(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044295
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】磁極片回転子、および、磁気ギヤ電気機械
(51)【国際特許分類】
H02K 7/10 20060101AFI20240326BHJP
H02K 21/14 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H02K7/10 A
H02K21/14 G
H02K21/14 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149735
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】横山 喬
(72)【発明者】
【氏名】清水 隆之
(72)【発明者】
【氏名】岡部 良次
【テーマコード(参考)】
5H607
5H621
【Fターム(参考)】
5H607AA12
5H607BB01
5H607BB02
5H607BB07
5H607BB14
5H607CC03
5H607DD02
5H607EE26
5H621BB02
5H621BB10
(57)【要約】
【課題】トルクの伝達効率の低下を抑制できる磁極片回転子、および、磁気ギヤ電気機械を提供できる。
【解決手段】磁極片回転子は、磁気ギヤ電気機械に設けられる磁極片回転子であって、磁気ギヤ電気機械の周方向に交互に並ぶ複数の磁極片及び複数の非磁性体を含む環状ユニットと、磁気ギヤ電気機械の軸方向の一方側における環状ユニットの端部に連結されるエンドリングと、エンドリングに一方側から連結する連結リング部を含むフランジと、を備え、エンドリングは、軸方向の一方側に凸または他方側に凹となるエンドリング篏合部を含み、連結リング部は、エンドリング篏合部に嵌る連結リング篏合部を含む。
【選択図】
図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ギヤ電気機械に設けられる磁極片回転子であって、
前記磁気ギヤ電気機械の周方向に交互に並ぶ複数の磁極片及び複数の非磁性体を含む環状ユニットと、
前記磁気ギヤ電気機械の軸方向の一方側における前記環状ユニットの端部に連結されるエンドリングと、
前記エンドリングに前記一方側から連結する連結リング部を含むフランジと、
を備え、
前記エンドリングは、前記軸方向の前記一方側に凸または他方側に凹となるエンドリング篏合部を含み、
前記連結リング部は、前記エンドリング篏合部に嵌る連結リング篏合部を含む、
磁極片回転子。
【請求項2】
前記連結リング篏合部は、前記他方側に凸となる少なくとも1つの連結リング凸部を有し、
前記エンドリング篏合部は、前記少なくとも1つの連結リング凸部が嵌る少なくとも1つのエンドリング凹部を有し、
前記エンドリングは、いずれかの前記非磁性体の前記一方側における端部を収容する収容凹部であって、前記軸方向の前記一方側に凹む収容凹部をさらに含み、
前記収容凹部の少なくとも一部は、前記少なくとも1つのエンドリング凹部に対して前記周方向にずれている、
請求項1に記載の磁極片回転子。
【請求項3】
前記エンドリングは、前記他方側に凸となるエンドリング規定凸部であって、いずれかの前記磁極片と前記軸方向に並ぶエンドリング規定凸部をさらに含み、
前記エンドリング規定凸部の少なくとも一部は、前記エンドリング凹部と前記軸方向に並ぶ、
請求項2に記載の磁極片回転子。
【請求項4】
前記収容凹部の深さは、前記エンドリング凹部の深さよりも深い、
請求項2または3に記載の磁極片回転子。
【請求項5】
前記エンドリング篏合部は、前記連結リング篏合部に締まりばめ状態で嵌められた、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の磁極片回転子。
【請求項6】
前記エンドリング篏合部と前記連結リング篏合部との篏合が前記周方向に沿って複数形成される、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の磁極片回転子。
【請求項7】
前記エンドリング篏合部と前記連結リング篏合部との前記篏合は、前記周方向に沿って等間隔に形成されるように構成される、
請求項6に記載の磁極片回転子。
【請求項8】
前記連結リング篏合部は、前記他方側に凸となると共に前記周方向に間隔を空けて配置された複数の連結リング凸部を有し、
前記エンドリング篏合部は、前記複数の連結リング凸部がそれぞれ嵌る複数のエンドリング凹部を有し、
前記連結リング部は、前記周方向に隣接するいずれか2つの前記連結リング凸部の間に形成される空間を規定する規定穴部を含み、
前記エンドリングは、前記規定穴部の内側に配置される挿入部をさらに含み、
前記挿入部の周方向長さは、各々の前記連結リング凸部の周方向長さよりも長い、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の磁極片回転子。
【請求項9】
前記複数の非磁性体の少なくとも1つは、前記軸方向に開放された非磁性体孔部を含み、
前記エンドリングは、前記非磁性体孔部と対向すると共に前記軸方向に開放された第1エンドリング孔部を含み、
前記連結リング部は、前記第1エンドリング孔部と対向すると共に前記軸方向に開放された第1連結リング孔部を含む、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の磁極片回転子。
【請求項10】
前記複数の非磁性体はそれぞれ、前記非磁性体孔部を含み、
前記エンドリングは、複数の前記非磁性体孔部とそれぞれ対向する複数の前記第1エンドリング孔部をさらに含み、
前記連結リング部は、複数の前記第1エンドリング孔部とそれぞれ対向する複数の前記第1連結リング孔部をさらに含み、
前記軸方向に延在する締結軸であって、前記非磁性体孔部、前記第1エンドリング孔部、および、前記第1連結リング孔部に差し込まれた締結軸をさらに備える、
請求項9に記載の磁極片回転子。
【請求項11】
前記複数の磁極片の少なくとも1つは、前記軸方向に開放された磁極片孔部を含み、
前記エンドリングは、前記磁極片孔部と対向すると共に前記軸方向に開放された第2エンドリング孔部をさらに含み、
前記連結リング部は、前記第2エンドリング孔部と対向すると共に前記軸方向に開放された第2連結リング孔部をさらに含む、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の磁極片回転子。
【請求項12】
前記連結リング篏合部は、
前記他方側に凸になると共に前記周方向に間隔を空けて隣接する第1凸部および第2凸部と、
前記第1凸部と前記第2凸部の間に形成される空間を規定する中間穴部と、
を含み、
前記エンドリング篏合部は、前記第1凸部および前記第2凸部が嵌る篏合凹部であって、前記一方側を向く底面と、前記底面から前記一方側に凸となる中間凸部とを有する篏合凹部を含み、
前記中間凸部は前記中間穴部に隙間ばめ状態で嵌められる、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の磁極片回転子。
【請求項13】
前記篏合凹部は、
前記第1凸部のうちで前記第2凸部とは反対側の第1外側面と当接する第1内側面と、
前記第2凸部のうちで前記第1凸部とは反対側の第2外側面と当接する第2内側面と、を有し、
前記第1凸部および前記第2凸部は、前記篏合凹部に締まりばめ状態で嵌められる、
請求項12に記載の磁極片回転子。
【請求項14】
前記エンドリング篏合部は、前記周方向における一端面であって、前記軸方向に対して傾斜するエンドリング傾斜面を含み、
前記連結リング篏合部は、前記エンドリング傾斜面に対向する連結リング傾斜面を含む、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の磁極片回転子。
【請求項15】
前記エンドリング傾斜面は、前記軸方向に対する鋭角が10度以下となるように傾斜する、
請求項14に記載の磁極片回転子。
【請求項16】
前記フランジは、前記周方向に延在する外周面を有するフランジ本体部をさらに含み、
前記連結リング部は、前記フランジ本体部の前記外周面に設けられ、
前記連結リング篏合部は、
前記エンドリング篏合部に前記周方向にて対向すると共に前記磁気ギヤ電気機械の径方向に沿って延在する対向面と、
前記対向面の前記径方向の内側端と、前記外周面とに接続され、前記径方向に対して傾斜する接続傾斜面と、
