(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044392
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】収納装置
(51)【国際特許分類】
G07G 1/00 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
G07G1/00 321B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149883
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津雪 泰弘
【テーマコード(参考)】
3E142
【Fターム(参考)】
3E142BA05
3E142FA48
3E142GA16
(57)【要約】
【課題】回転軸が互いに異なる2つの収納部を適切に連動させる。
【解決手段】収納装置は、第1開口部を有し、第1軸を中心に回動することにより第1開口部を開閉させることが可能な第1収納部と、第2開口部を有し、第1軸に平行な第2軸を中心に回動することにより第2開口部を開閉させることが可能であり、第1開口部及び第2開口部が開いている状態において第1開口部の少なくとも一部を覆うように設けられた第2収納部と、第1軸に平行な第3軸を中心に第1収納部に対して回動可能な状態で第1収納部に連結され、かつ、第2軸に平行な第4軸を中心に第2収納部に対して回動可能な状態で第2収納部に連結され、第1開口部及び第2開口部の開閉状態が互いに略同じになるように第1収納部及び第2収納部を互いに連動させる連結部材と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1開口部を有し、第1軸を中心に回動することにより前記第1開口部を開閉させることが可能な第1収納部と、
第2開口部を有し、前記第1軸に平行な第2軸を中心に回動することにより前記第2開口部を開閉させることが可能であり、前記第1開口部及び前記第2開口部が開いている状態において前記第1開口部の少なくとも一部を覆うように設けられた第2収納部と、
前記第1軸に平行な第3軸を中心に前記第1収納部に対して回動可能な状態で前記第1収納部に連結され、かつ、前記第2軸に平行な第4軸を中心に前記第2収納部に対して回動可能な状態で前記第2収納部に連結され、前記第1開口部及び前記第2開口部の開閉状態が互いに略同じになるように前記第1収納部及び前記第2収納部を互いに連動させる連結部材と、
を備える収納装置。
【請求項2】
前記第1軸から前記第3軸までの距離が、前記第2軸から前記第4軸までの距離に略等しい、
請求項1に記載の収納装置。
【請求項3】
前記第1開口部及び前記第2開口部が閉じている状態において、前記第1軸に平行な方向から見て、前記第1軸及び前記第3軸を繋ぐ第1仮想線分と、前記第2軸及び前記第4軸を繋ぐ第2仮想線分と、が略平行である、
請求項1に記載の収納装置。
【請求項4】
前記第1軸に平行な方向から見て、前記第1軸及び前記第3軸を繋ぐ第1仮想線分と、前記第3軸及び前記第4軸を繋ぐ連結仮想線分と、がなす角は、前記第1開口部及び前記第2開口部が閉じている状態から、前記第1開口部及び前記第2開口部が開いている状態までのいずれの状態においても180°未満である、
請求項1に記載の収納装置。
【請求項5】
前記第1開口部が開く方向に前記第1収納部を付勢する第1付勢部材と、
前記第2開口部が開く方向に前記第2収納部を付勢する第2付勢部材と、
前記第1開口部及び前記第2開口部が閉じた状態で、前記第1収納部及び前記第2収納部の少なくとも一方を回動不能な状態に保持することが可能な保持部材と、
を備え、
前記保持部材による保持が解除されることで、前記第1収納部及び前記第2収納部が、前記連結部材により連動した状態で、前記第1付勢部材及び前記第2付勢部材の付勢力により、前記第1開口部及び前記第2開口部が開く方向に回動する、
請求項1に記載の収納装置。
【請求項6】
前記第1開口部及び前記第2開口部が開いている状態において、前記連結部材による前記第1収納部及び前記第2収納部の連動を解除可能な解除機構を備える、
請求項1に記載の収納装置。
【請求項7】
前記解除機構は、
前記連結部材及び第2収納部の一方に設けられた、前記第1軸に垂直な面に沿って円弧状に延びるレールと、
前記連結部材及び第2収納部の他方に設けられた、前記レールに係合可能な係合部材と、
を備え、
前記第1開口部及び前記第2開口部が開いている状態における前記係合部材を、前記レールに沿って移動不能な位置から、前記レールに沿って移動可能な位置へ、前記第1軸に平行な方向に移動させることにより、前記第2開口部が閉じるように前記第2収納部が前記第1収納部と連動せずに回動するのを許容する、
請求項6に記載の収納装置。
【請求項8】
前記レールは、前記連結部材に設けられており、
前記係合部材は、前記第2収納部に設けられており、
前記レールは、前記第1開口部及び前記第2開口部が開いている状態において、前記第2軸に平行な方向から見て前記第2軸を中心とする円と重なる位置に設けられている、
請求項7に記載の収納装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金銭等を収納可能な収納部を有する収納装置がある。特許文献1には、上段及び下段の2つの収納部が設けられた収納装置において、これらの2つの収納部が共通の回転軸を中心に連動して回動(双方向に回転)することにより開閉する構造が開示されている。特許文献1においては、上段の収納部の保持アーム部に固定された連動ピンを、下段の収納部の側板部に設けられた円弧状のガイド溝の端部に当接させることで、上段及び下段の収納部を連動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の連動方法は、2つの収納部の回転軸が共通であることが前提となっており、2つの収納部の回転軸が互いに異なる場合には適用できないという課題がある。
【0005】
本発明は、回転軸が互いに異なる2つの収納部を適切に連動させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る収納装置は、
第1開口部を有し、第1軸を中心に回動することにより前記第1開口部を開閉させることが可能な第1収納部と、
第2開口部を有し、前記第1軸に平行な第2軸を中心に回動することにより前記第2開口部を開閉させることが可能であり、前記第1開口部及び前記第2開口部が開いている状態において前記第1開口部の少なくとも一部を覆うように設けられた第2収納部と、
前記第1軸に平行な第3軸を中心に前記第1収納部に対して回動可能な状態で前記第1収納部に連結され、かつ、前記第2軸に平行な第4軸を中心に前記第2収納部に対して回動可能な状態で前記第2収納部に連結され、前記第1開口部及び前記第2開口部の開閉状態が互いに略同じになるように前記第1収納部及び前記第2収納部を互いに連動させる連結部材と、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、回転軸が互いに異なる2つの収納部を適切に連動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】開状態の金銭収納装置を+X方向から見た図である。
【
図5】上段ドロア閉状態の金銭収納装置を+X方向から見た図である。
【
図6】閉状態における下段ドロア、上段ドロア及び連結部材を+X方向から見た図である。
【
図7】開状態における下段ドロア、上段ドロア及び連結部材を+X方向から見た図である。
【
図8】下段ドロア及び上段ドロアを閉じる場合に、第3軸及び第4軸が動く向きを示す図である。
【
図9】下段ドロア及び上段ドロアの連動態様を説明する図である。
【
図10】上段ドロア閉状態における下段ドロア、上段ドロア及び連結部材を+X方向から見た図である。
【
図12】連動解除ボタンが係合部材を押圧していない状態を示す断面図である。
【
図13】連動解除ボタンが係合部材を押圧している状態を示す断面図である。
【
図14】ロック切替機構の構成を示す断面図である。
【
図15】ロック切替機構の構成を示す断面図である。
【
図16】金銭収納装置におけるロック切替機構の位置を示す斜視図である。
【
