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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044396
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】植物センサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/17 20060101AFI20240326BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
G01N21/17 Z
A01G7/00 603
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149890
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100083563
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 祥二
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 太一
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB08
2G059CC16
2G059EE01
2G059GG03
2G059HH02
2G059JJ03
2G059JJ07
2G059JJ11
2G059JJ13
2G059JJ22
2G059KK01
2G059MM01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】製作コストの低減が図れる植物センサを提供する。
【解決手段】少なくとも2波長を含む測定光2を所定の広がり角で発光する発光部6と、測定対象からの反射測定光を2波長に分離して取得する受光部7と、前記測定光2と前記反射測定光の少なくとも一方の光路上に設けられ、前記測定光2と前記反射測定光の少なくとも一方から2波長を抽出する波長選択部材8と、前記測定光の光量と各波長毎の前記反射測定光の受光量とに基づき前記測定対象の生育状況を演算する制御部9とを有し、前記波長選択部材8は、入射面と射出面の少なくとも一方に、前記波長選択部材8に対する前記測定光又は前記反射測定光の入射角の増加に対応して膜厚を増加させる凹部27を有する波長選択膜25が形成されるよう構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2波長を含む測定光を所定の広がり角で発光する発光部と、測定対象からの反射測定光を2波長に分離して取得する受光部と、前記測定光と前記反射測定光の少なくとも一方の光路上に設けられ、前記測定光と前記反射測定光の少なくとも一方から2波長を抽出する波長選択部材と、前記測定光の光量と各波長毎の前記反射測定光の受光量とに基づき前記測定対象の生育状況を演算する制御部とを有し、前記波長選択部材は、入射面と射出面の少なくとも一方に、前記波長選択部材に対する前記測定光又は前記反射測定光の入射角の増加に対応して膜厚を増加させる凹部を有する波長選択膜が形成される様構成された植物センサ。
【請求項2】
前記凹部の膜厚は、該凹部に対する前記測定光又は前記反射測定光の入射角に拘らず透過波長が一定又は略一定となる様に設定された請求項1に記載の植物センサ。
【請求項3】
前記波長選択部材は、前記測定光の光路上であり、該測定光の光軸と直交する様に配置され、前記測定光は入射角が回転対称となった状態で前記波長選択部材に入射する様構成された請求項1又は請求項2に記載の植物センサ。
【請求項4】
前記波長選択部材は、前記測定光と前記反射測定光の光路上であり、前記測定光と前記反射測定光の光軸と直交する様に配置され、前記測定光と前記反射測定光はそれぞれ入射角が回転対称となった状態で前記波長選択部材に入射する様構成された請求項1又は請求項2に記載の植物センサ。
【請求項5】
前記波長選択部材は、前記反射測定光の光路上であり、該反射測定光の光軸と直交する様に配置され、前記反射測定光は入射角が回転対称となった状態で前記波長選択部材に入射する様構成された請求項1又は請求項2に記載の植物センサ。
【請求項6】
前記測定光を1方向にのみ拡散させる拡散光学部材を更に具備する請求項1又は請求項2に記載の植物センサ。
【請求項7】