を有する、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の磁極片回転子。
【請求項17】
前記環状ユニットの前記他方側の端部に連結される別エンドリングと、
前記別エンドリングに前記他方側から連結する別連結リング部を含む別フランジと、
を備え、
前記別エンドリングは、前記他方側を向くと共に前記周方向に延在するエンドリング端面を有し、
前記別連結リング部は、前記エンドリング端面と対向して接触する連結リング端面を有する、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の磁極片回転子。
【請求項18】
前記環状ユニットの前記他方側の端部に連結される別エンドリングと、
前記別エンドリングに前記他方側から連結する別連結リング部を含む別フランジと、
を備え、
前記別エンドリングは、前記軸方向の他方側に凸または一方側に凹となる別エンドリング篏合部を含み、
前記別連結リング部は、前記別エンドリング篏合部に嵌る別連結リング篏合部を含む、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の磁極片回転子。
【請求項19】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の磁極片回転子と、
前記環状ユニットと径方向に並ぶ固定子コイルを含む固定子と、
前記環状ユニットを挟んで前記固定子コイルとは反対側に配置される回転子磁石を含む磁石回転子と、
を備える磁気ギヤ電気機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は磁極片回転子、および、磁気ギヤ電気機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1で例示される磁気ギヤ電気機械は、径方向の外側から順に、固定子、磁極片回転子(外部回転子)、および、磁石回転子(内部回転子)を備える。磁極片回転子は、軸方向に延在する磁極片と、磁極片の一端に連結されるフランジとを含む。磁気ギヤ電気機械の稼働に伴って、フランジと磁極片との間でトルク伝達が行われる。同文献では、磁極片の一端面は磁気ギヤ電気機械の軸方向を向いており、この一端面にフランジが面接触している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記磁気ギヤ電気機械では、磁極片の一端面にフランジが面接触しているため、磁極片とフランジとの間でトルクの伝達が行われる場合に、磁極片とフランジとが周方向に互いに滑るおそれがある。従って、トルクの伝達効率が低下する可能性がある。
【0005】
本開示の目的は、トルクの伝達効率の低下を抑制できる磁極片回転子、および、磁気ギヤ電気機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の少なくとも一実施形態に係る磁極片回転子は、
磁気ギヤ電気機械に設けられる磁極片回転子であって、
前記磁気ギヤ電気機械の周方向に交互に並ぶ複数の磁極片及び複数の非磁性体を含む環状ユニットと、
前記磁気ギヤ電気機械の軸方向の一方側における前記環状ユニットの端部に連結されるエンドリングと、
前記エンドリングに前記一方側から連結する連結リング部を含むフランジと、
を備え、
前記エンドリングは、前記軸方向の前記一方側に凸または他方側に凹となるエンドリング篏合部を含み、
前記連結リング部は、前記エンドリング篏合部に嵌る連結リング篏合部を含む。
【0007】
本開示の少なくとも一実施形態に係る磁気ギヤ電気機械は、
請求項1乃至18の何れか1項に記載の磁極片回転子と、
前記環状ユニットと径方向に並ぶ固定子コイルを含む固定子と、
前記環状ユニットを挟んで前記固定子コイルとは反対側に配置される回転子磁石を含む磁石回転子と、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、トルクの伝達効率の低下を抑制できる磁極片回転子、および、磁気ギヤ電気機械を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】一実施形態に係る磁気ギヤ電気機械(磁気ギヤード発電機)の概略図。
【
図1B】他の実施形態に係る磁気ギヤ電気機械(磁気ギヤードモータ)の概略図。
【
図2】磁気ギヤ電気機械の概略的な内部構造を示す概略図。
【
図3】一実施形態に係る磁極片回転子の概略的な斜視図。
【
図4A】一実施形態に係るエンドリングと連結リング部の篏合構造を示す概略図。
【
図4B】他の実施形態に係るエンドリングと連結リング部の篏合構造を示す概略図。
【
図5】他の実施形態に係るエンドリングと連結リング部の別の篏合構造を示す概略図。
【
図6】一実施形態に係るエンドリングと連結リング部の篏合構造の追加的な例示を示す概略図。
【
図7】一実施形態に係るフランジを示す概念的な斜視図。
【
図8A】一実施形態に係る別エンドリングおよび別フランジを示す概略図。
【
図8B】他の実施形態に係る別エンドリングおよび別フランジを示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
なお、同様の構成については同じ符号を付し説明を省略することがある。
【0011】
<1.磁気ギヤ電気機械1の概要>
図1A、
図1Bは、本開示の幾つかの実施形態に係る磁気ギヤ電気機械1A,1B(1)の概略図である。以下の説明においては、「軸方向」は磁気ギヤ電気機械1の軸線に平行な方向であり、「径方向」は磁気ギヤ電気機械1の軸線を基準とした径方向であり、「周方向」は磁気ギヤ電気機械1の軸線を基準とした周方向である。磁気ギヤ電気機械1は後述の外部回転機器との間で動力を伝達するための回転軸Aを備え、回転軸Aの軸線は磁気ギヤ電気機械1の軸線と一致する。回転軸Aは、ベース101に設置されるハウジング98によって回転可能に支持される。本例の回転軸Aは互いに同軸の回転軸A1,A2を含むが、本開示はこれに限定されず、回転軸Aは単一の軸であってもよい。
【0012】
図1A、
図1Bで例示される磁気ギヤ電気機械1は、磁石回転子10および固定子20を備える。磁石回転子10は、周方向に並ぶ複数の回転子磁石19と、複数の回転子磁石19を支持する回転子継鉄15とを含む。回転子継鉄15は、回転軸A2によって支持されており、磁石回転子10は回転軸A2と一体的に回転するように構成される。同図では、複数の回転子磁石19が回転子継鉄15の表面に設けられる表面磁石型(SPM;Surface Permanent Magnet)の構成が採用されるが、本開示はこれに限定されない。例えば、複数の回転子磁石19が回転子継鉄15の内側に配置される埋込磁石型(IPM;Interior Permanent Magnet)の構成が採用されてもよい(
図2参照)。ハウジング98に固定される固定子20は、周方向に並ぶ複数の固定子磁石29と、複数の固定子磁石29を支持する固定子継鉄25と、固定子継鉄25に巻かれた固定子コイルとしてのコイル99とを含む。同図の固定子20では、SPM型の構成が採用されるが、本開示はこれに限定されず、IPM型の構成が採用されてもよい。
【0013】
図1A、
図1Bの磁気ギヤ電気機械1は磁極片回転子30をさらに備える。磁極片回転子30は、固定子20と磁極片回転子30の間において周方向に並ぶ複数の磁極片55と、複数の磁極片55よりも軸方向の一方側に配置されるフランジ41と、複数の磁極片55に対してフランジ41とは反対側に配置される別フランジ44とを含む。フランジ41は回転軸A1に連結されており、別フランジ44は回転軸A2にベアリングを介して連結されている。磁極片回転子30は回転軸A1と一体的に回転するように構成される。
【0014】
図1Aで例示される磁気ギヤ電気機械1A(1)は、外部回転機器の一例である原動機9からの入力によって駆動されて発電するように構成された磁気ギヤード発電機2である。磁気ギヤード発電機2のコイル99は、電力系統であってもよい電力供給先4と電気的に接続されている。磁気ギヤード発電機2が発電する原理は以下の通りである。入力軸として機能する回転軸A1に連結される原動機9が駆動すると、回転軸A1からフランジ41にトルクが入力されて、磁極片回転子30が回転する。複数の回転子磁石19および複数の固定子磁石29に対する複数の磁極片55の相対的な位置関係が変化し、磁石回転子10と固定子20の間の磁束が変調され、変調された磁場から回転子磁石19が磁力を受けて磁石回転子10が回転する(出力軸としての回転軸A2は磁石回転子10と共に回転する。)。このとき、磁極片回転子30と磁石回転子10の回転に伴って起こる電磁誘導によってコイル99に電流が発生し、磁気ギヤード発電機2は、電力供給先4に電力を供給できる。なお、磁気ギヤード発電機2の作動時、原動機9は回転軸A1をいずれの周方向にも回転させることができる。