図17】ロック切替機構を制御するための金銭収納装置の機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
<金銭収納装置の構成>
図1~
図3は、本実施形態の金銭収納装置1の構成を示す斜視図である。
金銭収納装置1(収納装置)は、顧客に商品を販売したりサービスを提供したりする店舗などにおいて会計に用いられるキャッシュレジスターである。金銭収納装置1のユーザは、例えば店舗の店員である。金銭収納装置1は、筐体3と、表示印字部2と、筐体3の内部に設けられ、会計時に受け渡される金銭を収納可能な下段ドロア10(第1収納部)及び上段ドロア20(第2収納部)などを備える。
【0011】
筐体3は、下段ドロア10及び上段ドロア20を保持している内部筐体32(
図2及び
図3参照)と、内部筐体32の外側に取り付けられた外装部材31と、を有する。また、筐体3は、略矩形状の底面3aと、底面3aがなす略矩形状における対向する2辺に連なり底面3aに垂直な略等脚台形状の2つの側面3b、3cと、側面3b、3cがなす台形の上底同士に連なる略矩形の上面3dと、側面3b、3cがなす台形の斜辺同士に連なる前面3eと、を有する。このうち前面3eは、会計時に顧客に向かう面である。筐体3には、上面3dから前面3eにかけて開口を有する凹部303が設けられており、表示印字部2は、凹部303に嵌合するように筐体3に着脱可能に装着されている。ただし、これに限られず、表示印字部2は、筐体3に固定されていてもよい。筐体3のうち前面3eとは反対側(背面側)は開口部3fとなっており、この開口部3fに、下段ドロア10及び上段ドロア20が設けられている。また、筐体3の1つの側面3cには、連動解除ボタン50(操作部材)が設けられている。連動解除ボタン50の機能については後述する。
【0012】
以下では、底面3aに垂直、かつ
図1における上方向に向かう方向をZ方向とする。また、Z方向及び側面3b、3cに垂直、かつ側面3bから側面3cに向かう方向をX方向とする。また、X方向及びZ方向に垂直、かつ前面3eから開口部3fに向かう方向をY方向とする。筐体3のうちの、Y方向について中央より-Y方向側の前面部301に、凹部303及び表示印字部2が設けられている。また、筐体3のうちの、Y方向について中央より+Y方向側の背面部302に、下段ドロア10及び上段ドロア20が設けられている。
【0013】
表示印字部2は、外部の端末装置6との間で無線によるデータ通信(例えば、ブルートゥース(登録商標)による近距離無線通信)が可能である。端末装置6は、例えばスマートフォンである。ただし、端末装置6はこれに限られず、タブレット型端末、ノート型のPC(パーソナルコンピュータ)、又は据置型のPC等であってもよい。表示印字部2は、端末装置6から送信される制御信号に基づいて、会計に係る情報を表示したり、印字紙に印字してレシートを出力したりする。
なお、金銭収納装置1に、ユーザの操作を受け付ける操作部が設けられていてもよく、この操作部に対する操作に応じて表示印字部2を動作させることが可能であってもよい。
【0014】
下段ドロア10は、X方向に平行な第1軸A1を中心に回動する。この回動は、第1軸A1を中心とする双方向の回転を含む。下段ドロア10は、
図2及び
図3に示すように、第1開口部10aを有し、第1軸A1を中心に回動することにより、第1開口部10aを塞ぐ第1部材(ここでは、上段ドロア20)と第1開口部10aとの位置関係を変化させて第1開口部10aを開閉させることが可能である。第1開口部10aが開いている状態において、第1開口部10aから金銭を投入することで下段ドロア10の内部に金銭を収納することができる。また、収納された金銭を第1開口部10aから取り出すことができる。以下では、第1開口部10aが開くように下段ドロア10を回動させることを、「下段ドロア10を開ける」とも記し、第1開口部10aが閉じるように下段ドロア10を回動させることを、「下段ドロア10を閉じる」とも記す。また、「第1開口部10aが開いている状態」は、
図2のように第1開口部10aが全開となっている状態を指すものとし、「第1開口部10aが閉じている状態」は、
図1のように第1開口部10aが完全に閉じている状態を指すものとする。本実施形態では、第1開口部10aが閉じている状態を基準(0°)とした場合に、第1軸A1を中心とした下段ドロア10の回動角φ1(
図7参照)の最大値は、54°である。すなわち、第1開口部10aが閉じている状態から開いている状態まで変化する場合に、下段ドロア10は、第1軸A1を中心に54°回転する。
【0015】
上段ドロア20は、第1軸A1に平行な第2軸A2を中心に回動する。この回動は、第2軸A2を中心とする双方向の回転を含む。上段ドロア20は、
図2に示すように、第2開口部20aを有し、第2軸A2を中心に回動することにより、第2開口部20aを塞ぐ第2部材(ここでは、筐体3のうちの上面3dをなす部分)と第2開口部20aとの位置関係を変化させて第2開口部20aを開閉させることが可能である。第2開口部20aが開いている状態において、第2開口部20aから金銭を投入することで上段ドロア20の内部に金銭を収納することができる。また、収納された金銭を第2開口部20aから取り出すことができる。以下では、第2開口部20aが開くように上段ドロア20を回動させることを、「上段ドロア20を開ける」とも記し、第2開口部20aが閉じるように上段ドロア20を回動させることを、「上段ドロア20を閉じる」とも記す。また、「第2開口部20aが開いている状態」は、
図2のように第2開口部20aが全開となっている状態を指すものとし、「第2開口部20aが閉じている状態」は、
図1のように第2開口部20aが完全に閉じている状態を指すものとする。本実施形態では、第2開口部20aが閉じている状態を基準(0°)とした場合に、第2軸A2を中心とした上段ドロア20の回動角φ2(
図7参照)の最大値は、51°である。すなわち、第2開口部20aが閉じている状態から開いている状態まで変化する場合に、上段ドロア20は、第2軸A2を中心に51°回転する。
【0016】
図1は、下段ドロア10の第1開口部10a及び上段ドロア20の第2開口部20aが閉じている状態(以下、「閉状態」と記す)を示す。また、
図2は、下段ドロア10の第1開口部10a及び上段ドロア20の第2開口部20aが開いている状態(以下、「開状態」と記す)を示す。また、
図3は、下段ドロア10の第1開口部10aが開いており、上段ドロア20の第2開口部20aが閉じている状態(以下では、「上段ドロア閉状態」と記す)を示す。
【0017】
図2及び
図3に示すように、下段ドロア10の内部には、硬貨を収納可能な下段内部ケース12(内部ケース)が設けられている。下段内部ケース12は、収納された硬貨ごと下段ドロア10から取り出すことが可能となっている。下段内部ケース12の内部は、仕切板121によって複数の区画に区分されており、硬貨を種類ごとに分けて収納することができる。仕切板121は、下段ドロア10の第1開口部10aが閉じている状態、及び開いている状態のいずれにおいても、各区画に収納された硬貨が隣接する区画に混入しないような高さ及び形状で設けられている。
【0018】
上段ドロア20の内部には、硬貨を収納可能な上段内部ケース221と、紙幣や金券などを収納可能な紙幣収納部222が設けられている。上段内部ケース221は、収納された硬貨ごと上段ドロア20から取り出すことが可能となっている。ただし、上段内部ケース221は、上段ドロア20から取り出し不能に固定されていてもよい。紙幣収納部222は、紙幣や金券を、長手方向がX方向に略平行となるような向きで収納することができるようになっている。紙幣収納部222は、収納された紙幣や金券ごと上段ドロア20から取り出すことが可能となっていてもよい。上段内部ケース221及び紙幣収納部222は、上段ドロア20の第2開口部20aが閉じている状態、及び開いている状態のいずれにおいても、収納された硬貨や紙幣などがこぼれないような形状で設けられている。
なお、下段ドロア10及び上段ドロア20の各々に収納される金銭の種類は、上記に限られない。例えば、下段ドロア10に紙幣や金券などを収納可能とされていてもよい。
【0019】
下段ドロア10及び上段ドロア20は、
図1に示す閉状態にあるときには、回動不能な保持状態とされている(ロックされている)。金銭収納装置1は、端末装置6から、ロックを解除するための制御信号を受信すると、下段ドロア10及び上段ドロア20を、回動可能な保持解除状態に切り替える(すなわち、下段ドロア10及び上段ドロア20のロックを解除する)。下段ドロア10は、後述する第1ばね16(第1付勢部材)(
