(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044391
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/42 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
H01R13/42 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149882
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100103229
【弁理士】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】宮村 哲矢
(72)【発明者】
【氏名】松井 元
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 晶子
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE11
5E087FF06
5E087FF13
5E087GG25
5E087GG26
5E087MM05
5E087RR25
5E087RR26
(57)【要約】
【課題】コネクタの組立不良を抑制することを目的とする。
【解決手段】第1端子と第2端子とを保持するコネクタ10であって、第1端子を収容する第1キャビティを有する第1端子収容部32と、第2端子を収容する第2キャビティを有する第2端子収容部42とを含むハウジング30と、第1正規位置で第1端子収容部と合体して第1キャビティ内に第1端子を保持する第1保持部材60と、第2正規位置で第2端子収容部と合体して第2キャビティ内に第2端子を保持する第2保持部材80と、を備え、第1保持部材が第1方向P1に沿って第1正規位置に達して第1端子収容部と合体し、第2保持部材80が第1方向P1とは異なる第2方向P2に沿って第2正規位置に達して第2端子収容部と合体する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端子と第2端子とを保持するコネクタであって、
前記第1端子を収容する第1キャビティを有する第1端子収容部と、前記第2端子を収容する第2キャビティを有する第2端子収容部とを含むハウジングと、
第1正規位置で前記第1端子収容部と合体して前記第1キャビティ内に前記第1端子を保持する第1保持部材と、
第2正規位置で前記第2端子収容部と合体して前記第2キャビティ内に前記第2端子を保持する第2保持部材と、
を備え、
前記第1保持部材が第1方向に沿って前記第1正規位置に達して前記第1端子収容部と合体し、
前記第2保持部材が前記第1方向とは異なる第2方向に沿って前記第2正規位置に達して前記第2端子収容部と合体する、コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタであって、
前記第2方向に沿って前記第2正規位置に移動する前記第2保持部材が、前記第1正規位置の手前に位置する前記第1保持部材と干渉する位置関係に設定されている、コネクタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のコネクタであって、
前記第1端子収容部は、前記第2端子収容部とは反対側に第1セット用開口を有し、
前記第1方向は前記第1キャビティの延在方向に沿った方向であり、
前記第1正規位置は前記第1保持部材が前記第1セット用開口を塞ぐ位置であり、
前記第2端子収容部は、前記第2キャビティの延在方向一方側の第2セット用開口と、前記第1端子収容部とは反対側の位置決め用開口とを有し、
前記第2方向は前記第2キャビティの延在方向と交差する方向であり、
前記第2正規位置は前記第2保持部材が前記位置決め用開口に嵌め込まれた位置である、コネクタ。
【請求項4】
請求項3に記載のコネクタであって、
前記第1キャビティの内周部のうち前記第1セット用開口とは反対側に第1端子位置決め凸部が形成され、
前記第2保持部材に前記第2キャビティ内に突出可能な第2端子位置決め凸部が形成されている、コネクタ。
【請求項5】
請求項4に記載のコネクタであって、
前記第2端子が前記第2キャビティにセット不完全な状態で、前記第2端子位置決め凸部が前記第2端子に干渉し、
前記第2端子位置決め凸部が前記第2端子に干渉した状態と、前記第2方向に沿って前記第2正規位置に移動する前記第2保持部材が、前記第1正規位置の手前に位置する前記第1保持部材と干渉した状態とで、前記第2保持部材の少なくとも一部が前記ハウジングから突出した状態となる、コネクタ。
【請求項6】
請求項3に記載のコネクタであって、
前記第1保持部材は、前記第1セット用開口を塞ぐカバー本体と、前記カバー本体の両側から前記第1端子収容部の両側面に沿って延びる一対の側壁部とを含み、
前記一対の側壁部の少なくとも一方の先端部が部分的に突出する干渉用凸部を有し、
前記第1保持部材が前記第1正規位置に達する前の状態で、前記干渉用凸部が、前記第2正規位置に向う前記第2保持部材に干渉する位置に配置され、
前記第1保持部材が前記第1正規位置に達した状態で、前記干渉用凸部が、前記第2正規位置に向う前記第2保持部材の移動経路を避けた位置に配置される、コネクタ。
【請求項7】
請求項6に記載のコネクタであって、
前記第2保持部材は、前記位置決め用開口に装着されるリテーナ本体と、前記リテーナ本体の両側から前記第2端子収容部の両側に沿って延びる一対の係止壁部とを含み、
前記一対の係止壁部の少なくとも一方が前記干渉用凸部と干渉可能な位置に配置される、コネクタ。
【請求項8】
請求項7に記載のコネクタであって、
前記ハウジングは、前記第2保持部材が前記第2正規位置に位置する状態で前記一対の係止壁部と係止する一対の係止部と、前記第2保持部材が前記第2端子を位置決めする前の状態で前記一対の係止壁部と係止する一対の仮係止部とを含み、
前記一対の係止壁部が前記一対の仮係止部に係止した状態で、前記一対の係止壁部の少なくとも一方と前記干渉用凸部との干渉を回避しつつ、前記第1保持部材が前記第1正規位置に向けて移動可能に設定されている、コネクタ。
【請求項9】