【0015】
図1Bで例示される磁気ギヤ電気機械1B(1)は、例えば電力系統であってもよい電力供給源6からの電力Pの供給を受けて、外部回転機器の一例である回転機械8を駆動するように構成される磁気ギヤードモータ3である。回転機械8は、例えば磁気ギヤードモータ3の駆動によって走行する電動車両であってもよい。この場合、磁気ギヤードモータ3の回転軸A(回転軸A1)は、回転機械8の構成要素となる、電動車両のドライブシャフトに連結されてもよい。磁気ギヤードモータ3が回転機械8を駆動する原理は以下の通りである。コイル99の通電によって発生する回転磁界によって、磁石回転子10は回転軸A2と共に回転する。複数の回転子磁石19および複数の固定子磁石29に対する複数の磁極片55の相対的な位置関係が変化し、磁石回転子10と固定子20の間の磁束が変調されて、磁極片回転子30が回転し、フランジ41から出力軸としての回転軸A1にトルクが出力される。これにより、回転軸A1から回転機械8にトルクが伝達され、回転機械8は磁気ギヤードモータ3によって駆動される。なお、磁気ギヤードモータ3の作動時、回転軸A1はいずれの周方向に回転させてもよい。回転方向はコイル99の通電制御によって規定される。
【0016】
図1A、
図1Bの磁気ギヤ電気機械1A,1B(1)において、磁極片回転子30の磁極片55の磁極数をNL、磁石回転子10の回転子磁石19における磁極の対の数(極対数)をNH、固定子20の固定子磁石29における磁極の対の数(極対数)をNSとした場合、NL=NH+NSが成立する。この関係式が成立する場合、磁極片回転子30に対する磁石回転子10の回転数の比は、NL/NHで表される。本例では、NL/NHが1よりも大きく、磁石回転子10は高速ロータとして機能し、磁極片回転子30は低速ロータとして機能する。なお、磁極片55の磁極数NLは、固定子磁石29の極対数NSよりも少ない。
【0017】
図1A、
図1Bの例では外部回転機器としての原動機9および回転機械8が回転軸A1に連結されるが、本開示はこれに限定されず、外部回転機器は回転軸A2に連結されてもよい。この場合、回転軸A2は別フランジ44に対して連結され、かつ、回転軸A1はフランジ41にベアリングを介して連結されてもよい。これにより、別フランジ44を介して磁極片回転子30と回転軸A2との間でトルクの伝達が実行される。また、回転軸Aは単一の軸であってもよい。この場合、回転軸Aは、ハウジング98を軸方向に貫通するように設けられ、フランジ41と別フランジ44が回転軸Aに連結されると共に、磁石回転子10の回転子継鉄15はベアリングを介して回転軸Aに連結される。当該実施形態では、外部回転機器が回転軸Aの軸方向の一方側の端部に連結される使用と、外部回転機器が他方側の端部に連結される使用とのいずれもが可能となり、磁気ギヤ電気機械1の使い勝手が向上する。
【0018】
<2.磁気ギヤ電気機械1の内部構造の概要>
図2は、本開示の一実施形態に係る磁気ギヤ電気機械1の内部構造を示す概略図である。概略図としての
図2では、周方向が紙面左右方向と一致するように図示している。磁極片回転子30は、複数の磁極片55および複数の非磁性体52を含む環状ユニット50を備える(
図3もあわせて参照)。各磁極片55と各非磁性体52はいずれも軸方向に延在する。また、複数の磁極片55と複数の非磁性体52は周方向に交互に並ぶ。各磁極片55は、軸方向に積層された電磁鋼板によって形成される。環状ユニット50は、第1隙間G1を空けて磁石回転子10と対向し、第2隙間G2を空けて固定子20と対向する。
図2の例に係る環状ユニット50は、第1隙間G1を空けて回転子継鉄15と対向し、かつ第2隙間G2を空けて複数の固定子磁石29と対向する。
【0019】
なお、本開示の幾つかの実施形態では、環状ユニット50の外周面の一部または全部がカバー(図示外)によって覆われてもよい。同様に環状ユニット50の内周面の一部または全部もカバー(図示外)によって覆われてもよい。カバーを形成する材料は非磁性材料であることが好ましく、非磁性材料かつ非導電材料であることがさらに好ましい。
【0020】
<3.磁極片回転子30の全体的な構成>
図3は、本開示の一実施形態に係る磁極片回転子30の概略的な斜視図である。上述のように磁極片回転子30は環状ユニット50を備える。同図の例では、非磁性体52は磁極片55よりも軸方向に長い。磁極片回転子30は、軸方向の一方側における環状ユニット50の端部に連結されるエンドリング31をさらに備える。エンドリング31は、各磁極片55の一方側の端部、および、各非磁性体52の一方側の端部に連結されており、同図の例では非磁性体52の一方側の端部が収容される収容凹部331がエンドリング31に形成されている。収容凹部331は、エンドリング31の軸方向の他方側の端面335から一方側に凹んでいる。同図で例示されるエンドリング31の端面335は、磁極片55の一方側の端部と直接的に連結しているが、これに代えて、端面335と磁極片55の端部との間にスペーサが介在してもよい。
【0021】
磁極片回転子30はフランジ41をさらに備える。フランジ41は、エンドリング31に一方側から連結する連結リング部42と、連結リング部42から径方向の内側に延在する複数の支柱47と、複数の支柱47のそれぞれの内側端部に連結される軸連結部48とを含む。複数の支柱47は周方向に等間隔に配列される。軸連結部48は軸方向に沿う円筒状であり、軸連結部48の内周面が回転軸A1に連結される。
なお、
図3で示されるフランジ41の構造は、本開示の一例に過ぎない。例えば、フランジ41は、複数の支柱47を備えなくてもよい。この場合、連結リング部42の内周面が軸連結部48の外周面に直接的に連結されてもよい。このような構成は、連結リング部42の径方向長さを、
図3で示される径方向長さよりも長くすることで実現可能である。
【0022】
本例では、磁極片回転子30の軸方向の他方側においても、一方側における構成と類似の構成が採用される。具体的には、磁極片回転子30は、軸方向の他方側における環状ユニット50の端部に連結される別エンドリング34と、別エンドリング34に他方側から連結される別連結リング部49を含む別フランジ44とを備える。同図の例では、別エンドリング34および別フランジ44は、それぞれ、エンドリング31およびフランジ41と軸方向に対称な形状を呈する。但し本開示はこれに限定されず、別エンドリング34および別フランジ44は、それぞれ、エンドリング31およびフランジ41と軸方向に非対称であってもよい(詳細は後述する)。
【0023】
<4.エンドリング31と連結リング部42の篏合構造の例示>
図4A、
図4Bは、本開示の一実施形態に係るエンドリング31と連結リング部42の篏合構造を示す概略図であり、周方向が紙面左右方向と一致するように図示されている(
図5、
図8A、
図8Bも同様である)。
【0024】
図4A、
図4Bのエンドリング31A,31B(31)は軸方向の一方側に凸または他方側に凹となるエンドリング篏合部70A,70B(70)を含み、連結リング部42A、42B(42)はエンドリング篏合部70A,70Bに嵌る連結リング篏合部80A,80B(80)を含む。このような篏合構造が採用されることで、エンドリング篏合部70の周方向における端面と、連結リング篏合部80の周方向における端面とが互いに接触できる。従って、フランジ41においてトルクの入出力が行われる実施形態では、エンドリング篏合部70が連結リング篏合部80を十分な力で周方向に付勢でき、または、連結リング篏合部80がエンドリング篏合部70を十分な力で周方向に付勢できる。結果、磁極片回転子30の回転時において、エンドリング篏合部70と連結リング篏合部80との間で滑りが生じるのを抑制できる。なお、エンドリング篏合部70と連結リング篏合部80との篏合は、締まりばめ状態での篏合、中間ばめ状態での篏合、または、隙間ばめ状態での篏合のいずれであってもよいが、締まりばめ状態での篏合または中間ばめ状態での篏合が採用されることが好ましい。
【0025】
