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特開2024-44421光変調装置および空間光変調器の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044421
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】光変調装置および空間光変調器の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/133 20060101AFI20240326BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
G02F1/133 580
G02F1/13 505
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149927
(22)【出願日】2022-09-21
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)事業「光・量子を活用したSociety5.0実現化技術」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 晴康
【テーマコード(参考)】
2H088
2H193
【Fターム(参考)】
2H088EA47
2H088EA68
2H088HA06
2H088HA14
2H088HA15
2H088HA20
2H088HA21
2H088HA24
2H088HA28
2H193ZA02
2H193ZF17
2H193ZG22
2H193ZH18
2H193ZH34
2H193ZH69
2H193ZH72
(57)【要約】
【課題】目標とする位相変調量からの実際の位相変調量のずれを低減することができる光変調装置を提供する。
【解決手段】光変調装置1Aは、光源3と、制御部7と、空間光変調器10とを備える。光源3は、設定強度に応じた強度を有するレーザ光Laを出力する。空間光変調器10は、複数の画素電極と、液晶層と、駆動部と、冷却部と、を有する。液晶層は、各画素電極により形成される電界の大きさに応じてレーザ光Laの位相を変調する。駆動部は、複数の画素電極に電圧を印加する。冷却部は、液晶層の温度が設定温度に近づくように液晶層を冷却する。制御部7は、レーザ光Laの設定強度に基づいて冷却部の設定温度を決定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定強度に応じた強度を有する光を出力する光源と、
一次元または二次元に配列された複数の画素電極、各画素電極により形成される電界の大きさに応じて前記光の位相を変調する液晶層、複数の画素電極に電圧を印加する駆動部、前記液晶層の温度が設定温度に近づくように前記液晶層を冷却する冷却部、を有する空間光変調器と、
前記冷却部の前記設定温度を決定する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記設定強度に基づいて前記設定温度を決定する、光変調装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記設定強度と前記設定温度との関係を示すデータテーブルを予め保持し、該データテーブルを用いて前記設定温度を決定する、請求項1に記載の光変調装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記設定強度と前記設定温度との関係を示す計算式を予め保持し、該計算式を用いて前記設定温度を決定する、請求項1に記載の光変調装置。
【請求項4】
前記設定温度は前記設定強度に比例する、請求項1~3のいずれか1項に記載の光変調装置。
【請求項5】
設定強度に応じた強度を有する光を出力する光源と、
一次元または二次元に配列された複数の画素電極、各画素電極により形成される電界の大きさに応じて前記光の位相を変調する液晶層、複数の画素電極に電圧を印加する駆動部、前記液晶層の温度が設定温度に近づくように前記液晶層を冷却する冷却部、を有する空間光変調器と、
前記複数の画素電極に印加される電圧の大きさを決定する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記液晶層の各画素の位相を所定の位相に設定する際に、前記設定強度が大きいほど、前記所定の位相に対応する前記電圧が大きくなるように、前記電圧の大きさを決定する、光変調装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記電圧の大きさと複数の階調値それぞれとの関係を示すルックアップテーブルにおいて使用される全階調数と前記設定強度との相関を示す相関データを有し、