請求項7に記載のコネクタであって、
前記一対の係止壁部の少なくとも一方が、前記ハウジング側に突出し、前記第2方向に沿って延びるガイド凸部を有し、
前記ハウジングに前記ガイド凸部を案内する案内溝が形成され、
前記一対の係止壁部のうち前記ガイド凸部が形成された部分が前記干渉用凸部と干渉可能に形成されている、コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、複数の端子収容室が上段と下段とに形成されたハウジングを備えるコネクタを開示している。上下段の端子収容室に収容された電線端子は、共通するリテーナによって抜け止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここにおいて、よりコネクタの組立不良を抑制することが望まれている。
【0005】
そこで、本開示は、コネクタの組立不良を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタは、第1端子と第2端子とを保持するコネクタであって、前記第1端子を収容する第1キャビティを有する第1端子収容部と、前記第2端子を収容する第2キャビティを有する第2端子収容部とを含むハウジングと、第1正規位置で前記第1端子収容部と合体して前記第1キャビティ内に前記第1端子を保持する第1保持部材と、第2正規位置で前記第2端子収容部と合体して前記第2キャビティ内に前記第2端子を保持する第2保持部材と、を備え、前記第1保持部材が第1方向に沿って前記第1正規位置に達して前記第1端子収容部と合体し、前記第2保持部材が前記第1方向とは異なる第2方向に沿って前記第2正規位置に達して前記第2端子収容部と合体する、コネクタである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、コネクタの組立不良が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は実施形態に係るコネクタを示す斜視図である。
【
図6】
図6はリテーナが仮保持されたコネクタを示す背面図である。
【
図7】
図7はカバーとリテーナとが干渉する状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本開示のコネクタは、次の通りである。
【0011】
(1)第1端子と第2端子とを保持するコネクタであって、前記第1端子を収容する第1キャビティを有する第1端子収容部と、前記第2端子を収容する第2キャビティを有する第2端子収容部とを含むハウジングと、第1正規位置で前記第1端子収容部と合体して前記第1キャビティ内に前記第1端子を保持する第1保持部材と、第2正規位置で前記第2端子収容部と合体して前記第2キャビティ内に前記第2端子を保持する第2保持部材と、を備え、前記第1保持部材が第1方向に沿って前記第1正規位置に達して前記第1端子収容部と合体し、前記第2保持部材が前記第1方向とは異なる第2方向に沿って前記第2正規位置に達して前記第2端子収容部と合体する、コネクタである。
【0012】
本開示によると、第1保持部材が第1正規位置に達する際の第1方向と、第2保持部材が第2正規位置に達する際の第2方向とが異なる。このため、第1端子をセットして第1保持部材を合体させる作業と、第2端子をセットして第2保持部材を合体させる作業とを明確に区別してそれらの各作業を実施できる。このため、端子が間違ったキャビティにセットされることが抑制され、コネクタの組立不良が抑制される。
【0013】
(2)(1)のコネクタであって、前記第2方向に沿って前記第2正規位置に移動する前記第2保持部材が、前記第1正規位置の手前に位置する前記第1保持部材と干渉する位置関係に設定されていてもよい。
【0014】
この場合、第1保持部材が第1正規位置の手前に位置する状態では、第2保持部材が当該第1保持部材に干渉する。このため、第2保持部材を第2正規位置に移動させることができないことをもって、第1保持部材が正規位置に組付けられていないことを知ることができる。これにより、コネクタの組立不良が抑制される。
【0015】
(3)(1)又は(2)のコネクタであって、前記第1端子収容部は、前記第2端子収容部とは反対側に第1セット用開口を有し、前記第1方向は前記第1キャビティの延在方向に沿った方向であり、前記第1正規位置は前記第1保持部材が前記第1セット用開口を塞ぐ位置であり、前記第2端子収容部は、前記第2キャビティの延在方向一方側の第2セット用開口と、前記第1端子収容部とは反対側の位置決め用開口とを有し、前記第2方向は前記第2キャビティの延在方向と交差する方向であり、前記第2正規位置は前記第2保持部材が前記位置決め用開口に嵌め込まれた位置であってもよい。
【0016】
この場合、第1保持部材は、第1キャビティの延在方向に沿った第1方向に沿って第1正規位置に達することができる。第2保持部材は、第2キャビティの延在方向と交差する第2方向に沿って第2正規位置に達することができる。このため、第1端子のセット作業と第2端子のセット作業とを明確に異ならせることができ、コネクタの組立不良が抑制される。
【0017】
(4)(3)のコネクタであって、前記第1キャビティの内周部のうち前記第1セット用開口とは反対側に第1端子位置決め凸部が形成され、前記第2保持部材に前記第2キャビティ内に突出可能な第2端子位置決め凸部が形成されていてもよい。
【0018】
これにより、第1キャビティ内の第1端子については、第2端子収容部側から第1端子位置決め凸部によって位置決めすることができる。第2キャビティ内の第2端子については、位置決め用開口側から第2キャビティ内に突出する第2端子位置決め凸部によって位置決めすることができる。このため、第1キャビティ及び第2キャビティにおいて、端子の姿勢を揃えやすい。また、第1保持部材に端子位置決め用の凸部を形成しなくてもよいので、第1保持部材が第1キャビティの延在方向に沿って移動して第1正規位置に達する構成を実現し易い。
【0019】
(5)(4)のコネクタであって、前記第2端子が前記第2キャビティにセット不完全な状態で、前記第2端子位置決め凸部が前記第2端子に干渉し、前記第2端子位置決め凸部が前記第2端子に干渉した状態と、前記第2方向に沿って前記第2正規位置に移動する前記第2保持部材が、前記第1正規位置の手前に位置する前記第1保持部材と干渉した状態とで、前記第2保持部材の少なくとも一部が前記ハウジングから突出した状態となってもよい。