図4Aにおいては、エンドリング篏合部70Aは軸方向の一方側に凸となる少なくとも1つのエンドリング凸部71を有し、連結リング篏合部80Aは少なくとも1つのエンドリング凸部71が嵌る少なくとも1つの連結リング凹部82を有する。同図では、エンドリング凸部71と連結リング凹部82との篏合が周方向に沿って複数形成される。より具体的な一例として、複数のエンドリング凸部71と複数の連結リング凹部82が周方向に等間隔に配置される(
図4Aの寸法MAは配置間隔を示す)。この場合、エンドリング凸部71と連結リング凹部82のそれぞれの個数は互いに同じであってもよい。
【0026】
図4Bにおいては、エンドリング篏合部70Bは軸方向の他方側に凹となる少なくとも1つのエンドリング凹部72を有し、連結リング篏合部80Bは少なくとも1つのエンドリング凹部72に嵌る少なくとも1つの連結リング凸部81を有する。連結リング凸部81は軸方向の他方側に凸となる。同図では、エンドリング凹部72と連結リング凸部81との篏合が周方向に沿って複数形成される。より具体的な一例として、複数のエンドリング凹部72と複数の連結リング凸部81が周方向に等間隔に配置される(
図4Bの寸法MBは配置間隔を示す)。この場合、エンドリング凹部72と連結リング凹部82のそれぞれの個数は同じであってもよい。
【0027】
なお、エンドリング篏合部70と連結リング篏合部80は、
図4A、
図4Bで示される構造に限定されない。詳細な図示は省略するが、エンドリング篏合部70は、少なくとも1つのエンドリング凸部71と、少なくとも1つのエンドリング凹部72とを有してもよい。この場合、連結リング篏合部80は、少なくとも1つの連結リング凹部82と、少なくとも1つの連結リング凸部81とを有する。また、エンドリング凸部71とエンドリング凹部72の個数はそれぞれ単数であってもよい。この場合でも、エンドリング凸部71と連結リング凹部82との篏合、および、エンドリング凹部72と連結リング凸部81との篏合が形成されるので、エンドリング篏合部70と連結リング篏合部80との篏合は複数であると了解される。
【0028】
上記構成によれば、エンドリング篏合部70と連結リング篏合部80は周方向において接触することができる。従って、エンドリング31とフランジ41との間でトルクが伝達される場合において、エンドリング31とフランジ41との間で滑りが生じることが抑制される。よって、トルクの伝達効率の低下を抑制できる磁極片回転子30が実現される。
【0029】
図4A、
図4Bの例では、エンドリング篏合部70は連結リング篏合部80に締まりばめ状態で嵌められる。より具体的には、
図4Aのエンドリング凸部71は連結リング凹部82に締まりばめ状態で嵌められ、
図4Bのエンドリング凹部72は連結リング凸部81に締まりばめ状態で嵌められる。上記構成によれば、エンドリング篏合部70と連結リング篏合部80との間の滑りがさらに抑制されるので、磁極片回転子30はトルク伝達の効率の低下をさらに抑制できる。
また、
図4A、
図4Bの例では、エンドリング篏合部70と連結リング篏合部80との篏合が周方向に沿って複数形成される。上記構成によれば、エンドリング篏合部70と連結リング篏合部80との間でトルクの伝達がなされる場所が分散されるので、エンドリング31または連結リング部42の少なくとも一方の破損を抑制できる。
さらに同図の例では、エンドリング篏合部70と連結リング篏合部80との篏合が周方向に沿って等間隔に形成される(
図4A、
図4Bの寸法MA、MB参照)。上記構成によれば、エンドリング篏合部70と連結リング篏合部80との間でトルクの伝達がなされる場合に、エンドリング31と連結リング部42とに作用する力を周方向に均等に分散することができる。
なお、エンドリング篏合部70と連結リング篏合部80との篏合は、例えば8個であってもよい。例えば、8個のエンドリング凸部71と8個の連結リング凹部82が周方向に等間隔に配置されてもよいし(
図4A参照)、8個の連結リング凸部81と8個のエンドリング凹部72が周方向に等間隔に配置されてもよい(
図4B参照)。
【0030】
図4Bに戻り、エンドリング31B(31)は既述の通り、非磁性体52の端部を収容する収容凹部331を含む。同図の例では、収容凹部331は、軸方向の他方側を向く凹底面332と、凹底面332から軸方向の他方側に突出する一対の凹側面333とを有する。また、エンドリング凹部72は、軸方向の一方側を向く凹底面722と、凹底面722から軸方向の一方側に突出する一対の凹側面723とを有する。本開示では、収容凹部331の少なくとも一部は、少なくとも1つのエンドリング凹部72に対して周方向にずれている。より具体的には、収容凹部331の少なくとも一部は、複数のエンドリング凹部72のいずれに対しても周方向にずれている。同図の例では、収容凹部331のうちで一方の凹側面333のみが、いずれかのエンドリング凹部72の一方の凹側面723と軸方向に並ぶように位置しており、収容凹部331の残る部位はこのエンドリング凹部72に対して周方向にずれている。
【0031】
磁極片回転子30の回転時において、非磁性体52と収容凹部331との間ではトルクの伝達がなされる。収容凹部331または非磁性体52の少なくとも一方の破損を回避するには、収容凹部331を深くすることで(換言すると凹側面333を軸方向に長くすることで)収容凹部331と非磁性体52との接触面積を増大させることが好ましい。これにより収容凹部331と非磁性体52とに作用する力を分散させることができるからである。他方で、収容凹部331を深くするほど、エンドリング31の特定の部位が軸方向に短くなる。より詳細には、収容凹部331よりも軸方向の一方側に位置するエンドリング31の部位(当該部位は
図4Bで符号Hによって示される)が軸方向に短くなる。結果、エンドリング31の機械的強度を確保することが困難になる。この点、上記構成によれば、収容凹部331の少なくとも一部が少なくとも1つのエンドリング31凹部に対して周方向にずれているので、収容凹部331を深くしても、エンドリング31の特に符号Hで示す部位の軸方向長さが極端に短くなることが抑制される。従って、収容凹部331の深さを十分に確保することができるので、収容凹部331または非磁性体52の少なくとも一方の破損を回避することができる。
【0032】
図4Bで例示されるエンドリング31B(31)は、軸方向の他方側に凸となるエンドリング規定凸部317をさらに含む。エンドリング規定凸部317は、いずれかの磁極片55と軸方向に並んでいる。同図の例では、複数のエンドリング凸部71がそれぞれ複数の磁極片55と軸方向に並んでいる。また、エンドリング規定凸部317の周方向長さは、磁極片55の周方向長さと同じである。エンドリング規定凸部317の少なくとも一部は、エンドリング凹部72と軸方向に並ぶ。同図の例では、エンドリング規定凸部317とエンドリング凹部72は周方向に揃えられており、エンドリング規定凸部317が配置される周方向範囲は、エンドリング凹部72が配置される周方向範囲に含まれる。上記構成によれば、エンドリング凹部72よりも軸方向の他方側に位置するエンドリング31の部位(当該部位は
図4Bで符号Jによって示される)が、エンドリング凸部71に活用されるので、当該部位が軸方向に短くなるのを抑制できる。よって、エンドリング31の機械的強度を確保できる。
なお、エンドリング規定凸部317の周方向長さと、磁極片55の周方向長さとが異なる場合、両者の周方向長さの偏差に応じて、当該磁極片55と隣接する非磁性体52の周方向における端面に凹凸を形成させる必要がある。これでは、磁極片55と非磁性体52との間でトルクの伝達が実行される際に、非磁性体52において応力集中が起きる可能性がある。この点、本開示の一実施形態では、エンドリング規定凸部317の周方向長さが磁極片55の周方向長さと同じであるので、非磁性体52の周方向における端面において凹凸が不要となり、非磁性体52の機械的強度を確保することが可能になる。
【0033】
図4Bで例示されるように、収容凹部331の深さ(即ち、一対の凹側面333の軸方向長さ)は、エンドリング凹部72の深さ(即ち、一対の凹側面723の軸方向長さ)よりも深い。収容凹部331の深さは、一例として、エンドリング凹部72の深さに対して100%以上かつ500%以下である。上記構成によれば、収容凹部331を深くすることで、収容凹部331と非磁性体52とに作用する力をさらに分散することができる。これにより、収容凹部331または非磁性体52の少なくとも一方の破損をさらに回避することができる。
【0034】