図6参照)により、第1開口部10aが開く方向に付勢されている。また、上段ドロア20は、後述する第2ばね26(第2付勢部材)(
図6参照)により、第2開口部20aが開く方向に付勢されている。このため、下段ドロア10及び上段ドロア20は、保持状態から保持解除状態に切り替えられると、第1ばね16及び第2ばね26の付勢力により、第1開口部10a及び第2開口部20aが開く方向に自動的に回動する。下段ドロア10及び上段ドロア20には、このときの回動の勢いが付き過ぎないように負荷を与える図示しないダンパーが設けられており、これらのダンパーの作用によって、回動の速度が一定以下の速度に保たれるようになっている。保持状態と保持解除状態との間の切り替えは、ロック切替機構70(切替機構)(
図14~
図17参照)により行われる。ロック切替機構70の構成については後述する。
【0020】
下段ドロア10及び上段ドロア20は、
図1に示す閉状態において保持解除状態に切り替えられた場合には、後述する連結部材40(
図6~
図8参照)の作用によって、第1開口部10a及び第2開口部20aの開閉状態が互いに略同じになるように連動して回動する。このように下段ドロア10及び上段ドロア20が連動して回動することにより、
図2に示す開状態に移行する。ここで、「第1開口部10a及び第2開口部20aの開閉状態が互いに略同じになる」態様には、第1開口部10a及び第2開口部20aが同時に開き始め(すなわち、下段ドロア10及び上段ドロア20の回動が同時に開始し)、第1開口部10a及び第2開口部20aの開口量が同時に最大となる(すなわち、下段ドロア10及び上段ドロア20の回動が同時に終了する)態様のほか、第1開口部10a及び第2開口部20aの一方が他方より遅れて開き始める態様、及び第1開口部10aの開口量及び第2開口部20aの開口量の一方が他方より遅れて最大となる態様が含まれる。言い換えると、第1開口部10aが開き始めてから開き終わるまでの下段ドロア10の回動、及び第2開口部20aが開き始めてから開き終わるまでの上段ドロア20の回動が、少なくとも一部の期間において連動する態様を含む。
【0021】
図2に示す開状態において、連動解除ボタン50を-X方向に押し込むと、連結部材40による下段ドロア10及び上段ドロア20の連動を解除可能な状態とすることができる。連動解除ボタン50を押し込んだ状態で、第2開口部20aが閉じる方向に上段ドロア20を動かすと、上段ドロア20を、下段ドロア10とは連動させずに(下段ドロア10とは独立に)閉じることができる。これにより
図3に示す上段ドロア閉状態に移行する。
【0022】
ここで、開状態及び上段ドロア閉状態における第1開口部10a及び第2開口部20aの位置関係について、
図2~
図5を参照して説明する。
図4は、開状態の金銭収納装置1を+X方向から見た図である。
図5は、上段ドロア閉状態の金銭収納装置1を+X方向から見た図である。
【0023】
図2及び
図4に示す開状態では、下段ドロア10のうちの+X方向に向いた側壁13が、筐体3から一部露出している。この状態まで下段ドロア10が回動することにより、第1開口部10aが開いた状態となっている。詳しくは、第1開口部10aは、その開口面の法線が、+Z方向から若干+Y方向に傾斜した状態で開いている。
【0024】
また、開状態では、上段ドロア20のうちの+X方向に向いた側壁23が筐体3から一部露出している。この状態まで上段ドロア20が回動することにより、第2開口部20aが開いた状態となっている。詳しくは、第2開口部20aは、その開口面の法線が、+Z方向から若干+Y方向に傾斜した状態で開いている。
【0025】
また、開状態では、上段ドロア20は、+Z方向から見て、下段ドロア10の第1開口部10aの一部を覆っている。開状態においても、第1開口部10aのうち上段ドロア20により覆われていない部分から、下段ドロア10への金銭の出し入れが可能である。ただし、下段内部ケース12を出し入れするときの下段内部ケース12の通過経路の一部が上段ドロア20により塞がれているため、開状態では、下段ドロア10の内部から下段内部ケース12を取り出すことはできない。
【0026】
図3及び
図5に示すように、開状態から上段ドロア20のみを閉じて(手により筐体3の内部に押し込んで)上段ドロア閉状態に移行させると、+Z方向から見て、下段ドロア10の第1開口部10aの全体が上段ドロア20により覆われない状態となる。よって、下段ドロア10への金銭の出し入れがしやすくなる。また、下段内部ケース12の通過経路が上段ドロア20により塞がれない状態となるため、
図5に示すように、下段ドロア10の内部から下段内部ケース12を取り出すことができる。
【0027】
図3及び
図5に示す上段ドロア閉状態において、上段ドロア20を押し込んでいる手を離すと、第2ばね26の付勢力により上段ドロア20が開く。これにより、
図2及び
図4に示す開状態に戻る。また、開状態に戻ると、下段ドロア10及び上段ドロア20が連結部材40により連動して回動する状態に復帰する。この後、下段ドロア10及び上段ドロア20の一方を押し込んで閉じることで、下段ドロア10及び上段ドロア20を連動して回動させて、
図1に示す閉状態に移行させることができる。
【0028】
<下段ドロア及び上段ドロアの回動動作>
次に、
図6~
図9を参照して、下段ドロア10及び上段ドロア20の回動に係る構成、及び回動動作について詳細に説明する。
【0029】
図6は、閉状態における下段ドロア10、上段ドロア20及び連結部材40を+X方向から見た図である。
図6に示すように、下段ドロア10は、X方向に延びる軸部材11を有する。軸部材11は、内部筐体32に対して回動可能な状態で内部筐体32に取り付けられている。これにより、下段ドロア10は、軸部材11の中心軸に相当する第1軸A1を中心に回動することができる。なお、軸部材11が内部筐体32に対して固定され、下段ドロア10が軸部材11に対して回動可能な構成としてもよい。
図6に示す閉状態では、下段ドロア10の第1底面14が、XY平面に平行な内部筐体32の内部底面32a(
図1参照)に当接している。下段ドロア10には、閉状態において第1底面14の-Y方向側の端部から-Y方向に延びる突起部18が設けられている。閉状態では、突起部18は、ロック切替機構70の保持部材72により+Z方向への移動が規制されるように保持されている。
下段ドロア10は、第1底面14とは角度が異なる第2底面15をさらに有する。第2底面15は、
図7に示す開状態において内部底面32aに当接する。
【0030】
下段ドロア10の側壁13には、軸部材11の近傍に第1ばね収納部16aが設けられている。第1ばね収納部16aには、第1ばね16が、側壁13に付勢力を及ぼす状態で格納されている。第1ばね16は、らせん状に巻かれた部分と、らせん状の部分から突出する直線状の部分とを有するトーションばね(ねじりばね)である。第1ばね16が側壁13に及ぼす付勢力の向きは、第1開口部10aが開く方向に下段ドロア10を回動させる向きである。第1ばね収納部16a及び第1ばね16は、
図6に示されている+X方向側の側壁13とは反対側の、-X方向側の側壁13にも同様に設けられている。ただし、この構成に限られず、第1ばね収納部16a及び第1ばね16は、+X方向側の側壁13及び-X方向側の側壁13の少なくとも一方に設けられていればよい。
【0031】
また、下段ドロア10の側壁13の外面には、+X方向に突出する円柱形状の軸部材17が設けられている。軸部材17は、連結部材40との連結に用いられる。軸部材17の中心軸が、第3軸A3に相当する。第3軸A3は、第1軸A1に平行である。
【0032】
上段ドロア20は、X方向に延びる軸部材21を有する。軸部材21は、内部筐体32に対して回動可能な状態で内部筐体32に取り付けられている。これにより、上段ドロア20は、軸部材21の中心軸に相当する第2軸A2を中心に回動することができる。なお、軸部材21が内部筐体32に対して固定され、上段ドロア20が軸部材21に対して回動可能な構成としてもよい。上段ドロア20の側壁23は、下段ドロア10の側壁13よりも外側に位置している。詳しくは、
図6に示されている+X方向側の側壁23は、下段ドロア10の+X方向側の側壁13よりも+X方向側に位置しており、
