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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004432
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】医療テープの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/02 20240101AFI20240109BHJP
【FI】
A61F13/02 390
A61F13/02 310D
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155771
(22)【出願日】2022-09-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-28
(31)【優先権主張番号】P 2022103405
(32)【優先日】2022-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】507134655
【氏名又は名称】有限会社ちょうりゅう
(74)【代理人】
【識別番号】100108143
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋崎 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】平島 利文
(57)【要約】
【課題】患部およびその周辺組織が被る生理的張力を持続的に減少させ、患部およびその周辺組織を安静に保ち、自然治癒を早めるために、患部の状態別に特化させた有効収縮力を備えた、使用・装着が容易な医療テープの製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】創および創周辺の皮膚を覆い伸縮性機能を有する伸縮性基材部と、前記伸縮性基材部を皮膚に貼付し保持する機能を有する粘着部と、前記粘着部を保護する機能を有する剥離部と、可とう性及び復元性を有する、非伸縮性の有効収縮力保持部を備え、前記有効収縮力保持部、前記伸縮性基材部、前記粘着部、及び前記剥離部の順に設けられている医療テープであって、前記伸縮性基材部内に、後に前記伸縮性基材部となる溶液ポリマーの成形収縮に伴い生じた収縮力と、該伸縮性基材部の上底部分を引き伸ばしたことで生じた収縮力の双方を備える、医療テープである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
創および創周辺の皮膚を覆い伸縮性機能を有する伸縮性基材部と、
前記伸縮性基材部を皮膚に貼付し保持する機能を有する粘着部と、
前記粘着部を保護する機能を有する剥離部と、
可とう性及び復元性を有する、非伸縮性の有効収縮力保持部を備え、
前記有効収縮力保持部、前記伸縮性基材部、前記粘着部、及び前記剥離部の順に設けられている医療テープの製造方法であって、
外力により断面形状を略弓形凹型に曲げた前記有効収縮力保持部の略弓形凹型内面に、後に前記伸縮性基材部となる溶液ポリマーを重ねた、前記有効収縮力保持部と前記溶液ポリマーからなる2層の構造体を得て、前記溶液ポリマーを乾燥させ、前記伸縮性基材部の製膜と前記有効収縮力保持部と前記伸縮性基材部との積層を完了させ、断面形状を略弓形凹型に曲げた前記有効収縮力保持部と前記伸縮性基材部からなる2層の構造体を得る工程、
次に、前記有効収縮力保持部に加えた外力を取り除き、前記有効収縮力保持部が備える復元性を発揮させ、有効収縮力を保持した状態の前記伸縮性基材部と前記有効収縮力保持部からなる2層の構造体を得る工程を備え、
使用時に、前記有効収縮力保持部を取り除くことで前記伸縮性基材部内に保持されていた有効収縮力を放出させる医療テープの製造方法。
【請求項2】
創および創周辺の皮膚を覆い伸縮性機能を有する伸縮性基材部と、
前記伸縮性基材部を皮膚に貼付し保持する機能を有する粘着部と、
前記粘着部を保護する機能を有する剥離部と、
可とう性及び復元性を有する、非伸縮性の有効収縮力保持部を備え、
前記有効収縮力保持部、前記伸縮性基材部、前記粘着部、及び前記剥離部の順に設けられている医療テープであって、
前記伸縮性基材部内に、後に前記伸縮性基材部となる溶液ポリマーの成形収縮に伴い生じた収縮力と、該伸縮性基材部の上底部分を引き伸ばしたことで生じた収縮力の双方を備える、医療テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理的張力に対応した医療テープの製造方法、詳しくは、製造工程において、伸縮性基材部内に任意の方向、さらに任意の強さの有効収縮力を備える手段を用い、伸縮性基材部内に成形収縮に伴う内部応力に勝る有効収縮力を保持した、医療テープの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
身体の一部がきずつけられてできたきずを「創傷」と称するが、創傷は、鋭利な刃物等で切って生じた開放性のきずを称する「創(そう)」と、鈍器等で打撲した時のような切り口のない閉鎖的なきずを称する「傷(しょう)」に大別することができる。従来、医療現場等において、開放性のきずである創に対しては、創底が浅い場合は、絆創膏や包帯等で創を閉じて固定する処置を用い、創底が深い場合は、縫合糸等による縫合により創を閉じて固定する処置を用いる手段が汎用されている。
【0003】
また、皮膚は、上層から表皮、真皮、皮下組織の3層に分類することができる。一般的な皮膚縫合は、これら3層を一度に縫合するため、太めの縫合糸を用いると皮膚表面に目立った傷跡が残ることも少なくなく、細めの縫合糸を用いると外力による創離開が増加する傾向にある。これらを防止するために、縫合法として、「真皮縫合」が選択され汎用されている。真皮縫合とは、皮膚の1層目の表皮を縫合せず、2層目の真皮と3層目の皮下組織を縫合する縫合法であり、真皮縫合の後に、1層目の表皮のみを縫合する縫合法を「表皮縫合」と呼ぶ。また、真皮縫合では、抜糸が不要な太めの縫合糸(吸収糸)を用い、表皮縫合には細い縫合糸を選択することで、皮膚表面の傷跡を最小限にしている。
【0004】
しかし、これらの縫合や固定等の処置により創を閉じても、再び創が開くことは稀ではない。以下、「一度閉じた創が再び開くこと」を創離開と称する。創離開の原因の一つに、生理的張力がある。生理的張力とは、創の周辺組織が被る、創を開かせる方向へと働く、創の周辺組織の皮膚や下層の筋肉等による生理的で静的な持続的張力である。
【0005】
ここで、創離開や生理的張力について説明する。なお、生理的張力の有無について比較するため、生理的張力の存在しない例として「劣化していない鞣革(なめしがわ)」を用いる。縦10cm、横15cm、厚さ2mm程度の劣化していない鞣革を用意し、鞣革の中央部分に一文字に、長さ3cm、深さ1.5mm程度に外科用メスを用いて切開する。その後、「生体の皮膚」に同等の切開創がある場合と同様に縫合糸を用い縫い合わせる。この時、無理に強い力で縫合糸を引っ張れば、縫合糸が切れるか、鞣革が裂ける。これは、「生体の皮膚」に同等の切開創がある場合も同様で、無理に強い力で縫合糸を引っ張れば、縫合糸が切れるか、生体の皮膚が裂ける。この原因は、鞣革の場合は未熟な縫製技術にあり、皮膚の場合は未熟な縫合技術にある。解決手段は、正しい技術の習得となる。
【0006】
また、鞣革の切開部分を適切な縫製技術で縫い合わせ閉じた場合でも、鞣革を閉じた方向に対して垂直方向に無理に強い力で引っ張れば、縫合糸が切れるか、鞣革が裂ける。同様に、皮膚の切開創を適切な縫合技術で縫合し、創を閉じても、創に創を開かせる方向の強い力が無理に加われば、縫合糸が切れるか、生体の皮膚が裂ける。このことが意図せずに生じた場合、その原因は外力による事故となり、解決手段は予防となる。これは、劣化していない鞣革と生体の皮膚に共通する事象である。
【0007】
ここで、生理的張力をイメージ的に可視化するために、図6から図8を用いる。図6は、皮膚を一文字に切開した後の創面の様子を示す概略平面図である。図7は、図6で示した創周辺の皮膚を縫合糸で縫合した様子である。図8は、図7で示した縫合した創の周辺部(創縁)に加わる力を示す。なお、図6の黒矢印は、生理的張力9、図8の黒矢印は、生理的張力を含む張力9a、図8の白矢印は、縫合糸による創面を引き寄せる力13を示す。また、符号8は、創面、符号10は、縫合糸、符号11は、縫合後の創面、符号12は、縫合糸が貫通した部位である。
【0008】
