(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044386
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】エネルギー管理システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20240101AFI20240326BHJP
【FI】
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149876
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】羽田 徳成
(72)【発明者】
【氏名】平松 利治
(72)【発明者】
【氏名】先山めぐみ
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】電力削減目標値との整合性が高い電力削減量を実現可能な省エネ運転パターンをユーザーに提示する。
【解決手段】エネルギー管理システムは、建物の設備の省エネ運転パターンを複数案作成する省エネ運転パターン作成部42と、建物の当日の電力消費量の予測値を省エネ運転パターンと基準運転パターンのそれぞれについて得る電力消費量予測部46と、基準運転パターンで設備を運転したときの当日の電力消費量の予測値に対して省エネ運転パターンで設備を運転したときの当日の電力削減量の予測値を省エネ運転パターン毎に算出する削減予測値算出部47と、対象期間中の省エネ達成状況を示す評価値を算出する評価値算出部49と、評価値と電力削減量の予測値とに基づいて、複数の省エネ運転パターンのうち対象期間における電力削減量の目標値達成に最適な省エネ運転パターンを選択する選択部50を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過去の気象データと管理対象の建物の過去の電力消費量データと前記建物の設備の過去の運転パターンと前記建物の過去の使用状況とを予め記憶するように構成されたデータ蓄積装置と、
前記建物の設備の省エネ運転パターンを、省エネルギーの度合いが異なる複数案作成するように構成された省エネ運転パターン作成部と、
当日の気象予報データと気象の状況が一致または類似する状況下で、かつ前記建物の当日の使用状況と一致または類似する状況下の設備の運転パターンを前記データ蓄積装置に記憶された比較対象期間のデータから取得し、取得した運転パターンを当日の基準運転パターンとするように構成された基準運転パターン導出部と、
当日の気象予報データと前記建物の当日の使用状況の予測値と前記省エネ運転パターンと前記基準運転パターンとに基づいて、前記建物の当日の電力消費量の予測値を前記省エネ運転パターンと前記基準運転パターンのそれぞれについて得るように構成された電力消費量予測部と、
前記基準運転パターンで設備を運転したときの当日の電力消費量の予測値に対して前記省エネ運転パターンで設備を運転したときの当日の電力削減量の予測値を前記省エネ運転パターン毎に算出するように構成された削減予測値算出部と、
ユーザーによって設定された、省エネ対象期間における電力削減量の目標値と前記データ蓄積装置に記憶されている前記建物の前記基準運転パターンにおける電力消費量データとに基づいて、前記省エネ対象期間中の省エネ達成状況を示す評価値を算出するように構成された評価値算出部と、
前記評価値と前記電力削減量の予測値とに基づいて、複数の前記省エネ運転パターンのうち前記省エネ対象期間における電力削減量の目標値達成に最適な省エネ運転パターンを選択するように構成された選択部と、
前記選択部によって選択された省エネ運転パターンを前記省エネ対象期間に含まれる当日の推奨の省エネ運転パターンとしてユーザーに提示すると共に、この省エネ運転パターンによって得られる電力削減量の予測値をユーザーに提示するように構成された出力部とを備えることを特徴とするエネルギー管理システム。
【請求項2】
請求項1記載のエネルギー管理システムにおいて、
前記選択部は、前記省エネ対象期間中の電力削減量の実績値が目標値を超過していることを前記評価値が示している場合、複数の前記省エネ運転パターンのうち電力削減量の予測値が最も小さい省エネ運転パターンを最適な省エネ運転パターンとして選択することを特徴とするエネルギー管理システム。
【請求項3】
請求項1記載のエネルギー管理システムにおいて、
気象データと前記建物のスペースのうちテナントが使用しているスペースの割合を示すテナント使用率と前記建物の在室人数とカレンダー情報と前記建物の設備の運転パターンデータと前記建物の電力消費量との関係をモデル化した電力消費量予測モデルと、
気象データとテナント使用率とカレンダー情報と在室人数との関係をモデル化した在室人数予測モデルと、
当日の気象予報データと当日のテナント使用率と当日のカレンダー情報とを前記在室人数予測モデルに入力することにより、前記建物の当日の在室人数の予測値を得るように構成された在室人数予測部とをさらに備え、
前記電力消費量予測部は、当日の気象予報データと当日のテナント使用率と当日のカレンダー情報と前記在室人数予測部によって得られた当日の在室人数の予測値と前記省エネ運転パターンと前記基準運転パターンとを前記電力消費量予測モデルに入力することにより、前記建物の当日の電力消費量の予測値を前記省エネ運転パターンと前記基準運転パターンのそれぞれについて得ることを特徴とするエネルギー管理システム。
【請求項4】
請求項3記載のエネルギー管理システムにおいて、
前記電力消費量予測モデルと前記在室人数予測モデルとを構築するように構成された学習部をさらに備えることを特徴とするエネルギー管理システム。
【請求項5】
請求項1記載のエネルギー管理システムにおいて、
前記省エネ運転パターン作成部は、ユーザーが設定した省エネ運転限界値に基づいて、前記省エネ運転パターンを、省エネルギーの度合いが異なる複数案作成することを特徴とするエネルギー管理システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のエネルギー管理システムにおいて、
前記省エネ対象期間における電力削減量の目標値に基づいて、前記省エネ対象期間の開始日から前日までの前記建物の電力削減量の目標値を算出するように構成された削減目標値算出部と、
