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特開2024-44417屋根構造体の排水構造および屋外構造物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044417
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】屋根構造体の排水構造および屋外構造物
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/08 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
E04D13/08 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149921
(22)【出願日】2022-09-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 展示日 令和4年4月15日(4月15日~16日に開催) 展示会名、開催場所 エクステリア ガーデンエキシビジョン2022 幕張メッセ(千葉県千葉市美浜区中瀬2-1) 展示日 令和4年5月12日(5月12日~13日に開催) 展示会名、開催場所 エクステリア&ガーデンフェア名古屋2022 ポートメッセ名古屋(愛知県名古屋市港区金城ふ頭2丁目2) 展示日 令和4年6月9日(6月9日~10日に開催) 展示会名、開催場所 関西エクステリアフェア 2022 インテックス大阪(大阪府大阪市住之江区南港北1丁目5-102) 発行日 令和4年5月9日 刊行物 ルシアス カーポート商品カタログ ウェブサイトの掲載日 令和4年5月9日 ウェブサイトのアドレス https://webcatalog.ykkap.co.jp/iportal/CatalogSearch.do?method=catalogSearchByDefaultSettingCategories&volumeID=YKKAPDC1&designID=user
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 販売日 令和4年7月20日 販売した場所 株式会社関東 千葉県船橋市古作3-16-1 販売日 令和4年7月21日 販売した場所 株式会社綾部興産 岡山県倉敷市中島1126-3 販売日 令和4年7月28日 販売した場所 株式会社ダイシン 宮城県仙台市若林区遠見塚2丁目12-11 販売日 令和4年7月29日 販売した場所 ホテイヤトーヨー株式会社 栃木県小山市東城南4-27-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 販売日 令和4年8月1日 販売した場所 株式会社阪紀テック 大阪府泉佐野市中町2-5-45 販売日 令和4年8月1日 販売した場所 フジクレスト株式会社 東京都西多摩郡瑞穂町大字武蔵66-1 販売日 令和4年8月2日 販売した場所 株式会社イナモト 大阪府堺市中区平井178番地2 販売日 令和4年8月2日 販売した場所 株式会社三富 岐阜県羽島郡岐南町八剣7丁目75番地 販売日 令和4年8月8日 販売した場所 フジ産業株式会社 栃木県宇都宮市東宿郷3-1-9 あかねビル5F 販売日 令和4年8月10日 販売した場所 有限会社森脇木工アルミ建材 島根県出雲市平田町2751 販売日 令和4年8月17日 販売した場所 株式会社アイシン 滋賀県栗東市下戸山129-1 販売日 令和4年8月18日 販売した場所 福山アルミ建材株式会社 広島県福山市芦田町大字上有地2224 販売日 令和4年8月19日 販売した場所 株式会社サングリーン 愛知県名古屋市緑区桶狭間森前201 販売日 令和4年8月22日 販売した場所 カイコー株式会社 鹿児島県鹿屋市新川町5503 販売日 令和4年8月22日 販売した場所 鴨方トーヨー株式会社 岡山県浅口市鴨方町小坂東2156-1 販売日 令和4年8月26日 販売した場所 株式会社エムツー静岡 静岡県静岡市駿河区下川原6丁目10番15号 販売日 令和4年8月30日 販売した場所 東邦アルミ建材株式会社 神奈川県横浜市旭区東希望が丘215 販売日 令和4年8月31日 販売した場所 株式会社ワイズ 埼玉県本庄市早稲田の杜5丁目14-5
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 販売日 令和4年9月2日 販売した場所 株式会社エクシス 福岡県京都郡苅田町苅田3787-8 販売日 令和4年9月6日 販売した場所 株式会社ヒキダ 静岡県焼津市保福島309 販売日 令和4年9月12日 販売した場所 株式会社ビィーティーエス 岡山県岡山市南区芳泉1-8-6 販売日 令和4年9月21日 販売した場所 AGC硝子建材株式会社 香川県綾歌郡綾川町陶1267-1
