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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044404
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】印刷装置およびインク供給方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20240326BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B41J2/175 111
B41J2/175 121
B41J2/175 153
B41J2/175 501
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149902
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】八坂 一郎
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA26
2C056EB20
2C056EB21
2C056EB50
2C056EC15
2C056EC17
2C056EC18
2C056EC20
2C056EC46
2C056KB08
2C056KB37
2C056KB40
(57)【要約】
【課題】メインタンク内において多量のインクが攪拌できないまま残留するのを抑制可能とする。
【解決手段】攪拌羽根873に対応して設けられたローレベルLml(所定位置)と、メインタンク97内のインクの液位との位置関係がメイン液位センサS97によって検出される。メインタンク97のインクの液位がローレベルLmlより低いことが検出されると(ステップS102で「YES」)、メインタンク97から前段バッファタンク96へインクが送られる(ステップS106~S108、第1メイン送液動作)。これによって、メインタンク97内において多量のインクが攪拌できないまま残留するのを抑制することが可能となっている。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルからインクを吐出する吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドに供給されるインクを貯留する後段バッファタンクと、
前記後段バッファタンクに供給されるインクを貯留する前段バッファタンクと、
前記前段バッファタンクと前記後段バッファタンクとを接続して連通させるバッファ送液配管と、
前記前段バッファタンクと前記後段バッファタンクとの間で前記バッファ送液配管に取り付けられて前記前段バッファタンクから前記後段バッファタンクへ前記バッファ送液配管に沿ってインクを送るバッファ送液ポンプと、
前記前段バッファタンクに供給されるインクを貯留するメインタンクと、
前記メインタンクと前記前段バッファタンクとを接続して連通させるメイン送液配管と、
前記メインタンクと前記前段バッファタンクとの間で前記メイン送液配管に取り付けられて前記メインタンクから前記前段バッファタンクへ前記メイン送液配管に沿ってインクを送るメイン送液ポンプと、
前記メインタンク内に配置されたメインタンク攪拌部材を有し、前記メインタンク攪拌部材を回転させることで前記メインタンクに貯留されるインクを攪拌するメインタンク攪拌部と、
前記メインタンク内のインクの液位と、前記メインタンク攪拌部材に対応して設けられた所定位置との位置関係を検出するメインタンク液位検出部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記メインタンク液位検出部の検出結果を取得するメインタンク液位取得部と、
前記メインタンク液位取得部が前記メインタンク内のインクの液位が前記所定位置より低いことを示す検出結果を取得したのに応じて、前記メインタンクから前記前段バッファタンクにインクを送液する第1メイン送液動作を前記メイン送液ポンプが実行するように、前記メイン送液ポンプを制御するメイン送液ポンプ制御部と、
を有する、
印刷装置。
【請求項2】
前記前段バッファタンク内に貯留されるインクの液位と、前記前段バッファタンクに対して設けられた前段通常液位範囲との位置関係を検出する前段バッファタンク液位検出部をさらに備え、
前記制御部は、
前記前段バッファタンク液位検出部の検出結果を取得する前段バッファタンク液位取得部を有し、
前記前段バッファタンク液位取得部が、前記前段バッファタンク内のインクの液位が前記前段通常液位範囲の下端より低いことを示す検出結果を取得した場合に、前記メインタンク液位取得部が取得する検出結果が前記メインタンク内のインクの液位が前記所定位置より低いことを示すのであれば、前記メイン送液ポンプ制御部は、前記第1メイン送液動作を前記メイン送液ポンプが実行するように、前記メイン送液ポンプを制御する、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記前段バッファタンク液位取得部が、前記前段バッファタンク内のインクの液位が前記前段通常液位範囲の下端より低いことを示す検出結果を取得した場合に、前記メインタンク液位取得部が取得する検出結果が前記メインタンク内のインクの液位が前記所定位置以上であることを示すのであれば、前記メイン送液ポンプ制御部は、前記第1メイン送液動作と異なる態様で前記メインタンクから前記前段バッファタンクにインクを送液する第2メイン送液動作を前記メイン送液ポンプが実行するように、前記メイン送液ポンプを制御する、
請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記第2メイン送液動作では、前記前段バッファタンク内のインクの液位が前記前段通常液位範囲の上端に到達するまで、前記メイン送液ポンプは、前記メインタンクから前記前段バッファタンクへインクを送る請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記第1メイン送液動作では、前記前段バッファタンク内のインクの液位が前記前段通常液位範囲の上端より高い位置に設けられた前段上限位置に到達するまで、前記メイン送液ポンプは、前記メインタンクから前記前段バッファタンクへインクを送る請求項2に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記前段バッファタンク内に配置された前段バッファタンク攪拌部材を有し、前記前段バッファタンク攪拌部材を回転させることで前記前段バッファタンクに貯留されるインクを攪拌する前段バッファタンク攪拌部をさらに備える請求項2に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記前段バッファタンク攪拌部材は、前記前段通常液位範囲より下側に配置される請求項6に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記後段バッファタンク内に貯留されるインクの液位と、前記後段バッファタンクに対して設けられた後段通常液位範囲との位置関係を検出する後段バッファタンク液位検出部をさらに備え、
前記制御部は、
前記後段バッファタンク液位検出部の検出結果を取得する後段バッファタンク液位取得部と、
前記後段バッファタンク液位取得部が前記後段バッファタンク内のインクの液位が前記後段通常液位範囲の下端より低いことを示す検出結果を取得したのに応じて、前記前段バッファタンクから前記後段バッファタンクにインクを送液するバッファ送液動作を前記バッファ送液ポンプが実行するように、前記バッファ送液ポンプを制御するバッファ送液ポンプ制御部と、
を有する、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記バッファ送液動作では、前記後段バッファタンク内のインクの液位が前記後段通常液位範囲の上端に到達するまで、前記バッファ送液ポンプは、前記前段バッファタンクから前記後段バッファタンクへインクを送る、
請求項8に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記後段バッファタンク内に配置された後段バッファタンク攪拌部材を有し、前記後段バッファタンク攪拌部材を回転させることで前記後段バッファタンクに貯留されるインクを攪拌する後段バッファタンク攪拌部をさらに備える請求項8に記載の印刷装置。
【請求項11】
前記後段バッファタンク攪拌部材は、前記後段通常液位範囲より下側に配置される請求項10に記載の印刷装置。
【請求項12】
前記バッファ送液ポンプと前記後段バッファタンクとの間において前記バッファ送液配管に設けられた分岐部と前記前段バッファタンクとを接続して連通させるバッファ戻し配管と、
前記分岐部と前記後段バッファタンクとの間において前記バッファ送液配管に設けられた送り制限電磁弁と、
前記分岐部と前記前段バッファタンクとの間において前記バッファ戻し配管に設けられた戻し制限電磁弁と、
をさらに備え、
前記制御部は、
前記送り制限電磁弁の開閉を制御する送り制限電磁弁制御部と、
前記戻し制限電磁弁の開閉を制御する戻し制限電磁弁制御部と、
を有し、
前記送り制限電磁弁が開くように前記送り制限電磁弁制御部が前記送り制限電磁弁を制御することで前記送り制限電磁弁を介して前記分岐部から前記後段バッファタンクへインクが送られるのを許容しつつ、前記戻し制限電磁弁が閉じるように前記戻し制限電磁弁制御部が前記戻し制限電磁弁を制御することで前記戻し制限電磁弁を介して前記分岐部から前記前段バッファタンクへインクが戻されるのを制限した状態で、前記バッファ送液ポンプが送液を実行するように前記バッファ送液ポンプ制御部が前記バッファ送液ポンプを制御することで、前記バッファ送液動作が実行され、
前記送り制限電磁弁が閉じるように前記送り制限電磁弁制御部が前記送り制限電磁弁を制御することで前記送り制限電磁弁を介して前記分岐部から前記後段バッファタンクへインクが送られるのを制限しつつ、前記戻し制限電磁弁が開くように前記戻し制限電磁弁制御部が前記戻し制限電磁弁を制御することで前記戻し制限電磁弁を介して前記分岐部から前記前段バッファタンクへインクが戻されるのを許容した状態で、前記バッファ送液ポンプが送液を実行するように前記バッファ送液ポンプ制御部が前記バッファ送液ポンプを制御することで、前記前段バッファタンクから前記バッファ送液配管の前記分岐部に到達したインクが前記バッファ戻し配管を介して前記前段バッファタンクに戻るバッファ戻し送液が実行される、
請求項8に記載の印刷装置。
【請求項13】
前記メインタンク攪拌部材は、回転に伴って生じる遠心力によって広がる攪拌羽根であり、
前記所定位置は、遠心力によって広がった前記攪拌羽根の位置に対応して設けられている請求項1に記載の印刷装置。
【請求項14】
前記所定位置は、遠心力によって広がった前記攪拌羽根の下端と同じ高さに設けられる請求項13に記載の印刷装置。
【請求項15】
前記所定位置は、遠心力によって広がった前記攪拌羽根の上端と同じ高さに設けられる請求項13に記載の印刷装置。
【請求項16】
前記所定位置は、遠心力によって広がった前記攪拌羽根より高い位置に設けられる請求項13に記載の印刷装置。
【請求項17】
前記インクは白インクである請求項1に記載の印刷装置。
【請求項18】
ノズルからインクを吐出する吐出ヘッドと、前記吐出ヘッドに供給されるインクを貯留する後段バッファタンクと、前記後段バッファタンクに供給されるインクを貯留する前段バッファタンクと、前記前段バッファタンクに供給されるインクを貯留するメインタンクと、前記メインタンク内に配置されたメインタンク攪拌部材を有し、前記メインタンク攪拌部材を回転させることで前記メインタンクに貯留されるインクを攪拌するメインタンク攪拌部と、を備えた印刷装置におけるインク供給方法であって、
前記メインタンク内のインクの液位と、前記メインタンク攪拌部材に対応して設けられた所定位置との位置関係を検出する工程と、
前記メインタンク内のインクの液位が前記所定位置より低いことが検出されたのに応じて、前記メインタンクから前記前段バッファタンクにインクを送液する第1メイン送液動作を実行する工程と、
を備えた、
