IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アート金属工業株式会社の特許一覧

特開2024-44291ヒートシンクおよびヒートシンクの製造方法
<>
  • 特開-ヒートシンクおよびヒートシンクの製造方法 図1
  • 特開-ヒートシンクおよびヒートシンクの製造方法 図2
  • 特開-ヒートシンクおよびヒートシンクの製造方法 図3
  • 特開-ヒートシンクおよびヒートシンクの製造方法 図4
  • 特開-ヒートシンクおよびヒートシンクの製造方法 図5
  • 特開-ヒートシンクおよびヒートシンクの製造方法 図6
  • 特開-ヒートシンクおよびヒートシンクの製造方法 図7
  • 特開-ヒートシンクおよびヒートシンクの製造方法 図8
  • 特開-ヒートシンクおよびヒートシンクの製造方法 図9
  • 特開-ヒートシンクおよびヒートシンクの製造方法 図10
  • 特開-ヒートシンクおよびヒートシンクの製造方法 図11
  • 特開-ヒートシンクおよびヒートシンクの製造方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044291
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ヒートシンクおよびヒートシンクの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
H01L23/36 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149726
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】390008822
【氏名又は名称】アート金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤尾 学
(72)【発明者】
【氏名】荒引 博史
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136BA03
5F136BA06
5F136FA01
5F136FA02
5F136GA14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】放熱性を向上させるヒートシンク及びヒートシンクの製造方法を提供する。
【解決手段】ヒートシンク1は、ベース部11と、ベース部と接続された中実部12aと、中実部に接続された多孔質部12bと、を有し、多孔質部に多孔質部を貫通した流路が形成されたフィン部12と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部と、
前記ベース部と接続された中実部と、前記中実部に接続された多孔質部と、を有し、前記多孔質部に前記多孔質部を貫通した流路が形成されたフィン部と、
を備えるヒートシンク。
【請求項2】
前記多孔質部は、前記中実部を囲んだ、
請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項3】
前記多孔質部の外面の全体に前記流路の複数の開口部が分散して設けられた、
請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項4】
前記中実部は、前記ベース部から延びた第1の部分と、前記第1の部分から突出した凸部と、を有し、
前記多孔質部は、前記第1の部分および前記凸部と接続された、
請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項5】
前記フィン部は、円柱状である、
請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項6】
前記フィン部は、板状である、
請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項7】
ベース部と、
前記ベース部に接続された多孔質部、を有し、前記多孔質部に前記多孔質部を貫通した流路が形成されるとともに、前記多孔質部の外面の全体に前記流路の複数の開口部が分散して設けられたフィン部と、
を備えるヒートシンク。
【請求項8】
ベース部と、
前記ベース部と接続された中実部と、前記中実部に接続された多孔質部と、を有し、前記多孔質部に前記多孔質部を貫通した流路が形成されたフィン部と、
を備えるヒートシンクの製造方法であって、
前記ヒートシンクを形成するための水溶性中子を鋳型内に配置した後に前記鋳型内に溶融した金属を流し入れ、前記溶融した金属を凝固させて前記水溶性中子と金属とが一体化した中間構造物を鋳造する工程と、