前記凹部の外径は、前記波長選択部材に入射する際の前記測定光又は前記反射測定光の光束径と合致又は略合致する様構成された請求項1又は請求項2に記載の植物センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作物に対して測定光を照射し、反射光を解析して農作物の生育状況を測定する植物センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
植物、特に農作物の生育状況を検出することは、農作物の生産管理に於いて重要である。従来、一方向に拡散させた検出光を植物に照射し、植物の葉からの反射検出光に基づき植物の生育状態を検出することが行われている。この場合、反射検出光には植物の葉以外の土からの反射検出光も含まれる為、検出結果にノイズが含まれていた。
【0003】
又、波長の異なる2つの検出光を植物に照射し、植物の葉からの各反射検出光の光量を比較することで、土からの反射検出光等のノイズを除去し、検出精度を高めることも行われている。
【0004】
然し乍ら、2つの検出光の光源として、2つの光源を必要とし、更に光源として高価なレーザダイオードを使用する為、製作コストの増加を招いていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-247235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、製作コストの低減が図れる植物センサを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも2波長を含む測定光を所定の広がり角で発光する発光部と、測定対象からの反射測定光を2波長に分離して取得する受光部と、前記測定光と前記反射測定光の少なくとも一方の光路上に設けられ、前記測定光と前記反射測定光の少なくとも一方から2波長を抽出する波長選択部材と、前記測定光の光量と各波長毎の前記反射測定光の受光量とに基づき前記測定対象の生育状況を演算する制御部とを有し、前記波長選択部材は、入射面と射出面の少なくとも一方に、前記波長選択部材に対する前記測定光又は前記反射測定光の入射角の増加に対応して膜厚を増加させる凹部を有する波長選択膜が形成される様構成された植物センサに係るものである。
【0008】
又本発明は、前記凹部の膜厚は、該凹部に対する前記測定光又は前記反射測定光の入射角に拘らず透過波長が一定又は略一定となる様に設定された植物センサに係るものである。
【0009】
又本発明は、前記波長選択部材は、前記測定光の光路上であり、該測定光の光軸と直交する様に配置され、前記測定光は入射角が回転対称となった状態で前記波長選択部材に入射する様構成された植物センサに係るものである。
【0010】
又本発明は、前記波長選択部材は、前記測定光と前記反射測定光の光路上であり、前記測定光と前記反射測定光の光軸と直交する様に配置され、前記測定光と前記反射測定光はそれぞれ入射角が回転対称となった状態で前記波長選択部材に入射する様構成された植物センサに係るものである。
【0011】
又本発明は、前記波長選択部材は、前記反射測定光の光路上であり、該反射測定光の光軸と直交する様に配置され、前記反射測定光は入射角が回転対称となった状態で前記波長選択部材に入射する様構成された植物センサに係るものである。
【0012】
又本発明は、前記測定光を1方向にのみ拡散させる拡散光学部材を更に具備する植物センサに係るものである。
【0013】
更に又本発明は、前記凹部の外径は、前記波長選択部材に入射する際の前記測定光又は前記反射測定光の光束径と合致又は略合致する様構成された植物センサに係るものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、少なくとも2波長を含む測定光を所定の広がり角で発光する発光部と、測定対象からの反射測定光を2波長に分離して取得する受光部と、前記測定光と前記反射測定光の少なくとも一方の光路上に設けられ、前記測定光と前記反射測定光の少なくとも一方から2波長を抽出する波長選択部材と、前記測定光の光量と各波長毎の前記反射測定光の受光量とに基づき前記測定対象の生育状況を演算する制御部とを有し、前記波長選択部材は、入射面と射出面の少なくとも一方に、前記波長選択部材に対する前記測定光又は前記反射測定光の入射角の増加に対応して膜厚を増加させる凹部を有する波長選択膜が形成される様構成されたので、前記波長選択膜に対する入射角の増加に基づく透過波長のシフトを抑制することができ、測定精度の向上を図ることができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施例に係る植物センサの使用例について説明する説明図である。