インク供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ノズルからインクを吐出する吐出ヘッドに対してインクを供給する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、吐出ヘッドに対して供給されるインクを貯留する中間タンクと、中間タンクに供給されるインクを貯留するメインタンクとを備えた印刷装置が記載されている。この印刷装置では、吐出ヘッドからのインクの吐出に伴って中間タンク内のインクが減少すると、メインタンクから中間タンクにインクが供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-131518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような印刷装置では、メインタンクに貯留されたインクに含まれる顔料が沈降する場合があった。このような顔料の沈降は、例えば顔料として酸化チタンを含む白インクにおいて特に顕著である。そこで、メインタンク内に配置された攪拌部材によってインクを攪拌するといった対策を取ることができる。ただし、中間タンク内のインクの減少に伴ってメインタンクから中間タンクへインクが供給されるのに応じて、メインタンク内のインクの液位が攪拌部材によって攪拌できる位置よりも低下する。その結果、攪拌部材によって攪拌できない状態のインクがメインタンク内に多量に残留してしまう場合があった。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、メインタンク内において多量のインクが攪拌できないまま残留するのを抑制可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る印刷装置は、ノズルからインクを吐出する吐出ヘッドと、吐出ヘッドに供給されるインクを貯留する後段バッファタンクと、後段バッファタンクに供給されるインクを貯留する前段バッファタンクと、前段バッファタンクと後段バッファタンクとを接続して連通させるバッファ送液配管と、前段バッファタンクと後段バッファタンクとの間でバッファ送液配管に取り付けられて前段バッファタンクから後段バッファタンクへバッファ送液配管に沿ってインクを送るバッファ送液ポンプと、前段バッファタンクに供給されるインクを貯留するメインタンクと、メインタンクと前段バッファタンクとを接続して連通させるメイン送液配管と、メインタンクと前段バッファタンクとの間でメイン送液配管に取り付けられてメインタンクから前段バッファタンクへメイン送液配管に沿ってインクを送るメイン送液ポンプと、メインタンク内に配置されたメインタンク攪拌部材を有し、メインタンク攪拌部材を回転させることでメインタンクに貯留されるインクを攪拌するメインタンク攪拌部と、メインタンク内のインクの液位と、メインタンク攪拌部材に対応して設けられた所定位置との位置関係を検出するメインタンク液位検出部と、制御部と、を備え、制御部は、メインタンク液位検出部の検出結果を取得するメインタンク液位取得部と、メインタンク液位取得部がメインタンク内のインクの液位が所定位置より低いことを示す検出結果を取得したのに応じて、メインタンクから前段バッファタンクにインクを送液する第1メイン送液動作をメイン送液ポンプが実行するように、メイン送液ポンプを制御するメイン送液ポンプ制御部と、を有する。
【0007】
本発明に係るインク供給方法は、ノズルからインクを吐出する吐出ヘッドと、吐出ヘッドに供給されるインクを貯留する後段バッファタンクと、後段バッファタンクに供給されるインクを貯留する前段バッファタンクと、前段バッファタンクに供給されるインクを貯留するメインタンクと、メインタンク内に配置されたメインタンク攪拌部材を有し、メインタンク攪拌部材を回転させることでメインタンクに貯留されるインクを攪拌するメインタンク攪拌部と、を備えた印刷装置におけるインク供給方法であって、メインタンク内のインクの液位と、メインタンク攪拌部材に対応して設けられた所定位置との位置関係を検出する工程と、メインタンク内のインクの液位が所定位置より低いことが検出されたのに応じて、メインタンクから前段バッファタンクにインクを送液する第1メイン送液動作を実行する工程と、を備える。
【0008】
このように構成された本発明(印刷装置、インク供給方法)では、メインタンク、前段バッファタンクおよび後段バッファタンクが設けられ、メインタンクから前段バッファタンクへインクが供給され、さらに前段バッファタンクから後段バッファタンクへインクが供給される。そして、後段バッファタンクに貯留されるインクが吐出ヘッドに供給されて、吐出ヘッドのノズルから吐出される。また、メインタンク内にはメインタンク攪拌部材が配置され、メインタンク攪拌部材が回転することでメインタンクに貯留されるインクが攪拌される。そして、このメインタンク攪拌部材に対応して設けられた所定位置と、メインタンク内のインクの液位との位置関係が検出される。また、メインタンク内のインクの液位が所定位置より低いことが検出されると、メインタンクから前段バッファタンクへインクが送られる(第1メイン送液動作)。これによって、メインタンク内において多量のインクが攪拌できないまま残留するのを抑制することが可能となっている。
【0009】
また、前段バッファタンク内に貯留されるインクの液位と、前段バッファタンクに対して設けられた前段通常液位範囲との位置関係を検出する前段バッファタンク液位検出部をさらに備え、制御部は、前段バッファタンク液位検出部の検出結果を取得する前段バッファタンク液位取得部を有し、前段バッファタンク液位取得部が、前段バッファタンク内のインクの液位が前段通常液位範囲の下端より低いことを示す検出結果を取得した場合に、メインタンク液位取得部が取得する検出結果がメインタンク内のインクの液位が所定位置より低いことを示すのであれば、メイン送液ポンプ制御部は、第1メイン送液動作をメイン送液ポンプが実行するように、メイン送液ポンプを制御するように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、前段バッファタンク内のインクの液位が前段通常液位範囲の下端未満に減少した場合には、第1送液動作によって前段バッファタンクにインクを補充できる。
【0010】
また、前段バッファタンク液位取得部が、前段バッファタンク内のインクの液位が前段通常液位範囲の下端より低いことを示す検出結果を取得した場合に、メインタンク液位取得部が取得する検出結果がメインタンク内のインクの液位が所定位置以上であることを示すのであれば、メイン送液ポンプ制御部は、第1メイン送液動作と異なる態様でメインタンクから前段バッファタンクにインクを送液する第2メイン送液動作をメイン送液ポンプが実行するように、メイン送液ポンプを制御するように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、前段バッファタンク内のインクの液位が前段通常液位範囲の下端未満に減少した場合には、第2送液動作によって前段バッファタンクにインクを補充できる。
【0011】
また、第2メイン送液動作では、前段バッファタンク内のインクの液位が前段通常液位範囲の上端に到達するまで、メイン送液ポンプは、メインタンクから前段バッファタンクへインクを送るように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、第2メイン送液動作を実行することで、前段通常液位範囲の下端未満にまで減少した前段バッファタンク内のインクの液位を前段通常液位範囲の上端まで上昇させることができる。
【0012】
また、第1メイン送液動作では、前段バッファタンク内のインクの液位が前段通常液位範囲の上端より高い位置に設けられた前段上限位置に到達するまで、メイン送液ポンプは、メインタンクから前段バッファタンクへインクを送るように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、メインタンク内において攪拌できなくなったインクを、メインタンクから前段バッファタンクへ多量に送ることができる。
【0013】
また、前段バッファタンク内に配置された前段バッファタンク攪拌部材を有し、前段バッファタンク攪拌部材を回転させることで前段バッファタンクに貯留されるインクを攪拌する前段バッファタンク攪拌部をさらに備えるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、メインタンク内において攪拌できない状態になったインクを前段バッファタンクに送って、前段バッファタンク攪拌部材により攪拌することができる。
【0014】
また、前段バッファタンク攪拌部材は、前段通常液位範囲より下側に配置されるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、前段通常液範囲より下側に配置された前段バッファタンク攪拌部材によって、前段バッファタンク内のインクが攪拌される。よって、メインタンク内において攪拌できない状態になったインクを前段バッファタンクに送って、前段バッファタンク攪拌部材により確実に攪拌することができる。
【0015】
また、後段バッファタンク内に貯留されるインクの液位と、後段バッファタンクに対して設けられた後段通常液位範囲との位置関係を検出する後段バッファタンク液位検出部をさらに備え、制御部は、後段バッファタンク液位検出部の検出結果を取得する後段バッファタンク液位取得部と、 後段バッファタンク液位取得部が後段バッファタンク内のインクの液位が後段通常液位範囲の下端より低いことを示す検出結果を取得したのに応じて、前段バッファタンクから後段バッファタンクにインクを送液するバッファ送液動作をバッファ送液ポンプが実行するように、バッファ送液ポンプを制御するバッファ送液ポンプ制御部と、を有するように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、後段バッファタンク内のインクの液位が後段通常液位範囲の下端未満に減少した場合には、バッファ送液動作によって後段バッファタンクにインクを補充できる。
【0016】
また、バッファ送液動作では、後段バッファタンク内のインクの液位が後段通常液位範囲の上端に到達するまで、バッファ送液ポンプは、前段バッファタンクから後段バッファタンクへインクを送るように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、バッファ送液動作を実行することで、後段通常液位範囲の下端未満にまで減少した後段バッファタンク内のインクの液位を後段通常液位範囲の上端まで上昇させることができる。
【0017】
また、後段バッファタンク内に配置された後段バッファタンク攪拌部材を有し、後段バッファタンク攪拌部材を回転させることで後段バッファタンクに貯留されるインクを攪拌する後段バッファタンク攪拌部をさらに備えるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、後段バッファタンクに貯留されるインクを、後段バッファタンク攪拌部材により攪拌することができる。
【0018】
また、後段バッファタンク攪拌部材は、後段通常液位範囲より下側に配置されるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、後段バッファタンクに貯留されるインクを、後段通常液位範囲より下側の後段バッファタンク攪拌部材により攪拌することができる。
【0019】