次に、切開の形状について比較していく。鞣革の場合、一文字に外科用メスで切開した部分は、切れてはいるが、切開部分の形状は一文字の線状のままである。これに対し、生体の皮膚では、外科用メスで一文字に切開した場合、図6の創面8に示すように、創の形状は一文字に留まらず、楕円状に開いた形状となる。この原因こそ、図6の黒矢印で示す生理的張力9である。なお、図6では、便宜上、創面(傷口)8の形状を楕円状に開いた形状とし、生理的張力9の方向や力を簡略化して示しているが、生理的張力とは、創の周辺組織が被る、創を開かせる方向へと働く、創の周辺組織の皮膚や下層の筋肉等による生理的で静的な持続的張力である。そのため、生体の皮膚を外科用メスで一文字に切開した場合、その部位、方向および深さ等の条件により、生理的張力9の示す方向や力の強さも様々である。よって、必ずしも図6に示すように、創面(傷口)8の形状、創面に加わる生理的張力9の方向や力が同一とならず、これに限定されるものではない。また、縫製時及び縫合時については、生理的張力の存在しない鞣革では、一文字に切開した部分は、そのまま切り口を合わせた状態で縫製すればよい。しかし、切開した生体の皮膚を縫合する場合には、縫合する創面(傷口)8の形状を、楕円状から切開した一文字の形状になるように、縫合糸や施術者の手指等で創周辺の皮膚を引き寄せて縫合する必要がある。これは、創を開かせる方向へ働く生理的張力(図6の生理的張力9)によるものであり、縫合後に、縫合糸と縫合した創周辺の皮膚が引き合っているのも、図8の縫合糸による創面を引き寄せる力13と生理的張力を含む張力9aによるものである。
【0009】
また、鞣革の縫製と生体の皮膚への縫合の糸の間隔や締め付け具合を比較すると、生体の皮膚への縫合では、創周辺の皮膚を縫合する縫合糸の間隔は、密にするよりむしろ粗い方が予後良好であるため、必然的にその間隔は粗くなり、縫合糸の締め付け具合は、締め過ぎを防止するために緩くなる。そのため、無事に縫合を終えた創に、数日後創離開が生じると、患者は、その原因を医師の未熟な縫合技術によるものと捉えやすく、医師は、患者の不注意と捉えやすいため、その原因説明が生理的張力にあることには及ばず、患者と医師との間にトラブルが生じることも少なくなく、縫合においての生理的張力の存在は、医者泣かせの原因ともなっている。なお、血液等の循環不良による縫合した創周辺の皮膚等の壊死(縫合糸による医療関連機器圧迫創傷)を原因とする創離開に対しては、再度縫合しても効果は期待できず、縫合糸をすべて除去し、壊死組織を切除し、創傷被覆材で覆い自然治癒に期待するという保存的治療に切り替えなければならない場合も少なくない。これらの原因は、創周辺の皮膚に働く生理的張力であり、解決手段は、創周辺の皮膚に働く生理的張力の防止となる。しかし、創周辺の皮膚に働く生理的張力を消失させることは元より、減少させることも容易ではない。そのため、生理的張力を原因とする創離開の予防は困難であった。
【0010】
ここまで、縫合した創を例とし、創離開や生理的張力について述べてきた。ここで、未縫合の創の生理的張力について触れる。あえて、図示はしないが、未縫合の創は、創周辺の皮膚や下層の筋肉等の組織、さらに、皮膚割線(細胞分裂の過程でできた分裂線)等の影響を受け、強弱の異なる生理的張力を全方向から受けている。皮膚に円孔を開けた際、皮膚の張力が強い方向を長軸とする楕円ができるのも生理的張力が均一ではないためである。よって、未縫合の創においても、縫合した創と同様の緊張を常に強いられており、安静を保つことが困難なため、自然治癒もおのずと遅れることとなり、生理的張力は、創の状態が、縫合、未縫合に関わらず、厄介な存在であった。
【0011】
一部では、縫合した創の周辺組織が受けている生理的張力ならびにその生理的張力に伴う縫合糸に作用する張力を持続的に減少させる機能を取り入れた創離開防止用補助具(例えば、特許文献1参照)が提案され、創離開防止部として、伸縮性のベア天竺生地(綿89%、ポリウレタン11%)を用い、縫合部および縫合部周辺の皮膚との間に生じる摩擦を利用し、生理的張力を減少させるために、創離開防止部を創および創の周辺組織に密着させて保持する機能を有する保持部により前腕部に装着している。しかし、特許文献1に記載の創離開防止用補助具の実施例では、伸縮機能を備えない綿糸を使用した綾織り生地を細くし、紐として使用しているため、紐の締め付けが強すぎれば、患者に苦痛を与え、紐の締め付けが弱ければ、生理的張力を効率よく減少させることができないという問題が浮上した。また、内部応力保持部を取り除くことで伸縮性基材部内に存在する有効収縮力を放出させることを特徴とする創の処置用医療テープの製造方法(例えば、特許文献2参照)が提案されている。しかし、該創の処置用医療テープの製造方法では、溶液ポリマーの成形収縮に伴う内部応力に勝る有効収縮力を得ることができないという問題が浮上した。ゆえに、従来の創離開防止用補助具や製造方法では、このような不利を適切に解決できる手段がなかったのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第4790091号公報
【特許文献2】特許第6961122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記の事情に鑑み、患部およびその周辺組織が被る生理的張力を持続的に減少させ、患部およびその周辺組織を安静に保ち、自然治癒を早めるために、患部の状態別に特化させた有効収縮力を備えた、使用・装着が容易な医療テープの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明者は鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明の製造方法は、創および創周辺の皮膚を覆い伸縮性機能を有する伸縮性基材部と、前記伸縮性基材部を皮膚に貼付し保持する機能を有する粘着部と、前記粘着部を保護する機能を有する剥離部と、可とう性及び復元性を有する、非伸縮性の有効収縮力保持部を備え、前記有効収縮力保持部、前記伸縮性基材部、前記粘着部、及び前記剥離部の順に設けられている医療テープの製造方法であって、外力により断面形状を略弓形凹型に曲げた前記有効収縮力保持部の略弓形凹型内面に、後に前記伸縮性基材部となる溶液ポリマーを重ねた、前記有効収縮力保持部と前記溶液ポリマーからなる2層の構造体を得て、前記溶液ポリマーを乾燥させ、前記伸縮性基材部の製膜と前記有効収縮力保持部と前記伸縮性基材部との積層を完了させ、断面形状を略弓形凹型に曲げた前記有効収縮力保持部と前記伸縮性基材部からなる2層の構造体を得る工程、次に、前記有効収縮力保持部に加えた外力を取り除き、前記有効収縮力保持部が備える復元性を発揮させ、有効収縮力を保持した状態の前記伸縮性基材部と前記有効収縮力保持部からなる2層の構造体を得る工程を備え、使用時に、前記有効収縮力保持部を取り除くことで前記伸縮性基材部内に保持されていた有効収縮力を放出させる医療テープの製造方法である。本発明の製造方法において、上記工程以外の工程については、任意でよく、本発明の効果を奏することができる限りにおいて特に限定されるものではない。なお、有効収縮力とは、伸縮性基材部を生理的張力とは抗する方向に収縮させ、生理的張力を減少させるために有効な収縮力を言う。
また、本発明の医療テープは、創および創周辺の皮膚を覆い伸縮性機能を有する伸縮性基材部と、前記伸縮性基材部を皮膚に貼付し保持する機能を有する粘着部と、前記粘着部を保護する機能を有する剥離部と、可とう性及び復元性を有する、非伸縮性の有効収縮力保持部を備え、前記有効収縮力保持部、前記伸縮性基材部、前記粘着部、及び前記剥離部の順に設けられている医療テープである。この医療テープは、本発明の上記製造方法によって得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の製造方法で得られる医療テープは、伸縮性基材部内に溶液ポリマーの成形収縮に伴う内部応力に勝る有効収縮力を保持し、活用するために、製造工程において、外力により断面形状を略弓形凹型に曲げた有効収縮力保持部の略弓形凹型内面に、後に伸縮性基材部となる溶液ポリマーを重ねた、有効収縮力保持部と溶液ポリマーからなる2層の構造体を得て、溶液ポリマーを乾燥させ、伸縮性基材部の製膜と有効収縮力保持部と伸縮性基材部との積層を完了させ、断面形状を略弓形凹型に曲げた有効収縮力保持部と伸縮性基材部からなる2層の構造体を得る工程、次に、有効収縮力保持部に加えた外力を取り除き、有効収縮力保持部が備える復元性を発揮させることで、伸縮性基材部を引き伸ばし、溶液ポリマーの成形収縮に伴い生じる収縮力、さらに伸縮性基材部が引き伸ばされることで得られる収縮力の双方を医療テープの有効収縮力とし、該有効収縮力を保持した状態の伸縮性基材部と有効収縮力保持部からなる2層の構造体を得て、有効収縮力保持部の機能により、溶液ポリマーの成形収縮に伴う内部応力に勝る有効収縮力を伸縮性基材部内に保持することを特徴とし、生理的張力を持続的に減少させるための手段を医療テープに機能として取り入れることで、特に、形態を患部および患部周辺の皮膚を覆うテープとすることにより、患部および患部周辺の皮膚に対し、面で覆い貼付することで、生理的張力を効率よく減少させ、生理的張力を持続的に減少させることができる医療テープを効率よく得ることができる。
【0016】