前記データ蓄積装置に記憶されている前記比較対象期間の前記建物の前記基準運転パターンにおける電力消費量データと前記省エネ対象期間の電力消費量データとに基づいて、前記比較対象期間に対する前記省エネ対象期間の開始日から前日までの前記建物の電力削減量の実績値を算出するように構成された削減実績値算出部とをさらに備え、
前記評価値算出部は、前記削減目標値算出部によって算出された電力削減量の目標値と前記削減実績値算出部によって算出された電力削減量の実績値との差を、前記省エネ対象期間中の省エネ達成状況を示す評価値として算出することを特徴とするエネルギー管理システム。
【請求項7】
管理対象の建物の設備の省エネ運転パターンを、省エネルギーの度合いが異なる複数案作成する第1のステップと、
過去の気象データと前記建物の過去の電力消費量データと前記建物の設備の過去の運転パターンと前記建物の過去の使用状況とを記憶するデータ蓄積装置を参照し、当日の気象予報データと気象の状況が一致または類似する状況下で、かつ前記建物の当日の使用状況と一致または類似する状況下の設備の運転パターンを前記データ蓄積装置に記憶された比較対象期間のデータから取得し、取得した運転パターンを当日の基準運転パターンとする第2のステップと、
当日の気象予報データと前記建物の当日の使用状況の予測値と前記省エネ運転パターンと前記基準運転パターンとに基づいて、前記建物の当日の電力消費量の予測値を前記省エネ運転パターンと前記基準運転パターンのそれぞれについて得る第3のステップと、
前記基準運転パターンで設備を運転したときの当日の電力消費量の予測値に対して前記省エネ運転パターンで設備を運転したときの当日の電力削減量の予測値を前記省エネ運転パターン毎に算出する第4のステップと、
ユーザーによって設定された、省エネ対象期間における電力削減量の目標値と前記データ蓄積装置に記憶されている前記建物の前記基準運転パターンにおける電力消費量データとに基づいて、前記省エネ対象期間中の省エネ達成状況を示す評価値を算出する第5のステップと、
前記評価値と前記電力削減量の予測値とに基づいて、複数の前記省エネ運転パターンのうち前記省エネ対象期間における電力削減量の目標値達成に最適な省エネ運転パターンを選択する第6のステップと、
前記第6のステップで選択した省エネ運転パターンを前記省エネ対象期間に含まれる当日の推奨の省エネ運転パターンとしてユーザーに提示すると共に、この省エネ運転パターンによって得られる電力削減量の予測値をユーザーに提示する第7のステップとを含むことを特徴とするエネルギー管理方法。
【請求項8】
請求項7記載のエネルギー管理方法において、
前記第6のステップは、前記省エネ対象期間中の電力削減量の実績値が目標値を超過していることを前記評価値が示している場合、複数の前記省エネ運転パターンのうち電力削減量の予測値が最も小さい省エネ運転パターンを最適な省エネ運転パターンとして選択するステップを含むことを特徴とするエネルギー管理方法。
【請求項9】
請求項7記載のエネルギー管理方法において、
前記第3のステップの前に、当日の気象予報データと当日のテナント使用率と当日のカレンダー情報とを在室人数予測モデルに入力することにより、前記建物の当日の在室人数の予測値を得る第8のステップをさらに含み、
前記第3のステップは、当日の気象予報データと当日のテナント使用率と当日のカレンダー情報と前記第8のステップによって得られた当日の在室人数の予測値と前記省エネ運転パターンと前記基準運転パターンとを電力消費量予測モデルに入力することにより、前記建物の当日の電力消費量の予測値を前記省エネ運転パターンと前記基準運転パターンのそれぞれについて得るステップを含むことを特徴とするエネルギー管理方法。
【請求項10】
請求項9記載のエネルギー管理方法において、
前記電力消費量予測モデルと前記在室人数予測モデルとを構築する第9のステップをさらに含むことを特徴とするエネルギー管理方法。
【請求項11】
請求項7記載のエネルギー管理方法において、
前記第1のステップは、ユーザーが設定した省エネ運転限界値に基づいて、前記省エネ運転パターンを、省エネルギーの度合いが異なる複数案作成するステップを含むことを特徴とするエネルギー管理方法。
【請求項12】
請求項7乃至11のいずれか1項に記載のエネルギー管理方法において、
前記第5のステップの前に、前記省エネ対象期間における電力削減量の目標値に基づいて、前記省エネ対象期間の開始日から前日までの前記建物の電力削減量の目標値を算出する第10のステップと、
前記第5のステップの前に、前記データ蓄積装置に記憶されている前記比較対象期間の前記建物の前記基準運転パターンにおける電力消費量データと前記省エネ対象期間の電力消費量データとに基づいて、前記比較対象期間に対する前記省エネ対象期間の開始日から前日までの前記建物の電力削減量の実績値を算出する第11のステップとをさらに含み、
前記第5のステップは、前記第10のステップによって算出された電力削減量の目標値と前記第11のステップによって算出された電力削減量の実績値との差を、前記省エネ対象期間中の省エネ達成状況を示す評価値として算出するステップを含むことを特徴とするエネルギー管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理対象の建物の電力削減目標を達成するためのエネルギー管理システムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビル施設等における建物内の空調設備を保守管理するオペレータは、中央監視室の中央監視装置に表示される現在の空調設備運転状況や室内の制御温湿度などの数値やトレンドグラフを見ながら、運転状態を監視、制御している。
【0003】
同時に、昨今の温暖化対策への取り組みから、建物の運用段階における電力消費量に対し、年間の電力削減目標値が与えられる。この年間の電力削減目標値を単純に日割りした値を日々の管理目標値とした場合、その達成の難易度は気象条件や建物内の使用条件によって大きく異なる。また、省エネ対象期間の開始日から前日までの電力削減達成状況によっては、日々の管理目標値を達成するだけでは不十分である場合や、日々の管理目標値を達成せずとも年間の電力削減目標値を達成することが可能である状況があり得る。
【0004】
建物の電力消費量を管理する技術として、特許文献1、特許文献2に開示された技術がある。特許文献1に開示された空調機システムは、一日における室内機の運転開始前に、総電力量から累計消費電力量を減算し、これを稼働予定日数で除算して、一日における室内機の消費電力の目標電力量を算出して表示する。