図4Bで例示される連結リング部42B(42)は、周方向に隣接するいずれか2つの連結リング凸部81の間に形成される空間S1を規定する規定穴部45を含む。規定穴部45の両端は、隣接する連結リング凸部81のそれぞれの周方向における端面によって構成される。エンドリング31B(31)は、規定穴部45の内側に配置される挿入部38をさらに含む。挿入部38は軸方向の一方側に向けて凸となる形状を呈する。従って、挿入部38よりも軸方向の他方側に位置するエンドリング31の部位(当該部位は
図4Bの符号Kによって示される)は、軸方向に比較的長い部位であると了解される。同図の例において、挿入部38の周方向長さ(寸法NA)は、各々の連結リング凸部81の周方向長さ(寸法NB)よりも長い。同図の例では、挿入部38の周方向長さは、連結リング凸部81の周方向長さに対して100%以上かつ400%以下である。上記構成によれば、挿入部38の周方向長さを長くすることができるので、エンドリング31のうちで軸方向に長い部位を多く確保することができる。これによりエンドリング31の機械的強度を向上させることができる。
【0035】
図4Aに戻り、複数の非磁性体52の少なくとも1つは軸方向に開放された非磁性体孔部59を含む。同図の例では、複数の非磁性体52がそれぞれ複数の非磁性体孔部59を含む。また、エンドリング31A(31)は軸方向に開放された第1エンドリング孔部311を含み、連結リング部42A(42)は軸方向に開放された第1連結リング孔部411を含む。第1エンドリング孔部311は非磁性体孔部59と対向し、第1連結リング孔部411は第1エンドリング孔部311と対向する。つまり、非磁性体孔部59、第1エンドリング孔部311、および、第1連結リング孔部411は互いに連通しており、空気の通風路を形成する。磁極片回転子30の回転時において、空気はこの通風路を軸方向に流れることができ、磁極片回転子30を冷却できる。また、当該空気は、磁極片回転子30の周辺にある磁気ギヤ電気機械1の構成要素をあわせて冷却してもよい。
【0036】
図4Aの例では、複数の非磁性体52のそれぞれが非磁性体孔部59を含んでおり、非磁性体孔部59と同数の第1エンドリング孔部311と第1連結リング孔部411とが設けられている。従って、複数の第1エンドリング孔部311はそれぞれ複数の非磁性体孔部59と対向しており、複数の第1連結リング孔部411はそれぞれ複数の第1エンドリング孔部311と対向している。エンドリング31Aの第1エンドリング孔部311は、エンドリング篏合部70A(エンドリング凸部71)から周方向にずれた位置に配置され、連結リング部42Aの第1連結リング孔部411は、連結リング篏合部80A(連結リング凹部82)から周方向にずれた位置に配置される。なお、
図4Aで例示される非磁性体孔部59、第1エンドリング孔部311、および、第1連結リング孔部411は、
図4Bで例示される構成にも適用されている。説明の重複を避けるために詳説を割愛する。
【0037】
上記構成によれば、非磁性体孔部59、第1エンドリング孔部311、および、第1連結リング孔部411が空気の通風路を形成することができる。従って、磁極片回転子30の温度上昇を抑制できる。
【0038】
なお幾つかの実施形態では、非磁性体孔部59、第1エンドリング孔部311、および、第1連結リング孔部411の内側に軸部材が差し込まれることがあってもよい。
図5は他の実施形態に係るエンドリング31C(31)および連結リング部42C(42)の篏合構造を示す概略図である。
図5においても、複数の非磁性体52はそれぞれ複数の非磁性体孔部59を含み、エンドリング31C(31)は複数の第1エンドリング孔部311を含み、連結リング部42C(42)は複数の第1連結リング孔部411を含む。
同図の例では、非磁性体孔部59、第1エンドリング孔部311、および、第1連結リング孔部411に差し込まれる締結軸88が設けられる。例えば、締結軸88は、ネジであってもよいし、ボルトであってもよい。締結軸88が締め付けられることによって、連結リング部42は環状ユニット50に向かって押し当てられる。締結軸88は周方向に等間隔に設けられてもよい。但し、締結軸88は、全ての非磁性体孔部59、第1エンドリング孔部311、および、第1連結リング孔部411に差し込まれなくてもよい。
【0039】
上記構成によれば、非磁性体孔部59、第1エンドリング孔部311、および、第1連結リング孔部411に締結軸88が差し込まれるので、磁極片回転子30の剛性を高めることができると共に、磁極片回転子30における防振設計を実現できる。
【0040】
本開示の必須の構成要素ではないが、
図5で例示されるように、複数の磁極片55の少なくとも1つは、軸方向に開放された磁極片孔部56を備えてもよい。また、エンドリング31C(31)は、軸方向に開放された第2エンドリング孔部322を含んでもよく、かつ、連結リング部42C(42)は、軸方向に開放された第2連結リング孔部422を含んでもよい。第2エンドリング孔部322は磁極片孔部56と対向し、第2連結リング孔部422は第2エンドリング孔部322と対向する。つまり、磁極片孔部56、第2エンドリング孔部322、および、第2連結リング孔部422は互いに連通しており、空気の通風路を形成する。磁極片回転子30の回転時において、空気はこの通風路を軸方向に流れることができ、磁極片回転子30を冷却できる。また、当該空気は、磁極片回転子30の周辺にある磁気ギヤ電気機械1の構成要素をあわせて冷却してもよい。磁極片孔部56、第2エンドリング孔部322、および、第2連結リング孔部422は、
図4A、
図4Bで例示される構成に適用されてもよいし、適用されなくてもよい。
【0041】
上記構成によれば、磁極片孔部56、第2エンドリング孔部322、および、第2連結リング孔部422が空気の通風路を形成することができる。従って、磁極片回転子30の温度上昇を抑制することができる。
【0042】
<5.エンドリング31と連結リング部42の篏合構造の他の例示>
図5で例示されるように、連結リング部42C(42)の連結リング篏合部80C(80)は、第1凸部181および第2凸部182を含む。第1凸部181と第2凸部182は軸方向の他方側に向かって凸になると共に、周方向に間隔を空けて隣接している。第1凸部181のうちで第2凸部182とは反対側の端面は第1外側面191であり、第2凸部182側の端面は第1規定面193である。第2凸部182のうちで第1凸部181とは反対側の端面は第2外側面192であり、第1凸部181側の端面は第2規定面194である。さらに連結リング篏合部80Cは、第1凸部181と第2凸部182の間に形成される空間S2を規定する中間穴部185をさらに含む。中間穴部185の周方向両端は、第1凸部181の第1規定面193と第2凸部182の第2規定面194とによって構成される。また、エンドリング31C(31)のエンドリング篏合部70C(70)は、第1凸部181および第2凸部182が嵌る篏合凹部175を含む。篏合凹部175は、軸方向の一方側を向く底面177と、底面177から一方側に凸となる中間凸部176とを有する。本実施形態の中間凸部176は中間穴部185に隙間ばめ状態で嵌められる。
【0043】
上記構成によれば、第1凸部181と第2凸部182が篏合凹部175に篏合する構成が採用されるので、第1凸部181の周方向における一端である第1規定面193と、第2凸部182の周方向における他端である第2規定面194については寸法公差を厳しく管理する必要がないので、磁極片回転子30の構造を簡易化できる。また、連結リング篏合部80とエンドリング31との組付工程において、互いに隙間ばめ状態で嵌められる中間凸部176と篏合凹部175が、第1凸部181と第2凸部182が篏合凹部175に嵌るときの案内機能を果たすので、磁極片回転子30の組付工程を容易化できる。なお、単一の篏合凹部175に第1凸部181と第2凸部182が嵌る構成であっても、エンドリング篏合部70Cと連結リング部42Cとの篏合は複数であると了解される。
【0044】
幾つかの実施形態では、篏合凹部175は、第1凸部181の第1外側面191と当接する第1内側面171と、第2凸部182の第2外側面192と当接する第2内側面172とを有する。そして、第1凸部181および第2凸部182は篏合凹部175に締まりばめ状態で嵌められる。より具体的には、第1凸部181の第1外側面191が第1内側面171に押し当たり、第2凸部182の第2外側面192が第2内側面172に押し当たっている。
【0045】