また、前記医療テープは、該医療テープの製造段階において、伸縮性基材部内に有効収縮力を保持する機能を備えることで、該医療テープの使用時に、伸縮性基材部内の有効収縮力を保持した状態で皮膚に貼付することができる。そして、粘着部で皮膚に貼付した後、有効収縮力保持部を取り除くことにより、粘着部で貼付した患部および患部周辺の皮膚に対して、伸縮性基材部内に保持された状態の有効収縮力を放出することができる。この放出された有効収縮力は、生理的張力に抗する方向に効率よく作用し、伸縮性基材部を創を開かせる方向に抗する方向に収縮させると共に、患部および患部周辺の皮膚を創を開かせる方向に抗する方向に収縮させることで、患部に対して、創を開かせる方向に抗する方向から患部周辺の皮膚を弛ませることができ、患部周辺の皮膚が被る生理的張力を持続的に減少させることが可能となる。さらに、該医療テープでは、生理的張力を減少させる機能をテープの全面に備え、患部および患部周辺の皮膚に対し、面で覆い貼付することができるため、放出された有効収縮力の作用は、該医療テープで覆われた患部および患部周辺の皮膚のみならず、該医療テープの貼付部位周辺の皮膚にまで及び、該有効収縮力による創周辺の皮膚を引き寄せる力となる。このことで、患部およびその周辺組織を安静に保つことができ、自然治癒を早めることができる。また、皮膚には、持続的伸長負荷が加われば伸び、持続的伸長負荷を取り除けば縮むという生理的性質があるため、創および創周辺の皮膚に働く持続的伸長負荷となる生理的張力を取り除き、創周辺の皮膚を弛ませれば、皮膚はその生理的性質に従い縮む。よって、該医療テープの使用は、創の処置に限定されるものではなく、治癒後の肉芽組織による瘢痕収縮(傷跡)等の改善にも使用が可能となる。
【0017】
さらに、本発明の製造方法で得られる医療テープ、すなわち本発明の医療テープでは、患部の状態別に特化させた有効収縮力を備えさせることが可能なため、例えば、縫合した創の場合、患部および患部周辺の皮膚が被る、比較的強い生理的張力を含む張力の方向は、縫合糸の方向と概ね一致することから、皮膚を一文字に深く切開し、その後、楕円状に開いた創を手指や縫合糸等で引き寄せ、切開した方向に対し垂直方向に縫合した創では、縫合糸の方向である垂直方向(一方向)の生理的張力を含む張力が最も強い張力となるため、一文字形状に縫合した創に対しては、一方向の有効収縮力を備えた一文字形状の縫合した創に特化させた医療テープを選択・使用し、また、真円形状に開いた創底が深い創を手指や縫合糸等で創縁を引き寄せ、直径方向に縫合した創では、縫合糸の方向である直径方向(全方向)の生理的張力を含む張力が比較的強い張力となることから、直径方向に縫合した創では、全方向の有効収縮力を備えた直径方向に縫合した創に特化させた医療テープを選択・使用することで、放出された有効収縮力は、それぞれの生理的張力を含む張力に抗する方向に効率よく作用し、伸縮性基材部を創を開かせる方向に抗する方向に収縮させると共に、創および創周辺の皮膚を創を開かせる方向に抗する方向に収縮させることで、縫合した創に対して、創を開かせる方向に抗する方向から縫合した創周辺の皮膚を弛ませることができ、縫合した創周辺の皮膚が被る生理的張力を含む張力、並びに該張力に伴う縫合糸に作用する張力を持続的に減少させることが可能となる。
【0018】
また、患部の状態が未縫合の創においては、一文字形状の未縫合の創であれば、有効収縮力の方向を創に対し垂直方向である、一方向の有効収縮力を備えた一文字形状の創に特化させた医療テープを選択・使用し、また、真円形状の未縫合の創であれば、有効収縮力の方向を創に対し直径方向である、全方向の有効収縮力を備えた真円形状の未縫合の創に特化させた医療テープを選択・使用することで、放出された有効収縮力は、それぞれの生理的張力に抗する方向に効率よく作用し、伸縮性基材部を生理的張力に抗する方向に収縮させると共に、創および創周辺の皮膚を生理的張力に抗する方向に収縮させることで、創に対して、生理的張力に抗する方向から創周辺の皮膚を弛ませることができ、創周辺の皮膚が被る生理的張力を持続的に減少させることが可能となる。また、生理的張力を持続的に減少させることは、創の状態によっては縫合を不要とすることをも可能とし、挫創や咬創または褥瘡等のような一般的に縫合が困難な創への対応にも期待できる。本発明の製造方法によれば、前記医療テープを効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の第1の実施の形態を示す医療テープに用いる有効収縮力保持部5の概略断面図である。
図2図2は、本発明の第1の実施の形態を示す医療テープの製造過程を示す概略断面図であり、外力により断面形状を略弓形凹型に曲げた有効収縮力保持部5の略弓形凹型内面に、後に伸縮性基材部2となる溶液ポリマー1を塗布し、有効収縮力保持部5と溶液ポリマーか1らなる2層の構造体を得る工程を示す。
図3図3は、本発明の第1の実施の形態を示す医療テープの製造過程を示す概略断面図であり、伸縮性基材部2の製膜と有効収縮力保持部5と伸縮性基材部2との積層を完了させ、断面形状を略弓形凹型に曲げた有効収縮力保持部5と伸縮性基材部2からなる2層の構造体を得る工程を示す。
図4図4は、本発明の第1の実施の形態を示す医療テープの製造過程を示す概略断面図であり、有効収縮力保持部5に加えた外力を取り除き、有効収縮力保持部5が備える復元性を発揮させ、有効収縮力を保持した状態の伸縮性基材部2と有効収縮力保持部5からなる2層の構造体を得る工程を示し、2層の構造からなる該医療テープの基本的構成が完了した様子を示す。
図5図5は、本発明の製造方法によって得られる第1の実施の形態を示す医療テープの概略断面図であり、図4に示す2層の構造からなる該医療テープの基本的構成に、伸縮性基材部2の上層に粘着部3を積層し、次いで剥離部4を積層させ、4層からなる本発明の製造方法によって得られる第1の実施の形態である医療テープが完成した様子を示す。
図6図6は、皮膚を一文字に切開した後の創面の様子を示す概略平面図である。
図7図7は、図6で示した創周辺の皮膚を縫合糸で縫合した様子を示す概略平面図である。
図8図8は、図7で示した縫合した創の周辺部(創縁)に加わる力を示す概略平面図である。
図9図9は、本発明の製造方法によって得られる第1の実施の形態を示す医療テープの概略平面図である。
図10図10は、図9で示す本発明の製造方法によって得られる第1の実施の形態を示す医療テープを図7の縫合後の創に使用した概略平面図である。
図11図11は、本発明の製造方法によって得られる第1の実施の形態を示す医療テープの使用効果を説明する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明者は、鋭意研究を重ねていく過程で、以下の知見に至った。縫合した創において、縫合後の創離開を防止するためには、縫合した創周辺の皮膚や縫合糸が被る創を開かせる方向への生理的張力を持続的に減少させることが肝要となる。また、縫合後の自然治癒を早めるためには、縫合した創周辺の皮膚を安静に保つことも必要となる。しかし、縫合した創周辺の皮膚は、生理的張力を持続的に被るため、安静を保つことが困難である。ここで、縫合した創に対して、創を開かせる方向に抗する方向から縫合した創周辺の皮膚を弛ませ、縫合した創周辺の皮膚が被る生理的張力を含む張力、並びに該張力に伴う縫合糸に作用する張力を持続的に減少させることは、縫合後の縫合糸切断による創離開、並びに縫合糸による縫合した創周辺の皮膚の壊死等による創離開を防止するための有効な手段となる。
【0021】
また、本発明者は、以下のような状態の創、例えば、挫創や咬創等のように一般的に縫合が困難とされる創を縫合し、複数の創を開かせる方向が生じ、創を開かせる方向を一概には言えない状態の創、または、未縫合のため生理的張力が全方向に働く創、あるいは、褥瘡等の未縫合を余儀なくされる創であっても、創周辺の皮膚が被る生理的張力を効率よく減少させることは肝要であり、このような様々な状態の創に対応するためには、まず、任意の方向を備えた、溶液ポリマーの成形収縮に伴う内部応力に勝る収縮力を医療テープの有効収縮力とし、該有効収縮力を保持した状態の伸縮性基材部を得ることが不可欠であると考えた。そこで、医療テープに用いられ、後に伸縮性機能を有する伸縮性基材部の原料となる溶液ポリマーの特性と、形状変化に対応する可とう性及び復元性を有する有効収縮力保持部の特性に着目し、これらの組み合わせにより、伸縮性基材部内に溶液ポリマーの成形収縮に伴う内部応力に勝る有効収縮力を保持する手段について考察した。例えば、非伸縮性素材に全く接しない状態で、溶液ポリマーを製膜すると、溶液ポリマーは全方向に自由に収縮し、製膜後の伸縮性基材部内に成形収縮に伴う内部応力は生じない。一方、非伸縮性素材の上層に、溶液ポリマーを塗布し製膜し、並行して伸縮性基材部と非伸縮性素材との積層を完了させた場合は、非伸縮性素材と溶液ポリマーが接する部分(溶液ポリマーの下底部分)では、溶液ポリマーは自由に収縮することができず、非伸縮性素材と溶液ポリマーが接する部分(溶液ポリマーの下底部分)には、製膜後の伸縮性基材部内に成形収縮に伴う内部応力が発生する。
【0022】