前記中間構造物を構成する前記水溶性中子を溶解させる工程と、
を含む、ヒートシンクの製造方法。
【請求項9】
ベース部と、
前記ベース部に接続された多孔質部、を有し、前記多孔質部に前記多孔質部を貫通した流路が形成されるとともに、前記多孔質部の外面の全体に前記流路の複数の開口部が分散して設けられたフィン部と、
を備えるヒートシンクの製造方法であって、
前記ヒートシンクを形成するための水溶性中子を鋳型内に配置した後に前記鋳型内に溶融した金属を流し入れ、前記溶融した金属を凝固させて前記水溶性中子と金属とが一体化した中間構造物を鋳造する工程と、
前記中間構造物を構成する前記水溶性中子を溶解させる工程と、
を含むヒートシンクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシンクおよびヒートシンクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発熱体に接続されるベース部と、ベース部から延びた多孔質構造のフィン部と、を備え、発熱体から伝達された熱を放熱することにより発熱体を冷却可能なヒートシンクが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-179542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のヒートシンクでは、放熱性の向上が図れれば、発熱体の冷却をより効率的に行うことができ有益である。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、ヒートシンクの放熱性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様としてのヒートシンクは、ベース部と、前記ベース部と接続された中実部と、前記中実部に接続された多孔質部と、を有し、前記多孔質部に前記多孔質部を貫通した流路が形成されたフィン部と、を備える。
【0007】
また、本発明の一態様としてのヒートシンクは、ベース部と、前記ベース部に接続された多孔質部、を有し、前記多孔質部に前記多孔質部を貫通した流路が形成されるとともに、前記多孔質部の外面の全体に前記流路の複数の開口部が分散して設けられたフィン部と、を備える。
【0008】
また、本発明の一態様としてのヒートシンクの製造方法は、ベース部と、前記ベース部と接続された中実部と、前記中実部に接続された多孔質部と、を有し、前記多孔質部に前記多孔質部を貫通した流路が形成されたフィン部と、を備えるヒートシンクの製造方法であって、前記ヒートシンクを形成するための水溶性中子を鋳型内に配置した後に前記鋳型内に溶融した金属を流し入れ、前記溶融した金属を凝固させて前記水溶性中子と金属とが一体化した中間構造物を鋳造する工程と、前記中間構造物を構成する前記水溶性中子を溶解させる工程と、を含む。
【0009】
また、本発明の一態様としてのヒートシンクの製造方法は、ベース部と、前記ベース部に接続された多孔質部、を有し、前記多孔質部に前記多孔質部を貫通した流路が形成されるとともに、前記多孔質部の外面の全体に前記流路の複数の開口部が分散して設けられたフィン部と、を備えるヒートシンクの製造方法であって、前記ヒートシンクを形成するための水溶性中子を鋳型内に配置した後に前記鋳型内に溶融した金属を流し入れ、前記溶融した金属を凝固させて前記水溶性中子と金属とが一体化した中間構造物を鋳造する工程と、前記中間構造物を構成する前記水溶性中子を溶解させる工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1の実施形態に係るヒートシンクおよび発熱体の例示的な斜視図である。
図2図2は、第1の実施形態に係るヒートシンクの例示的な側面図である。
図3図3は、第1の実施形態に係るヒートシンクの一部および発熱体の例示的な斜視図である。
図4図4は、第1の実施形態に係るヒートシンクの一部の例示的な断面図である。
図5図5は、第1の実施形態の係るヒートシンクの一部の例示的な図である。
図6図6は、第1の実施形態に係るヒートシンクの製造方法の手順を示すフローチャートである。
図7図7は、第1の実施形態に係るヒートシンクの製造方法を示す工程図である。
図8図8は、第2の実施形態に係るヒートシンクおよび発熱体の例示的な斜視図である。
図9図9は、第2の実施形態に係るヒートシンクの一部および発熱体の例示的な斜視図である。
図10図10は、第2の実施形態に係るヒートシンクの製造方法を示す工程図である。
図11図11は、第3の実施形態に係るヒートシンクの一部の例示的な断面図である。
