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特開2024-44265配管設計支援システム及び配管設計支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044265
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】配管設計支援システム及び配管設計支援方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/18 20200101AFI20240326BHJP
   G06F 30/20 20200101ALI20240326BHJP
   G06F 111/18 20200101ALN20240326BHJP
【FI】
G06F30/18
G06F30/20
G06F111:18
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149692
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】高松 航
(72)【発明者】
【氏名】田中舘 勉
(72)【発明者】
【氏名】福原 良純
(72)【発明者】
【氏名】高柳 常男
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA03
5B146DE06
5B146DE11
5B146EA02
5B146EA09
5B146EC10
(57)【要約】
【課題】ルート計画時に干渉物が可視化でき、干渉物を回避可能とする配管設計支援システム及び配管設計支援方法を提供する。
【解決手段】計算機と、入力手段と、モニタ画面を含む出力手段と、プラントにおける3DCADデータを保持する3DCADデータベースと、配管自動計画データを保持する配管自動計画データベースと、プラント構成機器の点群データを保持する点群データデータベースを備え、計算機により、事前にプラント構成機器をスキャンして得た点群データと、プラント設計に使用した3DCADデータと、配管自動計画データを用いた配管自動計画機能により計画された配管系データについて、座標情報を用いた重ね合わせ処理を行い、出力手段のモニタ画面に重ね合わせた画像をAR(拡張現実)によって表示させることを特徴とする配管設計支援システム。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計算機と、入力手段と、モニタ画面を含む出力手段と、プラントにおける3DCADデータを保持する3DCADデータベースと、配管自動計画データを保持する配管自動計画データベースと、プラント構成機器の点群データを保持する点群データデータベースを備え、
計算機により、事前にプラント構成機器をスキャンして得た前記点群データと、プラント設計に使用した前記3DCADデータと、前記配管自動計画データを用いた配管自動計画機能により計画された配管系データについて、座標情報を用いた重ね合わせ処理を行い、前記出力手段のモニタ画面に重ね合わせた画像をAR(拡張現実)によって表示させることを特徴とする配管設計支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の配管設計支援システムであって、
干渉物自動計画データを保持する干渉物自動計画データベースと、配管系ルート自動配管計画データを保持する配管系ルート自動配管計画データベースを備え、
前記計算機は、設計者が前記入力手段から入力する前記重ね合わせ画像上の干渉の情報に応じて、前記干渉に関する情報を干渉物自動計画データベースと配管系ルート自動配管計画データベースに反映することを特徴とする配管設計支援システム。
【請求項3】
請求項2に記載の配管設計支援システムであって、
前記計算機は、前記干渉物自動計画データベースと前記配管系ルート自動配管計画データベースを参照して、前記干渉を解消するための対策案に必要な改造物量を対策案毎に求めることを特徴とする配管設計支援システム。
【請求項4】
請求項3に記載の配管設計支援システムであって、
干渉物リストデータを保持する干渉物リストデータベースを備え、
前記計算機は、設計者が前記入力手段から入力する干渉の対策案ごとに付与した干渉レベルに応じて、1の干渉に対する複数の対策案の中から対策案を決定し、前記干渉物リストデータベースに干渉物リストデータとして記憶することを特徴とする配管設計支援システム。
【請求項5】
プラントにおける3DCADデータと、配管自動計画データと、プラント構成機器の点群データを保持し、