図2】本発明の第1の実施例に係る植物センサの概略構成図である。
図3】本発明の第1の実施例に係る波長選択部材を説明する側断面図である。
図4】(A)は膜厚を一定とした波長選択部材に於ける入射角毎の透過波長を説明するグラフであり、(B)は本発明の第1の実施例に係る波長選択部材に於ける入射角毎の透過波長を説明するグラフである。
図5】前記波長選択部材の凹部の中心から外周への膜厚の勾配を示す曲線を説明するグラフである。
図6】本発明の第2の実施例に係る植物センサの概略構成図である。
図7】本発明の第2の実施例に係る波長選択部材を説明する側断面図である。
図8】本発明の第3の実施例に係る植物センサの概略構成図である。
図9】(A)(B)は、本発明の第4の実施例に係る植物センサの発光部を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0017】
図1は、本発明の第1の実施例に係る植物センサの概略を示している。
【0018】
図1中、1は作業者の手に保持された植物センサを示している。該植物センサ1は、所定範囲の波長帯域を有するレーザ光線(測定光2)を圃場等の測定対象3(例えば農作物)に照射する。又、前記植物センサ1は、前記測定対象3で反射された前記測定光2(反射測定光4)の波長毎の受光量を検出し、各受光量から波長毎の反射率を測定する。
【0019】
前記植物センサ1は、前記測定光2の照射位置に於ける各波長毎の反射率に基づき、前記測定対象3の生育状況を測定することができる。
【0020】
ここで、前記測定光2には、少なくとも波長の異なる2波長のレーザ光線が含まれている。2波長の一例としては、第1測定波長帯としての735nm、第2波長帯としての808nmがある。前記測定光2として735nm付近の波長(735nmを中心とした所定範囲の波長)を有する第1測定光2aを使用する場合、前記測定対象3が窒素を含んでいると該測定対象3で反射されるが、窒素の含有量に拘らず、前記反射測定光4の光量は変化しない。
【0021】
一方で、前記測定光2として808nm付近の波長(808nmを中心とした所定範囲の波長)を有する第2測定光2bを使用する場合、前記測定対象3が窒素を含んでいると前記測定対象3で反射され、更に窒素の含有量によって反射率が異なり、含有量が多くなると反射光量も多くなることがわかっている。
【0022】
又、作物の葉には窒素が含まれ、生育状態がよい場合は窒素の含有量が多く、生育状態が悪い場合は、窒素の含有量が少ないということもわかっている。
【0023】
尚、前記測定対象3以外、例えば土も窒素を含む場合があるが、土と葉では反射率が大きく異なる(土の反射率が大幅に小さい)。従って、波長に限らず反射光量のみを比較すれば、土での反射か葉での反射かを判断できるので、土での反射と判断された前記反射測定光4を除去することで、ノイズを除去することができる。
【0024】
上記した様に、前記測定光2は、735nm付近の波長を有する前記第1測定光2aと808nm付近の波長を有する前記第2測定光2bを含んでいる。即ち、前記第1測定光2aと前記第2測定光2bは同一光軸上に照射され、同一の照射範囲に照射される。前記反射測定光4の反射光量は、反射面の清浄、汚れ等の反射面の状態の影響を受け、変化する。然し乍ら、2波長の前記測定光2が反射面の同一点に照射されているので、各波長の前記測定光2が反射面の状態から受ける影響は同一である。
【0025】
従って、808nm付近の波長を有する第2反射測定光4bの受光光量の大小は、窒素の含有量の大小によるものと判断されるので、前記第1反射測定光4aと前記第2反射測定光4bに基づき、前記測定対象3についての窒素の含有比率を求めることができる。予め、生育状況に対応する作物の葉の窒素の含有比率を取得しておけば、前記測定対象3の作物の生育状況を判断することができる。
【0026】
該測定対象3の窒素の含有比率は、第1測定波長帯(735nm付近)の反射率をR1、第2測定波長帯(808nm付近)の反射率をR2とした場合に、含有比率S=(R2/R1-1)×100で表すことができる。
【0027】
尚、前記植物センサ1は、該植物センサ1の傾斜を検出する傾斜センサ(後述)が内蔵されていてもよい。該傾斜センサの検出結果に基づき前記植物センサ1の水平(又は鉛直)に対する傾斜を検出可能となっている。
【0028】
図2は、本発明の第1の実施例に係る前記植物センサ1の概略構成図を示している。
【0029】