図6に示されている側壁23とは反対側(-X方向側)の側壁23は、下段ドロア10の-X方向側の側壁13よりも-X方向側に位置している。よって、上段ドロア20の側壁23の内面の一部は、下段ドロア10の側壁13の外面の一部に対向する。
【0033】
上段ドロア20の側壁23には、軸部材21の近傍に第2ばね収納部26aが設けられている。第2ばね収納部26aには、第2ばね26が、側壁23に付勢力を及ぼす状態で格納されている。第2ばね26は、第1ばね16と同様の形状のトーションばねである。第2ばね26が側壁23に及ぼす付勢力の向きは、第2開口部20aが開く方向に上段ドロア20を回動させる向きである。第2ばね収納部26a及び第2ばね26は、
図6に示されている+X方向側の側壁23とは反対側の、-X方向側の側壁23にも同様に設けられている。ただし、この構成に限られず、第2ばね収納部26a及び第2ばね26は、+X方向側の側壁23及び-X方向側の側壁23の少なくとも一方に設けられていればよい。
【0034】
また、上段ドロア20の側壁23の外面には、係合部材51が取り付けられている。係合部材51は、円筒形状の円筒部513(
図11参照)と、外面の一部が平坦となっている平坦部512(
図11参照)とを有し、+X方向から見た形状が円形のベアリングである。係合部材51は、側壁23の外面に設けられた+X方向に延びる軸部材28(
図12及び
図13参照)に挿通されており、当該軸部材28に沿ってX方向に摺動可能となっている。軸部材28及び係合部材51の中心軸が、第4軸A4に相当する。第4軸A4は、第2軸A2に平行である。また、係合部材51の-X方向側の端部は、軸部材28に設けられた第3ばね53(
図11~
図13参照)に当接している。第3ばね53は、圧縮コイルばねであり、軸部材28の付け根に位置するばね受け281と係合部材51との間に挟持されている。この構成によって、係合部材51は、第3ばね53により+X方向に付勢されている。
【0035】
金銭収納装置1は、下段ドロア10及び上段ドロア20に連結された連結部材40を備える。連結部材40は、所定形状を有する平板状の部材である。連結部材40には、円弧状のレール41、第1連結部42及び第2連結部43が設けられている。
【0036】
第1連結部42は、下段ドロア10の軸部材17に係合する形状の、略円柱形状の部分を含む貫通孔である。連結部材40は、第1連結部42に軸部材17が係合することで、第3軸A3を中心に下段ドロア10に対して回動可能な状態で、下段ドロア10に連結されている。
【0037】
第2連結部43は、上段ドロア20に取り付けられた係合部材51に係合する形状の、略円柱形状の部分を含む貫通孔である。連結部材40は、第2連結部43に係合部材51が係合することで、第4軸A4を中心に上段ドロア20に対して回動可能な状態で、上段ドロア20に連結されている。
【0038】
レール41は、係合部材51が係合可能な形状を有し、第2連結部43に連通している。ただし、通常時には、第2連結部43に係合する係合部材51がレール41に移動できないようになっている。ここで、通常時とは、連動解除ボタン50が押されていない状態をいう。レール41の詳細な構造、及び連動解除ボタン50の機能については、後述する。
【0039】
このように、連結部材40が、第3軸A3を中心に回動可能な状態で下段ドロア10に連結し、第4軸A4を中心に回動可能な状態で上段ドロア20に連結していることで、第1軸A1~第4軸A4に対応する4つの可動節を有した状態で下段ドロア10及び上段ドロア20が連結されている。
【0040】
+X方向(第1軸A1に平行な方向)から見て、第1軸A1及び第3軸A3を繋ぐ仮想線分を第1仮想線分L1とし、第2軸A2及び第4軸A4を繋ぐ仮想線分を第2仮想線分L2とし、第3軸A3及び第4軸A4を繋ぐ仮想線分を連結仮想線分L3とする。第1軸A1から第3軸A3までの第1距離d1(第1仮想線分L1の長さ)は、第2軸A2から第4軸A4までの第2距離d2(第2仮想線分L2の長さ)に略等しくなっている。ここで、第1距離d1及び第2距離d2が略等しいとは、例えば、第1距離d1が第2距離d2の0.9倍以上1.1倍以下であることをいう。上述のとおり、本実施形態では、下段ドロア10の回動角φ1の最大値(54°)と、上段ドロア20の回動角φ2の最大値(51°)とが若干異なっている。このように回動角φ1、φ2の最大値に差を設けつつ、閉状態から開状態まで連結部材40により連動させることができるように、本実施形態では、回動角の最大値が大きい側の第1距離d1が、第2距離d2に略等しい範囲内で、回動角の最大値が小さい側の第2距離d2に対して若干短くなっている。言い換えると、閉状態及び開状態のいずれにおいても第3軸A3と第4軸A4との間の距離が等しくなるように、第1距離d1及び第2距離d2が調整されている。
下段ドロア10の回動角φ1の最大値と、上段ドロア20の回動角φ2の最大値とを等しくする場合には、第1距離d1及び第2距離d2を等しくすることで、連結部材40により、下段ドロア10及び上段ドロア20を閉状態と開状態との間で連動させることができる。
なお、
図6に示す第1距離d1及び第2距離d2は一例であり、第1距離d1が第2距離d2の0.9倍未満であってもよいし、1.1倍よりも大きくてもよい。
【0041】
また、
図6に示す閉状態において、第1仮想線分L1と第2仮想線分L2とは略平行(本実施形態では、厳密に平行)となっている。ここで、略平行とは、例えば、第1仮想線分L1と第2仮想線分L2とがなす角が10°以下であることをいう。ただし、この構成に限られず、第1仮想線分L1と第2仮想線分L2とがなす角を10°よりも大きくしてもよい。
【0042】
連結部材40は、通常時において、下段ドロア10の軸部材17を通る第3軸A3と、上段ドロア20の係合部材51を通る第4軸A4との距離が一定に保たれる状態で下段ドロア10及び上段ドロア20を連結する。よって、
図6に示す閉状態において、突起部18が保持部材72により保持された保持状態から、保持部材72による保持が解除された保持解除状態に切り替えられると、下段ドロア10及び上段ドロア20が、連結部材40により連動した状態で、第1ばね16及び第2ばね26の付勢力により、第1開口部10a及び第2開口部20aが開く方向に連動して回動する。詳しくは、下段ドロア10及び上段ドロア20は、連結部材40により連結されていることで、第3軸A3と第4軸A4との距離が一定となる位置関係を保ちつつ、開状態となるまで連動して回動する。連結部材40は、下段ドロア10と上段ドロア20との位置関係をこのように維持することで、第1開口部10a及び第2開口部20aの開閉状態が互いに略同じになるように下段ドロア10及び上段ドロア20を互いに連動させる。
【0043】
図7は、開状態における下段ドロア10、上段ドロア20及び連結部材40を+X方向から見た図である。
下段ドロア10及び上段ドロア20の連動した回動は、
図7に示す開状態に至るまで継続する。開状態では、下段ドロア10の第1底面14が内部筐体32の内部底面32aから離れ、第1底面14とは角度が異なる第2底面15が内部底面32aに当接する。下段ドロア10及び上段ドロア20の連動した回動は、第2底面15が内部底面32aに当接することによって終了する。
【0044】
図7では、
図6に示す閉状態における第3軸A3の位置が、第3軸初期位置P3として示されており、閉状態における第4軸A4の位置が、第4軸初期位置P4として示されている。開状態において、第3軸A3は、第1軸A1を中心に第3軸初期位置P3から回動角φ1の最大値(54°)だけ回転した位置にある。また、開状態において、第4軸A4は、第2軸A2を中心に第4軸初期位置P4から回動角φ2の最大値(51°)だけ回転した位置にある。
【0045】
図7に示す開状態から、ユーザが下段ドロア10又は上段ドロア20を閉じる方向に押圧すると、下段ドロア10及び上段ドロア20は、連結部材40により連結された状態で、第1開口部10a及び第2開口部20aの開閉状態が互いに略同じになるように、閉じる方向に連動して回動する。これにより、
図6に示す閉状態に戻すことができる。下段ドロア10を押圧する場合には、ユーザは、下段ドロア10の先端の点10p又はその近傍を押圧し、上段ドロア20を押圧する場合には、ユーザは、上段ドロア20の先端の点20p又はその近傍を押圧する。本実施形態では、第1軸A1から点10pまでの長さ(第1軸A1を中心とする点10pの回転半径)は、97mmであり、第2軸A2から点20pまでの長さ(第2軸A2を中心とする点20pの回転半径)は、75mmである。