計算機により、事前にプラント構成機器をスキャンして得た前記点群データと、プラント設計に使用した前記3DCADデータと、前記配管自動計画データを用いた配管自動計画機能により計画された配管系データについて、座標情報を用いた重ね合わせ処理を行い、重ね合わせた画像をAR(拡張現実)によって表示させることを特徴とする配管設計支援方法。
【請求項6】
請求項5に記載の配管設計支援方法であって、
干渉物自動計画データを保持する干渉物自動計画データベースと、配管系ルート自動配管計画データを保持する配管系ルート自動配管計画データベースを備え、
前記計算機は、設計者が与える前記重ね合わせ画像上の干渉の情報に応じて、前記干渉に関する情報を干渉物自動計画データベースと配管系ルート自動配管計画データベースに反映することを特徴とする配管設計支援方法。
【請求項7】
請求項5に記載の配管設計支援方法であって、
前記計算機は、前記干渉物自動計画データベースと前記配管系ルート自動配管計画データベースを参照して、前記干渉を解消するための対策案に必要な改造物量を対策案毎に求めることを特徴とする配管設計支援方法。
【請求項8】
請求項7に記載の配管設計支援方法であって、
前記計算機は、設計者が前記入力手段から入力する干渉の対策案ごとに付与した干渉レベルに応じて、1の干渉に対する複数の対策案の中から対策案を決定し、干渉物リストデータとすることを特徴とする配管設計支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラントを構成する配管などの配置を検討するための配管設計支援システムに係り、特に実プラントにおける干渉物を回避可能な、最適計画を実施するに好適な配管設計支援システム及び配管設計支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラントや化学プラント等に代表されるプラントでは、配管など(ダクト、電線管のルートならびにこれらに付随するサポート構造物)の配置検討(以下、単に配管系という)の計画を実施する際に、机上における3次元CADでの計画、並びに現場確認による干渉回避を考慮した計画を実施している。
【0003】
本技術分野の背景技術として、特許文献1では、「アズビルト化支援装置は、プラント建屋、プラント内の配管、機器の各部品に関する形状、および配置を含む情報を設計情報として格納する設計データ格納部と、点群データ格納部に格納した点群データから2次元画像データを生成する点群-2次元画像変換部と、生成した2次元画像データと、保有する形状データとを比較して、プラントの部品名および位置を認識する2次元画像認識部と、発見した物体近傍の点群データから、配管の配管径、配管方向、接続位置を含む配管リンク情報を抽出して系統を絞り込むとともに、設計データ格納部に格納された設計情報をもとに、配管リンク情報から、当該系統に関するCAD形状の比較候補をさらに絞り込む認識情報評価部と、を備える。」としている。
【0004】
特許文献2では、「セルを生成するセル生成装置と、ルート探索アルゴリズムによりルートを生成するルート探索装置と、ルート選択アルゴリズムによりルートを選択するルート選択装置と、ルートを実座標に変換する実座標変換装置と、ルートの情報を含むデータセットと、前記データセットを学習する学習手段と、前記学習手段により学習した結果を利用する学習運用手段と、を備え、前記学習手段により学習した結果を、前記ルート探索装置によるルートの生成および前記ルート選択装置によるルートの選択の少なくともいずれか一方に利用することを特徴とする配管又は配線又はダクトのルート作成装置。」としている。
【0005】
また特許文献3では、「取得した点群データ及びCADデータを三次元座標に重ね合わせる重ね合わせ部と、前記CADデータのCAD部品に対応する点群データのセグメントを抽出するセグメント抽出部と、前記三次元座標において前記セグメントを操作するセグメント操作部と、を備える、(中略) 前記軌跡領域と前記点群データとの重複部分を検知する点群検知部を備えることを特徴とする三次元データ処理装置。」としており、また、「部品の軌跡領域と建造物の点群データとの重複を検証することによって、搬送時に干渉する対象物を特定することができ、より効率的で安全性に優れた部品の搬送プランを作成することができる。」としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-019396号公報
【特許文献2】特開2021-182180号公報
【特許文献3】特開2013-080391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1によれば、計測された3次元データ(点群データ)に対して、プラントの部品名および位置を自動認識しており、点群データへの属性情報の付与という点では優れているが、CAD上での配管系のルーティング手法や干渉物可視化、干渉物の回避評価に改善の余地がある。