図12図12は、第4の実施形態に係るヒートシンクの一部の例示的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および効果は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0012】
また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実と異なる場合がある。また、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、本明細書では、序数は、部品や、部材、部位、位置、方向等を区別するためだけに用いられており、順番や優先度を示すものではない。
【0013】
(第1の実施形態)
<ヒートシンク1の構成>
図1は、第1の実施形態に係るヒートシンク1および発熱体2の例示的な斜視図である。図2は、第1の実施形態に係るヒートシンク1の例示的な側面図である。図3は、第1の実施形態に係るヒートシンク1の一部および発熱体2の例示的な斜視図である。
【0014】
図1図3に示されるように、ヒートシンク1は、ベース部11と、ベース部11から突出した複数のフィン部12と、を備える。ヒートシンク1は、例えばアルミニウム等の金属材料によって作られている。
【0015】
ベース部11は、発熱体2(図1図3)と重ねられる。ベース部11は、直方体状に形成されて、内部に流路20が設けられている。発熱体2は、例えば電子部品や内燃機関等であるが、これに限定されない。発熱体2は、冷却対象である。
【0016】
以下の説明では、便宜上、互いに直交する三方向として、X方向、Y方向、およびZ方向が定義されている。Z方向は、ベース部11と発熱体2との重ね方向に沿う。X方向およびY方向は、ベース部11と発熱体2との重ね方向と直交する。また、以下の説明では、Z方向が鉛直方向の上方と一致するようヒートシンク1が設置された場合の例である。なお、ヒートシンク1の設置姿勢は上記に限定されない。また、図1では、発熱体2がヒートシンク1の下壁11a側に設置された例が示されているが、発熱体2はヒートシンク1の上壁11b側にも設置することができる。なお、発熱体2の設置位置は特に限定されない。
【0017】
ベース部11は、下壁11aと、上壁11bと、二つの端壁11c,11dと、二つの側壁11e,11fと、を有する。ベース部11は、中実である。別の言い方をすると、ベース部11は、非多孔質構造である。
【0018】
下壁11aおよび上壁11bは、いずれも、Z方向と直交する方向(X-Y平面)に沿って延びており、Z方向に間隔をあけて互いに平行に設けられている。下壁11aは、ベース部11の下端部を構成し、上壁11bは、ベース部11の上端部を構成している。
【0019】
端壁11cおよび端壁11dは、いずれも、軸方向すなわちX方向と直交する方向(Y-Z平面)に沿って延びており、X方向に間隔をあけて互いに平行に設けられている。端壁11cは、下壁11aおよび上壁11bのX方向の反対方向の端部の間に亘り、端壁11dは、下壁11aおよび上壁11bのX方向の端部の間に亘っている。
【0020】
側壁11eおよび側壁11fは、いずれも、Y方向と直交する方向(X-Z平面)に沿って延びており、Y方向に間隔をあけて互いに平行に設けられている。側壁11eは、下壁11aおよび上壁11bのY方向の端部の間に亘り、側壁11fは、下壁11aおよび上壁11bのY方向の反対方向の端部の間に亘っている。
【0021】
流路20は、下壁11a、上壁11b、端壁11c,11d、および側壁11e,11fに囲まれている。また、端壁11c,11dには、ぞれぞれ、孔11g,11hが設けられている。孔11g,11hは、端壁11c,11dをそれぞれX方向に貫通し、流路20と通じている。なお、孔11gおよび孔11hの位置および数は上記に限定されない。孔11g,11h同士が向かい合っていなくてもよいし、一面に孔11g,11h(複数の孔)があっても構わない。また、孔11g,11hは、側面(側壁11e,11f)に設けられても構わない。
【0022】
複数のフィン部12は、下壁11aと上壁11bとに亘っている。すなわち、複数のフィン部12は、下壁11aからZ方向に延びるということもできるし、上壁11bからZ方向の反対方向に延びるといこうこともできる。複数のフィン部12は、互いに間隔をあけて行列状に並べられている。なお、フィン部12は、X方向またはY方向に延びるように設置するこもできる。複数のフィン部12の設置位置は、上記に限定されない。
【0023】
図4は、第1の実施形態に係るヒートシンク1の一部の例示的な断面図である。図5は、第1の実施形態の係るヒートシンク1の一部の例示的な図である。
【0024】