また、バッファ送液ポンプと後段バッファタンクとの間においてバッファ送液配管に設けられた分岐部と前段バッファタンクとを接続して連通させるバッファ戻し配管と、分岐部と後段バッファタンクとの間においてバッファ送液配管に設けられた送り制限電磁弁と、分岐部と前段バッファタンクとの間においてバッファ戻し配管に設けられた戻し制限電磁弁と、をさらに備え、制御部は、送り制限電磁弁の開閉を制御する送り制限電磁弁制御部と、戻し制限電磁弁の開閉を制御する戻し制限電磁弁制御部と、を有し、送り制限電磁弁が開くように送り制限電磁弁制御部が送り制限電磁弁を制御することで送り制限電磁弁を介して分岐部から後段バッファタンクへインクが送られるのを許容しつつ、戻し制限電磁弁が閉じるように戻し制限電磁弁制御部が戻し制限電磁弁を制御することで戻し制限電磁弁を介して分岐部から前段バッファタンクへインクが戻されるのを制限した状態で、バッファ送液ポンプが送液を実行するようにバッファ送液ポンプ制御部がバッファ送液ポンプを制御することで、バッファ送液動作が実行され、送り制限電磁弁が閉じるように送り制限電磁弁制御部が送り制限電磁弁を制御することで送り制限電磁弁を介して分岐部から後段バッファタンクへインクが送られるのを制限しつつ、戻し制限電磁弁が開くように戻し制限電磁弁制御部が戻し制限電磁弁を制御することで戻し制限電磁弁を介して分岐部から前段バッファタンクへインクが戻されるのを許容した状態で、バッファ送液ポンプが送液を実行するようにバッファ送液ポンプ制御部がバッファ送液ポンプを制御することで、前段バッファタンクからバッファ送液配管の分岐部に到達したインクがバッファ戻し配管を介して前段バッファタンクに戻るバッファ戻し送液が実行されるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、例えば吐出ヘッドがノズルからのインクの吐出を停止している印刷待機期間等において、バッファ戻し送液を実行することで、インクを循環させて、インクを攪拌することができる。
【0020】
また、メインタンク攪拌部材は、回転に伴って生じる遠心力によって広がる攪拌羽根であり、所定位置は、遠心力によって広がった攪拌羽根の位置に対応して設けられているように、印刷装置を構成してもよい。このような攪拌羽根を用いて攪拌を行う場合、静止する攪拌羽根の下端より、回転する攪拌羽根の下端が上昇する。したがって、メインタンクにおいて、回転する攪拌羽根の下端より下側の底部に溜まるインクを攪拌することができない。これに対して、遠心力によって広がった攪拌羽根の位置に対応して上記の所定位置を設けて、第1メイン送液動作を実行するように構成することで、メインタンクの底部において多量のインクが攪拌できないまま残留するのを抑制することができる。
【0021】
なお、攪拌羽根と所定位置との具体的な位置関係は、種々想定できる。そこで、所定位置は、遠心力によって広がった攪拌羽根の下端と同じ高さに設けられてもよいし、遠心力によって広がった攪拌羽根の上端と同じ高さに設けられてもよいし、遠心力によって広がった攪拌羽根より高い位置に設けられてもよい。
【0022】
また、インクは白インクである場合には、本発明を適用するとよい。これによって、メインタンク内において多量の白インクが攪拌できないまま残留して、白インクの顔料が沈降するのを抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明によれば、メインタンク内において多量のインクが攪拌できないまま残留するのを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る印刷装置を備えた印刷システムの一例を模式的に示す正面図。
図2図1の印刷システムが備える印刷装置を模式的に示す正面図。
図3】ヘッドユニットが備える吐出ヘッドの底面を模式的に示す図。
図4】吐出ヘッドと当該吐出ヘッドにインクを供給するインク供給機構の構成を模式的に示す図。
図5】バッファタンクにインクを供給する機構を模式的に示す図。
図6】印刷装置が備える電気的構成を示すブロック図。
図7A】送液制御を実行するために後段バッファタンクバッファタンクに対して設けられた後段液位センサの検出位置を模式的に示す図。
図7B】送液制御を実行するために前段バッファタンクバッファタンクに対して設けられた前段液位センサの検出位置を模式的に示す図。
図8】送液制御を実行するためにメインタンクに対して設けられたメイン液位センサの検出位置を模式的に示す図。
図9】印刷装置で実行されるメインタンクからのインク送液制御の一例を示すフローチャート。
図10A図9のインク送液制御において実行される動作を模式的に示す図。
図10B図9のインク送液制御において実行される動作を模式的に示す図。
図11】印刷装置で実行される前段バッファタンクからのインク送液制御の一例を示すフローチャート。
図12図11のインク送液制御において実行される動作を模式的に示す図。
図13】印刷装置で実行される送液モード切替制御の一例を示すフローチャート。
図14A】攪拌羽根に対応して設けられるローレベルの変更例を模式的に示す図。
図14B】攪拌羽根に対応して設けられるローレベルの変更例を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は本発明に係る印刷装置を備えた印刷システムの一例を模式的に示す正面図である。図1および以下に示す図では、水平方向Xおよび鉛直方向Zを適宜示す。図1に示すように、印刷システム1は、水平方向Xに配列された印刷装置3および乾燥装置6を備える。この印刷システム1は、繰出ロール11から巻取ロール12へロール・トゥ・ロールで長尺帯状の印刷媒体Mを搬送する。なお、印刷媒体Mの素材は、OPP(oriented polypropylene)あるいはPET(polyethylene terephthalate)等のフィルムである。ただし、印刷媒体Mの素材はフィルムに限られず、紙等でもよい。かかる印刷媒体Mは可撓性を有する。また、以下では、印刷媒体Mの両面のうち、画像が印刷される面を表面M1と、表面M1の反対側の面を裏面M2と適宜称する。
【0026】
印刷装置3は、繰出ロール11から巻取ロール12へ搬送される印刷媒体Mの表面M1に対してインクジェット方式で水性インクを吐出することで、印刷媒体Mの表面M1に画像を印刷する。かかる印刷装置3の詳細な構成は後述する。こうして画像が印刷された印刷媒体Mは、印刷装置3から乾燥装置6へ向けて水平方向Xに搬送される。
【0027】
乾燥装置6は乾燥炉60を備え、繰出ロール11から巻取ロール12への搬送に伴って印刷装置3から搬出された印刷媒体Mを乾燥させる。乾燥炉60内には、水平方向Xに配列された2個の上段送風ユニット61uと、これら上段送風ユニット61uの下側で水平方向Xに配列された2個の中段送風ユニット61mと、これら中段送風ユニット61mの下側で水平方向Xに配列された2個の下段送風ユニット61lとが具備されている。
【0028】
印刷装置3の搬出口312から搬出された印刷媒体Mは、2個の上段送風ユニット61uを水平方向Xに通過した後に、1対のローラ62によって2個の中段送風ユニット61mへ向けて折り返される。続いて、印刷媒体Mは、2個の中段送風ユニット61mを水平方向Xに通過した後に、1対のエアターンバー63によって2下段送風ユニット61lに向けて折り返される。さらに、印刷媒体Mは、2個の下段送風ユニット61lを水平方向Xに通過した後に、乾燥装置6の外部へ搬出される。
【0029】
上段送風ユニット61uは、水平方向Xに通過する印刷媒体Mを鉛直方向Zから挟むように配置された2個の送風チャンバ64を有する。各送風チャンバ64は、水平方向Xに配列された複数のノズル65を有し、各ノズル65から温風(60度以上の気体)を印刷媒体Mへ噴射する。こうして、印刷媒体Mは、上下に設けられた2個の送風チャンバ64の間を通過しつつ、これら送風チャンバ64のノズル65から噴射された温風によって乾燥される。また、中段送風ユニット61mおよび下段送風ユニット61lのそれぞれも、上段送風ユニット61uと同様に、印刷媒体Mを鉛直方向Zから挟む2個の送風チャンバ64を有する。
【0030】
ちなみに、上段送風ユニット61uの具体的構成はここの例に限られない。例えば、上段送風ユニット61uの上下の送風チャンバ64のうち下側の送風チャンバ64に代えて、水平方向Xに配列された複数のローラを設けてもよい。かかる構成では、複数のローラによって印刷媒体Mの裏面M2を下側から支持しつつ、上側の送風チャンバ64から印刷媒体Mの表面M1に温風を噴射できる。
【0031】
図2図1の印刷システムが備える印刷装置を模式的に示す正面図である。図2では、水平方向Xの一方側X1および他方側X2を適宜示す。ここで、一方側X1は印刷装置3から乾燥装置6へ向う側であり、他方側X2は一方側X1の反対側である。印刷装置3は、筐体31と、筐体31内に配置されたカラー印刷部32と、筐体31内においてカラー印刷部32の上方に配置された白印刷部33と、筐体31内に配置された複数のローラによって印刷媒体Mを搬送する搬送部4とを備える。
【0032】
カラー印刷部32は、搬送部4によって搬送される印刷媒体Mの上方において、印刷媒体Mの進行方向(他方側X2から一方側X1へ向かう方向)に配列された複数(6個)のヘッドユニット321を有する。複数のヘッドユニット321は、それぞれの下方を通過する印刷媒体Mの表面M1に上方から対向するノズルを有し、互いに異なる色のカラーインクをインクジェット方式でノズルから吐出する。ここで、カラーインクとは、白色以外のインクを意味し、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラック等のインクを含む。こうして、カラー印刷部32の複数のヘッドユニット321は、それぞれの下方を通過する印刷媒体Mの表面M1に上方からカラーインクを吐出することで、印刷媒体Mの表面M1にカラー画像を印刷する。
【0033】
また、白印刷部33は、搬送部4によって搬送される印刷媒体Mの上方に配置された単一のヘッドユニット331を有する。ヘッドユニット331は、その下方を通過する印刷媒体Mの表面M1に上方から対向するノズルを有し、白インクをインクジェット方式でノズルから吐出する。こうして、白印刷部33のヘッドユニット331は、その下方を通過する印刷媒体Mの表面M1に上方から白インクを吐出することで、印刷媒体Mの表面M1に白画像を印刷する。
【0034】
筐体31の他方側X2の側壁には搬入口311が開口する一方、筐体31の一方側X1の側壁には搬出口312が開口している。そして、搬送部4は、上記のカラー印刷部32および白印刷部33を経由しつつ、搬入口311から搬出口312へ印刷媒体Mを搬送する。
【0035】
この搬送部4は、カラー印刷部32の下側に設けられた搬入部41と、カラー印刷部32の一方側X1に設けられた上昇搬送部42と、カラー印刷部32の上側に設けられた上方搬送部43と、カラー印刷部32の他方側X2に設けられた下降搬送部44とを有する。搬入部41は、搬入口311から搬入された印刷媒体Mをローラ411によって一方側X1に搬送し、上昇搬送部42は、搬入部41によって搬送されてきた印刷媒体Mをローラ421によって上側に搬送し、上方搬送部43は、上昇搬送部42によって搬送されてきた印刷媒体Mをローラ431によって他方側X2へ搬送し、下降搬送部44は、上方搬送部43によって搬送されてきた印刷媒体Mをローラ441によって下側に搬送する。
【0036】
さらに、搬送部4は、カラー印刷部32に対向する印刷媒体Mを下方から支持するカラー搬送部45を有し、下降搬送部44を通過した印刷媒体Mはカラー搬送部45に進入する。このカラー搬送部45は、他方側X2から一方側X1へ配列された複数のローラ451を有し、各ローラ451が印刷媒体Mの裏面M2に下方から接触する。こうして、カラー搬送部45によって支持される印刷媒体Mの表面M1は上方を向き、カラー印刷部32の各ヘッドユニット321は、この表面M1に上方から対向しつつカラーインクを吐出する。
【0037】
また、搬送部4は、印刷媒体Mの進行方向においてカラー搬送部45と下降搬送部44との間に配置されたローラ461、462、463を有する。ローラ461は、印刷媒体Mを駆動する駆動ローラである。ローラ462、463は印刷媒体Mに従動して回転する従動ローラである。
【0038】
さらに、搬送部4は、カラー搬送部45から一方側X1に搬送されてきた印刷媒体Mを二回上下反転させる反転搬送部47を有する。この反転搬送部47は、駆動ローラ471を含む複数のローラ471~477を有し、これらローラ471~477が印刷媒体Mの裏面M2に接触しつつ、印刷媒体Mを二回上下反転させる。つまり、反転搬送部47は、カラー搬送部45から搬送された印刷媒体Mを、ローラ471、472によって下方向に向けて搬送し、さらに印刷媒体Mの進行方向をローラ472によって他方側X2に変更して搬送することにより、印刷媒体Mの表面M1と裏面M2とを上下反転させる。続いて、反転搬送部47は、複数のローラ473によって印刷媒体Mを一方側X1から他方側X2に向けて搬送し、次いで、ローラ474~476によって印刷媒体Mを上方向に向けて搬送する。さらに、反転搬送部47は、ローラ476によって印刷媒体Mの進行方向を一方側X1に変更することによって、印刷媒体Mの表面M1と裏面M2とを再び上下反転させるとともに、ローラ477によって印刷媒体Mを他方側X2から一方側X1に向けて搬送する。
