標が、溝204の左端部のZ座標および右端部のZ座標のいずれよりも大きければ、電力変換器内に侵入した水を、上記したように流すことができ、ヒートシンクの部品面に取付けられている発熱部品154に、水が接触することを抑制できる。
【0044】
即ち、部品面134に形成される溝は、傾斜した直線状(
図6参照)に形成されない場合、部品面134が鉛直線に沿うように配置されると、溝の鉛直方向の高さが、溝の第1の端部から特定の点Aまで単調増加し、特定の点Aから第2の端部まで単調減少する形状を有していればよい。これにより、筐体102およびヒートシンクの接続部から筐体102内に侵入した水を溝に沿って移動させ、電子部品が配置されていない部分に流すことができ、電子部品が水により損傷されることを防止できる。
【0045】
(第2変形例)
上記においては、発熱部品の上側にだけ溝が位置する場合を説明したが、これに限定されない。
図12を参照して、第2変形例に係るヒートシンク184は、ベース部と放熱フィンとを含みヒートシンク104およびヒートシンク180と同様に形成されている。ヒートシンク184がヒートシンク104およびヒートシンク180と異なる点は、ベース部の部品面186に形成されている複数の溝206の各々が、円弧状(即ち半円弧状)の部分(
図11の溝204参照)と、その両端部から延伸する鉛直部分208とにより形成されている点だけである。溝206は溝136および溝200等と同様に、所定の深さおよび幅の溝である。部品面186は、ヒートシンク104と同様に筐体102にネジにより固定され、筐体102とヒートシンク184の部品面186との間にはコーキング材が配置される。また、ヒートシンク184の部品面186には、発熱部品154がネジにより取付けられる。
図12には、ヒートシンク184が筐体102に取付けられた場合の背面パネル112の縁部170および発熱部品154を破線により示している。各溝206を構成する2つの鉛直部分208は、部品面186にネジにより取付けられ、各電力変換基板140に搭載される1組(即ち4個)の発熱部品154の両側に位置する。
【0046】
図12には、
図9および
図10と同様に、XYZ軸を示し、YZ平面内において、円弧部分に位置する点のうち、Z座標が最大である特定の点Aを示している。ヒートシンク184が筐体102に取付けられた電力変換器が住宅の壁面に配置されると、Z軸の正方向は、鉛直上方になる。コーキング材に経年劣化等が生じると、劣化した部分から雨水が筐体102内部に侵入する。その場合、
図8と同様に、侵入した水を、溝206の上側縁部に沿って、左右いずれかの端部の方向に流すことができる。溝206の端部(即ち右端部または左端部)に到達した水は、端部から部品面186上を重力方向(即ちZ軸の負方向)に流れる。これにより、コーキング材の劣化した部分から電力変換器の内部に侵入した水が、部品面186に取付けられている発熱部品154に接触することを抑制できる。したがって、発熱部品154が雨水の影響を受けて、損傷されることを防止できる。溝204が、円弧状の部分から鉛直方向に延伸する溝206を含むことにより、筐体内に侵入した水が、発熱部品154が配置されていない部分を確実に流れるようにでき、発熱部品154が水により損傷されることを防止できる。
【0047】
なお、
図12に示した溝204における円弧状部分(
図11の溝204参照)は、
図9に示した溝200または
図10に示した溝202により代替されてもよい。そのような溝の場合にも、
図12に示した溝206と同様に、筐体内に侵入した水が、発熱部品154が配置されていない部分を確実に流れるようにでき、発熱部品154が水により損傷されることを防止できる。
【0048】
(第3変形例)
上記においては、ヒートシンクの部品面に複数の溝が形成される場合を説明したが、これに限定されない。
図13を参照して、第3変形例に係るヒートシンク188は、ベース部と放熱フィンとを含みヒートシンク184と同様に形成されている。ヒートシンク188が、ヒートシンク184と異なる点は、ベース部の部品面190に1つの溝210が形成されている点である。即ち、溝210は、3つの円弧が連結された部分と、円弧の連結部から延伸する鉛直部分212とにより形成されている。溝210は、