【0008】
特許文献2によれば、ルート探索装置によるルートの生成および学習手段を用いたルート選択装置によるルートの選択の少なくともいずれか一方に利用する点では優れているが、実機プラントにおける干渉物を事前に学習項目として入力させなければならず、干渉部は一時付帯設備など刻一刻と変化するため、都度干渉物をCADに反映させなければならず、全ての干渉物を回避することができないという点で改善の余地がある。
【0009】
特許文献3によれば、計測された点群データとCADデータの干渉部分を特定する点では優れているが、可視化された干渉物を回避するその後の設計は従来の設計者の技量による点、また、干渉物が膨大である場合にその設計に時間がかかる点で改善の余地がある。
【0010】
然るに、既設建屋内に新たに配管系のルート計画を行う場合、図面や3次元CADにて机上計画、現場調査を行い既設品(機器・配管・サポート・電線管・足場・付帯設備等)の現場状況を確認しながら干渉物回避・移設計画、再度机上にて計画といったルーチンワークを実施している。
【0011】
またプラントによっては他社にて設備の追設・改造を実施しており、その確認及び机上計画見直し等の後戻り作業が発生し、計画作業に多くの工数を費やしていると共に現場確認においては、特に高線量エリアにおいては被ばく線量が大きくなってしまうなどが課題となっている。また、計画の確認は机上・紙面上での確認となっており、実際の現場空間での計画状況を計画者以外の第三者へ正確に共有することは困難であることも課題となっている。
【0012】
加えて、計画したルートを元に、現場確認した際に干渉物が多くある場合、全ての干渉物を回避することは物量や時間的に困難であり、かつ、それらの個々の干渉物に対する回避判断が一設計者の判断となってしまう点も、ルート計画を行うにあたりそれらが課題となっている。
【0013】
その課題に対して、ルート計画においては従来の3次元CAD上での計画および、事前にスキャンされた3次元情報を照らし合わせかつ、現場にてその計画したルートでの干渉物が可視化できること、加えてそれらの干渉物が回避可能かを現場にて瞬時に判断し、再度ルート計画が出来る仕組みが求められている。
【0014】
以上のことから本発明においては、ルート計画時に干渉物が可視化でき、干渉物を回避可能とする配管設計支援システム及び配管設計支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
以上のことから本発明においては、「計算機と、入力手段と、モニタ画面を含む出力手段と、プラントにおける3DCADデータを保持する3DCADデータベースと、配管自動計画データを保持する配管自動計画データベースと、プラント構成機器の点群データを保持する点群データデータベースを備え、計算機により、事前にプラント構成機器をスキャンして得た点群データと、プラント設計に使用した3DCADデータと、配管自動計画データを用いた配管自動計画機能により計画された配管系データについて、座標情報を用いた重ね合わせ処理を行い、出力手段のモニタ画面に重ね合わせた画像をAR(拡張現実)によって表示させることを特徴とする配管設計支援システム」としたものである。
【0016】
また本発明においては、「プラントにおける3DCADデータと、配管自動計画データと、プラント構成機器の点群データを保持し、計算機により、事前にプラント構成機器をスキャンして得た点群データと、プラント設計に使用した3DCADデータと、配管自動計画データを用いた配管自動計画機能により計画された配管系データについて、座標情報を用いた重ね合わせ処理を行い、重ね合わせた画像をAR(拡張現実)によって表示させることを特徴とする配管設計支援方法」としたものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ルート計画時に干渉物が可視化でき、干渉物を回避可能とする配管設計支援システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】計算機装置を主体として構成される配管設計支援システムの概略構成例を示す図。
図2】初期データのデータベースに保有されるデータを例示する図。
図3】CPUの処理内容を、データベースと関連付けして示す図。
図4】AR表示された配管系ルートの干渉事例を示す図。
図5】中間生成物の生成過程の変遷を示す図。