【0020】
この場合、第2保持部材の少なくとも一部がハウジングから突出した状態となることで、第1保持部材が第1正規位置に達していないこと、又は、第2端子が第2キャビティにセット不完全な状態であることを知ることができる。
【0021】
(6)(3)から(5)のいずれか1つのコネクタであって、前記第1保持部材は、前記第1セット用開口を塞ぐカバー本体と、前記カバー本体の両側から前記第1端子収容部の両側面に沿って延びる一対の側壁部とを含み、前記一対の側壁部の少なくとも一方の先端部が部分的に突出する干渉用凸部を有し、前記第1保持部材が前記第1正規位置に達する前の状態で、前記干渉用凸部が、前記第2正規位置に向う前記第2保持部材に干渉する位置に配置され、前記第1保持部材が前記第1正規位置に達した状態で、前記干渉用凸部が、前記第2正規位置に向う前記第2保持部材の移動経路を避けた位置に配置されてもよい。
【0022】
この場合、第1保持部材が不完全な組付状態であると、第2保持部材が干渉用凸部に干渉することで、当該不完全な組付状態であることを知ることができる。
【0023】
(7)(6)のコネクタであって、前記第2保持部材は、前記位置決め用開口に装着されるリテーナ本体と、前記リテーナ本体の両側から前記第2端子収容部の両側に沿って延びる一対の係止壁部とを含み、前記一対の係止壁部の少なくとも一方が前記干渉用凸部と干渉可能な位置に配置されてもよい。
【0024】
これにより、リテーナの係止壁部を利用して、干渉させることができる。係止壁部は、干渉用凸部が無い部分でハウジングに係止することができるので、当該係止壁部の長さを長くできる。
【0025】
(8)(7)のコネクタであって、前記ハウジングは、前記第2保持部材が前記第2正規位置に位置する状態で前記一対の係止壁部と係止する一対の係止部と、前記第2保持部材が前記第2端子を位置決めする前の状態で前記一対の係止壁部と係止する一対の仮係止部とを含み、前記一対の係止壁部が前記一対の仮係止部に係止した状態で、前記一対の係止壁部の少なくとも一方と前記干渉用凸部との干渉を回避しつつ、前記第1保持部材が前記第1正規位置に向けて移動可能に設定されていてもよい。
【0026】
これにより、第2保持部材をハウジングに仮組みした状態で、第1保持部材を第1正規位置に向けて移動させることができる。このため、コネクタの組立作業性に優れる。
【0027】
(9)(7)又は(8)のコネクタであって、前記一対の係止壁部の少なくとも一方が、前記ハウジング側に突出し、前記第2方向に沿って延びるガイド凸部を有し、前記ハウジングに前記ガイド凸部を案内する案内溝が形成され、前記一対の係止壁部のうち前記ガイド凸部が形成された部分が前記干渉用凸部と干渉可能に形成されていてもよい。
【0028】
この場合、一対の係止壁部のうち前記ガイド凸部が形成された部分が前記干渉用凸部と干渉可能に形成されているため、第1保持部材が第1正規位置に組付けられていないときに、干渉状態がより確実に維持される。
【0029】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のコネクタの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0030】
[実施形態]
以下、実施形態に係るコネクタについて説明する。
図1はコネクタ10を示す斜視図である。
図2及び
図3はコネクタ10を示す分解斜視図である。
図4は
図1のIV-IV線断面図である。
図2から
図4において端子10A、10Bが示されており、
図4において電線18が2点鎖線で示されている。
【0031】
<コネクタの全体構造>
コネクタの全体構造について説明する。コネクタ10は、第1端子10Aと、第2端子10Bとを保持する。
【0032】
第1端子10A及び第2端子10Bは、金属板がプレス加工等されることによって形成される。第1端子10Aは、被覆圧着部11Aと、芯線圧着部12Aと、端子接続部13Aとを備える。被覆圧着部11Aは、電線18の端部の被覆部に圧着される部分である。芯線圧着部12Aは、電線18の端部に露出する芯線部に圧着される部分である。端子接続部13Aは、相手側の端子に接続される部分であり、例えば、筒状に形成されている。被覆圧着部11Aと芯線圧着部12Aと端子接続部13Aとは、この順で直線状に並んでいる。被覆圧着部11A及び端子接続部13Aの厚みは、芯線圧着部12Aの厚みよりも大きい。このため、第1端子10Aを側方から観察すると、芯線圧着部12A上であって被覆圧着部11Aと端子接続部13Aとの間に凹みが観察される。
【0033】
第2端子10Bも、第1端子10Aと同様に、被覆圧着部11Bと、芯線圧着部12Bと、端子接続部13Bとを備える。
【0034】
なお、第1端子10Aと第2端子10Bとは、サイズ及び素材等が同じ端子であってもよいし、サイズ又は素材が異なる端子であってもよい。
【0035】
本実施形態では、コネクタ10は、複数(ここでは2つ)の第1端子10Aと、複数(ここでは2つ)の第2端子10Bとを備える。複数の第1端子10Aは、並列状態で一列に並んでいる。複数の第2端子10Bも並列状態で一列に並んでいる。複数の第1端子10Aと複数の第2端子10Bとは、互いに隣合っている。つまり、コネクタ10は、複数の第1端子10Aと複数の第2端子10Bとを、第1段と第2段とに分けて保持している。なお、コネクタ10が保持する第1端子10A及び第2端子10Bの数は任意である。
【0036】
以下の説明において、第1端子10Aの延在方向において端子接続部13A側を前側、被覆圧着部11A側を後側ということがある。また、第1端子10A側を下側、第2端子10B側を上側という場合がある。さらに、第1端子10Aに立って前側を向いた状態を想定して左右方向を参照する場合がある。
【0037】
コネクタ10は、ハウジング30と、第1保持部材としてのカバー60と、第2保持部材としてのリテーナ80とを備える。
【0038】
