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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044387
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】AD変換回路
(51)【国際特許分類】
   H03M 1/12 20060101AFI20240326BHJP
   H03M 3/02 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H03M1/12 C
H03M3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149877
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】栗林 英毅
(72)【発明者】
【氏名】近藤 浩市
(72)【発明者】
【氏名】江川 美穂
(72)【発明者】
【氏名】横木 光生
【テーマコード(参考)】
5J022
5J064
【Fターム(参考)】
5J022AA00
5J022BA10
5J022CE02
5J022CE03
5J064BA03
5J064BA06
5J064BC06
5J064BC12
5J064BC24
(57)【要約】
【課題】ADCの変換完了タイミングの時間差を所望の範囲内に抑える。
【解決手段】AD変換回路は、ΔΣ変調器300-1とデジタルフィルタ301-1を有するΔΣAD変換器200-1と、ΔΣ変調器300-2とデジタルフィルタ301-2を有するΔΣAD変換器200-2と、ΔΣAD変換器200-2の測定値取得周期毎に変換開始要求信号START_CPUを出力するCPU208と、通常モードにおいてはΔΣAD変換器200-1,200-2を非同期で動作させ、同期モードにおいては、測定値取得周期以内でΔΣAD変換器200-1による変換とΔΣAD変換器200-2による変換とが同期するようにデジタルフィルタ301-2の積算期間を設定する制御部210とを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のΔΣ変調器と第1のデジタルフィルタとを有し、第1のアナログ入力信号をデジタル信号に変換するように構成された第1のΔΣAD変換器と、
第2のΔΣ変調器と第2のデジタルフィルタとを有し、前記第1のアナログ入力信号と同一または異なる第2のアナログ入力信号をデジタル信号に変換するように構成された第2のΔΣAD変換器と、
前記第2のΔΣAD変換器の測定値取得周期毎に変換開始要求信号を前記第2のΔΣAD変換器に出力するように構成されたCPUと、
通常モードにおいては前記第1、第2のΔΣAD変換器を非同期で動作させ、前記第1、第2のΔΣAD変換器を同期させる同期モードにおいては、前記測定値取得周期以内で前記第1のΔΣAD変換器による変換と前記第2のΔΣAD変換器による変換とが同期するように前記第2のデジタルフィルタの積算期間を設定するように構成された制御部とを備えることを特徴とするAD変換回路。
【請求項2】
請求項1記載のAD変換回路において、
前記第1のΔΣAD変換器は、
前記第1のアナログ入力信号を第1の周波数のデジタル信号に変換するように構成された前記第1のΔΣ変調器と、
前記第1のΔΣ変調器から出力されたデジタル信号を、前記第1の周波数よりも低い第2の周波数のデジタル信号に変換して出力するように構成された前記第1のデジタルフィルタとから構成され、
前記第2のΔΣAD変換器は、
前記第2のアナログ入力信号を前記第1の周波数のデジタル信号に変換するように構成された前記第2のΔΣ変調器と、
前記第2のΔΣ変調器から出力されたデジタル信号を、前記第1の周波数よりも低い第3の周波数のデジタル信号に変換して出力するように構成された前記第2のデジタルフィルタとから構成されることを特徴とするAD変換回路。
【請求項3】
請求項2記載のAD変換回路において、
前記制御部は、
前記第1、第2のデジタルフィルタの積算期間を設定するように構成された信号生成部と、
前記第1のデジタルフィルタの積算期間を周期とする前記第2の周波数のクロックを前記第1のデジタルフィルタに供給するように構成された第1のタイマと、
前記第2のデジタルフィルタの積算期間を周期とする前記第3の周波数のクロックを前記第2のデジタルフィルタに供給するように構成された第2のタイマとから構成され、
前記信号生成部は、前記通常モードにおいては、前記第1、第2のデジタルフィルタの積算期間を同じ値に設定し、前記同期モードにおいては、前記測定値取得周期以内で前記第1のΔΣAD変換器による変換と前記第2のΔΣAD変換器による変換とが同期するように前記第2のデジタルフィルタの積算期間の長さとタイミングを設定することを特徴とするAD変換回路。
【請求項4】
請求項3記載のAD変換回路において、
同期モードにおいて前記第1のデジタルフィルタの1乃至複数の積算期間の長さと前記第2のデジタルフィルタの複数の積算期間の長さとが略一致することを特徴とするAD変換回路。
【請求項5】
第1のΔΣ変調器と第1のデジタルフィルタと第2のデジタルフィルタとを有し、第1のアナログ入力信号をデジタル信号に変換するように構成された第1のΔΣAD変換器と、
第2のΔΣ変調器と第3のデジタルフィルタとを有し、前記第1のアナログ入力信号と同一または異なる第2のアナログ入力信号をデジタル信号に変換するように構成された第2のΔΣAD変換器と、
前記第2のΔΣAD変換器の測定値取得周期毎に変換開始要求信号を前記第2のΔΣAD変換器に出力するように構成されたCPUと、
通常モードにおいては前記第1、第2のΔΣAD変換器を非同期で動作させ、前記第1、第2のΔΣAD変換器を同期させる同期モードにおいては、前記測定値取得周期以内で前記第1のΔΣ変調器と前記第2のデジタルフィルタによる変換と、前記第2のΔΣ変調器と前記第3のデジタルフィルタによる変換とが同期するように前記第2、第3のデジタルフィルタの積算期間を設定するように構成された制御部とを備えることを特徴とするAD変換回路。
【請求項6】
請求項5記載のAD変換回路において、
前記第1のΔΣAD変換器は、
前記第1のアナログ入力信号を第1の周波数のデジタル信号に変換するように構成された前記第1のΔΣ変調器と、
前記第1のΔΣ変調器から出力されたデジタル信号を、前記第1の周波数よりも低い第2の周波数のデジタル信号に変換して出力するように構成された前記第1のデジタルフィルタと、
前記第1のΔΣ変調器から出力されたデジタル信号を、前記第1の周波数よりも低い第3の周波数のデジタル信号に変換して出力するように構成された前記第2のデジタルフィルタとから構成され、
前記第2のΔΣAD変換器は、
前記第2のアナログ入力信号を前記第1の周波数のデジタル信号に変換するように構成された前記第2のΔΣ変調器と、
前記第2のΔΣ変調器から出力されたデジタル信号を、前記第1の周波数よりも低い第4の周波数のデジタル信号に変換して出力するように構成された前記第3のデジタルフィルタとから構成されることを特徴とするAD変換回路。
【請求項7】
請求項6記載のAD変換回路において、
前記制御部は、
前記第1、第2、第3のデジタルフィルタの積算期間を設定するように構成された信号生成部と、
前記第1のデジタルフィルタの積算期間を周期とする前記第2の周波数のクロックを前記第1のデジタルフィルタに供給するように構成された第1のタイマと、
前記第2のデジタルフィルタの積算期間を周期とする前記第3の周波数のクロックを前記第2のデジタルフィルタに供給するように構成された第2のタイマと、
前記第3のデジタルフィルタの積算期間を周期とする前記第4の周波数のクロックを前記第3のデジタルフィルタに供給するように構成された第3のタイマとから構成され、
