(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044340
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】エンジン
(51)【国際特許分類】
F02F 3/24 20060101AFI20240326BHJP
F01M 13/00 20060101ALI20240326BHJP
F02F 3/00 20060101ALI20240326BHJP
F01L 33/02 20060101ALI20240326BHJP
F16J 1/02 20060101ALI20240326BHJP
F16J 1/09 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
F02F3/24
F01M13/00 D
F02F3/00 E
F01L33/02
F16J1/02
F16J1/09
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149801
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 温
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 達
【テーマコード(参考)】
3G015
3J044
【Fターム(参考)】
3G015BD03
3G015BD21
3G015BD28
3G015BD33
3J044AA16
3J044AA20
3J044CA04
3J044CA38
3J044DA09
(57)【要約】
【課題】排気行程における未燃ガスの掃気を改善したエンジンを提供する。
【解決手段】エンジンを、ピストン10の冠面部11に形成され燃焼室内とクランクケース内とを連通させる開口12と、ピストンが挿入されるシリンダの筒軸と同心又は平行に配置された回転軸回りに回動する弁体を有し開口を開閉するロータリバルブ30と、ロータリバルブを排気行程において開状態とするロータリバルブ駆動部20,100とを備える構成とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンの冠面に形成され燃焼室内とクランクケース内とを連通させる開口と、
前記ピストンが挿入されるシリンダの筒軸と同心又は平行に配置された回転軸回りに回動する弁体を有し前記開口を開閉するロータリバルブと、
前記ロータリバルブを排気行程において開状態とするロータリバルブ駆動部と
を備えることを特徴とするエンジン。
【請求項2】
前記ロータリバルブ駆動部は、
前記ロータリバルブを開状態とする油圧が供給される第1油路と、
前記ロータリバルブを閉状態とする油圧が供給される第2油路と、
前記ピストンが設けられる気筒の行程を判別する行程判別部と、
前記行程判別部が判別した行程に応じて前記第1油路へ油圧が供給される状態と前記第2油路へ油圧が供給される状態とを切り替える油路切替部と、
前記ピストンに設けられ前記第1油路と前記第2油路との油圧の供給の切り替えに応じて前記ロータリバルブを開閉させる油圧アクチュエータとを有すること
を特徴とする請求項1に記載のエンジン。
【請求項3】
前記油圧アクチュエータは、
前記第1油路への油圧供給に応じて前記ピストンの一方側へ変位するとともに前記第2油路への油圧供給に応じて前記ピストンの他方側へ変位する往復部材と、
前記往復部材の動きを前記ロータリバルブを回動させる回転運動に変換する動力変換部とを有すること
を特徴とする請求項2に記載のエンジン。
【請求項4】
前記開口は、前記ピストンの周方向に沿って複数設けられ、
前記ロータリバルブは、単一又は連動する弁体によって複数の前記開口を開閉すること
を特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4ストロークのレシプロ内燃エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
レシプロ内燃エンジンのピストンに関する技術として、例えば特許文献1には、燃焼室からのガス圧によりピストンをシリンダの側壁内面から浮かせるエンジンにおいて、燃焼室からのガス圧を導く通路の詰りを防止するため、シリンダ側壁内面とピストン側面との隙間と燃焼室とを連通する通路をピストンに設け、この通路に隙間から燃焼室へのガスの逆流を阻止する逆止弁を配置することが記載されている。