前記制御部は、前記相関データを用いて、前記ルックアップテーブルにおいて使用される全階調数を前記設定強度に基づいて決定する、請求項5に記載の光変調装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記液晶層による位相変調量と前記ルックアップテーブルの各階調値との対応を示す参照データを有するとともに、前記位相変調量を示す入力値を前記光変調装置の外部から入力し、前記参照データを用いて前記入力値を前記階調値に変換する、請求項6に記載の光変調装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記電圧の大きさと複数の階調値それぞれとの関係を示すとともに全階調数が互いに異なる複数のルックアップテーブルのうち使用されるルックアップテーブルを、全階調数と前記設定強度との相関を示す相関データを用いて、前記設定強度に基づいて決定する、請求項5に記載の光変調装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記液晶層による位相変調量と前記複数のルックアップテーブルの各階調値との対応をそれぞれ示す複数の参照データを有するとともに、前記位相変調量を示す入力値を前記光変調装置の外部から入力し、前記複数の参照データのうち前記使用されるルックアップテーブルに対応する前記参照データを用いて前記入力値を前記階調値に変換する、請求項8に記載の光変調装置。
【請求項10】
一次元または二次元に配列された複数の画素電極、各画素電極により形成される電界の大きさに応じて光の位相を変調する液晶層、前記複数の画素電極に電圧を印加する駆動部、前記液晶層の温度が設定温度に近づくように前記液晶層を冷却する冷却部、を有する空間光変調器を制御する方法であって、
前記冷却部の前記設定温度を決定する決定ステップと、
設定強度に応じた強度を有する光を前記液晶層に入力させる光入力ステップと、
を含み、
前記決定ステップでは、前記設定強度に基づいて前記設定温度を決定する、空間光変調器の制御方法。
【請求項11】
一次元または二次元に配列された複数の画素電極、各画素電極により形成される電界の大きさに応じて光の位相を変調する液晶層、前記複数の画素電極に電圧を印加する駆動部、前記液晶層の温度が設定温度に近づくように前記液晶層を冷却する冷却部、を有する空間光変調器を制御する方法であって、
各画素電極に印加される電圧の大きさを決定する決定ステップと、
設定強度に応じた強度を有する光を前記液晶層に入力させる光入力ステップと、
を含み、
前記決定ステップでは、前記液晶層の各画素の位相を所定の位相に設定する際に、前記設定強度が大きいほど、前記所定の位相に対応する前記電圧が大きくなるように、前記電圧の大きさを決定する、空間光変調器の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光変調装置および空間光変調器の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、空間光変調装置および空間光変調方法を開示する。その空間光変調装置は、一次元もしくは二次元に配列された複数の画素毎に入射光の位相を変調する。その空間光変調装置は、液晶層と、温度センサと、複数の画素電極と、電圧生成部と、を備える。液晶層は、印加電界の大きさに応じて入射光の位相を変調する。温度センサは、液晶層の温度に応じた信号である温度信号を生成する。画素電極は、画素毎に設けられ、印加電界を発生させる電圧を液晶層に印加する。電圧生成部は、複数の画素電極に電圧を提供する。電圧生成部は、記憶手段を有する。記憶手段は、液晶層の基準温度に対する温度変化量と、液晶層における位相変調量の変動量との相関を表す関数に含まれる一又は複数の係数を予め記憶する。電圧生成部は、温度センサから提供された温度信号に示された温度と、前記一又は複数の係数とを使用して、電圧の大きさを補正するための演算を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-168391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、空間光変調器(Spatial light modulator;SLM)によって光の位相を変調する技術が知られている。