(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044389
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/42 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
H01R13/42 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149879
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100103229
【弁理士】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】宮村 哲矢
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 晶子
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE11
5E087FF08
5E087FF13
5E087GG25
5E087GG26
5E087MM05
5E087RR04
(57)【要約】
【課題】ハウジングの形状を簡素化し、コネクタをさらに小型化することを目的とする。
【解決手段】コネクタ20は、端子10を保持するコネクタであって、端子を収容可能なキャビティ44が形成されたハウジング30と、ハウジングに対して仮装着位置と本装着位置とで装着可能なリテーナ80とを備え、リテーナ80は、仮装着位置でキャビティ内の端子に仮係止可能なランス86と、本装着位置でキャビティ内の端子に係止可能な係止凸部83とを含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子を保持するコネクタであって、
前記端子を収容可能なキャビティが形成されたハウジングと、
前記ハウジングに対して仮装着位置と本装着位置とで装着可能なリテーナと、
を備え、
前記リテーナは、前記仮装着位置で前記キャビティ内の前記端子に仮係止可能なランスと、前記本装着位置で前記キャビティ内の前記端子に係止可能な係止凸部とを含む、コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタであって、
前記端子は、その延在方向の一部で凹む凹部を含み、
前記ランスは前記凹部に仮係止可能であり、前記係止凸部は前記凹部に係止可能である、コネクタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のコネクタであって、
前記ハウジングは、本装着用開口と、仮装着用開口とを有し、
前記リテーナは、前記本装着用開口に装着されるリテーナ本体と、前記リテーナ本体の両側から前記ハウジングの両側に沿って延びる一対の係止壁部とを含み、
前記係止凸部は、前記リテーナ本体から前記キャビティ内に向けて突出するように形成され、
前記ランスは、前記仮装着用開口に配置可能なように、前記リテーナ本体の延在方向中間位置において前記係止壁部と同じ向きに突出するように形成されており、前記キャビティの延在方向に対して交差する方向に沿って弾性変形する、コネクタ。
【請求項4】
請求項3に記載のコネクタであって、
前記ランスの基端は、前記係止凸部と一体的に連なっている、コネクタ。
【請求項5】
請求項3に記載のコネクタであって、
前記ランスは、弾性片と、前記弾性片の基端から離れた箇所で前記キャビティ側に突出する仮係止凸部とを有し、
前記リテーナが前記仮装着位置に位置する状態で、前記ランスが前記仮装着用開口に配置されると共に、前記仮係止凸部が前記キャビティ内に突出して、前記キャビティ内の前記端子に仮係止可能な状態となり、
前記リテーナが前記本装着位置に位置する状態で、前記仮係止凸部が前記端子を越えるように移動して前記端子に対する仮係止を解除し、かつ、前記係止凸部が前記キャビティ内に突出して、前記キャビティ内の前記端子に係止可能な状態となる、コネクタ。
【請求項6】
請求項5に記載のコネクタであって、
前記仮係止凸部は、前記キャビティの延在方向において前記端子が挿入される側に向うにつれて徐々に前記仮係止凸部の突出寸法を小さくする第1ガイド面と、前記ランスの先端側に向うに連れて徐々に前記仮係止凸部の突出寸法を小さくする第2ガイド面とを有する、コネクタ。
【請求項7】
請求項3に記載のコネクタであって、
前記ハウジングは、前記キャビティの延在方向及び前記係止壁部の突出方向に沿う縦壁を含み、
前記仮装着用開口は、前記縦壁に形成され、前記係止壁部の突出方向に沿うスリットである、コネクタ。
【請求項8】
請求項7に記載のコネクタであって、
前記縦壁は、前記ハウジングのいずれかの側面に露出する外壁を含み、
前記仮装着用開口は、前記外壁に形成されたスリットである、コネクタ。
【請求項9】
請求項7に記載のコネクタであって、
前記ハウジングは、前記リテーナが前記仮装着位置に位置する状態で前記一対の係止壁部と仮係止する一対の仮装着用係止部と、前記リテーナが前記本装着位置に位置する状態で前記一対の係止壁部と係止する一対の本装着用係止部とを含み、
前記一対の仮装着用係止部と前記一対の本装着用係止部とは前記キャビティの延在方向に沿って細長い凸形状に形成されており、