図12に示した3つの溝206を結合した形状、即ち、隣接する溝206の鉛直部分208を結合して鉛直部分212とした形状(隣接する円弧部分が鉛直部分212を共有する形状)と言える。溝210は溝206と同様に、所定の深さおよび幅の溝である。部品面190は、部品面186と同様に、筐体102にネジにより固定され、筐体102とヒートシンク188の部品面190との間にはコーキング材が配置される。また、ヒートシンク188の部品面190には、発熱部品154がネジにより取付けられる。
図13には、ヒートシンク188が筐体102に取付けられた場合の背面パネル112の縁部170および発熱部品154を破線により示している。溝210を構成する各鉛直部分212は、部品面190にネジにより取付けられ、各電力変換基板140に搭載される1組(即ち4個)の発熱部品154の両側のいずれかに位置する。
【0049】
図13には、
図12と同様に、XYZ軸を示し、YZ平面内において、1つの円弧部分(即ち右端の円弧部分)に位置する点のうち、Z座標が最大である特定の点Aを示している。ヒートシンク188が筐体102に取付けられた電力変換器が住宅の壁面に配置されると、Z軸の正方向は鉛直上方になる。コーキング材に経年劣化等が生じると、劣化した部分から雨水が筐体102の内部に侵入する。その場合、
図8と同様に、侵入した水を、表面張力により溝210の円弧状部分の上側縁部に沿って、左右いずれかの方向に流すことができる。部品面190上を流れて溝210の端部、即ち、右端または左端の鉛直部分212の下端部に到達した水は、さらに部品面190上を重力方向(即ちZ軸の負方向)に流れる。一方、隣接する溝210の円弧の連結部に到達した水は、連結部から溝210に入り、鉛直部分212を流れる。水が鉛直部分212の下方端部に到達すると、溝210の外に出て、部品面190上を重力方向に流れる。これにより、コーキング材の劣化した部分から電力変換器内部に侵入した水が、部品面190に取付けられている発熱部品154に接触することを抑制できる。したがって、発熱部品154が雨水の影響を受けて、損傷されることを防止できる。溝210において、隣接する円弧状部分が鉛直部分212を共有することにより、筐体内に侵入した水が、発熱部品154が配置されていない部分を確実に流れるようにでき、発熱部品154が水により損傷されることを防止できる。
【0050】
上記においては、主として表面張力により、部品面において、溝の上側縁部に沿って水を流す場合を説明した。侵入する水の量が多くなると、表面張力によっては、溝の上側縁部に水を保持できず、水は溝の中に入り溝を流れる。したがって、侵入した水が積極的に溝の中に入るように、溝を形成してもよい。例えば、
図14を参照して、ヒートシンクの部品面134に形成される溝214は、その上側縁部に傾斜面220を有している。傾斜面220は、部品面134に
図7に示した溝136を形成し、溝136の上側の角を斜めに切削する面取り加工により形成できる。傾斜面220が部品面134と成す角度θが鈍角(即ち、90度より大きい角度)である場合、部品面134が鉛直になるように配置されていれば、部品面134の上方から流れる水は容易に溝214の中に入る。溝214のYZ面内の形状が、
図6、
図9から
図13に示した溝と同様に形成されていれば、溝214に入った水は溝214を流れる。したがって、部品面134に取付けられている発熱部品が雨水の影響を受けて、損傷されることを防止できる。溝214を画定する周縁部のうちの上側部分に、部品面134に対して鈍角を成す傾斜面220が形成されることにより、筐体内に侵入した水を容易に溝214に入り込ませ、電子部品が配置されていない部分に流すことができ、電子部品が水により損傷されることを防止できる。
【0051】
上記においては、部品面に形成した溝により、部品面に取付けられている電子部品を回避して水が流れるようにしたが、これに限定されない。部品面に凸部を形成してもよい。これにより、筐体102内に侵入した水を凸部に沿って移動させ、電子部品が配置されていない部分に流すことができ、電子部品が水により損傷されることを防止できる。例えば、
図15を参照して、
図6に示した溝136に撥水性部材(例えばコーキング材)を充填して凸部222を形成してもよい。即ち、凸部222は、
図6に示した溝136と同様に、部品面134(即ちYZ面)内において、傾斜した直線状に形成されている。したがって、