そこで、伸縮性基材部内の有効収縮力を保持する機能を有し、形状変化に対応する可とう性及び復元性を有する素材からなる有効収縮力保持部の断面形状を外力により略弓形凹型に曲げ、その略弓形凹型内面に、後に伸縮性基材部となる溶液ポリマーを塗布し、伸縮性基材部の製膜と有効収縮力保持部と伸縮性基材部との積層を完了させた場合、伸縮性基材部の原料となる溶液ポリマーの特性により、有効収縮力保持部と溶液ポリマーが接する部分(溶液ポリマーの下底部分)には、成形収縮に伴う内部応力が発生する。上述の過程で発生した成形収縮に伴う内部応力は、有効収縮力保持部の機能により、有効収縮力の一部として伸縮性基材部の下底部分に保持される。次に、有効収縮力保持部に加えた外力を取り除くことで、有効収縮力保持部が備える復元性を発揮させ、外力により断面形状を略弓形凹型に曲げられていた有効収縮力保持部と伸縮性基材部からなる2層の構造体を、外力を加える前の成形時の形状(本発明の第1の実施の形態では水平形状)に戻す。このことにより、有効収縮力保持部とは接していない製膜後の伸縮性基材部の上底部分を引き伸ばすことができ、伸縮性基材部の上底部分に、引き伸ばされた分の収縮力を発生させることができる。よって、伸縮性基材部の下底部分に生じた成形収縮に伴う内部応力による収縮力、さらに伸縮性基材部の上底部分に有効収縮力保持部が備える復元性により得られた収縮力の双方を医療テープの有効収縮力として活用でき、溶液ポリマーの成形収縮に伴う内部応力に勝る有効収縮力として伸縮性基材部内に保持することができる。また、外力により有効収縮力保持部の形状を略弓形凹型に曲げる際、加える外力や略弓形凹型作業台の形状等により、伸縮性基材部内に保持する有効収縮力の方向を一方向、または全方向に備えさせることができ、さらに、有効収縮力保持部や略弓形凹型作業台の形状、有効収縮力保持部に塗布する溶液ポリマーの量等を変化させることで、伸縮性基材部内に保持する有効収縮力の収縮力を任意とすることができるとの知見を得て、溶液ポリマーの成形収縮に伴う内部応力に勝る有効収縮力、さらには、任意の方向、任意の強さを備えた有効収縮力を伸縮性基材部内に保持する手段を見出した。
【0023】
ここで、患部に対して、生理的張力に抗する方向から患部周辺の皮膚を弛ませ、患部および患部周辺の皮膚が被る生理的張力を持続的に減少させることは、患部の状態が、縫合した創においては、縫合後の縫合糸切断による創離開、並びに縫合糸による縫合した創周辺の皮膚の壊死等による創離開を防止し、患部の状態が、未縫合の創においては、常に緊張を強いる生理的張力から創の緊張を緩和するための有効な手段となる。この有効な手段を患部および患部周辺の皮膚に対し、面で覆い貼付する形態の医療テープに機能として取り入れることで、テープの全面に生理的張力を減少させる機能を備えることができるため、生理的張力を効率よく減少させ、患部および患部周辺の皮膚が被る生理的張力を持続的に減少させ、患部の状態が、縫合もしくは未縫合であっても、患部およびその周辺組織を安静に保つことができ、自然治癒を早めることができる。また、皮膚には、持続的伸長負荷が加われば伸び、持続的伸長負荷を取り除けば縮むという生理的性質があるため、創および創周辺の皮膚に働く持続的伸長負荷となる生理的張力を取り除き、創周辺の皮膚を弛ませれば、皮膚はその生理的性質に従い縮む。よって、該医療テープの使用は、創の処置に限定されるものではなく、治癒後の肉芽組織による瘢痕収縮(傷跡)等の改善にも使用が可能となる。
【0024】
このことにより、患部の状態が、縫合した創においては、縫合した創周辺の皮膚が被る生理的張力を含む張力、並びに該張力に伴う縫合糸に作用する張力を持続的に減少させることが可能となり、縫合後の縫合糸切断による創離開、並びに縫合糸による縫合した創周辺の皮膚の壊死等による創離開を防止することができる。また、患部の状態が、未縫合の創においては、強弱の異なる全方向からの生理的張力により、常に緊張を強いられていた状態から、創の緊張を和らげることが可能となる。さらに、生理的張力を持続的に減少させることは、創の状態によっては縫合を不要とすることをも可能とし、挫創や咬創または褥瘡等のような一般的に縫合が困難な創への対応にも期待でき、そして、治癒後の傷跡等の改善も可能となる。これらの観点から見ると、従来の創離開防止用補助具および製造方法においては、患部への生理的張力に対する考慮がなされていないことがわかる。
【0025】
そこで、本発明者は、患部および患部周辺の皮膚が被る生理的張力を持続的に減少させる機能を製造工程において取り入れた医療テープを提供するために、該医療テープの材料として、創および創周辺の皮膚を覆い、伸縮性機能を有する伸縮性基材部の原料として、医療用として使用可能で、製膜後に伸縮性機能を有し、さらに、縫合した創周辺の皮膚が被る創離開方向へ働く生理的張力とは抗する、成形収縮に伴う内部応力によって生じる有効収縮力を得ることが可能な溶液ポリマー素材を選択した。次に、有効収縮力保持部の素材として、形状変化に対応する可とう性及び復元性を有する素材の中から、製造工程において、後に伸縮性基材部となる溶液ポリマーを塗布し、伸縮性基材部の製膜と積層が可能で、伸縮性基材部内に有効収縮力を保持する機能を有する、非伸縮素材を選択した。次に、粘着部の素材として、伸縮性基材部を皮膚に貼付し保持する機能を有する医療用粘着剤を選択し、さらに、剥離部の素材として、粘着部を保護する機能を有する剥離紙を選択し、各素材が有する機能を利用して、医療テープの製造方法を構成することを着想した。
【0026】
これらの素材を組み合わせ、医療テープの製造工程において、外力により断面形状を略弓形凹型に曲げた有効収縮力保持部の略弓形凹型内面に、後に伸縮性基材部となる溶液ポリマーを重ねた、有効収縮力保持部と溶液ポリマーからなる2層の構造体を得て、溶液ポリマーを乾燥させ、伸縮性基材部の製膜と有効収縮力保持部と伸縮性基材部との積層を完了させ、断面形状を略弓形凹型に曲げた有効収縮力保持部と伸縮性基材部からなる2層の構造体を得る工程、次に、有効収縮力保持部に加えた外力を取り除き、有効収縮力保持部が備える復元性を発揮させ、有効収縮力保持部の形状を成形時の形状に戻し、伸縮性基材部内に任意の方向、さらに任意の強さの有効収縮力を備え、該有効収縮力を保持した状態の伸縮性基材部と有効収縮力保持部からなる2層の構造体を得る工程を経て、有効収縮力保持部の機能により、溶液ポリマーの成形収縮に伴う内部応力に勝る有効収縮力を伸縮性基材部内に保持した、2層の構造体からなる医療テープの基本的構成は完了する。次に、2層の構造体からなる伸縮性基材部の上層に、粘着部および剥離部を積層する工程を経て、本発明の第1の実施の形態で示す、4層の構造体からなる医療テープは完成する。
【0027】
本発明の製造方法で得られる医療テープは、有効収縮力保持部、伸縮性基材部、粘着部、剥離部の順に設けられている。本発明の医療テープの使用時には、剥離部を取り除き、伸縮性基材部で患部および患部周辺の皮膚を覆い、粘着部により皮膚に貼付する。次に、有効収縮力保持部を取り除く。該有効収縮力保持部は、伸縮性基材部内に有効収縮力を保持する役目を担うため、有効収縮力保持部が取り除かれたことにより、伸縮性基材部内に保持された状態の有効収縮力は、粘着部で貼付された患部および患部周辺の皮膚に対して放出される。この時、放出された有効収縮力は、生理的張力に抗する方向に効率よく作用し、伸縮性基材部を生理的張力に抗する方向に収縮させると共に、患部および患部周辺の皮膚を生理的張力に抗する方向に収縮させ、患部に対して、生理的張力に抗する方向から患部周辺の皮膚を弛ませ、患部および患部周辺の皮膚が被る生理的張力を持続的に減少させることが可能となる。よって、患部および患部周辺の皮膚が被る生理的張力を持続的に減少させるための手段を製造工程において、医療テープに機能として取り入れることができ、テープの全面に生理的張力を減少させる機能を備えることで、患部および患部周辺の皮膚に対し、面で覆い貼付することで、生理的張力を効率よく減少させることができる。そして、有効収縮力により、患部に対して、生理的張力に抗する方向から患部周辺の皮膚を弛ませ、患部および患部周辺の皮膚が被る生理的張力を持続的に減少させることができるとの知見を得て、本発明を完成するに至った。ここで言う「皮膚を弛ませ」とは、必ずしも、肉眼的なレベルではなく、拡大鏡又は顕微鏡レベルといえるような軽微な状態を含んでいる。また、ここで言う「テープ」とは、幅がせまく長い、うすい帯状のものを示すが、形状は用途等によりこの限りではない。
【0028】