前記信号生成部は、前記通常モードにおいては、前記第1、第3のデジタルフィルタの積算期間を同じ値に設定すると共に、前記第2のデジタルフィルタの積算期間の設定を無効にして前記第2のタイマのクロック出力を停止させ、前記同期モードにおいては、前記第2、第3のデジタルフィルタの積算期間を同じ値に設定して、前記測定値取得周期以内で前記第1のΔΣ変調器と前記第2のデジタルフィルタによる変換と、前記第2のΔΣ変調器と前記第3のデジタルフィルタによる変換とが同期するように前記第2、第3のデジタルフィルタの積算期間の長さとタイミングを設定することを特徴とするAD変換回路。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のAD変換回路において、
前記CPUは、前記変換開始要求信号と同期して前記通常モードまたは前記同期モードのいずれかを指定し、
前記制御部は、前記CPUによって指定されたモードで動作することを特徴とするAD変換回路。
【請求項9】
請求項8記載のAD変換回路において、
複数の前記第2のアナログ入力信号のうちいずれかを選択的に前記第2のΔΣAD変換器に出力するように構成されたマルチプレクサをさらに備え、
前記CPUは、前記変換開始要求信号と同期して複数の前記第2のアナログ入力信号のうちいずれかの選択を前記マルチプレクサに対して指定する制御信号を出力することを特徴とするAD変換回路。
【請求項10】
請求項9記載のAD変換回路において、
前記CPUは、複数の前記第2のアナログ入力信号を順番に指定する前記制御信号を出力し、同じアナログ入力信号を前記第1、第2のΔΣAD変換器が同期して取り込むべき順番のときに同期モードとすることを特徴とするAD変換回路。
【請求項11】
請求項1または5記載のAD変換回路において、
前記CPUは、前記第1のΔΣAD変換器に出力する変換開始要求信号を常に有意の値として、前記第2のΔΣAD変換器に出力する前記変換開始要求信号を周期的に出力し、
前記第1のΔΣAD変換器の第1のΔΣ変調器と第1のデジタルフィルタとは、前記CPUから出力された変換開始要求信号に従って連続的に変換動作を行うことを特徴とするAD変換回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AD変換回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧力発信器には、差圧(DP)センサ、高圧側の静圧(STH)センサ、低圧側の静圧(STL)センサ、温度(TEMP)センサ等の各種センサが搭載され、それらのセンサ出力のAD変換値を演算することでゲージ圧/絶対圧の測定値(PV値)を算出する。この演算に必要なDP信号については、サンプリング時のエイリアスの影響を避けるために、DP専用のAD変換器(ADC:Analog-to-Digital Converter)を用意し、常時AD変換を行う必要がある。一方、残りのSTH,STL,TEMPの各信号については、常時サンプリングが不要なため、別のADCを用意し、STH,STL,TEMPの3つの入力を切り替えながらAD変換を行うという計2チャンネルのADCを用いるシステム構成となっている。
【0003】
圧力発信器のような信頼性が求められる製品の場合、PV値算出のためのDP測定以外にも、補正用のSTH,STL,TEMP測定や、センサとADCの故障を検出するための測定も動作中に行う必要がある。そこで、上記のように2チャンネルのADCを用意して、チャンネル1のADCでDPの測定を行い、チャンネル2のADCで補正のためのSTH,STL,TEMPの測定とセンサ故障診断のためのDPの測定(チャンネル間同期不要)とADC故障診断のためのDPの測定(チャンネル間同期必要)を行うこととなる。
【0004】
ADCの故障診断を正しく行うためには、チャンネル1と同等なADC設定、かつチャンネル1とほぼ同タイミングでチャンネル2を用いてDPを測定する必要がある。チャンネル1のADCのDP取得周期を例えば50msとすると、チャンネル2のADCはその±2%の範囲内(±1ms)のタイミングでDP値を取得することが求められる。この時間制約が守れない場合、DP値に揺らぎがあったときにADCが故障していないにも関わらず、ADC故障と誤判定してしまうこととなる。
【0005】
チャンネル1のADCについては前述のとおり、エイリアスの影響を避けるために常時サンプリングが必須であるということを考慮すると、チャンネル1とチャンネル2のADC値の同期取得を行うためには、外部からADC変換開始要求を指定可能な入力端子を持つ市販ADCチップ(例えばTI社のADS1248やアナログデバイセズ社のAD7176-2)を2チップ使用する。
【0006】
そして、それぞれのチップをチャンネル1、チャンネル2とし、チャンネル2でADC診断用のDP値(DP SYNC)を取得する際はチャンネル1の変換完了割り込み信号を見て、チャンネル2の変換開始要求信号を生成する、というCPU(Central Processing Unit)による処理を行うこととなる。
【0007】
図14は従来のAD変換回路の構成を示すブロック図、図15図16はAD変換回路の動作を説明するタイミングチャートである。図16は、図15の時刻ts以降のタイミングを示している。図14図16の例では、チャンネル1のADC100-1の測定値取得周期を50ms、チャンネル2のADC100-2の測定値取得周期を180msとしている。
【0008】
CPU102は、タイマ103,104からチャンネル1用の50ms周期のタイマ割り込み信号INT_TIM_CH1とチャンネル2用の180ms周期のタイマ割り込み信号INT_TIM_CH2とを受ける。CPU102は、タイマ割り込み信号INT_TIM_CH1に応じて、変換開始要求信号START_CH1をチャンネル1のADC100-1に対して出力する。
【0009】
チャンネル1のADC100-1は、変換開始要求信号START_CH1と同期してDPセンサからDP信号を取り込み、AD変換して、変換完了時に変換完了割り込み信号INT_CH1を出力する。図15図16のADC_CH1はチャンネル1のADC100-1の出力を示している。
【0010】
また、CPU102は、タイマ割り込み信号INT_TIM_CH2に応じて、変換開始要求信号START_CH2をチャンネル2のADC100-2に対して出力する。
チャンネル2のADC100-2は、変換開始要求信号START_CH2と同期してSTHセンサ、STLセンサ、TEMPセンサ、DPセンサからSTH,STL,TEMP,DP,DP SYNCの各信号を順番に取り込み、AD変換して、変換完了時に変換完了割り込み信号INT_CH2を出力する。
【0011】
STH,STL,TEMP,DP,DP SYNCの各信号を切り替えるために、180ms周期でマルチプレクサ101の出力を切り替えるようにしている。図15図16のADC_CH2はチャンネル2のADC100-2の出力を示している。
【0012】
ここで、上記のとおり、DP信号の測定についてはセンサ故障診断のためのDP測定(チャンネル間同期不要)とADC故障診断のためのDP測定(チャンネル間同期必要)の2回が行われる。図14図16では、ADC故障診断のために取得されたDP値をDP SYNCとしている。
【0013】
CPU102は、DP SYNCを取得する際は、チャンネル1の変換完了割り込み信号INT_CH1を見て、チャンネル2の変換開始要求信号START_CH2を出力し、DP SYNCの取得タイミングをチャンネル1のDPの取得タイミングと揃える必要がある。
【0014】
しかしながら、圧力発信器は消費電流の要求が厳しいため、1MHz以下の周波数でCPUを動作させる必要があるということを考慮すると、低速のCPUの処理によってチャンネル1とチャンネル2の変換完了タイミングを±2%(±1ms)以内の時間差に抑えることは困難であった。
【0015】