ハウジング30は、樹脂等によって形成されており、第1端子収容部32と、第2端子収容部42とを備える。第1端子収容部32は、第1端子10Aを収容する第1キャビティ34を有している。本実施形態では、第1端子収容部32は、並列状態で並ぶ複数(ここでは2つ)の第1キャビティ34を有する。第2端子収容部42は、第2端子10Bを収容する第2キャビティ44を有している。本実施形態では、第2端子収容部42は、並列状態で並ぶ複数(ここでは2つ)の第2キャビティ44を有する。
【0039】
カバー60は第1端子収容部32と合体して第1キャビティ34内に第1端子10Aを保持する。つまり、カバー60が第1正規位置に取付けられていない状態で、第1端子10Aが第1キャビティ34にセットされる。この状態で、カバー60が第1端子収容部32に合体するように取付けられる。すると、第1端子10Aが第1キャビティ34から抜出ないようになる。第1端子10Aが第1キャビティ34から抜出ないように、カバー60が第1端子収容部32に合体した位置が第1正規位置である(
図1及び
図4参照)。カバー60が第1正規位置に達する前の状態を非正規状態という場合がある。
【0040】
リテーナ80は第2端子収容部42と合体して第2キャビティ44内に第2端子10Bを保持する。つまり、リテーナ80が第2正規位置に取付けられていない状態で、第2端子10Bが第2キャビティ44にセットされる。この状態で、リテーナ80が第2端子収容部42に合体するように取付けられる。すると、第2端子10Bが第2キャビティ44から抜出ないようになる。第2端子10Bが第2キャビティ44から抜出ないように、リテーナ80が第2端子収容部42に合体した位置が第2正規位置(
図1及び
図4参照)である。リテーナ80が第2正規位置に達する前の状態を非正規状態という場合がある。
【0041】
カバー60は、第1方向P1(
図2参照)に沿って第1正規位置に達して第1端子収容部32と合体することができる。リテーナ80は、第1方向とは異なる第2方向P2(
図2参照)に沿って第2正規位置に達して第2端子収容部42と合体することができる。よって、ハウジング30に対するカバー60とリテーナ80との取付作業が異なっている。よって、第1キャビティ34に対する第1端子10Aのセット及び保持作業と、第2キャビティ44に対する第2端子10Bのセット及び保持作業とは、作業者にとって明確に異なる作業として認識され得る。
【0042】
また、カバー60が第1正規位置の手前に位置する場合、第2方向P2に沿って第2正規位置に移動するリテーナ80がカバー60に干渉する位置関係に設定されている。リテーナ80がカバー60に干渉する位置関係とは、リテーナ80がカバー60に当って第2正規位置に向けて移動できなくなる位置関係である。つまり、カバー60がハウジング30に対して不完全な合体状態となっている場合、リテーナ80がハウジング30に対して完全に合体されない。このため、リテーナ80がハウジング30に完全に合体されないこと、つまり、第2正規位置に達することができないことによって、カバー60がハウジングに対して不完全な合体状態であることが容易に検知され得る。
【0043】
各部構成についてより具体的に説明する。
【0044】
<第1端子の保持構造について>
第1端子収容部32が第1端子10Aを保持する構成中心により具体的に説明する。
図5は
図1のV-V線部分断面図である。
【0045】
図1から
図5に示すように、ハウジング30は、第1端子収容部32と第2端子収容部42との間に位置する共通板部31を有している。共通板部31の両側縁から一対の第1キャビティ側壁33aが延出している。共通板部31の幅方向中間部から中間仕切33bが延出している。一対の第1キャビティ側壁33a及び中間仕切33bは、共通板部31に対して同じ主面側に突出している。一対の第1キャビティ側壁33a及び中間仕切33bは、ハウジング30の幅方向において間隔をあけて並列状態に並んでいる。第1端子収容部32は、共通板部31のうち下側部分と一対の第1キャビティ側壁33aと中間仕切33bとを備える構成であり、一対の第1キャビティ側壁33aと中間仕切33bとの各隙間に複数の第1キャビティ34が形成される。
【0046】
ハウジング30の前縁には、前後方向に対して直交する方向に延在する前板部31Fが設けられている。前板部31Fは、第1キャビティ34の前端に位置している。第1キャビティ34内に配置された第1端子10Aは、前板部31Fに接することで、前方への移動が規制される。前板部31Fには、相手側端子(例えば、細長い板部又はピン状部分を有するオス端子)を挿入可能な接続孔31Faが形成されている。相手側端子は、当該接続孔31Faを通って第1キャビティ34内の第1端子10Aに接続され得る。
【0047】
第1端子収容部32は、第2端子収容部42とは反対側に第1セット用開口35を有している。第1セット用開口35は下方に開口するスリット状に形成されている。第1セット用開口35は、第1端子10Aよりも長い。このため、第1端子10Aは、第1セット用開口35を通って第1キャビティ34内にセットされ得る。具体的には、第1端子10Aは、第1端子収容部32の下側から第1セット用開口35を通って第1キャビティ34内にセットされ得る。なお、実際の作業時には、第1セット用開口35を上向きにして、上方から第1セット用開口35を通って第1キャビティ34内にセットされることも想定される。第1端子10Aから延び出る電線18は、第1キャビティ34の後方開口を通って外側に延び出ることができる。
【0048】
第1キャビティ34の内周部のうち第1セット用開口35とは反対側に第1端子位置決め凸部36が形成されている。第1キャビティ34の内周部のうち第1セット用開口35とは反対側の部分とは、共通板部31側の部分である。第1端子位置決め凸部36は、第1キャビティ34の延在方向中間部、より具体的には、第1キャビティ34の延在方向において芯線圧着部12Aが位置する領域に形成されている。そして、第1キャビティ34内に第1端子10Aが配置された状態で、第1端子位置決め凸部36が第1端子10Aのうち被覆圧着部11Aと端子接続部13Aとの間の凹部に嵌り込むことができる。これにより、第1端子10Aがその延在方向において位置決めされ、後方への抜けが抑制される。
【0049】