本発明の製造方法では、水平形状に成形した有効収縮力保持部5(図1)を略弓形凹型作業台6を使用し、外力により断面形状を略弓形凹型に曲げ、有効収縮力保持部5の略弓形凹型内面に、後に伸縮性基材部2となる溶液ポリマー1を塗布し、有効収縮力保持部5と溶液ポリマー1からなる2層の構造体を得て(図2)、溶液ポリマー1を乾燥させることで硬化させ、溶液ポリマー1の製膜を完了し、製膜後の溶液ポリマーを伸縮性基材部2とし、また、伸縮性基材部2と有効収縮力保持部5との積層を完了させ、断面形状を略弓形凹型に曲げた有効収縮力保持部5と伸縮性基材部2からなる2層の構造体を得る。この時、溶液ポリマー1の硬化が進むにつれ、伸縮性基材部2の膜厚方向および伸縮性基材部の上底部分2a(有効収縮力保持部5と接しない面)では、溶液ポリマー1の成形収縮に伴い徐々に縮み、伸縮性基材部2の製膜と有効収縮力保持部5との積層が完了した時点での伸縮性基材部2の形状は、図3で示すように、溶液ポリマー1の厚みより伸縮性基材部2の膜厚は薄くなり、溶液ポリマー1の上底部分より伸縮性基材部の上底部分2aは短くなった。また、伸縮性基材部の下底部分2bは、有効収縮力保持部5と接しているため自由に収縮することができず、伸縮性基材部の下底部分2bには、溶液ポリマー1の成形収縮に伴う内部応力が有効収縮力保持部5の機能により、有効収縮力の一部として保持されている(図3)。
ここでいう略弓形凹型とは、外力により曲げた有効収縮力保持部の断面形状が凹型の弧を有していればよく、その形状は、本発明の効果を奏することができる限りにおいて特に限定されるものではない。
【0029】
次に、断面形状を略弓形凹型に曲げた有効収縮力保持部5と伸縮性基材部2からなる2層の構造体を、略弓形凹型作業台6から水平状作業台7に移すことで、有効収縮力保持部5に加えた外力を取り除き、有効収縮力保持部5が備える復元性(復元力)を発揮させ、有効収縮力保持部5と伸縮性基材部2からなる断面形状が水平形状の2層の構造体を得る(図4)。この時、伸縮性基材部の上底部分2a(有効収縮力保持部5と接しない面)を有効収縮力保持部5が備える復元性(復元力)により引き伸ばすことができ、伸縮性基材部の上底部分2aを引き伸ばしたことで生じた収縮力を、有効収縮力の一部として伸縮性基材部の上底部分2aに保持することができる。伸縮性基材部2の断面形状は、図3に示す伸縮性基材部2より若干薄い台形状となった。このことで、伸縮性基材部2内に、溶液ポリマー1の成形収縮に伴い生じた収縮力と伸縮性基材部の上底部分2aを引き伸ばしたことで生じた収縮力の双方を有効収縮力として備えさせることができ、溶液ポリマーの成形収縮に伴う内部応力に勝る有効収縮力を伸縮性基材部2内に保持することができた。この工程の終了により、2層の構造からなる該医療テープの基本的構成が完了する(図4)。なお、患部および患部周辺の皮膚に働く生理的張力は、必ずしも肉眼的なレベルではなく、拡大鏡又は顕微鏡レベルといえるような軽微なものである。そのため、伸縮性基材部2内に保持する有効収縮力は、軽微でもよく、軽微であっても本発明の効果を十分に奏することができる。
【0030】
以下、図面を用いて本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明は、医療テープを構成する素材の適切な選択・組み合わせ、及び製造工程において、形状変化に対応する可とう性及び復元性を有し、伸縮性基材部内の有効収縮力を保持する機能を有する、非伸縮性の板状のプラスチックフィルムを有効収縮力保持部として選択し(図1)、次に、略弓形凹型作業台を用い、外力により断面形状を略弓形凹型に曲げた有効収縮力保持部の略弓形凹型内面に、後に伸縮性基材部となるポリウレタンフィルムの原料である溶液ポリマー(ウレタン樹脂液と架橋剤液)を塗布し、有効収縮力保持部5と溶液ポリマー1からなる2層の構造体を得て(図2)、次に、溶液ポリマーを乾燥させることで硬化させ、溶液ポリマーの製膜を完了し、製膜後の溶液ポリマーを伸縮性基材部とし、また、伸縮性基材部と有効収縮力保持部との積層を完了させ、伸縮性基材部の原料となる溶液ポリマーの特性により、有効収縮力保持部と溶液ポリマーが接する部分(溶液ポリマーの下底部分)には、成形収縮に伴う内部応力が発生し、有効収縮力保持部の機能により、発生した成形収縮に伴う内部応力を、有効収縮力の一部として伸縮性基材部内に保持した(図3)。
【0031】
次に、有効収縮力保持部に加えた外力を取り除き、有効収縮力保持部が備える復元性を発揮させ、伸縮性基材部の上底部分(有効収縮力保持部と接しない面)を引き伸ばし、溶液ポリマーの成形収縮に伴い生じる収縮力と伸縮性基材部の上底部分を引き伸ばしたことで生じた収縮力の双方を有効収縮力保持部の機能により有効収縮力として保持し、該医療テープの使用時に、有効収縮力保持部を取り除くことで伸縮性基材部内に保持されていた、溶液ポリマーの成形収縮に伴う内部応力に勝る有効収縮力を放出させる機能を備えさせ、有効収縮力保持部と伸縮性基材部の2層の構造からなる該医療テープの基本的構成は完了する(図4)。次に、図4で示した、2層の構造体の伸縮性基材部の上層に、粘着部、次いで剥離部を積層させ、4層構造体からなる本発明の第1の実施の形態である有効収縮力を備えた該医療テープが完成した(図5)。なお、該医療テープでは、使用時に粘着部で創および創周辺の皮膚を覆い、皮膚に貼付した後に、有効収縮力保持部を取り除き、有効収縮力保持部により、伸縮性基材部内に保持していた有効収縮力を生理的張力に抗する方向に放出させ、創離開方向へ働く生理的張力を減少させることを基本とする。本発明は、医療テープの製造工程において、有効収縮力を伸縮性基材部内に保持させることが必須である。
【0032】
図1から図5に示す本発明の第1の実施の形態である医療テープでは、伸縮性基材部2の原料となる溶液ポリマー(ウレタン樹脂液と架橋剤液)1と、伸縮性基材部2の原料となる溶液ポリマー(ウレタン樹脂液と架橋剤液)1で製膜された、伸縮性機能を有し、創および創周辺の皮膚を覆う伸縮性基材部2と、伸縮性基材部2を皮膚に貼付し保持する機能を有する粘着部3と、粘着部3を保護する機能を有する剥離部4と、形状変化に対応する可とう性及び復元性を有し、伸縮性基材部2内の有効収縮力を保持する機能を有する非伸縮性の有効収縮力保持部5から構成され、下層から有効収縮力保持部5、伸縮性基材部2、粘着部3、剥離部4の順に設けられている。
【0033】
図1は、本発明の第1の実施の形態を示す医療テープに用いる有効収縮力保持部5の概略断面図であり、第1の実施の形態である医療テープでは、形状変化に対応する可とう性及び復元性を有し、伸縮性基材部2内に有効収縮力を保持する機能を有する、水平形状に成形した非伸縮性のプラスチックフィルムを有効収縮力保持部5として用いた。なお、符号5は 有効収縮力保持部である。
【0034】
図2は、本発明の第1の実施の形態を示す医療テープの製造過程を示す概略断面図であり、外力により断面形状を略弓形凹型に曲げた有効収縮力保持部5の略弓形凹型内面に、後に伸縮性基材部2となる溶液ポリマー1を塗布し、有効収縮力保持部5と溶液ポリマー1からなる2層の構造体を得る様子を示す。この時、有効収縮力保持部5の略弓形凹型内面に塗布された溶液ポリマー(ウレタン樹脂液と架橋剤液)1の断面形状は、図2に示すように、下層に位置する有効収縮力保持部5とほぼ同じ略弓形凹型となる。なお、符号1は、溶液ポリマー、符号5は、有効収縮力保持部、符号6は、略弓形凹型作業台、符号6aは、略弓形凹型作業台排気口である。
【0035】
図3は、本発明の第1の実施の形態を示す医療テープの製造過程を示す概略断面図であり、伸縮性基材部2の製膜と有効収縮力保持部5と伸縮性基材部2との積層を完了させ、断面形状を略弓形凹型に曲げた有効収縮力保持部5と伸縮性基材部2からなる2層の構造体を得る様子を示す。伸縮性基材部2の製膜と有効収縮力保持部5との積層が完了した時点での伸縮性基材部2の形状は、図3に示すように、溶液ポリマー1の厚みより伸縮性基材部2の膜厚は薄くなり、溶液ポリマー1の上底部分より伸縮性基材部の上底部分2aは短くなった。また、伸縮性基材部の下底部分2bは、有効収縮力保持部5と接しているため自由に収縮することができず、伸縮性基材部の下底部分2bには、溶液ポリマー1の成形収縮に伴う内部応力が有効収縮力保持部5の機能により、有効収縮力の一部として保持されている。なお、符号2は、伸縮性基材部、符号2aは、伸縮性基材部の上底部分、符号2bは、伸縮性基材部の下底部分、符号5は、有効収縮力保持部、符号6は、略弓形凹型作業台、符号6aは、略弓形凹型作業台排気口である。
【0036】
図4は、本発明の第1の実施の形態を示す医療テープの製造過程を示す概略断面図であり、有効収縮力を保持した状態の伸縮性基材部2と有効収縮力保持部5の2層の構造からなる該医療テープの基本的構成が完了した様子を示す。図4では、図3に示した略弓形凹型作業台6から、伸縮性基材部2と有効収縮力保持部5からなる2層の構造体を水平状作業台7へ移すことで、有効収縮力保持部5に加えた外力を取り除き、有効収縮力保持部5が備える復元性を発揮させ、有効収縮力保持部5の形状を、外力が加わる以前の形状である水平形状に戻す。この時、伸縮性基材部の上底部分2a(有効収縮力保持部5と接しない面)には、伸縮性基材部の上底部分2aが引き伸ばされたことによる収縮力が発生する。よって、伸縮性基材部2内には、溶液ポリマー1の成形収縮に伴い生じる収縮力と伸縮性基材部の上底部分2aを引き伸ばしたことで生じた収縮力の双方を有効収縮力として備えることができ、溶液ポリマーの成形収縮に伴う内部応力に勝る有効収縮力を伸縮性基材部2内に保持することができる。そして、伸縮性基材部2の断面形状は、図3に示す伸縮性基材部2より若干薄い台形状となり、2層の構造からなる該医療テープの基本的構成が完了した。なお、符号2は、伸縮性基材部、符号2aは、伸縮性基材部の上底部分、符号2bは、伸縮性基材部の下底部分、符号5は、有効収縮力保持部、符号7は、水平状作業台である。