また、発明者は、異なる周期で多チャンネルのAD変換が可能な多チャンネルADCを提案した(特許文献1参照)。特許文献1に開示された多チャンネルADCにおいても、チャンネル間の同期が可能であるが、各チャンネルの出力周期を、最も短い周期の整数倍にする必要があるという制約があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2018-156220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、第1のAD変換器と第2のAD変換器の変換完了タイミングの時間差を所望の範囲内に抑えることができるAD変換回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明のAD変換回路は、第1のΔΣ変調器と第1のデジタルフィルタとを有し、第1のアナログ入力信号をデジタル信号に変換するように構成された第1のΔΣAD変換器と、第2のΔΣ変調器と第2のデジタルフィルタとを有し、前記第1のアナログ入力信号と同一または異なる第2のアナログ入力信号をデジタル信号に変換するように構成された第2のΔΣAD変換器と、前記第2のΔΣAD変換器の測定値取得周期毎に変換開始要求信号を前記第2のΔΣAD変換器に出力するように構成されたCPUと、通常モードにおいては前記第1、第2のΔΣAD変換器を非同期で動作させ、前記第1、第2のΔΣAD変換器を同期させる同期モードにおいては、前記測定値取得周期以内で前記第1のΔΣAD変換器による変換と前記第2のΔΣAD変換器による変換とが同期するように前記第2のデジタルフィルタの積算期間を設定するように構成された制御部とを備えることを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明のAD変換回路の1構成例において、前記第1のΔΣAD変換器は、前記第1のアナログ入力信号を第1の周波数のデジタル信号に変換するように構成された前記第1のΔΣ変調器と、前記第1のΔΣ変調器から出力されたデジタル信号を、前記第1の周波数よりも低い第2の周波数のデジタル信号に変換して出力するように構成された前記第1のデジタルフィルタとから構成され、前記第2のΔΣAD変換器は、前記第2のアナログ入力信号を前記第1の周波数のデジタル信号に変換するように構成された前記第2のΔΣ変調器と、前記第2のΔΣ変調器から出力されたデジタル信号を、前記第1の周波数よりも低い第3の周波数のデジタル信号に変換して出力するように構成された前記第2のデジタルフィルタとから構成されることを特徴とするものである。
また、本発明のAD変換回路の1構成例において、前記制御部は、前記第1、第2のデジタルフィルタの積算期間を設定するように構成された信号生成部と、前記第1のデジタルフィルタの積算期間を周期とする前記第2の周波数のクロックを前記第1のデジタルフィルタに供給するように構成された第1のタイマと、前記第2のデジタルフィルタの積算期間を周期とする前記第3の周波数のクロックを前記第2のデジタルフィルタに供給するように構成された第2のタイマとから構成され、前記信号生成部は、前記通常モードにおいては、前記第1、第2のデジタルフィルタの積算期間を同じ値に設定し、前記同期モードにおいては、前記測定値取得周期以内で前記第1のΔΣAD変換器による変換と前記第2のΔΣAD変換器による変換とが同期するように前記第2のデジタルフィルタの積算期間の長さとタイミングを設定することを特徴とするものである。
また、本発明のAD変換回路の1構成例は、同期モードにおいて前記第1のデジタルフィルタの1乃至複数の積算期間の長さと前記第2のデジタルフィルタの複数の積算期間の長さとが略一致することを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明のAD変換回路は、第1のΔΣ変調器と第1のデジタルフィルタと第2のデジタルフィルタとを有し、第1のアナログ入力信号をデジタル信号に変換するように構成された第1のΔΣAD変換器と、第2のΔΣ変調器と第3のデジタルフィルタとを有し、前記第1のアナログ入力信号と同一または異なる第2のアナログ入力信号をデジタル信号に変換するように構成された第2のΔΣAD変換器と、前記第2のΔΣAD変換器の測定値取得周期毎に変換開始要求信号を前記第2のΔΣAD変換器に出力するように構成されたCPUと、通常モードにおいては前記第1、第2のΔΣAD変換器を非同期で動作させ、前記第1、第2のΔΣAD変換器を同期させる同期モードにおいては、前記測定値取得周期以内で前記第1のΔΣ変調器と前記第2のデジタルフィルタによる変換と、前記第2のΔΣ変調器と前記第3のデジタルフィルタによる変換とが同期するように前記第2、第3のデジタルフィルタの積算期間を設定するように構成された制御部とを備えることを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明のAD変換回路の1構成例において、前記第1のΔΣAD変換器は、前記第1のアナログ入力信号を第1の周波数のデジタル信号に変換するように構成された前記第1のΔΣ変調器と、前記第1のΔΣ変調器から出力されたデジタル信号を、前記第1の周波数よりも低い第2の周波数のデジタル信号に変換して出力するように構成された前記第1のデジタルフィルタと、前記第1のΔΣ変調器から出力されたデジタル信号を、前記第1の周波数よりも低い第3の周波数のデジタル信号に変換して出力するように構成された前記第2のデジタルフィルタとから構成され、前記第2のΔΣAD変換器は、前記第2のアナログ入力信号を前記第1の周波数のデジタル信号に変換するように構成された前記第2のΔΣ変調器と、前記第2のΔΣ変調器から出力されたデジタル信号を、前記第1の周波数よりも低い第4の周波数のデジタル信号に変換して出力するように構成された前記第3のデジタルフィルタとから構成されることを特徴とするものである。
また、本発明のAD変換回路の1構成例において、前記制御部は、前記第1、第2、第3のデジタルフィルタの積算期間を設定するように構成された信号生成部と、前記第1のデジタルフィルタの積算期間を周期とする前記第2の周波数のクロックを前記第1のデジタルフィルタに供給するように構成された第1のタイマと、前記第2のデジタルフィルタの積算期間を周期とする前記第3の周波数のクロックを前記第2のデジタルフィルタに供給するように構成された第2のタイマと、前記第3のデジタルフィルタの積算期間を周期とする前記第4の周波数のクロックを前記第3のデジタルフィルタに供給するように構成された第3のタイマとから構成され、前記信号生成部は、前記通常モードにおいては、前記第1、第3のデジタルフィルタの積算期間を同じ値に設定すると共に、前記第2のデジタルフィルタの積算期間の設定を無効にして前記第2のタイマのクロック出力を停止させ、前記同期モードにおいては、前記第2、第3のデジタルフィルタの積算期間を同じ値に設定して、前記測定値取得周期以内で前記第1のΔΣ変調器と前記第2のデジタルフィルタによる変換と、前記第2のΔΣ変調器と前記第3のデジタルフィルタによる変換とが同期するように前記第2、第3のデジタルフィルタの積算期間の長さとタイミングを設定することを特徴とするものである。
【0022】
また、本発明のAD変換回路の1構成例において、前記CPUは、前記変換開始要求信号と同期して前記通常モードまたは前記同期モードのいずれかを指定し、前記制御部は、前記CPUによって指定されたモードで動作することを特徴とするものである。
また、本発明のAD変換回路の1構成例は、複数の前記第2のアナログ入力信号のうちいずれかを選択的に前記第2のΔΣAD変換器に出力するように構成されたマルチプレクサをさらに備え、前記CPUは、前記変換開始要求信号と同期して複数の前記第2のアナログ入力信号のうちいずれかの選択を前記マルチプレクサに対して指定する制御信号を出力することを特徴とするものである。
また、本発明のAD変換回路の1構成例において、前記CPUは、複数の前記第2のアナログ入力信号を順番に指定する前記制御信号を出力し、同じアナログ入力信号を前記第1、第2のΔΣAD変換器が同期して取り込むべき順番のときに同期モードとすることを特徴とするものである。
また、本発明のAD変換回路の1構成例において、前記CPUは、前記第1のΔΣAD変換器に出力する変換開始要求信号を常に有意の値として、前記第2のΔΣAD変換器に出力する前記変換開始要求信号を周期的に出力し、前記第1のΔΣAD変換器の第1のΔΣ変調器と第1のデジタルフィルタとは、前記CPUから出力された変換開始要求信号に従って連続的に変換動作を行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、第1、第2のΔΣAD変換器を同期させる同期モードにおいて、測定値取得周期以内で第1のΔΣAD変換器による変換と第2のΔΣAD変換器による変換とが同期するように第2のデジタルフィルタの積算期間を設定する制御部を設けることにより、低速のCPUを使用する場合でも、第1のAD変換器と第2のAD変換器の変換完了タイミングの時間差を所望の範囲内に抑えることができる。また、本発明では、チャンネル間の出力周期の制約を無くすことができる。