上記構成によれば、篏合凹部175のうちで第1凸部181または第2凸部182に積極的に当接する部位は、第1内側面171と第2内側面172である。従って、磁極片回転子30が周方向の片側へ回転する場合には、第1内側面171または第2内側面172の一方が連結リング篏合部80と積極的にトルク伝達を行い、磁極片回転子30が反対側へ回転する場合には、第1内側面171または第2内側面172の他方が連結リング篏合部80と積極的にトルク伝達を行う。これにより、磁極片回転子30の回転方向に応じて、エンドリング篏合部70および篏合凹部175の部位のうちで力が作用する部位が変わる。よって、力が作用する部位が回転方向によらず同じである場合に比べて、エンドリング篏合部70と連結リング篏合部80の機械的な耐久性を向上させることができる。
【0046】
なお、幾つかの実施形態では、複数の篏合凹部175が周方向に等間隔に配置されてもよい。この場合、篏合凹部175の個数は、第1凸部181と第2凸部182のそれぞれの個数と一致する。
【0047】
<6.エンドリング31と連結リング部42の篏合構造の追加的な例示>
図6で例示されるように、エンドリング31D(31)はエンドリング篏合部70D(70)を含み、エンドリング篏合部70Dは軸方向の他方側に凹むエンドリング凹部72D(72)を含む。そして、エンドリング凹部72の周方向における一端面と他端面はいずれも、軸方向に対して傾斜するエンドリング傾斜面77である。連結リング部42D(42)は連結リング篏合部80D(80)を含み、連結リング篏合部80Dはエンドリング凹部72に嵌る連結リング凸部81D(81)を含む。そして、連結リング凸部81Dは、一対の連結リング傾斜面87を含む。一対の連結リング傾斜面87はそれぞれ一対のエンドリング傾斜面77と対向する。連結リング傾斜面87はエンドリング傾斜面77に平行である。
【0048】
上記構成によれば、エンドリング篏合部70を連結リング篏合部80に篏合させる工程において、エンドリング傾斜面77と連結リング傾斜面87が、篏合の案内機能を果たす。よって、磁極片回転子30の組付け工程を容易化できる。
【0049】
なお、一対のエンドリング傾斜面77の一方は設けられなくもよい。例えば、エンドリング凹部72の周方向の一端面は軸方向に平行であってもよい。この場合、一対の連結リング傾斜面87の一方も設けられなくてもよい。さらに、エンドリング篏合部70Dは、エンドリング凹部72Dに代えてエンドリング凸部71(
図4A参照)を含んでもよく、このエンドリング凸部71の周方向の一端面にエンドリング傾斜面77が形成されてもよい。この場合、連結リング篏合部80は、連結リング凸部81に代えて連結リング凹部82を含み、連結リング凹部82の周方向の一端面に連結リング傾斜面87が形成されればよい。いずれの実施形態においても、上記利点は得られる。
【0050】
幾つかの実施形態では、エンドリング傾斜面77は軸方向に対する鋭角(
図6の角度θ参照)が0度よりも大きく10度以下となるように傾斜する。同様に、連結リング傾斜面87は軸方向に対する鋭角が0度よりも大きく10度以下となるように傾斜する。上記構成によれば、エンドリング傾斜面77と連結リング傾斜面87の軸方向に対する傾斜を抑えることができるので、エンドリング31Dと連結リング部42Dとの間でトルク伝達がなされる場合において、エンドリング31Dと連結リング部42Dが互いに軸方向にずれるのを抑制できる。
【0051】
図7は、本開示の一実施形態に係るフランジ41A(41)を示す概念的な斜視図である。フランジ41A(41)は、周方向に延在する外周面452を有するフランジ本体部450を含む。フランジ本体部450は軸方向視でリング状であり、外周面452はフランジ本体部450の全周に亘って延在する。なお、既述の支柱47(
図3参照)は、フランジ本体部450の内周面から径方向の内側に延在する。
【0052】
外周面452に設けられる連結リング部42E(42)は連結リング篏合部80E(80)を含み、連結リング篏合部80Eは連結リング凸部81E(81)を含む。既述の通り、連結リング凸部81E(81)はエンドリング凹部72に嵌る(
図4A参照)。この連結リング凸部81Eは、エンドリング凹部72に周方向にて対向すると共に径方向に沿って延在する対向面457、および、対向面457の径方向の内側端と外周面452とに接続される接続傾斜面459を有する。接続傾斜面459は、径方向に対して傾斜しており、同図の例では径方向に対して湾曲して延在する。他の実施形態に係る接続傾斜面459は、径方向に対して傾斜して直線状に延在してもよい。
図7の例では、連結リング凸部81Eの周方向の両端のそれぞれに対向面457と接続傾斜面459とが形成されるが、これに代えて、連結リング凸部81Eの周方向の一端のみに対向面457と接続傾斜面459が形成されてもよい。また、詳細な図示は省略するが、連結リング篏合部80Eは連結リング凹部82(
図4B参照)を含んでもよく、連結リング凹部82の周方向の少なくとも一端に対向面457と接続傾斜面459とが形成されてもよい。
【0053】
上記構成によれば、接続傾斜面459が設けられることによって、連結リング篏合部80とエンドリング篏合部70との間でトルク伝達が行われる場合に、対向面457の径方向内側端に応力が集中するのを抑制できる。これにより、連結リング部42E(42)の破損を回避することができる。
【0054】
<7.別エンドリング34と別フランジ44の構造の詳細>
図8Aは本開示の一実施形態に係る別エンドリング34A(34)および別フランジ44A(44)を示し、
図8Bは本開示の他の実施形態に係る別エンドリング34B(34)および別フランジ44B(44)を示す。
【0055】
図8Aの例では、別エンドリング34Aと別フランジ44Aには、エンドリング31と連結リング部42のような篏合構造が採用されていない。即ち、別エンドリング34Aは、軸方向の他方側を向く共に周方向に延在するエンドリング端面134A(134)を有する。エンドリング端面134Aは、別エンドリング34の全周に亘って延在する平坦面である。別フランジ44Aの別連結リング部49A(49)は、エンドリング端面134Aと対向する連結リング端面149A(149)を有する。連結リング端面149Aも、別フランジ44Aの全周に亘って延在する平坦面である。別エンドリング34Aと別フランジ44Aが採用される実施形態では、回転軸Aの軸方向の一方側(
図1A、
図1Bの例では回転軸A1)が外部回転機器と連結されることが好ましい。これにより、別エンドリング34Aと別フランジ44Aとの間において積極的なトルク伝達は回避される。
【0056】
上記構成によれば、磁極片回転子30の軸方向の他方側では別エンドリング34と連結リング部42とが嵌り合う構造が採用されないので、磁極片回転子30の構造を簡易にできる。
【0057】
図8Aの例では、別エンドリング34A(34)は、非磁性体52の非磁性体孔部59と対向すると共に軸方向に開放された第3エンドリング孔部133を含み、別連結リング部49A(49)は、第3エンドリング孔部133と対向すると共に軸方向に開放された第3連結リング孔部243を含む。この構成によって、非磁性体孔部59、第3エンドリング孔部133、および、第3連結リング孔部243は空気の通風路を形成してもよい。また、別エンドリング34A(34)は、磁極片55の磁極片孔部56と対向すると共に軸方向に開放された第4エンドリング孔部134を含んでもよく、かつ、別連結リング部49A(49)は、第4エンドリング孔部134と対向すると共に軸方向に開放された第4連結リング孔部244を含んでもよい。この構成によって、磁極片孔部56、第4エンドリング孔部134、および、第4連結リング孔部244は、空気の通風路を形成してもよい。また、幾つかの実施形態では、非磁性体孔部59に差し込まれた締結軸88(
図5参照)が、第3エンドリング孔部133と第3連結リング孔部243とに差し込まれてもよい。
【0058】
図8Bの例では、別エンドリング34Bと別フランジ44Bに、エンドリング31と連結リング部42のような篏合構造が採用される。即ち、別エンドリング34Bは、軸方向の他方側に凸または一方側に凹となる別エンドリング篏合部270を含み、別連結リング部49B(49)は、別エンドリング篏合部270に嵌る別連結リング篏合部280を含む。別エンドリング篏合部270と別連結リング篏合部280との篏合は、締まりばめ状態での篏合、中間ばめ状態での篏合、または、隙間ばめ状態での篏合のいずれであってもよいが、締まりばめ状態での篏合または中間ばめ状態での篏合が採用されることが好ましい。
【0059】