【0039】
また、搬送部4は、白印刷部33に対向する印刷媒体Mを下方から支持する白搬送部48を有し、反転搬送部47によって二回上下反転された印刷媒体Mは白搬送部48に進入する。この白搬送部48は、印刷媒体Mの裏面M2に下側から接触するローラ481を有する。こうして、白搬送部48によって支持される印刷媒体Mの表面M1は上方を向き、白印刷部33のヘッドユニット331は、この表面M1に上方から対向しつつ白インクを吐出する。
【0040】
また、搬送部4は、上方搬送部43より上方に設けられた搬出部49を有する。搬出部49は、水平方向Xの他方側X2から一方側X1へ配列された複数のローラ491を有する。この搬出部49は、白搬送部48により搬送されてきた印刷媒体Mを、複数のローラ491によって一方側X1へと搬送することで、筐体31の搬出口312から乾燥装置6へ搬出する。
【0041】
上記のように、印刷装置3のカラー印刷部32および白印刷部33は、ヘッドユニット321、331を有する。続いては、ヘッドユニット321、331が有する吐出ヘッドHと当該吐出ヘッドHにインクを供給するインク供給機構について説明する。なお、ヘッドユニット321、331は共通する基本的構成を具備するとともに、インク供給機構の基本的な構成もヘッドユニット321、331で共通する。そこで、白インクを吐出するヘッドユニット331に関する構成について説明を行う。
【0042】
図3はヘッドユニットが備える吐出ヘッドの底面を模式的に示す図であり、図4は吐出ヘッドと当該吐出ヘッドにインクを供給するインク供給機構の構成を模式的に示す図である。図3では、水平方向Xおよび鉛直方向Zの他に、水平方向Xに直交する水平方向Yが示されている。図3に示すように、ヘッドユニット331では、同一の色のインク(白インク)を吐出する複数の吐出ヘッドHが水平方向Yに一列に配列されており、各吐出ヘッドHは底面視において矩形を有する。なお、複数の吐出ヘッドHの配列態様は図3の例に限られず、複数の吐出ヘッドHは千鳥状に配列されてもよい。
【0043】
図4に示すように、吐出ヘッドHはハウジングHaを有し、ハウジングHaの底面では、複数のノズルHnが水平方向Yに千鳥状に配列されて開口する。ハウジングHaの内部には、複数のノズルHnにそれぞれ連通する複数のキャビティHbと、複数のキャビティHbに連通するインク供給室Hcとが設けられており、インク供給室Hcから供給されたインクがキャビティHbに貯留される。また、各キャビティHbには圧電素子Dが設けられており、圧電素子Dが駆動信号(電気信号)に応じて変位することで、キャビティHb内のインクに圧力変動を与える。この圧力変動によって、キャビティHbからインクが押し出されて、当該キャビティHbに連通するノズルHnからインクが吐出される。また、吐出ヘッドHの上部では、インク流入口Hdと、インク流出口Heとがそれぞれ開口し、インクは、後述するインク供給機構9aからインク流入口Hdを介してインク供給室Hcに流入し、インク供給室Hcからインク流出口Heを介して後述するインク回収機構9bへ向けて流出する。
【0044】
次に、インクを供給、回収、循環させるインク供給・回収・循環機構9について説明する。インク供給・回収・循環機構9は、吐出ヘッドHにインクを供給するインク供給機構9a、吐出ヘッドHからインクを回収するインク回収機構9b、および回収したインクを再びインク供給機構9aに戻すインク戻し機構9cを含んで構成される。インク供給機構9aは、吐出ヘッドHへ向けてインクを供給するインク供給部91と、このインク供給部91に対して付与する供給圧力を生成する圧力生成部93とを含む。インク供給部91は、吐出ヘッドHへ供給するインクを貯留する供給タンク91aと、この供給タンク91aから供給されるインクを吐出ヘッドHへ送液する供給配管91bとを含む。インク回収機構9bは、吐出ヘッドHからインクを回収するインク回収部92と、このインク回収部92に対して付与する圧力を生成する圧力生成部94とを含む。インク回収部92は、吐出ヘッドHから回収したインクを貯留する回収タンク92aと、吐出ヘッドHから回収したインクを回収タンク92aへ送液する回収配管92bとを含む。
【0045】
供給タンク91aおよび回収タンク92aのそれぞれは、吐出ヘッドHより上方に配置される。インク戻し機構9cは、回収タンク92aと供給タンク91aとを流路接続する戻り配管902と、この戻り配管902の途中の位置に介在された循環ポンプ90と、戻り配管902の途中の位置に介在され、循環ポンプ90と供給タンク91との間に配置された脱気フィルタ901とを備える。そして、循環ポンプ90は、回収タンク92aから供給タンク91aへインクを送り、脱気フィルタ901は、循環ポンプ90から流出して供給タンク91に流入する前のインクから気体を除去する。かかるインク供給機構9は、循環ポンプ90によって、回収タンク92から供給タンク91に到る第1経路Caに沿ってインクを送ることができる。
【0046】
さらに、インク供給機構9aは、供給タンク91aに圧力P1(負圧)を与える供給側圧力生成部93(以下、「圧力生成部93」と適宜称する)を備える。この圧力生成部93は、圧力タンク931と、圧力タンク931を排気して圧力タンク931に圧力P1を生成する排気ポンプ932と、圧力タンク931にその一端が接続された可撓性のチューブ933と、チューブ933の他端にその一端が連通可能に接続され、その他端が供給タンク91a内の雰囲気に臨むように配置され、圧力タンク931内に生成された圧力を供給タンク91aに伝える圧力伝達配管934と、を備える。そして、排気ポンプ932によって圧力タンク931内に生成された圧力P1が、チューブ933、圧力伝達配管964を介して供給タンク91aに与えられる。
【0047】
これに対して、供給タンク91a内では、インクの液面より上側に気体(空気)が溜まっている。つまり、供給タンク91a内では、気液界面の下側にインクが貯留され、気液界面の上側に気体が存在する。したがって、圧力生成部93によって、供給タンク91a内の気液界面に圧力P1(負圧)が与えられることとなる。
【0048】
さらに、インク回収機構9bは、回収タンク92aに圧力P2(負圧)を与える回収側圧力生成部94(以下、「圧力生成部94」と適宜称する)を備える。この圧力生成部94は、圧力タンク941と、圧力タンク941を排気して圧力タンク941に圧力P2を生成する排気ポンプ942と、圧力タンク941にその一端が接続された可撓性のチューブ943と、このチューブ973の他端にその一端が連通可能に接続されており、その他端が回収タンク92内の雰囲気に臨むように配置され、圧力タンク941内に生成された圧力を回収タンク92aに伝える圧力伝達配管944と、を備える。そして、排気ポンプ942によって圧力タンク941内に生成された圧力P2がチューブ943、圧力伝達配管944を介して回収タンク92aに与えられる。
【0049】
これに対して、回収タンク92a内では、インクの液面より上側に気体(空気)が溜まっている。つまり、回収タンク92a内では、気液界面の下側にインクが貯留され、気液界面の上側に気体が存在する。したがって、圧力生成部94によって、回収タンク92a内の気液界面に圧力P2(負圧)が与えられることとなる。
【0050】
図4に示す状態では、圧力生成部94が回収タンク92aに付与する圧力P2は、圧力生成部93が供給タンク91aに付与する圧力P1より低い。この圧力P2と圧力P1との差によって、供給タンク91aから吐出ヘッドHのインク供給室Hcを介して回収タンク92aに到る第2経路Cbに沿ってインクが流れる。また、第2経路Cbに沿って回収タンク92aに流入したインクは、第1経路Caに沿って循環ポンプ90により供給タンク91aに戻される。こうして、供給タンク91aから吐出ヘッドHを介して回収タンク92aに到達した後に供給タンク91aに戻る循環経路(第2経路Cb+第1経路Ca)でインクが循環する。
【0051】
インク供給・回収・循環機構9はバッファタンク95を備え、バッファタンク95は、供給タンク91aおよび回収タンク92aより多量のインクを貯留することができる。また、インク供給・回収・循環機構9は、バッファタンク95と供給タンク91aを接続する配管951と、バッファタンク95と回収タンク92aとを接続する配管952とを備える。つまり、バッファタンク95は、配管951を介して供給タンク91aと連通し、配管952を介して回収タンク92aと連通する。
【0052】
さらに、インク供給・回収・循環機構9は、バッファタンク95と供給タンク91aとの間で配管951に取り付けられた回収ポンプ953と、バッファタンク95と回収タンク92aとの間で配管952に取り付けられた供給ポンプ954と、回収ポンプ953と供給タンク91aとの間で配管951に取り付けられた電磁弁955と、供給ポンプ954と回収タンク92aとの間で配管952に取り付けられた電磁弁956とを備える。したがって、電磁弁955を開いた状態で、回収ポンプ953によって供給タンク91aから電磁弁955を介してバッファタンク95へインクを回収し、電磁弁956が開いた状態で、供給ポンプ962によってバッファタンク95から電磁弁956を介して回収タンク92aにインクを供給できる。
【0053】
このように構成されたインク供給・回収・循環機構9では、回収ポンプ961および供給ポンプ962を動作させることで、供給タンク91aからバッファタンク95を介して回収タンク92aに到る第3経路Ccに沿ってインクが流れる。また、第3経路Ccに沿って回収タンク92aに流入したインクは、第1経路Caに沿って循環ポンプ90により供給タンク91aに戻される。こうして、供給タンク91aからバッファタンク95を介して回収タンク92aに到達した後に供給タンク91aに戻る循環経路(第3経路Cc+第1経路Ca)でインクが循環する。
【0054】
さらに、インク供給・回収・循環機構9は、バッファタンク95にインクを供給する機構を備える。この点について図5を用いつつ説明を行う。図5はバッファタンクにインクを供給する機構を模式的に示す図である。図5に示すように、インク供給・回収・循環機構9は、バッファタンク95に供給されるインクを貯留するバッファタンク96と、バッファタンク96に供給されるインクを貯留するメインタンク97とを備える。つまり、インクは、メインタンク97からバッファタンク96に供給され、さらにバッファタンク96からバッファタンク95に供給される。そして、バッファタンク95に貯留されたインクが吐出ヘッドHに供給されてノズルHnから吐出される。バッファタンク96およびメインタンク97はバッファタンク95より多量のインクを貯留できる容積を有し、バッファタンク96はメインタンク97より多量のインクを貯留できる容積を有する。例えば、バッファタンク95は60リットルの容積を有し、バッファタンク96は250リットルの容積を有し、メインタンク97は200リットルの容積を有する。ただし、これらの容積の大小関係はこの例に限られない。なお、以下では、バッファタンク95を「後段バッファタンク95」と、バッファタンク96を「前段バッファタンク96」と適宜称する。
【0055】
また、インク供給・回収・循環機構9はメインタンク97から前段バッファタンク96にインクを送液する前段送液ユニット81を備える。この前段送液ユニット81は、メインタンク97と前段バッファタンク96とを接続する前段送液配管811を有し、メインタンク97と前段バッファタンク96とは、前段送液配管811を介して連通する。また、前段送液ユニット81は、前段送液配管811に取り付けられた前段送液ポンプ812を有し、前段送液ポンプ812は、メインタンク97から前段バッファタンク96に向けて前段送液配管811内のインクを駆動する。さらに、前段送液ユニット81は、前段送液ポンプ812とメインタンク97との間で前段送液配管811に取り付けられた前段電磁弁813を有する。この前段電磁弁813は、開くことでメインタンク97と前段送液ポンプ812との間のインクの流通を可能にさせ、閉じることでメインタンク97と前段送液ポンプ812との間のインクの流通を遮断する。かかる前段送液ユニット81では、前段電磁弁813が開いた状態で、前段送液ポンプ812が動作して、メインタンク97から前段バッファタンク96へインクを送る。