液晶型の空間光変調器は、液晶層と、液晶層に沿って設けられた複数の画素電極とを備えている。画素電極に電圧が印加されると、その電圧の大きさに応じて液晶分子が回転し、液晶の複屈折率が変化する。この液晶層に光が入射すると、液晶層の内部において光の位相が変化し、該入射光に対して位相差を有する光が外部へ出射される。印加電圧の大きさと、電圧印加の前後における出射光の位相差、すなわち位相変調量との関係を表したものが、空間光変調器の位相変調特性である。位相変調特性において、位相変調量と印加電圧との関係は非線形である。そのような非線形の関係を容易に変換する為、位相変調量を表す階調値と印加電圧との対応関係を示すルックアップテーブル(Look Up Table;LUT)が使用される。
【0005】
液晶層の温度が変化すると、位相変調量と印加電圧との関係が変動する。すなわち、或る一定の電圧を印加した場合であっても、その時の液晶層の温度によって、位相変調量が異なる。特許文献1に開示された空間光変調装置および空間光変調方法では、液晶層の基準温度に対する温度変化量と、液晶層における位相変調量の変動量との相関に基づき、温度センサにより検出された液晶層の温度を用いて印加電圧の大きさを補正する。
【0006】
しかしながら、多くの場合、温度センサは、例えば空間光変調器の光入射面とは反対側の裏面上といった、液晶層から離れた位置に配置される。したがって、液晶層と温度センサとの間に基板等の様々な構成要素が介在することとなり、温度センサにより検出される温度が液晶層の温度から乖離する。特に、液晶層に入射する光の強度が大きくなると、その光のエネルギーによって液晶層の温度が大きく上昇し、液晶層と温度センサとの間の温度の乖離が大きくなる。液晶層と温度センサとの間の温度の乖離が大きいと、温度センサにより検出された温度を用いても印加電圧の大きさを正しく補正することが困難になる。その結果、実際の位相変調量が、目標とする位相変調量からずれる。そのような現象は、空間光変調器が使用される用途によっては深刻な問題を生じる。例えば、レーザ加工において、レーザ光源から出力されるレーザ光を、空間光変調器を介して被加工物に照射する場合、位相変調量のずれは加工精度に大きな影響を及ぼす。また、顕微鏡または検眼鏡等に空間光変調器を使用する場合、その使用温度によっては有用な観察像が得られないおそれがある。
【0007】
本開示は、目標とする位相変調量からの実際の位相変調量のずれを低減することができる光変調装置および空間光変調器の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]本開示の一実施形態による第1の光変調装置は、光源と、空間光変調器と、制御部と、を備える。光源は、設定強度に応じた強度を有する光を出力する。空間光変調器は、複数の画素電極と、液晶層と、駆動部と、冷却部と、を有する。複数の画素電極は、一次元または二次元に配列されている。液晶層は、各画素電極により形成される電界の大きさに応じて光の位相を変調する。駆動部は、複数の画素電極に電圧を印加する。冷却部は、液晶層の温度が設定温度に近づくように液晶層を冷却する。制御部は、冷却部の設定温度を決定する。制御部は、設定強度に基づいて設定温度を決定する。
【0009】
[2]本開示の一実施形態による空間光変調器の第1の制御方法は、空間光変調器を制御する方法である。空間光変調器は、複数の画素電極と、液晶層と、駆動部と、冷却部と、を有する。複数の画素電極は、一次元または二次元に配列されている。液晶層は、各画素電極により形成される電界の大きさに応じて光の位相を変調する。駆動部は、複数の画素電極に電圧を印加する。冷却部は、液晶層の温度が設定温度に近づくように液晶層を冷却する。第1の制御方法は、冷却部の設定温度を決定する決定ステップと、設定強度に応じた強度を有する光を液晶層に入力させる光入力ステップと、を含む。決定ステップでは、設定強度に基づいて設定温度を決定する。
【0010】
前述したように、液晶層に入射する光の強度が大きくなると、その光のエネルギーによって液晶層の温度が大きく上昇し、液晶層と温度センサとの間の温度の乖離が大きくなる。そこで、第1の光変調装置および第1の制御方法では、制御部が(または決定ステップにおいて)、液晶層の温度を所定温度に近づける際に、液晶層に入力される光の設定強度が大きいほど、冷却部の設定温度が所定温度よりも低くなるように、光の設定強度に基づいて冷却部の設定温度を決定する。これにより、液晶層に入射する光の強度の大小にかかわらず液晶層の温度を一定に近づけることができるので、印加電圧の大きさを正しく設定することが可能になり、実際の位相変調量を、目標とする位相変調量に精度良く近づけることができる。よって、第1の光変調装置および第1の制御方法によれば、目標とする位相変調量からの実際の位相変調量のずれを低減することができる。なお、第1の光変調装置および第1の制御方法においては、設定温度ではなく、例えば所定温度に基づいて、位相変調量と印加電圧の大きさとの関係が設定される。