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】楠 翔旭
(72)【発明者】
【氏名】永田 幸自
(72)【発明者】
【氏名】堀江 慎吾
(57)【要約】
【課題】好適な外観が得られるとともに、排水部品に止水材が不要で施工が容易な屋根構造体の排水構造を提供する。
【解決手段】屋根材24が架設された屋根構造体16を支持する支柱12Aに沿って設けられている雨樋46の下部に排水部品48が設けられている。支柱12Aは長手方向に沿って後側面12aから突出する一対のヒレ片12c、および該ヒレ片12c間の後側面12aによって形成された溝部40を有し、雨樋46は、支柱12Aの溝部40内に配置される筒体54と、支柱12Aの溝部40を覆うカバー部56と、を備える。排水部品48は、筒体54が内周側に挿入される有底の外筒62と、外筒62の側方に形成された排水部72と、を備える。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根材が架設された屋根構造体を支持する支柱に沿って設けられた雨樋の下部に排水部品が設けられた屋根構造体の排水構造であって、
前記支柱は、長手方向に沿って側面から突出する一対のヒレ片、および該ヒレ片間の前記側面によって形成される溝部を有し、
前記雨樋は、
前記支柱の溝部内に配置される筒体と、
前記支柱の溝部を覆うカバー部と、
を備え、
前記排水部品は、
前記筒体が内周側に挿入される有底の外筒と、
前記外筒の側方に形成された排水部と、
を備える
ことを特徴とする屋根構造体の排水構造。
【請求項2】
前記カバー部には、一対の前記ヒレ片に対して係合する一対の係合片が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の屋根構造体の排水構造。
【請求項3】
前記排水部品は、前記溝部の前記側面にねじ固定される固定片を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の屋根構造体の排水構造。
【請求項4】
一対の前記ヒレ片は屋根構造体を基準とした外周側面から外周側に向けて突出し長手方向に延在し、前記溝部は一対の前記ヒレ片と該ヒレ片間の前記外周側面とによって形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の屋根構造体の排水構造。
【請求項5】
前記支柱は、前記屋根構造体を支持する梁を連結する連結部材を挿入して固定する中空部を有し、
前記溝部の前記外周側面には前記連結部材を固定するボルトの頭部が突出しており、
前記筒体には前記頭部を収容する凹部が長手方向に沿って形成されている
ことを特徴とする請求項4に記載の屋根構造体の排水構造。
【請求項6】
前記屋根構造体に設けられた軒樋と、
前記軒樋の導水孔と前記雨樋とを連結する導水部品と、
を有し、
前記導水部品は、
前記筒体の内周側に挿入される導水筒と、
前記導水筒の上端部に形成され、止水材を介して前記軒樋にねじ固定されるヒレ部と、
を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の屋根構造体の排水構造。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の屋根構造体の排水構造を備えることを特徴とする屋外構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨樋を備える屋根構造体の排水構造と、該排水構造を備える屋外構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
カーポートなどの屋外構造物には支柱に沿って雨樋が設けられている。雨樋の下部には、雨水を側方に排出させる排水部品が設けられる。このような排水部品としては、例えば90度屈曲型パイプのエルボや、特許文献1で提案されているようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平4-16836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