図8Bの例では、別エンドリング篏合部270は、軸方向の一方側に凸となる少なくとも1つの別エンドリング凸部271を有し、別連結リング篏合部280は少なくとも1つの別エンドリング凸部271と嵌る別連結リング凹部282を有してもよい。別エンドリング凸部271と別連結リング凹部282は、周方向に等間隔に配置されてもよい。また、詳細な図示は省略するが、別エンドリング篏合部270は、軸方向の他方側に凹となる少なくとも1つの別エンドリング凹部を含んでもよい。この場合、別連結リング篏合部280は、少なくとも1つの別エンドリング凹部と嵌る少なくとも1つの別連結リング凸部を含んでもよい。別連結リング凸部は軸方向の一方側に凸となる。別エンドリング34Bと別フランジ44Bが採用される実施形態では、回転軸Aの軸方向の他方側(
図1A、
図1Bの例では回転軸A2)が外部回転機器と連結されてもよい。
【0060】
上記構成によれば、磁極片回転子30と外部回転機器とのトルク伝達がフランジ41または別フランジ44のいずれを介して実行しても、滑りの発生を抑制することができる。
【0061】
<8.まとめ>
上述した幾つかの実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0062】
1)本開示の少なくとも一実施形態に係る磁極片回転子(30)は、
磁気ギヤ電気機械(1)に設けられる磁極片回転子であって、
前記磁気ギヤ電気機械の周方向に交互に並ぶ複数の磁極片(55)及び複数の非磁性体(52)を含む環状ユニット(50)と、
前記磁気ギヤ電気機械の軸方向の一方側における前記環状ユニットの端部に連結されるエンドリング(31)と、
前記エンドリングに前記一方側から連結する連結リング部(42)を含むフランジ(41)と、
を備え、
前記エンドリングは、前記軸方向の前記一方側に凸または他方側に凹となるエンドリング篏合部(70)を含み、
前記連結リング部は、前記エンドリング篏合部に嵌る連結リング篏合部(80)を含む。
【0063】
上記1)の構成によれば、エンドリング篏合部と連結リング篏合部は周方向において接触することができる。従って、エンドリングとフランジとの間でトルクが伝達される場合において、エンドリングとフランジとの間で滑りが生じることが抑制される。よって、トルクの伝達効率の低下を抑制できる磁極片回転子が実現される。
【0064】
2)幾つかの実施形態では、上記1)に記載の磁極片回転子であって、
前記連結リング篏合部は、前記他方側に凸となる少なくとも1つの連結リング凸部(81)を有し、
前記エンドリング篏合部は、前記少なくとも1つの連結リング凸部が嵌る少なくとも1つのエンドリング凹部(72)を有し、
前記エンドリングは、いずれかの前記非磁性体の前記一方側における端部を収容する収容凹部であって、前記軸方向の前記一方側に凹む収容凹部(331)をさらに含み、
前記収容凹部の少なくとも一部は、前記少なくとも1つのエンドリング凹部に対して前記周方向にずれている。
【0065】
非磁性体と収容凹部との間ではトルクの伝達がなされるので、収容凹部または非磁性体の少なくとも一方の破損を回避するには、収容凹部を深くすることで収容凹部と非磁性体とに作用する力を分散することが好ましい。他方で、収容凹部を深くするほど、エンドリングの特定の部位が軸方向に短くなるので、エンドリングの機械的強度を確保することが困難になる。この点、上記2)の構成によれば、収容凹部の少なくとも一部が少なくとも1つのエンドリング凹部に対して周方向にずれているので、収容凹部を深くしても、エンドリングの軸方向長さが極端に短くなることが抑制される。従って、収容凹部の深さを十分に確保することができるので、収容凹部または非磁性体の少なくとも一方の破損を回避することができる。
【0066】
3)幾つかの実施形態では、上記2)に記載の磁極片回転子であって、
前記エンドリングは、前記他方側に凸となるエンドリング規定凸部であって、いずれかの前記磁極片と前記軸方向に並ぶエンドリング規定凸部(317)をさらに含み、
前記エンドリング規定凸部の少なくとも一部は、前記エンドリング凹部と前記軸方向に並ぶ。
【0067】
上記3)の構成によれば、エンドリング凹部よりも軸方向の他方側に位置するエンドリングの部位がエンドリング凸部に活用されるので、当該部位が軸方向に短くなるのを抑制できる。よって、エンドリングの機械的強度を確保できる。
【0068】
4)幾つかの実施形態では、上記2)または3)に記載の磁極片回転子であって、
前記収容凹部の深さは、前記エンドリング凹部の深さよりも深い。
【0069】
上記4)の構成によれば、収容凹部を深くすることで、収容凹部と非磁性体とに作用する力をさらに分散することができる。これにより、収容凹部または非磁性体の少なくとも一方の破損をさらに回避することができる。
【0070】
5)幾つかの実施形態では、上記1)から4)のいずれかに記載の磁極片回転子であって、
前記エンドリング篏合部は、前記連結リング篏合部に締まりばめ状態で嵌められる。
【0071】
上記5)の構成によれば、エンドリング篏合部と連結リング篏合部との間の滑りがさらに抑制されるので、磁極片回転子はトルク伝達の効率の低下をさらに抑制できる。
【0072】
6)幾つかの実施形態では、上記1)から5)のいずれかに記載の磁極片回転子であって、
前記エンドリング篏合部と前記連結リング篏合部との篏合が前記周方向に沿って複数形成される。
【0073】
上記6)の構成によれば、エンドリング篏合部と連結リング篏合部との間でトルクの伝達がなされる場所が分散されるので、エンドリングまたは連結リングの少なくとも一方の破損を抑制できる。
【0074】
7)幾つかの実施形態では、上記6)に記載の磁極片回転子であって、
前記エンドリング篏合部と前記連結リング篏合部との前記篏合は、前記周方向に沿って等間隔に形成されるように構成される。
【0075】
上記7)の構成によれば、エンドリング篏合部と連結リング篏合部との間でトルクの伝達がなされる場合に、エンドリングと連結リング部とに作用する力を周方向に均等に分散することができる。
【0076】
8)幾つかの実施形態では、上記1)から7)のいずれかに記載の磁極片回転子であって、
前記連結リング篏合部は、前記他方側に凸となると共に前記周方向に間隔を空けて配置された複数の連結リング凸部(81)を有し、
前記エンドリング篏合部は、前記複数の連結リング凸部がそれぞれ嵌る複数のエンドリング凹部(72)を有し、
前記連結リング部は、前記周方向に隣接するいずれか2つの前記連結リング凸部の間に形成される空間を規定する規定穴部(45)を含み、
前記エンドリングは、前記規定穴部の内側に配置される挿入部(38)をさらに含み、
前記挿入部の周方向長さは、各々の前記連結リング凸部の周方向長さよりも長い。
【0077】
上記8)の構成によれば、挿入部の周方向長さを長くすることができるので、エンドリングのうちで軸方向に長い部位を多く確保することができる。これによりエンドリングの機械的強度を向上させることができる。
【0078】
9)幾つかの実施形態では、上記1)から8)のいずれかに記載の磁極片回転子であって、
前記複数の非磁性体の少なくとも1つは、前記軸方向に開放された非磁性体孔部(59)を含み、
前記エンドリングは、前記非磁性体孔部と対向すると共に前記軸方向に開放された第1エンドリング孔部(311)を含み、
前記連結リング部は、前記第1エンドリング孔部と対向すると共に前記軸方向に開放された第1連結リング孔部(411)を含む。
【0079】
上記9)の構成によれば、非磁性体孔部、第1エンドリング孔部、および、第1連結リング孔部が空気の通風路を形成することができる。従って、磁極片回転子の温度上昇を抑制できる。
【0080】
10)幾つかの実施形態では、上記9)に記載の磁極片回転子であって、
前記複数の非磁性体はそれぞれ、前記非磁性体孔部を含み、
前記エンドリングは、複数の前記非磁性体孔部とそれぞれ対向する複数の前記第1エンドリング孔部をさらに含み、
前記連結リング部は、複数の前記第1エンドリング孔部とそれぞれ対向する複数の前記第1連結リング孔部をさらに含み、
前記軸方向に延在する締結軸であって、前記非磁性体孔部、前記第1エンドリング孔部、および、前記第1連結リング孔部に差し込まれた締結軸(88)をさらに備える。
【0081】
上記10)の構成によれば、非磁性体孔部、第1連結孔部、および、第1連結孔部に締結軸が差し込まれるので、磁極片回転子の剛性を高めることができると共に、磁極片回転子における防振設計を実現できる。
【0082】
11)幾つかの実施形態では、上記1)から10)のいずれかに記載の磁極片回転子であって、