前記仮装着用開口は、前記一対の仮装着用係止部の少なくとも一方及び前記一対の本装着用係止部の少なくとも一方を横切るように形成されたスリットである、コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、端子金具を挿抜可能なキャビティが形成されたハウジング本体部と、リテーナとを備えるコネクタを開示している。ハウジング本体部には、端子金具に一次係止するランスが形成されている。リテーナには、端子金具に二次係止する係止突部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここにおいて、ハウジングの形状を簡素化し、コネクタをさらに小型化することが要請されている。
【0005】
そこで、本開示は、ハウジングの形状を簡素化し、コネクタをさらに小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタは、端子を保持するコネクタであって、前記端子を収容可能なキャビティが形成されたハウジングと、前記ハウジングに対して仮装着位置と本装着位置とで装着可能なリテーナと、を備え、前記リテーナは、前記仮装着位置で前記キャビティ内の前記端子に仮係止可能なランスと、前記本装着位置で前記キャビティ内の前記端子に係止可能な係止凸部とを含む、コネクタである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ハウジングの形状を簡素化し、コネクタをさらに小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は実施形態に係るコネクタを示す斜視図である。
【
図6】
図6は
図1のIV-IV線部分断面においてリテーナの仮装着状態を示す図である。
【
図7】
図7は
図1のV-V線部分断面においてリテーナの仮装着状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本開示のコネクタは、次の通りである。
【0011】
(1)端子を保持するコネクタであって、前記端子を収容可能なキャビティが形成されたハウジングと、前記ハウジングに対して仮装着位置と本装着位置とで装着可能なリテーナと、を備え、前記リテーナは、前記仮装着位置で前記キャビティ内の前記端子に仮係止可能なランスと、前記本装着位置で前記キャビティ内の前記端子に係止可能な係止凸部とを含む、コネクタである。
【0012】
本開示によると、端子に仮係止するランスがリテーナに設けられる。このため、ハウジングの形状の簡素化が可能となり、コネクタの小型化が可能となる。
【0013】
(2)(1)のコネクタであって、前記端子は、その延在方向の一部で凹む凹部を含み、前記ランスは前記凹部に仮係止可能であり、前記係止凸部は前記凹部に係止可能であってもよい。
【0014】
この場合、ランスは、係止凸部が係止する凹部に仮係止することができる。このため、端子に、ランスが仮係止する箇所を別途形成しなくてもよい。これにより、端子の簡素化及び小型化が可能となり、コネクタの小型化にも貢献する。
【0015】
(3)(1)又は(2)のコネクタであって、前記ハウジングは、本装着用開口と、仮装着用開口とを有し、前記リテーナは、前記本装着用開口に装着されるリテーナ本体と、前記リテーナ本体の両側から前記ハウジングの両側に沿って延びる一対の係止壁部とを含み、前記係止凸部は、前記リテーナ本体から前記キャビティ内に向けて突出するように形成され、前記ランスは、前記仮装着用開口に配置可能なように、前記リテーナ本体の延在方向中間位置において前記係止壁部と同じ向きに突出するように形成されており、前記キャビティの延在方向に対して交差する方向に沿って弾性変形してもよい。
【0016】
この場合、ランスは、仮装着用開口に配置可能なように、リテーナ本体の延在方向中間において係止壁部と同じ向きに突出するように形成されており、キャビティの延在方向に対して交差する方向に沿って弾性変形する。このため、ランスをキャビティの延在方向に沿う姿勢とする場合と比較して、ランスを形成するための構成を小さくできる。これにより、コネクタの前後方向サイズの小型化が可能となる。
【0017】
(4)(3)のコネクタであって、前記ランスの基端は、前記係止凸部と一体的に連なっていてもよい。これにより、ランスの突出長を大きくしても当該ランスを補強し易い。
【0018】
(5)(3)又は(4)のコネクタであって、前記ランスは、弾性片と、前記弾性片の基端から離れた箇所で前記キャビティ側に突出する仮係止凸部とを有し、前記リテーナが前記仮装着位置に位置する状態で、前記ランスが前記仮装着用開口に配置されると共に、前記仮係止凸部が前記キャビティ内に突出して、前記キャビティ内の前記端子に仮係止可能な状態となり、前記リテーナが前記本装着位置に位置する状態で、前記仮係止凸部が前記端子を越えるように移動して前記端子に対する仮係止を解除し、かつ、前記係止凸部が前記キャビティ内に突出して、前記キャビティ内の前記端子に係止可能な状態となってもよい。
【0019】
これにより、リテーナが仮装着位置に位置する状態では、ランスによって端子に仮係止することができる。リテーナが押されて本装着位置に移動すると、ランスと端子との仮係止が解除され、ランスが邪魔にならずに係止凸部が端子に係止できる。
【0020】
(6)(5)のコネクタであって、前記仮係止凸部は、前記キャビティの延在方向において前記端子が挿入される側に向うにつれて徐々に前記仮係止凸部の突出寸法を小さくする第1ガイド面と、前記ランスの先端側に向うに連れて徐々に前記仮係止凸部の突出寸法を小さくする第2ガイド面とを有していてもよい。
【0021】