【0046】
+X方向から見て、第1仮想線分L1と、連結仮想線分L3とがなす角θは、
図6の閉状態から
図7の開状態までのいずれの状態においても180°未満である。
図7の開状態において角度θが180°未満であることにより、上段ドロア20を閉じる方向に押圧した場合に、上段ドロア20を押圧する力を、連結部材40を介して、下段ドロア10を閉じる方向の力として下段ドロア10に伝えることができる。
【0047】
図8は、下段ドロア10及び上段ドロア20を閉じる場合に、第3軸A3及び第4軸A4が動く向きを示す図である。
開状態から下段ドロア10及び上段ドロア20が閉じ始める際には、
図8の矢印a1に示すように、下段ドロア10の第3軸A3、及び上段ドロア20の第4軸A4は、略同一方向に動く。また、閉状態に至る直前においても、矢印a2に示すように、第3軸A3及び第4軸A4は、略同一方向に動く。開状態と閉状態との間の中間状態においても同様に、第3軸A3及び第4軸A4は、略同一方向に動く。このように、連結部材40により連結して下段ドロア10及び上段ドロア20を連動させる構成によれば、連結部材40による2箇所の連結箇所(第3軸A3及び第4軸A4)が常に略同一方向に動くため、手で下段ドロア10又は上段ドロア20を押圧する力を効率よく下段ドロア10及び上段ドロア20に伝えて回動させることができる。
【0048】
図9は、下段ドロア10及び上段ドロア20の連動態様を説明する図である。
図9の「回動角」は、閉状態を基準(0°)として、下段ドロア10又は上段ドロア20が閉状態から何度回動したかを表している。
図9では、上段ドロア20の回動範囲(51°)を8.5°単位の6つの回動区間に区分し、上段ドロア20が8.5°回動するごとに、その時点における下段ドロア10の回動角が何度になるかが示されている。本実施形態では、下段ドロア10の回動角φ1の最大値(54°)が上段ドロア20の回動角φ2の最大値(51°)と異なるため、各回動区間における下段ドロア10の回動角は、上段ドロア20の回動角とは若干異なっている。
また、各行における「回動角の差分」は、当該行の「回動角」と、1つ上の行の「回動角」との差分(すなわち、各回動区間における回動角の変化量)を表す。また、各行における「回動角の差分の比」は、上段ドロア20の「回動角の差分」に対する、下段ドロア10の「回動角の差分」の比を表す。「回動角の差分の比」が「1」に近いほど、その行に対応する回動区間における、下段ドロア10及び上段ドロア20の回動角の変化量が近いことを表す。
【0049】
図9に示すように、本実施形態では、6つの回動区間において、下段ドロア10の開角度の変化量が9°前後でほぼ一定になっている。また、「回動角の差分の比」は、どの回動区間においても「1」に近い値で安定している。よって、閉状態から開状態まで(又は、開状態から閉状態まで)、下段ドロア10の回動角及び上段ドロア20の回動角がほぼ一定の変化率で変化する。また、「回動角」の値、及び「回動角の差分」の値も、下段ドロア10と上段ドロア20とで近似している。これらは、下段ドロア10及び上段ドロア20が、略同一の姿勢(向き、回動角)を保ちつつ連動して回動することを表している。下段ドロア10及び上段ドロア20がこのような態様で連動して回動することにより、いずれの回動区間においても、第1ばね16及び第2ばね26による開く方向の付勢力と、手による閉じる方向の押圧力とが、バランスよく下段ドロア10及び上段ドロア20に伝わる。これにより、下段ドロア10及び上段ドロア20を開く際の回動速度を2つのドロアでほぼ均一にすることができる。また、下段ドロア10及び上段ドロア20のいずれかを押し込んで(押圧して)連動させて閉じる際に、2つのドロアの回動角の変化量が不均一であること(回動区間ごとの回動角の差分の比が不均一であること)に起因する、押し込むための負荷の変化(トルクの変化)を小さくすることができる。
【0050】
<下段ドロア及び上段ドロアの連動の解除>
図7に示す開状態において、
図1の連動解除ボタン50を-X方向に押し込むことにより、連結部材40による下段ドロア10及び上段ドロア20の連動を解除可能な状態とすることができる。すなわち、連動解除ボタン50を押し込むことで、第2開口部20aが閉じるように上段ドロア20が回動することが許容される状態となる。連動解除ボタン50を押し込んだ状態で上段ドロア20を閉じる方向に押圧して動かすことで、上段ドロア20を下段ドロア10とは連動させずに閉じて、上段ドロア閉状態に移行させることができる。
【0051】
図10は、上段ドロア閉状態における下段ドロア10、上段ドロア20及び連結部材40を+X方向から見た図である。
上段ドロア閉状態では、下段ドロア10及び連結部材40の位置は、開状態における位置から変化しておらず、上段ドロア20のみが閉じている。また、上段ドロア閉状態では、下段ドロア10の側壁13に設けられた係止リブ19が、上段ドロア20に設けられた係止溝29に係合する。これにより、上段ドロア閉状態において下段ドロア10を閉じる方向に押圧しても、下段ドロア10が閉じないようになっている。上段ドロア閉状態において、上段ドロア20に対する押圧を解除すると(上段ドロア20から手を離すと)、第2ばね26の付勢力によって上段ドロア20が自動的に開き、
図7の開状態に戻る。
【0052】
以下では、下段ドロア10及び上段ドロア20の連動の解除するための構成について説明する。
図7に示す開状態において、円弧状のレール41は、第2軸A2に平行な方向から見て第2軸A2を中心とする円と重なる。言い換えると、下段ドロア10及び上段ドロア20が、
図6の閉状態から連動して回動し、
図7の開状態となったときに、レール41がなす円弧を含む円の中心が第2軸A2に一致するようになっている。
図7に示す開状態において、連結部材40による下段ドロア10及び上段ドロア20の連動を解除するためには、係合部材51が第2連結部43からレール41に移動(退避)可能な状態とする必要がある。係合部材51がレール41に移動可能であると、
図7の開状態における下段ドロア10及び連結部材40の位置を維持したまま、上段ドロア20のみを、下段ドロア10に対して独立に回動させることができる。以下、
図11~
図13を参照して、係合部材51をレール41に移動させるための解除機構Mの構成について説明する。
【0053】
図11は、解除機構Mの構成を示す図である。
解除機構Mは、連動解除ボタン50と、係合部材51と、連結部材40に設けられたレール41と、を有する。
図11は、連動解除ボタン50、係合部材51及び連結部材40を、上段ドロア20の側壁23側から見た分解斜視図である。
【0054】
図11に示すように、係合部材51は、円筒形状の円筒部513と、円筒部513の+X方向側に位置する平坦部512と、を有する。平坦部512は、円筒部513と同様の円筒形状の側面の一部を、X方向に平行な一対の平面をなすように切り欠いた形状を有する。すなわち、平坦部512は、
図11に示されている平面とは反対側にも、当該平面と平行な平面を有する。平坦部512と円筒部513との境界には、X方向に垂直な当接面514が設けられている。当接面514は、+X方向から見て、円筒部513のうち平坦部512と重ならない部分に相当する。
【0055】
連結部材40の第2連結部43は、係合部材51の平坦部512及び円筒部513が通過可能な孔部433と、孔部433の+X方向側の先端に位置し、連結部材40の内面401に平行な係止面431と、を有する。係止面431には、第3ばね53により付勢された係合部材51の当接面514が当接するようになっている。内面401は、第1軸A1に垂直(X方向に垂直)である。
【0056】
連結部材40のレール41は、連結部材40の内面401に平行な(X方向に垂直な)レール主面411と、内面401に垂直な(X方向に平行な)レール側面412と、を有する。また、連結部材40には、対向するレール側面412同士の幅(レール41の幅)よりも狭い幅を有するスリット413が設けられている。スリット413は、連結部材40を貫通しており、第2連結部43の内部まで延びている。係合部材51の当接面514が第2連結部43の係止面431に当接している状態では、係合部材51の平坦部512は、スリット413内に位置している。