図6】配管系のリルートと干渉物の変更の2パターンが検討されたことを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。なお、本発明では設計者による処理と計算機による処理が交互に行われる。この処理内容に関して、実施例1では新配管系ルートのAR表示を行う計算機処理W1について、実施例2では改造物量算出処理を行う計算機処理W2について、実施例3では最適な干渉物回避案リストを算出する計算機処理W3について説明する。
【実施例0020】
実施例1では、新配管系ルートのAR(Augmented Reality)表示について説明する。図1は、計算機装置を主体として構成される配管設計支援システムの概略構成例を示している。配管設計支援システム1は、設計者Mが操作するキーボードなどの入力手段17からの入力を受付ける入力部11、プログラムを実行するCPU12、演算で使用するデータを一時保存するRAM13、プログラムを記憶しているROM14、AR表示が可能なモニタ18の画面に各種演算結果を出力する出力部15、各種のデータを保存しているデータベース群DBが、バス16により接続されて構成されている。
【0021】
データベース群DBは、初期データ、中間生成物、最終成果物についての各種データベースを含んで構成されている。ここでは初期データに関して、3DCADデータD1を保持する3DCADデータベースDB1、配管自動計画データD2を保持する配管自動計画データベースDB2、点群データD3を保持する点群データデータベースDB3、点群データ追加スキャンデータD4を保持する点群データ追加スキャンデータベースDB4を有している。
【0022】
中間生成物に関して、干渉物自動計画データD5を保持する干渉物自動計画データベースDB5、配管系ルート自動配管計画データD6を保持する配管系ルート自動配管計画データベースDB6を有し、最終成果物に関して干渉物リストデータD7を保持する干渉物リストデータベースDB7を有している。
【0023】
これらデータのうち、特に初期データ(3DCADデータD1、配管自動計画データD2、点群データD3、点群データ追加スキャンデータD4)は、配管設計支援システム1の運用開始前に十分な種類、量のデータが準備されており、あるいは適宜の場面で外部から入手可能なものとする。
【0024】
初期データのデータベース(DB1、DB2、DB3、DB4)は、一例として図2に例示するデータを保有するものであり、これは例えば3DCADデータベースDB1について、躯体形状データD11、機器他設備形状データD12、配管系ルート形状データD13、設計仕様データD14、各設備配置座表データD15であり、配管自動計画データベースDB2について、配管系ルート形状データD21、設計仕様データD22、配置座標データD23であり、点群データデータベースDB3と点群データ追加スキャンデータベースDB4について、点群データD31、セグメンテーションデータD32である。なおこれらは例示であり、これら以外のデータを保有していてもよいことは言うまでもない。
【0025】
以下に示す本発明の前提は、既設プラントにおいて新たに機器を増設するなどの理由により配管系を見直す(追加或はルート変更)ことを、設計者Mが容易に行えるように支援するというものである。
【0026】
このため、既設プラントの躯体、機器、配管についての3DCADデータD1が、3DCADデータベースDB1に準備されており、また各種機器について機器をスキャンして得た点群データD3が点群データデータベースDB3に準備されている。
【0027】
図3は、プログラムを実行するCPU12の処理内容を、データベースDBと関連付けして示した図である。この図においてW1、W2、W3は計算機装置がプログラムにより行う処理であり、記号mで示す処理が設計者Mによる処理を表している。
【0028】
ここに示す配管設計支援システム1の計算機処理W1では、まず上記した初期データベースDB1、DB2、DB3を用いて、処理ステップS11において事前に実機をスキャンして得た点群データD3と、プラント設計に使用した3DCADデータD1と、配管自動計画データベースDB2の配管自動計画機能により計画された配管系データ(配管自動計画データD2)を、座標情報を用いて重ね合わせ処理を行い、処理ステップS12ではモニタ18の画面に重ね合わせた画像をAR(拡張現実)によって表示させている。これにより、例えばプラントの現場でモニタ18などのAR表示機器を通して、点群データおよび配管系ルート計画(計画ルート)が表示できる。
【0029】
このように配管設計支援システム1においては最初に、3次元位置情報である点群データD3と、3次元CADデータD1上でAIによる自動配管計画された配管系ルートデータを、AR機器により実機で計画した配管系ルートとして視認可能とすることを実現している。
【0030】