意匠性の観点からは雨樋は目立たないことが望ましいとされている。エルボは簡易構造であるが基本的には雨樋が丸形のものにしか適用できない。丸形の雨樋は支柱に対してデンデンと呼ばれる掴み金物を介して固定されるため、該支柱とは別体的な外観となり目立ってしまう。また、特許文献1に記載の雨樋では、排水部品に止水材が必要であり、しかも部品点数が多い複雑な構造となっており、施工業者の負担が大きい。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、好適な外観が得られるとともに、排水部品に止水材が不要で施工が容易な屋根構造体の排水構造および屋外構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる屋根構造体の排水構造は、屋根材が架設された屋根構造体を支持する支柱に沿って設けられた雨樋の下部に排水部品が設けられた屋根構造体の排水構造であって、前記支柱は、長手方向に沿って側面から突出する一対のヒレ片、および該ヒレ片間の前記側面によって形成される溝部を有し、前記雨樋は、前記支柱の溝部内に配置される筒体と、前記支柱の溝部を覆うカバー部と、を備え、前記排水部品は、前記筒体が内周側に挿入される有底の外筒と、前記外筒の側方に形成された排水部と、を備えることを特徴とする。
また、本発明にかかる屋外構造物は上記の排水構造を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、雨樋の実質的な雨水流路である筒体がヒレ片に覆われて視認されない。また、カバー部は雨樋の一部分であるが、実質的には支柱の一部と見られ、目立つことがない。さらに、排水構造の下部では筒体が有底の外筒の内周側に挿入されることから水が外筒の下方部分に漏れ落ちることがなく、止水処理や切り欠きなどの加工処理が不要である。このように、本発明では排水構造の好適な外観が得られるとともに、排水部品に止水材が不要で施工が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態である屋外構造物を示すもので、(a)は側枠側から見た図、(b)は前枠側から見た図である。
図2】屋外構造物の屋根を示す平面図である。
図3】支柱と梁との接合部分を示す側面図である。
図4】屋根材と後枠材とを示す斜視図である。
図5】支柱および屋根の斜視図である。
図6】支柱と梁との連結部分を斜め下方から見た斜視図である。
図7】排水構造の上方部分の分解斜視図である。
図8】排水構造の下方部分の分解斜視図である。
図9】導水部品の斜視図である。
図10】支柱、ボルト、雨樋および導水部品の各輪郭を重複的に示した平面図である。
図11】排水部品を後方の斜め上方から見た斜視図である。
図12】排水部品および雨樋を前方の斜め下方から見た一部断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明にかかる排水構造および屋外構造物の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
図1は、本発明の実施形態である屋外構造物10を示すもので、(a)は側枠側から見た図、(b)は前枠側から見た図である。屋外構造物10は、駐車スペースSの一側に立設した2本の支柱12と、支柱12の上端部から駐車スペースSの他側に向けて漸次上方となるように延在した2本の梁14と、梁14の上部に設けた屋根構造体16とを備えて構成したカーポートである。屋外構造物10はテラスなどであってもよい。
【0011】
支柱12は、それぞれ角柱状を成すもので、個々の下端部を地中に埋設することによって鉛直方向に沿って立設してある。2本の支柱12のうち、図1(b)における左側のものを支柱12Aとも呼び、右側のものを支柱12Bとも呼ぶ。支柱12Aには、本発明の実施形態にかかる排水構造11が設けられている。排水構造11については後述する。梁14は、それぞれ角柱状を成すもので、互いにほぼ平行となるように延在している。支柱12、梁14、および後述する4本の枠材22は、アルミニウム等を含む金属の押出形材であり、長手に沿った全長がほぼ一様の断面を有するように構成してある。
【0012】
屋根構造体16は、四周の枠材22と、枠材22によって囲われた屋根材24が架設されている。屋根材24は、前後方向に長細い複数の単材24aが互いに連結されて構成されている。支柱12は屋根構造体16を支持している。屋根構造体16の説明では支柱12に近い側を後とし、その反対側を前とする。梁14は後方に向けて漸次下方となるように傾斜している。梁14および屋根構造体16は水平となっていてもよい。支柱12は後側だけでなく、さらに前側に設けられていてもよい。
【0013】