特許文献2には、ピストンの外周面にオイルリングを取り付ける溝と、溝とピストンの内側空間とを連通するオイル戻し孔と、オイル戻し孔を開閉するシャッター、およびシャッターを駆動してオイル戻し孔を開閉する駆動部を含む開閉機構とを備え、ピストンの下降行程時にシャッターでオイル戻し孔を閉じることでデポジットの発生を抑えることが記載されている。
特許文献3には、ピストンクラウン部を上下に貫通しピストン下降行程に燃焼室側へのガスの流通を許すチェック弁を備えたブローバイガスの還流通路用孔を設け、ピストン下降行程でチェック弁が開弁することで未燃ガスが還流通路用孔を通して燃焼室に還流されるよう構成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平 4-298673号公報
【特許文献2】特開2018-127974号公報
【特許文献3】実開平 2-107751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンジンのシリンダ筒内のピストン周縁部や、シリンダ壁面近傍では、壁面等による冷却により燃焼熱が奪われ、不完全燃焼や消炎が生じやすい。
こうした不完全燃焼等が発生すると、燃焼室内に未燃ガスが残留し、これが吸入空気(新気)によって冷却されると、燃焼室内にデポジットが蓄積されてしまう問題があった。
これに対し、特許文献3に記載されたように、排気行程において未燃ガスをクランクケース側へ掃気することができれば、燃焼室内でのデポジットの堆積は抑制できるが、特許文献3に記載された構成では十分な流路断面積を確保することが困難であり、さらなる掃気の改善が要望されている。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、排気行程における未燃ガスの掃気を改善したエンジンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明の一態様に係るエンジンは、ピストンの冠面に形成され燃焼室内とクランクケース内とを連通させる開口と、前記ピストンが挿入されるシリンダの筒軸と同心又は平行に配置された回転軸回りに回動する弁体を有し前記開口を開閉するロータリバルブと、前記ロータリバルブを排気行程において開状態とするロータリバルブ駆動部とを備えることを特徴とする。
これによれば、ピストン冠面に設けた開口をロータリバルブで開閉して未燃ガスの掃気を行うことにより、燃焼室側からクランクケース側への流路断面積を十分に確保することができ、未燃ガスの掃気を改善して燃焼室内のデポジットの堆積を抑制することができる。
【0006】
本発明において、前記ロータリバルブ駆動部は、前記ロータリバルブを開状態とする油圧が供給される第1油路と、前記ロータリバルブを閉状態とする油圧が供給される第2油路と、前記ピストンが設けられる気筒の行程を判別する行程判別部と、前記行程判別部が判別した行程に応じて前記第1油路へ油圧が供給される状態と前記第2油路へ油圧が供給される状態とを切り替える油路切替部と、前記ピストンに設けられ前記第1油路と前記第2油路との油圧の供給の切り替えに応じて前記ロータリバルブを開閉させる油圧アクチュエータとを有する構成とすることができる。
これによれば、ロータリバルブの開弁時期を適切に制御して上述した効果を確実に得ることができる。
【0007】
本発明において、前記油圧アクチュエータは、前記第1油路への油圧供給に応じて前記ピストンの一方側へ変位するとともに前記第2油路への油圧供給に応じて前記ピストンの他方側へ変位する往復部材と、前記往復部材の動きを前記ロータリバルブを回動させる回転運動に変換する動力変換部とを有する構成とすることができる。
これによれば、簡単な構成により油圧を用いてロータリバルブを回動させ、上述した効果を確実に得ることができる。
【0008】
本発明において、前記開口は、前記ピストンの周方向に沿って複数設けられ、前記ロータリバルブは、単一又は連動する弁体によって複数の前記開口を開閉する構成とすることができる。
これによれば、ピストンの周方向における複数箇所から未燃ガスの掃気を行うことにより、掃気効率を改善し、燃焼室内のデポジットの堆積をより効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、本発明によれば、排気行程における未燃ガスの掃気を改善したエンジンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明を適用したエンジンの実施形態におけるピストンの構成を示す模式図である。
【
図2】
図1のピストンの冠面を燃焼室側から見た模式図である。
【
図3】
図1のピストンに設けられるロータリバルブを燃焼室側から見た模式図である。
【