カバー60は、第1セット用開口35を塞ぐように第1端子収容部32に合体する。これにより、第1端子10Aが第1キャビティ34から脱することを抑制する。ここでは、カバー60は、第1セット用開口35を塞いだ状態で、第1端子10Aが第1端子位置決め凸部36から離れる方向に移動することを規制する役割を果す。これにより、第1端子位置決め凸部36が第1端子10Aの凹部に嵌った状態が維持され、第1端子10Aが第1キャビティ34から脱することが抑制される。
【0050】
上記のように、カバー60が第1セット用開口35を塞ぐ位置が、カバー60が第1端子収容部32に正常に合体した第1正規位置である(
図1及び
図4参照)。カバー60は、第1方向P1に沿って移動することで、第1正規位置に達することができる。本実施形態では、第1方向P1は、第1キャビティ34の延在方向に沿った方向である。当該構成を実現する構成例が以下に説明される。
【0051】
具体的には、一対の第1キャビティ側壁33aの外面に、合体用凸部37が形成されている。合体用凸部37のうち第2端子収容部42側に、合体用面37fが形成されている。合体用面37fは、第1端子10Aの延在方向及びハウジング30の幅方向に沿う合体支持面37faと、前方に向うに連れて第2端子収容部42側に向う合体ガイド面37fbとを含む。合体用面37fよりも第2端子収容部42側には、カバー60の挿入側合体用凸部65を配置可能な隙間が形成されている。
【0052】
また、一対の第1キャビティ側壁33aの外面、ここでは、後部寄りの位置に、抜け止凸部38が形成されている。抜け止凸部38は、後方に向って徐々に突出寸法が小さくなる部分を含む形状に形成されている。
【0053】
カバー60は、カバー本体62と、一対の側壁部64とを備える。
【0054】
カバー本体62は、複数の第1キャビティ34の第1セット用開口35を一括して塞ぐことができる大きさに広がる板状、ここでは、方形板状に形成されている。
【0055】
一対の側壁部64は、カバー本体62の両側から第1端子収容部32の両側面に向って延びる板状、ここでは、細長い板状に形成されている。側壁部64の内面に、挿入側合体用凸部65が形成されている。挿入側合体用凸部65は、側壁部64の内面であってカバー本体62とは離れた位置に形成されている。ここでは、挿入側合体用凸部65は、側壁部64の内面のうち先端縁に沿って延びる細長い凸部である。挿入側合体用凸部65のうちカバー本体62側に、挿入側合体用面65fが形成されている。挿入側合体用面65fは、合体支持面37faと同様に、第1端子10Aの延在方向及びハウジング30の幅方向に沿う面である。
【0056】
また、一対の側壁部64の内面、ここでは、後部寄りの位置に、抜け止凸部66が形成されている。抜け止凸部66は、前方に向って徐々に突出寸法が小さくなる部分を含む形状に形成されている。
【0057】
カバー60の合体作業例が説明される。第1キャビティ34内に第1端子10Aが収容された状態で、カバー60が第1端子収容部32の後方から当該第1端子収容部32に外嵌めされる(
図6参照)。この際、一対の側壁部64が一対の第1キャビティ側壁33aの外側に配置され、挿入側合体用凸部65が合体用凸部37よりも第2端子収容部42側の隙間に挿入される。
【0058】
カバー60が前方に押されると、抜け止凸部66が抜け止凸部38を乗越えて、当該抜け止凸部38に対して後方に抜けないように係止する。この状態で、カバー60は、前板部31Fに接した状態になる。この状態で、合体支持面37faと挿入側合体用面65fとが対向し合った状態で接し、カバー60が下方に外れることが抑制される(
図6の2点鎖線参照)。
【0059】
カバー60が前方に移動する際、合体ガイド面37fbがカバー60を徐々に第2端子収容部42側に向うように案内してもよい。これにより、初期段階では、カバー60が第1端子10Aと接触し難くなり、カバー60が円滑に移動することができる。
【0060】
カバー60は、第1正規位置に達する際に第1方向P1に沿って移動すればよく、その前に第1方向P1とは異なる方向に移動してもよい。例えば、カバー60が第1端子収容部32の後方から当該第1端子収容部32に外嵌めされなくてもよい。例えば、カバー60が第1端子収容部32の下方から当該第1端子収容部32に向って押され、一対の側壁部64が合体用凸部37を幅方向外側から乗越えて当該合体用凸部37に対して第2端子収容部42側の隙間に入り込んでもよい。
【0061】
上記のようにカバー60が第1端子収容部32に合体することで、カバー本体62の内面が第1セット用開口35側から第1キャビティ34内の第1端子10Aに接する。これにより、第1端子10Aが第1セット用開口35側に移動することが抑制され、第1端子位置決め凸部36が第1端子10Aに係止した状態に保たれる。第1端子位置決め凸部36が第1端子10Aに係止することによって、第1端子10Aが第1キャビティ34の後方に抜けることが抑制される。
【0062】
<第2端子の保持構造について>
第2端子収容部42が第2端子10Bを保持する構成中心により具体的に説明する。
【0063】
ハウジング30は、共通板部31の両側縁から一対の第2キャビティ側壁43aが延出している。共通板部31の幅方向中間部から中間仕切43bが延出している。一対の第2キャビティ側壁43a及び中間仕切43bは、共通板部31に対して、一対の第1キャビティ側壁33a及び中間仕切33bとは反対側の主面側に突出している。一対の第2キャビティ側壁43a及び中間仕切43bは、ハウジング30の幅方向において間隔をあけて並列状態に並んでいる。一対の第2キャビティ側壁43a及び中間仕切43bのうち共通板部31とは反対側の開口の少なくとも一部が天井板部43cによって閉じられている。第2端子収容部42は、共通板部31のうち上側部分と一対の第2キャビティ側壁43aと中間仕切43bと天井板部43cを備える構成であり、一対の第2キャビティ側壁43aと中間仕切43bとの各隙間に複数の第2キャビティ44が形成される。
【0064】
上記前板部31Fは、第2キャビティ44の前端にも位置している。第2キャビティ44内に配置された第2端子10Bは、前板部31Fに接することで、前方への移動が規制される。前板部31Fのうち第2キャビティ44に対応する位置にも接続孔31Faが形成されている。相手側端子は、当該接続孔31Faを通って第2キャビティ44内の第2端子10Bに接続され得る。