また、特許文献2に開示された運転管理装置は、運転負荷に供給する電力負荷予測値を算出して空調負荷に供給する電力を調整する。
【0005】
しかしながら、特許文献1、特許文献2に開示された技術では、例えば年間や月間などの対象期間の電力削減目標値を日数で除算することにより、目標値に応じた機器の運転パターンを求めているが、建物の使用状況を考慮しておらず、目標値の単純な日割り計算や気象データに基づく予測のみでは、日々の電力削減目標達成状況に応じた調整ができないという課題があり、例えば目標値を達成しているのに省エネ運転を継続して快適性を犠牲にしている場合や、対象期間の後半で目標値を大きく下回って目標達成不可能な状態になる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-158117号公報
【特許文献2】特開2012-254015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、電力削減目標値との整合性が高い電力削減量を実現可能な省エネ運転パターンを選択してユーザーに提示することができるエネルギー管理システムおよび方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のエネルギー管理システムは、過去の気象データと管理対象の建物の過去の電力消費量データと前記建物の設備の過去の運転パターンと前記建物の過去の使用状況とを予め記憶するように構成されたデータ蓄積装置と、前記建物の設備の省エネ運転パターンを、省エネルギーの度合いが異なる複数案作成するように構成された省エネ運転パターン作成部と、当日の気象予報データと気象の状況が一致または類似する状況下で、かつ前記建物の当日の使用状況と一致または類似する状況下の設備の運転パターンを前記データ蓄積装置に記憶された比較対象期間のデータから取得し、取得した運転パターンを当日の基準運転パターンとするように構成された基準運転パターン導出部と、当日の気象予報データと前記建物の当日の使用状況の予測値と前記省エネ運転パターンと前記基準運転パターンとに基づいて、前記建物の当日の電力消費量の予測値を前記省エネ運転パターンと前記基準運転パターンのそれぞれについて得るように構成された電力消費量予測部と、前記基準運転パターンで設備を運転したときの当日の電力消費量の予測値に対して前記省エネ運転パターンで設備を運転したときの当日の電力削減量の予測値を前記省エネ運転パターン毎に算出するように構成された削減予測値算出部と、ユーザーによって設定された、省エネ対象期間における電力削減量の目標値と前記データ蓄積装置に記憶されている前記建物の前記基準運転パターンにおける電力消費量データとに基づいて、前記省エネ対象期間中の省エネ達成状況を示す評価値を算出するように構成された評価値算出部と、前記評価値と前記電力削減量の予測値とに基づいて、複数の前記省エネ運転パターンのうち前記省エネ対象期間における電力削減量の目標値達成に最適な省エネ運転パターンを選択するように構成された選択部と、前記選択部によって選択された省エネ運転パターンを前記省エネ対象期間に含まれる当日の推奨の省エネ運転パターンとしてユーザーに提示すると共に、この省エネ運転パターンによって得られる電力削減量の予測値をユーザーに提示するように構成された出力部とを備えることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明のエネルギー管理システムの1構成例において、前記選択部は、前記省エネ対象期間中の電力削減量の実績値が目標値を超過していることを前記評価値が示している場合、複数の前記省エネ運転パターンのうち電力削減量の予測値が最も小さい省エネ運転パターンを最適な省エネ運転パターンとして選択することを特徴とするものである。
また、本発明のエネルギー管理システムの1構成例は、気象データと前記建物のスペースのうちテナントが使用しているスペースの割合を示すテナント使用率と前記建物の在室人数とカレンダー情報と前記建物の設備の運転パターンデータと前記建物の電力消費量との関係をモデル化した電力消費量予測モデルと、気象データとテナント使用率とカレンダー情報と在室人数との関係をモデル化した在室人数予測モデルと、当日の気象予報データと当日のテナント使用率と当日のカレンダー情報とを前記在室人数予測モデルに入力することにより、前記建物の当日の在室人数の予測値を得るように構成された在室人数予測部とをさらに備え、前記電力消費量予測部は、当日の気象予報データと当日のテナント使用率と当日のカレンダー情報と前記在室人数予測部によって得られた当日の在室人数の予測値と前記省エネ運転パターンと前記基準運転パターンとを前記電力消費量予測モデルに入力することにより、前記建物の当日の電力消費量の予測値を前記省エネ運転パターンと前記基準運転パターンのそれぞれについて得ることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明のエネルギー管理システムの1構成例は、前記電力消費量予測モデルと前記在室人数予測モデルとを構築するように構成された学習部をさらに備えることを特徴とするものである。
また、本発明のエネルギー管理システムの1構成例において、前記省エネ運転パターン作成部は、ユーザーが設定した省エネ運転限界値に基づいて、前記省エネ運転パターンを、省エネルギーの度合いが異なる複数案作成することを特徴とするものである。