【0011】
[3]上記[1]の第1の光変調装置において、制御部は、設定強度と設定温度との関係を示すデータテーブルを予め保持し、該データテーブルを用いて設定温度を決定してもよい。[4]或いは、上記[1]の第1の光変調装置において、制御部は、設定強度と設定温度との関係を示す計算式を予め保持し、該計算式を用いて設定温度を決定してもよい。これらのうち何れかの場合、制御部は、設定強度に応じて設定温度を決定することを容易にできる。同様に、[5]上記[2]の第1の制御方法の決定ステップでは、設定強度と設定温度との関係を示すデータテーブルを用いて設定温度を決定してもよい。[6]或いは、上記[2]の第1の制御方法の決定ステップでは、設定強度と設定温度との関係を示す計算式を用いて設定温度を決定してもよい。これらのうち何れかの場合、決定ステップにおいて、設定強度に応じて設定温度を決定することを容易にできる。
【0012】
[7]上記[1]、[3]及び[4]のうちいずれかの第1の光変調装置において、設定温度は設定強度に比例してもよい。[8]同様に、上記[2]、[5]及び[6]のうちいずれかの第1の制御方法において、設定温度は設定強度に比例してもよい。本発明者の知見によれば、温度センサにより検出される温度に対して、液晶層の温度は、液晶層に入力される光の強度に比例して乖離する。冷却部の設定温度が光の設定強度に比例するように決定されることによって、液晶層に入射する光の強度の大小にかかわらず液晶層の温度をより一定に近づけることが可能になり、実際の位相変調量を、目標とする位相変調量に更に精度良く近づけることができる。よって、目標とする位相変調量からの実際の位相変調量のずれを更に低減することができる。
【0013】
[9]本開示の一実施形態による第2の光変調装置は、光源と、空間光変調器と、制御部と、を備える。光源は、設定強度に応じた強度を有する光を出力する。空間光変調器は、複数の画素電極と、液晶層と、駆動部と、冷却部と、を有する。複数の画素電極は、一次元または二次元に配列されている。液晶層は、各画素電極により形成される電界の大きさに応じて光の位相を変調する。駆動部は、複数の画素電極に電圧を印加する。冷却部は、液晶層の温度が設定温度に近づくように液晶層を冷却する。制御部は、複数の画素電極に印加される電圧の大きさを決定する。制御部は、液晶層の各画素の位相を所定の位相に設定する際に、設定強度が大きいほど、所定の位相に対応する電圧が大きくなるように、電圧の大きさを決定する。
【0014】
[10]本開示の一実施形態による空間光変調器の第2の制御方法は、空間光変調器を制御する方法である。空間光変調器は、複数の画素電極と、液晶層と、駆動部と、冷却部と、を有する。複数の画素電極は、一次元または二次元に配列されている。液晶層は、各画素電極により形成される電界の大きさに応じて光の位相を変調する。駆動部は、複数の画素電極に電圧を印加する。冷却部は、液晶層の温度が設定温度に近づくように液晶層を冷却する。第2の制御方法は、各画素電極に印加される電圧の大きさを決定する決定ステップと、設定強度に応じた強度を有する光を液晶層に入力させる光入力ステップと、を含む。決定ステップでは、液晶層の各画素の位相を所定の位相に設定する際に、設定強度が大きいほど、所定の位相に対応する電圧が大きくなるように、電圧の大きさを決定する。
【0015】
前述したように、液晶層に入射する光の強度が大きくなると、その光のエネルギーによって液晶層の温度が大きく上昇し、液晶層と温度センサとの間の温度の乖離が大きくなる。また、液晶の屈折率は温度が高くなるほど小さくなるので、或る大きさの電圧が印加された場合における液晶層による位相変調量は、液晶層の温度が高くなるほど(すなわち、液晶層に入力される光の強度が大きくなるほど)小さくなる。そこで、第2の光変調装置および第2の制御方法では、制御部が(または決定ステップにおいて)、液晶層の各画素の位相を所定の位相に設定する際に、液晶層に入力される光の設定強度が大きいほど、所定の位相に対応する電圧が大きくなるように、電圧の大きさを決定する。これにより、液晶層に入射する光の強度の変動に伴い液晶層の温度が変動したとしても、実際の位相変調量を、目標とする位相変調量に精度良く近づけることができる。よって、第2の光変調装置および第2の制御方法によれば、目標とする位相変調量からの実際の位相変調量のずれを低減することができる。