【0024】
また、本発明では、第1のΔΣ変調器と第1のデジタルフィルタと第2のデジタルフィルタとを有する第1のΔΣAD変換器と、第2のΔΣ変調器と第3のデジタルフィルタとを有する第2のΔΣAD変換器と、第1、第2のΔΣAD変換器を同期させる同期モードにおいて、測定値取得周期以内で第1のΔΣ変調器と第2のデジタルフィルタによる変換と、第2のΔΣ変調器と第3のデジタルフィルタによる変換とが同期するように第2、第3のデジタルフィルタの積算期間を設定する制御部とを設けることにより、低速のCPUを使用する場合でも、第1のAD変換器と第2のAD変換器の変換完了タイミングの時間差を所望の範囲内に抑えることができる。また、本発明では、チャンネル間の出力周期の制約を無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本発明の第1の実施例に係るAD変換回路の構成を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の第1の実施例に係るAD変換回路の動作を説明するタイミングチャートである。
図3図3は、本発明の第1の実施例に係るAD変換回路の動作を説明するタイミングチャートである。
図4図4は、本発明の第1の実施例に係るΔΣADCのデジタルフィルタの構成例を示すブロック図である。
図5図5は、本発明の第1の実施例に係るΔΣADCのデジタルフィルタの構成例を示すブロック図である。
図6図6は、AD変換回路の参考例の構成を示すブロック図である。
図7図7は、図6のAD変換回路の動作を説明するタイミングチャートである。
図8図8は、図6のAD変換回路の動作を説明するタイミングチャートである。
図9図9は、本発明の第2の実施例に係るAD変換回路の動作を説明するタイミングチャートである。
図10図10は、本発明の第2の実施例に係るAD変換回路の動作を説明するタイミングチャートである。
図11図11は、本発明の第3の実施例に係るAD変換回路の構成を示すブロック図である。
図12図12は、本発明の第3の実施例に係るAD変換回路の動作を説明するタイミングチャートである。
図13図13は、本発明の第3の実施例に係るAD変換回路の動作を説明するタイミングチャートである。
図14図14は、従来のAD変換回路の構成を示すブロック図である。
図15図15は、従来のAD変換回路の動作を説明するタイミングチャートである。
図16図16は、従来のAD変換回路の動作を説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[第1の実施例]
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施例に係るAD変換回路の構成を示すブロック図である。本実施例のAD変換回路は、図示しないDPセンサから出力されるDP信号(第1のアナログ入力信号)をデジタル信号に変換するチャンネル1のΔΣADC200-1と、図示しないSTHセンサ、STLセンサ、TEMPセンサ、DPセンサから出力されたSTH信号、STL信号、TEMP信号、DP信号のうちいずれかの信号(第2のアナログ入力信号)をデジタル信号に変換するチャンネル2のΔΣADC200-2と、STH信号、STL信号、TEMP信号、DP信号のうちいずれかを選択的にΔΣADC200-2に出力するマルチプレクサ201とを備えている。
【0027】
さらに、AD変換回路は、CPUとの接続のためのインタフェース部(SPI_IF)202と、ΔΣADC200-1,200-2のリセット信号RST_CH1,RST_CH2を出力し、ΔΣADC200-1,200-2のデジタルフィルタの積算期間を設定する信号生成部(STATE_CTRL)203と、CPUから出力された変換開始要求信号とSTATE_CTRL203から出力された変換開始要求信号のうちいずれかを選択的にΔΣADC200-2に出力するマルチプレクサ204と、STATE_CTRL203からの設定により、ΔΣADC200-1のデジタルフィルタの積算期間を周期とするクロックDECIM_CH1をΔΣADC200-1に供給するタイマ205と、STATE_CTRL203からの設定により、ΔΣADC200-2のデジタルフィルタの積算期間を周期とするクロックDECIM_CH2をΔΣADC200-2に供給するタイマ206と、MCU(Micro Control Unit)207とから構成される。
【0028】
STATE_CTRL203とマルチプレクサ204とタイマ205,206とは、制御部210を構成している。
MCU207は、ΔΣADC200-1,200-2の起動/停止制御、およびΔΣADC200-1,200-2の変換結果読み出しを行うCPU208と、チャンネル2の起動間隔計測を行うタイマ209とを備えている。CPU208は、内部のメモリに格納されたプログラムに従って本実施例の処理を実行する。
【0029】
図2図3は本実施例のAD変換回路の動作を説明するタイミングチャートである。なお、図3は、図2の時刻ts以降のタイミングを示している。
本実施例では、ΔΣADC200-1,200-2とMCU207とを接続するシリアルバスとしてSPI(Serial Peripheral Interface)を用いているが、IC等の他のシリアルバスを用いてもよい。また、ΔΣADC200-1,200-2とMCU207を1チップ化する場合はSPIやICではなく、例えばArm社が定めたAMBA(Advanced Microcontroller Bus Architecture)などの内部バス(Internal BUS)を用いて接続すればよい。
【0030】
本実施例では、チャンネル1のΔΣADC200-1の測定値取得周期を50ms、チャンネル2のΔΣADC200-2の測定値取得周期を180msとしている。
【0031】
ΔΣADC200-1は、アナログのDP信号をオーバーサンプリング(本実施例では40.96kH)してAD変換するΔΣ変調器300-1と、ΔΣ変調器300-1の出力信号のうち信号周波数帯域のみを通過させることにより、ΔΣ変調器300-1の量子化ノイズを除去したデジタル信号を出力するデジタルフィルタ301-1とから構成される。
【0032】
同様に、ΔΣADC200-2は、アナログの入力信号(STH信号、STL信号、TEMP信号、DP信号のうちいずれか1つ)をオーバーサンプリングしてAD変換するΔΣ変調器300-2と、ΔΣ変調器300-2の出力信号のうち信号周波数帯域のみを通過させることにより、ΔΣ変調器300-2の量子化ノイズを除去したデジタル信号を出力するデジタルフィルタ301-2とから構成される。
【0033】
図4図5はデジタルフィルタ301-1の構成例を示すブロック図である。ΔΣADC用のデジタルフィルタはSINCフィルタまたはCICフィルタと呼ばれており、3次のSINCフィルタの構成は図4のようになる。また、4次のSINCフィルタの構成は図5のようになる。
【0034】
デジタルフィルタ301-1は、ΔΣ変調器300-1に入力されるオーバーサンプリング用のクロックCLK(サンプリング周波数f=40.96kH)で動作し、ΔΣ変調器300-1から出力されたデータINを1サンプル毎に積算する複数段縦続接続構成の積算計算部302と、クロックCLKの1/N(Nは2以上の整数)の周波数のクロック(サンプリング周波数f=f/N)で動作し、最終段の積算計算部302から出力されたサンプリング周波数fのデータをサンプリング周波数fで間引く周波数変換部303と、サンプリング周波数fのクロックで動作し、周波数変換部303から出力されたデータから1サンプル前のデータを減算する複数段縦続接続構成の差分計算部304とから構成される。
【0035】