また、本発明のエネルギー管理システムの1構成例は、前記省エネ対象期間における電力削減量の目標値に基づいて、前記省エネ対象期間の開始日から前日までの前記建物の電力削減量の目標値を算出するように構成された削減目標値算出部と、前記データ蓄積装置に記憶されている前記比較対象期間の前記建物の前記基準運転パターンにおける電力消費量データと前記省エネ対象期間の電力消費量データとに基づいて、前記比較対象期間に対する前記省エネ対象期間の開始日から前日までの前記建物の電力削減量の実績値を算出するように構成された削減実績値算出部とをさらに備え、前記評価値算出部は、前記削減目標値算出部によって算出された電力削減量の目標値と前記削減実績値算出部によって算出された電力削減量の実績値との差を、前記省エネ対象期間中の省エネ達成状況を示す評価値として算出することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明のエネルギー管理方法は、管理対象の建物の設備の省エネ運転パターンを、省エネルギーの度合いが異なる複数案作成する第1のステップと、過去の気象データと前記建物の過去の電力消費量データと前記建物の設備の過去の運転パターンと前記建物の過去の使用状況とを記憶するデータ蓄積装置を参照し、当日の気象予報データと気象の状況が一致または類似する状況下で、かつ前記建物の当日の使用状況と一致または類似する状況下の設備の運転パターンを前記データ蓄積装置に記憶された比較対象期間のデータから取得し、取得した運転パターンを当日の基準運転パターンとする第2のステップと、当日の気象予報データと前記建物の当日の使用状況の予測値と前記省エネ運転パターンと前記基準運転パターンとに基づいて、前記建物の当日の電力消費量の予測値を前記省エネ運転パターンと前記基準運転パターンのそれぞれについて得る第3のステップと、前記基準運転パターンで設備を運転したときの当日の電力消費量の予測値に対して前記省エネ運転パターンで設備を運転したときの当日の電力削減量の予測値を前記省エネ運転パターン毎に算出する第4のステップと、ユーザーによって設定された、省エネ対象期間における電力削減量の目標値と前記データ蓄積装置に記憶されている前記建物の前記基準運転パターンにおける電力消費量データとに基づいて、前記省エネ対象期間中の省エネ達成状況を示す評価値を算出する第5のステップと、前記評価値と前記電力削減量の予測値とに基づいて、複数の前記省エネ運転パターンのうち前記省エネ対象期間における電力削減量の目標値達成に最適な省エネ運転パターンを選択する第6のステップと、前記第6のステップで選択した省エネ運転パターンを前記省エネ対象期間に含まれる当日の推奨の省エネ運転パターンとしてユーザーに提示すると共に、この省エネ運転パターンによって得られる電力削減量の予測値をユーザーに提示する第7のステップとを含むことを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明のエネルギー管理方法の1構成例において、前記第6のステップは、前記省エネ対象期間中の電力削減量の実績値が目標値を超過していることを前記評価値が示している場合、複数の前記省エネ運転パターンのうち電力削減量の予測値が最も小さい省エネ運転パターンを最適な省エネ運転パターンとして選択するステップを含むことを特徴とするものである。
また、本発明のエネルギー管理方法の1構成例は、前記第3のステップの前に、当日の気象予報データと当日のテナント使用率と当日のカレンダー情報とを在室人数予測モデルに入力することにより、前記建物の当日の在室人数の予測値を得る第8のステップをさらに含み、前記第3のステップは、当日の気象予報データと当日のテナント使用率と当日のカレンダー情報と前記第8のステップによって得られた当日の在室人数の予測値と前記省エネ運転パターンと前記基準運転パターンとを電力消費量予測モデルに入力することにより、前記建物の当日の電力消費量の予測値を前記省エネ運転パターンと前記基準運転パターンのそれぞれについて得るステップを含むことを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明のエネルギー管理方法の1構成例は、前記電力消費量予測モデルと前記在室人数予測モデルとを構築する第9のステップをさらに含むことを特徴とするものである。
また、本発明のエネルギー管理方法の1構成例において、前記第1のステップは、ユーザーが設定した省エネ運転限界値に基づいて、前記省エネ運転パターンを、省エネルギーの度合いが異なる複数案作成するステップを含むことを特徴とするものである。
また、本発明のエネルギー管理方法の1構成例は、前記第5のステップの前に、前記省エネ対象期間における電力削減量の目標値に基づいて、前記省エネ対象期間の開始日から前日までの前記建物の電力削減量の目標値を算出する第10のステップと、前記第5のステップの前に、前記データ蓄積装置に記憶されている前記比較対象期間の前記建物の前記基準運転パターンにおける電力消費量データと前記省エネ対象期間の電力消費量データとに基づいて、前記比較対象期間に対する前記省エネ対象期間の開始日から前日までの前記建物の電力削減量の実績値を算出する第11のステップとをさらに含み、前記第5のステップは、前記第10のステップによって算出された電力削減量の目標値と前記第11のステップによって算出された電力削減量の実績値との差を、前記省エネ対象期間中の省エネ達成状況を示す評価値として算出するステップを含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、当日の気象予報データだけでなく、管理対象の建物の当日の使用状況の情報を用いて当日の電力削減量を予測し、省エネ対象期間中の省エネ達成状況を示す評価値に応じて省エネ運転パターンを選択するので、電力削減目標値との整合性が高い電力削減量を実現可能な省エネ運転パターンを導出することができる。また、本発明では、省エネ達成状況を示す評価値に応じて省エネ運転パターンを選択するので、省エネルギーの度合いを厳しくしたり、逆に緩和したりすることができ、省エネ達成状況に応じた調整を行うことができる。
【0015】
また、本発明では、省エネ対象期間中の電力削減量の実績値が目標値を超過していることを評価値が示している場合、複数の省エネ運転パターンのうち電力削減量の予測値が最も小さい省エネ運転パターンを最適な省エネ運転パターンとして選択することにより、当日の設備の運転条件に余裕を与えることができる。
【0016】
また、本発明では、電力消費量予測モデルと、在室人数予測モデルと、在室人数予測部とを設け、在室人数予測モデルを用いて当日の在室人数の予測値を取得し、当日の気象予報データと当日のテナント使用率と当日のカレンダー情報と当日の在室人数の予測値と省エネ運転パターンと基準運転パターンとを電力消費量予測モデルに入力することにより、建物の当日の電力消費量の予測値を得ることができる。
【0017】
また、本発明では、学習部を設けることにより、電力消費量予測モデルと在室人数予測モデルとを構築することができる。
【0018】
