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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044287
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】非水二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/586 20210101AFI20240326BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALI20240326BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20240326BHJP
   H01M 50/591 20210101ALI20240326BHJP
   H01M 10/052 20100101ALN20240326BHJP
【FI】
H01M50/586
H01M10/0587
H01M10/0585
H01M50/591 101
H01M10/052
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149720
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】吉川 和孝
(72)【発明者】
【氏名】出口 祥太郎
(72)【発明者】
【氏名】坂井 遼太郎
(72)【発明者】
【氏名】内山 翔太
(72)【発明者】
【氏名】小岩 永明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太郎
【テーマコード(参考)】
5H029
5H043
【Fターム(参考)】
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AM03
5H029AM07
5H029DJ05
5H029DJ12
5H029HJ01
5H029HJ04
5H043AA04
5H043BA19
5H043EA08
5H043EA32
5H043GA22
(57)【要約】
【課題】正極側集電部を形成する際の集箔不良を抑制可能とした非水二次電池を提供する。
【解決手段】正極板21と負極板25とがセパレータ28を介して積層方向D3に積層された電極体20を備え、正極板21は、正極基材22と、正極合剤層23と、絶縁層と、を備え、正極基材22は、正極合剤層23及び絶縁層の両方が設けられていない正極側未塗工部22Aを備え、電極体20は、正極側未塗工部22Aが積層方向D3に積層された正極側集電部20Aを備え、絶縁層は、正極合剤層23と正極側未塗工部22Aとの境界に位置し、正極基材22に対して積層方向D3における正極側集電部20Aの中央側に位置する絶縁層が第1絶縁層24Aであり、正極基材22に対して第1絶縁層24Aと反対に位置する絶縁層が第2絶縁層24Bであり、第1絶縁層24Aの厚さは、第2絶縁層24Bの厚さよりも大きい。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極板と負極板とがセパレータを介して積層方向に積層された電極体を備え、
前記正極板は、箔状の正極基材と、前記正極基材の相反する方向に面する2つの面のそれぞれに設けられる正極合剤層及び絶縁層と、を備え、
前記正極基材は、前記正極合剤層及び前記絶縁層の両方が設けられていない正極側未塗工部を備え、
前記電極体は、前記正極側未塗工部が前記積層方向に積層された正極側集電部を備え、
前記絶縁層は、前記正極合剤層と前記正極側未塗工部との境界に位置し、
前記正極基材のうち前記積層方向における前記正極側集電部の中央側に面する第1面に設けられる前記絶縁層が第1絶縁層であり、前記正極基材のうち前記第1面と反対の第2面に設けられる前記絶縁層が第2絶縁層であり、
前記第1絶縁層の厚さは、前記第2絶縁層の厚さよりも大きい
非水二次電池。
【請求項2】
前記第1絶縁層の厚さは、前記第2絶縁層の厚さに対して、1.2倍以上1.7倍以下である
請求項1に記載の非水二次電池。
【請求項3】
前記第1絶縁層の厚さは、5.0μm以上20.0μm以下であり、
前記第2絶縁層の厚さは、3.0μm以上16.0μm以下である
請求項2に記載の非水二次電池。
【請求項4】
前記絶縁層は、結着剤を含み、
前記結着剤の質量比は、前記絶縁層の質量に対して10質量%以上30質量%以下である
請求項1ないし3のうち何れか一項に記載の非水二次電池。
【請求項5】
前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層の幅は、2.5mm以上4.5mm以下である