各積算計算部302は、積算計算部302に入力されるサンプリング周波数fのデータと1サンプル前の積算結果とを加算する加算部306と、加算部306から出力される積算結果を1サンプル分(サンプリング周波数fのクロックCLKの周期分)だけ遅延させて加算部306に入力する遅延部307とから構成される。こうして、各積算計算部302は、積算計算部302に入力されるデータをサンプリング周波数fのクロック毎に積算する。
【0036】
周波数変換部303は、サンプリング周波数fのクロックと同期してオンしデータを間引き(ダウンサンプリング)することにより、最終段の積算計算部302から出力されたサンプリング周波数fのデータをサンプリング周波数fのデータに変換する。
【0037】
各差分計算部304は、差分計算部304に入力されるサンプリング周波数fのデータを1サンプル分(サンプリング周波数fのクロックの周期分)だけ遅延させる遅延部308と、差分計算部304に入力されるデータから遅延部308の出力データを減算する減算部309とから構成される。こうして、各差分計算部304は、差分計算部304に入力されるデータから1サンプル前のデータを減算する。
【0038】
以上のようなデジタルフィルタを用いたΔΣADCについては、例えば文献「H.Kuribayashi and T.Kajita,“Area-Efficient Decimation Filter with 50/60 Hz Power-Line Noise Suppression for ΔΣ A/D Converters”,SICE Journal of Control,Measurement,and System Integration,Vol.10,No.3,pp.165-169,2017」に開示されている。
【0039】
図4図5の例では、デジタルフィルタ301-1の構成を示しているが、デジタルフィルタ301-2の構成もデジタルフィルタ301-1と同様である。
図4図5のとおり、SINCフィルタには、サンプリング周波数f=f/Nのクロックで動作する遅延部308が存在する。このため、図4に示した3次のSINCフィルタの場合、出力データレイテンシはサンプリング周波数fのクロック周期×N×3となる。図5に示した4次のSINCフィルタの場合、出力データレイテンシはサンプリング周波数fのクロック周期×N×4となる。4次のSINCフィルタの方が回路面積が大きくなるが、4次のSINCフィルタの方が急峻なローパス特性を得ることができる。
【0040】
なお、図4図5では、オーバーサンプリング用のクロックCLKをN分周してサンプリング周波数f=f/Nのクロックを生成する構成が記載されているが、後述のように本実施例では、サンプリング周波数fのクロックがタイマ205,206から供給される。
【0041】
MCU207のタイマ209は、チャンネル2用の180ms周期のタイマ割り込み信号INT_TIMをCPU208に出力する。
【0042】
CPU208は、変換開始要求信号START_CH1を出力する。CPU208は、図2図3に示すように、変換開始要求信号START_CH1を常時、有意の値である“High”に保つ。このように、変換開始要求信号START_CH1を常に“High”に保つことにより、CPU208の負荷を下げることができる。
【0043】
ΔΣADC200-1は、変換開始要求信号START_CH1が“High”である限りAD変換を実行し続け、変換開始要求信号START_CH1が“Low”になると、現在実行中のAD変換の変換終了後に停止する。
また、CPU208は、180ms周期のタイマ割り込み信号INT_TIMに応じて変換開始要求信号START_CPUを出力する。
【0044】
チャンネル1のΔΣADC200-1については、STATE_CTRL203は、最初の起動時に変換開始要求信号START_CH1が“High”になったときに、リセット信号RST_CH1を“High”にする。リセット信号RST_CH1が“High”になると、ΔΣADC200-1のΔΣ変調器300-1を構成する積分器がリセットされると共に、デジタルフィルタ301-1の遅延部(フリップフロップ)307,308がリセットされる。リセット信号RST_CH1が“Low”になると、ΔΣADC200-1は、リセットモードから解除され、データの変換が可能になる。
【0045】
STATE_CTRL203は、リセット信号RST_CH1が“Low”になり、ΔΣADC200-1がリセットモードから解除されたときを起点として、タイマ205に対してΔΣADC200-1のデジタルフィルタ301-1の積算期間を設定する。積算期間が長ければ長いほど、急峻なローパスフィルタの特性を得ることができる。ここでは、積算期間とは、上記のサンプリング周波数f=f/Nの逆数である。
【0046】
本実施例では、チャンネル1のデジタルフィルタ301-1の積算期間を50ms(N=2048)としている。STATE_CTRL203からの設定により、タイマ205は、リセット信号RST_CH1が“Low”になったときから、50ms毎にサンプリング周波数f(=40.96kHz/2048)のクロックDECIM_CH1をΔΣADC200-1に出力する。
【0047】
本実施例では、ΔΣADC200-1のデジタルフィルタ301-1として、図4に示した3次のSINCフィルタを採用している。3次のSINCフィルタの出力データレイテンシはサンプリング周波数fのクロック周期×N×3である。したがって、ΔΣADC200-1は、リセット信号RST_CH1が“Low”になった後に、クロックDECIM_CH1の3つ目のパルスを受信した時点からAD変換の結果を出力することが可能になる。
【0048】
ΔΣADC200-1は、図示しないDPセンサからDP信号を取り込み、DP信号をAD変換して、AD変換の結果をクロックDECIM_CH1と同期して出力する。図2図3のADC_CH1[23:0]はΔΣADC200-1の24ビット出力を示している。
【0049】
STATE_CTRL203は、リセット信号RST_CH1が“Low”になった後の、クロックDECIM_CH1の3つ目以降のパルスと同期して変換完了時に変換完了割り込み信号INT_CH1をCPU208に出力する。
【0050】
また、CPU208は、タイマ209からのタイマ割り込み信号INT_TIMと同期してSTH,STL,DPの各信号が順番にAD変換されるように、SPI_IF202を介してマルチプレクサ制御信号START_SELとマルチプレクサ制御信号MUX_SELとを出力する。
【0051】
具体的には、CPU208は、STH,STL,DP(チャンネル間同期不要)のいずれかの信号を取り込むモード、すなわちチャンネル1のΔΣADC200-1とチャンネル2のΔΣADC200-2とを同期させる必要がない通常モード(Normal Mode)のタイミングでは、変換開始要求信号START_CPUと同期してマルチプレクサ制御信号START_SELを“Low”に設定し、STH,STL,DPのいずれかの選択対象を指定するマルチプレクサ制御信号MUX_SELを出力する。
【0052】
このとき、CPU208は、変換開始要求信号START_CPUと同期してマルチプレクサ制御信号MUX_SELによる指定をSTH→STL→DP(チャンネル間同期必要)→DP(チャンネル間同期不要)→STH→・・・・・の順に切り替える。
【0053】
マルチプレクサ204は、CPU208からSPI_IF202を介して出力されたマルチプレクサ制御信号START_SELが“Low”の場合、CPU208から出力された変換開始要求信号START_CPUを変換開始要求信号START_CH2として出力する。ΔΣADC200-2は、変換開始要求信号START_CH2が“High”になる度に起動してAD変換を実行し、変換開始要求信号START_CH2が“Low”になると、現在実行中のAD変換の変換終了後に停止する。
【0054】
マルチプレクサ201は、CPU208からSPI_IF202を介して出力されたマルチプレクサ制御信号MUX_SELに応じて、STH,STL,DPの各信号のうちいずれか1つを選択してΔΣADC200-2に出力する。
【0055】