図4に示されるように、フィン部12は、中実部12aと、多孔質部12bと、を有する。中実部12aは、ベース部11の下壁11aおよび上壁11bに接続されている。中実部12aは、ベース部11の下壁11aおよび上壁11bと連続している。中実部12aは、中実の円柱状である。別の言い方をすると、中実部12aは、非多孔質構造の円柱状である。
【0025】
多孔質部12bは、中実部12aと、ベース部11の下壁11aおよび上壁11bとに接続されている。多孔質部12bは、中実部12aと、ベース部11の下壁11aおよび上壁11bと連続している。多孔質部12bは、中実部12aを囲んだ円筒状である。
【0026】
多孔質部12bは、複数の孔14が設けられた多孔質構造である。複数の孔14は、多孔質部12bを貫通している。各孔14は、開口部14aを有する。複数の孔14は、複数の孔14Aと、複数の孔14Bと、を含む。
【0027】
図4および図5に示されるように、孔14Aは、多孔質部12bの外面12baと、中実部12aの外面12aa(外周面)とに亘っている。すなわち、孔14Aの一つの開口部14aは、中実部12aの外面12aaに開口し、孔14Aの別の開口部14aは、中実部12aの外面12aaに面している。外面12baは、外周面12bbを含む。外面12baは、流路20と面している。
【0028】
図4に示されるように、孔14Bは、多孔質部12bをZ方向に貫通している。すなわち、孔14Aの一つの開口部14aは、下壁11aに面し、孔14Bの別の開口部14aは、上壁11bに面している。
【0029】
複数の孔14Aと複数の孔14Bとは、互い交差している。複数の孔14Aおよび複数の孔14B、すなわち複数の孔14によって、流路13が構成されている。流路13は、多孔質部12bを貫通している。複数の孔14の複数の開口部14a、すなわち流路13の複数の開口部14aは、多孔質部12bの外面12baの全体に分散して設けられている。なお、図4では、一例として、孔14A,14Bが直線状の例が示されているが、孔14A,14Bの形状はこれに限定されない。
【0030】
上記構成のヒートシンク1では、孔11gから流路20に冷却用流体が供給される。冷却用流体は、例えば液体であるが、気体であってもよい。流路20に供給された冷却用流体は、流路20を孔11hに向かって流れる。このとき、ベース部11の熱が冷却用流体に伝わり、ベース部11ひいては発熱体2が冷却される。また、冷却用流体は、流路20を進む途中でフィン部12の多孔質部12bの流路13を通過する。このとき、フィン部12の熱が冷却用流体に伝わりフィン部12ひいてはベース部11および発熱体2が冷却される。
【0031】
<ヒートシンク1の製造方法>
次に、ヒートシンク1の製造方法を説明する。図6は、第1の実施形態に係るヒートシンク1の製造方法の手順を示すフローチャートである。図7は、第1の実施形態に係るヒートシンク1の製造方法を示す工程図である。
【0032】
ヒートシンク1の製造方法は、ヒートシンク1を形成するための水溶性中子50を準備する工程である準備工程(図6のS1、図7の(a))と、水溶性中子50を鋳型53内に配置した後に鋳型53内に溶融した金属60を流し入れ、溶融した金属60を凝固させて水溶性中子50と金属とが一体化した中間構造物70を鋳造する工程(図6のS2~S4、図7の(b)~(d))と、中間構造物70を構成する水溶性中子50を溶解(溶出)させる工程(図6のS5、図7の(e))と、を含む。以下に、各工程を詳細に説明する。なお、図7は、フィン部12が6個のヒートシンク1を製造する例である。
【0033】
<準備工程>
準備工程((図6のS1、図7の(a))は、空隙(貫通孔)を有する水溶性中子50を準備する工程である。水溶性中子50は、図7に示されるように、水溶性物質を固化することで形成される固化物である。水溶性物質は、例えば塩(塩化ナトリウム)である。水溶性中子50は、塩の複数の水溶性物質の粒子の塊状物の集合であり、隣り合う塊状物間には、空隙があり、その空隙は水溶性中子50を貫通して設けられている。
【0034】
図7の(a)に示されるように、水溶性中子50は、第1の部分51と、複数の第2の部分52と、を有する。第1の部分51は、直方体状である。第1の部分51には、複数の孔51aと、孔51bと、孔51cと、が形成されている。第1の部分51は、ヒートシンク1の流路20を形成するための部分である。第1の部分51の孔51a,51bは、ヒートシンク1の孔11g,11hを形成するための部分である。複数の第2の部分52は、円筒状に形成されおり、内側に孔52aが形成されている。複数の第2の部分52は、第1の部分51の複数の孔51aに入れられている。例えば、第2の部分52の水溶性物質の粒子の大きさは、第1の部分51よりも大きい。第2の部分52には複数の空隙(孔)が貫通して設けられている。第2の部分52は、フィン部12を形成するための部分である。詳細には、第2の部分52の孔52aの部分が、中実部12aを形成するための部分であり、第2の部分52の空隙が、多孔質部12bを形成するための部分である。水溶性中子50は、塩中子とも称される。