【0057】
レール41のレール主面411は、第2連結部43の係止面431よりも-X方向側に位置している。このため、レール主面411と係止面431との間には、段差部432が形成されている。段差部432は、レール主面411及び係止面431を繋ぐ、X方向に平行な曲面(円筒面の一部)である。係合部材51の当接面514が第2連結部43の係止面431に当接している状態では、係合部材51の円筒部513の側面が段差部432に引っ掛かるようになっている。これにより、係合部材51の位置が規制され、第2連結部43からレール41に移動しないようになっている。
【0058】
係合部材51の当接面514が第2連結部43の係止面431に当接している状態において、連動解除ボタン50を-X方向に押し込むことにより、第3ばね53による付勢力に抗して係合部材51を-X方向に移動させることによって、係合部材51の当接面514を、レール41のレール主面411よりも-X方向側に位置させることができる。これにより、段差部432による円筒部513の位置の規制が解除され、円筒部513が段差部432を乗り越えてレール41内に移動することが可能な状態となる。言い換えると、連動解除ボタン50を押し込むことにより、係合部材51が、第2連結部43からレール41に移動可能な状態とすることができる。これにより、連結部材40による下段ドロア10及び上段ドロア20の連動を解除可能な状態とすることができる。レール41内を移動する係合部材51は、第3ばね53により+X方向に付勢されて、当接面514がレール主面411に当接した状態となる。また、平坦部512は、スリット413の内部を移動する。
【0059】
連動解除ボタン50は、ユーザにより押圧される面(+X方向に向く面)とは反対側に、X方向に延びる押し込み部501と、X方向に平行な板状のリブ502と、フック503とを有する。押し込み部501は、ユーザにより連動解除ボタン50が-X方向に押圧されると、係合部材51(平坦部512)の+X方向側の端面である頂面511に当接して係合部材51を-X方向に押し込む。
【0060】
図12は、連動解除ボタン50が係合部材51を押圧していない状態を示す断面図である。
図13は、連動解除ボタン50が係合部材51を押圧している状態を示す断面図である。
図12及び
図13に示すように、連動解除ボタン50は、第4ばね54により+X方向に付勢されている。第4ばね54は、圧縮コイルばねであり、内部筐体32の外面と、連動解除ボタン50の内壁面との間に保持されている。連動解除ボタン50の押し込み部501は、内部筐体32に設けられた貫通孔321に挿通されている。
【0061】
図12に示すように、連動解除ボタン50が押し込まれていない状態では、連動解除ボタン50は、第4ばね54により+X方向に付勢されて、フック503が内部筐体32に係合する位置にあり、押し込み部501が係合部材51に当接しない。上述したとおり、
図12に示す状態では、係合部材51の円筒部513は、段差部432により位置が規制されて、レール41には移動しないようになっている。
【0062】
第4ばね54による付勢力に抗して連動解除ボタン50が-X方向に押し込まれると、押し込み部501が係合部材51の頂面511に当接する。さらに連動解除ボタン50が押し込まれると、
図13に示すように、押し込み部501が、第3ばね53による付勢力に抗して係合部材51を-X方向にさらに移動させる。
図13の状態では、係合部材51の当接面514は、レール41のレール主面411よりも-X方向側に位置している。よって、
図13に示す状態において上段ドロア20を回動させると、係合部材51の円筒部513を段差部432に当接させずに段差部432を通過させることが可能であり、係合部材51を第2連結部43からレール41に移動させることができる。よって、
図13に示す状態は、連結部材40による下段ドロア10及び上段ドロア20の連動を解除可能な状態に相当する。このように、解除機構Mは、開状態における係合部材51を、レール41に沿って移動不能な位置(
図12における係合部材51の位置)から、レール41に沿って移動可能な位置(
図13における係合部材51の位置)へ、第1軸A1に平行な方向に移動させることにより、第2開口部20aが閉じるように上段ドロア20が下段ドロア10と連動せずに回動するのを許容する。
【0063】
また、
図13のように連動解除ボタン50が係合部材51を押し込んでいる状態では、連動解除ボタン50のリブ502が、連結部材40の先端に設けられたリブ44と係合する。これにより、上段ドロア20が回動して係合部材51が第2連結部43からレール41に移動する際に、係合部材51とともに連結部材40の位置がずれることのないように連結部材40を押さえることができる。
【0064】
図10の上段ドロア閉状態において、上段ドロア20を押し込んでいる手を離すと、第2ばね26の付勢力により上段ドロア20が開く方向に回動する。この回動に応じて、係合部材51が、レール41内を第2連結部43に向かって移動する。上段ドロア20が開状態の位置まで回動すると、係合部材51は、第2連結部43に移動する。第2連結部43に移動した係合部材51は、第3ばね53により付勢されて当接面514が係止面431に当接し、円筒部513の位置が段差部432に規制された状態となる。これにより、連結部材40により下段ドロア10及び上段ドロア20が互いに連動して回動する状態に復帰する。
【0065】
<ロック切替機構>
次に、ロック切替機構70の構成について説明する。
図14及び
図15は、ロック切替機構70の構成を示す断面図である。
ロック切替機構70は、保持部材駆動部71と、保持部材72と、第5ばね73と、操作部74などを有する。
【0066】
保持部材72は、+Y方向に延びる棒状の部材である。保持部材72の-Y方向側の端部は、保持部材駆動部71が有する移動体711に固定されている。保持部材72の+Y方向側の先端近傍は、先端に近いほど+Z方向の高さが減少するようなテーパー部となっている。
図14に示すように、保持部材72は、閉状態において、+Y方向の先端部における-Z方向に向く面が、下段ドロア10の突起部18の+Z方向に向く面に係合することにより、下段ドロア10を閉じた状態に保持する。閉状態における下段ドロア10及び上段ドロア20は、連結部材40により相互の位置関係が規制されているため、下段ドロア10が閉じた状態となることにより、上段ドロア20も閉じた状態に保持される。
図14に示す保持部材72の位置を、以下では「係合位置」と記す。
【0067】
また、保持部材72の-Y方向側の端部からは、-Z方向に操作部74が延びている。操作部74は、保持部材72と一繋がりの部材であってもよいし、保持部材72とは別個に設けられて保持部材72に取り付けられたものであってもよい。操作部74は、内部筐体32に開けられた貫通孔32bに挿通されている。操作部74は、-Z方向から見て貫通孔32bから露出しており、ユーザが操作することができる。
【0068】
第5ばね73は、保持部材72の周りに巻き回された圧縮コイルばねである。第5ばね73の-Y方向側の端部は内部筐体32に固定されており、+Y方向側の端部は保持部材72に固定されている。この構成により、第5ばね73は、保持部材72を+Y方向に付勢する。操作部74は、保持部材72が係合位置(
図14)にあるときに貫通孔32bのうち+Y方向側の壁面に当接する位置に設けられている。このため、保持部材72は、第5ばね73の付勢力によって係合位置よりも+Y方向側に移動しないようになっている。第5ばね73は、保持部材72が係合位置から-Y方向に移動したときには、弾性変形量に応じた付勢力で保持部材72を+Y方向に付勢する。
【0069】
保持部材駆動部71は、移動体711と、移動体711をY方向に移動させる図示略のソレノイドとを有する。
図14及び
図15では、ソレノイド等の保持部材駆動部71の内部構造は記載が省略されている。ソレノイドは、例えば、移動体711に固定されY方向に延びる棒状の鉄心と、鉄心の-Y方向側に設けられた固定磁極と、鉄心及び固定磁極の周りに設けられたコイルと、コイルに電流を流す回路と、を有する。コイルに電流が流れると、鉄心が磁化されて固定磁極に向かって-Y方向に移動する。これにより、
図15に示すように、鉄心に繋がる移動体711、及び移動体711に固定された保持部材72が、第5ばね73による付勢力に抗して-Y方向に移動し、保持部材72と突起部18との係合が解除される。