チャンネル2のΔΣADC200-2については、マルチプレクサ201による入力の切り替えが行われるため、信号を取り込む前にΔΣADC200-2をリセットする必要がある。
そこで、STATE_CTRL203は、CPU208から出力された変換開始要求信号START_CPUに応じてリセット信号RST_CH2を“High”にする。リセット信号RST_CH2が“High”になると、ΔΣADC200-2のΔΣ変調器300-2を構成する積分器がリセットされると共に、デジタルフィルタ301-2の遅延部(フリップフロップ)307,308がリセットされる。リセット信号RST_CH2が“Low”になると、ΔΣADC200-2は、リセットモードから解除され、データの変換が可能になる。
【0056】
チャンネル1のΔΣADC200-1については、常にDP信号を変換するので、STATE_CTRL203は、上記のように最初の起動時のみリセット信号RST_CH1を“High”にすればよい。本実施例では、リセット信号RST_CH1,RST_CH2のアサート期間を1msとしている。
【0057】
STATE_CTRL203は、リセット信号RST_CH2が“Low”になり、ΔΣADC200-2がリセットモードから解除されたときを起点として、タイマ206に対してΔΣADC200-2のデジタルフィルタ301-2の積算期間を設定する。
【0058】
本実施例では、通常モード(Normal Mode)におけるチャンネル2のデジタルフィルタ301-2の積算期間を50ms(N=2048)としている。STATE_CTRL203からの設定により、タイマ206は、リセット信号RST_CH2が“Low”になったときから、50ms毎にサンプリング周波数f(=40.96kHz/2048)のクロックDECIM_CH2をΔΣADC200-2に出力する。
【0059】
本実施例では、ΔΣADC200-2のデジタルフィルタ301-2として、図4に示した3次のSINCフィルタを採用している。3次のSINCフィルタの出力データレイテンシはサンプリング周波数fのクロック周期×N×3である。したがって、ΔΣADC200-2は、リセット信号RST_CH2が“Low”になった後に、クロックDECIM_CH2の3つ目のパルスを受信した時点からAD変換の結果を出力することが可能になる。
【0060】
ΔΣADC200-2は、STH,STL,DPの各信号のうちいずれか1つをマルチプレクサ201を介して取り込み、信号をAD変換して、AD変換の結果をクロックDECIM_CH2と同期して出力する。図2図3のADC_CH2[23:0]はΔΣADC200-2の24ビット出力を示している。なお、図2では、記載を簡略にするため、STL信号の取り込み例のみを記載している。
【0061】
STATE_CTRL203は、リセット信号RST_CH2が“Low”になった後の、クロックDECIM_CH2の3つ目以降のパルスと同期して変換完了時に変換完了割り込み信号INT_CH2をCPU208に出力する。
【0062】
次に、CPU208は、図3に示すように、DP SYNCを取り込むモード、すなわちチャンネル1のΔΣADC200-1とチャンネル2のΔΣADC200-2とを同期させる必要がある同期モード(Sync Mode)のタイミングでは、変換開始要求信号START_CPUと同期してマルチプレクサ制御信号START_SELを“High”に設定し、DPを選択対象として指定するマルチプレクサ制御信号MUX_SELを出力する。
【0063】
STATE_CTRL203は、CPU208からSPI_IF202を介して出力されるマルチプレクサ制御信号START_SELが“High”のときにCPU208から変換開始要求信号START_CPUを受け取ると、チャンネル1のΔΣADC200-1のクロックDECIM_CH1と同期して変換開始要求信号START_STを生成する。クロックDECIM_CH1は、STATE_CTRL203からの設定によって生成されるので、クロックDECIM_CH1と同期して変換開始要求信号START_STを“High”にすることが可能である。
【0064】
CPU208は、STATE_CTRL203から変換開始要求信号START_STが出力された時点で、マルチプレクサ制御信号START_SELを“High”から“Low”に戻す。
【0065】
STATE_CTRL203は、マルチプレクサ制御信号START_SELが“High”の場合、CPU208から変換開始要求信号START_CPUが出力され、リセット信号RST_CH2が“Low”になった後に、ΔΣADC200-1による変換とΔΣADC200-2による変換とが同期するように、タイマ206に対してΔΣADC200-2のデジタルフィルタ301-2の積算期間の長さとタイミングを設定する。STATE_CTRL203は、マルチプレクサ制御信号START_SELが“High”になったことをSPI_IF202を通じて検出できる。
【0066】
本実施例では、同期モード(Sync Mode)におけるチャンネル2のデジタルフィルタ301-2の積算期間を33.3ms(N=1364)としている。STATE_CTRL203からの設定により、タイマ206は、変換開始要求信号START_STが“High”になったときから、33.3ms毎にサンプリング周波数f(=40.96kHz/1364)のクロックDECIM_CH2をΔΣADC200-2に出力する。
【0067】
上記のとおり、ΔΣADC200-2は、リセット信号RST_CH2が“Low”になった後に、クロックDECIM_CH2の3つ目のパルスを受信した時点からAD変換の結果を出力することが可能になる。
【0068】
マルチプレクサ204は、CPU208からSPI_IF202を介して出力されたマルチプレクサ制御信号START_SELが“High”の場合、STATE_CTRL203から出力された変換開始要求信号START_STを変換開始要求信号START_CH2として出力する。
【0069】
マルチプレクサ201は、CPU208からSPI_IF202を介して出力されたマルチプレクサ制御信号MUX_SELに応じてDP信号を選択してΔΣADC200-2に出力する。
【0070】
ΔΣADC200-2は、DP信号をマルチプレクサ201を介して取り込み、信号をAD変換して、AD変換の結果をクロックDECIM_CH2と同期して出力する。
STATE_CTRL203は、リセット信号RST_CH2が“Low”になった後の、クロックDECIM_CH2の3つ目以降のパルスと同期して変換完了時に変換完了割り込み信号INT_CH2をCPU208に出力する。
【0071】
以上の動作により、本実施例では、STH→STL→DP SYNC→DP→STH→・・・・・の順に取得され、AD変換される。
マルチプレクサ制御信号MUX_SELがSTH,STLを指定する期間の長さはそれぞれ180ms(INT_TIM,START_CPUの周期)である。一方、DP信号については2回続けて取り込む必要があるため、図3から分かるように、マルチプレクサ制御信号MUX_SELがDPを指定する期間の長さは2×180msである。
【0072】
圧力発信器では、DP信号の高精度取得が求められるため、チャンネル1に関してはデジタルフィルタ301-1の積算期間を長くすることによって対応している。しかし、同期モードにおけるDP信号の取得は故障診断が目的であるため、高精度のAD変換結果は要求されない。そこで、本実施例では、同期モードにおけるチャンネル2のデジタルフィルタ301-2の積算期間を33.3ms(N=1364)とし、通常モードにおけるデジタルフィルタ301-2の積算期間を50ms(N=2048)としている。
【0073】
これにより、同期モードにおけるΔΣADC200-2の出力データレイテンシを100ms(≒33.3ms×3)とすることができるので、チャンネル1のクロックDECIM_CH1と同期して変換開始要求信号START_STを“High”にし、変換開始要求信号START_STを“High”にしたときから、33.3ms毎にクロックDECIM_CH2のパルスをΔΣADC200-2に出力すれば、図3の破線部400のタイミングで示すように、同期モードにおいてΔΣADC200-1とΔΣADC200-2の変換完了タイミングを同期させることができ、ΔΣADC200-1とΔΣADC200-2の変換完了タイミングの時間差を所望の範囲内(例えば±1ms)に抑えることができる。また、本実施例では、特許文献1に開示された多チャンネルADCのようなチャンネル間の出力周期の制約を無くすことができる。