請求項1ないし3のうち何れか一項に記載の非水二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車は、その電源として非水二次電池を備える。非水二次電池の一例であるリチウムイオン二次電池は、正極板と負極板とがセパレータを介して積層された状態で捲回された電極体を備える。正極板は、箔状の正極基材と、正極基材上に設けられた正極合剤層及び絶縁層とを備える(例えば、特許文献1)。正極基材は、正極合剤層及び絶縁層が塗工されずに正極基材が露出した正極側未塗工部を備える。正極側未塗工部は、複数の層が積層された状態で圧接されることで、外部端子との接続を担う正極側集電部として利用される。絶縁層は、正極合剤層と正極側未塗工部との境界に位置する。絶縁層は、正極側未塗工部と負極板との短絡の防止を担う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-089857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
絶縁層は、電池性能の低下を抑制する観点から、正極合剤層の幅をできるだけ狭めないように配置されることが好ましい。また、絶縁層は、電池の大型化を抑制する観点から、正極板全体の幅が大きくならないように、正極側未塗工部の幅が小さくなるように配置される。すると、正極側未塗工部を積層して圧接する際に正極側未塗工部の幅が不足する場合がある。その結果、正極基材の一部が引き裂ける、もしくは、正極側未塗工部の層同士が正しく接合されない、といった集箔不良が生じるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための非水二次電池は、正極板と負極板とがセパレータを介して積層方向に積層された電極体を備え、前記正極板は、箔状の正極基材と、前記正極基材の相反する方向に面する2つの面のそれぞれに設けられる正極合剤層及び絶縁層と、を備え、前記正極基材は、前記正極合剤層及び前記絶縁層の両方が設けられていない正極側未塗工部を備え、前記電極体は、前記正極側未塗工部が前記積層方向に積層された正極側集電部を備え、前記絶縁層は、前記正極合剤層と前記正極側未塗工部との境界に位置し、前記正極基材のうち前記積層方向における前記正極側集電部の中央側に面する第1面に設けられる前記絶縁層が第1絶縁層であり、前記正極基材のうち前記第1面と反対の第2面に設けられる前記絶縁層が第2絶縁層であり、前記第1絶縁層の厚さは、前記第2絶縁層の厚さよりも大きい。
【0006】
絶縁層は、ペースト状の状態で正極基材に塗工された後、ペーストを乾燥させることによって形成される。絶縁層がペースト状の状態から乾燥する際には、絶縁層の体積が減少することで正極基材に対して収縮応力が作用する。第1絶縁層の厚さを第2絶縁層の厚さよりも大きくすることで、第1絶縁層が正極基材に与える収縮応力が、第2絶縁層が正極基材に与える収縮応力よりも大きくなる。正極基材は、第1絶縁層と第2絶縁層との収縮応力差によって、積層方向における正極側集電部の中央に向かって曲げるような合力が作用した状態となる。したがって、正極側集電部を形成する際の集箔性が向上する。結果として、集箔不良を抑制できる。
【0007】
上記非水二次電池において、前記第1絶縁層の厚さは、前記第2絶縁層の厚さに対して、1.2倍以上1.7倍以下であることが好ましい。第1絶縁層の厚さが第2絶縁層の厚さに対して1.2倍以上であれば、正極基材に対して第1絶縁層と第2絶縁層との収縮応力差を好適に作用させることができる。第1絶縁層の厚さが第2絶縁層の厚さに対して1.7倍以下であれば、第2絶縁層が過剰に薄くなることで機械的強度が不足することを防止できる。
【0008】
上記非水二次電池において、前記第1絶縁層の厚さは、5.0μm以上20.0μm以下であり、前記第2絶縁層の厚さは、3.0μm以上16.0μm以下であることが好ましい。上記構成によれば、第1絶縁層及び第2絶縁層の機械的な強度の確保と、第1絶縁層の厚さの増加に伴う集箔性の低下の抑制と、正極基材に対する第1絶縁層と第2絶縁層との収縮応力差による集箔性の向上効果とを達成できる。
【0009】
上記非水二次電池において、前記結着剤の質量比は、前記絶縁層の質量に対して10質量%以上30質量%以下であることが好ましい。絶縁層が含む結着剤を30質量%以下とすることで、絶縁層の機械的強度が過剰に低下することを防止できる。絶縁層が含む結着剤を10質量%以上とすることで、絶縁層と正極基材との間の剥離強度を確保できるとともに、第1絶縁層と第2絶縁層との収縮応力差を好適に発現させることができる。
【0010】
上記非水二次電池において、前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層の幅は、2.5mm以上4.5mm以下であることが好ましい。第1絶縁層及び前記第2絶縁層の幅を2.5mm以上とすることで、第1絶縁層と第2絶縁層との収縮応力差を好適に発現させつつ、正極側未塗工部と負極板との短絡を好適に防止できる。第1絶縁層及び前記第2絶縁層の幅を4.5mm以下とすることで、正極側未塗工部の幅が過剰に小さくなることを防止できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、正極側集電部を形成する際の集箔不良を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、リチウムイオン二次電池の斜視図である。