この場合、リテーナが仮装着位置に位置する状態では、仮係止凸部がキャビティ内に突出している。端子をキャビティに挿入すると、端子が第1ガイド面に接触して、ランスをキャビティから退避する方向に弾性変形させる。端子をさらに押込むと、ランスが元の形状に弾性復帰して、仮係止凸部が端子に仮係止できる。リテーナが仮装着位置から本装着位置に向けて押されると、第2ガイド面が端子に接触して、ランスがキャビティから退避する方向に弾性変形する。このため、仮係止凸部が端子を乗越え、ランスと端子との仮係止が解除される。
【0022】
(7)(3)から(6)のいずれか1つのコネクタであって、前記ハウジングは、前記キャビティの延在方向及び前記係止壁部の突出方向に沿う縦壁を含み、前記仮装着用開口は、前記縦壁に形成され、前記係止壁部の突出方向に沿うスリットであってもよい。
【0023】
この場合、ランスがスリット状の仮装着用開口に配置される構成によって、リテーナのガイドがなされる。また、当該スリット内の空間を利用して、ランスが弾性変形できる。
【0024】
(8)(7)のコネクタであって、前記縦壁は、前記ハウジングのいずれかの側面に露出する外壁を含み、前記仮装着用開口は、前記外壁に形成されたスリットであってもよい。
【0025】
このように、仮装着用開口が外壁に形成されたスリットであれば、ランスを外側に弾性変形させるスペースを確保し易い。
【0026】
(9)(7)又は(8)のコネクタであって、前記ハウジングは、前記リテーナが前記仮装着位置に位置する状態で前記一対の係止壁部と仮係止する一対の仮装着用係止部と、前記リテーナが前記本装着位置に位置する状態で前記一対の係止壁部と係止する一対の本装着用係止部とを含み、前記一対の仮装着用係止部と前記一対の本装着用係止部とは前記キャビティの延在方向に沿って細長い凸形状に形成されており、前記仮装着用開口は、前記一対の仮装着用係止部の少なくとも一方及び前記一対の本装着用係止部の少なくとも一方を横切るように形成されたスリットであってもよい。
【0027】
この場合、ランスがスリット状の仮装着用開口によってガイドされる近くで、係止壁部が仮装着用係止部又は本装着用係止部に係止する。このため、係止壁部が円滑に仮装着用係止部又は本装着用係止部に円滑に係止する。
【0028】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のコネクタの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0029】
[実施形態]
以下、実施形態に係るコネクタについて説明する。
図1はコネクタ20を示す斜視図である。
図2及び
図3はコネクタ20を示す分解斜視図である。
図4は
図1のIV-IV線部分断面図である。
図5は
図1のV-V線部分断面図である。
図5において電線18が2点鎖線で示されている。
図6は
図1のIV-IV線部分断面においてリテーナの仮装着状態を示す図であり、
図7は
図1のV-V線部分断面においてリテーナの仮装着状態を示す図である。
【0030】
<コネクタの全体構造>
コネクタ20の全体構造について説明する。コネクタ20は、端子10を保持する。
【0031】
端子10は、金属板がプレス加工等されることによって形成される。端子10は、被覆圧着部11と、芯線圧着部12と、端子接続部13とを備える。被覆圧着部11は、電線18の端部の被覆部に圧着される部分である。芯線圧着部12は、電線18の端部に露出する芯線部に圧着される部分である。端子接続部13は、相手側の端子に接続される部分であり、例えば、筒状に形成されている。被覆圧着部11と芯線圧着部12と端子接続部13とは、この順で直線状に並んでいる。被覆圧着部11及び端子接続部13の厚みは、芯線圧着部12の厚みよりも大きい。このため、端子10を側方から観察すると、芯線圧着部12上であって被覆圧着部11と端子接続部13との間に、端子10の延在方向の一部で凹む凹部14が形成される。
【0032】
本実施形態では、コネクタ20は複数の端子10を保持する。より具体的には、複数(例えば2つ)の端子10が複数段(例えば2段)に分れて保持される。各段において、複数の端子10が並列状態で一列に並んでいる。なお、複数の端子10はサイズ及び素材等が同じ端子であってもよいし、サイズ又は素材が異なる端子であってもよい。なお、コネクタ20が保持する端子10の数は任意である。
【0033】
コネクタ20は、ハウジング30と、リテーナ80とを備える。リテーナ80によって、少なくとも1つの段における複数の端子10がハウジング30から脱しないように保持される。本実施形態では、コネクタ20は、さらにカバー60を備える。カバー60は、ハウジング30に対してリテーナ80とは反対側に装着される。カバー60によって、他の段における複数の端子10がハウジング30から脱しないように保持される。
【0034】
以下の説明において、端子10の延在方向において端子接続部13側を前側、被覆圧着部11側を後側ということがある。また、カバー60側を下側、リテーナ80側を上側という場合がある。さらに、カバー60に立って前側を向いた状態を想定して左右方向を参照する場合がある。
【0035】
ハウジング30は、樹脂等によって形成されており、端子収容部32、42を備える。本実施形態では、ハウジング30は、下側の端子収容部32と、上側の端子収容部42とを備える。下側の端子収容部32は、端子10を収容するキャビティ34を有している。本実施形態では、下側の端子収容部32は、並列状態で並ぶ複数(ここでは2つ)のキャビティ34を有する。上側の端子収容部42は、端子10を収容するキャビティ44を有している。本実施形態では、上側の端子収容部42は、並列状態で並ぶ複数(ここでは2つ)のキャビティ44を有する。