【0074】
発明者は、第1のADCと第2のADCの変換完了タイミングの時間差を所望の範囲内に抑えることができるAD変換回路を過去に提案した(特願2021-119469)。このAD変換回路の構成を図6に示す。図7図8図6のAD変換回路の動作を説明するタイミングチャートである。図8は、図7の時刻ts以降のタイミングを示している。
【0075】
ADC212-1は、予め指定された出力データレート(50ms)でDP信号のAD変換結果を出力し続ける。
一方、ADC212-2は、マルチプレクサ204から出力された変換開始要求信号START_CH2と同期してSTH信号、STL信号、DP信号のうちいずれかをマルチプレクサ201を介して取り込み、信号をAD変換する。
【0076】
図6のAD変換回路では、通常モードにおいては、変換開始要求信号START_CPUをマルチプレクサ204を介してADC212-2へ伝送し、同期モードにおいてはADC212-1とADC212-2とが同期するように、変換開始要求信号START_STをADC212-2へ伝送する。
【0077】
図6のAD変換回路では、ΔΣADCの使用を想定していないが、AD変換回路を圧力発信器に適用することを考えると、高精度でAD変換が可能なΔΣADCを採用することが望ましい。しかしながら、ADC212-1,ADC212-2としてΔΣADCを用いた場合、DP SYNC値のデータ出力レイテンシがワーストケースで200msとなり、想定しているチャンネル2の測定周期である180msを超えてしまう。
【0078】
例えば図8の例では、DP SYNCの取得に180ms以上の時間がかかってしまい、図8の破線部401で示すようにDP SYNCの取得前に次の変換開始要求信号START_CPUをCPU208から受信してしまうため、次のDP信号のAD変換開始前までにDP SYNCの取得が完了しない。
【0079】
一方、本実施例では、同期モードにおけるチャンネル2のデジタルフィルタ301-2の積算期間を33.3msに設定することにより、DP SYNC値取得時のΔΣADC200-2のデータ出力レイテンシを100msに収めることができるので、CPU208からのチャンネル2のAD変換要求タイミング(START_CPU)によらず、チャンネル2の取得周期である180ms以内でのDP SYNC値の取得を実現することができる。その結果、本実施例では、DP SYNC値生成のためのデジタルフィルタ処理実行中に次の変換開始要求信号START_CPUを受け付けてしまう、という事象を防ぐことができる。
【0080】
本実施例では、STH→STL→DP SYNC→DP→STH→・・・・・の順に取得してAD変換する例で説明しているが、従来技術と同様に通常モードにおけるチャンネル2の選択対象としてTEMPを加えてもよい。また、STH,STL,TEMP,DP,DP SYNC以外にもチャンネル2で取得したい信号がある場合には、適宜追加することができる。また、逆に取得不要な信号を減らすことも可能である。例えば本実施例では、静圧センサの信号をSTH,STLの2つ取得しているが、1つでも問題ない。
【0081】
[第2の実施例]
第1の実施例では、同期モードにおけるチャンネル2のデジタルフィルタ301-2の積算期間を33.3ms(N=1364)に設定することにより、DP SYNC値取得時のΔΣADC200-2のデータ出力レイテンシを100msとしたが、第1の実施例の構成においてSTATE_CTRL203は、同期モードにおけるデジタルフィルタ301-2の積算期間を16.6ms(N=682)に設定してもよい。これにより、DP SYNC値取得時のΔΣADC200-2のデータ出力レイテンシを50ms(≒16.6ms×3)とすることが可能である。この場合の動作を図9図10に示す。図10は、図9の時刻ts以降のタイミングを示している。
【0082】
同期モードにおけるデジタルフィルタ301-2の積算期間を16.6ms(N=682)に設定し、チャンネル1のクロックDECIM_CH1と同期して変換開始要求信号START_STを“High”にし、変換開始要求信号START_STを“High”にしたときから、16.6ms毎にクロックDECIM_CH2のパルスをΔΣADC200-2に出力すると、図10の破線部402のタイミングで示すように、同期モードにおいてΔΣADC200-1とΔΣADC200-2の変換完了タイミングを同期させることができる。
【0083】
本実施例では、DP Sync値取得時のΔΣADC200-2のデータ出力レイテンシをワーストケースで100msとすることができる。つまり、本実施例では、180msとしていたチャンネル2のΔΣADC200-2の測定値取得周期をさらに短くし、チャンネル2の実行可能回数を増やすことができる。
【0084】
第1の実施例では、STH→STL→DP SYNC→DP→STH→・・・・・の順に取得してAD変換する例で説明しているが、本実施例では、ΔΣADC200-2の測定値取得周期を短くできるため、通常モードにおけるチャンネル2の選択対象としてTEMPを加えることが容易になる。
【0085】
また、ΔΣADC200-2の測定値取得周期を短くすることができれば、ΔΣADC200-2での変換対象(マルチプレクサ201への入力信号)をさらに増やすことが可能である。例えば、マルチプレクサ201の入力としてADCのリファレンス電圧を接続し、リファレンス電圧をAD変換すれば、マルチプレクサ201やΔΣADC200-2の故障診断に使用することができる。この場合は、期待値が明らかなリファレンス電圧をAD変換することになるので、取得したAD変換結果と期待値とを比較することで、マルチプレクサ201やΔΣADC200-2の故障診断を行うことができる。
【0086】
[第3の実施例]
次に、本発明の第3の実施例について説明する。図11は本発明の第3の実施例に係るAD変換回路の構成を示すブロック図である。本実施例のAD変換回路は、ΔΣADC200a-1と、ΔΣADC200-2と、マルチプレクサ201と、インタフェース部(SPI_IF)202と、信号生成部(STATE_CTRL)203aと、タイマ205,タイマ206と、MCU207と、STATE_CTRL203aからの設定により、ΔΣADC200-1の第2のデジタルフィルタの積算期間を周期とするクロックDECIM_CH1_SYNCをΔΣADC200-1に供給するタイマ211とから構成される。
STATE_CTRL203aとタイマ205,206,211とは、制御部210aを構成している。
【0087】
図12図13は本実施例のAD変換回路の動作を説明するタイミングチャートである。なお、図13は、図12の時刻ts以降のタイミングを示している。
図11図13の変換開始要求信号START_CH2は、第1の実施例で説明した変換開始要求信号START_CPUと同じ信号である。
【0088】
本実施例のチャンネル1のΔΣADC200a-1は、ΔΣ変調器300-1とデジタルフィルタ301-1に加えて、同期取得用のデジタルフィルタ310を備えている。
デジタルフィルタ310は、デジタルフィルタ301-1と同様に、ΔΣ変調器300-1の出力信号のうち信号周波数帯域のみを通過させることにより、ΔΣ変調器300-1の量子化ノイズを除去したデジタル信号を出力する。デジタルフィルタ301-1との違いは、タイマ211から供給されるクロックDECIM_CH1_SYNCによって動作することと、チャンネル2のリセット信号RST_CH2によってリセットされることである。
【0089】
通常モードにおけるAD変換回路の動作は、第1の実施例と同様なので、詳細な説明は省略する。ただし、通常モードにおいてSTATE_CTRL203aは、タイマ211に対するデジタルフィルタ310の積算期間の設定を無効とする。したがって、通常モードにおいてはタイマ211からクロックDECIM_CH1_SYNCが出力されないので、デジタルフィルタ301-1からAD変換結果が出力されることはない。