【0056】
さらに、インク供給・回収・循環機構9は前段バッファタンク96から後段バッファタンク95にインクを送液する後段送液ユニット82を備える。この後段送液ユニット82は、前段バッファタンク96と後段バッファタンク95とを接続する後段送液配管821を有し、前段バッファタンク96と後段バッファタンク95とは、後段送液配管821を介して連通する。また、後段送液ユニット82は、後段送液配管821に取り付けられた後段送液ポンプ822を有し、後段送液ポンプ822は、前段バッファタンク96から後段バッファタンク95に向けて後段送液配管821内のインクを送液する。さらに、後段送液ユニット82は、後段送液ポンプ822と前段バッファタンク96との間で後段送液配管821に取り付けられた後段電磁弁823を有する。この後段電磁弁823は、開くことで前段バッファタンク96と後段送液ポンプ822との間のインクの流通を可能にさせ、閉じることで前段バッファタンク96と後段送液ポンプ822との間のインクの流通を遮断する。また、後段送液ユニット82は、後段送液ポンプ822と後段バッファタンク95との間で後段送液配管821に取り付けられた後段電磁弁824を有する。この後段電磁弁824は、開くことで後段送液ポンプ822と後段バッファタンク95との間のインクの流通を可能にさせ、閉じることで後段送液ポンプ822と後段バッファタンク95との間のインクの流通を遮断する。かかる後段送液ユニット82では、後段電磁弁823、824が開いた状態で、後段送液ポンプ822が動作して、前段バッファタンク96から後段バッファタンク95へインクを送る。
【0057】
また、インク供給・回収・循環機構9は、前段バッファタンク96から後段送液ユニット82に流出したインクを前段バッファタンク96に戻すインク戻しユニット83を備える。このインク戻しユニット83は、後段送液配管821において後段送液ポンプ822と後段電磁弁824との間に設けられた分岐部825と、前段バッファタンク96とを接続するインク戻し配管831を有し、後段送液配管821の分岐部825と前段バッファタンク96とは、インク戻し配管831を介して連通する。また、インク戻しユニット83は、分岐部825と前段バッファタンク96との間でインク戻し配管831に設けられたインク戻し電磁弁832を有する。このインク戻し電磁弁832は、開くことで分岐部825と前段バッファタンク96との間のインクの流通を可能にさせ、閉じることで分岐部825と前段バッファタンク96との間のインクの流通を遮断する。前段バッファタンク96から後段バッファタンク95にインクが供給される際には、インク戻しユニット83のインク戻し電磁弁832は閉じており、分岐部825から前段バッファタンク96へのインクの流通は遮断される。
【0058】
一方、吐出ヘッドHのノズルHnからのインクの吐出が停止されている印刷待機期間等では次のようにして、前段バッファタンク96から後段送液配管821に流出したインクを、インク戻しユニット83を介して前段バッファタンク96に戻すインク循環動作が後段送液ユニット82およびインク戻しユニット83によって実行される。つまり、後段電磁弁823は開き、後段電磁弁824は閉じ、インク戻し電磁弁832は開く。したがって、前段バッファタンク96から後段送液ポンプ822までの後段送液配管821に沿ったインクの流通は後段電磁弁823によって可能にされ、後段送液配管821の分岐部825から後段バッファタンク95までのインクの流通は後段電磁弁824によって遮断され、後段送液配管821の分岐部825から前段バッファタンク96までのインク戻し配管831に沿ったインクの流通はインク戻し電磁弁832によって可能にされる。この状態で、後段送液ポンプ822が動作することで、上記のインク循環動作が実行される。
【0059】
また、インク供給・回収・循環機構9は、後段バッファタンク95に貯留されるインクを攪拌する後段攪拌ユニット85と、前段バッファタンク96に貯留されるインクを撹拌する前段撹拌ユニット86と、メインタンク97に貯留されるインクを攪拌するメイン攪拌ユニット87とを有する。なお、攪拌ユニット85、86、87のうち、攪拌ユニット87は、白インクを供給するインク供給・回収・循環機構9にのみ具備され、カラーインクを供給するインク供給機構9には具備されない。
【0060】
後段攪拌ユニット85は、鉛直方向Zに平行に延設されたシャフト851と、シャフト851を回転させる攪拌モータ852と、シャフト851の下端に取り付けられた攪拌羽根853とを有する。攪拌モータ852は後段バッファタンク95の外部に配置される。一方、攪拌羽根853は後段バッファタンク95の内部に配置されて、後段バッファタンク95に貯留されたインクに漬かる。そして、攪拌モータ852がシャフト851を回転させると、鉛直方向Zに平行な回転軸を中心に攪拌羽根853が回転する。こうして回転する攪拌羽根853によって後段バッファタンク95内のインクが攪拌される。
【0061】
前段撹拌ユニット86は、鉛直方向Zに平行に延設されたシャフト861と、シャフト861を回転させる攪拌モータ862と、シャフト861の下端に取り付けられた攪拌羽根863とを有する。攪拌モータ862は前段バッファタンク96の外部に配置される。一方、攪拌羽根863は前段バッファタンク96の内部に配置されて、前段バッファタンク96に貯留されたインクに漬かる。そして、攪拌モータ862がシャフト861を回転させると、鉛直方向Zに平行な回転軸を中心に攪拌羽根863が回転する。こうして回転する攪拌羽根863によって前段バッファタンク96内のインクが攪拌される。
【0062】
メイン攪拌ユニット87は、鉛直方向Zに平行に延設されたシャフト871と、シャフト871を回転させる攪拌モータ872と、シャフト871の下端に取り付けられた攪拌羽根873とを有する。攪拌モータ872はメインタンク97の外部に配置される。一方、攪拌羽根873はメインタンク97の内部に配置されて、メインタンク97に貯留されたインクに漬かる。そして、攪拌モータ872がシャフト871を回転させると、鉛直方向Zに平行な回転軸を中心に攪拌羽根873が回転する。こうして回転する攪拌羽根873によってメインタンク97内のインクが攪拌される。
【0063】
なお、攪拌羽根873は、遠心力によって開く遠心力型の攪拌羽根である。これに対して、メインタンク97の上面には、攪拌羽根873を挿入可能な挿入口971が設けられている。つまり、閉じた状態の攪拌羽根873がメインタンク97の挿入口971から挿入されることで、攪拌羽根873をメインタンク97の内部に配置することができる。そして、攪拌モータ872が攪拌羽根873を回転させると、攪拌羽根873が遠心力によって開いてインクを攪拌する。
【0064】
このような攪拌羽根853、863、873によってインクを攪拌することで、後段バッファタンク95、前段バッファタンク96およびメインタンク97に貯留されるインクの物性を均一にすることができる。特に白インクは、高い隠蔽率を担保する等の目的から、多量の酸化チタンを顔料として含む。そのため、白インクはインク粘度が低く、また溶媒比重に対して顔料比重が大きいため、顔料が沈降しやすい。このような顔料の沈降が生じると、隠蔽率が不足したり、吐出ヘッドHからの白インクの吐出性能が悪化したりといった不具合が生じうる。これに対して、攪拌羽根853、863、873により白インクを攪拌することで、顔料の沈降を抑制することができる。
【0065】
さらに、後段バッファタンク95に対しては、後段バッファタンク95内に貯留されるインクの液位を検出する後段液位センサS95が設けられ、前段バッファタンク96に対して、前段バッファタンク96内に貯留されるインクの液位を検出する前段液位センサS96が設けられ、メインタンク97に対しては、メインタンク97内に貯留されるインクの液位を検出するメイン液位センサS97が設けられている。
【0066】
図6は印刷装置が備える電気的構成を示すブロック図である。図6に示すように、印刷装置3は、装置全体を統括積に制御する制御部5を備える。この制御部5は、例えばCPU(Central Processing Unit)等で構成されたプロセッサーである。また、印刷装置3は、キーボードやマウス等の入力機器とディスプレイ等の出力機器とを有するUI(User Interface)301を備え、制御部5はUI39を制御するUI制御部501を有する。UI制御部501は、UI39の入力機器に対する作業者の入力操作に応じた制御を実行する一方、UI39の出力機器が作業者に情報を示すようにUI39を制御する。なお、例えばタッチパネルディスプレイ等によってUI39の入力機器と出力機器とを一体的に構成してもよい。
【0067】
制御部5は、メイン攪拌ユニット87の攪拌モータ872を制御する撹拌モータ制御部502を有する。攪拌モータ872が回転するように撹拌モータ制御部502が攪拌モータ872を制御することで、攪拌羽根873が回転して、メインタンク97内のインクが撹拌される。また、制御部5は、メイン液位センサS97の検出結果を取得するメインセンサ出力取得部503を有する。
【0068】
制御部5は、前段送液ユニット81の前段電磁弁813の開閉を制御する前段電磁弁制御部504を有し、前段電磁弁813は、前段電磁弁制御部504の制御に従って開閉する。また、制御部5は、前段送液ユニット81の前段送液ポンプ812を制御する前段ポンプ制御部505を有し、前段送液ポンプ812は、前段ポンプ制御部505の制御に従ってインクの送液を実行あるいは停止する。
【0069】
制御部5は、前段撹拌ユニット86の攪拌モータ862を制御する撹拌モータ制御部506を有する。攪拌モータ862が回転するように撹拌モータ制御部506が攪拌モータ862を制御することで、攪拌羽根863が回転して、前段バッファタンク96内のインクが撹拌される。また、制御部5は、前段液位センサS96の検出結果を取得する前段センサ出力取得部507を有する。
【0070】
制御部5は、後段送液ユニット82の後段電磁弁823の開閉を制御する後段電磁弁制御部508を有し、後段電磁弁823は、後段電磁弁制御部508の制御に従って開閉する。また、制御部5は、後段送液ユニット82の後段送液ポンプ822を制御する後段ポンプ制御部509を有し、後段送液ポンプ822は、後段ポンプ制御部509の制御に従ってインクの送液を実行あるいは停止する。
【0071】
制御部5は、後段送液ユニット82の後段電磁弁824の開閉を制御する後段電磁弁制御部510を有し、後段電磁弁824は、後段電磁弁制御部510の制御に従って開閉する。また、制御部5は、インク戻しユニット83のインク戻し電磁弁832の開閉を制御する戻し電磁弁制御部511を有し、インク戻し電磁弁832は、戻し電磁弁制御部511の制御に従って開閉する。
【0072】
また、制御部5は、後段攪拌ユニット85の攪拌モータ852を制御する撹拌モータ制御部512を有する。攪拌モータ852が回転するように、撹拌モータ制御部512が攪拌モータ852を制御することで、攪拌羽根853が回転して、後段バッファタンク95内のインクが撹拌される。また、制御部5は、後段液位センサS95の検出結果を取得する後段センサ出力取得部513を有する。
【0073】
制御部5は、回収ポンプ953を制御する回収ポンプ制御部514を有し、回収ポンプ953は、回収ポンプ制御部514の制御に従ってインクの送液を実行あるいは停止する。また、制御部5は、供給ポンプ954を制御する供給ポンプ制御部515を有し、供給ポンプ954は、供給ポンプ制御部515の制御に従ってインクの送液を実行あるいは停止する。
【0074】
さらに、制御部5は、電磁弁955の開閉を制御する電磁弁制御部516を有し、電磁弁955は、電磁弁制御部516の制御に従って開閉する。また、制御部5は、電磁弁956の開閉を制御する電磁弁制御部517を有し、電磁弁956は、電磁弁制御部517の制御に従って開閉する。
【0075】
上記の構成を具備する印刷装置3では、各液位センサS95、S96、S97が検出する液位に基づき、インクの送液が制御される。続いては、この送液制御について説明する。図7Aは送液制御を実行するために後段バッファタンクバッファタンクに対して設けられた後段液位センサの検出位置を模式的に示す図であり、図7Bは送液制御を実行するために前段バッファタンクに対して設けられた前段液位センサの検出位置を模式的に示す図であり、図8は送液制御を実行するためにメインタンクに対して設けられたメイン液位センサの検出位置を模式的に示す図である。