【0036】
リテーナ80は上側の端子収容部42と合体して上側のキャビティ44内に端子10を保持する。つまり、リテーナ80が本装着される前の状態で、端子10がキャビティ44に挿入される。端子10がキャビティ44に挿入された状態で、リテーナ80が上側の端子収容部42に本装着される。すると、端子10が上側のキャビティ44から抜出ないようになる。
【0037】
カバー60は下側の端子収容部32と合体して下側のキャビティ34内に端子10を保持する。つまり、カバー60が下側の端子収容部32に装着される前の状態で、端子10が下側のキャビティ34にセットされる。この状態で、カバー60が下側の端子収容部32に装着される。すると、端子10が下側のキャビティ34から抜出ないようになる。
【0038】
本コネクタが上記カバー60を備えること、及び、当該カバー60によって保持される端子10を備えることは必須ではない。
【0039】
リテーナ80によって端子10が保持される構成がより具体的に説明される。
【0040】
<リテーナによる保持構造について>
リテーナ80は、ハウジング30に対して仮装着位置と本装着位置とで装着可能に構成されている。本装着とは、コネクタ20の使用状態で端子10の抜けを防止するように、リテーナ80が端子10に係止している装着している状態である。リテーナ80が本装着位置でハウジング30に装着された状態では、コネクタ20を持運んだり、相手側コネクタと抜差ししたりしても、端子10がハウジング30から脱しないでキャビティ44内に保持される。仮装着とは、本装着状態となる前の状態において、端子10を仮係止可能な状態である。仮装着状態におけるリテーナ80による端子10の保持力は、本装着状態におけるリテーナ80による端子10の保持力よりも小さいことが想定される。例えば、仮装着状態におけるリテーナ80による端子10の保持力は、リテーナ80を仮装着位置から本装着位置に移動させる作業中、端子10を保持できる程度の大きさであればよい。
【0041】
より具体的には、ハウジング30は、上側の段のキャビティ44を下側から仕切る仕切板部31を有している。本実施形態では、仕切板部31は、下側の端子収容部と下側の端子収容部との間に位置し、下側のキャビティ34と上側のキャビティ44とを仕切る。仕切板部31は、上側の段のキャビティ44の底に位置する底板であるとも把握され得る。ハウジング30は、仕切板部31から上側に向けて縦壁43a、43bを有する。縦壁43a、43bは、仕切板部31に直交しかつキャビティ44の延在方向に沿って延びる板状部分である。縦壁43a、43bは、後述する係止壁部84の突出方向にも沿っている。縦壁43a、43bは、ハウジング30の両側に位置する一対の外壁43aを含む。一対の外壁43aは、ハウジング30の左又は右の外側に露出している。また、縦壁43a、43bは、複数のキャビティ44間を仕切る中間壁43bを含む。一対の外壁43aの間に中間壁43bが位置しており、一対の外壁43aと中間壁43bとは、ハウジング30の幅方向において間隔をあけて並列状態に並んでいる。
【0042】
ハウジング30の前縁には、前後方向に対して直交する方向に延在する前板部31Fが設けられている。前板部31Fは、キャビティ44の前端に位置している。キャビティ44内に配置された端子10は、前板部31Fに接することで、前方への移動が規制される。前板部31Fには、相手側端子(例えば、細長い板部又はピン状部分を有するオス端子)を挿入可能な接続孔31Faが形成されている。相手側端子は、当該接続孔31Faを通ってキャビティ44内の端子10に接続され得る。
【0043】
一対の外壁43a及び中間壁43bのうち仕切板部31とは反対側の開口の少なくとも一部が天井板部43cによって閉じられている。上側の端子収容部42は、仕切板部31のうち上側部分と一対の外壁43aと中間壁43bと天井板部43cと前板部31Fとを備える構成であり、一対の外壁43aと中間壁43bとの各隙間に複数のキャビティ44が形成される。キャビティ44は後方開口を有しており、端子10は当該後方開口を通ってキャビティ内に挿入される。
【0044】
ハウジング30は、本装着用開口36と、仮装着用開口38とを有する。
【0045】
本実施形態では、ハウジング30の天井板部43cのうちキャビティ44の延在方向中間部が部分的に凹むように形成されており、当該凹み部分の一部に本装着用開口36が形成されている。キャビティ44内に配置された端子10の前端が前板部31Fに接触した状態で、端子10のうちの凹部14の少なくとも一部が本装着用開口36を通じてハウジング30の外に露出することができる。
【0046】
また、ハウジング30の一対の外壁43aの後部が部分的に凹んでおり、その凹み部分の一部に仮装着用開口38が形成されている。仮装着用開口38は、キャビティ44の延在方向に対して直交する方向に延びるスリット状に形成されている。仮装着用開口38は、後述する係止壁部84の突出方向に沿うスリットでもある。キャビティ44の延在方向において、仮装着用開口38の形成位置の少なくとも一部は、本装着用開口36の少なくとも一部と重なっている。本実施形態では、キャビティ44の延在方向において、本装着用開口36の前よりの位置に仮装着用開口38が位置している。そして、キャビティ44内に配置された端子10の前端が前板部31Fに接触した状態で、端子10のうちの凹部14の少なくとも一部が本装着用開口36及び仮装着用開口38の両方を通じてハウジング30の外に露出することができる(