該植物センサ1は、発光部6、受光部7、波長選択部材8、制御部9、記憶部11、表示部12、操作部13とを具備し、各構成要素は筐体14に内蔵されている。又前記筐体14には、所定の開口面積を有する窓部15が形成されている。
【0030】
前記発光部6は、測定光源16と光量センサ17を有している。前記測定光源16は、例えば広帯域のLED光源であり、所定の広がり角、例えば±25°で投光光軸18上に広帯域の前記測定光2を照射する様に構成されている。又、前記光量センサ17は、例えばフォトダイオード(PD)であり、前記測定光源16からの光の一部を受光し、該測定光源16の発光光量をリアルタイムで検出可能に構成されている。前記光量センサ17が検出した光量は、前記制御部9にリアルタイムで送信される。
【0031】
前記受光部7は、前記反射測定光4の前記受光光軸23上に設けられた波長分離板19と、第1受光素子21と、前記波長分離板19の反射光軸上に設けられた第2受光素子22とを有している。
【0032】
前記波長分離板19は、例えば表面にダイクロイックフィルタが形成されたガラス板である。前記波長分離板19は、735nm付近の光を透過し、それ以外の波長の光を反射する光学特性を有している。尚、前記波長分離板19は、735nm付近の光を反射し、それ以外の波長の光を透過する様構成してもよい。
【0033】
前記第1受光素子21、前記第2受光素子22は、例えばフォトダイオード(PD)、或はアバランシェフォトダイオード(APD)であり、受光光軸23に沿って入射した前記反射測定光4の受光量を検出可能となっている。前記第1受光素子21、前記第2受光素子22で検出された前記反射測定光4の受光量は、それぞれ受光量データとしてリアルタイムで前記制御部9に送信される。
【0034】
前記波長選択部材8は、前記測定光2の光路上且つ前記反射測定光4の光路外に、前記投光光軸18と直交する様に配置され、前記測定光2が全て前記波長選択部材8に入射する様に構成されている。即ち、前記測定光2の前記波長選択部材8に対する入射角は回転対称となる。又、前記波長選択部材8は、例えばデュアルパスフィルタであり、735nm付近の波長と、808nm付近の波長との、2つの波長の光を透過させ、その他の波長を遮断する光学特性を有している。
【0035】
前記制御部9は、後述する前記記憶部11に格納された各種プログラムを実行する。これにより、前記制御部9は、前記測定光源16の発光を制御すると共に、前記第1受光素子21及び前記第2受光素子22で受光された前記反射測定光4に基づく前記測定対象3の育成具合の測定処理を制御する。
【0036】
前記記憶部11には、前記測定光源16を作動させ、前記測定光2を前記測定対象3に照射する為のるシーケンスプログラム、受光量データに基づき前記測定対象3の生育状態を判定する為の判定プログラム、受光量データからノイズとなるデータを除去する為のノイズ除去プログラム、前記測定対象3の生育状態に応じた肥料の散布量を演算する演算プログラム等が格納される。又、前記ノイズ除去プログラムには、受光量に関する閾値等のノイズ判定に必要な閾値が設定されている。又、前記記憶部11には、農作物である前記測定対象3の生育状況に対応する葉の窒素の含有比率が格納されると共に、前記測定光2中の前記第1測定光2aの割合と前記第2測定光2bの割合とが格納されている。
【0037】
図3は、前記波長選択部材8を示している。該波長選択部材8は、円盤状のガラス板24と、該ガラス板24の入射面と射出面の両面に形成された波長選択膜25とを有している。前記波長選択部材8は、例えば半径r=15mmであり、該波長選択部材8に広がり角±25°で前記測定光2が照射された際の、該測定光2のビーム径(有効径)が13mmとなる様に前記波長選択部材8が配置されている。
【0038】
図4(B)は、第1の実施例に係る前記波長選択膜25の光学特性を示すグラフである。該波長選択膜25は、735nm付近の波長と、808nm付近の波長との、2種類の波長を選択して透過させるデュアルパスフィルタとなっている。
【0039】
ここで、デュアルパスフィルタは、デュアルパスフィルタに対する入射角によって、透過する波長がシフトすることがわかっている。例えば、図4(A)に示される様に、前記波長選択膜25の膜厚が中心から外周に向って一定の場合、入射角0°で前記測定光2が入射した場合と、入射角25°で前記測定光2が入射した場合とでは、透過する波長が異なっている。即ち、前記波長選択膜25は、入射角25°の場合(図4(A)中の波線)、入射角0°の場合(図4(A)中の実線)よりも、透過波長が短波長側に17nm程度シフトする。
【0040】