【0035】
上記のとおり、水溶性中子50は、水溶性物質を固めたものであり、通常は、水溶性物質の粒子を成形型で固めて一定形状に形成されている。成形型で形成された塊状物は、例えば、同一形状又は略同一形状のものが用いられる。なお、形状が異なる複数の塊状物が用いられてもよい。複数の塊状物は、規則的に配列されてもよいし、不規則に配列されてもよい。大きさや形状が同一又は略同一の複数の塊状物を用いる場合は、複数の塊状物を規則的に配列しやすい。また、複数の塊状物は、冷却媒体が流れる冷却水路の向きに沿って同一又は略同一のものを規則的に配列してもよい。また、複数の塊状物が、大きさや形状が異なるものが含まれる場合、内側、中心側、外側のそれぞれで同一又は略同一のものを規則的に配列してもよい。
【0036】
塊状物を成形するための成形型の形状、大きさ、材質等は、水溶性物質の性質との関係で悪影響が生じないものであれば特に限定されない。通常は、酸化しにくい材質、例えば、木、樹脂、ステンレス鋼等の材質からなる成形型が用いられる。塊状物は、1つ1つを成形型で成形した後に、それら塊状物を整列させて水溶性中子50としてもよい。また、塊状物は、水溶性物質を成形型に入れて一度に数個の塊状物を形成し、それをさらに数個並べて水溶性中子50を成形したものであってもよい。水溶性中子50を一度に成形することは、全ての塊状物に圧力を加えなければならず、困難であるが、複数個の塊状物であれば圧力を加えて形成することができる。なお、水溶性物質は、水に溶ける物質であり、塩化ナトリウムであることが好ましく、通常は、塩化ナトリウム粉末が用いられる。
【0037】
塊状物同士は、接合している。なお、接合は接続を含む。塊状物が接合することで、後述の鋳造で溶融した金属60が水溶性中子50の隙間内に入り込んでその後に凝縮して金属60になった場合には、その接合部分は、貫通気孔(貫通孔)となる。貫通気孔は、流路13となり、流体(一例として液体)が流れる箇所である。塊状物の接合は、塊状物を規則的又は不規則に並べた後に水溶性物質の水溶液をかけることで行うことができる。
【0038】
このようにして水溶性中子50を準備すなわち作成することができる。水溶性中子50のうち第2の部分52のかさ密度は30~80%の範囲内であることが好ましく、この範囲の水溶性中子50は、鋳造により溶融した金属60を空隙に流し込みやすく、さらに水溶性中子50を溶解した後においては、流動抵抗の小さい流路13として低い圧力損失で流体を通過させることができる。水溶性中子50のうち第1の部分51のかさ密度は第2の部分52のかさ密度よりも大きく、第1の部分51内には、溶融した金属が流入しない。
【0039】
<鋳造工程>
鋳造工程では、まずは、水溶性中子50を鋳型53内にセット(配置)する(図6のS2)。次に、鋳型53内に溶融した金属60を流し込んで水溶性中子50と金属60とを一体化する(図6のS3、図7の(b)、(c))。次に、金属60を冷却して凝固させることで、水溶性中子50と金属60とから構成される中間構造物70を作る(図6のS4、図7の(d))。この鋳造工程では、水溶性中子50を鋳型53内に配置するが、その配置とは、鋳型53内に水溶性中子50を固定することであり、鋳型53内に溶融した金属60を流し入れることができる状態にすることをいう。水溶性中子50の配置位置は、後工程を経てヒートシンク1が得られる位置に配置される。図7の(b)に示されるように、鋳型53は、鋳型本体54と、支持部材55,56とを有する。水溶性中子50の下面と鋳型本体54の底面との間に離間するように、支持部材55,56によって水溶性中子50を支持する。支持部材55,56は、水溶性中子50の孔51b,51cに入れられる。支持部材55,56は、ヒートシンク1の孔11g,11hを形成するための部分である。
【0040】
このように、鋳造工程では、水溶性中子50が配置されている鋳型53内に、溶融した金属60を流し入れて、水溶性中子50と金属60とを一体的に凝固させることで中間構造物70を形成する。鋳型53に流し入れる溶融した金属60の温度は、金属の種類によって異なるので特に限定されないが、水溶性中子50が熱溶解する温度よりも低いことが好ましい。例えば、水溶性中子50が溶解温度約800℃程度の塩化ナトリウムで構成されている場合には、それよりも溶解温度が低いアルミニウム(約660℃程度)又はその合金(約550℃~560℃程度)であることが好ましい。また、鋳型53に流し入れられる際のアルミニウムの温度は590℃~800℃であることが好ましい。鋳造では、溶融した金属60を加圧することで、溶融した金属60が水溶性中子50の空隙の隅隅にまで入り込みやすくなる。
