(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004429
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】垂直離着陸機の離着陸場及び垂直離着陸機の搬送方法
(51)【国際特許分類】
E01F 3/00 20060101AFI20240109BHJP
B64F 1/12 20060101ALI20240109BHJP
B64C 29/00 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
E01F3/00
B64F1/12
B64C29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138980
(22)【出願日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】P 2022103611
(32)【優先日】2022-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】510262150
【氏名又は名称】エアロファシリティー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147348
【弁理士】
【氏名又は名称】堀井 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】木下 幹巳
(57)【要約】
【課題】垂直離着陸機の離着陸場において、離着陸間隔を短縮し、離着陸回数を増加させ、かつ、安全に離着陸できる離着陸場を提供すること。また、関連する課題として、垂直離着陸機の向きを搬送中に変更することにより、時間を短縮しうる垂直離着陸機の搬送方法を提供すること。
【解決手段】垂直離着陸機の離着陸場であって、垂直離着陸機の離着陸を行う2カ所以上の離着陸帯と、前記離着陸帯から、あるいは前記離着陸帯へ、垂直離着陸機を搬送する搬送手段とを有すること。更に、前記搬送手段が垂直離着陸機向き変更部を有すること
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-垂直離着陸機の離着陸を行う2カ所以上の離着陸帯と、
-前記離着陸帯から、あるいは前記離着陸帯へ、垂直離着陸機を搬送する搬送手段と
を有する垂直離着陸機の離着陸場。
【請求項2】
前記2カ所以上の離着陸帯が、少なくとも1の離陸専用離着陸帯と、少なくとも1の着陸専用離着陸帯とを含むことを特徴とする請求項1に記載の垂直離着陸機離着陸場。
【請求項3】
前記搬送手段が垂直離着陸機向き変更部を有することを特徴とする請求項1に記載の垂直離着陸機離着陸場。
【請求項4】
前記離着陸帯が、前記搬送手段を兼ねることを特徴とする請求項1に記載の垂直離着陸機離着陸場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直離着陸機の離着陸間隔を短縮し、離着陸回数を増加させ、かつ、安全に離着陸できる垂直離着陸機の離着陸場及び離着陸場に関連する垂直離着陸機の地上搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、VTOL(Vertical Take-Off and Landing aircraft)と呼ばれる垂直離着陸機の需要が拡大しつつある。垂直離着陸機は全く滑走しないで垂直方向に離着陸する航空機(飛行体)であり、有人機では、「空飛ぶクルマ」「空飛ぶタクシー」として実用化に近づいており、無人機ではドローンによる物品の配送などに広く使われ始めている。
【0003】
なお、本発明において、通常運航におけるヘリコプターは、垂直離着陸機には含まれないものとする。ヘリコプターは、通常時は垂直ではなくやや斜めに離着陸を行う(離着陸勾配)こと、航空法上もそのような観点からヘリポートの規制は、離着陸勾配を考慮したものになっていることなどからである。
【0004】
将来的な垂直離着陸機の普及に伴い、垂直離着陸機の離着陸場および駐機場が多数必要となる。また、中核となる離着陸場は離着陸数の増加、離着陸間隔の短縮、省スペース化が望まれる。
【0005】
また、垂直離着陸機の離着陸を速やかに行うために、垂直離着陸機の搬送(移動)を迅速に行うことができる方法も望まれている。
【0006】