一方で、前記波長選択膜25の膜厚を増加させると、透過する波長が長波長側にシフトすることもわかっている。
【0041】
そこで、第1の実施例では、前記測定光2の入射角の増加に対応して、前記波長選択膜25の膜厚を増加させ、前記測定光2の入射角に拘らず、透過する波長が一定又は略一定となる様、前記波長選択膜25の膜厚を設定している。尚、図4(B)中では、便宜上実線(入射角0°の場合)に対して波線(入射角25°の場合)が僅かに短波長側にシフトしているが、実際には実線と波線は合致又は略合致している。
【0042】
図3図5に示される様に、前記波長選択膜25は、前記投光光軸18を中心とし、中心側では膜厚が小さく、外周側では膜厚が大きくなるボウル状の凹曲面からなる凹部27が形成されている。該凹部27の外径は、前記測定光2が前記波長選択膜25に入射する際、及び該波長選択膜25から射出される際の光束径と合致するか、僅かに大きくなっている。即ち、入射側の前記波長選択膜25の前記凹部27は、射出側の前記波長選択膜25の前記凹部27よりも外径が小さくなっている。
【0043】
前記測定光2の光束径を有効径とし、有効径r=1に規格化し、前記凹部27の中心(r=0)、即ち前記投光光軸18上の前記凹部27(前記波長選択膜25)の膜厚t=1に規格化した場合、前記凹部27は有効径r=0の時、膜厚t=1であり、有効径r=1の時、膜厚t=1.025となる様構成されている。即ち、前記波凹部27は、外周の膜厚が中心の膜厚よりも2.5%厚くなる様に構成されている。
【0044】
図5は、前記凹部27の径方向の位置と膜厚との関係を示したグラフである。図5の曲線26は、前記凹部27の膜厚の勾配を示す曲線となっており、中心から外周に向って同心円状に漸次膜厚が増加し、且つ下に凸の曲線を描く様に構成される。
【0045】
尚、前記曲線26の形状は、前記測定光2の広がり角や、前記波長選択膜25に対する最大入射角や有効径によって変化する。一方で、前記曲線26の形状は、前記波長選択膜25の中心と外周とを結ぶ直線に対して必ず下に凸の曲線となる。前記曲線26は、例えば2次以下の多項式として定義できる。
【0046】
又、前記波長選択部材8の入射面と射出面では、前記測定光2の有効径が異なるので、前記曲線26の形状は入射側の前記凹部27と射出側の前記凹部27とで異なる。
【0047】
前記表示部12は、前記測定対象3の測定結果、即ち前記測定光2が照射された範囲に於ける前記測定対象3の窒素含有比率が表示される。例えば、窒素含有比率に対応して色分け表示する。或は、測定結果に基づき、前記測定対象3に対する施肥量を表示する。
【0048】
前記操作部13は、前記測定対象3に対する測定の開始及び停止が可能となっている。尚、前記表示部12をタッチパネルとすることで、該表示部12と前記操作部13とを兼用することができる。この場合、該操作部13は省略できる。
【0049】
次に、前記植物センサ1により前記測定対象3の生育状況を測定する場合について説明する。
【0050】
前記植物センサ1が作業者に手持された状態で、前記操作部13を介して測定開始が入力されると、前記制御部9は、前記測定光源16に前記測定光2を発光させる。
【0051】
広帯域の該測定光2は、前記投光光軸18上に所定の広がり角で拡散しつつ、前記波長選択部材8に入射する。又、前記測定光2の光量は、前記光量センサ17によりリアルタイムで検出され、検出結果は前記制御部9に出力される。
【0052】
前記波長選択部材8は、所定の2波長、即ち735nm付近の波長を有する前記第1測定光2aと、808nm付近の波長を有する前記第2測定光2bのみを透過させ、その他の波長を有する前記測定光2を遮断する。
【0053】
前記波長選択部材8を透過した前記第1測定光2aと前記第2測定光2bは、前記窓部15を介して前記測定対象3に照射される。この時、前記波長選択膜25は、前記測定光2の入射角に対応して膜厚が変化しているので、前記波長選択膜25に対する入射角に拘らず、第1波長帯域の前記第1測定光2aと第2波長帯域の前記第2測定光2bのみが前記波長選択膜25を透過する。
【0054】
尚、植物センサ1から前記測定対象3迄の距離は、例えば50cm~5mの範囲で選択される。又、前記測定対象3に対する前記測定光2の照射面積は、例えば前記測定対象3迄の距離が1mの時にφ30cmとなる。
【0055】
前記第1測定光2aと前記第2測定光2bは、前記測定対象3の窒素含有比率に基づき、所定の反射率で反射される。前記測定対象3で反射された前記第1反射測定光4aと前記第2反射測定光4bは前記窓部15を介して前記波長分離板19に入射する。