【0041】
溶融した金属60は、水溶性中子50との関係性を満たせば特に限定されず、用途に応じて様々な金属を採用することができる。例えば、アルミニウム又はその合金に代表される様々な金属、具体的にはAC材(鋳造成形材)、ADC材(ダイキャスト鋳造材)、A材(鍛造成形材)等を好ましく選択することができる。溶融した金属60の鋳造時には、高圧、低圧、吸引重力等を用いることが好ましく、溶融した金属60が水溶性中子50の空隙43の隅隅まで入り込むことができる。
【0042】
この鋳造工程では、図7に示されるように、鋳型53内でフィン部12を形成することとなる領域に水溶性中子50を配置する。鋳型53内で、鋳型53と水溶性中子50の第1の部分51との間の領域は、ベース部11が形成される領域であり、水溶性中子50の第2の部分52が配置された領域は、フィン部12が形成される領域であるフィン部12と、ベース部11とは、境界部を有することなく1つの構造体となっている。
【0043】
<溶解工程>
溶解工程(図6のS5、図7の(e))では、中間構造物70を構成する水溶性中子50を溶解(溶出)して、ヒートシンク1を得る。ここで、溶解とは、中間構造物70を水に浸す等により、中間構造物70から水溶性中子50を溶かし出すことをいう。溶解工程では、水溶性中子50の水溶性という性質を利用するので、水溶性中子50と金属60とが一体化した中間構造物70から水溶性中子50を容易に溶解させることができる。こうすることにより、水溶性中子50の第1の部分51が溶解する前に存在していた部分に流路20が形成され、水溶性中子50の第2の部分52が溶解する前に存在していた部分に流路13が形成される。水は、常温であってもよいが、30~40℃程度の水であることが好ましい。
【0044】
<実施形態の効果>
以上のように、本実施形態では、ヒートシンク1は、ベース部11と、フィン部12と、を備える。フィン部12は、ベース部11と接続された中実部12aと、中実部12aに接続された多孔質部12bと、を有する。多孔質部12bには、多孔質部12bを貫通した流路13が形成されている。
【0045】
このような構成によれば、フィン部12にベース部11と接続された中実部12aが設けられているので、フィン部12に中実部12aが無くフィン部12の全体が多孔質構造の構成に比べて、フィン部12とベース部11との接続領域(接続面積)を増大させることができる。よって、上記構成によれば、フィン部12の全体が多孔質構造の構成に比べて、ベース部11からフィン部12への熱の伝達量を増大させることができるので、ヒートシンク1の放熱性を向上させることができる。よって、発熱体2に対するヒートシンク1の冷却性を向上させることができる。
【0046】
また、多孔質部12bは、中実部12aを囲んでいる。
【0047】
このような構成によれば、多孔質部12bが中実部12aを囲んでいない構成に比べて、中実部12aから多孔質部12bへの熱の伝達量を増大させることができ、ヒートシンク1の放熱性をより一層向上させることができる。
【0048】
また、多孔質部12bの外面12ba(外周面12bb)の全体に流路13の複数の開口部14aが分散して設けられている。
【0049】
このような構成によれば、多孔質部12bの外面12ba(外周面12bb)の一部(例えば、下半分だけ等)に開口部14aが設けられている構成に比べて、中実部12aから多孔質部12bへの熱の伝達量を増大させることができ、ヒートシンク1の放熱性をより一層向上させることができる。
【0050】
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態に係るヒートシンク1および発熱体2の例示的な斜視図である。図9は、第2の実施形態に係るヒートシンク1の一部および発熱体2の例示的な斜視図である。
【0051】
図8および図9に示されるように、本実施形態は、ヒートシンク1におけるフィン部12の形状が第1の実施形態と異なる。本実施形態のフィン部12は、板状である。一例として、フィン部12は、厚さ方向がY方向に沿うように設けられている。複数のフィン部12は、Y方向に互いに間隔をあけて並べられている。
【0052】
図9に示されるように、フィン部12の多孔質部12bの外面12baは、二つの端面12bc,12bdと、二つの側面12be,12bfと、を含む。二つの端面12bc,12bdと、二つの側面12be,12bfとは、流路20に面している。これらの端面12bc,12bdおよび側面12be,12bfの全体に流路13の複数の開口部14aが分散して設けられている。
【0053】