図2は、屋外構造物10の屋根構造体16を示す平面図である。枠材22は屋根材24を囲うように4本設けられている。すなわち、後縁に沿う後枠材26、前縁に沿う前枠材28、および左右の傾斜縁に沿う側枠材30である。後枠材26は2本の支柱12によって支持されている。前枠材28は2本の梁14の前端部によって支持されている。側枠材30はそれぞれ後端が後枠材26によって支持され、前端が前枠材28によって支持されている。枠材22の四隅、つまり後枠材26、前枠材28および側枠材30の相互の連結部にはコーナーキャップ34が設けられている。屋根材24の後端は後枠材26によって支持され、前端は前枠材28によって支持されている。
【0014】
図3は、支柱12と梁14との接合部分を示す側面図である。図3に示すように、支柱12と梁14とは連結部材36によって連結されている。連結部材36は、支柱12と梁14との連結角度に応じた角度の略L字材であり、支柱12の中空部37に挿入されている鉛直部36aと、該鉛直部36aの上端から突出して梁14の中空部39に挿入されている突出部36bとを有する。鉛直部36aは支柱12の後側面(外周側面)12aから複数(この場合4つ)のボルト38によって固定されている。したがって、後側面12aにはボルト38の頭部38aが突出している。ヒレ片12cは頭部38aより突出している。複数のボルト38は鉛直方向に並んでいる。
【0015】
後述するように支柱12には、後側面12aの両側から後方に突出する一対のヒレ片12cが設けられている。後側面12aは、屋根構造体16を基準とした外周側面であり、かつ後述する溝部40の底部に相当する。突出部36bは上部が梁14に対して複数(この場合4つ)のボルト38によって固定されている。このようにして、連結部材36は外部からは視認されることなく、しかも高強度に支柱12と梁14とを連結している。
【0016】
図4は、屋根材24と後枠材26とを示す斜視図である。図4では側枠材30を省略している。図4に示すように、後枠材26は筒部42および軒樋44を有している。筒部42の底板42aと軒樋44の底板44aとは連続する面を形成している。筒部42と軒樋44とは隔壁44bを介して前後方向に隣接している。軒樋44の後端には後壁44cが立設しており、底板44a、隔壁44bおよび後壁44cにより上面が開放された溝部44dが形成されている。筒部42には屋根材24の後端部がねじにより固定されている。屋根材24の雨水は溝部44dに流れ込むようになっている。底板44aにおける支柱12Aの上方に相当する箇所には導水孔44aaが形成されている。溝部44dの左右端は側枠材30などによって塞がれている。
【0017】
図5は、支柱12Aおよび屋根構造体16の斜視図である。図6は、支柱12Aと梁14との連結部分を斜め下方から見た斜視図である。図7は、排水構造11の上方部分の分解斜視図である。図7では連結部材36を省略している。図8は、排水構造11の下方部分の分解斜視図である。
【0018】
支柱12Aは、後側面12aと、平面視で該後側面12aに交差(この場合は直角)するように隣接する他の2つの側面12bと、2つの側面12bから連続するように後方に突出している2つのヒレ片12cとを有する。ヒレ片12cは、支柱12Aの全長に亘り鉛直長手方向に延在している。2つのヒレ片12cには互いに対向する面に爪12caが形成されている。支柱12Aは前方に開口12dが形成されているが、該開口12dのない閉じた筒形状であってもよい。
【0019】
次に、排水構造11ついて説明する。排水構造11は雨樋46、排水部品48、止水材50、および導水部品52を有している。また、支柱12Aおよび軒樋44は排水構造11の一部を兼ねている。
【0020】
雨樋46は排水構造11の上部と下部とで共通して用いられる。雨樋46は支柱12Aの後側面12aに沿って設けられるものであり、いわゆる竪樋に相当する。雨樋46は樹脂材による押出形材であり、長手に沿った全長がほぼ一様の断面を有するように構成してある。雨樋46は樹脂材とすることで軽量になるが、条件によってはアルミニウム等を含む金属で形成してもよい。
【0021】
雨樋46は筒体54と、カバー部56とを有する。筒体54は、後側面12aと一対のヒレ片12cとによって形成される溝部40の内部に配置される。カバー部56は幅が一対のヒレ片12cの間隔に等しく、該溝部40を覆う。雨樋46は、少なくともカバー部56の箇所を側面12bおよびヒレ片12cと色および質感を同じにすると支柱12Aと一体的な外観が得られて好適である。後述する後板64(図8参照)も同様である。
【0022】