【0056】
735nm付近の波長を有する前記第1反射測定光4aは、前記波長分離板19を透過し、前記第1受光素子21に入射する。又、735nm付近以外の波長の光、即ち808nm付近の波長を有する前記第2反射測定光4bは、前記波長分離板19で反射され、前記第2受光素子22に入射する。前記第1受光素子21と前記第2受光素子22は、それぞれ前記第1反射測定光4aと前記第2反射測定光4bの受光量を前記制御部9に出力する。
【0057】
該制御部9は、前記光量センサ17から入力された前記測定光2の光量と、該測定光2中の前記第1測定光2aと前記第2測定光2bの割合と、前記第1受光素子21から入力された前記第1反射測定光4aの受光量と、前記第2受光素子22から入力された前記第2反射測定光4bの受光量とに基づき、前記測定対象3の窒素の含有比率を演算する。
【0058】
又、前記制御部9は、予め取得した生育状況に対応する前記測定対象3の葉の窒素の含有比率と演算した含有比率とを比較し、比較結果に基づき前記測定対象3の生育状況を求めると共に、該生育状況を前記表示部12に表示する。更に、前記制御部9は、前記含有比率に基づき前記測定対象3に対して必要な施肥量を演算し、演算結果を前記表示部12に表示する。
【0059】
測定が完了すると、測定位置を変更した後、再度前記測定光を前記測定対象3に照射し、測定を実行する。上記処理は、所望の測定範囲全域の測定が終了迄繰返される。
【0060】
上述の様に、第1の実施例では、前記波長選択部材8の前記波長選択膜25が、前記測定光2の入射角の増加に対応して膜厚を増加させる様構成されている。
【0061】
従って、入射角の変化による透過波長のシフトを防止できるので、前記測定光2の入射角に拘らず、前記波長選択膜25が透過させる前記測定光2の波長を一定とすることができると共に、光量の損失を抑制することができる。
【0062】
又、前記波長選択膜25に対する前記測定光2の入射角を揃える必要がないので、前記測定光2を平行光束とする為のレンズが不要となり、部品点数の低減及び小型化が図れると共に、製作コストの低減を図ることができる。
【0063】
又、前記測定光源16として広帯域のLEDを使用し、前記波長選択部材8としてデュアルパスフィルタを使用し、広帯域の前記測定光2から2波長の前記第1測定光2aと前記第2測定光2bを抽出する様構成されている。
【0064】
従って、2波長の測定光を得る為に、2つの光源を用いる必要がないので、部品点数の低減が図れると共に、製作コストの低減を図ることができる。
【0065】
尚、第1の実施例では、前記植物センサ1を携帯可能とし、作業者が前記植物センサ1を直接前記測定対象3に向け、該測定対象3の生育状況の測定を行っている。一方で、前記植物センサ1をトラクターやUAV等の移動体に搭載し、遠隔操作にて前記測定対象3の生育状況の測定を行ってもよい。
【0066】
この場合、移動体にGNSS装置等の位置測定装置を設け、前記測定対象3を測定した際の測定位置を取得することで、前記測定対象3の生育状況のマップを作ることができるので、前記測定対象3が広範囲に存在する場合であっても測定を実行することができる。
【0067】
又、前記波長選択膜25の透過波長は、温度によっても変化する。従って、前記測定光源16の発光を制御することで、測定光源16の温度に起因する透過波長のシフトを抑制でき、測定精度を向上させることができる。
【0068】
又、前記測定光源16の温度や前記植物センサ1の外部の気温を検出可能な温度センサを設け、該温度センサの検出結果に基づき透過波長のシフト量を演算し、演算したシフト量に基づき測定結果を補正してもよい。
【0069】
又、第1の実施例では、前記ガラス板24と、該ガラス板24の入射面と射出面の両方に設けられた前記波長選択膜25により前記波長選択部材8が形成されている。一方で、該波長選択部材8は、前記ガラス板24と、該ガラス板24の入射面と射出面のいずれか一方に設けられた前記波長選択膜25により形成してもよい。
【0070】
又、前記窓部15を外光を吸収する材料、例えば可視領域の波長を吸収する色ガラスとしてもよいし、前記窓部15に反射膜を蒸着させてもよい。これにより、前記受光部7に対する外光の入射を抑制でき、測定精度を向上させることができる。
【0071】
又、第1の実施例では、前記測定光源16の近傍に前記光量センサ17を設けているが、再帰反射性又は拡散反射性を有するターゲット等に前記測定光2を照射し、その時の前記反射測定光4の総受光量を予め取得してもよい。この場合、前記光量センサ17は省略することができる。
【0072】