【0065】
第2端子収容部42は、第2キャビティ44の延在方向一方側、ここでは、後方側に第2セット用開口45を有している。第2セット用開口45は、第2端子10Bを前後方向に投影した形状よりも大きく開口している。このため、第2端子10Bは、第2セット用開口45を通って第2キャビティ44内にセットされ得る。なお、第1キャビティ34には当該第1キャビティ34内に突出する第1端子位置決め凸部36が形成されている。このため、第1キャビティ34の後方側開口から第1端子10Aを挿入すると、その途中で当該第1端子10Aが第1端子位置決め凸部36に引っ掛ることが考えられる。このため、第1キャビティ34については、上記第1セット用開口35から第1端子10Aをセットすることが適切であると考えられる。第2キャビティ44には、第1端子位置決め凸部36のように抜け止を図るための凸部が無いため、第2端子10Bは、上記第2セット用開口45を通って円滑に第2キャビティ44内にセットされる。
【0066】
第2端子収容部42は、第1端子収容部32とは反対側の位置決め用開口48を有している。位置決め用開口48は、位置決めのためのリテーナ80を装着するための開口である。本実施形態では、第2キャビティ44のうち第1端子収容部32とは反対側に位置決め用開口48が形成されている。位置決め用開口48は、上記天井板部43cよりも後方に位置している。本実施形態では、位置決め用開口48は、第2キャビティ44の後方開口、即ち、第2セット用開口45に達している。位置決め用開口は、第2キャビティの延在方向の中間部において部分的に形成されることも想定される。
【0067】
第2キャビティ44内にセットされた第2端子10Bのうち被覆圧着部11Bと端子接続部13Bとの間の凹部は、第2セット用開口45を介して外部に露出する位置に配置される。
【0068】
リテーナ80は、位置決め用開口48に嵌め込まれるようにして、第2端子収容部42に合体する。この状態で、リテーナ80が第2端子10Bの凹部に嵌って、第2端子10Bが第2キャビティ44から第2セット用開口45側に脱することが抑制される。
【0069】
上記のように、リテーナ80が位置決め用開口48に嵌って第2端子10Bの凹部に嵌った状態が、第2正規位置である(
図1及び
図4参照)。リテーナ80は、第2方向P2に沿って移動することで、第2正規位置に達することができる。本実施形態では、第2方向P2は、第2キャビティ44の延在方向と交差する方向であり、より具体的には、第2キャビティ44の延在方向と直交する方向である。当該構成を実現する構成例が以下に説明される。
【0070】
具体的には、一対の第2キャビティ側壁43aの外面に、一対の係止部46と、一対の仮係止部47とが形成されている。
【0071】
一対の係止部46は、一対の第2キャビティ側壁43aの外面から外方に突出している。一対の係止部46は、第2キャビティ側壁43aの先端、つまり、上方に向って徐々に突出寸法が小さくなる部分を含む形状に形成されている。
【0072】
一対の仮係止部47は、一対の第2キャビティ側壁43aの外面から外方に突出している。一対の仮係止部47は、第2キャビティ側壁43aの先端、つまり、上方に向って徐々に突出寸法が小さくなる部分を含む形状に形成されている。
【0073】
一対の仮係止部47は、一対の係止部46に対して第1端子収容部32から遠ざかる側、即ち、上側に位置している。このため、リテーナ80は、一対の仮係止部47に仮係止した後、一対の係止部46に係止することができる。
【0074】
リテーナ80は、リテーナ本体82と、一対の係止壁部84とを備える。
【0075】
リテーナ本体82は、複数の第2キャビティ44に対応する位置決め用開口48を一括して塞ぐことができる大きさに広がる板状、ここでは、方形板状に形成されている。
【0076】
リテーナ本体82に第2端子位置決め凸部83が形成されている。ここでは、複数の第2キャビティ44に対応して複数の第2端子位置決め凸部83が並列状態で形成されている。第2端子位置決め凸部83は、第2キャビティ44の延在方向中間部、より具体的には、第2キャビティ44の延在方向において芯線圧着部12Bが位置する領域に形成されている。そして、リテーナ本体82が位置決め用開口48に装着された状態で、第2端子位置決め凸部83が第2キャビティ44内に突出することができる。この状態で、第2端子位置決め凸部83が、第2キャビティ44内の第2端子10Bのうち被覆圧着部11Bと端子接続部13Bとの間の凹部に嵌り込むことができる。これにより、第2端子10Bがその延在方向において位置決めされ、後方への抜けが抑制される。
【0077】
一対の係止壁部84は、リテーナ本体82の両側から第2端子収容部42の両側、ここでは、一対の第2キャビティ側壁43aの外面に沿って延びる。一対の係止壁部84の内面のうち先端寄りの位置に抜け止凸部85が形成されている。抜け止凸部85は、係止壁部84の内面から突出する凸部である、抜け止凸部85は、係止壁部84の先端側に向って徐々に突出寸法が小さく部分を含む形状に形成されている。一対の係止壁部84は、一対の仮係止部47又は一対の係止部46に係止することができる。
【0078】
上記一対の係止壁部84の少なくとも一方が、ハウジング30側に突出し、第2方向P2(ここでは上下方向)に沿って延びるガイド凸部87を有している。本実施形態では、係止壁部84の内面のうちの前縁に沿ってガイド凸部87が形成されている。
【0079】
ハウジング30に、ガイド凸部87を案内する案内溝30gが形成されている。案内溝30gは、係止部46と仮係止部47の前端と、当該前端から前側に離れて位置する凸部との間に形成されている。
【0080】
第2方向P2に沿ってリテーナ80が第2端子収容部42に装着される際に、ガイド凸部87が案内溝30gに沿って案内される。これにより、リテーナ80が第2方向P2に沿って円滑に移動することができる。また、リテーナ80が第2端子収容部42に対して正常に合体して第2正規位置に位置する状態で、ガイド凸部87が案内溝30gの側面、ここでは、係止部46と仮係止部47の前端に接する。これにより、リテーナ80が第2端子収容部42に対して後方に脱することが抑制される。