図6参照)。
【0047】
なお、仮装着用開口38は、キャビティ44のうち本装着用開口36とは反対側の底面を越えて下側に延びている。仮装着用開口38の先端に対応する位置において、キャビティ44の底面部分に部分的に凹み44hが形成されている。当該凹みは仮装着用開口38と連続しており、本装着状態において、ランス86の仮係止凸部88が当該凹み44hに配置される(
図4及び
図6参照)。
【0048】
リテーナ80は、ハウジング30に対して仮装着位置と本装着位置とで装着可能である。リテーナ80は、ランス86と、係止凸部83とを含む。リテーナ80が仮装着位置に装着された状態で、ランス86がキャビティ44内の端子10に仮係止し、仮装着状態になることができる。ここでは、ランス86は、仮装着用開口38を通じてキャビティ44内に突出して端子10に仮係止する。リテーナ80が本装着位置に装着された状態で、係止凸部83がキャビティ44内の端子10に係止し、本装着状態になることができる。ここでは、係止凸部83は本装着用開口36を通ってキャビティ44内に突出して端子10に係止することができる。
【0049】
具体的には、ハウジング30は、一対の仮装着用係止部47と、一対の本装着用係止部46とを有する。
【0050】
一対の仮装着用係止部47は、リテーナ80が仮装着位置に位置する状態でリテーナ80の一対の係止壁部84に係止する部分である。
【0051】
一対の本装着用係止部46は、リテーナ80が本装着位置に位置する状態でリテーナ80の一対の係止壁部84に係止する部分である。
【0052】
一対の仮装着用係止部47は、一対の外壁43aの外面のうち上記凹み部分の底面から外方に突出している。一対の仮装着用係止部47は、外壁43aの先端、つまり、上方に向って徐々に突出寸法が小さくなる部分を含む形状に形成されている。
【0053】
一対の本装着用係止部46は、一対の外壁43aの外面のうち上記凹み部分の底面から外方に突出している。一対の本装着用係止部46は、外壁43aの先端、つまり、上方に向って徐々に突出寸法が小さくなる部分を含む形状に形成されている。
【0054】
一対の仮装着用係止部47は、一対の本装着用係止部46に対して本装着用開口36に近い側、即ち、上側に位置している。このため、リテーナ80は、一対の仮装着用係止部47に仮係止して仮装着状態となった後、さらに押されることで一対の本装着用係止部46に係止して本装着状態となることができる。
【0055】
一対の本装着用係止部46と一対の仮装着用係止部47とはキャビティ44の延在方向に沿って細長い凸形状に形成されている。一対の本装着用係止部46と一対の仮装着用係止部47との前端は、本装着用開口36よりも前側に位置し、一対の本装着用係止部46と一対の仮装着用係止部47との後端は、本装着用開口36よりも後側に位置する。
【0056】
上記仮装着用係止部47は、一対の外壁43aのそれぞれにおいて、本装着用係止部46と仮装着用係止部47とを横切るように延びている。このため、ハウジング30を側方から観察すると、スリット状の仮装着用係止部47が、本装着用係止部46と仮装着用係止部47との延在方向中間部に交差している。仮装着用係止部47は、本装着用係止部46又は仮装着用係止部47を横切っていてもよい。仮装着用係止部47は、本装着用係止部46及び仮装着用係止部47を横切らなくてもよい。
【0057】
リテーナ80は、リテーナ本体82と、一対の係止壁部84とを含む。
【0058】
リテーナ本体82は、本装着用開口36に装着される部分である。ここでは、リテーナ本体82は、複数のキャビティ44に対応する本装着用開口36を一括して塞ぐことができる大きさに広がる板状に形成されている。本実施形態では、天井板部43cの前後方向中間部が部分的に凹んでおあり、リテーナ本体82は、天井板部43cの当該凹み部分に配置可能な板状に形成されている。リテーナ本体82が当該凹み部分に配置された状態で、リテーナ本体82の前端が天井板部43cのうち当該凹み部分の前側に位置する端面に接触し、リテーナ本体82の後端が天井板部43cの当該凹み部分の後側に位置する端面に接触する。これにより、リテーナ80が前後方向において位置決めされる。
【0059】
リテーナ本体82に係止凸部83が形成されている。ここでは、複数のキャビティ44に対応して複数の係止凸部83が並列状態で形成されている。係止凸部83は、キャビティ44の延在方向中間部、より具体的には、キャビティ44の延在方向において芯線圧着部12が位置する領域に形成されている。係止凸部83はキャビティ44の延在方向に沿って細長い形状である。係止凸部83の長さは、例えば、端子10の延在方向の位置決めをできる程度で被覆圧着部11と端子接続部13との間の距離以下の大きさに設定される。
【0060】
そして、リテーナ本体82が本装着用開口36に装着された状態で、係止凸部83が本装着用開口36に対応する位置に配置される。リテーナ80の仮装着状態では、係止凸部83はキャビティ44内に突出せず、本装着用開口36内かそれよりも外側に配置される。リテーナ80の本装着状態では、係止凸部83はリテーナ本体82からがキャビティ44内に突出することができる。この状態で、係止凸部83が、キャビティ44の端子10のうち被覆圧着部11と端子接続部13との間の凹部14に嵌り込むことができる。これにより、端子10がその延在方向において位置決めされ、後方への抜けが抑制される。
【0061】