また、本発明では、削減目標値算出部と削減実績値算出部とを設け、評価値算出部が、削減目標値算出部によって算出された電力削減量の目標値と削減実績値算出部によって算出された電力削減量の実績値との差を算出することにより、省エネ対象期間中の省エネ達成状況を示す評価値を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の実施例に係るエネルギー管理システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施例に係るエネルギー管理システムの情報取得装置と演算装置の動作を説明するフローチャート、
【
図3】
図3は、本発明の実施例に係るエネルギー管理システムの情報取得装置と設定値入力端末と演算装置の動作を説明するフローチャートである。
【
図4】
図4は、本発明の実施例に係る省エネ運転パターン作成部が作成した省エネ運転パターンの例を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施例に係るエネルギー管理システムを実現するコンピュータの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[発明の要点]
本発明は、建物の運用者が操作する端末装置に対し、当日の電力削減目標値を通知すると共に、年間や月間などの対象期間ごとに前日までの達成状況を加味した当日の目標を達成するために推奨する設備運転パターンを表示するエネルギー管理システムを提供する。本発明では、対象期間の開始日から前日までの電力削減達成量が目標未達の場合、残りの期間で目標達成するため厳し目の設備運転パターンを提示する。逆に前日までに電力削減達成量が目標を超過している場合、当日の運転条件に余裕を与える。
【0021】
[実施例]
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施例に係るエネルギー管理システムの構成を示すブロック図である。エネルギー管理システムは、情報取得装置1と、データ蓄積装置(DB)2と、設定値入力端末3と、演算装置4と、表示端末5とを備える。
【0022】
情報取得装置1は、他のシステムから情報を取得して、取得したデータをDB2に蓄積するか、またはファイルとして出力する機能を有する。情報取得装置1は、建物を管理するBA(Building Automation)システムからBAデータを取得してDB2に蓄積するBAデータ取得部10と、テナント管理システム101から管理対象の建物に入居するテナントの情報を取得してDB2に蓄積するテナント情報取得部11と、入退室管理システム102から管理対象の建物の在室人数の情報を取得してDB2に蓄積する入退室情報取得部12と、カレンダー管理システム103からカレンダー情報を取得してDB2に蓄積するカレンダー情報取得部13と、気象予報システム104から気象予報データを取得して出力する気象予報データ出力部14と、テナント管理システム101からテナント情報を取得して出力するテナント情報出力部15と、カレンダー管理システム103からカレンダー情報を取得して出力するカレンダー情報出力部16とを備えている。
【0023】
DB2は、情報取得装置1から渡されたデータを長期間保持し、演算装置4からの照会に対して、指定されたデータを提供する機能を有する。
設定値入力端末3は、エネルギー管理システムのユーザーが設定した省エネ運転限界値と電力削減量の年間目標値とを受け付ける機能を有する。
【0024】
演算装置4は、情報取得装置1とDB2からデータを取得して演算を行い、当日の推奨する設備運転パターンを表示端末5に表示させる機能を有する。演算装置4は、管理対象の建物の在室人数と電力消費量を予測するためのモデルを記憶するモデル記憶部40と、モデルの機械学習を行う学習部41と、建物の設備の省エネ運転パターンを、省エネルギーの度合いが異なる複数案作成する省エネ運転パターン作成部42と、省エネ対象期間の開始日から前日までの建物の電力削減量の目標値を算出する削減目標値算出部43と、当日の気象予報データと気象の状況が一致または類似する状況下で、かつ建物の当日の使用状況と一致または類似する状況下の設備の運転パターンをDB2に記憶された比較対象期間のデータから取得し、取得した運転パターンを当日の基準運転パターンとする基準運転パターン導出部44と、建物の当日の在室人数の予測値を取得する在室人数予測部45と、建物の当日の電力消費量の予測値を省エネ運転パターンと基準運転パターンのそれぞれについて取得する電力消費量予測部46と、基準運転パターンで設備を運転したときの当日の電力消費量の予測値に対して省エネ運転パターンで設備を運転したときの当日の電力削減量の予測値を省エネ運転パターン毎に算出する削減予測値算出部47と、前年に対する省エネ対象期間の開始日から前日までの建物の電力削減量の実績値を算出する削減実績値算出部48と、省エネ対象期間中の省エネ達成状況を示す評価値を算出する評価値算出部49と、評価値と電力削減量の予測値とに基づいて、複数の省エネ運転パターンのうち省エネ対象期間における電力削減量の目標値達成に最適な省エネ運転パターンを選択する選択部50と、選択された省エネ運転パターンを省エネ対象期間に含まれる当日の推奨の省エネ運転パターンとしてユーザーに提示すると共に、この省エネ運転パターンによって得られる電力削減量の予測値をユーザーに提示する出力部51とを備えている。
【0025】
管理対象の建物の使用状況の情報としては、管理対象の建物のスペースのうちテナントが使用しているスペースの割合を示すテナント使用率と、管理対象の建物の在室人数とがある。当日の在室人数については予測値を用いる。
【0026】
モデル記憶部40には、気象データとテナント使用率と管理対象の建物の在室人数とカレンダー情報と管理対象の建物の設備の運転パターンデータと管理対象の建物の電力消費量との関係をモデル化した電力消費量予測モデル400と、気象データとテナント使用率とカレンダー情報と在室人数との関係をモデル化した、ソフトウェア的に構築された数学モデルである在室人数予測モデル401とが記憶されている。
【0027】
図2は本実施例のエネルギー管理システムの情報取得装置1と演算装置4の学習部41の動作を説明するフローチャートである。
図3は情報取得装置1と設定値入力端末3と演算装置4の省エネ運転パターン作成部42と削減目標値算出部43と基準運転パターン導出部44と在室人数予測部45と電力消費量予測部46と削減予測値算出部47と削減実績値算出部48と評価値算出部49と選択部50の動作を説明するフローチャートである。
【0028】
なお、
図2、
図3では、分かり易くするためにエネルギー管理システムの各部の動作を順番に記載しているが、エネルギー管理システムの各部の動作は