図2図2は、電極体を展開した状態を示す斜視図である。
図3図3は、図2のIII-III線から見た断面図である。
図4図4は、正極側集電部を構成する前の正極側未塗工部を拡大して示す要部断面図である。
図5図5は、正極側集電部を拡大して示す要部断面図である。
図6図6は、正極側集電部を構成した状態の正極側未塗工部を拡大して示す要部断面図である。
図7図7は、リチウムイオン二次電池の製造工程を示すフローチャートである。
図8図8は、実施例及び比較例の各パラメータを示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[リチウムイオン二次電池]
図1に示すように、非水二次電池の一例であるリチウムイオン二次電池10は、ケース11と電極体20とを備える。ケース11は、収容部11Aと蓋体12とを備える。収容部11Aは、上側に開口を有した偏平な有底角型の外形を有する。収容部11Aは、電極体20と非水電解液とを収容する。蓋体12は、収容部11Aの開口を閉塞する。ケース11は、収容部11Aに蓋体12を取り付けることで直方体形状の密閉された電槽を構成する。ケース11は、アルミニウムもしくはアルミニウム合金等の金属で構成される。
【0014】
蓋体12には、正極の外部端子13Aと、負極の外部端子13Bとが設けられる。電極体20における正極側の端部である正極側集電部20Aは、正極側集電部材14Aを介して正極の外部端子13Aに電気的に接続される。電極体20における負極側の端部である負極側集電部20Bは、負極側集電部材14Bを介して負極の外部端子13Bに電気的に接続される。また、蓋体12は、非水電解液を注入するための注入口15を備える。なお、外部端子13A,13Bの形状は、図1に示す形状に限定されず、任意の形状であってよい。
【0015】
[電極体]
図2に示すように、電極体20は、長尺の正極板21と負極板25とがセパレータ28を介して積層した積層体を捲回した偏平な捲回体である。正極板21、負極板25、及びセパレータ28は、それぞれの長手となる方向が長手方向D1と一致するように積層される。捲回前の積層体は、正極板21、セパレータ28、負極板25、セパレータ28の順に、積層方向D3(図3参照)に積層される。電極体20は、セパレータ28を挟んで積層された正極板21と負極板25とが、その帯形状の幅方向D2に延びる捲回軸L1の周りに捲回された構造を有している。
【0016】
[正極板]
図3に示すように、正極板21は、正極基材22と、正極合剤層23と、絶縁層24とを備える。正極基材22は、長尺状に形成された箔状の部材である。正極合剤層23及び絶縁層24は、それぞれ正極基材22の相反する方向に面する2つの面の各々に設けられる。正極基材22は、幅方向D2の一端に、正極合剤層23及び絶縁層24の何れもが形成されずに正極基材22が露出した正極側未塗工部22Aを備える。絶縁層24は、正極側未塗工部22Aと正極合剤層23との境界に位置する。絶縁層24は、正極側未塗工部22Aと負極板25とが異物等を介して短絡することを防ぐ。
【0017】
正極基材22は、アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金から構成される金属箔が用いられる。正極基材22が備える正極側未塗工部22Aは、捲回体の状態において、向かい合う部分が積層方向D3に積層されるように圧接されて正極側集電部20Aを構成する。
【0018】
正極合剤層23は、液状体の正極合剤ペーストの硬化体である。正極合剤ペーストは、正極活物質、正極溶媒、正極導電剤、及び、正極結着剤を含む。正極合剤層23は、正極合剤ペーストが乾燥されて正極溶媒が気化することで形成される。したがって、正極合剤層23は、正極活物質、正極導電剤、及び、正極結着剤を含む。
【0019】
正極活物質は、リチウムイオン二次電池10における電荷担体であるリチウムイオンを吸蔵及び放出可能なリチウム含有複合金属酸化物が用いられる。リチウム含有複合酸化物は、リチウムと、リチウム以外の他の金属元素とを含む酸化物である。リチウム以外の他の金属元素は、例えば、ニッケル、コバルト、マンガン、バナジウム、マグネシウム、モリブデン、ニオブ、チタン、タングステン、アルミニウム、リチウム含有複合酸化物にリン酸鉄として含有される鉄からなる群から選択される少なくとも一種である。
【0020】
例えば、リチウム含有複合酸化物は、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、マンガン酸リチウム(LiMn)である。例えば、リチウム含有複合酸化物は、ニッケル、コバルト及びマンガンを含有する三元系リチウム含有複合酸化物(NCM)であって、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(LiNiCoMnO)である。例えば、リチウム含有複合酸化物は、リン酸鉄リチウム(LiFePO)である。
【0021】