前記複数の磁極片の少なくとも1つは、前記軸方向に開放された磁極片孔部(56)を含み、
前記エンドリングは、前記磁極片孔部と対向すると共に前記軸方向に開放された第2エンドリング孔部(322)をさらに含み、
前記連結リング部は、前記第2エンドリング孔部と対向すると共に前記軸方向に開放された第2連結リング孔部(422)をさらに含む。
【0083】
上記11)の構成によれば、磁極片孔部、第2エンドリング孔部、および、第2連結リング孔部が空気の通風路を形成することができる。従って、磁極片回転子の温度上昇を抑制することができる。
【0084】
12)幾つかの実施形態では、上記1)から11)のいずれかに記載の磁極片回転子であって、
前記連結リング篏合部は、
前記他方側に凸になると共に前記周方向に間隔を空けて隣接する第1凸部(181)および第2凸部(182)と、
前記第1凸部と前記第2凸部の間に形成される空間を規定する中間穴部(185)と、
を含み、
前記エンドリング篏合部は、前記第1凸部および前記第2凸部が嵌る篏合凹部であって、前記一方側を向く底面(177)と、前記底面から前記一方側に凸となる中間凸部(176)とを有する篏合凹部(175)を含み、
前記中間凸部は前記中間穴部に隙間ばめ状態で嵌められる。
【0085】
上記12)の構成によれば、第1凸部と第2凸部が篏合凹部に篏合する構成が採用されるので、第1凸部の周方向における一端と、第2凸部の周方向における他端については寸法公差を厳しく管理する必要がないので、磁極片回転子の構造を簡易化できる。また、連結リング篏合部とエンドリングとの組付工程において、互いに隙間ばめ状態で嵌められる中間凸部と篏合凹部が、第1凸部と第2凸部が篏合凹部に嵌る案内機能を果たすので、磁極片回転子の組付工程を容易化できる。
【0086】
13)幾つかの実施形態では、上記12)に記載の磁極片回転子であって、
前記篏合凹部は、
前記第1凸部のうちで前記第2凸部とは反対側の第1外側面(191)と当接する第1内側面(171)と、
前記第2凸部のうちで前記第1凸部とは反対側の第2外側面(192)と当接する第2内側面(172)と、を有し、
前記第1凸部および前記第2凸部は、前記篏合凹部に締まりばめ状態で嵌められる。
【0087】
上記13)の構成によれば、篏合凹部のうちで第1凸部または第2凸部に積極的に当接する部位は、第1内側面と第2内側面である。従って、磁極片回転子が周方向の片側へ回転する場合には、第1内側面または第2内側面の一方が連結リング篏合部と積極的にトルク伝達を行い、磁極片回転子が反対側へ回転する場合には、第1内側面または第2内側面の他方が連結リング篏合部と積極的にトルク伝達を行う。これにより、磁極片回転子の回転方向に応じて、エンドリング篏合部および篏合凹部の部位のうちで力が作用する部位が変わる。よって、力が作用する部位が回転方向によらず同じである場合に比べて、エンドリング篏合部と連結リング篏合部の機械的な耐久性を向上させることができる。
【0088】
14)幾つかの実施形態では、上記1)から13)のいずれかに記載の磁極片回転子であって、
前記エンドリング篏合部は、前記周方向における一端面であって、前記軸方向に対して傾斜するエンドリング傾斜面(77)を含み、
前記連結リング篏合部は、前記エンドリング傾斜面に対向する連結リング傾斜面(87)を含む。
【0089】
上記14)の構成によれば、エンドリング篏合部を篏合穴部に篏合させる工程において、エンドリング傾斜面と連結リング傾斜面が、篏合の案内機能を果たす。よって、磁極片回転子の組付け工程を容易化できる。
【0090】
15)幾つかの実施形態では、上記14)に記載の磁極片回転子であって、
前記エンドリング傾斜面は、前記軸方向に対する鋭角(角度θ)が10度以下となるように傾斜する。
【0091】
上記15)の構成によれば、エンドリング傾斜面と連結リング傾斜面の軸方向に対する傾斜を抑えることができるので、エンドリングと連結リング部の間でトルク伝達がなされる場合において、エンドリングと連結リング部が互いに軸方向にずれるのを抑制できる。
【0092】
16)幾つかの実施形態では、上記1)から15)のいずれかに記載の磁極片回転子であって、
前記フランジは、前記周方向に延在する外周面(452)を有するフランジ本体部(450)をさらに含み、
前記連結リング部は、前記フランジ本体部の前記外周面に設けられ、
前記連結リング篏合部は、
前記エンドリング篏合部に前記周方向にて対向すると共に前記磁気ギヤ電気機械の径方向に沿って延在する対向面(457)と、
前記対向面の前記径方向の内側端と、前記外周面とに接続され、前記径方向に対して傾斜する接続傾斜面(459)と、
を有する。
【0093】
上記16)の構成によれば、接続傾斜面が設けられることによって、連結リング篏合部とエンドリング篏合部との間でトルク伝達が行われる場合に、対向面457の径方向内側端に応力が集中するのを抑制できる。これにより、連結リング部の破損を回避することができる。
【0094】
17)幾つかの実施形態では、上記1)から16)のいずれかに記載の磁極片回転子であって、
前記環状ユニットの前記他方側の端部に連結される別エンドリング(34)と、
前記別エンドリングに前記他方側から連結する別連結リング部(49)を含む別フランジ(44)と、
を備え、
前記別エンドリングは、前記他方側を向くと共に前記周方向に延在するエンドリング端面(134A)を有し、
前記別連結リング部は、前記エンドリング端面と対向して接触する連結リング端面(149A)を有する。
【0095】
上記17)の構成によれば、磁極片回転子の軸方向の他方側では別エンドリングと連結リング部とが嵌り合う構造が採用されないので、磁極片回転子の構造を簡易にできる。
【0096】
18)幾つかの実施形態では、上記1)から16)のいずれかに記載の磁極片回転子であって、
前記環状ユニットの前記他方側の端部に連結される別エンドリング(34)と、
前記別エンドリングに前記他方側から連結する別連結リング部を含む別フランジ(44)と、
を備え、
前記別エンドリングは、前記軸方向の他方側に凸または一方側に凹となる別エンドリング篏合部(270)を含み、
前記別連結リング部は、前記別エンドリング篏合部に嵌る別連結リング篏合部(280)を含む。
【0097】
上記18)の構成によれば、磁極片回転子と外部回転機器とのトルク伝達がフランジまたは別フランジのいずれを介して実行しても、滑りの発生を抑制することができる。
【0098】
19)本開示の少なくとも一実施形態に係る磁気ギヤ電気機械(1)は、
上記1)乃至18)の何れかに記載の磁極片回転子(30)と、
前記環状ユニットと径方向に並ぶ固定子コイル(コイル99)を含む固定子(20)と、
前記環状ユニットを挟んで前記固定子コイルとは反対側に配置される回転子磁石(19)を含む磁石回転子(30)と、
を備える。
【0099】
上記19)の構成によれば、上記1)と同様の理由によって、トルクの伝達効率の低下を抑制できる磁気ギヤ電気機械が実現される。
【符号の説明】
【0100】
1 :磁気ギヤ電気機械
10 :磁石回転子
19 :回転子磁石
20 :固定子
30 :磁極片回転子
31 :エンドリング
34 :別エンドリング
38 :挿入部
41 :フランジ
42 :連結リング部
44 :別フランジ
45 :規定穴部
49 :別連結リング部
50 :環状ユニット
52 :非磁性体
55 :磁極片
56 :磁極片孔部
59 :非磁性体孔部
70 :エンドリング篏合部
70A :エンドリング篏合部
70B :エンドリング篏合部
70C :エンドリング篏合部
70D :エンドリング篏合部
72 :エンドリング凹部
77 :エンドリング傾斜面
80 :連結リング篏合部
81 :連結リング凸部
87 :連結リング傾斜面
88 :締結軸
99 :コイル
134A :エンドリング端面
149A :連結リング端面
171 :第1内側面
172 :第2内側面
175 :篏合凹部
176 :中間凸部
177 :底面
181 :第1凸部
182 :第2凸部
185 :中間穴部
191 :第1外側面
192 :第2外側面
270 :別エンドリング篏合部
280 :別連結リング篏合部
311 :第1エンドリング孔部
317 :エンドリング規定凸部
322 :第2エンドリング孔部
331 :収容凹部
335 :端面
411 :第1連結リング孔部
422 :第2連結リング孔部
450 :フランジ本体部
452 :外周面
457 :対向面
459 :接続傾斜面
S1,S2 :空間
θ :角度