【0076】
後段バッファタンク95に貯留されるインクの液位を検出する後段液位センサS95は、図7Aに示すように、ローレベルLllと、ローレベルLllより高いハイレベルLlhと、ハイレベルLlhより高いリミットレベルLltにおける後段バッファタンク95内のインクの有無を検出する。かかる後段液位センサS95は、各レベルLll、Llh、Lltに対応して配置された液体検出センサを組み合わせることで構成できる。液体検出センサとしては、静電容量センサあるいはフロートセンサ等の各種のセンサを使用できる。また、使用するセンサの種類に応じて、後段バッファタンク95の内側あるいは外側にセンサを配置できる。
【0077】
かかる構成では、後段液位センサS95がローレベルLllにおいてインクを検出しない場合には、後段バッファタンク95内のインクの液位はローレベルLll未満である。後段液位センサS95がローレベルLllでインクを検出する一方、ハイレベルLlhでインクを検出しない場合には、後段バッファタンク95内のインクの液位はローレベルLll以上であってハイレベルLlh未満である。後段液位センサS95がハイレベルLlhでインクを検出する一方、リミットレベルLltでインクを検出しない場合には、後段バッファタンク95内のインクの液位はハイレベルLlh以上であってリミットレベルLlt未満である。後段液位センサS95がリミットレベルLltでインクを検出する場合には、後段バッファタンク95内のインクの液位はリミットレベルLlt以上である。
【0078】
制御部5において、後段センサ出力取得部513が取得した後段液位センサS95の検出結果に基づき、後段ポンプ制御部509が後段送液ポンプ822によるインクの送液を制御することで、ローレベルLllからハイレベルLlhまでの通常液位範囲R95に後段バッファタンク95内のインクの液位が調整される。これに対して、攪拌羽根853は、通常液位範囲R95より下側(換言すれば、ローレベルLllより下側)に配置される。したがって、攪拌羽根853は、通常液位範囲R95に調整される液位の下側に位置して、後段バッファタンク95内のインクに漬かる。
【0079】
また、後段バッファタンク95内のインクを吐出ヘッドHに送る配管952の下端は、後段バッファタンク95の底から若干高い位置に配置され、ローレベルLllより下側に位置する。したがって、配管952は、通常液位範囲R95に液位が調整された後段バッファタンク95内のインクを、当該配管952の下端の開口から吸引して、吐出ヘッドHに送ることができる。
【0080】
前段バッファタンク96に貯留されるインクの液位を検出する前段液位センサS96は、図7Bに示すように、ローレベルLflと、ローレベルLflより高いハイレベルLfhと、ハイレベルLfhより高いリミットレベルLftにおける前段バッファタンク96内のインクの有無を検出する。かかる前段液位センサS96は、各レベルLfl、Lfh、Lftに対応して配置された液体検出センサを組み合わせることで構成できる。液体検出センサとしては、静電容量センサあるいはフロートセンサ等の各種のセンサを使用できる。また、使用するセンサの種類に応じて、前段バッファタンク96の内側あるいは外側にセンサを配置できる。
【0081】
かかる構成では、前段液位センサS96がローレベルLflにおいてインクを検出しない場合には、前段バッファタンク96内のインクの液位はローレベルLfl未満である。前段液位センサS96がローレベルLflでインクを検出する一方、ハイレベルLfhでインクを検出しない場合には、前段バッファタンク96内のインクの液位はローレベルLfl以上であってハイレベルLfh未満である。前段液位センサS96がハイレベルLfhでインクを検出する一方、リミットレベルLftでインクを検出しない場合には、前段バッファタンク96内のインクの液位はハイレベルLfh以上であってリミットレベルLft未満である。前段液位センサS96がリミットレベルLftでインクを検出する場合には、前段バッファタンク96内のインクの液位はリミットレベルLft以上である。
【0082】
制御部5において、前段センサ出力取得部507が取得した前段液位センサS96の検出結果に基づき、前段ポンプ制御部505が前段送液ポンプ812によるインクの送液を制御することで、ローレベルLflからハイレベルLfhまでの通常液位範囲R96に前段バッファタンク96内のインクの液位が調整される。これに対して、攪拌羽根863は、通常液位範囲R96より下側(換言すれば、ローレベルLflより下側)に配置される。したがって、攪拌羽根863は、通常液位範囲R96に調整される液位の下側に位置して、前段バッファタンク96内のインクに漬かる。
【0083】
また、前段バッファタンク96内のインクを後段バッファタンク95に送る後段送液配管821の下端は、前段バッファタンク96の底から若干高い位置に配置され、ローレベルLflより下側に位置する。したがって、後段送液配管821は、通常液位範囲R96に液位が調整された前段バッファタンク96内のインクを、当該後段送液配管821の下端の開口から吸引して、後段バッファタンク95に送ることができる。
【0084】
メインタンク97に貯留されるインクの液位を検出するメイン液位センサS97は、図8に示すように、ローレベルLmlにおけるメインタンク97内のインクの有無を検出する。メイン液位センサS97は、ローレベルLmlに対応して配置された液体検出センサにより構成できる。液体検出センサとしては、静電容量センサあるいはフロートセンサ等の各種のセンサを使用できる。また、使用するセンサの種類に応じて、メインタンク97の内側あるいは外側にセンサを配置できる。なお、メインタンク97に対するメイン液位センサS97は、白インクを供給するインク供給・回収・循環機構9にのみ具備され、カラーインクを供給するインク供給・回収・循環機構9には具備されない。
【0085】
図8に示すように、ローレベルLmlは、メインタンク97内に配置された攪拌羽根873の高さに対応して設けられている。この攪拌羽根873は、シャフト871の下端に設けられた回動軸871aを中心に回動する複数の回動羽873aを有する。図8の「静止状態」の欄に示すように、攪拌羽根873が静止した状態では、回動羽873aは重力によって回動軸871aから垂れ下がり、攪拌羽根873が閉じる。一方、図8の「回転状態」の欄に示すように、攪拌羽根873が回転した状態では、回動羽873aは遠心力を受けて回動軸871aを中心に上側へ回動して、攪拌羽根873が開く。そして、ローレベルLmlは、回転することで開いた攪拌羽根873の下端と同じ高さに設けられている。
【0086】
かかる構成では、メイン液位センサS97がインクを検出しない場合には、メインタンク97内のインクの液位はローレベルLml未満である。一方、メイン液位センサS97がインクを検出する場合には、メインタンク97内のインクの液位はローレベルLml以上である。
【0087】
また、メインタンク97内のインクを前段バッファタンク96に送る前段送液配管811の下端は、メインタンク97の底から若干高い位置に配置され、ローレベルLmlより下側に位置する。したがって、前段送液配管811は、ローレベルLml未満まで液位が下がったメインタンク97内のインクを、当該前段送液配管811の下端の開口から吸引して、前段バッファタンク96に送ることができる。
【0088】
図9は印刷装置で実行されるメインタンクからのインク送液制御の一例を示すフローチャートであり、図10Aおよび図10B図9のインク送液制御において実行される動作を模式的に示す図である。図9のインク送液制御は、メインタンク97から前段バッファタンク96への白インクの送液を制御するものであり、制御部5によって実行される。なお、図9のインク送液制御は、カラーインクの送液に対しては適用されない。
【0089】
なお、図9のインク送液制御の開始時点において、攪拌羽根863は回転して前段バッファタンク96内のインクを攪拌し、攪拌羽根873は回転してメインタンク97内のインクを攪拌する。前段電磁弁813は閉じていてメインタンク97から前段送液ポンプ812への前段電磁弁813を介したインクの送液は遮断されている。また、前段送液ポンプ812は停止している。
【0090】
ステップS101では、前段バッファタンク96に設けられた前段液位センサS96の検出結果に基づき、前段バッファタンク96内のインクの液位がローレベルLfl未満であるか否かが前段センサ出力取得部507によって確認される。図10Aの「S101」の欄に示すように、前段バッファタンク96内のインクの液位がローレベルLfl未満である場合(ステップS101で「YES」の場合)には、ステップS102に進む。
【0091】
ステップS102では、メインタンク97に設けられたメイン液位センサS97の検出結果に基づき、メインタンク97内のインクの液位がローレベルLml未満であるか否かがメインセンサ出力取得部503によって確認される。図10Aの「S102」の欄に示すように、メインタンク97内のインクの液位がローレベルLml以上である場合(ステップS102で「NO」の場合)には、ステップS103~S105の送液動作(インク補充送液動作)が実行されて、図10Aの「S103」および「S105」の欄に示すように前段バッファタンク96におけるインクの液位が上昇する。
【0092】
ステップS103では、前段電磁弁813が開くように前段電磁弁制御部504が前段電磁弁813を制御し、前段送液ポンプ812がインクの送液を開始するように前段ポンプ制御部505が前段送液ポンプ812を制御する。これによって、前段送液ポンプ812がメインタンク97から前段バッファタンク96へのインクの送液を開始する。このインク送液に伴って、メインタンク97内のインクの液位が低下する一方、前段バッファタンク96内のインクの液位が上昇する。そして、前段バッファタンク96内のインクの液位がローレベルLflを超えてハイレベルLfhに到達したことが、前段液位センサS96の検出結果に基づき前段センサ出力取得部507によって確認されると(ステップS104で「YES」)、前段送液ポンプ812がインクの送液を停止するように前段ポンプ制御部505が前段送液ポンプ812を制御し、前段電磁弁813が閉じるように前段電磁弁制御部504が前段電磁弁813を制御する(ステップS105)。これによって、前段送液ポンプ812によるメインタンク97から前段バッファタンク96へのインクの送液が停止される。そして、ステップS101に戻る。
【0093】
一方、図10Bの「S102」の欄に示すように、メインタンク97内のインクの液位がローレベルLml未満である場合(ステップS102で「YES」の場合)には、ステップS106~S108の送液動作(使い切りインク送液動作)が実行されて、図10Bの「S106」および「S107」の欄に示すようにバッファタンク95におけるインクの液位が上昇する。
【0094】
ステップS106では、前段電磁弁813が開くように前段電磁弁制御部504が前段電磁弁813を制御し、前段送液ポンプ812がインクの送液を開始するように前段ポンプ制御部505が前段送液ポンプ812を制御する。これによって、前段送液ポンプ812がメインタンク97から前段バッファタンク96へのインクの送液を開始する。このインク送液に伴って、メインタンク97内のインクの液位が低下する一方、バッファタンク95内のインクの液位が上昇する。そして、前段バッファタンク96内のインクの液位がローレベルLflおよびハイレベルLfhを超えてリミットレベルLftに到達したことが、前段液位センサS96の検出結果に基づき前段センサ出力取得部507によって確認されると(ステップS107で「YES」)、前段送液ポンプ812がインクの送液を停止するように前段ポンプ制御部505が前段送液ポンプ812を制御し、前段電磁弁813が閉じるように前段電磁弁制御部504が前段電磁弁813を制御する(ステップS108)。これによって、前段送液ポンプ812によるメインタンク97から前段バッファタンク96へのインクの送液が停止される。
【0095】