図15に示す保持部材72の位置を、以下では「係合解除位置」と記す。保持部材72が係合解除位置に移動して突起部18との係合が解除されると、下段ドロア10及び上段ドロア20は、回動可能な保持解除状態となる。よって、下段ドロア10及び上段ドロア20は、トーションばねの付勢力により、開く方向に連動して回動する。
【0070】
下段ドロア10及び上段ドロア20の回動が開始された後にコイルへの電流の供給が停止されると、鉄心の磁化が解消され、鉄心、移動体711及び保持部材72が、第5ばね73の付勢力により+Y方向に移動する。これにより、保持部材72が係合位置に戻る。
【0071】
下段ドロア10及び上段ドロア20が開状態から閉状態に戻るときには、下段ドロア10の突起部18の-Z方向に向いた面が、保持部材72の先端のテーパー部における+Z方向に向いた面に当接し、第5ばね73による付勢力に抗して保持部材72を-Y方向に押圧する。詳しくは、突起部18が保持部材72のテーパー部に当接した後に、突起部18が-Z方向にさらに移動すると、当該移動に応じてテーパー部における突起部18の当接位置がテーパー部の先端側にずれていくことにより保持部材72が-Y方向に押し込まれる。突起部18が保持部材72よりも-Z方向側まで移動すると、保持部材72の突起部18による押圧が解除されて、第5ばね73の付勢力により保持部材72が+Y方向に係合位置まで移動する。これにより、突起部18が保持部材72に係合し、保持状態となる。
【0072】
このようにして、ロック切替機構70は、閉状態における下段ドロア10及び上段ドロア20の状態を、閉じた状態に保持する保持状態と、開く方向への回動が可能な保持解除状態との間で切り替える。
【0073】
上記のように、保持部材駆動部71は、電気的な制御によりソレノイドを動作させて、保持部材72を係合位置から係合解除位置に移動させる。ただし、保持部材駆動部71のみが保持部材72を移動させることが可能である構成とすると、停電や故障などにより保持部材駆動部71の電気的な制御が不能となった場合に、下段ドロア10及び上段ドロア20を開くことができなくなる。
そこで、本実施形態では、保持部材72は、保持部材駆動部71によらずにユーザの操作により係合位置から係合解除位置に移動させることが可能に設けられている。すなわち、
図14に示すように保持部材72が係合位置にある場合に、ユーザが操作部74を-Y方向に移動させることで、
図15に示すように保持部材72を係合解除位置に移動させて、下段ドロア10及び上段ドロア20を保持解除状態とすることができる。
【0074】
図16は、金銭収納装置1におけるロック切替機構70の位置を示す斜視図である。
図16は、筐体3のうち+Y方向についての中心よりも-Y方向側の前面部301の内部を示している。
図14では、ロック切替機構70の位置を見やすく示すために、ロック切替機構70、表示印字部2及び下段ドロア10以外の構成の記載が省略されている。
図16に示すように、ロック切替機構70は、X方向について筐体3の中央に設けられている。また、下段ドロア10には、X方向についての中央に突起部18が設けられている。これにより、保持部材72及び突起部18が係合しているときに下段ドロア10に掛かる応力を、X方向について中央部の両側で均等にすることができる。よって、保持部材72及び突起部18による保持状態を安定させることができる。
【0075】
なお、本実施形態では、保持部材72が下段ドロア10の突起部18に係合するが、これに限られず、保持部材72が上段ドロア20に係合する構成、又は下段ドロア10及び上段ドロア20の双方に係合する構成としてもよい。
【0076】
図17は、ロック切替機構70を制御するための金銭収納装置1の機能構成を示すブロック図である。
金銭収納装置1は、CPU61(Central Processing Unit)と、RAM62(Random Access Memory)と、記憶部63と、通信部64と、上述の保持部材駆動部71を有するロック切替機構70と、バス65などを備える。金銭収納装置1の各部は、バス65を介して接続されている。
【0077】
CPU61は、記憶部63に記憶されているプログラム631を読み出して実行し、各種演算処理を行うことで、ロック切替機構70の動作を制御するプロセッサ(1以上の処理部)である。なお、金銭収納装置1は、複数のプロセッサ(例えば、複数のCPU)を有していてもよく、本実施形態のCPU61が実行する複数の処理を、当該複数のプロセッサが実行してもよい。この場合には、複数のプロセッサにより「1以上の処理部」が構成される。この場合において、複数のプロセッサが共通の処理に関与してもよいし、あるいは、複数のプロセッサが独立に異なる処理を並列に実行してもよい。
【0078】
記憶部63は、コンピュータとしてのCPU61により読み取り可能な非一時的な記録媒体であり、プログラム631及び各種データを記憶する。記憶部63は、例えばフラッシュメモリ等の不揮発性メモリを含む。プログラムは、コンピュータ読み取り可能なプログラムコードの形態で記憶部63に格納されている。
【0079】
通信部64は、例えばアンテナを含む通信モジュール等によって構成され、端末装置6との間で所定の通信規格(本実施形態ではブルートゥース)に従ってデータの送受信を行う。
【0080】
CPU61は、通信部64を介して端末装置6から、下段ドロア10及び上段ドロア20のロックを解除するための制御信号を受信すると、保持部材駆動部71に対してソレノイドを動作させるための制御信号を出力する。保持部材駆動部71は、CPU61からの制御信号に従ってソレノイドのコイルに電流を流し、保持部材72を保持位置から保持解除位置に移動させる。
【0081】
<効果>
以上のように、本実施形態に係る金銭収納装置1は、第1開口部10aを有し、第1軸A1を中心に回動することにより第1開口部10aを開閉させることが可能な下段ドロア10と、第2開口部20aを有し、第1軸A1に平行な第2軸A2を中心に回動することにより第2開口部20aを開閉させることが可能であり、第1開口部10a及び第2開口部20aが開いている状態において第1開口部10aの少なくとも一部を覆うように設けられた上段ドロア20と、第1軸A1に平行な第3軸A3を中心に下段ドロア10に対して回動可能な状態で下段ドロア10に連結され、かつ、第2軸A2に平行な第4軸A4を中心に上段ドロア20に対して回動可能な状態で上段ドロア20に連結され、第1開口部10a及び第2開口部20aの開閉状態が互いに略同じになるように下段ドロア10及び上段ドロア20を互いに連動させる連結部材40と、を備える。
これにより、回転軸が互いに異なる下段ドロア10及び上段ドロア20を適切に連動させることができる。
また、閉状態から開状態まで、下段ドロア10の回動角及び上段ドロア20の回動角がほぼ一定の変化率で変化する構成とすることができる。これにより、下段ドロア10及び上段ドロア20を開く際の回動速度を2つのドロアでほぼ均一にすることができる。また、下段ドロア10及び上段ドロア20のいずれかを押し込んで連動させて閉じる際に、2つのドロアの回動角の変化量が不均一であることに起因する、押し込むための負荷の変化を小さくすることができる。
また、下段ドロア10及び上段ドロア20が連動して回動する際の各時点において第3軸A3及び第4軸A4が動く方向が略同一となるような構成とすることができる。このため、下段ドロア10及び上段ドロア20のいずれかを押し込んで連動させて閉じる際に、下段ドロア10又は上段ドロア20を押し込む力を効率よく下段ドロア10及び上段ドロア20に伝えて回動させることができる。
【0082】
また、第1軸A1から第3軸A3までの第1距離d1が、第2軸A2から第4軸A4までの第2距離d2に略等しい。これにより、下段ドロア10の回動角φ1の最大値と、上段ドロア20の回動角φ2の最大値とを、ほぼ等しくすることができる。よって、回動中の下段ドロア10及び上段ドロア20の回動角をほぼ揃えることができる。これにより、下段ドロア10及び上段ドロア20のいずれかを押し込んで連動させて閉じる際の負荷の変化を小さくすることができる。
【0083】