図4】実施形態のエンジンにおけるロータリバルブ制御装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を適用したエンジンの実施形態について説明する。
実施形態において、エンジンは、例えば自動車等の車両に走行用動力源、あるいは、発電用として搭載される4ストロークのレシプロ内燃エンジンである。
図1は、実施形態のエンジンにおけるピストンの構成を示す模式図である。
図2は、
図1のピストンの冠面を燃焼室側から見た模式図である。
図3は、
図1のピストンに設けられるロータリバルブを燃焼室側から見た模式図である。
【0012】
ピストン10は、図示しないシリンダブロックに形成されたシリンダ内に挿入され、シリンダ筒軸に沿って往復運動する部材である。
シリンダブロックのシリンダヘッド側とは反対側の領域(
図1における下方)には、クランクシャフトを収容する図示しないクランクケースが設けられている。
ピストン10は、冠面部11、開口12、スカート部13、ボス部14、シリンダ部15、キー16、第1油路17、第2油路18等を有する。
また、ピストン10には、スプロケット20、ロータリバルブ30が設けられている。
【0013】
冠面部11は、図示しないシリンダヘッドと対向して設けられた円形状の面部である。
冠面部11は、シリンダヘッドに形成された燃焼室部、図示しないシリンダの内周面と協働して、混合気が燃焼する燃焼室を構成する壁面の一部を構成する。
【0014】
開口12は、燃焼室側(
図1における上方)とクランクケース側(
図1における下方)とを連通させるよう冠面部11を貫通して設けられたスロット穴である。
図2に示すように、開口12は、冠面部11の外周縁部に隣接して配置されている。
開口12は、燃焼室側から見た平面形が、冠面部11の中心と同心の扇形状に形成されている。
開口12は、冠面部11の周方向に分散して複数(例えば4箇所)設けられている。
【0015】
スカート部13は、冠面部11の外周縁部からクランクケース側(
図1における下方)に延在する円筒外面状の面部である。
スカート部13は、シリンダの内周面と対向して配置されている。
スカート部13には、図示を省略したオイルリング溝、ピストンリング溝等が形成される。
【0016】
ボス部14は、図示しないピストンピンが挿入される部分である。
ボス部14は、スカート部13の内径側に収容されている。
ピストンピンは、図示しないクランクシャフトとピストン10とを連結する図示しないコネクティングロッドの小端部と、ピストン10とを、その軸回りに揺動可能な状態で連結する円筒状の部材である。
【0017】
シリンダ部15は、冠面部11とボス部14との間に設けられ、スプロケット20、及び、ロータリバルブ30の一部が収容される部分である。
シリンダ部15は、ピストン10の中心軸と同心の円筒状に形成された周面部を有する。
シリンダ部15のボス部14側の端面は、第1油路17を除き実質的に閉塞されている。
【0018】
キー16は、シリンダ部15の内周面から内径側に突出して設けられた突条である。
キー16は、シリンダ部15の軸方向に沿って直線状に延在している。
【0019】
第1油路17は、後述する第1ソレノイドバルブ130から、クランクシャフト、コネクティングロッドの内部に設けられた油路を介して伝達される油圧を、シリンダ部15の内部におけるスプロケット20よりもクランクケース側の領域S1に供給するものである。
第1油路17のシリンダ部15側の端部は、例えば、シリンダ部15のボス部14側の端面に開口した構成とすることができる。
【0020】
第2油路18は、後述する第2ソレノイドバルブ140から、クランクシャフト、コネクティングロッドを介して伝達される油圧を、シリンダ部15の内部におけるスプロケット20よりも冠面部11側の領域S2に供給するものである。
第2油路18のシリンダ部15側の端部は、例えば、シリンダ部15の冠面部11側の端部近傍における内周面に開口した構成とすることができる。
【0021】
スプロケット20は、シリンダ部15の内部に、シリンダ部15の筒軸方向に沿って相対変位可能な状態で挿入された部材である。
スプロケット20の本体部は、例えば円盤状に形成され、外周面部がシリンダ部15の内周面部と摺動可能に接触した状態となっている。
スプロケット20は、キー溝21、ボス部22等を有する。
キー溝21は、スプロケット20の外周面部を内径側に段状に凹ませて形成されている。
キー溝21は、キー16と係合し、スプロケット20がシリンダ部15に対して中心軸回りに回動することを防止する。
【0022】
ボス部22は、スプロケット20の中央部から冠面部11側に突出した円筒状の部分である。