図2、
図3の順番のとおりでなくてもよい。
【0029】
情報取得装置1のBAデータ取得部10は、エネルギー管理システムの管理対象の建物のBAシステムからBAデータを取得してDB2に蓄積する(
図2ステップS100)。BAデータとしては、管理対象の建物の過去の電力消費量データ、管理対象の建物の設備の過去の運転パターンデータ、管理対象の建物周辺の過去の気象データ(気温、湿度)などがある。
【0030】
情報取得装置1のテナント情報取得部11は、管理対象の建物のテナント管理システム101から管理対象の建物に入居しているテナントの情報を取得してDB2に蓄積する(
図2ステップS101)。テナント情報としては、管理対象の建物のスペースのうちテナントが使用しているスペースの割合を示すテナント使用率がある。
【0031】
情報取得装置1の入退室情報取得部12は、管理対象の建物の入退室管理システム102から管理対象の建物の入退室情報を取得してDB2に蓄積する(
図2ステップS102)。入退室情報としては、管理対象の建物の在室人数がある。
【0032】
情報取得装置1のカレンダー情報取得部13は、カレンダー管理システム103からカレンダー情報を取得してDB2に蓄積する(
図2ステップS103)。本実施例のカレンダー情報は、日にちの区分(平日/休日/特異日)を示すものである。特異日としては、例えば祝日がある。
【0033】
演算装置4の学習部41は、DB2に記憶されている過去のデータ収集期間における管理対象の建物周辺の気象データと、データ収集期間における管理対象の建物のテナント使用率と、データ収集期間における管理対象の建物の在室人数と、データ収集期間における管理対象の建物の設備の運転パターンデータと、データ収集期間のカレンダー情報(平日/休日/特異日)とを電力消費量予測モデル400の入力変数とし、データ収集期間における管理対象の建物の電力消費量を電力消費量予測モデル400の出力変数として、目的とする出力変数が得られるように電力消費量予測モデル400の機械学習を行う(
図2ステップS104)。
【0034】
また、学習部41は、DB2に記憶されている過去のデータ収集期間における管理対象の建物周辺の気象データと、データ収集期間における管理対象の建物のテナント使用率と、データ収集期間のカレンダー情報とを在室人数予測モデル401の入力変数とし、データ収集期間における管理対象の建物の在室人数を在室人数予測モデル401の出力変数として、目的とする出力変数が得られるように在室人数予測モデル401の機械学習を行う(
図2ステップS105)。
【0035】
以上で、学習動作が終了する。なお、機械学習の方法は周知の技術であるので、詳細な説明は省略する。機械学習は、ユーザーに推奨の省エネ運転パターンを提示する前に行っておけばよく、例えばユーザーからの指示に応じて実行してもよいし、一定時間毎に実行するようにしてもよい。また、重回帰分析などの機械学習以外の手法を用いて電力消費量予測モデル400と在室人数予測モデル401とを構築するようにしてもよい。
【0036】
次に、ユーザーは、設定値入力端末3を操作して、省エネルギーの設備運転による温熱環境悪化と設備の運転制限とに対して管理対象の建物のテナントが受け入れ可能な限界値を示す省エネ運転限界値と、管理対象の建物の電力削減量の年間目標値とを事前に入力する(
図3ステップS200)。
【0037】
省エネ運転限界値は、設備の運転制限の限界値と、温熱環境悪化の限界値とからなる。設備の運転制限の限界値は、例えば設備の時間外運転は最低2時間、といったように設定される。温熱環境悪化の限界値は、例えば夏期の冷暖房の室内設定温度が最高27℃、冬期の冷暖房の室内設定温度が最低20℃、といったように設定される。
【0038】
電力削減量の年間目標値は、例えば電力削減量の前年実績比、または前年に対する電力削減量の合計値のいずれかで設定される。
【0039】
演算装置4の省エネ運転パターン作成部42は、ユーザーが設定した省エネ運転限界値に基づいて、管理対象の建物の設備の省エネ運転パターンの案を、省エネルギーの度合いが異なる複数案作成する(
図3ステップS201)。
【0040】
図4に省エネ運転パターン作成部42が作成した省エネ運転パターンの例を示す。
図4の例では、省エネルギーを厳格に要求する運転パターン「1」から省エネルギーの要求を大幅に緩和した運転パターン「4」まで、省エネルギーの度合いが異なる4つの案が作成されている。省エネ運転パターン作成部42は、ユーザーが省エネ運転限界値を設定した時点で、このような省エネ運転パターンの案を作成しておけばよい。
【0041】
一方、演算装置4の削減目標値算出部43は、ユーザーが設定した電力削減量の年間目標値に基づいて、本年の元日(1月1日)から前日までの管理対象の建物の電力削減量の目標値C
spを算出する(
図3ステップS202)。
【0042】
具体的には、削減目標値算出部43は、ユーザーが電力削減量の年間目標値として前年(比較対象期間)に対する電力削減量の合計値を設定した場合、この合計値を本年の日数で割ることにより1日当たりの電力削減量の目標値を算出し、1日当たりの目標値の、1月1日から前日までの累積値[kWh]を算出すればよい。
【0043】
また、削減目標値算出部43は、ユーザーが電力削減量の年間目標値として電力削減量の前年実績比[%]を設定した場合、この比率を本年の日数で割ることにより1日当たりの電力削減量の削減率を算出し、1日当たりの削減率の、1月1日から前日までの累積値[%]を算出すればよい。
削減目標値算出部43は、ユーザーに当日の推奨の省エネ運転パターンを提示する前に、このような目標値Cspの算出を行うようにすればよい。
【0044】
次に、気象予報データ出力部14は、気象予報システム104から管理対象の建物がある地域の当日の気象予報データ(気温の予報値、湿度の予報値)を取得する(
図3ステップS203)。
【0045】
テナント情報出力部15は、テナント管理システム101から管理対象の建物に入居しているテナントの当日の情報(テナント使用率)を取得する(
図3ステップS204)。
カレンダー情報出力部16は、カレンダー管理システム103から当日のカレンダー情報(平日/休日/特異日)を取得する(
図3ステップS205)。
【0046】