【0016】
[11]上記[9]の第2の光変調装置において、制御部は、電圧の大きさと複数の階調値それぞれとの関係を示すルックアップテーブルにおいて使用される全階調数と設定強度との相関を示す相関データを有してもよい。制御部は、相関データを用いて、ルックアップテーブルにおいて使用される全階調数を設定強度に基づいて決定してもよい。この場合、制御部は、設定強度に応じて電圧の大きさを決定することを容易にできる。[12]同様に、上記[10]の第2の制御方法の決定ステップでは、電圧の大きさと複数の階調値それぞれとの関係を示すルックアップテーブルにおいて使用される全階調数と設定強度との相関を示す相関データを有してもよい。決定ステップでは、相関データを用いて、ルックアップテーブルにおいて使用される全階調数を設定強度に基づいて決定してもよい。この場合、決定ステップにおいて、設定強度に応じて電圧の大きさを決定することを容易にできる。
【0017】
[13]上記[11]の第2の光変調装置において、制御部は、液晶層による位相変調量とルックアップテーブルの各階調値との対応を示す参照データを有するとともに、位相変調量を示す入力値を光変調装置の外部から入力し、参照データを用いて入力値を階調値に変換してもよい。この場合、第2の光変調装置を使用する者が位相変調量を自在に設定することができる。[14]同様に、上記[12]の第2の制御方法の決定ステップでは、位相変調量を示す入力値を光変調装置の外部から入力し、液晶層による位相変調量とルックアップテーブルの各階調値との対応を示す参照データを用いて入力値を階調値に変換してもよい。この場合、第2の制御方法を使用する者が位相変調量を自在に設定することができる。
【0018】
[15]上記[9]の第2の光変調装置において、制御部は、電圧の大きさと複数の階調値それぞれとの関係を示すとともに全階調数が互いに異なる複数のルックアップテーブルのうち使用されるルックアップテーブルを、全階調数と設定強度との相関を示す相関データを用いて、設定強度に基づいて決定してもよい。この場合、制御部は、設定強度に応じて電圧の大きさを決定することを容易にできる。[16]同様に、上記[10]の第2の制御方法の決定ステップでは、電圧の大きさと複数の階調値それぞれとの関係を示すとともに全階調数が互いに異なる複数のルックアップテーブルのうち使用されるルックアップテーブルを、全階調数と設定強度との相関を示す相関データを用いて、設定強度に基づいて決定してもよい。この場合、決定ステップにおいて、設定強度に応じて電圧の大きさを決定することを容易にできる。
【0019】
[17]上記[15]の第2の光変調装置において、制御部は、液晶層による位相変調量と複数のルックアップテーブルそれぞれの各階調値との対応を示す複数の参照データを有するとともに、位相変調量を示す入力値を光変調装置の外部から入力し、複数の参照データのうち前記使用されるルックアップテーブルに対応する参照データを用いて入力値を階調値に変換してもよい。この場合、第2の光変調装置を使用する者が位相変調量を自在に設定することができる。[18]同様に、上記[16]の第2の制御方法の決定ステップでは、位相変調量を示す入力値を光変調装置の外部から入力し、液晶層による位相変調量と複数のルックアップテーブルそれぞれの各階調値との対応を示す複数の参照データのうち前記使用されるルックアップテーブルに対応する参照データを用いて、入力値を階調値に変換してもよい。この場合、第2の制御方法を使用する者が位相変調量を自在に設定することができる。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、目標とする位相変調量からの実際の位相変調量のずれを低減することができる光変調装置および空間光変調器の制御方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本開示の第1実施形態に係る光変調装置の構成を概略的に示す図である。
図2図2は、光変調素子の断面構造を模式的に示す図である。
図3図3は、光入出射面の法線方向から複数の画素電極を見た図である。
図4図4は、空間光変調器を収容する容器の外観を示す斜視図である。
図5図5は、空間光変調器の構成を示す斜視図である。
図6図6は、ルックアップテーブルの例を示す図である。
図7図7は、光変調素子の位相変調量と画素電極への印加電圧との関係を調べるための試験装置の構成を概略的に示す図である。