正極溶媒は、有機溶媒の一例であるNMP(N-メチル-2-ピロリドン)溶液が用いられる。正極導電剤としては、例えば、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、カーボンナノチューブ(CNT)やカーボンナノファイバ等の炭素繊維、黒鉛が用いられる。正極結着剤は、正極合剤ペーストに含まれる樹脂成分の一例である。正極結着剤は、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルアルコール(PVA)、スチレンブタジエンラバー(SBR)等が用いられる。
【0022】
絶縁層24は、液状体の絶縁ペーストの硬化体である。絶縁ペーストは、絶縁性を有した絶縁層用無機成分と、絶縁層用結着剤と、絶縁層用溶媒とを含む。絶縁層24は、絶縁ペーストが乾燥されて絶縁層用溶媒が気化することで形成される。したがって、絶縁層24は、絶縁層用無機成分と絶縁層用結着剤とを含む。
【0023】
絶縁層用無機成分は、粉末状のベーマイト、チタニア、及びアルミナからなる群から選択される少なくとも1つである。絶縁層用結着剤は、絶縁層用溶媒に可溶な樹脂成分であって、例えば、PVDF、PVA、SBR、アクリルからなる群から選択される少なくとも1つである。溶媒成分は、有機溶媒もしくは水が用いられる。有機溶媒は、一例として、NMP溶液である。
【0024】
絶縁層24の全体の質量に対する絶縁層用結着剤の質量比は、例えば、10質量%以上30質量%以下である。絶縁層用結着剤の質量比が10質量%以上であれば、絶縁層24と正極基材22との間の剥離強度を確保できる。絶縁層用結着剤の質量比が30質量%以下であれば、絶縁層用無機成分の質量比の相対的な低下に伴う絶縁層24の機械的強度の過剰な低下を防止できる。
【0025】
[負極板]
負極板25は、負極基材26と、負極合剤層27とを備える。負極基材26は、長尺状に形成された箔状の部材である。負極合剤層27は、負極基材26の相反する方向に面する2つの面の各々に設けられる。負極基材26は、幅方向D2の一端であって、正極側未塗工部22Aと反対に位置する端部において、負極合剤層27が形成されずに負極基材26が露出した負極側未塗工部26Aを備える。
【0026】
負極基材26は、銅または銅を主成分とする合金から構成される金属箔が用いられる。負極側未塗工部26Aは、捲回体の状態において、向かい合う面が互いに圧接されて負極側集電部20Bを構成する。
【0027】
負極合剤層27は、液状体の負極合剤ペーストの硬化体である。負極合剤ペーストは、負極活物質、負極溶媒、負極増粘剤、及び、負極結着剤を含む。負極合剤層27は、負極合剤ペーストが乾燥されて負極溶媒が気化することで形成される。したがって、負極合剤層27は、負極活物質、負極増粘剤、及び、負極結着剤を含む。なお、負極合剤層27は、導電剤のような添加剤をさらに含んでもよい。
【0028】
負極活物質は、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な材料である。負極活物質は、例えば、黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、カーボンナノチューブ等の炭素材料等が用いられる。負極活物質は、黒鉛粒子を非晶質炭素層で被覆した複合化粒子であってもよい。
【0029】
負極溶媒は、一例として、水である。負極分散剤は、一例として、カルボキシメチルセルロース(CMC)を用いることができる。負極結着剤は、正極結着剤と同様のものを用いることができる。負極結着剤は、一例としてSBRである。
【0030】
[セパレータ]
セパレータ28は、正極板21と負極板25との接触を防ぐとともに、正極板21及び負極板25の間で非水電解液を保持する。非水電解液に電極体20を浸漬させると、セパレータ28の端部から中央部に向けて非水電解液が浸透する。
【0031】
セパレータ28は、ポリプロピレン製等の不織布である。セパレータ28としては、例えば、多孔性ポリエチレン膜、多孔性ポリオレフィン膜、多孔性ポリ塩化ビニル膜等の多孔性ポリマー膜、及びイオン導電性ポリマー電解質膜等を用いることができる。
【0032】
[非水電解液]
非水電解液は、非水溶媒に支持塩が含有された組成物である。非水溶媒は、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートからなる群から選択された一種または二種以上の材料である。支持塩としては、例えば、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO、LiCSO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiI等から選択される一種または二種以上のリチウム化合物(リチウム塩)である。
【0033】
本実施形態では、非水溶媒としてエチレンカーボネートを採用している。非水電解液には、添加剤としてのリチウム塩としてのリチウムビスオキサレートボレート(LiBOB)が添加される。例えば、非水電解液におけるLiBOBの濃度が0.001以上0.1以下[mol/L]となるように、非水電解液にLiBOBを添加する。
【0034】
[正極板端部の構成]