一対の係止壁部84は、リテーナ本体82の両側から端子収容部42の両側、ここでは、一対の外壁43aの外面に沿って延びる。一対の係止壁部84の内面のうち先端寄りの位置に抜け止凸部85が形成されている。抜け止凸部85は、係止壁部84の内面から突出する凸部である、抜け止凸部85は、係止壁部84の先端側に向って徐々に突出寸法が小さく部分を含む形状に形成されている。一対の係止壁部84は、一対の仮装着用係止部47又は一対の本装着用係止部46に係止することができる。
【0062】
抜け止凸部85は、キャビティ44の延在方向に沿って細長い凸形状であってもよい。抜け止凸部85は、一対の仮装着用係止部47又は一対の本装着用係止部46の長さと同じ程度の長さであってもよい。これにより、抜け止凸部85の延在方向全体が一対の仮装着用係止部47又は一対の本装着用係止部46に係止することができ、リテーナ80の仮装着状態又は本装着状態が安定する。
【0063】
ランス86は、リテーナ80が仮装着位置に位置する状態でキャビティ44内の端子10に仮係止する部分である。
【0064】
ここで、ランス86は、仮装着用開口38に配置可能なように、リテーナ本体82の延在方向中間位置において係止壁部84と同じ向きに突出するように形成されている。より具体的には、ランス86は、リテーナ本体82のうち端子収容部42に面する部分であって一対の係止壁部84の間の部分から突出している。リテーナ80が本装着用開口36に装着された状態で、ランス86が仮装着用開口38内に配置される。ランス86は、キャビティ44の延在方向において直交する方向に長く、キャビティ44の延在方向に対して交差する方向に沿って弾性変形可能に構成される。
【0065】
好ましくは、ランス86が仮装着用開口38に前後方向にガタつき無く収る程度に、ランス86の前後長は、仮装着用開口38の前後方向の隙間幅と同じであってもよい。
【0066】
本実施形態では、ランス86の基端は、係止凸部83の一側に一体的に連なっている。このため、ランス86がリテーナ本体82から係止凸部83と連ならずに突出する場合と比較して、補強された構成となる。これにより、ランス86が壊れにくくなる。キャビティ44の延在方向においてランス86が仮装着用開口38によって案内される構成によって、係止凸部83が本装着用開口36に向けて案内され、リテーナ80の装着が円滑になされる。
【0067】
ランス86は、弾性片87と、仮係止凸部88とを有する。
【0068】
弾性片87は、キャビティ44の延在方向に対して交差(ここでは直交)する方向(ここでは上下方向)に延びる細長い部分であり、キャビティ44の延在方向に対して交差(ここでは直交)する方向(ここでは左右方向)に弾性変形可能に構成されている。上記したように、弾性片87の基端は、係止凸部83の外面に一体的に連なっている。弾性片87の先端が係止凸部83の先端からさらに突出して左右方向に容易に弾性変形することができる。
【0069】
仮係止凸部88は、弾性片87の基端から離れた位置でキャビティ44側に突出するように形成されている。ここでは、仮係止凸部88は、係止凸部83の先端から離れた位置でキャビティ44側に突出している。
【0070】
ランス86が仮装着用開口38に配置された状態で、仮係止凸部88は当該仮装着用開口38からキャビティ44内に突出することができる。このため、仮係止凸部88は、端子10の右側又は左側から端子10の凹部14に仮係止することができる。
【0071】
仮係止凸部88は、係止凸部83の先端から離れた位置に配置されていることから、係止凸部83が凹部14に係止する前の状態で、仮係止凸部88が凹部14に仮係止することができる。また、係止凸部83が凹部に係止した状態で、仮係止凸部88が凹部14を越えた位置に位置することができる。
【0072】
仮係止凸部88は、第1ガイド面88f1と、第2ガイド面88f2とを有する。
【0073】
第1ガイド面88f1は、仮係止凸部88のうち斜め後ろを向く面である。第1ガイド面88f1は、キャビティ44の延在方向において端子10が挿入される側(後側)に向うに連れて徐々に仮係止凸部88の突出寸法を小さくする面である。仮係止凸部88が仮装着用開口38からキャビティ44内に突出している状態で、端子10がキャビティ44内に挿入されると、端子10の先端が当該第1ガイド面88f1に接することができる。
【0074】
第2ガイド面88f2は、仮係止凸部88のうち斜め下を向く面である。第2ガイド面88f2は、ランス86の先端側に向うに連れて仮係止凸部88の突出寸法を徐々に小さくする面である。仮係止凸部88が仮装着用開口38からキャビティ44内に突出して端子10の凹部14に配置されており、この状態からリテーナ80が押されると、第2ガイド面88f2が芯線圧着部12に接することができる。
【0075】
仮係止凸部88のうち前向きの面は、キャビティ44の延在方向に対して垂直な仮係止面88f3であってもよい。仮係止面88f3は、端子10がキャビティ44から後方に抜けようとする際に、端子接続部13に接触してその抜けを図る面である。当該仮係止面88f3がキャビティ44の延在方向に対して垂直であれば、仮係止面88f3が端子接続部13に接触してもランス86が仮係止を解除する方向に弾性変形し難い。このため、仮係止状態が効果的に保たれる。
【0076】
<端子の保持作業>
端子10の保持作業例について説明する。
【0077】
例えば、リテーナ80の一対の抜け止凸部85が一対の仮装着用係止部47に係止した状態とされたものが準備される(
図6及び