【0037】
図5は、本発明の第1の実施の形態を示す医療テープが完成した様子を示す概略断面図であり、図4に示す2層の構造からなる該医療テープの基本的構成に、伸縮性基材部2の上層に粘着部3を積層し、次いで剥離部4を積層させ、4層からなる本発明の製造方法によって得られる第1の実施の形態である医療テープが完成した様子を示す。なお、符号2は、伸縮性基材部、符号3は、粘着部、符号4は、剥離部、符号5は、有効収縮力保持部、符号7は、水平状作業台である。
【0038】
該医療テープでは、図3および図4で示す製造工程において、有効収縮力保持部の機能により、伸縮性基材部の下底部分に生じた溶液ポリマーの成形収縮に伴う内部応力による収縮力と、伸縮性基材部の上底部分に有効収縮力保持部が備える復元性により生じさせた収縮力の双方を有効収縮力として、伸縮性基材部内に保持し、該有効収縮力を保持した状態にある伸縮性基材部を得ることができた。なお、該医療テープの使用手順は、1.剥離部を取り除く。2.粘着部で創および創周辺の皮膚に貼付する。3.有効収縮力保持部を取り除く。となる。この使用手順に従い、該有効収縮力保持部を取り除くと、粘着部で貼付された創および創周辺の皮膚に対し、伸縮性基材部内に保持された状態の有効収縮力が放出され、放出された有効収縮力は、創離開方向へ働く生理的張力とは抗する方向に作用し、伸縮性基材部を生理的張力に抗する方向に収縮させ、創および創周辺の皮膚を創離開方向へ働く生理的張力に抗する方向に収縮させ、縫合した創に対して、創離開方向に抗する方向から縫合した創周辺の皮膚を弛ませ、縫合した創周辺の皮膚が被る創離開方向へ働く生理的張力、並びに該生理的張力に伴う縫合糸に作用する張力を持続的に減少させることができ、さらに、該医療テープでは、テープの全面に生理的張力を減少させる機能を備え、皮膚に対し、面で覆い貼付することができるため、放出された有効収縮力は、該医療テープで覆われた創および創周辺の皮膚のみならず、該医療テープの貼付部位周辺の皮膚まで作用するため、該有効収縮力による創周辺の皮膚を引き寄せる力となる。このことにより、創およびその周辺組織を安静に保つことができ、創および創周辺の皮膚が被る創離開方向へ働く生理的張力を減少させ、生理的張力に伴う創離開を防止する効果が高く、縫合、未縫合の創に関わらず、使用・装着が容易な医療テープの製造方法を提供することができる。
【0039】
具体的には、本発明の第1の実施の形態において、ウレタン樹脂液と架橋剤液を溶液ポリマー1とし、溶液ポリマー1で製膜された、創および創周辺の皮膚を覆い、伸縮性機能を有するポリウレタンフィルムを伸縮性基材部2とし、伸縮性基材部2を皮膚に貼付し保持する機能を有するアクリル系粘着剤を粘着部3とし、非伸縮機能を有し、粘着部3を保護する機能を有する上質紙の表面に剥離剤をコーティングした剥離紙を剥離部4とし、形状変化に対応する可とう性及び復元性を有し、伸縮性基材部2内の有効収縮力を保持する機能を有する水平形状に成形した長方形の非伸縮性のプラスチックフィルムを有効収縮力保持部5とした。製造工程では、有効収縮力保持部5の中央部を略弓形凹型作業台6の中央下部に備えた排気口である略弓形凹型作業台排気口6aの中心に被せ、排気ポンプにより吸引し、略弓形凹型作業台6に有効収縮力保持部5を密着させ、有効収縮力保持部5の断面形状を外力により略弓形凹型に曲げた有効収縮力保持部5を得て、有効収縮力保持部5である非伸縮性の板状のプラスチックフィルムの略弓形凹型内面に、伸縮性基材部2となるポリウレタンフィルムの原料である溶液ポリマー(ウレタン樹脂液と架橋剤液)1を塗布し、有効収縮力保持部5と溶液ポリマー1からなる2層の構造体を得て、次に、溶液ポリマー1を乾燥させることで、伸縮性基材部2の製膜と有効収縮力保持部5と縮性基材部2との積層を完了させ、断面形状を略弓形凹型に曲げた有効収縮力保持部5と縮性基材部2からなる2層の構造体を得た。
【0040】
この時、溶液ポリマー1の硬化が進むにつれ、溶液ポリマー1の成形収縮により、溶液ポリマー1の形状は変化し、製膜と有効収縮力保持部5との積層が完了した時点での伸縮性基材部2の形状は、有効収縮力保持部5と接しない部分となる膜厚方向と伸縮性基材部の上底部分2a(有効収縮力保持部5と接しない面)は縮み、図3で示すように、溶液ポリマー1の厚みより伸縮性基材部2の膜厚は薄くなり、溶液ポリマー1の上底部分より伸縮性基材部の上底部分2aは短くなった。また、伸縮性基材部の下底部分2bは、有効収縮力保持部5と接しているため自由に収縮することができず、伸縮性基材部の下底部分2bでは、有効収縮力保持部5の機能により、溶液ポリマー1の成形収縮に伴う内部応力を有効収縮力の一部として保持している。次に、有効収縮力保持部5に対し、略弓形凹型作業台排気口6aより行っていた排気ポンプによる吸引を止め、有効収縮力保持部5と伸縮性基材部2からなる2層の構造体を略弓形凹型作業台6から水平状作業台7へ移し、有効収縮力保持部5に加えた外力を取り除くことで、有効収縮力保持部5が備える復元性を発揮させ、外力により断面形状を略弓形凹型に曲げられていた有効収縮力保持部5と伸縮性基材部2からなる2層の構造体を有効収縮力保持部5に外力を加える以前の形状である水平形状に戻すことができる。このことにより、伸縮性基材部の上底部分2a(有効収縮力保持部5と接しない面)は、有効収縮力保持部5が備える復元性(復元力)により引き伸ばされ、引き伸ばされた分の収縮力が、溶液ポリマーの成形収縮に伴う内部応力に付加され、有効収縮力保持部5の機能により伸縮性基材部2内に、溶液ポリマーの成形収縮に伴う内部応力に勝る有効収縮力を有効収縮力として保持することができ、有効収縮力保持部5と伸縮性基材部2の2層の構造からなる該医療テープの基本的構成が完了する。そして、伸縮性基材部2の上層に、粘着部3、次いで剥離部4を積層し、本発明の第1の実施の形態で示す、4層の構造体からなる該医療テープは完成する。
【0041】
第1の実施の形態では、有効収縮力保持部の素材として、水平形状に成形した長方形の板状のプラスチックフィルムを用い、有効収縮力保持部としたが、有効収縮力保持部の素材や形状は、用途や利便性等に応じ任意でよい。また、第1の実施の形態では、有効収縮力保持部を外力により横一方向に曲げ、横方向の断面形状を略弓形凹型とすることで、伸縮性基材部内に保持する有効収縮力の方向を横一方向としたが、以下に示す手段等により、伸縮性基材部内に保持する有効収縮力の方向を全方向としてもよい。例えば、有効収縮力保持部の平面図形が略十字形となるように水平形状に加工、成形し、略十字形の有効収縮力保持部とし、該略十字形有効収縮力保持部に用いる作業台は、断面形状が図2で示した略弓形凹型作業台6と同様の凹型を示す半球状とし、半球状の作業台の内側には、該略十字形有効収縮力保持部が正確に納まるように凹型加工を施し、さらに、作業台表面に非粘着処理を施し、平面形状が略円形となる凹型作業台を略十字形凹型作業台とし、外力により、該略十字形有効収縮力保持部の断面形状を凹型に曲げ、略十字形凹型作業台の内側のくぼみに該略十字形有効収縮力保持部を正確に納め、略十字形有効収縮力保持部を備えた略十字形凹型作業台の凹型内面に、後に伸縮性基材部となる溶液ポリマーを塗布し、伸縮性基材部の製膜と有効収縮力保持部と伸縮性基材部との積層を完了させ、断面形状を凹型に曲げた略十字形有効収縮力保持部と伸縮性基材部からなる2層の構造体を得て、次に、略十字形凹型作業台から水平状作業台へ移し、略十字形有効収縮力保持部に加えた外力を取り除き、略十字形有効収縮力保持部が備える復元性を発揮させ、全方向の有効収縮力を保持した状態の伸縮性基材部と略十字形有効収縮力保持部からなる2層の構造体を得て、伸縮性基材部内に保持する有効収縮力の方向を全方向としてもよく、伸縮性基材部内に備えさせる有効収縮力の方向は用途等に応じ任意でよい。
【0042】
なお、有効収縮力保持部は、形状変化に対応する可とう性及び復元性を有し、伸縮性基材部内の有効収縮力を保持する機能を有し、使用時に、該有効収縮力保持部を取り除くことで伸縮性基材部内に保持されていた有効収縮力を放出させることができればよく、必ずしも、伸縮性基材部の全面を覆う必要はなく、その形状は、本発明の効果を奏することができる限りにおいて特に限定されるものではない。また、用途や利便性等に応じ、有効収縮力保持部にスリット等を備え、その上層にガイドテープ等を備えてもよく、その他の機能を付加してもよく、有効収縮力保持部の素材は、形状変化に対応する可とう性及び復元性を有し、伸縮性基材部内の有効収縮力を保持する機能を有し、本発明の効果を奏することができる限りにおいて特に限定されるものではない。
【0043】