図4に示すように、正極基材22は、第1面22Bと第2面22Cとを備える。第1面22B及び第2面22Cは、互いに相反する方向に面する2つの面であって、正極合剤層23及び絶縁層24が設けられる面である。第1面22B及び第2面22Cのそれぞれに設けられる絶縁層24のうち、第1面22Bに設けられる絶縁層24が第1絶縁層24Aである。そして、第1面22Bと反対の第2面22Cに設けられる絶縁層24が第2絶縁層24Bである。なお、以下では、第1絶縁層24Aと第2絶縁層24Bとを区別しない場合には、単に絶縁層24とする。
【0035】
第1絶縁層24Aの厚さT1は、第2絶縁層24Bの厚さT2よりも大きい。第1絶縁層24Aの厚さT1及び第2絶縁層24Bの厚さT2は、一例として、それぞれが3.0μm以上20.0μm以下の範囲内において、第1絶縁層24Aの厚さT1が第2絶縁層24Bの厚さT2よりも大きくなるように構成される。
【0036】
第1絶縁層24Aの厚さT1及び第2絶縁層24Bの厚さT2を3.0μm以上とすることで、第1絶縁層24A及び第2絶縁層24Bの機械的強度を高めることができる。これにより、絶縁層24と負極板25との間に異物が介在した場合でも、異物が絶縁層24を貫通して正極側未塗工部22Aと負極板25とが短絡することを、より確実に防ぐことができる。第1絶縁層24Aの厚さT1及び第2絶縁層24Bの厚さT2を20.0μm以下とすることで、第1絶縁層24Aの厚さT1及び第2絶縁層24Bの厚さT2の増加に伴って正極側未塗工部22Aが曲げにくくなるような集箔性の低下を抑制できる。
【0037】
また、第1絶縁層24Aの厚さT1及び第2絶縁層24Bの厚さT2は、正極合剤層23の厚さT3よりも小さい。これにより、製造工程において、正極合剤層23の厚さT3を調整する際に、第1絶縁層24A及び第2絶縁層24Bがプレスロールに接触しないようにすることができる。なお、正極合剤層23の厚さT3は、一例として、20.0μm以上25.0μm以下である。
【0038】
第1絶縁層24A及び第2絶縁層24Bは、幅方向D2において、互いに等しい幅W1を有する。絶縁層24の幅W1は、正極合剤層23及び絶縁層24と対向する視点から積層方向D3に沿う方向に見たときに、正極合剤層23と絶縁層24との境界から絶縁層24の先端までの距離に相当する。
【0039】
絶縁層24の幅W1は、例えば、2.5mm以上4.5mm以下である。絶縁層24の幅W1を上記の範囲内とすることで、正極側未塗工部22Aと負極板25との短絡を好適に防止しつつ、正極側未塗工部22Aにおける幅方向D2の幅W2が過剰に小さくなることを防止できる。正極側未塗工部22Aの幅W2は、例えば、7.0mm以上13.0mm以下である。
【0040】
なお、正極合剤層23と絶縁層24との境界において、正極合剤層23の端部が絶縁層24に覆われる、もしくは、絶縁層24の端部が正極合剤層23に覆われる構造であってもよい。この場合、正極合剤層23及び絶縁層24と対向する視点から積層方向D3に沿う方向に見たときの絶縁層24の幅W1が上記の範囲を満たすように構成すればよい。
【0041】
図5に示すように、電極体20が備える正極側集電部20Aは、捲回された状態の正極側未塗工部22Aが積層方向D3に積層された状態で圧接されることによって構成される。正極側未塗工部22Aは、正極側集電部20Aの中心に向かって湾曲している。なお、図5では、積層方向D3における正極側集電部20Aの中心を中心線CLによって示す。
【0042】
電極体20の状態において、正極基材22の第1面22Bは、正極基材22のうち積層方向D3における正極側集電部20Aの中心側に面する。また、正極基材22の第2面22Cは、正極基材22のうち積層方向D3における正極側集電部20Aの中心に対して反対側に面する。第1絶縁層24Aは、正極基材22に対して積層方向D3における正極側集電部20Aの中央側(中心線CL側)に位置する。第2絶縁層24Bは、正極基材22に対して第1絶縁層24Aと反対に位置する。
【0043】
[実施形態の作用]
図6に示すように、正極基材22には、絶縁ペーストが乾燥されて絶縁層24が形成される際に体積が減少することで、絶縁層用結着剤に起因した収縮応力が作用する。例えば、正極基材22の第1面22Bには、第1絶縁層24Aが形成される際に、幅方向D2において正極合剤層23側に向けた第1収縮応力F1が作用する。正極基材22の第2面22Cには、第2絶縁層24Bが形成される際に、幅方向D2において正極合剤層23側に向けた第2収縮応力F2が作用する。
【0044】
収縮応力の大きさは、絶縁層24の体積に対して正の相関を有する。したがって、第1絶縁層24Aの厚さT1が第2絶縁層24Bの厚さT2よりも大きいことから、第1面22Bに作用する第1収縮応力F1は、第2面22Cに作用する第2収縮応力F2よりも大きくなる。そのため、正極基材22には、第1収縮応力F1と第2収縮応力F2との収縮応力差によって、積層方向D3における正極側集電部20Aの中央に向かって曲げるような合力F3が作用する。これにより、正極側集電部20Aを形成する際の正極側未塗工部22Aの集箔性を向上させることができる。
【0045】