ボス部22は、シリンダ部15の中心軸と同心に配置されている。
ボス部22には、ロータリバルブ30の軸部31が相対回動可能な状態で挿入される。
スプロケット20は、ロータリバルブ30の軸部31や、後述するロータリバルブ制御装置100等と協働して、本発明の油圧アクチュエータ、ロータリバルブ駆動部として機能する。
【0023】
ロータリバルブ30は、ピストン10の軸方向において、冠面部11とシリンダ部15との間に設けられる弁体部分を有し、冠面部11の開口12を開閉するものである。
ロータリバルブ30の本体部(弁体部分)は、例えば円盤状に形成されている。
ロータリバルブ30の一方の端面部(
図1における上面部)は、冠面部11のクランクケース側の面部と、不可避的に設けられる微小な間隔を隔てて、対向して配置されている。
ロータリバルブ30の外周面部は、スカート部13の内周面部と対向して配置されている。
ロータリバルブ30の他方の端面部(
図1における下面部)は、シリンダ部15の端面部と相対的に摺動可能な状態で当接している。
【0024】
ロータリバルブ30は、軸部31、切欠き部32を有する。
軸部31は、本体部の中央部からクランクケース側へ突出している。
軸部31は、シリンダ部15の中心軸と同心に配置されている。
軸部31は、スプロケット20のボス部22の内径側に、軸回りに相対回動可能な状態で挿入されている。
また、軸部31の外周面には雄ネジが形成され、ボス部22の内周面には雌ネジが形成されている。
この雄ネジと雌ネジは係合し、協働して、ロータリバルブ30に対するスプロケット20の中心軸方向の変位に応じて、ロータリバルブ30を中心軸回りに回動させる機能(本発明の動力変換部としての機能)を有する。
【0025】
図3に示すように、切欠き部32は、ロータリバルブ30の外周面を、部分的に内径側に凹ませて形成されている。
ロータリバルブ30は、切欠き部32が冠面部11の開口12と重畳した位置にあるときに、燃焼室とクランクケースとを連通させ、切欠き部32が開口12からずれた位置にあるときに、燃焼室とクランクケースとの連通を遮断するよう構成されている。
なお、ピストン10は、スプロケット20、ロータリバルブ30の組み込みを可能とするため、図示しない分割線において分割可能な構成とすることができる。
【0026】
実施形態のエンジンは、さらに、以下説明するロータリバルブ制御装置を有する。
図4は、実施形態のエンジンにおけるロータリバルブ制御装置の構成を示す図である。
ロータリバルブ制御装置100は、ロータリバルブ制御ユニット110、カム角センサ120、第1ソレノイドバルブ130、第2ソレノイドバルブ140等を有する。
【0027】
ロータリバルブ制御ユニット110は、カム角センサ120の出力に基づいて、第1ソレノイドバルブ130、第2ソレノイドバルブ140に指令を与えるものである。
ロータリバルブ制御ユニット110は、例えば、CPU等の情報処理部、RAMやROMなどの記憶部、入出力インターフェイス、及び、これらを接続するバス等を有するマイクロコンピュータとして構成することができる。
【0028】
カム角センサ120は、エンジンの吸気バルブ、排気バルブの少なくとも一方を駆動する図示しないカムシャフトの回転角度位置を検出する角度エンコーダである。
カム角センサ120の出力は、ロータリバルブ制御ユニット110に伝達される。
ロータリバルブ制御ユニット110は、カム角センサ120からの信号に基づいて、エンジンの各気筒が吸気行程、圧縮行程、膨張(燃焼)行程、排気行程のいずれにあるか、判別することが可能である。
カム角センサ120は、ロータリバルブ制御ユニット110と協働して、本発明の行程判別部として機能する。
【0029】
第1ソレノイドバルブ130、第2ソレノイドバルブ140は、オイルポンプPから供給される油圧を、第1油路17、第2油路18へそれぞれ供給する電磁弁である。
オイルポンプPは、エンジンのクランクシャフトによって駆動され、エンジンの潤滑油を加圧してエンジン各部に圧送する。
第1ソレノイドバルブ130、第2ソレノイドバルブ140は、ロータリバルブ制御ユニット110からの開弁指令、閉弁指令に応じて各油路を開閉し、油圧が供給された状態と、遮断された状態とを切り替える。
また、油圧が遮断された状態においては、当該ソレノイドバルブから従前にシリンダ部15内に供給されていたオイルは、図示しないドレンポートを介して排出されるようになっている。
【0030】
以下、実施形態のエンジンの運転時の動作について説明する。
例えば複数気筒を有するエンジンにおいて、ある一気筒に着目して説明するが、他の気筒においても、当該気筒の行程に応じて、同様の制御を行う。