例えば、特許文献1には、発着台と、その周囲に配置された壁とからなるヘリコプターの発着場の技術思想が開示されているが、垂直離着陸機の離着陸場に関する発明でないことと、離着陸数の増加、離着陸間隔の短縮という観点については記載がなく、本発明の先行技術とはなり得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする課題は、垂直離着陸機の離着陸場において、離着陸間隔を短縮し、離着陸回数を増加させ、かつ、安全に離着陸できる離着陸場を提供することである。
【0009】
また、それに関連する課題として、垂直離着陸機においては、離着陸時は風向きに正対しなくてはならない。そのために、離着陸場に搬送後に向きを変えるのではなく、風向きや、離着陸場での駐機向きを搬送中に変更することにより、着陸から駐機、充電、又は離陸に掛かる時間を短縮しうる垂直離着陸機の搬送方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、垂直離着陸機の離着陸場であって、
垂直離着陸機の離着陸を行う2カ所以上の離着陸帯と、
前記離着陸帯から、あるいは前記離着陸帯へ、垂直離着陸機を搬送する搬送手段と
を有することを特徴とする。
【0011】
ここで、離着陸帯とは、垂直離着陸機が安全に離着陸しうる構造及び機能を有する場所である。このようにすると、2カ所以上の離着陸帯があるので、同時にあるいは短時間の間隔で垂直離着陸機の離着陸を行わせることができ、極めて有効である。
【0012】
このようにすると、搬送手段を有することから、離着陸帯への垂直離着陸機の移動、あるいは離着陸帯からの垂直離着陸機の移動が速やかに行えるため、効率的である。
【0013】
なお、搬送手段とは、離着陸帯から垂直離着陸機を受け取って移動させ、あるいは、垂直離着陸機を移動させて離着陸帯に受け渡すことができる機構であればどのようなものであってもよく、無人搬送車(AGV、AMRなどと呼ばれるもの)によるもの、フォークリフトなどの動力車あるいは人力により牽引あるいは押圧(後押し)していくのもの(自由車輪またはボール式車輪付き台車などを用いても用いなくてもよい)などが例示できるが、それに限定されない。
【0014】
また、搬送手段については、それ自体が、現在地、目的地を算出して走行する手法、いわゆる自律航法が最も好適ではあるが、磁気棒等を走行ルートの地面に埋め込み、それらを読み取りながら走行する手法、いわゆるAGVに用いられるAutomatic Guided 運航も好適である。また、搬送路面にレールを設置して、レール上を走行する方法であってもよい。
【0015】
次に、本発明の第2の態様は、第1の態様の垂直離着陸機の離着陸場であって、
前記2カ所以上の離着陸帯が、少なくとも1の離陸専用離着陸帯と、少なくとも1の着陸専用離着陸帯とを含むことを特徴としてもよい。
【0016】
すなわち、離着陸帯が2カ所の場合は、1カ所が離陸専用離着陸帯(離陸帯)で、もう1カ所が着陸専用離着陸帯(着陸帯)であり、離着陸帯が3カ所以上であれば、そのうち少なくとも1カ所が離陸専用離着陸帯(離陸帯)で、少なくとも1カ所が着陸専用離着陸帯(離陸帯)であるような態様である。
【0017】
このようにすると、離陸帯と着陸帯を区分することで効率がよく、安全でスムーズな離着陸場を提供できる。
【0018】
なお、離陸帯と着陸帯とは、季節や風向き、天候によって運用を変更できることが好ましいが、運用を変更せず、長期にわたり固定としてもよい。
【0019】
なお、異なる離着陸帯は、離着陸の際のミスを防止するために、異なる色彩としたり、識別可能な数字・記号・イラスト・模様を付してもよい。このようにすれば、離着陸帯を誤認することでの事故や遅延が防止でき、安全でスムーズな運用が可能となる。
【0020】
また、異なる離着陸帯は、全方位の離着陸を満足することが好ましい。離着陸時、機体は風向に正対する事により安全な運航が可能であり、風向きによって離着陸場を使い分けることで、より安全でスムーズな運航を提供することができる。
【0021】
更に、搬送手段は、離着陸帯から、あるいは離着陸帯への搬送のみならず、駐機場、充電施設(電動垂直離着陸機の場合)、給油施設(エンジン駆動の垂直離着陸機の場合)、乗客の乗降場、整備場、展示場などとの間を相互に垂直離着陸機を搬送(移動)できるものであることが望ましい。
【0022】
次に、本発明の第3の態様は、第1の態様の垂直離着陸機の離着陸場であって、
前記搬送手段が垂直離着陸機向き変更部を有することを特徴としてもよい。
【0023】