図8図8は、位相変化量に対応する階調値と、パワーメータにおいて測定される光強度との関係の例を示すグラフである。
図9図9は、光変調素子に入力される階調値と位相変調量との関係を計測した結果を示すグラフである。
図10図10は、階調値と位相変調量との関係を表したグラフである。
図11図11は、液晶層の温度を20℃及び25℃に制御したときの階調値と位相変化量との関係を示すグラフである。
図12図12は、冷却部の設定温度を20℃及び25℃とした場合の、試験光の光強度と光変調素子の最大位相変調量との関係の一例を示すグラフである。
図13図13は、位相変調量を一定とすることができる、レーザ光の設定強度と冷却部の設定温度との関係の例を示すグラフである。
図14図14は、第1実施形態による空間光変調器の制御方法を示すフローチャートである。
図15図15は、階調値と位相変調量との関係の一例を示すグラフである。
図16図16は、相関データの一例を示すグラフである。
図17図17の(a)及び(b)は、参照データの例を示す図である。
図18図18は、第2実施形態による空間光変調器の制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しながら本開示による光変調装置および空間光変調器の制御方法の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
[第1実施形態]
【0023】
図1は、本開示の第1実施形態に係る光変調装置1Aの構成を概略的に示す図である。図1に示されるように、本実施形態の光変調装置1Aは、光源3と、ミラー4と、結像光学系5と、集光レンズ6と、制御部7(制御部)と、空間光変調器10と、を備える。本実施形態の光変調装置1Aは、例えば、レーザ加工において、光源3から出力されるレーザ光Laを、空間光変調器10を介して被加工物である対象物Bに照射する。或いは、本実施形態の光変調装置1Aは、例えば、蛍光顕微鏡などの顕微鏡において、光源3から出力されるレーザ光Laを、空間光変調器10を介して被観察物である対象物Bに照射する。
【0024】
光源3は、レーザ光Laを出力する。光源3は、例えば、単一波長且つ直線偏光のレーザ光Laを出力するように構成されている。また、光源3は、例えば、ピコ秒オーダまたはフェムト秒オーダといった極めて小さい時間幅を有するパルス波形を有するレーザ光Laを繰り返し出力するように構成されている。レーザ光Laの波長は例えば1030nmである。レーザ光Laのパルス幅は例えば10ピコ秒である。レーザ光Laのパルス繰返し周波数は例えば1MHzである。光源3は、レーザ光Laの強度を変更できるように構成されており、光変調装置1Aの外部または制御部7から設定強度を示す信号を入力し、その設定強度に応じた強度を有するレーザ光Laを出力する。ここでいう強度とは、各パルスのピーク強度である。または、ここでいう強度とは、或る期間内の光強度の時間平均値であってもよい。
【0025】
ミラー4は、空間光変調器10の光入出射面11aと対向して配置されている。ミラー4は、例えばプリズム型であり、2つの平坦な反射面41,42を有する。反射面41は、光源3と空間光変調器10の光入出射面11aとの間の光路上に配置され、光源3と光入出射面11aとを光学的に結合する。光源3から出力されたレーザ光Laは、反射面41によって反射されて光入出射面11aに達する。光入出射面11aへのレーザ光Laの入射方向は、光入出射面11aの法線方向に対して傾斜している。反射面42は、光入出射面11aと結像光学系5との間の光路上に配置され、光入出射面11aと結像光学系5とを光学的に結合する。光入出射面11aから出力された変調後のレーザ光Lbは、反射面42によって反射されて結像光学系5に達する。光入出射面11aからのレーザ光Lbの出射方向は、光入出射面11aの法線方向に対してレーザ光Laとは逆側に傾斜している。一例では、光源3と反射面41との間の光軸のうち反射面41寄りの部分は、反射面42と結像光学系5との間の光軸のうち反射面42寄りの部分と同一直線上に位置する。
【0026】
結像光学系5は、空間光変調器10の光入出射面11aと集光レンズ6とを光学的に結合する。結像光学系5は、例えば一対のレンズ51,52を含んで構成されている。レンズ51,52は、反射面42と集光レンズ6との間の光軸上に並んで配置されている。レンズ51,52は、例えば両側テレセントリック光学系を構成する。
【0027】
集光レンズ(対物レンズ)6は、空間光変調器10の光入出射面11aから出力された変調後のレーザ光Lbを、対象物Bに向けて集光する。集光レンズ6は、結像光学系5及び反射面42を介して光入出射面11aと光学的に結合されている。