このステップS106~S108の送液動作(使い切りインク送液動作)は、ステップS103~S105の送液動作(インク補充送液動作)よりも多量のインクをメインタンク97から前段バッファタンク96へ送る。かかるステップS106~S108の送液動作の実行によって、メインタンク97内の底から所定範囲の僅かなインク(例えば、メインタンク97の容積の1~5%程度のインク)を残して、他のインクはメインタンク97から前段バッファタンク96に送られる。これによって、メインタンク97のインクの残量は実質的にゼロとなる。そのため、メインタンク97のインクが切れたことを示す残量警告を、UI39が作業者に報知するように、UI制御部501がUI39を制御する(ステップS109)。
【0096】
図11は印刷装置で実行される前段バッファタンクからのインク送液制御の一例を示すフローチャートであり、図12図11のインク送液制御において実行される動作を模式的に示す図である。図11のインク送液制御は、前段バッファタンク96から後段バッファタンク95へのインクの送液を制御するものであり、制御部5によって実行される。
【0097】
なお、図9のインク送液制御の開始時点において、攪拌羽根853は回転して後段バッファタンク95内のインクを攪拌し、攪拌羽根863は回転して前段バッファタンク96内のインクを攪拌する。後段電磁弁824は開いていて分岐部825から後段バッファタンク95への後段電磁弁824を介したインクの送液は可能とされ、インク戻し電磁弁832は閉じていて分岐部825から前段バッファタンク96へのインク戻し電磁弁832を介したインクの送液は遮断されている。さらに、後段電磁弁823は閉じていて前段バッファタンク96から後段バッファタンク95への後段電磁弁823を介したインクの送液は遮断されている。また、後段送液ポンプ822は停止している。
【0098】
ステップS201では、後段バッファタンク95に設けられた後段液位センサS95の検出結果に基づき、後段バッファタンク95内のインクの液位がローレベルLll未満であるか否かが後段センサ出力取得部513によって確認される。図12の「S201」の欄に示すように、後段バッファタンク95内のインクの液位がローレベルLfl未満である場合(ステップS201で「YES」の場合)には、ステップS202~S204の送液動作(インク補充送液動作)が実行されて、図12の「S204」の欄に示すように後段バッファタンク95におけるインクの液位が上昇する。
【0099】
ステップS202では、後段電磁弁823が開くように後段電磁弁制御部508が後段電磁弁823を制御し、後段送液ポンプ822がインクの送液を開始するように後段ポンプ制御部509が後段送液ポンプ822を制御する。これによって、後段送液ポンプ822が前段バッファタンク96から後段バッファタンク95へのインクの送液を開始する。このインク送液に伴って、前段バッファタンク96内のインクの液位が低下する一方、後段バッファタンク95内のインクの液位が上昇する。そして、後段バッファタンク95内のインクのローレベルLllを超えてハイレベルLlhに到達したことが、後段液位センサS95の検出結果に基づき後段センサ出力取得部513によって確認されると(ステップS203で「YES」)、後段送液ポンプ822がインクの送液を停止するように後段ポンプ制御部509が後段送液ポンプ822を制御し、後段電磁弁823が閉じるように後段電磁弁制御部508が後段電磁弁823を制御する(ステップS204)。これによって、後段送液ポンプ822による前段バッファタンク96から後段バッファタンク95へのインクの送液が停止される。そして、ステップS201に戻る。
【0100】
図13は印刷装置で実行される送液モード切替制御の一例を示すフローチャートである。図13の送液モード切替制御は、前段バッファタンク96からインクを送液する送液モードを切り替えるものであり、制御部5によって実行される。
【0101】
ステップS301では、図11に示したインク送液制御によって前段バッファタンク96から後段バッファタンク95にインクが送液される。ステップS302では、制御部5は、吐出ヘッドHのノズルHnから吐出したインクによって印刷媒体Mに画像を印刷する印刷動作が停止されたか否かを判断する。印刷動作が停止しない場合(ステップS302で「YES」の場合)には、図11に示したインク送液制御が継続される(ステップS301)。
【0102】
一方、印刷動作が停止する場合(ステップS302で「YES」の場合)には、ステップS303~S306の送液動作(インク循環動作)が実行される。ステップS303では、インク戻し電磁弁832が開くように戻し電磁弁制御部511がインク戻し電磁弁832を制御する。これによって、分岐部825から前段バッファタンク96へのインク戻し電磁弁832を介したインクの送液が可能となる。また、ステップS304では、後段電磁弁824が閉じるように、後段電磁弁制御部510が後段電磁弁824を制御する。これによって、分岐部825から後段バッファタンク95への後段電磁弁824を介したインクの送液が遮断される。
【0103】
ステップS305では、後段電磁弁823が開くように後段電磁弁制御部508が後段電磁弁823を制御し、ステップS306では、後段送液ポンプ822がインクの送液を開始するように後段ポンプ制御部509が後段送液ポンプ822を制御する。これによって、後段送液ポンプ822が前段バッファタンク96から分岐部825へのインクの送液を開始する。また、上述のように、後段電磁弁824が閉じる一方、インク戻し電磁弁832が開いていることから、分岐部825に到達したインクは、インク戻し配管831に流入して、前段バッファタンク96に戻される。
【0104】
以上に説明する実施形態では、メインタンク97、前段バッファタンク96および後段バッファタンク95が設けられ、メインタンク97から前段バッファタンク96へインクが供給され、さらに前段バッファタンク96から後段バッファタンク95へインクが供給される。そして、後段バッファタンク95に貯留されるインクが吐出ヘッドHに供給されて、吐出ヘッドHのノズルHnから吐出される。また、メインタンク97内には攪拌羽根873(メインタンク攪拌部材)が配置され、攪拌羽根873が回転することでメインタンク97に貯留されるインクが攪拌される。そして、この攪拌羽根873に対応して設けられたローレベルLml(所定位置)と、メインタンク97内のインクの液位との位置関係がメイン液位センサS97によって検出される。また、メインタンク97のインクの液位がローレベルLmlより低いことが検出されると(ステップS102で「YES」)、メインタンク97から前段バッファタンク96へインクが送られる(ステップS106~S108、第1メイン送液動作)。これによって、メインタンク97内において多量のインクが攪拌できないまま残留するのを抑制することが可能となっている。
【0105】
また、前段バッファタンク96内に貯留されるインクの液位と、前段バッファタンク96に対して設けられた通常液位範囲R96(前段通常液位範囲)との位置関係を検出する前段液位センサS96(前段バッファタンク液位検出部)が具備されている。これに対して、制御部5は、前段液位センサS96の検出結果を取得する前段センサ出力取得部507(前段バッファタンク液位取得部)を有する。そして、前段センサ出力取得部507が、前段バッファタンク96内のインクの液位が通常液位範囲R96の下端(ローレベルLfl)より低いことを示す検出結果を取得した場合(ステップS101で「YES」)に、メインセンサ出力取得部503(メインタンク液位取得部)が取得する検出結果がメインタンク97内のインクの液位がローレベルLmlより低いことを示すのであれば(ステップS102で「YES」)、前段ポンプ制御部505(メイン送液ポンプ制御部)は、ステップS106~S108の送液動作(第1メイン送液動作)を前段送液ポンプ812(メイン送液ポンプ)が実行するように、前段送液ポンプ812を制御する。かかる構成では、前段バッファタンク96内のインクの液位が通常液位範囲R96の下端(ローレベルLfl)未満に減少した場合には、ステップS106~S108の送液動作によって前段バッファタンク96にインクを補充できる。
【0106】
また、前段センサ出力取得部507が、前段バッファタンク96内のインクの液位が通常液位範囲R96の下端(ローレベルLfl)より低いことを示す検出結果を取得した場合(ステップS101で「YES」の場合」に、メインセンサ出力取得部503が取得する検出結果がメインタンク97内のインクの液位がローレベルLml以上であることを示すのであれば、前段ポンプ制御部505は、ステップS106~S108の送液動作と異なる態様でメインタンク97から前段バッファタンク96にインクを送液するように前段送液ポンプ812を制御する(ステップS103~S105)。かかる構成では、前段バッファタンク96内のインクの液位が通常液位範囲R96のローレベルLfl未満に減少した場合には、ステップS103~S105の送液動作によって前段バッファタンク96にインクを補充できる。
【0107】
また、ステップS103~S105の送液動作では、前段バッファタンク96内のインクの液位が通常液位範囲R96の上端(ハイレベルLfh)に到達するまで、前段送液ポンプ812は、メインタンク97から前段バッファタンク96へインクを送る。かかる構成では、ステップS103~S105の送液動作を実行することで、通常液位範囲R96の下端(ローレベルLfl)未満にまで減少した前段バッファタンク96内のインクの液位を通常液位範囲R96の上端(ハイレベルLfh)まで上昇させることができる。
【0108】
また、ステップS106~S108の送液動作では、前段バッファタンク96内のインクの液位が通常液位範囲R96の上端(ハイレベルLfh)より高い位置に設けられたリミットレベルLft(前段上限位置)に到達するまで、前段送液ポンプ812は、メインタンク97から前段バッファタンク96へインクを送る。かかる構成では、メインタンク97内において攪拌できなくなったインクを、メインタンク97から前段バッファタンク96へ多量に送ることができる。
【0109】
また、前段バッファタンク96内に配置された攪拌羽根863(前段バッファタンク攪拌部材)を有し、攪拌羽根863を回転させることで前段バッファタンク96に貯留されるインクを攪拌する前段撹拌ユニット86(前段バッファタンク攪拌部)が具備されている。かかる構成では、メインタンク97内において攪拌できない状態になったインクを前段バッファタンク96に送って、攪拌羽根863により攪拌することができる。
【0110】
また、攪拌羽根863は、通常液位範囲R96より下側に配置される。かかる構成では、通常液位範囲R96より下側に配置された攪拌羽根863によって、前段バッファタンク96内のインクが攪拌される。よって、メインタンク97内において攪拌できない状態になったインクを前段撹拌ユニット86に送って、攪拌羽根863により確実に攪拌することができる。
【0111】
また、後段バッファタンク95内に貯留されるインクの液位と、後段バッファタンク95に対して設けられた通常液位範囲R95(後段通常液位範囲)との位置関係を検出する後段液位センサS95(後段バッファタンク液位検出部)が具備されている。これに対して、制御部5は、後段液位センサS95の検出結果を取得する後段センサ出力取得部513(後段バッファタンク液位取得部)を有する。さらに、制御部5は、後段送液ポンプ822を制御する後段ポンプ制御部509を有する。この後段ポンプ制御部509は、後段センサ出力取得部513が後段バッファタンク95内のインクの液位が通常液位範囲R95の下端(ローレベルLll)より低いことを示す検出結果を取得したのに応じて(ステップS201で「YES」、前段バッファタンク96から後段バッファタンク95にインクを送液するステップS202~S204の送液動作(バッファ送液動作)を後段送液ポンプ822(バッファ送液ポンプ)が実行するように、後段送液ポンプ822を制御する。かかる構成では、後段バッファタンク95内のインクの液位が通常液位範囲R95の下端(ローレベルLll)未満に減少した場合には、ステップS202~S204の送液動作によって後段バッファタンク95にインクを補充できる。
【0112】