筒体54は左右幅に対して前後幅が短い略矩形断面であり、前後幅は溝部40の深さにほぼ等しい。筒体54は後述する係合片56aの係合動作に影響のない程度に左右幅を大きく確保されており(図10参照)、屋根材24に対して降り注ぐ雨量を排水するのに十分な断面積が確保されている。筒体54は前後幅が適度に短く設定されており、後側面12aからの突出量が抑制されている(図10参照)。筒体54の前壁54aには、頭部38a(図10参照)を収容する凹部54bが長手方向に沿って一様に形成されている。筒体54の後面54cはカバー部56が兼ねている。
【0023】
カバー部56には、筒体54を基準として左右方向の外側に一対の係合片56aが設けられている。係合片56aはカバー部56から前方に向かってやや突出している。係合片56aにおけるそれぞれの左右方向の外側には爪56aaが形成されている。雨樋46は支柱12Aの溝部40に対して位置合わせをして押し込むことにより、係合片56aの爪56aaがヒレ片12cにおける爪12caに対して係合して固定される。この係合は、例えばスナップフィット式である。支柱12Aと雨樋46とは基本的に上端位置が略一致する。なお、支柱12B(図1参照)は支柱12Aと同様の構造となっている。支柱12Bにおける溝部40を塞ぐには雨樋46と同じものを用いてもよいし、雨樋46から筒体54が省略されたカバー部56を用いてもよい。
【0024】
次に、排水構造11の上部について説明する。
雨樋46の上部と軒樋44の下面とは止水材50を介して導水部品52によって連結される。図9は、導水部品52の斜視図である。
【0025】
図7図9に示すように、導水部品52は、止水材50を介して軒樋44の下面で導水孔44aaの周囲に固定される固定枠(ヒレ部)52aと、固定枠52aから下方に突出して筒体54の内周側に挿入される導水筒52bとを有する。導水部品52は樹脂の一体成型品である。止水材50は固定枠52aに対応した枠形状であり、該固定枠52aと軒樋44の下面との間で挟持され止水する。止水材50は予め固定枠52aに取り付けられている。固定枠52aには2つのねじ孔52aaが形成されており、該ねじ孔52aaをねじ58が挿通して軒樋44のねじ孔44eに螺合することによって導水部品52が軒樋44の底板44aに固定される。固定枠52aは枠形状に限らず、軒樋44にねじ固定可能なヒレであればよい。
【0026】
図10は、支柱12A、ボルト38、雨樋46および導水部品52の各輪郭を重複的に示した平面図である。図10では識別が容易となるように導水部品52を濃いドット地、雨樋46を薄いドット地で示している。図9図10に示すように、導水部品52の導水筒52bには、筒体54の凹部54bを避ける窪み52cが形成されている。窪み52cは、導水筒52bの前壁52baから連続して形成されており、上面は塞がれ下面は開口している。凹部54bの上端部はこの開口に嵌り込み、導水筒52bと干渉することがない。
【0027】
屋根材24から軒樋44に入り込んだ水は、導水孔44aaから導水部品52の導水筒52bに流れ込む。この水は止水材50の作用により導水筒52b以外に漏れ出すことがない。また、導水筒52bは雨樋46の筒体54の内周側に挿入されていることから、水の流路は筒体54の内側に制限される。さらに、頭部38aは窪み52cおよび凹部54bによって水の流路の外側に配置されていることから、頭部38aの被水および発錆を防止することができる。さらにまた、頭部38aが被水しないことから、支柱12Aのボルト孔12eと頭部38aとの間は特別な止水処理が不要であり、ナット38b、ワッシャ38cには汎用品を用いることができる。
【0028】
ただし、排水構造11は支柱12Aと梁14とが連結部材36以外の手段で連結されている場合にも適用可能である。その場合には、溝部40に頭部38aが存在しないため、筒体54に凹部54bを設けなくてもよく、導水筒52bには窪み52cを設けなくてもよい。
【0029】
図7に示すように、支柱12と軒樋44との間には化粧板60が設けられる。化粧板60の縁取部60aは支柱12と軒樋44との境界部に沿って配置される。化粧板60には孔60bが形成されている。導水部品52は孔60bを通って軒樋44に固定される。
【0030】
次に、排水構造11の下部について説明する。
雨樋46の下部には排水部品48が連結されている。排水部品48は雨樋46の筒体54内を流れ落ちてきた水を排水するものである。図11は、排水部品48を後方の斜め上方から見た斜視図である。図12は、排水部品48および雨樋46を前方の斜め下方から見た一部断面斜視図である。
【0031】
図8図11図12を参照しながら説明する。排水部品48は、筒体54が内周側に挿入される外筒62と、外筒62の後壁を形成する後板64と、外筒62の下面を塞ぐ底部66と、後板64に形成された排水筒68と、固定片70とを有する。外筒62は下面が底部66で覆われた有底形状となっている。筒体54は有底の外筒62の内周側に挿入されることから、筒体54を落ちる水は溝部40における外筒62の下方部分に漏れ落ちることがない。