また、第1の実施の形態では、溶液ポリマーの素材として、ウレタン樹脂液と架橋剤液を用いたが、有効収縮力保持部に塗布し、伸縮性基材部内に有効収縮力を保持した状態で溶液ポリマーの製膜を完了し、並行して伸縮性基材部と有効収縮力保持部との積層も完了させ、有効収縮力保持部により、伸縮性基材部内に有効収縮力を保持することが可能で、製膜後に伸縮性機能を有する溶液ポリマー素材であればよく、その他の新素材等を用いてもよく、異なる溶液ポリマー素材を混合又は積層してもよい。また、第1の実施の形態では、有効収縮力保持部に塗布した溶液ポリマーの量をほぼ均一としたが、有効収縮力保持部の中心部と周辺部とで溶液ポリマーの塗布する量を変化させてもよい。例えば、有効収縮力保持部の中心部に塗布する溶液ポリマーの量を増加し、周辺部に塗布する溶液ポリマーの量を減少させてもよい。このことで、中心部の有効収縮力の収縮力が、周辺部の有効収縮力の収縮力より強くなり、創の中心部に強い有効収縮力を効率よく働かせることができる。さらに、伸縮性基材部の膜厚は中心部より周辺部が薄くなり、該医療テープの貼付期間中に生じる衣類等との擦れによる捲れ等を防止することもできる。
【0044】
また、第1の実施の形態では、外力により断面形状を略弓形凹型に曲げた有効収縮力保持部の略弓形凹型内面に、後に伸縮性基材部となる溶液ポリマーを塗布し、有効収縮力保持部と溶液ポリマーからなる2層の構造体を得て、溶液ポリマーを乾燥させ、伸縮性基材部の製膜と有効収縮力保持部と伸縮性基材部との積層を完了させ、断面形状を略弓形凹型に曲げた有効収縮力保持部と伸縮性基材部からなる2層の構造体を得たが、有効収縮力保持部の形状を図1で示す水平形状に成形した状態のまま、その上層に、後に伸縮性基材部となる溶液ポリマーを塗布し、外力により有効収縮力保持部の断面形状を略弓形凹型に曲げても溶液ポリマーが自在に流れない程度に溶液ポリマーを仮乾燥(仮硬化)の状態とし、有効収縮力保持部と溶液ポリマーからなる2層の構造体を得て、その後、外力により有効収縮力保持部の断面形状を略弓形凹型に曲げ、さらに、溶液ポリマーを乾燥させ、伸縮性基材部の製膜と有効収縮力保持部と伸縮性基材部との積層を完了させ、断面形状を略弓形凹型に曲げた有効収縮力保持部と伸縮性基材部からなる2層の構造体を得てもよく、また、外力により有効収縮力保持部の断面形状を略弓形凹型に曲げながら、有効収縮力保持部の略弓形凹型内面に、後に伸縮性基材部となる溶液ポリマーを塗布し、有効収縮力保持部と溶液ポリマーからなる2層の構造体を得てもよく、結果として、外力により断面形状を略弓形凹型に曲げた有効収縮力保持部の略弓形凹型内面に、後に伸縮性基材部となる溶液ポリマーを重ねた、有効収縮力保持部と溶液ポリマーからなる2層の構造体が得られればよい。
【0045】
また、第1の実施の形態では、有効収縮力保持部を排気ポンプにより吸引し、略弓形凹型作業台に有効収縮力保持部を密着させ、断面形状を略弓形凹型に曲げたが、有効収縮力保持部の断面形状を略弓形凹型に曲げる手段は、外力によるものであればよく、本発明の効果を奏することができる限りにおいて特に限定されるものではない。なお、ここで言う溶液ポリマーとは、時系列で捉えると、「溶液ポリマーが乾燥し、製膜が完了し、伸縮性基材部となる以前まで」を示し、伸縮性基材部と区分する。そのため、有効収縮力保持部に塗布する溶液ポリマーの乾燥の度合いは、製造設備や製造効率等に応じて任意で良く、本発明の効果を奏することができる限りにおいて特に限定されるものではない。また、粘着部の素材は、アクリル系粘着剤を用いたが、伸縮性基材部を皮膚に貼付し保持する機能を有し、医療用として使用可能な粘着剤であればよく、伸縮性基材部の下層に処置剤等を備えてもよく、用途に応じ、粘着剤を塗布する部位は一部もしくは全部でもよく、素材や形状等による制限を受けない。また、剥離部の素材は、非伸縮性の上質紙の表面に剥離剤をコーティングした剥離紙を用いたが、粘着部を保護する機能を有していれば、例えば、伸縮性基材部に対して有効収縮力保持部とは反対側の面に、剥離剤をコーティングし、剥離部としてもよく、包装紙等のパッケージを用い剥離部としてもよく、素材や形状等による制限を受けない。
【0046】
また、皮膚には、持続的伸長負荷が加われば伸び、持続的伸長負荷を取り除けば縮むという生理的性質があるため、創および創周辺の皮膚に働く持続的伸長負荷となる生理的張力を取り除き、創周辺の皮膚を弛ませれば、皮膚はその生理的性質に従い縮む。よって、該医療テープの使用は、創の処置に限定されるものではなく、治癒後の肉芽組織による瘢痕収縮(傷跡)等の改善にも使用が可能となる。なお、該医療テープを構成する各部の素材や素材の組み合わせ、付加する機能等は、用途やデザイン、利便性等に応じ任意でよく、本発明の効果を奏することができる限りにおいて特に限定されるものではない。また、創に限らず、炎症等に伴う腫脹においても、腫脹部位およびその周辺の皮膚が、生理的張力による害を被ることも少なくない。この時、腫脹部位およびその周辺の皮膚を該医療テープで覆い、貼付することで、腫脹部位およびその周辺の皮膚が被る生理的張力を持続的に減少させることが可能となる。さらに、該医療テープが備える有効収縮力は、患部の炎症等に伴う腫脹部位を圧迫する力となる。この腫脹部位を圧迫する機能や生理的張力を減少させる機能には、炎症に伴う疼痛や痒み等を緩和する作用がある。また、該医療テープでは、用途等に応じ、透湿機能や湿潤機能等の複数の機能を備えることも可能である。そのため、該医療テープの用途は、創に限定されるものではなく、該医療テープの備える機能が効果的に働く用途であれば、他の用途においても該医療テープを使用してもよく、その使用が医学的に有効である限り、該医療テープの使用は用途による制限を受けるものではない。
【0047】
図1から図5に示した本発明の製造方法で得られる医療テープは、いずれも本発明の製造方法で得られる医療テープの基本的構造を備えており、このような構成としたことにより、患部および患部周辺の皮膚が被る生理的張力を持続的に減少させるための手段を医療テープに機能として取り入れることができ、該医療テープの製造段階において、伸縮性基材部内に有効収縮力を保持することができ、該医療テープの使用時に、伸縮性基材部内に有効収縮力を保持した状態で皮膚に貼付することができる医療テープを製造することが可能となる。そして、該医療テープでは、粘着部で皮膚に貼付した後、有効収縮力保持部を取り除くことで、粘着部で貼付した患部および患部周辺の皮膚に対し、伸縮性基材部内に保持された状態の有効収縮力を放出させることができる。この放出された有効収縮力は、生理的張力に抗する方向に効率よく作用し、伸縮性基材部を創を開かせる方向に抗する方向に収縮させると共に、患部および患部周辺の皮膚を創を開かせる方向に抗する方向に収縮させることで、患部に対して、創を開かせる方向に抗する方向から患部周辺の皮膚を弛ませることができ、患部周辺の皮膚が被る生理的張力を持続的に減少させることが可能となる。
【0048】
さらに、該医療テープでは、生理的張力を減少させる機能をテープの全面に備え、患部および患部周辺の皮膚に対し、面で覆い貼付することができるため、放出された有効収縮力の作用は、該医療テープで覆われた患部および患部周辺の皮膚のみならず、該医療テープの貼付部位周辺の皮膚にまで及び、該有効収縮力による創周辺の皮膚を引き寄せる力となる。このことで、患部およびその周辺組織を安静に保つことができ、自然治癒を早めることができ、創離開を防止する効果が高く、縫合、未縫合の創に関わらず、使用・装着が容易な医療テープを提供することができる。なお、本明細書において、該医療テープの収縮力を「創周辺の皮膚を弛ませ」もしくは「患部周辺の皮膚を弛ませ」と表現しているが、これは、必ずしも、肉眼的なレベルではなく、拡大鏡又は顕微鏡レベルといえるような軽微な状態を含んでいる。なぜなら、対象とする創および創周辺の皮膚が被る生理的張力、並びに該生理的張力に伴う縫合糸に作用する張力は、必ずしも肉眼的なレベルではなく、時に、拡大鏡又は顕微鏡レベルといえるような軽微なものであり、患部および患部周辺の皮膚が被る生理的張力においても、同様のことが言えるためである。ゆえに、伸縮性基材部内に保持する有効収縮力は、軽微でもよく、軽微であっても本発明の効果を十分に奏することができる。
【0049】
以上、第1の実施の形態では、医療テープの形状を長方形とした例について説明してきたが、該医療テープの形状は、用途に応じ自由な形状を選択できる。例えば、円形や楕円形または、ロール形状やシート形状でもよく、身体の各部位に適した形状とすることもできる。また、該医療テープは、下層から有効収縮力保持部、伸縮性基材部、粘着部、及び剥離部からなる構成を基本とするが、用途やデザイン、利便性等に応じ、粘着部の上層にガーゼ及びパッド等を備えさせてもよい。なお、本発明は、皮膚に密着して貼付することを基本としているが、場合によっては、皮膚を医療用粘着剤等から保護するための保護材等を介して該医療テープを貼付してもよい。
【0050】