図10は、第2の実施形態に係るヒートシンク1の製造方法を示す工程図である。図10に示されるように、本実施形態の水溶性中子50の第1の部分51の孔51aおよび第2の部分52は、直方体状に形成されている。また、第2の部分52の孔52aも直方体状に形成されている。なお、ヒートシンク1の製造方法の手順は、第1の実施形態と同様である。
【0054】
以上のように、本実施形態では、多孔質部12bの外面12ba(端面12bc,12bd、側面12be,12bf)の全体に流路13の複数の開口部14aが分散して設けられている。
【0055】
このような構成によれば、多孔質部12bの外面12baの一部(例えば、端面12bc,12bdだけや、側面12be,12bfだけ等)に開口部14aが設けられている構成に比べて、中実部12aから多孔質部12bへの熱の伝達量を増大させることができ、ヒートシンク1の放熱性をより一層向上させることができる。なお、多孔質部12bの外面12baの全体に流路13の複数の開口部14aが分散して設けた構成において、フィン部12に中実部12aを設けなくてもよい。
【0056】
(第3の実施形態)
図11は、第3の実施形態に係るヒートシンク1の一部の例示的な断面図である。
【0057】
図11に示されるように、本実施形態は、ヒートシンク1におけるフィン部12の形状が第1の実施形態と異なる。本実施形態のフィン部12の中実部12aは、ベース部11から延びた第1の部分12abと、第1の部分12abから突出した複数の凸部12adと、を有する。また、第1の部分12abの端部には、ベース部11に近づくにつれて径が大きくなる径変化部12acが設けられている。多孔質部12bは、第1の部分12abおよび凸部12adと接続されている。
【0058】
フィン部12の多孔質部12bの外面12baは、外周面12bbと、下面12bgと、上面12bhと、を含む。これらの外周面12bb、下面12bg、および上面12bhの全体に流路13の複数の開口部14aが分散して設けられている。外面12ba(外周面12bb、下面12bg、上面12bh)は、流路20と面している。
【0059】
以上のように、本実施形態では、中実部12aは、ベース部11から延びた第1の部分12abと、第1の部分12abから突出した凸部12adと、を有する。多孔質部12bは、第1の部分12abおよび凸部12adと接続されている。
【0060】
このような構成によれば、凸部12adが設けられているので、凸部12adが設けられていない構成に比べて、中実部12aと多孔質部12bとの接続領域を増大させることができる。よって、ヒートシンク1の放熱性を増大させることができる。
【0061】
また、本実施形態では、フィン部12の多孔質部12bの外面12baは、外周面12bbと、下面12bgと、上面12bhと、を含む。これらの外周面12bb、下面12bg、および上面12bhの全体に流路13の複数の開口部14aが分散して設けられている。外面12ba(外周面12bb、下面12bg、上面12bh)は、流路20と面している。
【0062】
このような構成によれば、多孔質部12b内の流路13の全体を流体が通過しやすい。よって、ヒートシンク1の放熱性をより増大させることができる。
【0063】
(第4の実施形態)
図12は、第4の実施形態に係るヒートシンク1の一部の例示的な断面図である。
【0064】
図12に示されるように、本実施形態は、ヒートシンク1におけるフィン部12の形状が第1の実施形態と異なる。本実施形態のフィン部12の多孔質部12bは、中実部12aを囲んでいない。これにより、中実部12aの外面12aaの一部が流路20に露出している。
【0065】
なお、上記各実施形態では、ヒートシンク1のベース部11が複数の壁を有した例が示されたが、これに限定されない。例えば、ベース部11は、フィン部12と接続される壁だけを有する構成であってもよい。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した実施形態およびその変形例はあくまで例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上述した新規な実施形態および変形例は、様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、および変更を行うことができる。上述した実施形態および変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0067】
1…ヒートシンク
11…ベース部
12…フィン部
12a…中実部
12b…多孔質部
12ab…第1の部分
12ad…凸部
13…流路
53…鋳型
50…水溶性中子
70…中間構造物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12