ここでは、点群データD3と3次元CADデータD1を用いて表現される既設プラントの第一の配管系ルート上に、配管自動計画データベースDB2の配管自動計画機能により計画された第二の配管系ルートが新たに追加された新配管系ルートとして、AR表示されている。この表示では、既設プラントの第一の配管系ルートと配管自動計画機能により計画された第二の配管系ルートの配置関係が、3Dデータにより立体的に表示されるとともに点群データにより相互の距離情報を含めて把握可能であり、かつAR表示により実機に近い形式で視認可能である。それにより、配管系ルート計画に対して、3次元CAD上にはない干渉物を視認することができ、その干渉物や干渉の範囲を確認することができる。
【0031】
図3に示す配管設計支援システム1において、計算機処理W1は計算機により実現されており、次の段階では設計者Mによる判断と処理が加味される。人的処理m11では、例えば現場にいる設計者MがAR表示されたモニタ18の画面をみながら、仮想実現された新旧配管系ルートの間の干渉関係を判断する。その場合に、判断するうえで更なる位置情報が欲しいということであれば、別途現場での追加スキャンなどを行い、新たに得た点群データ追加スキャンデータD4を点群データ追加スキャンデータベースDB4に確保し、この点を考慮後のAR表示に更なる反映を行うこともできる。
【0032】
図4は、AR表示された配管系ルートの干渉事例を示す図である。配管系ルートR1に対して機器が接近位置にあり、以後の点検などの際に点検場所の確保が困難になることが想定されるといった観点から、機器が干渉物Jに指定されたことを示している。
【0033】
人的処理m11において設計者Mは、その場で配管ルートを検討し、変更が必要になるか否かを判断(このときに干渉回避策を含めて判断するのがよい)し、人的処理m12または人的処理m13に移動して変更の範囲を指定する。図4の場合には干渉物の両端位置P1、P2の間が干渉範囲であることから、ここを変更の範囲としてマーキングすることになる。この指定された変更範囲は、AR表示モニタ18の画面上に表示され、設計者Mに認知可能とされる。
【0034】
ここでの具体的な変更策は、配管系ルートを変更するか、干渉物を変更(改造・撤去・移設)するか、あるいは変更自体を取りやめるかのいずれかであるが、とりあえず変更策が未決定である場合には人的処理m13に移動して変更の範囲を指定しておくことでもよい。
【0035】
なお、このうち配管系ルートを変更することが確定している場合には、人的処理m12に移動してここから配管リルート範囲指定を行うのがよい。このときには、必要に応じて、その範囲にある干渉物の位置データを補充すべく、別途現場での追加スキャンなどを行い、新たに得た点群データ追加スキャンデータD4を点群データ追加スキャンデータベースDB4に確保するとともに3次元CADデータベースDB2に反映するのがよい。
【0036】
これを受けて計算機は、配管自動計画データベースDB2の配管自動計画機能により配管系ルートの再設計処理を行ない、その見直された配管系ルートをAR表示モニタ18の画面上に表示させ、干渉物が回避されているかを確認することが出来る。
【実施例0037】
実施例2では改造物量算出処理について説明する。図5は中間生成物の生成過程の変遷を示す図である。図5は、中間生成物として干渉物自動計画D5を記憶する干渉物自動計画データベースDB5と、配管系ルート自動配管計画D6を記憶する配管系ルート自動配管計画データベースDB6を示している。なお、以下においては特に必要がない限り干渉物自動計画D5の例で説明するが、これはそのまま配管系ルート自動配管計画D6にも当てはまる内容である。
【0038】
図5の初期段階1では、中間生成物を記憶する干渉物自動計画データベースDB5と配管系ルート自動配管計画データベースDB6の記録内容は白紙状態とされている。但し、この記録領域には、干渉物No(D51)、名称D52、エリアD53、3DCAD情報D54、点群情報D55、被干渉物D56、溶接検査の有無D57、許認可有無D58、干渉物レベルD59、抽出根拠D60、所掌D61、干渉物改造物量D62の入力枠が準備されている。
【0039】
図5の段階2は、設計者Mによる人的処理m12または人的処理m13に応じて、計算機が図2の初期データのデータベース(3DCADデータベースDB1、配管自動計画データベースDB2、点群データデータベースDB3、点群データ追加スキャンデータベースDB4)を参照し、干渉物自動計画データベースDB5と配管系ルート自動配管計画データベースDB6内に記憶内容を自動生成したことを示している。
【0040】
自動生成に際して、設計者Mはモニタ画面上における干渉物とその位置をタッチパネルやキーボードから計算機に入力し、計算機は入力に応じた干渉物やその位置の情報を用いて初期データのデータベースを参照し、該当する情報を干渉物自動計画データベースDB5と配管系ルート自動配管計画データベースDB6の該当記憶個所(該当する入力枠)に転送し記憶するのがよい。