また、ステップS202~S204の送液動作では、後段バッファタンク95内のインクの液位が通常液位範囲R95の上端(ハイレベルLlh)に到達するまで、後段送液ポンプ822が前段バッファタンク96から後段バッファタンク95へインクを送る。かかる構成では、ステップS202~S204の送液動作を実行することで、通常液位範囲R95の下端(ローレベルLll)未満にまで減少した後段バッファタンク95内のインクの液位を通常液位範囲R95の上端(ハイレベルLlh)まで上昇させることができる。
【0113】
また、後段バッファタンク95内に配置された攪拌羽根853(後段バッファタンク攪拌部材)を有し、攪拌羽根853を回転させることで後段バッファタンク95に貯留されるインクを攪拌する後段攪拌ユニット85(後段バッファタンク攪拌部)が具備されている。かかる構成では、後段バッファタンク95に貯留されるインクを、攪拌羽根853により攪拌することができる。
【0114】
また、攪拌羽根853は、通常液位範囲R95より下側に配置される。かかる構成では、後段バッファタンク95に貯留されるインクを、通常液位範囲R95より下側の攪拌羽根853により攪拌することができる。
【0115】
また、後段送液ポンプ822(バッファ送液ポンプ)と後段バッファタンク95との間において後段送液配管821(バッファ送液配管)に設けられた分岐部825と前段バッファタンク96とを接続して連通させるインク戻し配管831(バッファ戻し配管)が具備されている。また、分岐部825と後段バッファタンク95との間において後段送液配管821に設けられた後段電磁弁824(送り制限電磁弁)と、分岐部825と前段バッファタンク96との間においてインク戻し配管831に設けられたインク戻し電磁弁832(戻し制限電磁弁)とが具備されている。そして、制御部5は、後段電磁弁824の開閉を制御する後段電磁弁制御部510(送り制限電磁弁制御部)と、インク戻し電磁弁832の開閉を制御する戻し電磁弁制御部511(戻し制限電磁弁制御部)とを有する。
【0116】
また、ステップS202~S204の送液動作は、次のようにして実行される。つまり、後段電磁弁824が開くように後段電磁弁制御部510が後段電磁弁824を制御することで後段電磁弁824を介して分岐部825から後段バッファタンク95へインクが送られるのを可能とする。また、インク戻し電磁弁832が閉じるように戻し電磁弁制御部511がインク戻し電磁弁832を制御することでインク戻し電磁弁832を介して分岐部825から後段バッファタンク95へインクが戻されるのを制限する。この状態で、後段送液ポンプ822が送液を実行するように後段ポンプ制御部509が後段送液ポンプ822を制御することで、ステップS202~S204の送液動作が実行される(ステップS301)。
【0117】
また、ステップS303~S306のインク循環動作は、次のようにして実行される。つまり、後段電磁弁824が閉じるように後段電磁弁制御部510が後段電磁弁824を制御することで後段電磁弁824を介して分岐部825から後段バッファタンク95へインクが送られるのを制限する。また、インク戻し電磁弁832が開くように戻し電磁弁制御部511がインク戻し電磁弁832を制御することでインク戻し電磁弁832を介して分岐部825から前段バッファタンク96へインクが戻されるのを可能とする。この状態で、後段送液ポンプ822が送液を実行するように後段ポンプ制御部509が後段送液ポンプ822を制御することで、前段バッファタンク96から後段送液配管821の分岐部825に到達したインクがインク戻し配管831を介して前段バッファタンク96に戻るバッファ戻し送液が実行される。かかる構成では、例えば吐出ヘッドHがノズルHnからのインクの吐出を停止している印刷待機期間等において、バッファ戻し送液を実行することで、インクを循環させて、インクを攪拌することができる。
【0118】
また、攪拌羽根873(メインタンク攪拌部材)は、回転に伴って生じる遠心力によって広がる遠心力型の攪拌羽根であり、ローレベルLml(所定位置)は、遠心力によって広がった攪拌羽根873の位置に対応して設けられている。このような攪拌羽根873を用いて攪拌を行う場合、静止する攪拌羽根873の下端より、回転する攪拌羽根873の下端が上昇する。したがって、メインタンク97において、回転する攪拌羽根873の下端より下側の底部に溜まるインクを攪拌することができない。これに対して、遠心力によって広がった攪拌羽根873の位置に対応して上記のローレベルLmlを設けて、ステップS106~S108の送液動作(第1メイン送液動作)を実行するように構成することで、メインタンク97の底部において多量のインクが攪拌できないまま残留するのを抑制することができる。
【0119】
また、白インクを供給するインク供給機構9に対して上記の送液制御が適用されており、好適である。これによって、メインタンク97内において多量の白インクが攪拌できないまま残留して、白インクの顔料が沈降するのを抑制することが可能となる。
【0120】
以上に説明した実施形態では、印刷装置3が本発明の「印刷装置」の一例に相当し、制御部5が本発明の「制御部」の一例に相当し、メインセンサ出力取得部503が本発明の「メインタンク液位取得部」の一例に相当し、前段ポンプ制御部505が本発明の「メイン送液ポンプ制御部」の一例に相当し、前段センサ出力取得部507が本発明の「前段バッファタンク液位取得部」の一例に相当し、後段ポンプ制御部509が本発明の「バッファ送液ポンプ制御部」の一例に相当し、後段電磁弁制御部510が本発明の「送り制限電磁弁制御部」の一例に相当し、戻し電磁弁制御部511が本発明の「戻し制限電磁弁制御部」の一例に相当し、後段センサ出力取得部513が本発明の「後段バッファタンク液位取得部」の一例に相当し、前段送液配管811が本発明の「メイン送液配管」の一例に相当し、前段送液ポンプ812が本発明の「メイン送液ポンプ」の一例に相当し、後段送液配管821が本発明の「バッファ送液配管」の一例に相当し、後段送液ポンプ822が本発明の「バッファ送液ポンプ」の一例に相当し、後段電磁弁824が本発明の「送り制限電磁弁」の一例に相当し、分岐部825が本発明の「分岐部」の一例に相当し、インク戻し配管831が本発明の「バッファ戻し配管」の一例に相当し、インク戻し電磁弁832が本発明の「戻し制限電磁弁」の一例に相当し、後段攪拌ユニット85が本発明の「後段バッファタンク攪拌部」の一例に相当し、攪拌羽根853が本発明の「後段バッファタンク攪拌部材」の一例に相当し、前段撹拌ユニット86が本発明の「前段バッファタンク攪拌部」の一例に相当し、攪拌羽根863が本発明の「前段バッファタンク攪拌部材」の一例に相当し、メイン攪拌ユニット87が本発明の「メインタンク攪拌部」の一例に相当し、攪拌羽根873が本発明の「メインタンク攪拌部材」の一例に相当し、後段バッファタンク95が本発明の「後段バッファタンク」の一例に相当し、前段バッファタンク96が本発明の「前段バッファタンク」の一例に相当し、メインタンク97が本発明の「メインタンク」の一例に相当し、ローレベルLmlが本発明の「所定位置」の一例に相当し、リミットレベルLftが本発明の「前段上限位置」の一例に相当し、通常液位範囲R95が本発明の「後段通常液位範囲」の一例に相当し、通常液位範囲R96が本発明の「前段通常液位範囲」の一例に相当し、後段液位センサS95が本発明の「後段バッファタンク液位検出部」の一例に相当し、前段液位センサS96が本発明の「前段バッファタンク液位検出部」の一例に相当し、メイン液位センサS97が本発明の「メインタンク液位検出部」の一例に相当し、吐出ヘッドHが本発明の「吐出ヘッド」の一例に相当し、ノズルHnが本発明の「ノズル」の一例に相当し、ステップS103~S105が本発明の「第2メイン送液動作」の一例に相当し、ステップS106~S108が本発明の「第1メイン送液動作」の一例に相当し、ステップS202~S204が本発明の「バッファ送液動作」の一例に相当する。
【0121】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、攪拌羽根873に対応して設けられるローレベルLmlの高さを適宜変更してもよい。図14Aおよび図14Bは攪拌羽根に対応して設けられるローレベルの変更例を模式的に示す図である。
【0122】
図14Aの例では、遠心力によって広がった攪拌羽根873の上端と同じ高さにローレベルLmlが設けられており、メインタンク97内のインクを検出するメイン液位センサS97は、このローレベルLmlにおけるインクの有無を検出する。
【0123】
図14Bの例では、遠心力によって広がった攪拌羽根873より高い位置にローレベルLmlが設けられており、メインタンク97内のインクを検出するメイン液位センサS97は、このローレベルLmlにおけるインクの有無を検出する。なお、図14Bの例では、例えば、メインタンク97のインクの液位が、遠心力によって広がった攪拌羽根873より上側でローレベルLmより下側に位置する状態から、ステップS106~S108の送液動作が実行された場合、メインタンク97のインクの液位は、遠心力によって広がった攪拌羽根873より下側まで低下する。こうして、多量のインクがメインタンク97からバッファタンク95に送られる。
【0124】
また、ステップS106~S108の送液動作の終了後にメインタンク97に残るインクの量は適宜変更が可能であり、上記の1~5%に限られず、5%より多くてもよい。あるいは、メインタンク97にインクを残さずに、メインタンク97の全てのインクを前段バッファタンク96に送ってもよい。
【0125】
また、図9のインク送液制御の実行に伴って、攪拌羽根853、攪拌羽根863あるいは攪拌羽根873の回転を制御してもよい。例えば、ステップS102において、メインタンク97内のインクの液位がローレベルLml未満と判断された場合(「YES」の場合)には、攪拌羽根873の回転を停止してもよい。
【0126】
また、上記では、メインタンク97からバッファタンク95へのカラーインクの送液を行う制御の詳細は特に説明していない。しかしながら、カラーインクの送液は、例えば図9のステップS101、S103、S104およびS105を順に実行するフローチャートによって実行することができる。かかるカラーインクの送液は、従来から行われている制御によって適宜実行することができる。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明は、ノズルからインクを吐出する吐出ヘッドに対してインクを供給する技術の全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0128】
3…印刷装置
5…制御部
503…メインセンサ出力取得部(メインタンク液位取得部)
505…前段ポンプ制御部(メイン送液ポンプ制御部)
507…前段センサ出力取得部(前段バッファタンク液位取得部)
509…後段ポンプ制御部(バッファ送液ポンプ制御部)
510…後段電磁弁制御部(送り制限電磁弁制御部)
511…戻し電磁弁制御部(戻し制限電磁弁制御部)
513…後段センサ出力取得部(後段バッファタンク液位取得部)
811…前段送液配管(メイン送液配管)
812…前段送液ポンプ(メイン送液ポンプ)
821…後段送液配管(バッファ送液配管)
822…後段送液ポンプ(バッファ送液ポンプ)
824…後段電磁弁(送り制限電磁弁)
825…分岐部
831…インク戻し配管(バッファ戻し配管)
832…インク戻し電磁弁(戻し制限電磁弁)
85…後段攪拌ユニット(後段バッファタンク攪拌部)
853…攪拌羽根(後段バッファタンク攪拌部材)
86…前段撹拌ユニット(前段バッファタンク攪拌部)
863…攪拌羽根(前段バッファタンク攪拌部材)
87…メイン攪拌ユニット(メインタンク攪拌部)
873…攪拌羽根(メインタンク攪拌部材)
95…後段バッファタンク
96…前段バッファタンク
97…メインタンク
Lml…ローレベル(所定位置)
Lft…リミットレベル(前段上限位置)
R95…通常液位範囲(後段通常液位範囲)
R96…通常液位範囲(前段通常液位範囲)
S95…後段液位センサ(後段バッファタンク液位検出部)
S96…前段液位センサ(前段バッファタンク液位検出部)
S97…メイン液位センサ(メインタンク液位検出部)
H…吐出ヘッド
Hn…ノズル
S103~S105…ステップ(第2メイン送液動作)
S106~S108…ステップ(第1メイン送液動作)
S202~S204…ステップ(バッファ送液動作)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14A
図14B