【0028】
空間光変調器10は、光変調素子11と、温度調整部16と、外部制御基板17(制御部)と、を有する。光変調素子11は、一次元または二次元に配列された複数の画素を有し、光入出射面11aに入力されたレーザ光Laの位相を画素毎に変調して、変調後のレーザ光Lbを生成する。本実施形態の光変調素子11は反射型の構成を有するが、光変調素子11は透過型の構成を有してもよい。
【0029】
図2は、光変調素子11の断面構造を模式的に示す図である。図2に示されるように、光変調素子11は、ガラス基板112、透明導電膜113、複数の画素電極114、液晶層115、透明層(位相シフト層)116、誘電体多層膜(反射層)117、遮光層118、及び駆動回路層119(制御部)を有する。なお、透明層116は設けられなくてもよい。
【0030】
ガラス基板112は、表面112a及び裏面112bを有する。ガラス基板112の表面112aは、光変調素子11の光入出射面11aを構成する。ガラス基板112は、光入出射面11a(表面112a)から入射したレーザ光Laを、光変調素子11の内部へ透過する。透明導電膜113は、ガラス基板112の裏面112b上に設けられており、レーザ光Laを透過する導電性材料(例えばITO)を主に含んで構成されている。
【0031】
複数の画素電極114は、図3(光入出射面11aの法線方向から複数の画素電極114を見た図)に示されるように、一次元または二次元に配列されて光変調素子11の複数の画素を構成する。各画素電極114は、例えばアルミニウムといった金属材料からなり、それらの表面は、平坦且つ滑らかに加工されている。複数の画素電極114は、駆動回路層119に設けられたアクティブ・マトリクス回路(駆動部)によって駆動される。アクティブ・マトリクス回路は、複数の画素電極114とシリコン基板110との間に設けられ、各画素に要求される位相変調量に応じた大きさの電圧を各画素電極114へ印加する。アクティブ・マトリクス回路は、例えばX軸方向に並んだ各画素列に電圧を印加する第1のドライバ回路と、Y軸方向に並んだ各画素列に電圧を印加する第2のドライバ回路とを有しており、双方のドライバ回路によって指定された画素の画素電極114に電圧が印加される。
【0032】
液晶層115は、透明導電膜113と画素電極114との間に配置されており、各画素電極114によって形成される電界の大きさに応じてレーザ光Laの位相を変調する。すなわち、アクティブ・マトリクス回路によって或る画素電極114に電圧が印加されると、透明導電膜113と画素電極114との間に電界が形成される。この電界は、誘電体多層膜117及び液晶層115のそれぞれに対し、各々の厚さに応じた割合で印加される。そして、液晶層115に印加された電界の大きさに応じて液晶分子の配列方向が変化する。レーザ光Laがガラス基板112及び透明導電膜113を透過して液晶層115に入射すると、このレーザ光Laは液晶層115を通過する間に液晶分子によって位相変調され、誘電体多層膜117によって反射された後、再び液晶層115により位相変調されてからレーザ光Lbとして取り出される。
【0033】
なお、本実施形態において、液晶層115は配向膜115a,115bを含んで構成されている。配向膜115a,115bは、液晶層115の両端面に形成されており、液晶分子群を一定方向に配列させる。配向膜115a,115bは、例えばポリイミドといった高分子材料からなり、液晶層115との接触面にラビング処理等が施されたものが適用される。
【0034】
透明層116は、液晶層115の界面において、ガラス基板112側から入射したレーザ光La、および誘電体多層膜117により反射されたレーザ光Laのピーク同士が互いに重畳しないように位相をシフトさせる。透明層116の光学膜厚は、入射光の波長以上に設定される。或いは、透明層116の光学膜厚は、入射光のパルス幅をτ、光の速さをcとして(τ×c)/30以上に設定される。透明層116の構成材料には、例えばSiO及び/またはNbが主に含まれる。なお、前述した通り、透明層116は設けられなくてもよい。
【0035】
誘電体多層膜117は、液晶層115と遮光層118との間(透明層116が設けられる場合には、透明層116と遮光層118との間)に設けられている。誘電体多層膜117は、レーザ光Laを例えば99%超といった高反射率で反射する。誘電体多層膜117の構成材料としては、例えばSiOとTiOとが交互に積層されたものが挙げられるが、特にこれに限定されるものではなく、TiOに代えてHfOを採用したり、SiOに代えてMgFを採用したりするなど適宜変更してもよい。