演算装置4の基準運転パターン導出部44は、気象予報データ出力部14が取得した当日の気象予報データと気象の状況が一致または類似する状況下で、かつテナント情報出力部15が取得した当日のテナント使用率とテナントの入居状況が一致または類似する状況下で、かつ当日と日にちの区分(平日/休日/特異日)が一致する状況下の運転パターンをDB2に記憶された比較対象期間のデータから取得し、取得した運転パターンを当日の基準運転パターンとする(
図3ステップS206)。比較対象期間としては、例えば過去1年間や前年同月などがある。
【0047】
基準運転パターン導出部44は、当日の気象予報データと気象の状況が一致する運転パターンが比較対象期間のデータの中に存在しない場合、当日の気象予報データと気象の状況が類似する運転パターンを取得すればよい。ここでの類似とは、例えば気温の予報値T±α(αは予め定められた温度許容値)の範囲内の気温で、湿度の予報値H±β(βは予め定められた湿度許容値)の範囲内の湿度であることを言う。
【0048】
基準運転パターン導出部44は、当日のテナント使用率とテナントの入居状況が一致する運転パターンが比較対象期間のデータの中に存在しない場合、当日のテナント使用率とテナントの入居状況が類似する運転パターンを取得すればよい。ここでの類似とは、例えば当日のテナント使用率R±γ(γは予め定められた許容値)の範囲内のテナント使用率のことを言う。
なお、当日の状況と一致または類似する状況下の運転パターンが複数存在する場合には、当日の状況と最も類似した状況下の運転パターンをDB2に記憶された比較対象期間のデータから取得すればよい。
【0049】
続いて、演算装置4の在室人数予測部45は、気象予報データ出力部14が取得した当日の気象予報データと、テナント情報出力部15が取得した当日のテナント使用率と、カレンダー情報出力部16が取得した当日のカレンダー情報(平日/休日/特異日)とを在室人数予測モデル401に入力することにより、在室人数予測モデル401から管理対象の建物の当日の在室人数の予測値を得る(
図3ステップS207)。
【0050】
演算装置4の電力消費量予測部46は、気象予報データ出力部14が取得した当日の気象予報データと、テナント情報出力部15が取得した当日のテナント使用率と、カレンダー情報出力部16が取得した当日のカレンダー情報(平日/休日/特異日)と、在室人数予測部45によって得られた当日の在室人数の予測値と、省エネ運転パターン作成部42が作成した省エネ運転パターンと、基準運転パターン導出部44が導出した基準運転パターンとを電力消費量予測モデル400に入力することにより、電力消費量予測モデル400から管理対象の建物の当日の電力消費量の予測値を運転パターン毎に得る(
図3ステップS208)。
【0051】
電力消費量予測部46は、当日の気象予報データと当日のテナント使用率と当日のカレンダー情報と当日の在室人数の予測値とを電力消費量予測モデル400に入力し、さらに省エネ運転パターン作成部42が作成した複数の省エネ運転パターンを順番に電力消費量予測モデル400に入力することにより、省エネ運転パターンで設備を運転したときの管理対象の建物の当日の電力消費量の予測値を省エネ運転パターン毎に得る。
【0052】
また、電力消費量予測部46は、当日の気象予報データと当日のテナント使用率と当日のカレンダー情報と当日の在室人数の予測値と基準運転パターンとを電力消費量予測モデル400に入力することにより、基準運転パターンで設備を運転したときの管理対象の建物の当日の電力消費量の予測値を得る。
【0053】
演算装置4の削減予測値算出部47は、基準運転パターンで設備を運転したときの当日の電力消費量の予測値に対して省エネ運転パターンで設備を運転したときの当日の電力削減量の予測値C
pを省エネ運転パターン毎に算出する(
図3ステップS209)。
【0054】
具体的には、削減予測値算出部47は、電力消費量予測部46が基準運転パターンについて予測した電力消費量から、電力消費量予測部46が省エネ運転パターンについて予測した電力消費量を減算する処理を、省エネ運転パターン毎に行うようにすればよい。
【0055】
次に、演算装置4の削減実績値算出部48は、DB2に記憶されている比較対象期間の管理対象の建物の基準運転パターンにおける電力消費量データと本年の電力消費量データとに基づいて、本年の元日から前日までの管理対象の建物の電力削減量の実績値C
aを算出する(
図3ステップS210)。
【0056】
具体的には、削減実績値算出部48は、ユーザーが電力削減量の年間目標値として前年(比較対象期間)に対する電力削減量の合計値を設定した場合、本年の元日から前日までと同じ日数の電力消費量の合計値Ptotal0を前年の管理対象の建物の基準運転パターンについて算出して、算出した合計値Ptotal0から、本年の元日から前日までの管理対象の建物の電力消費量の合計値Ptotalを減算した値Ptotal0-Ptotalを電力削減量の実績値Ca[kWh]とすればよい。
【0057】
また、削減実績値算出部48は、ユーザーが電力削減量の年間目標値として電力削減量の前年実績比を設定した場合、上記のPtotal0-PtotalをPtotal0で除算した値(Ptotal0-Ptotal)/Ptotal0×100を電力削減量の実績値Ca[%]とすればよい。
【0058】
演算装置4の評価値算出部49は、削減目標値算出部43によって算出された電力削減量の目標値C
spと削減実績値算出部48によって算出された電力削減量の実績値C
aとの差C
diff=C
sp-C
aを、本年の元日から前日までの省エネ達成状況を示す評価値として算出する(
図3ステップS211)。
【0059】
演算装置4の選択部50は、評価値算出部49によって算出された評価値C
diffと、削減予測値算出部47によって算出された電力削減量の予測値C
pとに基づいて、電力削減量の年間目標値達成に最適な省エネ運転パターンを選択する(
図3ステップS212)。
【0060】
具体的には、選択部50は、ユーザーが電力削減量の年間目標値として前年(比較対象期間)に対する電力削減量の合計値を設定した場合、評価値算出部49によって算出された評価値Cdiff[kWh]を当日から本年の最終日までの日数で除算することにより、電力削減量の目標値と実績値との差を解消するための1日当たりの電力削減量DC[kWh]を算出し、この値DC[kWh]に最も近い電力削減量の予測値Cp[kWh]が得られた省エネ運転パターンを最適な省エネ運転パターンとして選択すればよい。
【0061】