【0041】
計算機がこの段階で生成したデータは、干渉物No(D51)、名称D52、エリアD53、3DCAD情報D54、点群情報D55、被干渉物D56、溶接検査の有無D57、許認可有無D58、所掌D61、干渉物改造物量D62である。ここには、配管系ルート上で干渉する設備の情報として名称D52、エリアD53などが反映されている。
【0042】
なお、1か所の干渉物に対する対応策としては、干渉物側での対応と配管リルート側での対応がありうることから、一般的には1か所の干渉物に対して干渉物自動計画データベースDB5と配管系ルート自動配管計画データベースDB6のそれぞれにデータ反映されることになる。また、干渉物No(D51)は、1か所の干渉物に対して1件を生成するものとすることもできるが、干渉物の変更策として、改造、撤去、移設が想定される場合に、変更策毎に複数の干渉物No(D51)を生成し、個別に以降の対応を行うものとしてもよい。
【0043】
また図5の段階2の干渉物自動計画データベースDB5の例では、干渉物は1個所ではなく、複数個所(図5の例では干渉物No(D51)に例示した7か所)が存在するものとする。
【0044】
図3において、改造物量算出処理を行う計算機処理W2内の処理ステップS13および処理ステップS14では、これら抽出された干渉物ごとにこの場合の改造物量を算出する。ここで、改造物量とは、干渉物側で対策するときに必要となる改造物量(干渉物改造物量)と、リルートにより対策するときに必要となる改造物量(リルート改造物量)を意味する。また改造物量は、直接的な改造部分である機器や配管の物量ばかりではなく、足場などの作業過程で生じる機材負担や人的負担を含めておくのがよい。
【0045】
図5の段階2における所掌D61、干渉物改造物量D62の欄の記載は、干渉範囲が指定されたことにより自動的に定まる物量を記述しているが、図5の段階3における所掌D61、干渉物改造物量D62の欄の記載は、検証後の物量をより精密に表記したものとされるのがよい。
【0046】
なお、干渉物を変更(改造・撤去・移設)するときには、改めて変更後の配管ルートの見直しを行うのがよく、この結果として配管ルートの変更案も浮上することがある。この場合には配管系ルート自動配管計画データベースDB6や干渉物自動計画データベースDB5に新たな処理案を追加補充し、あるいは実現が望ましくない案についてこれを削除するようにされることが望ましい。
【0047】
図5の段階3におけるデータベースの事例では、干渉物No(D51)が004と005のケースについて、干渉物を指定した後、配管自動計画データベースDB2の配管自動計画機能で干渉物を避けるか、避けないかを判断実施した結果、リストから削除するように計算機が判断し、削除されるようになったことを表している。
【0048】
図5の段階3におけるデータベースの内容は、モニタ18の画面に例えば表形式で表示され、設計者Mが確認可能である。このときに設計者Mは、人的処理m14において干渉物に対して、干渉回避の程度を表す干渉物レベルの指定を点群データD3上で行なう。例えば、レベルは4段階とし、レベル4は、その干渉物が移設不可であるような重要な設備、レベル3は移設可能だが移設に際しては、認可申請等の手続きが発生する設備、レベル2は移設可能だが、改造工事を伴う設備、レベル1は、移設可能で、改造工事を伴わない設備などと事前に設定することが可能で有り、設計者Mはこのレベルの内容に基づいて現場にて指定することが可能である。
【実施例0049】
実施例3では最適な干渉物回避案リストを算出する計算機処理W3について説明する。この段階までの処理により、複数の干渉物の個々について、1または複数の回避案が提示されている。同じ干渉物の回避案は、干渉物側で複数となっている場合と、干渉物側とリルート側で複数になっている場合がある。このことから、設計者Mは人的処理m14において回避案毎にレベル分けを行っている。
【0050】
計算機処理W3の処理ステップS15X、S15Y、S15Zでは、レベルごとに回避案を区分けする。例えば処理ステップS15Xではレベル1のみを抽出し、処理ステップS15Yではレベル2のみを抽出し、処理ステップS15Zではレベル3のみを抽出する。
【0051】
次に処理ステップS16X、S16Y、S16Zでは、レベルごとに回避案の改造物量等を比較して、選択した案件を最終成果物である干渉物リストデータD7として、干渉物リストデータベースDB7に格納する。例えば特定の干渉物について、干渉物側での対策を行うときの干渉物改造物量と、リルートにより対策するときのリルート改造物量が同じレベル1に分類されているときに、処理ステップS16Xではこのうちの改造物理量が少ない側を選択して、最終成果物である干渉物リストデータD7とする。