【0090】
図11図13のADC_CH1_SYNC[23:0]はデジタルフィルタ310の24ビット出力を示している。ADC_CH1[23:0]は、第1の実施例と同様にデジタルフィルタ301-1の24ビット出力を示している。
【0091】
次に、STATE_CTRL203aは、第1の実施例と同様にCPU208から出力された変換開始要求信号START_CH2(START_CPU)に応じてリセット信号RST_CH2を“High”にする。リセット信号RST_CH2が“High”になると、ΔΣADC200-2のΔΣ変調器300-2を構成する積分器がリセットされると共に、デジタルフィルタ301-2,310の遅延部(フリップフロップ)307,308がリセットされる。
【0092】
そして、STATE_CTRL203aは、同期モードのときにリセット信号RST_CH2が“Low”になり、デジタルフィルタ301-2,310がリセットモードから解除されたときを起点として、ΔΣ変調器300-1とデジタルフィルタ310による変換と、ΔΣ変調器300-2とデジタルフィルタ301-2による変換とが同期するように、タイマ206,211に対してデジタルフィルタ301-2,310の積算期間の長さとタイミングを設定する。STATE_CTRL203aからの設定によるタイマ205の動作は、第1の実施例と同じである。同期モードか通常モードかは、SPI_IF202を通じたCPU208からの通知により確認できる。
【0093】
本実施例では、デジタルフィルタ301-1,301-2,310の積算期間を全て50ms(N=2048)としている。STATE_CTRL203aからの設定により、タイマ206,211は、同期モードにおいてリセット信号RST_CH2が“Low”になったときから、50ms毎にサンプリング周波数f(=40.96kHz/2048)のクロックDECIM_CH2,DECIM_CH1_SYNCをデジタルフィルタ301-2,310に出力する。
【0094】
本実施例では、デジタルフィルタ310として、図4に示した3次のSINCフィルタを採用している。3次のSINCフィルタの出力データレイテンシはサンプリング周波数fのクロック周期×N×3である。したがって、デジタルフィルタ310は、リセット信号RST_CH2が“Low”になった後に、クロックDECIM_CH1_SYNCの3つ目のパルスを受信した時点からAD変換の結果を出力することが可能になる。
【0095】
こうして、ΔΣADC200a-1は、同期モードにおいてDP信号を取り込み、信号をAD変換して、AD変換の結果(ADC_CH1[23:0]のDP)をクロックDECIM_CH1と同期してデジタルフィルタ301-1から出力することに加えて、AD変換の結果(ADC_CH1_SYNC[23:0]のDP SYNC)をクロックDECIM_CH1_SYNCと同期してデジタルフィルタ310から出力することができる。
【0096】
第1の実施例では、同期モードにおけるチャンネル2のデジタルフィルタ301-2の積算期間を33.3ms(N=1364)としたが、本実施例ではチャンネル2の積算期間は常に50ms(N=2048)である。
【0097】
また、第1の実施例では、STATE_CTRL203からの設定により、タイマ206は、同期モードにおいて変換開始要求信号START_STが“High”になったときから、33.3ms毎にサンプリング周波数f(=40.96kHz/1364)のクロックDECIM_CH2をΔΣADC200-2に出力する。
【0098】
一方、本実施例では、STATE_CTRL203aからの設定により、タイマ206は、同期モードにおいてリセット信号RST_CH2が“Low”になったときから、50ms毎にサンプリング周波数f(=40.96kHz/2048)のクロックDECIM_CH2をΔΣADC200-2に出力する。
【0099】
ΔΣADC200-2は、リセット信号RST_CH2が“Low”になった後に、クロックDECIM_CH2の3つ目のパルスを受信した時点からAD変換の結果を出力することが可能になる。STATE_CTRL203aは、リセット信号RST_CH2が“Low”になった後の、クロックDECIM_CH2の3つ目以降のパルスと同期して変換完了時に変換完了割り込み信号INT_CH2をCPU208に出力する。
【0100】
こうして、本実施例では、図13の破線部403のタイミングで示すように、同期モードにおいてΔΣADC200a-1とΔΣADC200-2の変換完了タイミングを同期させることができる。なお、第1、第2の実施例では、同期モードにおいてチャンネル1で測定用のDP値を取得し、チャンネル2でADC診断用のDP SYNC値を取得していたが、本実施例では、同期モードにおいてチャンネル1でDP SYNC値を取得し、チャンネル2で測定用のDP値を取得することになる。
【0101】
第1、第2の実施例では、チャンネル2のΔΣADC200-2の動作タイミングを制御していたが、本実施例では、チャンネル1のΔΣADC200a-1の内部に同期取得用のデジタルフィルタ310を用意し、デジタルフィルタ310をチャンネル2と同タイミングで動かすことで、チャンネル1とチャンネル2で同一タイミングのAD変換値を取得することが可能である。
【0102】
本実施例では、デジタルフィルタ310が追加でもう一つ必要となってしまうが、デジタルフィルタの積算期間をチャンネル1とチャンネル2で同一とすることができるので、チャンネル1とチャンネル2で同等の精度のAD変換値を取得することができる。
【0103】
第1~第3の実施例では、デジタルフィルタ301-1,301-2,310として、3次のSINCフィルタを採用しているが、4次のSINCフィルタを採用してもよい。4次のSINCフィルタを採用する場合、ΔΣADCの出力データレイテンシはサンプリング周波数fのクロック周期×N×4である。
【0104】
4次のSINCフィルタを採用する場合、デジタルフィルタ301-1,301-2,310は、リセット後にクロックDECIM_CH1,DECIM_CH2,DECIM_CH1_SYNCの4つ目のパルスを受信した時点からAD変換の結果を出力することが可能になる。
【0105】
4次のSINCフィルタは3次のSINCフィルタよりも急峻なローパス特性を持つため、AD変換値の精度向上が期待できるが、デジタルフィルタの面積増大と出力データレイテンシの増大とが生じる。
【0106】
また、第1~第3の実施例では、ΔΣADC200-1,200a-1,200-2から出力されるAD変換結果の処理について述べていないが、本発明では、AD変換結果を処理する手段は必須の構成要件ではなく、例えばAD変換結果をSPI_IF202を介してCPU208に転送すればよい。このとき、AD変換結果に個別のIDを付加して転送するようにしてもよい。これらの処理については特許文献1に開示されている。AD変換結果を処理する手段は特許文献1に開示された構成に限るものではないことは言うまでもない。
【0107】
また、本発明の適用対象は圧力発信器に限るものではなく、圧力発信器以外の機器にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、複数チャンネルのアナログ入力信号をAD変換する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0109】
200-1,200a-1,200-2…ΔΣADC、201,204…マルチプレクサ、202…インタフェース部、203,203a…信号生成部、205,206,209,211…タイマ、207…MCU、208…CPU、210,210a…制御部、300-1,300-2…ΔΣ変調器、301-1,301-2,310…デジタルフィルタ、302…積算計算部、303…周波数変換部、304…差分計算部、306…加算部、307,308…遅延部、309…減算部。
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