例えば、第1絶縁層24A及び第2絶縁層24Bの幅W1が2.5mm以上であれば、第1絶縁層24Aと第2絶縁層24Bとの収縮応力差を好適に発現させることができる。また、合力F3は、正極基材22を正極側集電部20Aの中央に向かって曲げやすくする大きさであればよい。例えば、合力F3は、正極基材22の剛性に反して正極基材22を曲げる程度の大きさであってもよく、正極基材22の剛性によって正極基材22が曲がらない程度の大きさであってもよい。言い換えれば、厚さが相違する第1絶縁層24A及び第2絶縁層24Bは、正極基材22を曲げやすい程度の収縮応力差を有した状態でもよいし、正極基材22を曲げる程度の収縮応力差を有した状態でもよい。
【0046】
第1絶縁層24Aの厚さT1は、一例として、第2絶縁層24Bの厚さT2に対して1.2倍以上1.7倍以下であることが好ましい。第1絶縁層24Aの厚さT1が第2絶縁層24Bの厚さT2に対して1.2倍以上であれば、正極基材22に対して第1絶縁層24Aと第2絶縁層24Bとの収縮応力差を好適に作用させることができる。第1絶縁層24Aの厚さT1が第2絶縁層24Bの厚さT2に対して1.7倍以下であれば、第2絶縁層24Bが過剰に薄くなることで機械的強度が不足することを防止できる。
【0047】
第1絶縁層24Aの厚さT1は、一例として、5.0μm以上20.0μm以下であることが好ましい。このとき、第2絶縁層24Bの厚さT2は、3.0μm以上16.0μm以下の範囲内において、厚さT1が厚さT2に対して1.2倍以上1.7倍以下の条件を満たすように設定されることが好ましい。厚さT1及び厚さT2を上記範囲内とすることで、第2絶縁層24Bの機械的な強度の確保、第1絶縁層24Aの厚さT1の増加に伴う集箔性の低下の抑制、及び、正極基材22に対する収縮応力差による集箔性の向上効果を達成できる。
【0048】
収縮応力の大きさは、絶縁層24の全体の質量に対する絶縁層用結着剤の質量比に対して正の相関を有する。したがって、例えば、絶縁層24の全体の質量に対する絶縁層用結着剤の質量比が10質量%以上であれば、正極基材22に対して第1絶縁層24Aと第2絶縁層24Bとの収縮応力差を好適に作用させることができる。なお、収縮応力の大きさは、絶縁層用結着剤の種類や分子量にも依存する。
【0049】
また、正極基材22のうち絶縁層24が設けられる部分では、負極板25及びセパレータ28に対する第1面22Bの距離が、負極板25及びセパレータ28に対する第2面22Cの距離よりも小さくなる。そのため、負極板25及びセパレータ28と第1絶縁層24Aとの間に図6中に二点鎖線で示す異物Mが入り込んだ場合には、負極板25及びセパレータ28と第2絶縁層24Bとの間に異物Mが入り込んだ場合よりも、異物Mが絶縁層24に加える力が大きくなる。
【0050】
この点、第1絶縁層24Aの厚さT1を第2絶縁層24Bの厚さT2よりも大きくすることで、第1絶縁層24Aの機械的強度を高めることができるため、第1面22Bと負極板25との短絡をより確実に抑制できる。
【0051】
[リチウムイオン二次電池の製造方法]
図7に示すように、リチウムイオン二次電池10の製造方法は、ステップS1~S4を含む。ステップS1は、正極板21及び負極板25のそれぞれを製造する源泉工程である。正極板21の製造工程は、第1面22B及び第2面22Cのそれぞれにおいて、幅方向D2の両端に正極側未塗工部22Aを構成するように、1条の正極合剤ペーストと、2条の絶縁ペーストとが同時に塗工される。このとき、2条のうちの一方の絶縁ペーストが幅方向D2における正極合剤ペーストの一端と接するように、かつ、他方の絶縁ペーストが正極合剤ペーストの他端と接するように、2条の絶縁ペーストが塗工される。その後、正極合剤ペースト及び絶縁ペーストを乾燥させて正極合剤層23及び絶縁層24を形成する。次いで、正極基材22の両面に形成された正極合剤層23を押圧することで、正極合剤層23の厚みを調整する。その後、正極基材22を幅方向D2の中央で切断する。以上の工程によって、一度に2条の正極板21が製造される。
【0052】
負極板25の製造工程は、負極基材26の相反する方向に面する2つの面において、幅方向D2の両端に負極側未塗工部26Aを構成するように負極合剤ペーストを塗工する。その後、負極合剤ペーストを乾燥させて負極合剤層27を形成する。次いで、負極基材26の両面に形成された負極合剤層27を押圧することで、負極合剤層27の厚みを調整する。その後、負極基材26を幅方向D2の中央で切断する。以上の工程によって、一度に2条の負極板25が製造される。
【0053】
ステップS2では、正極板21と負極板25とをセパレータ28を介して積層した後、捲回し、さらに、偏平に押圧する。次いで、ステップS3では、捲回された状態の正極側未塗工部22Aが積層方向D3に積層されるように集箔する。この状態で、集箔された正極側未塗工部22Aを圧接することで正極側集電部20Aを形成する。圧接手段は、一例として、超音波溶接である。また、ステップS3において、正極側と同様の手順で負極側未塗工部26Aを圧接して負極側集電部20Bを形成する。以上の手順により、電極体20が製造される。
【0054】