【0081】
本実施形態では、リテーナ本体82の内面の中間部のうち前よりの位置に凸部が形成されており、当該凸部が中間仕切43bに形成された凹部に嵌ることによっても、リテーナ80が後方に脱することが抑制されている。
【0082】
リテーナ80の合体作業例が説明される。
【0083】
例えば、リテーナ80の一対の抜け止凸部85が一対の仮係止部47に係止した状態とされたものが準備される(
図6参照)。この状態では、第2端子位置決め凸部83は第2キャビティ44内に突出していない。このため、第2端子10Bは、後方の第2セット用開口45を通じて円滑に第2キャビティ44内に挿入され得る。つまり、リテーナ80が第2端子10Bを位置決めする前の状態で、一対の仮係止部47が一対の係止壁部84の抜け止凸部85と係止している。
【0084】
第2キャビティ44内に第2端子10Bが収容された状態で、リテーナ80がさらに押される。リテーナ80が押込まれる際、ガイド凸部87が案内溝30gによって案内されるので、リテーナ80は第2方向P2に沿って円滑に移動することができる。リテーナ80が押されると、一対の抜け止凸部85が一対の係止部46を乗越えて、当該一対の係止部46に抜け止係止することができる。これにより、リテーナ80は、第2方向P2に沿って移動して第2正規位置に達し、第2端子収容部42に正常に合体した状態となる。つまり、リテーナ80が第2正規位置に位置する状態で、一対の係止部46が一対の係止壁部84の抜け止凸部85に係止する。
【0085】
リテーナ80は、第2正規位置に達する際に第2方向P2に沿って移動すればよく、その前に第2方向P2とは異なる方向に移動してもよい。また、第2方向P2は、第2キャビティ44の延在方向に対して直交する方向とは異なる方向、例えば、第2キャビティ44の延在方向に対して斜め方向に沿った方向であってもよい。
【0086】
<干渉のための構成について>
上記したように、カバー60が第1正規位置の手前に位置する場合、第2方向P2に沿って第2正規位置に移動するリテーナ80がカバー60に干渉する位置関係に設定されている。そのための構成例について説明する。
【0087】
上記カバー60の一対の側壁部64の少なくとも一方の先端部が干渉用凸部67を有している。本実施形態では、両方の側壁部64が干渉用凸部67を有している。干渉用凸部67は、側壁部64の先端から第2端子収容部42側に突出している。干渉用凸部67は、側壁部64の先端において前後方向において部分的に突出している。このため、側壁部64のうち干渉用凸部67が形成されていない部分は、当該干渉用凸部67よりも部分的に凹んでいる。
【0088】
干渉用凸部67は、カバー60が第1正規位置に達する前の状態では、第2正規位置に向うリテーナ80の係止壁部84と干渉する位置に形成されている。また、干渉用凸部67は、カバー60が第1正規位置に達した状態では、第2正規位置に向うリテーナ80の係止壁部84の移動経路を避けた位置に形成されている。
【0089】
本実施形態では、ハウジング30の側面において、カバー60の側壁部64と、リテーナ80の係止壁部84とが上下方向に対向し合う。前後方向において、リテーナ80の係止壁部84がカバー60の側壁部64が部分的に重なり合う。前後方向において、カバー60の側壁部64のうち係止壁部84が重なる部分には干渉用凸部67は形成されていない。前後方向において、カバー60の側壁部64のうち係止壁部84が重なる部分よりも前側に干渉用凸部67が形成されている。
【0090】
例えば、カバー60が第1方向P1に沿って第1正規位置に達する手前に位置するとする(
図7参照)。この状態では、干渉用凸部67の後端部は、係止壁部84の前端部の下方に位置している。このため、上記状態で、リテーナ80を押すと、係止壁部84が干渉用凸部67に干渉する。これにより、リテーナ80を押下げできず、リテーナ80がハウジング30の上面よりも突出した状態に保たれる。
【0091】
このため、リテーナ80の装着時に、当該リテーナ80を正常に合体できないことに気付くことによって、当該カバー60の合体が不正常である可能性に容易に気付くことができる。
【0092】
なお、係止壁部84のうちガイド凸部87が形成された部分が干渉用凸部67に干渉するため、ガイド凸部87と干渉する係止壁部84が変形し難い。このため、例えば、リテーナ80を強い力で押下げても、干渉用凸部67と干渉した係止壁部84が外向きに変形等し難く、係止壁部84と干渉用凸部67との干渉状態が保たれ易い。
【0093】
また、第2端子10Bが第2キャビティ44内に奥まで十分に挿入されない場合、第2端子位置決め凸部83が被覆圧着部11Bに干渉する。このため、第2端子10Bが第2キャビティ44にセット不完全な状態でも、第2端子位置決め凸部83が第2端子10Bに干渉し、リテーナ80を押下げできない状態となる。この場合でも、リテーナ80の装着時に、当該リテーナ80を正常に合体できないことに気付くことによって、第2端子10Bのセットが不正常である可能性に容易に気付くことができる。
【0094】
つまり、リテーナ80を正常に合体できないことによって、カバー60の合体不正常又は第2端子10Bのセット不正常に気付くことができる。リテーナ80の合体が正常になされていないことは、上記のように、リテーナ80の一部がハウジング30の上面から突出していることを確認することによって、容易に気付くことができる。
【0095】
カバー60が正常に合体している場合、第2端子10Bが奥まで挿入されている場合には、一対の係止壁部84の抜け止凸部85は、係止部46に係止する。この状態では、リテーナ80の上面は、ハウジング30の上面と同一面上に配置されるか、当該上面よりも凹んでいてもよい。
【0096】
なお、リテーナ80の係止壁部84の抜け止凸部85が仮係止部47に係止した状態では、係止壁部84の先端部は、干渉用凸部67の移動軌跡から退避する位置に配置される。このため、リテーナ80が第2端子収容部42に仮装着された状態で、カバー60は、干渉用凸部67を係止壁部84に干渉させることなく、第1方向P1に沿って移動して第1正規位置に達することができる。
【0097】