又、第1の実施例では、前記測定光2と前記反射測定光4とが共に前記窓部15を通過する構成となっているが、前記測定光2が通過する窓部と前記反射測定光4が通過する窓部を別部材としてもよい。該窓部を分けることで、該窓部で反射された前記測定光2(迷光)が前記受光部7に受光されるのを抑制することができ、測定精度を向上させることができる。
【0073】
次に、図6図7を参照して、本発明の第2の実施例について説明する。尚、図6中、図2中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0074】
第2の実施例では、波長選択部材28が測定光2と反射測定光4の光路上に掛渡り、且つ前記測定光2の投光光軸18と前記反射測定光4の受光光軸23と直交する様に配置されている。即ち、前記測定光2と前記反射測定光4は、それぞれ入射角が回転対称となった状態で前記波長選択部材28に入射する。
【0075】
又、発光部6より照射された前記測定光2は、前記波長選択部材28を透過した後に測定対象3に照射され、前記反射測定光4は前記波長選択部材8を透過した後に受光部7に受光される様に構成されている。
【0076】
従って、波長選択膜29には、前記投光光軸18を中心とするボウル状の凹曲面を有する第1凹部31と、前記受光光軸23を中心とするボウル状の凹曲面を有する第2凹部32の2箇所の凹部が形成されている。
【0077】
尚、第2の実施例に於いても、前記波長選択部材28は、ガラス板33の入射面と射出面の両面に前記波長選択膜29が設けられるか、或は入射面と射出面のいずれか一方に前記波長選択膜29が設けられるかにより形成される。
【0078】
第2の実施例に於いては、測定対象3(図1参照)に向けて照射された広帯域の測定光2は、前記波長選択部材28、即ち前記第1凹部31を透過する過程で第1測定光2aと前記第2測定光2bのみが抽出され、窓部15を介して前記測定対象3に照射される。
【0079】
該測定対象3で反射された第1反射測定光4aと第2反射測定光4bは、窓部を介して前記波長選択部材28、即ち前記第2凹部32に対して入射及び透過し、前記波長分離板19に入射する。該波長分離板19を透過した前記第1反射測定光4aは、第1受光素子21に受光され、前記波長分離板19で反射されたと前記第2反射測定光4bは、第2受光素子22に受光される。前記第1反射測定光4a及び前記第2反射測定光4bの受光後の処理は、第1の実施例と同様である。
【0080】
第2の実施例では、前記波長選択部材28が、前記測定光2の光路上だけではなく、前記反射測定光4の光路上にも設けられ、前記測定光2と前記反射測定光4がそれぞれ前記波長選択膜29を透過する様に構成されている。
【0081】
従って、前記反射測定光4と共に外光が入射するのを抑制することができ、測定精度を向上させることができる。
【0082】
又、前記波長選択膜29の膜厚に勾配を設け、入射角に基づく前記波長選択膜29の透過波長のシフトを抑制可能としている。従って、前記波長選択膜29の透過波長を狭帯域としても充分な受光量を得ることができるので、外光の受光抑制効果を更に高めることができ、測定精度を更に向上させることができる。
【0083】
次に、図8を参照して、本発明の第3の実施例について説明する。尚、図8中、図2中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0084】
第3の実施例では、波長選択部材34が測定光2の光路上ではなく、反射測定光4の光路上に、受光光軸23と直交する様に配置されている。即ち、前記反射測定光4は、入射角が回転対称となった状態で前記波長選択部材34に入射する。
【0085】
第3の実施例に於いては、測定対象3(図1参照)に向けて照射された広帯域の波長を有する測定光2は、波長帯域及び光量を維持した状態で窓部15を介して前記測定対象3に照射される。
【0086】
該測定対象3で反射された前記反射測定光は、前記窓部15を介して前記波長選択部材34に入射する。該波長選択部材34は、第1の実施例及び第2の実施例と同様に、前記反射測定光4の入射角に対応して膜厚が変化する凹部39を有する波長選択膜が38設けられている。前記反射測定光4は、前記凹部39を透過する過程で、第1波長帯域(735nm付近)の第1反射測定光4aと、第2波長帯域(808nm付近)の第2反射測定光4bのみが抽出される。
【0087】
前記凹部39の透過後、前記第1反射測定光4aは、波長分離板19を透過し、第1受光素子21に受光される。又、前記第2反射測定光4bは、前記波長分離板19反射され、第2受光素子22に受光される。前記第1反射測定光4a及び前記第2反射測定光4bの受光後の処理は、第1の実施例と同様である。