ステップS4では、電極体20をケース11内に収容する封缶を行う。このとき、正極側集電部20Aは、正極側集電部材14Aを介して正極の外部端子13Aと電気的に接続される。負極側集電部20Bは、負極側集電部材14Bを介して負極の外部端子13Bと電気的に接続される。収容部11Aの上部は、蓋体12によって塞がれる。次いで、加熱処理によって電極体20の水分を除去した後、ケース11内に非水電解液を注入する。以上の手順により、リチウムイオン二次電池10が組み立てられる。
【0055】
[実施形態の効果]
上記実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)第1絶縁層24Aの厚さT1を第2絶縁層24Bの厚さT2よりも大きくすることで、正極基材22には積層方向D3における正極側集電部20Aの中央に向かって曲げるような合力F3が作用する。これにより、正極側集電部20Aを形成する際の正極側未塗工部22Aの集箔性を向上させることができる。したがって、正極側集電部20Aを形成する際の正極側未塗工部22Aの一部が引き裂ける(箔切れ)、もしくは、正極側未塗工部22Aの層同士が正しく接合されないといった集箔不良を抑制できる。
【0056】
(2)厚さT1を厚さT2に対して1.2倍以上1.7倍以下とすることで、正極基材22に対して第1絶縁層24Aと第2絶縁層24Bとの収縮応力差である合力F3を好適に作用させつつ、第2絶縁層24Bの機械的強度が不足することを防止できる。
【0057】
(3)厚さT1を5.0μm以上20.0μm以下、かつ、厚さT2を3.0μm以上16.0μm以下の範囲内とすることで、第2絶縁層24Bの機械的な強度を確保しつつ、第1絶縁層24Aの厚さT1の増加に伴う集箔性の低下を抑制できる。
【0058】
(4)絶縁層24の質量に対する絶縁層用結着剤の質量を30質量%以下とすることで、絶縁層24の機械的強度が過剰に低下することを防止できる。絶縁層24の質量に対する絶縁層用結着剤の質量を10質量%以上とすることで、絶縁層24と正極基材22との間の剥離強度を確保できるとともに、第1絶縁層24Aと第2絶縁層24Bとの収縮応力差である合力F3を好適に発現させることができる。
【0059】
(5)第1絶縁層24A及び第2絶縁層24Bの幅W1を2.5mm以上とすることで、正極側未塗工部22Aと負極板25との短絡を好適に防止しつつ、収縮応力差である合力F3を好適に発現させることができる。幅W1を4.5mm以下とすることで、正極側未塗工部22Aにおける幅方向D2の幅W2が過剰に小さくなることを防止できる。
【0060】
[変更例]
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
・集箔性に悪影響を与えないのであれば、第1絶縁層24A及び第2絶縁層24Bの幅W1が4.5mm超であってもよい。また、集箔性を向上させるための収縮応力差を確保でき、かつ、正極側未塗工部22Aと負極板25との短絡を防止できるのであれば、幅W1が2.5mm未満であってもよい。
【0061】
・絶縁層24の機械的強度を十分に確保できるのであれば、絶縁層24の質量に対する絶縁層用結着剤の質量が30質量%超であってもよい。また、集箔性を向上させるための収縮応力差を確保でき、かつ、絶縁層24と正極基材22との間の剥離強度を確保できるのであれば、絶縁層24の質量に対する絶縁層用結着剤の質量が10質量%未満であってもよい。
【0062】
・集箔性を向上させるための収縮応力差を確保できるのであれば、第1絶縁層24Aの厚さT1が5.0μm未満であってもよいし、第2絶縁層24Bの厚さT2が16.0μm超であってもよい。第1絶縁層24Aの厚さT1の増加に伴って集箔性が大きく低下しないのであれば、厚さT1が20.0μm超であってもよい。第2絶縁層24Bの機械的な強度を確保できるのであれば、第2絶縁層24Bの厚さT2が3.0μm未満であってもよい。
【0063】
・正極基材22に対して合力F3が好適に作用するのであれば、第1絶縁層24Aの厚さT1が第2絶縁層24Bの厚さT2に対して1.2倍未満であってもよい。また、例えば、第2絶縁層24Bの厚さT2を過剰に小さくするのではなく、第1絶縁層24Aの厚さT1を大きくするような場合には、厚さT1が厚さT2に対して1.7倍超であってもよい。なお、この場合、厚さT1は、厚さT1の増加に伴って正極側未塗工部22Aが曲げにくくなるような集箔性の低下が発現しない程度の大きさとすればよい。
【0064】
・第1絶縁層24Aの構成材料と第2絶縁層24Bの構成材料とは、同一でもよいし異なっていてもよい。仮に、第1絶縁層24Aの構成材料と第2絶縁層24Bの構成材料とが異なる場合には、第1絶縁層24Aに生じる第1収縮応力F1が第2絶縁層24Bに生じる第2収縮応力F2よりも大きくなるような構成材料とすればよい。
【0065】
・電極体20は、捲回体ではなく、矩形状の正極板21と矩形状の負極板25とをセパレータ28を介して積層した積層体をケース11に収容したものであってもよい。
・リチウムイオン二次電池10は、他の非水二次電池であってもよく、例えば、ニッケル水素蓄電池であってもよい。
【0066】