図7参照)。この状態では、係止凸部83はキャビティ44内に突出していない。このため、端子10が後方開口45を通じてキャビティ44内に挿入されると、係止凸部83には引っ掛らないでキャビティ44の奥、つまり、前側に挿入され得る。
【0078】
また、上記状態では、ランス86の弾性片87は仮装着用開口38内に配置されている。弾性片87から突出する仮係止凸部88は、仮装着用開口38からキャビティ44内に突出している。このため、端子10が後方開口45を通じてキャビティ44内に挿入されると、端子10の端子接続部13が当該仮係止凸部88に接する。
【0079】
この際、端子接続部13の先端は、仮係止凸部88の第1ガイド面88f1に接する(
図7参照)。上記したように、第1ガイド面88f1は、端子10が挿入され後側に向うに連れて徐々に仮係止凸部88の突出寸法を小さくする面である。このため、端子10がキャビティ44の奥に挿入されると、端子接続部13の先端が第1ガイド面88f1に接して、仮係止凸部88をキャビティ44から退避する方向、即ち、右外側又は左外側に押退ける。これにより、端子10は、キャビティ44の奥、即ち、前側に移動することができる。
【0080】
端子接続部13が仮係止凸部88を越えると、弾性片87が元の形状に戻ろうとする弾性力によって、仮係止凸部88がキャビティ44内に突出する状態に戻る。これにより、仮係止凸部88が端子10の凹部14に仮係止する状態となる(
図6参照)。
【0081】
各キャビティ44に対して上記と同様に端子10が挿入される。各端子10が各キャビティ44に挿入された状態で、仮係止凸部88が端子10に仮係止する。このため、端子10を一旦キャビティ44に挿入すれば、その後の端子10の抜けを気にせずに、端子10の挿入作業を次々と容易に実施することができる。
【0082】
複数のキャビティ44のそれぞれに端子10が仮係止された状態で、リテーナ80が仮装着位置から本装着位置に向けて押される。
【0083】
この際、仮係止凸部88は、リテーナ80が押される方向、即ち、キャビティ44の延在方向に直交する下向きに押される。すると、仮係止凸部88が凹部14から芯線圧着部12に向って移動し当該芯線圧着部12に接する。上記したように、第2ガイド面88f2は、ランス86の先端側に向うに連れて仮係止凸部88の突出寸法を徐々に小さくする面である。このため、第2ガイド面88f2が芯線圧着部12に接して、仮係止凸部88がキャビティ44から退避する方向、即ち、右外側又は左外側に移動する。これにより、仮係止凸部88は、芯線圧着部12を越えて、当該芯線圧着部12の下方に移動し、端子10に対する仮係止が解除される。芯線圧着部12を下方に越えた仮係止凸部88は、弾性片87の弾性力によって元のキャビティ44側の位置に戻り、キャビティ44の部分的な凹み44hに配置される。
【0084】
仮係止凸部88が凹部14に仮係止するのに代って、係止凸部83が本装着用開口36を通ってキャビティ44内に進入していく。係止凸部83が芯線圧着部12とは反対側から凹部14内に進入していく。
【0085】
リテーナ80の一対の係止壁部84の抜け止凸部85が本装着用係止部46を越えて当該本装着用係止部46に抜け止状に係止すると、リテーナ80が本装着位置に達してハウジング30に本装着される。この状態で、係止凸部83がキャビティ44内に突出した状態に保たれ、芯線圧着部12が係止凸部83に対して前方から係止される。これにより、端子10がキャビティ44から後方に抜出ることが抑制される。
【0086】
<効果等>
以上のように構成されたコネクタによると、リテーナ80が、仮装着位置で端子10に仮係止可能なランス86と、本装着位置で端子10に係止可能な係止凸部とを含む。このため、ハウジング30の形状の簡素化が可能となり、コネクタ20の小型化が可能となる。
【0087】
すなわち、一般的に、キャビティを有するハウジングと、キャビティ内で端子を保持する役割を持つリテーナとを比較すると、ハウジングの形状の方が複雑となり易い。しかも、ハウジングには、相手側のコネクタへの接続に供するガイド構造、ロック構造等も組込まれることが多いので、この点からもハウジングの形状は複雑化し易い。このため、ハウジングにランスを形成すると、金型制約上の観点等から大型化を招き易い。
【0088】
そこで、本実施形態のように、ランス86をリテーナ80に形成することで、ハウジング30の形状を簡素化して小型化することが可能となる。また、リテーナ80はハウジング30と比較して簡素な形状なので、当該リテーナ80にハウジング30を形成しても、金型制約は少なく、リテーナ80の大型化を招きにくい。このため、コネクタ20全体として形状を簡素化し、かつ、小型化が可能となる。
【0089】
また、ランス86も係止凸部83も端子10の凹部14に係止することができる。このため、端子10にランス86が仮係止する箇所を別途形成しなくてもよい。これにより、端子10の簡素化及び小型化が可能となり、コネクタ20の小型化に貢献する。
【0090】
もっとも、ランスと係止凸部とが端子に対して異なる箇所に係止してもよい。
【0091】
また、ランス86は、仮装着用開口38に配置可能なように、リテーナ本体82の延在方向中間において係止壁部84と同じ向きに突出するように形成されており、キャビティ44の延在方向に対して交差する方向に沿って弾性変形する。このため、仮にランスを、キャビティの延在方向に沿う姿勢とする場合と比較して、ランス86を形成するための構成を小さくできる。これにより、コネクタ20の前後方向サイズの小型化が可能となる。
【0092】