よって、ハウジング30にリテーナ80が仮保持されたものを準備しておき、当該リテーナ80が仮保持されたハウジング30に対して第1端子10A、第2端子10B及びカバー60等の組付を行える。
【0098】
<効果等>
以上のように構成されたコネクタによると、第1保持部材としてのカバー60が第1方向P1に沿って第1正規位置に達して第1端子収容部32と合体し、第2保持部材としてのリテーナ80が第1方向P1とは異なり第2方向P2に沿って第2正規位置に達して第2端子収容部42と合体する。このため、合体に至るためにリテーナ80が移動する第1方向P1とカバー60が移動する第2方向P2とが異なる。よって、第1端子10Aをセットしてカバー60を合体させる作業と、第2端子10Bをセットしてリテーナ80を合体させる作業とを、明確に区別して各作業が実施される。このため、第1端子10Aと第2端子10Bとを間違えたり、それらのセット先を間違えたりすることが抑制され、コネクタ10の組立不良が抑制される。また、第1端子10Aと第2端子との取違えを抑制できることから、組立作業性が向上し、コネクタ10のコスト削減に貢献する。
【0099】
また、カバー60が第1正規位置の手前に位置する状態では、リテーナ80がカバー60に干渉する。このため、リテーナ80を第2正規位置に移動させることができないことをもって、カバーが第1正規位置に組付けられていないことを知ることができる。カバー60の装着不良がより確実に検知され、コネクタ10の組立不良の発生が抑制される。また、組立不良検査が容易になされることから、コネクタ10のコスト削減に貢献する。
【0100】
また、カバー60は、第1キャビティ34の延在方向に沿った第1方向P1に沿って第1正規位置に達することができる。リテーナ80は、第2キャビティ44の延在方向と交差する第2方向P2に沿って第2正規位置に達することができる。このため、カバー60の合体不良時に、カバー60とリテーナ80とを干渉させ易い。また、カバー60とリテーナ80との合体作業を明確に異ならせることができ、端子10A、10B間違い等によるコネクタ10の組立不良がより抑制される。
【0101】
また、第1キャビティ34に第1端子位置決め凸部36が形成され、リテーナ80に第2端子位置決め凸部83が形成されている。このため、第1キャビティ34内の第1端子10Aについては、第2端子収容部42側から第1端子位置決め凸部36によって位置決めすることができる。第2キャビティ44内の第2端子10Bについては、位置決め用開口48から第2端子位置決め凸部83によって位置決めすることができる。このため、第1キャビティ34及び第2キャビティ44において、位置決め凸部36、83が嵌る凹部の向きを揃えることができ、端子10A、10Bの姿勢を揃えやすい。また、リテーナ80に端子位置決め用の凸部を形成しなくてもよいので、リテーナ80が第1キャビティ34の延在方向に沿う第1方向P1に沿って移動して第1正規位置に達する構成を実現し易い。
【0102】
また、リテーナ80の少なくとも一部がハウジング30から突出した状態となることで、カバー60が第1正規位置に達していないこと、又は、第2端子10Bが第2キャビティ44にセット不完全な状態であることを知ることができる。つまり、1箇所の状態を観察することで、2箇所のいずれかの不良の発生を検知することができる。
【0103】
また、リテーナ80の側壁部の先端部が部分的に突出して干渉用凸部67とされている。そして、リテーナ80が第1正規位置に達する前の状態で、干渉用凸部67が第2正規位置に向うリテーナ80に干渉する。また、リテーナ80が第1正規位置に達した状態で、干渉用凸部67が第2正規位置に向うリテーナ80の移動経路を避けた位置に配置される。このため、カバー60が不完全な組付状態であると、リテーナ80が干渉用凸部67に干渉することで、当該不完全な組付状態であることを知ることができる。
【0104】
また、リテーナ80の係止壁部84が上記干渉用凸部67と干渉し得るため、当該リテーナ80の係止壁部84を利用して、カバー60が不完全な組付状態であることを知る構成を実現できる。また、係止壁部84は、干渉用凸部67が無い部分でハウジング30に係止することができるので、当該係止壁部84の長さを長くできる。これにより、係止壁部84の弾性変形領域を大きくでき、リテーナ80の円滑な合体作業に貢献する。
【0105】
また、リテーナ80が仮係止した状態で、係止壁部84と干渉用凸部67との干渉を回避しつつ、カバー60が第1正規位置に向って移動することができる。よって、ハウジング30とリテーナ80とを別部品ではなく、両者が仮組みされた部品を利用して、コネクタ10の組立を実行できる。これにより、コネクタ10の組立作業性に優れる。
【0106】
また、一対の係止壁部84のうちガイド凸部87が形成された部分が干渉用凸部67と干渉可能に形成されているため、係止壁部84が干渉用凸部67と干渉しても係止壁部84が変形し難い。このため、干渉状態がより確実に維持される。
【0107】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【符号の説明】
【0108】
10 コネクタ
10A 第1端子
10B 第2端子
11A、11B 被覆圧着部
12A、12B 芯線圧着部
13A、13B 端子接続部
18 電線
30 ハウジング
30g 案内溝
31 共通板部
31F 前板部
31Fa 接続孔
32 第1端子収容部
33a 第1キャビティ側壁
33b 中間仕切
34 第1キャビティ
35 第1セット用開口
36 第1端子位置決め凸部
37 合体用凸部
37f 合体用面
37fa 合体支持面
37fb 合体ガイド面
38 抜け止凸部
42 第2端子収容部
43a 第2キャビティ側壁
43b 中間仕切
43c 天井板部
44 第2キャビティ
45 第2セット用開口
46 係止部
47 仮係止部
48 位置決め用開口
60 カバー(第1保持部材)
62 カバー本体
64 側壁部
65 挿入側合体用凸部
65f 挿入側合体用面
66 抜け止凸部
67 干渉用凸部
80 リテーナ(第2保持部材)
82 リテーナ本体
83 第2端子位置決め凸部
84 係止壁部
85 抜け止凸部
87 ガイド凸部
P1 第1方向
P2 第2方向