また、第1開口部10a及び第2開口部20aが閉じている状態において、第1軸A1に平行な方向から見て、第1軸A1及び第3軸A3を繋ぐ第1仮想線分L1と、第2軸A2及び第4軸A4を繋ぐ第2仮想線分L2と、が略平行である。これにより、下段ドロア10及び上段ドロア20の回動時に、連結部材40による2箇所の連結箇所(第3軸A3及び第4軸A4)が常に略同一方向に動く構成とすることができる。このため、手で下段ドロア10又は上段ドロア20を押し込む力を効率よく下段ドロア10及び上段ドロア20に伝えて回動させることができる。
【0084】
また、第1軸A1に平行な方向から見て、第1軸A1及び第3軸A3を繋ぐ第1仮想線分L1と、第3軸A3及び第4軸A4を繋ぐ連結仮想線分L3と、がなす角θは、第1開口部10a及び第2開口部20aが閉じている状態から、第1開口部10a及び第2開口部20aが開いている状態までのいずれの状態においても180°未満である。これにより、上段ドロア20を閉じる方向に押し込んだ場合に、上段ドロア20を押し込む力を、連結部材40を介して、下段ドロア10を閉じる方向の力として下段ドロア10に伝えることができる。
【0085】
また、金銭収納装置1は、第1開口部10aが開く方向に下段ドロア10を付勢する第1ばね16と、第2開口部20aが開く方向に上段ドロア20を付勢する第2ばね26と、第1開口部10a及び第2開口部20aが閉じた状態で、下段ドロア10及び上段ドロア20の少なくとも一方を回動不能な状態に保持することが可能な保持部材72と、を備え、保持部材72による保持が解除さレール41ことで、下段ドロア10及び上段ドロア20が、連結部材40により連動した状態で、第1ばね16及び第2ばね26の付勢力により、第1開口部10a及び第2開口部20aが開く方向に回動する。これにより、下段ドロア10及び上段ドロア20を連動させつつ自動的に開くことができる。
【0086】
また、金銭収納装置1は、第1開口部10a及び第2開口部20aが開いている状態において、連結部材40による下段ドロア10及び上段ドロア20の連動を解除可能な解除機構Mを備える。これにより、下段ドロア10及び上段ドロア20を連動させて開閉する態様に加えて、上段ドロア20を、下段ドロア10とは連動させずに(下段ドロア10とは独立に)開閉することができる。
【0087】
また、解除機構Mは、連結部材40に設けられた、第1軸A1に垂直な面に沿って円弧状に延びるレール41と、上段ドロア20に設けられた、レール41に係合可能な係合部材51と、を備え、第1開口部10a及び第2開口部20aが開いている状態における係合部材51を、レール41に沿って移動不能な位置から、レール41に沿って移動可能な位置へ、第1軸A1に平行な方向に移動させることにより、第2開口部20aが閉じるように上段ドロア20が下段ドロア10と連動せずに回動するのを許容する。これにより、下段ドロア10の第1開口部10aを開けたまま上段ドロア20の第2開口部20aを閉じて、上段ドロア20が第1開口部10aを覆わない状態とすることができる。よって、下段ドロア10内の収納物を取り出しやすくすることができる。
【0088】
また、レール41は、連結部材40に設けられており、係合部材51は、上段ドロア20に設けられており、レール41は、第1開口部10a及び第2開口部20aが開いている状態において、第2軸A2に平行な方向から見て第2軸A2を中心とする円と重なる位置に設けられている。これによれば、第1開口部10a及び第2開口部20aが開いている状態(開状態)となった場合に限り、係合部材51をレール41に移動させること(上段ドロア20を、下段ドロア10とは連動させずに開閉させること)が可能となる。よって、意図しないタイミングで上段ドロア20及び下段ドロア10の連動が解除される不具合が生じないようにすることができる。
【0089】
<その他>
なお、上記実施形態における記述は、本発明の実施の態様の一例であり、これに限定されるものではない。
例えば、上記実施形態では、収納装置として、金銭を収納する金銭収納装置1を例示したが、これに限られず、収納装置は、金銭以外の任意の収納物を収納可能なものであってもよい。
【0090】
また、係合部材51を連結部材40側に取り付け、上段ドロア20の側壁23に、係合部材51が移動可能なレール41を設けてもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、連結部材40による下段ドロア10及び上段ドロア20の連動を解除可能な状態において、下段ドロア10を開けたまま上段ドロア20を閉じることが可能な構成を例示したが、これに限られず、上記連動を解除可能な状態において、上段ドロア20を開けたまま下段ドロア10を閉じることが可能な構成としてもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、金銭収納装置1が水平面に載置されている場合において、水平方向に延びる第1軸A1を中心に第1収納部としての下段ドロア10が回動し、水平方向に延びる第2軸A2を中心に第2収納部としての上段ドロア20が回動する例を用いて説明したが、第1収納部及び第2収納部が開く向きはこれに限られない。例えば、金銭収納装置1が水平面に載置されている場合において、鉛直方向に延びる第1軸を中心に第1収納部が回動し、鉛直方向に延びる第2軸を中心に第2収納部が回動する構成であってもよい。
【0093】
また、上記実施形態では、上段ドロア閉状態において上段ドロア20が下段ドロア10の第1開口部10aを覆わない状態となる構成を例示したが、これに限られず、上段ドロア閉状態において上段ドロア20が下段ドロア10の第1開口部10aの一部を覆う構成、すなわち、上段ドロア閉状態における上段ドロア20が第1開口部10aを覆う部分の大きさが、
図2に示す開状態における上段ドロア20が第1開口部10aを覆う部分の大きさよりも小さくなるような構成であってもよい。
【0094】
また、下段ドロア10及び上段ドロア20が、第1ばね16及び第2ばね26の付勢力により自動的に回動する構成を例示したが、これに限られず、第1ばね16及び第2ばね26を省略し、ユーザが下段ドロア10又は上段ドロア20の一部を把持して動かす操作に応じて回動する構成としてもよい。また、下段ドロア10及び上段ドロア20のうちの一方にトーションばねを設けて付勢してもよい。
【0095】
また、下段ドロア10に、取り出し可能な下段内部ケース12を設けた構成を例示したが、下段内部ケース12は、下段ドロア10に対して取り出し不能に固定されていてもよい。また、下段内部ケース12を省略し、下段内部ケース12の仕切板121に相当する構成などを下段ドロア10の内部に直接設けてもよい。
【0096】
また、下段ドロア10及び上段ドロア20のロックを解除するための構成は、上記実施形態で例示したロック切替機構70に限られない。例えば、筐体3に設けられたボタンやスイッチなどをユーザが操作することによりロックが解除される構成としてもよい。
【0097】
また、上記実施形態における金銭収納装置1の構成要素の細部構成及び細部動作に関しては、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能であることは勿論である。
【0098】
本発明の実施の形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0099】
1 金銭収納装置(収納装置)
2 表示印字部
3 筐体
31 外装部材
32 内部筐体
6 端末装置
10 下段ドロア(第1収納部)
10a 第1開口部
11 軸部材
12 下段内部ケース
13 側壁
14 第1底面
15 第2底面
16 第1ばね(第1付勢部材)
16a 第1ばね収納部
17 軸部材
18 突起部
19 係止リブ
20 上段ドロア(第2収納部)
20a 第2開口部
21 軸部材
221 上段内部ケース
222 紙幣収納部
23 側壁
26 第2ばね(第2付勢部材)
26a 第2ばね収納部
28 軸部材
29 係止溝
40 連結部材
41 レール
401 内面
411 レール主面
412 レール側面
413 スリット
42 第1連結部
43 第2連結部
431 係止面
432 段差部
433 孔部
44 リブ
50 連動解除ボタン
501 押し込み部
502 リブ
503 フック
51 係合部材
511 頂面
512 平坦部
513 円筒部
514 当接面
53 第3ばね
54 第4ばね
61 CPU
70 ロック切替機構
72 保持部材
A1 第1軸
A2 第2軸
A3 第3軸
L1 第1仮想線分
L2 第2仮想線分
L3 連結仮想線分
M 解除機構
P3 第3軸初期位置
P4 第4軸初期位置