なお、ランスはキャビティの延在方向に沿っていてもよい。例えば、係止壁部からランスがキャビティの延在方向に沿って突出しており、かつ、ハウジングの側部に当該ランスを配置可能な開口が形成されていてもよい。
【0093】
また、ランス86の基端は係止凸部83に一体的に連なっている。このため、ランス86が補強され、破損し難い。
【0094】
また、ランス86は、弾性片87と仮係止凸部88とを有しており、リテーナ80が仮装着位置に位置する状態で、ランス86が仮装着用開口38に配置されると共に、仮係止凸部88がキャビティ44内に突出して端子10の凹部に乖離係止する。そして、リテーナ80が本装着位置に位置する状態で、仮係止凸部88が端子10を越えるように移動して端子10に対する仮係止を解除する。代りに、リテーナ本体82が本装着用開口36に装着されると共に、係止凸部83がキャビティ44内に突出して端子10の凹部に係止する。
【0095】
このため、リテーナ80が仮装着位置に位置する状態で、ランス86が端子10に仮係止できる。そして、リテーナ80が押されて本装着位置に移動すると、ランス86と端子10との仮係止が解除され、係止凸部83が端子10に仮係止する。
【0096】
ランス86と係止凸部83とが端子10の延在方向において同じ位置又は少なくとも一部で重なる関係にあれば、ランス86と係止凸部83とが端子10の同じ箇所である凹部14に係止する構成を実現し易い。
【0097】
また、仮係止凸部88は、第1ガイド面88f1と第2ガイド面88f2とを有する。このため、リテーナ80が仮装着位置に位置する状態で、端子10をキャビティ44に挿入すると、端子10が第1ガイド面88f1に接することができる。これにより、ランス86がキャビティ44から退避する方向に容易に弾性変形する。そして、端子10がさらに押込まれると、ランス86が元の形状に弾性復帰して、仮係止凸部88が端子10に仮係止できる。
【0098】
また、リテーナ80が仮装着位置から本装着位置に向けて押されると、第2ガイド面88f2が端子10に接触して、ランス86がキャビティ44から退避する方向に容易に弾性変形できる。このため、仮係止凸部88が端子10を越えて、ランス86と端子10との仮係止が解除される。これにより、端子10の挿入によってランス86が端子10に仮係止することと、ランス86を押すことによってランス86と端子10との仮係止が解除されることとが容易に実現される。
【0099】
また、ランス86と端子10との係止が解除された後は、係止凸部83が凹部14に容易に係止することができる。
【0100】
なお、係止凸部83が凹部14に係止した状態において、ランスが端子10に仮係止した状態を保ってもよい。
【0101】
また、ハウジング30は、縦壁として外壁43aを含み、仮装着用開口38は当該外壁43aに形成され、係止壁部84の突出方向に沿うスリットとして形成されている。このため、ランス86がスリット状の仮装着用開口38に配置される構成によって、リテーナ80のガイドがなされる。また、スリット内の空間を利用してランス86が弾性変形し易い。
【0102】
また、仮装着用開口38が外壁43aに形成されていれば、ランス86を外壁43aの外側に弾性変形できるスペースを確保し易い。これにより、仮係止凸部88をキャビティ44内に十分に突出させても、ランス86を外側に大きく弾性変形させることができる。仮係止凸部88をキャビティ44内に十分に突出させることによって、ランス86を端子10に仮係止した状態を保ち易い。
【0103】
また、スリット状の仮装着用開口38が仮装着用係止部47と本装着用係止部46とを横切っている。このため、ランス86が仮装着用開口38によってガイドされる位置の近くで、係止壁部84の抜け止凸部85が仮装着用係止部47又は本装着用係止部46に係止する。このため、係止壁部84の抜け止凸部85が円滑に仮装着用係止部47又は本装着用係止部46に係止できる。
【0104】
また、ランス86と係止凸部83とが端子10の長手方向において同じ位置の凹部14に係止する構成において、抜け止凸部85と本装着用係止部46との係止領域の中間部で、係止凸部83が端子10に係止する。このため、係止凸部83による端子10の抜け止がより強固になされる。
【0105】
なお、コネクタは、3つ以上並ぶキャビティを有していてもよい。この場合、キャビティを仕切る壁に仮装着用開口を形成し、当該仮装着用開口内にランスを配置してもよい。
【0106】
また、上記構成は、複数段のキャビティに挿入される端子が同じリテーナによって抜け止される構成についても適用可能である。例えば、上記リテーナ本体82、係止凸部83、ランス86が各段に対応して複数段設けられていてもよい。
【0107】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【符号の説明】
【0108】
10 端子
11 被覆圧着部
12 芯線圧着部
13 端子接続部
14 凹部
18 電線
20 コネクタ
30 ハウジング
31 仕切板部
31F 前板部
31Fa 接続孔
32、42 端子収容部
34、44 キャビティ
36 本装着用開口
38 仮装着用開口
43a 外壁(縦壁)
43b 中間壁(縦壁)
43c 天井板部
44h 凹み
45 後方開口
46 本装着用係止部
47 仮装着用係止部
60 カバー
80 リテーナ
82 リテーナ本体
83 係止凸部
84 係止壁部
85 抜け止凸部
86 ランス
87 弾性片
88 仮係止凸部
88f1 第1ガイド面
88f2 第2ガイド面
88f3 仮係止面