次に、図6から図11を用い、創の縫合に使用する縫合糸に伴う生理的張力や生理的張力を含む張力、創離開、及び本発明の第1の実施の形態である医療テープの使用方法や効果について説明する。図6は、皮膚を一文字に切開した後の創面の様子を示す概略平面図である。なお、符号8は創面、符号9は生理的張力を示し、矢印はその方向を示す。皮膚を外科用メスで一文字に切開した場合、創面8の形状は一文字に留まらず、図6で示すように、創周辺の皮膚に対する生理的張力9の影響により、一文字から楕円状に開いた形状となる。図7は、図6で示した創周辺の皮膚を縫合糸で縫合した様子を示す概略平面図である。なお、符号10は縫合糸、符号11は縫合後の創面、符号12は縫合糸が貫通した部位である。図6の創面8を縫合する際、楕円状に開いた状態の創面8の形状を切開した一文字の形状になるように、縫合糸や施術者の手指等で引き寄せる必要が生じる。この時、創周辺の皮膚を縫合する縫合糸の間隔は、密にするよりむしろ粗い方が予後良好であるため、図7で示すように、必然的に縫合糸の間隔は粗くなり、縫合糸の締め付け具合は、予後不良となる締め過ぎを防止するために適度に緩くなる。また、図6で示した生理的張力9は、図6の創面8を縫合する際、楕円状に開いた状態の創面8を切開した一文字の形状になるように、縫合糸や施術者の手指等で引き寄せたため、張力が増し、図8では、生理的張力を含む張力9aとなる。
【0051】
図8は、図7で示した縫合した創の周辺部(創縁)に加わる力を示す概略平面図である。なお、符号9aは生理的張力を含む張力を示し、矢印はその方向、長さはその力を示す。符号10は縫合糸、符号11は縫合後の創面、符号12は縫合糸が貫通した部位、符号13は縫合糸による創面を引き寄せる力を示し、矢印はその方向、長さはその力を示す。図6の創面8の縫合では、縫合する創面8の形状を開いた状態から閉じた状態になるように、縫合糸や施術者の手指等で創周辺の皮膚を引き寄せて縫合し、縫合糸を結ぶため、創周辺部の創縁では、図8で示すように、縫合糸による創面を引き寄せる力13と生理的張力を含む張力9aによる創面を開かせる方向の力が拮抗した状態で働き、縫合糸と創周辺の皮膚は常に引き合った状態となっている。
【0052】
また、縫合糸が貫通した部位12では、縫合糸による創面を引き寄せる力13と生理的張力を含む張力9aによる創面を開かせる方向の力が拮抗した状態で働くため、創面は閉じた状態に保たれる。しかし、縫合後の創面11であっても、縫合糸と縫合糸の間隔が粗く、縫合糸による創面を引き寄せる力13が及ばない縫合糸と縫合糸の間の創面では、生理的張力を含む張力9aによる創面を開かせる方向の力が勝り、縫合糸と縫合糸の間の創面の形状は、小さな楕円状を示すことになる。さらに、縫合糸が貫通した部位12周辺の皮膚では、縫合糸による創面を引き寄せる力13と生理的張力を含む張力9aによる創面を開かせる方向の力が拮抗して働くため、その生理的張力を含む張力9aによる張力は、縫合糸が貫通した部位12の創面側、すなわち、縫合糸の内側の皮膚組織に集中した状態で作用する。創面側の皮膚組織に、縫合糸による持続的な圧迫が生じると、その圧迫は、創面側の皮膚組織に血液循環不良等を招き、皮膚組織が圧迫壊死に陥り、この圧迫壊死が徐々に創面側の皮膚組織に進行し、創周辺の皮膚が裂け、縫合糸が脱落し、創離開が生じることも稀ではない。なお、創周辺の皮膚等の壊死(縫合糸による医療関連機器圧迫創傷)を主因とする創離開に対しては、再度縫合しても効果は期待できないのが現状である。
【0053】
図9は、本発明の製造方法によって得られる第1の実施の形態を示す医療テープの概略平面図である。該医療テープは、一文字形状に縫合した創に対しては、縫合糸の方向である垂直方向(一方向)の生理的張力を含む張力が最も強い張力となるため、一方向の有効収縮力を備えた一文字形状の縫合した創に特化させた医療テープである。なお、符号14は医療テープ中央部に設けた破線、符号15は有効収縮力の方向と力を示す。医療テープ中央部に設けた破線14は、該医療テープの有効収縮力保持部に印刷されており、使用時に創と重ね合わせて貼付する手順を容易とするためのものである。有効収縮力15は、有効収縮力保持部の機能により、伸縮性基材部内に保持されている。図10は、図9に示す、本発明の製造方法によって得られる第1の実施の形態を示す医療テープを、図7の縫合後の創に使用した概略平面図である。なお、符号10は縫合糸、符号11は縫合後の創面、符号12は縫合糸が貫通した部位、符号14は医療テープ中央部に設けた破線、符号15は、有効収縮力の方向と力を示す。はじめに、縫合した創とその周辺の皮膚を適切に覆うサイズの該医療テープを選択する。次に、該医療テープから剥離部を取り除き、該医療テープ中央部に設けた破線14と図7の縫合後の創面11とが重なるように、縫合した創とその周辺の皮膚を伸縮性基材部で覆い、粘着部で皮膚に貼付する。現時点では、有効収縮力保持部を取り除いていないため、伸縮性基材部内には、有効収縮力保持部の機能により有効収縮力15が保持されている。
【0054】
図11は、本発明の製造方法によって得られる第1の実施の形態を示す医療テープの使用効果を説明する概略断面図である。なお、符号10は縫合糸、符号12は縫合糸が貫通した部位、符号15は有効収縮力の方向と力、符号16は有効収縮力により閉じられた創面、符号17は有効収縮力による創周辺の皮膚を引き寄せる力を示す。図11は、図10で示した状態から、該医療テープ中央部に設けた破線14の印刷された有効収縮力保持部を取り除き、伸縮性基材部内に保持していた有効収縮力15及び有効収縮力による創周辺の皮膚を引き寄せる力17を発揮させた状態である。該医療テープでは、有効収縮力の収縮方向を一方向に限定しているため、図10の縫合後の創面11周辺の皮膚に対し、面で覆って貼付し、有効収縮力保持部を取り除くことにより、一方向の有効収縮力15を効率よく発揮させ、縫合後の創面11周辺の皮膚が被る生理的張力を持続的に減少させることができる。よって、縫合糸で縫合した場合、図8の縫合後の創面11の形状は、図8の縫合糸による創面を引き寄せる力13が及ばない縫合糸と縫合糸の間の創面では、図8の生理的張力を含む張力9aによる創面を開かせる方向の力が勝り、縫合糸と縫合糸の間の創面の形状は、小さな楕円状を示していたが、該医療テープを使用することにより、図11では、図10の該医療テープより一方向の長さが収縮した分の有効収縮力15が発揮され、有効収縮力により閉じられた創面16となった。
【0055】
さらに、該医療テープでは、テープの全面に生理的張力を減少させる機能を備え、皮膚に対し、面で覆い貼付することができるため、放出された有効収縮力15は、該医療テープで覆われた縫合後の創面11周辺の皮膚のみならず、該医療テープの貼付部位周辺の皮膚にまで作用するため、該有効収縮力による創周辺の皮膚を引き寄せる力17となる。このことにより、縫合糸が貫通した部位12の創面側、すなわち、縫合糸の内側の皮膚組織に集中した状態で作用していた生理的張力を含む張力9aによる張力の負荷を減少させることができ、「創面側の皮膚組織に、縫合糸による持続的な圧迫が生じると、その圧迫は、創面側の皮膚組織に血液循環不良等を招き、皮膚組織が圧迫壊死に陥り、この圧迫壊死が徐々に創面側の皮膚組織に進行し、創周辺の皮膚が裂け、縫合糸が脱落し、創離開が生じることも稀ではない」という悪循環を避けることができ、創周辺の皮膚等の壊死(縫合糸による医療関連機器圧迫創傷)を主因とする創離開を防止することが現実的となる。さらに、段落[0003]に記載の真皮縫合においても、皮膚表面の傷跡を最小限にするための有効な手段となり、本発明により、表皮縫合を不要とすることも可能となり、皮膚表面の針跡を回避することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の医療テープの製造方法によれば、製造段階において、伸縮性基材部内に、任意の方向および任意の強さを備えた有効収縮力を保持し、該医療テープの使用時に、伸縮性基材部内の有効収縮力を保持した状態で、患部および患部周辺の皮膚を面で覆い粘着部で貼付した後、有効収縮力保持部を取り除くことにより、伸縮性基材部内の有効収縮力を放出させ、患部および患部周辺の皮膚が被る生理的張力を持続的に減少させ、患部およびその周辺組織を安静に保ち、自然治癒を早め、その使用は、創に限定されるものではなく、使用・装着が容易な医療テープの製造方法を提供することができ、医療業界に貢献するところ大である。
【符号の説明】
【0057】
1 溶液ポリマー
2 伸縮性基材部
2a 伸縮性基材部の上底部分
2b 伸縮性基材部の下底部分
3 粘着部
4 剥離部
5 有効収縮力保持部
6 略弓形凹型作業台
6a 略弓形凹型作業台排気口
7 水平状作業台
8 創面
9 生理的張力
9a 生理的張力を含む張力
10 縫合糸
11 縫合後の創面
12 縫合糸が貫通した部位
13 縫合糸による創面を引き寄せる力
14 本発明の第1の実施の形態を示す医療テープ中央部の破線
15 有効収縮力
16 有効収縮力により閉じられた創面
17 有効収縮力による創周辺の皮膚を引き寄せる力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11