・リチウムイオン二次電池10は、自動搬送機や荷役用の特殊自動車、電気自動車、ハイブリッド自動車等の他、コンピュータ、その他の電子機器に搭載されるものであってもよく、これ以外のシステムを構成するものであってもよい。例えば、船舶、航空機等の移動体に設けられるものであってもよく、発電所から変電所等を介して二次電池が設置されたビルや家庭等に電力を供給する電力供給システムであってもよい。
【0067】
[実施例]
以下、実施例1及び比較例1~4について説明する。なお、以下の実施例は、上記実施形態の効果を説明するための一例であって、本発明を限定するものではない。実施例1及び比較例1~4の製造条件、並びに、評価結果を図8に示す。
【0068】
[実施例1]
実施例1では、第1絶縁層24Aの厚さT1を13μm、第2絶縁層24Bの厚さT2を10μmとした正極板21を備える電極体20を作製した。実施例1では、第2絶縁層24Bの厚さT2に対する第1絶縁層24Aの厚さT1が1.3倍であった。実施例1では、第1絶縁層24A及び第2絶縁層24Bを形成するために、同一の絶縁ペーストを用いた。実施例1では、第1絶縁層24Aの全体に対する絶縁層用結着剤の質量比が20%、かつ、第2絶縁層24Bの全体に対する絶縁層用結着剤の質量比が20%であった。
【0069】
[比較例1]
比較例1では、正極板21において、第1絶縁層24A及び第2絶縁層24Bの何れも形成しなかった点を除き、実施例1と同様に電極体20を作製した。
【0070】
[比較例2]
比較例2では、第1絶縁層24Aの厚さT1を2μm、第2絶縁層24Bの厚さT2を2μmとした点を除き、実施例1と同様に電極体20を作製した。
【0071】
[比較例3]
比較例3では、第1絶縁層24Aの厚さT1を10μm、第2絶縁層24Bの厚さT2を10μmとした点を除き、実施例1と同様に電極体20を作製した。
【0072】
[比較例4]
比較例4では、第1絶縁層24Aの厚さT1を20μm、第2絶縁層24Bの厚さT2を20μmとした点を除き、実施例1と同様に電極体20を作製した。
【0073】
[異物耐性評価]
各電極体20において、第1面22B側に位置する第1絶縁層24Aとセパレータ28との間、及び、第2面22C側に位置する第2絶縁層24Bとセパレータ28との間のそれぞれに所定の大きさの異物Mを挟み込んだ。なお、比較例1では、実施例1において第1絶縁層24A及び第2絶縁層24Bが設けられた位置と同じ位置に異物Mを配置した。そして、異物Mが絶縁層24を貫通して正極基材22に達したか否かを、第1面22B側及び第2面22C側のそれぞれについて判定した。異物Mが絶縁層24を貫通せず、正極基材22に達していないものを良(○)、異物Mが絶縁層24を貫通して正極基材22に接触したものを不良(×)とした。
【0074】
[集箔性評価]
実施例1及び比較例1~4において、各電極体20の正極側集電部20Aにおける集箔不良の有無を確認した。なお、集箔性評価に供した電極体20は、異物耐性評価に用いた電極体20とは異なるものである。
【0075】
[評価結果]
図8に示すように、異物耐性評価について、実施例1及び比較例3,4では、異物Mが第1絶縁層24A及び第2絶縁層24Bの何れをも貫通せず、正極基材22に達していない状態であった。一方、比較例1では、電極体20が第1絶縁層24A及び第2絶縁層24Bの何れも備えないため不良と判定された。また、比較例2では、異物Mが第1絶縁層24Aを貫通して正極基材22に達していた。同様に、比較例2では、異物Mが第2絶縁層24Bを貫通して正極基材22に達していた。これは、比較例2において、厚さT1及び厚さT2が何れも小さく、第1絶縁層24A及び第2絶縁層24Bの機械的強度が不足していたためと考えられる。
【0076】
集箔性評価について、実施例1及び比較例1,2では、正極側集電部20Aにおいて、集箔不良は確認されず、良好な接合状態であった。これに対して、比較例3,4では、正極側未塗工部22Aが引き裂けるような集箔不良が確認された。特に、比較例4では、比較例3よりも集箔不良の発生率が高かった。これは、絶縁層24の厚さの増加に伴って、正極基材22のなかで絶縁層24が設けられた部分が曲がりにくくなることで、正極側未塗工部22Aを集箔する際に、正極側未塗工部22Aに無理な力が加わったためである。
【0077】
以上より、絶縁層24の機械的強度を高めるために絶縁層24の厚さを大きくした場合でも、第1絶縁層24Aの厚さT1を第2絶縁層24Bの厚さT2よりも大きくすることで、正極側集電部20Aを形成する際の集箔性を高めることができることが確認された。
【符号の説明】
【0078】
D2…幅方向
D3…積層方向
T1,T2…厚さ
10…リチウムイオン二次電池
20…電極体
20A…正極側集電部
20B…負極側集電部
21…正極板
22…正極基材
22A…正極側未塗工部
22B…第1面
22C…第2面
23…正極合剤層
24…絶縁層
24A…第1絶縁層
24B…第2絶縁層
25…負極板
26…負極基材
27…負極合剤層
28…セパレータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8