【0032】
後板64と雨樋46との左右幅はほぼ等しい。後板64の高さは左右幅よりやや小さくなっている。排水部品48と溝部40との前後幅はほぼ等しい。後板64の中央で下端近傍には孔形状の排水部72が形成されている。排水部72は下端が底部66に接する位置に形成されている。排水筒68は排水部72の周囲から後方にやや突出している。つまり、排水部72は排水筒68と外筒62の内部とを連通している。排水筒68はやや先細り形状となっている。底部66は排水部72と接する後方中央部が最も低く、前方に向かうほど、かつ左右両外側に向かうほど高くなっており、水を排水部72に集めやすくなっている。
【0033】
外筒62は、雨樋46の筒体54の下部が挿入される上部62aと、筒体54が挿入されない下部62bとから構成されている。この実施例では、下部62bの方が上部62aよりも高さ寸法がやや大きくなっている。外筒62は、筒体54の凹部54bに対応した凹部62cが形成されており、筒体54の全周に沿った確実な嵌合が可能となっている。下部62bは筒体54が嵌合されないように上部62aよりも断面積が若干小さくなっていて位置決め作用がある。
【0034】
上部62aの内周面には鉛直方向に延在する複数の低いリブ62aaが設けられている。上部62aに嵌合される筒体54は、リブ62aaによってスムーズに挿入されるとともに、適度な押圧力を受けて抜けにくくなる。上部62aにおける側壁62abと後板64との間にはスリット74(図12参照)が形成されている。雨樋46のカバー部56はスリット74に入り込み、挟持されて安定する。側壁62abの後方上部には傾斜切欠62acが形成されており、カバー部56がスリット74に向けて案内されるようになっている。スリット74は上部62aの箇所にのみ形成されており、下部62bには形成されてない。したがって、雨樋46はカバー部56の下面がスリット74の最奥部に当接することによって排水部品48に対する相対的な位置決めがなされる。
【0035】
後板64における前面側で外筒62の脇の箇所には小突起76が設けられている。小突起76は係合片56aの下面に当接して安定させる。後板64左右両端には縁突起78が設けられている。縁突起78は後板64の下端から下部62bの上端と同じ高さ位置まで延在している。縁突起78はカバー部56の両端下端に当接して安定させる。
【0036】
固定片70は外筒62の前方下端部から下方に突出している。固定片70の下端近傍にはねじ孔70aが形成されている。排水部品48は、ねじ孔70aを通ったねじ58(図8参照)が後側面12aのドリル孔12fに螺合することにより支柱12Aに対して固定される。ドリル孔12fは施工現場の状況に合わせて適切な高さにドリル加工すればよい。雨樋46は排水部品48の設置高さに合わせて素材から適切な長さだけ切断すればよく、高さ調整が容易である。
【0037】
排水構造11の組み立ては、まず軒樋44の導水孔44aaに合わせて止水材50付きの導水部品52を取り付ける(図7参照)。雨樋46の筒体54の下端を排水部品48の外筒62に嵌め込む(図8参照)。そして、筒体54の上端に対して導水部品52の導水筒52bが嵌め込まれるように雨樋46を上方に押し上げる。このとき、雨樋46は若干斜めにして下部が支柱12Aから若干離れた位置となるようにしておく。さらに、雨樋46の下端および中間高さ位置を押し込み、筒体54を溝部40に入り込ませ、係合片56aをヒレ片12cに係合させる。これにより、溝部40はカバー部56で覆われる。最後にねじ58をねじ孔70aに通してドリル孔12fに螺合させて導水部品52を固定する。
【0038】
このように構成される排水構造11では、雨樋46の実質的な雨水流路である筒体54は溝部40内にあって視認されない。カバー部56は雨樋46の一部分であるが、実質的には支柱12Aの一部と見られ、目立つことがなく好適な外観が得られる。筒体54を側方から覆うヒレ片12cは、側面12bと連続して形成されており、実質的には支柱12Aの一部と観られ、目立つことがない。
【0039】
また、排水構造11では少なくとも下部構造で止水材やシーリングなどの止水処理が不要である。さらに、基本的にはドリル孔12fの孔あけ加工および雨樋46を所定の長さに切り出す切断加工以外の加工処理は不要であり、施工が容易であって施工業者の負担が小さい。排水構造11の上部では、基本的に止水材50だけで止水が可能である。止水材50は小さく簡易・廉価な部品であり、扱いも容易である。排水構造11は部品点数が少なく、低コストであるとともに組み立て施工が容易である。