先ず、吸気行程、圧縮行程、膨張行程においては、第1ソレノイドバルブ130は、第1油路17からのシリンダ部15内の領域S1への油圧供給を遮断するとともに、領域S1に貯留されていたオイルは、ドレンポートより排出された状態となっている。
一方、第2ソレノイドバルブ140は、第2油路18を介して、シリンダ部15内の領域S2へ油圧を供給する。
これにより、スプロケット20は、クランクケース側(
図1における下方)へ変位した状態となる。
このとき、ロータリバルブ30は、ピストン10の開口12を閉塞した状態となっている。
【0031】
また、排気行程においては、第1ソレノイドバルブ130は、第1油路17を介して、シリンダ部15内の領域S1に油圧を供給する。
一方、第2ソレノイドバルブ140は、第2油路18からのシリンダ部15内の領域S2への油圧供給を遮断するとともに、領域S2に貯留されていたオイルは、ドレンポートより排出された状態となっている。
これにより、スプロケット20は、燃焼室側(
図1における上方)へ変位した状態となる。
このとき、ロータリバルブ30は、スプロケット20に対して中心軸回りに相対回動し、ピストン10の開口12を開放した状態となっている。
【0032】
これにより、燃焼室内に残留する未燃ガスの一部は、開口12を介して燃焼室側からクランクケース側に掃気される。
クランクケースに入った未燃ガスは、図示しない公知のブローバイガス処理装置によって、再び吸気装置に導入され、燃焼室内で焼却処理される。
その後、排気行程の終了時期又はその近傍において、第1ソレノイドバルブ130と第2ソレノイドバルブ140の開閉は逆転し、ロータリバルブ30が開口12を閉塞し、再び上述した吸気行程の状態に復帰する。
【0033】
以上説明した実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)ピストン10の冠面部11に設けた開口12を、ロータリバルブ30で開閉して排気行程における未燃ガスの掃気を行うことにより、燃焼室側からクランクケース側への流路断面積を十分に確保することができ、未燃ガスの掃気を改善して燃焼室内のデポジットの堆積を抑制することができる。
これによって、デポジット堆積によって発生するノッキング等の不具合を防止することができる。
(2)カム角センサ120によってピストン10が設けられる気筒がどの行程にあるかを判別し、第1ソレノイドバルブ130、第2ソレノイドバルブ140の油圧供給、遮断を切り替えることにより、ロータリバルブの開弁時期を適切に制御して上述した効果を確実に得ることができる。
(3)油圧供給に応じてピストン10に対して並進運動するスプロケット20を備え、ネジ機構を用いてスプロケット20の並進運動に応じてロータリバルブ30を回動させることにより、簡単な構成により油圧を用いてロータリバルブ30を回動させ、上述した効果を確実に得ることができる。
(4)開口12をピストン10の周方向に沿って複数設け、単一のロータリバルブ30によって開閉することにより、ピストン10の周方向における複数箇所から未燃ガスの掃気を行うことで掃気効率を改善し、燃焼室内のデポジットの堆積をより効果的に抑制することができる。
【0034】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)エンジン、ピストン、油圧アクチュエータ、ロータリバルブ制御装置などの構成は、上述した実施形態の構成に限らず、適宜変更することができる。
(2)実施形態においては、ロータリバルブ制御装置は、カム角センサの出力に基づいてロータリバルブの駆動時期を制御しているが、これに限らず、他の手段によって制御を行ってもよい。例えば、クランク角センサの出力に基づいて制御するようにしてもよい。
(3)実施形態においては、スプロケットとシリンダ部とがキー及びキー溝によって回動が規制され、ロータリバルブがスプロケットに対してネジ機構によって回動する構成としているが、これに限らず、スプロケットがシリンダ部に対して回動し、ロータリバルブのスプロケットに対する回動が規制される構成としてもよい。
【符号の説明】
【0035】
10 ピストン 11 冠面部
12 開口 13 スカート部
14 ボス部 15 シリンダ部
16 キー 17 第1油路
18 第2油路
20 スプロケット 21 キー溝
22 ボス部 30 ロータリバルブ
31 軸部 32 切欠き部
S1 シリンダ部内のクランクケース側の領域
S2 シリンダ部内の燃焼室側の領域
100 ロータリバルブ制御装置 110 ロータリバルブ制御ユニット
120 カム角センサ 130 第1ソレノイドバルブ
140 第2ソレノイドバルブ P オイルポンプ