【0052】
また一方がレベル1、他方がレベル2に分類されているときに、レベル1を判断する処理ステップS16Xが特定干渉物の一方の回避案を選択したときに、レベル2を判断する処理ステップS16Yは特定干渉物の他方の回避案を除外して選択しないように処理をする。この結果、同じ干渉物について、最小物理量とする1つの回避案のみが最終成果物である干渉物リストデータD7として抽出される。
【0053】
例えば、干渉物の改造物量が配管系の改造物量S105のN倍以上あれば、干渉物の移設を行ない、N倍未満であれば配管系のリルートを行なう。なお、ここでのN倍は、干渉物の移設の程度を表す干渉レベルに応じて、任意の数値あるいは、係数を設定できるものとし、各干渉レベルに応じて設定できる。加えて、ここでは配管の改造物量のみでの比較であるが、当該部の床面からのレベルや当該エリアの線量等も判定基準として入れ込めるのがよい。
【0054】
なお処理ステップS16X、S16Y、S16Zの処理では、物量比較判定の考え方により回避案の採用適否判断を行うことができる。図6は、配管系のリルート(図6上)と干渉物の変更(図6上)の2パターンが検討されたことを示す図であり、図6上の場合には、干渉物改造物量がリルート改造物量を上回り、図6下の場合には、干渉物改造物量がリルート改造物量を下回ることを表している。この図6上の事例では、リルート策の採用は不適当であることから、干渉物リストデータD7として干渉物リストデータベースDB7に格納しない。これに対し、図6下の事例では、干渉物側の移設、撤去策の採用は適当であることから、干渉物リストデータD7として干渉物リストデータベースDB7に格納する。
【0055】
図5の段階4までの処理により、干渉物レベルD59、抽出根拠D60の欄に情報が追加される。抽出根拠D60の欄には、この案が相応しいことの根拠となる判断理由が適宜記述されるのがよい。このようにして、干渉物レベルを指定し、レベルごとの配管リルート物量及びリスト作成が行われる。
【0056】
図5の段階5には、最終的に干渉物リストデータベースDB7に生成された干渉物リストD7を示している。干渉物リストに記載の項目としては、干渉物No(D51)、名称D52、3DCAD情報D54、点群情報D55、被干渉物D56干渉物レベルD59、抽出根拠D60、干渉物改造物量D62を記録しておくのがよい。このように、作成した各干渉物に対する干渉物リストでは、この干渉物の抽出根拠や干渉物レベル、リルート物量もリストに記載しておくのがよい。また、当初計画していた計画ルートDB3から変更になったルートDB6部分を、配管自動計画修正版あるいは配管系計画物量情報としてデータベースDB7に保存するのがよい。これらを用いて設計を行なうことができる。また、これらのデータをAR上に表示させ、実機で配管系ルートを視認できる。
【0057】
上記した本発明によれば、配管系のルートを入力した3次元CAD情報および、3次元スキャンデータ(点群データ)を、実機現場においてARで表示させる技術を用いて、現場で配管系ルートおよび干渉物の視認が可能となる。かつ、その場で干渉物との回避判断を行なうことができ、干渉物の回避が困難であればその範囲をAR上で点群データを指定することで、AIを用いた自動配管計画技術により配管系ルートの見直しを行ない、干渉物を回避したルートを表示させることで、ルートの計画が可能となる。
【0058】
また、干渉物が多数ある場合、それらの干渉物に対して、ARを通して干渉物の回避の程度を判断する重要度をその場で干渉物範囲に指定することで、それら多数の干渉物に付与された回避程度のレベルごとに、配管系のルートを見直すか、あるいは、干渉物を移設・撤去するかの判断を行なう判定機能を有する技術により、干渉物の回避検討の設計工数を大幅に減らせる効果がある。またそれらにより、設計の机上、現場を往復する工数を大幅に削減し、現場での被ばく線量の低減の効果がある。また、干渉物の移設した場合の物量を算出し、配管系ルートと干渉物との物量を比較する判断を自動で行うことで、設計者の技量によらない設計が可能となる。
【符号の説明】
【0059】
1:配管設計支援システム
11:入力部
12:CPU
13:RAM
14:ROM
15:出力部
16:バス16
17:入力手段
18:モニタ
DB1:3DCADデータベース
DB2:配管自動計画データベース
DB3:点群データデータベース
DB4:点群データ追加スキャンデータベース
DB5:干渉物自動計画データベース
DB6:配管系ルート自動配管計画データベース
DB7:干渉物リストデータベース
図1
図2
図3
図4
図5
図6