【0040】
雨樋46は上端が導水筒52bと嵌合し、下端が外筒62と嵌合して安定する。また、係合片56aとヒレ片12cとがスナップフィット式に係合することにより、雨樋46は掴み金物が不要であって支柱12Aに対して簡易に固定可能である。なお、仮に寸法誤差または経年変化などにより係合片56aとヒレ片12cとの係合力が不十分であったとしても、雨樋46を下端で支持する排水部品48は、ねじ58によって支柱12Aに固定されていることから、該雨樋46は排水部品48によって支持され下方にずれ落ちることがない。
【0041】
排水構造11は支柱12Aの後側、つまり梁14および屋根構造体16の延出する側の面と反対側、つまり屋根構造体16を基準とした外周側に設けられている。一方、屋外構造物10において人がいるのは主に屋根構造体16の下の領域、つまり内周側である。したがって、支柱12Aの後側に設けられた排水構造11は一層目立つことがない。ただし、設計条件や施工条件により排水構造11は支柱12Aにおける左右側面や前面に設けてもよい。このような場合であっても、筒体54は実質的に視認されることがなく目立たない。またこの場合、導水部品52と軒樋44とをつなぐ中継部品を設けるか、または導水部品52自体を軒樋44まで延在する形状にするとよい。
【0042】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0043】
本発明にかかる排水構造は、屋根材が架設された屋根構造体を支持する支柱に沿って設けられた雨樋の下部に排水部品が設けられた屋根構造体の排水構造であって、前記支柱は、長手方向に沿って側面から突出する一対のヒレ片、および該ヒレ片間の前記側面によって形成される溝部を有し、前記雨樋は、前記支柱の溝部内に配置される筒体と、前記支柱の溝部を覆うカバー部と、を備え、前記排水部品は、前記筒体が内周側に挿入される有底の外筒と、前記外筒の側方に形成された排水部と、を備えることを特徴とする。また、本発明にかかる屋外構造物は、このような排水構造を備えることを特徴とする。本発明では排水構造の好適な外観が得られるとともに、排水部品に止水材が不要で施工が容易である。
【0044】
本発明にかかる排水構造では、前記カバー部には、一対の前記ヒレ片に対して係合する一対の係合片が設けられていてもよい。これにより、掴み金物が不要であって支柱に対して簡易に固定可能となる。
【0045】
本発明にかかる排水構造では、前記排水部品は、前記溝部の前記側面にねじ固定される固定片を有してもよい。排水部品は固定片を介して支柱に固定されるとともに、該排水部品は雨樋を支持することができる。
【0046】
本発明にかかる排水構造では、一対の前記ヒレ片は屋根構造体を基準とした外周側面から外周側に向けて突出し長手方向に延在し、前記溝部は一対の前記ヒレ片と該ヒレ片間の前記外周側面とによって形成されていてもよい。屋外構造物において人がいるのは主に屋根構造体の下の領域である。したがって、支柱の後側に設けられた排水構造は一層目立つことがない。
【0047】
本発明にかかる排水構造では、前記支柱は、前記屋根構造体を支持する梁を連結する連結部材を挿入して固定する中空部を有し、前記溝部の前記外周側面には前記連結部材を固定するボルトの頭部が突出しており、前記筒体には前記頭部を収容する凹部が長手方向に沿って形成されていてもよい。これにより、筒体と頭部との干渉が避けられるとともに、頭部は流路の外側に配置されるころから被水および発錆を防止することができる。
【0048】
本発明にかかる排水構造では、前記屋根構造体に設けられた軒樋と、前記軒樋の導水孔と前記雨樋とを連結する導水部品と、を有し、前記導水部品は、前記筒体の内周側に挿入される導水筒と、前記導水筒の上端部に形成され、止水材を介して前記軒樋にねじ固定されるヒレ部と、を備えていてもよい。導水部品は、軒樋の水を適切に筒体に導くとともに、該筒体の上端を安定させることができる。
【符号の説明】
【0049】
10 屋外構造物、11 排水構造、12,12A,12B 支柱、12a 後側面(外周側面)、12b 側面、12c ヒレ片、14 梁、16 屋根構造体、24 屋根材、24a 単材、26 後枠材、36 連結部材、37 中空部、38 ボルト、38a 頭部、40 溝部、42a 底板、44 軒樋、44aa 導水孔、46 雨樋、48 排水部品、50 止水材、52 導水部品、52a 固定枠、52b 導水筒、54 筒体、56 カバー部、56a 係合片、62 外筒、66 底部、68 排水筒、70 固定片、72 排水部
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