また、選択部50は、評価値算出部49によって算出された評価値Cdiff[kWh]が負、すなわち削減実績値算出部48によって算出された電力削減量の実績値Caが削減目標値算出部43によって算出された電力削減量の目標値Cspを超過している場合、電力削減量の予測値Cp[kWh]が最も小さい省エネ運転パターンを最適な省エネ運転パターンとして選択する。これにより、当日の設備の運転条件に余裕を与えることができる。
【0062】
演算装置4の出力部51は、選択部50によって選択された省エネ運転パターンと、この省エネ運転パターンによって得られる電力削減量の予測値C
pとを表示端末5に表示させる(
図3ステップS213)。
【0063】
こうして、本実施例では、管理対象の建物の当日の状況(気象条件、テナント使用率、在室人数、カレンダー情報)を予測して当日の電力削減量を予測することができ、省エネ対象期間における電力削減量の目標達成状況に応じて省エネ運転パターンを選択してユーザーに提示するので、電力削減目標値との整合性が高い電力削減量を実現可能な省エネ運転パターンをユーザーに提示することができる。
【0064】
なお、本実施例では、電力削減量の目標値を設定する省エネ対象期間を1年間としたが、1カ月でもよい。省エネ対象期間を1カ月とする場合、ユーザーがステップS200において設定値入力端末3に入力する電力削減量の目標値は、電力削減量の月間目標値となる。また、比較対象期間は例えば前年同月となる。
【0065】
演算装置4の削減目標値算出部43は、ユーザーが設定した電力削減量の月間目標値に基づいて、今月の開始日から前日までの管理対象の建物の電力削減量の目標値Cspを算出する(ステップS202)。
【0066】
削減目標値算出部43は、ユーザーが電力削減量の月間目標値として前年の同月(比較対象期間)に対する電力削減量の合計値を設定した場合、この合計値を今月の日数で割ることにより1日当たりの電力削減量の目標値を算出し、今月の開始日から前日までの1日当たりの目標値の累積値[kWh]を算出すればよい。
【0067】
また、削減目標値算出部43は、ユーザーが電力削減量の月間目標値として電力削減量の前年の同月に対する実績比[%]を設定した場合、この比率を今月の日数で割ることにより1日当たりの電力削減量の削減率を算出し、今月の開始日から前日までの1日当たりの削減率の累積値[%]を算出すればよい。
【0068】
演算装置4の削減実績値算出部48は、DB2に記憶されている比較対象期間の管理対象の建物の基準運転パターンにおける電力消費量データと本年の電力消費量データとに基づいて、今月の開始日から前日までの管理対象の建物の電力削減量の実績値Caを算出する(ステップS210)。
【0069】
削減実績値算出部48は、ユーザーが電力削減量の月間目標値として前年の同月(比較対象期間)に対する電力削減量の合計値を設定した場合、今月の開始日から前日までと同じ日数の電力消費量の合計値Ptotal0を前年の同月の管理対象の建物の基準運転パターンについて算出して、算出した合計値Ptotal0から、今月の開始日から前日までの管理対象の建物の電力消費量の合計値Ptotalを減算した値Ptotal0-Ptotalを電力削減量の実績値Ca[kWh]とすればよい。
【0070】
また、削減実績値算出部48は、ユーザーが電力削減量の年間目標値として電力削減量の前年の同月に対する実績比を設定した場合、上記のPtotal0-PtotalをPtotal0で除算した値(Ptotal0-Ptotal)/Ptotal0×100を電力削減量の実績値Ca[%]とすればよい。
【0071】
演算装置4の評価値算出部49は、削減目標値算出部43によって算出された電力削減量の目標値Cspと削減実績値算出部48によって算出された電力削減量の実績値Caとの差Cdiff=Csp-Caを、今月の開始日から前日までの省エネ達成状況を示す評価値として算出する(ステップS211)。
【0072】
その他の処理は省エネ対象期間が1年間の場合と同じである。こうして、月間の省エネ対象期間における電力削減量の目標達成状況に応じて省エネ運転パターンを選択してユーザーに提示することが可能となる。
なお、省エネ対象期間は年間や月間でなくてもよいことは言うまでもない。例えば日本の一般的な年度(4/1~3/31)と前年度を省エネ対象期間、比較対象期間としてもよく、ある月曜日を開始日とする4週間と前年同月の4週間を省エネ対象期間、比較対象期間としてもよい。
【0073】
本実施例で説明した情報取得装置1とDB2と演算装置4とは、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置及びインターフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このコンピュータの構成例を
図5に示す。
【0074】
コンピュータは、CPU200と、記憶装置201と、インターフェース装置(I/F)202とを備えている。I/F202には、BAシステム100とテナント管理システム101と入退室管理システム102とカレンダー管理システム103と気象予報システム104と設定値入力端末3と表示端末5等が接続される。このようなコンピュータにおいて、本発明のエネルギー管理方法を実現させるためのプログラムは記憶装置201に格納される。CPU200は、記憶装置201に格納されたプログラムに従って本実施例で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、建物のエネルギー消費量を管理する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1…情報取得装置、2…データ蓄積装置、3…設定値入力端末、4…演算装置、5…表示端末、10…BAデータ取得部、11…テナント情報取得部、12…入退室情報取得部、13…カレンダー情報取得部、14…気象予報データ出力部、15…テナント情報出力部、16…カレンダー情報出力部、40…モデル記憶部、41…学習部、42…省エネ運転パターン作成部、43…削減目標値算出部、44…基準運転パターン導出部、45…在室人数予測部、46…電力消費量予測部、47…削減予測値算出部、48…削減実績値算出部、49…評価値算出部、50…選択部、51…出力部、100…BAシステム、101…テナント管理システム、102…入退室管理システム、103…カレンダー管理システム、104…気象予報システム、400…電力消費量予測モデル、401…在室人数予測モデル。