図8と同様に、筐体内に侵入した水を、表面張力により、凸部222の上側部分に沿って移動させ、電子部品が配置されていない部分に流すことができ、電子部品が水により損傷されることを防止できる。ヒートシンクの部品面134に溝136を形成し、溝136に撥水性部材を充填することにより、凸部を容易に形成できる。なお、ヒートシンクの部品面に位置精度よく凸部を形成できればよく、部品面に溝を形成せずに、部品面に直接発水性部材を塗布等により形成してもよい。
【0052】
上記においては、ヒートシンクの部品面に溝または凸部を形成する場合を説明したが、これに限定されない。ヒートシンクの部品面に段差を形成すれば、筐体内に侵入した水を、表面張力により、その段差に沿って移動させることができる。例えば、
図16を参照して、ヒートシンクのベース部130の部品面134に段差224が形成されていてもよい。部品面134のうち部品配置領域230は、水が接触すると損傷される電子部品が配置される領域であり、部品非配置領域232は、電子部品が配置されない領域である。部品配置領域230と部品非配置領域232との境界に段差224が形成されている。段差224のYZ面内の形状は、例えば、
図6および
図9から
図13に示したように、その端部(右端部、左端部または両方の端部)に向かって傾斜している形状であればよい。ヒートシンクの部品面134が鉛直線に沿い、部品配置領域230が鉛直線の下方に位置し、部品非配置領域232が鉛直線の上方に位置するように配置された場合、ヒートシンクは、段差224により鉛直方向(即ちZ軸方向)に段差を有することになる。これにより、部品非配置領域232上を上方から流れてきた水が段差224に到達すると、段差224に沿って流れる。したがって、部品配置領域230に配置された電子部品に水が接触することを抑制でき、電子部品が水により損傷されることを防止できる。
【0053】
また、
図17を参照して、ヒートシンクのベース部130の部品面134に、
図16とは凹凸が反対の段差226を形成してもよい。段差226は、部品配置領域230と部品非配置領域232との境界に形成されている。段差226のYZ面内の形状は、例えば、
図6および
図9から
図13に示したように、その端部(右端部、左端部または両方の端部)に向かって傾斜している形状であればよい。ヒートシンクの部品面134が鉛直線に沿い、部品配置領域230が鉛直線の下方に位置し、部品非配置領域232が鉛直線の上方に位置するように配置された場合、ヒートシンクは、段差226により鉛直方向(即ちZ軸方向)に段差を有することになる。これにより、部品非配置領域232上を上方から流れてきた少量の水が段差226に到達すると、表面張力により、水は段差226の角部に沿って流れる。したがって、部品配置領域230に配置された電子部品に水が接触することを抑制でき、電子部品が水により損傷されることを防止できる。
【0054】
上記においては、電力変換器に関して、筐体内部の電子部品を効率的に冷却でき、筐体内に水が侵入した場合にも電子部品の損傷を防止できることを説明したが、これに限定されない。本開示は、発熱部品である電子部品と、当該電子部品が取付けられたヒートシンクとを含む、電力変換器以外の電子機器にも適用できる。
【0055】
以上、実施の形態を説明することにより本開示を説明したが、上記した実施の形態は例示であって、本開示は上記した実施の形態のみに制限されるわけではない。本開示の範囲は、発明の詳細な説明の記載を参酌した上で、特許請求の範囲の各請求項によって示され、そこに記載された文言と均等の意味および範囲内での全ての変更を含む。
【符号の説明】
【0056】
100 電力変換器
102 筐体
104、180、184、188 ヒートシンク
110 前面パネル
112 背面パネル
114 天面パネル
116 底面パネル
118 左側面パネル
120 右側面パネル
130 ベース部
132 放熱フィン
134、182、186、190 部品面
134a 第1の辺
134b 第2の辺
136、200、202、204、206、210、214 溝
138 上側縁部
140 電力変換基板
142 制御基板
144 基板固定部材
150、152 スペーサ
154 発熱部品
156 リード線
160、162、164、166 ネジ
170 縁部
172 開口
174 コーキング材
208、212 鉛直部分
220 傾斜面
222 凸部
224、226 段差
230 部品配置領域
232 部品非配置領域
A、B、C 点