【0088】
第3の実施例では、前記波長選択部材34が、前記反射測定光4の光路上に設けられ、第1波長帯域の前記第1反射測定光4aと第2波長帯域の前記第2測定光2bのみが受光部7に入射する様に構成されている。
【0089】
従って、前記第1反射測定光4a、前記第2反射測定光4bと共に、外光が前記受光部7に入射するのを抑制でき、測定精度を向上させることができる。
【0090】
又、前記波長選択膜38に形成された前記凹部39により、入射角に基づく前記波長選択膜の透過波長のシフトを抑制可能としている。従って、前記波長選択膜の透過波長を狭帯域としても充分な受光量を得ることができるので、外光の受光抑制効果を更に高めることができ、測定精度を更に向上させることができる。
【0091】
更に、前記波長選択部材34を設けるのは前記反射測定光4の光路上だけでよいので、前記波長選択部材34を小型化でき、製作コストの低減を図ることができる。
【0092】
次に、図9(A)、図9(B)を参照して、本発明の第4の実施例について説明する。尚、図9(A)、図9(B)中、図2中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0093】
第1の実施例~第3の実施例では、波長選択部材が投光光軸或は受光光軸と直交する様に配置され、測定光2或は反射測定光4が入射角を回転対称とした状態で入射する様に構成されている。一方で、波長選択部材34に対する前記測定光2或は前記反射測定光4の入射角は、必ずしも回転対称である必要はない。
【0094】
図9(A)、図9(B)は、第4の実施例に於ける発光部35を示している。第4の実施例では、波長選択部材36が測定光2の光路上に設けられている。又、前記波長選択部材36と測定光源16との間には拡散光学部材としてのシリンドリカルレンズ37が設けられている。
【0095】
該シリンドリカルレンズ37は、図9(A)に示される様に、X軸方向に於いては前記測定光2を偏向し、平行光束とする。又、前記シリンドリカルレンズ37は、図9(B)に示される様に、Y軸方向に於いては前記測定光2は偏向されずに拡散させる。
【0096】
即ち、該測定光2は、Y軸方向にのみ拡散された楕円状の光束となり、入射角が回転対称ではない状態で前記波長選択部材36の波長選択膜41に入射する。
【0097】
第4の実施例では、X軸方向に於いては入射位置に拘らず前記波長選択部材36に対する入射角は一定である。一方で、Y軸方向に於いては、前記投光光軸18から離れる程入射角は大きくなる。
【0098】
従って、前記波長選択膜41に形成される凹部42は、Y軸方向に於いては、入射角の増加に対応して、中心から離れる程膜厚が増加する曲線を描く。一方で、X軸方向に於いては、前記凹部42の膜厚は一定となる。
【0099】
第4の実施例に於いては、前記測定光2が前記シリンドリカルレンズ37を介してY軸方向にのみ拡散し、Y軸方向に長い楕円状の前記測定光2が前記波長選択部材36の凹部42に入射する。又、該凹部42はY軸方向にのみ入射角の増加に対応して膜厚が増加し、X軸方向に於いては膜厚が一定となる構成となっている。
【0100】
従って、前記測定光2が前記凹部42を透過する際に、透過波長のシフトが発生することなく735nm付近の波長と808nm付近の波長の前記測定光2のみが前記凹部42を透過する。前記測定光2が前記波長選択部材36を透過した後の処理は第1の実施例と同様である。
【0101】
第4の実施例の様に、前記波長選択部材36に対する前記測定光2の入射角が回転対称ではない場合であっても、該測定光2の光束断面形状及び広がり角に合わせて波長選択膜の膜厚を変化させることで、前記波長選択部材36に対する前記測定光2の入射角が回転対称な場合と同様の効果を得ることができる。
【0102】
尚、第4の実施例では、前記測定光2をY軸方向に拡散させる為の拡散光学部材として、前記シリンドリカルレンズ37を設けているが、該シリンドリカルレンズ37に代えて回折格子等を用いてもよい。
【符号の説明】
【0103】
1 植物センサ
2 測定光
3 測定対象
4 反射測定光
6 発光部
7 受光部
8 波長選択部材
9 制御部
25 波長選択膜
27 凹部
28 波長選択部材
29 波長選択膜
31 第1凹部
32 第2凹部
34 波長選択部材
36 波長選択部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9