ここで、向き変更部とは、垂直離着陸機を搬送中に次工程のための適切な向き(姿勢)に変更する部分であり、搬送手段がAGVなどの回転可能な手段の場合にはそれによって垂直離着陸機を回転させ、搬送手段に回転機能を有しない場合には、搬送経路を適宜設定することによって実現できる。なお、向き変更部の構成はこれらに限定されるものではなく、垂直離着陸機の向き(姿勢)を変更できるものであればどのようなものであってもよい。
【0024】
このようにすると、垂直離着陸機を搬送中に、次工程(離陸、駐機、乗降、充電など)のために適切な向きに変更できるため、次工程の所要時間を短縮することが可能となる。
【0025】
あるいは、展示などの際には、搬送手段の途中に展示場所を設けることで、垂直離着陸機を回転させて、全体を展示に供することも可能である。
【0026】
次に、本発明の第4の態様は、第1の態様の垂直離着陸機の離着陸場であって、
前記離着陸帯が、前記搬送手段を兼ねることを特徴としてもよい。
【0027】
ここで離着陸帯が搬送手段を兼ねるとは、離着陸帯自体をAGV、AMRなどの無人搬送車で構成することである。無人搬送車と一体である上面が、離着陸帯として機能するようになっているものである。
【0028】
このようにすると、離着陸帯から次工程への移動において、ホバー移動や地上タクシー移動を行うことなく、即座に搬送が開始でき、時間と手間を省くことができる。
【0029】
上記のように、本発明の垂直離着陸機の離着陸場及び垂直離着陸機の搬送方法によれば、離着陸間隔を短縮し、離着陸回数を増加させ、かつ、安全に離着陸できる離着陸場を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る垂直離着陸機離着陸場の平面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る垂直離着陸機離着陸場の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の第1の実施形態の垂直離着陸機離着陸場1について図面を用いて説明する。なお、以下では本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
【0032】
図1は本発明の第1の実施形態に係る垂直離着陸機離着陸場1の平面図である。離着陸場1は、2カ所の離着陸帯10a、10bを有している。
【0033】
また、離着陸場から、あるいは離着陸場への垂直離着陸機の移動のための搬送手段20を有している。
【0034】
更に、搬送手段20の端部には、駐機場所30が、図では6カ所(数字1から6で表示)が設けられている。
【0035】
なお、ここで、離着陸帯10a、10bは、垂直離着陸機の離着陸に必要な機能を備えているものとし、また、その上面(離着陸面)は、異なる色彩で塗装されており、更に目印のためのVの文字が表示されている。
【0036】
また、搬送手段20としては、図示の経路に沿って移動できる図示しない無人移動車を用いるものとし、無人移動車と経路とを含めて搬送手段20とする。
【0037】
無人移動車は、その上部に垂直離着陸機を載置できるものであり、離着陸帯10a、離着陸帯10b、駐機スペース30の間を、経路に沿って移動できる。
【0038】
図2は本発明の第1の実施形態に係る垂直離着陸機離着陸場1の説明図であり、特に、搬送手段の一部である無人移動車の向きの変更の動作を示したものである。
【0039】
図中でPで示される無人移動車21は、垂直離着陸機をPの字の向きに載置しており、離着陸帯10bから出発する。
【0040】
無人移動車21が、自律で、またはガイドに誘導されて走行して、経路22上の図示の位置22aに到着すると、無人移動車21が略90度反時計方向に回転する。
【0041】
回転を完了した無人移動車21は、Pの字と逆の向きに進行し、
図1に示された駐機場30の5番のスペースに到着し、移動を完了する。
【0042】
なお、移動手段20の中での垂直離着陸機の向きの変更は、この例によらず、どのような方法であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の垂直離着陸機の離着陸場及び垂直離着陸機の搬送方法は、今後、需要が増大する垂直離着陸機の離着陸に際して、安全で、効率のよい運航を実現できることから、大いに産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0044】
1 垂直離着陸機離着陸場
10 離着陸帯
20 搬送手段
21 無人移動車
22 経路
30 駐機スペース