【0036】
遮光層118は、誘電体多層膜117と画素電極114との間に配置されており、複数の画素電極114の表面上に直接形成されている。遮光層118は、光漏れの発生を抑制する。
【0037】
図4は、空間光変調器10を収容する容器20の外観を示す斜視図である。図4に示される容器20は、筐体21と、放熱器(ヒートシンク)22と、ファン23とを有する。筐体21は、略直方体状または略立方体状の中空容器であり、例えば金属製である。筐体21は、或る方向D1に並ぶ一対の側面21a,21bのそれぞれに、光学窓21cを有する(図には側面21aの光学窓21cのみ示す)。側面21aの光学窓21cは、側面21bの光学窓21cと方向D1において対向している。筐体21は、方向D1と交差する方向D2に並ぶ一対の側面21d,21eを有する。放熱器22及びファン23は、側面21d,21eのうち一方の側面21dに取り付けられている。放熱器22は、複数の突起を外面に有し、側面21dに形成された矩形状の開口21fに挿通された状態で固定されている。ファン23は、放熱器22の外面を覆うように配置され、側面21dに固定されている。ファン23は、放熱器22の外面に風を送って放熱器22を冷却する。
【0038】
図5は、空間光変調器10の構成を示す斜視図である。空間光変調器10は、上述したミラー4とともに、容器20に収容されている。図5に示される空間光変調器10は、光変調素子11と、基板12と、金属ブロック13と、温度センサ14と、冷却部15と、を有する。
【0039】
基板12は、第1面12a及び第2面12bを有する。第1面12aは、ミラー4と対向している。第2面12bは、第1面12aと反対を向いており、放熱器22と対向している。光変調素子11は、光入出射面11a(図2を参照)がミラー4と対向するように、基板12の第1面12a上に実装されている。
【0040】
基板12には、略矩形状の開口12cが形成されている。第1面12a及び第2面12bの法線方向から見て、開口12cは光変調素子11と重なる。開口12cからは、光変調素子11の裏面(光入出射面11aとは反対側の面)11bが露出している。金属ブロック13は、開口12cに配置され、光変調素子11の裏面11bと熱的に結合されるか又は接している。金属ブロック13は例えば銅ブロックである。
【0041】
温度センサ14及び冷却部15は、図1に示された温度調整部16を構成する。温度センサ14は、光変調素子11が有する液晶層115(図2を参照)の周辺温度を検出する。温度センサ14は、例えばサーミスタであり、液晶層115の周辺温度に応じて抵抗値を変化させる。図示例では、温度センサ14は金属ブロック13の内部に配置されているが、温度センサ14は、光変調素子11の近傍に配置されればよく、金属ブロック13の外部(例えば基板12上など)に配置されてもよい。なお、本開示においては、液晶層115の温度とは、液晶層115の実際の温度だけに限らず、液晶層115の周辺温度も含む。
【0042】
冷却部15は、光変調素子11との間に金属ブロック13を挟む位置に配置されている。冷却部15は、例えばペルチェ素子を含む。ペルチェ素子の吸熱面は、金属ブロック13と熱的に結合されるか又は接している。ペルチェ素子の放熱面は、放熱器22の内面(複数の突起が設けられた外面とは反対の面)と熱的に結合されるか又は接している。冷却部15は、光変調素子11(特に液晶層115)を冷却する。冷却部15は、例えば基板12上に設けられた制御ドライバ回路によって制御され、温度センサ14により検出される温度が設定温度に近づくように、金属ブロック13を通じて液晶層115を冷却する。これにより、液晶層115の実際の温度も設定温度に近づく。
【0043】
光源3(図1を参照)から出力されたレーザ光Laは、筐体21の側面21bの光学窓21cを通過して、ミラー4の反射面41に達する。レーザ光Laは、反射面41によって反射され、光変調素子11の光入出射面11aに入射する。光変調素子11は、レーザ光Laの位相を画素毎に変調する。光変調素子11から出力された変調後のレーザ光Lbは、ミラー4の反射面42によって反射され、筐体21の側面21aの光学窓21cを通過して、筐体21の外部(図1に示される結像光学系5)へ出力される。
【0044】
再び図1を参照して、本実施形態の制御部7について説明する。制御部7は、物理的には、プロセッサ(CPU)、ROM及びRAM等の主記憶装置、キーボード、マウス及びタッチスクリーン等の入力デバイス、ディスプレイ(タッチスクリーン含む)等の出力デバイス、ハードディスク等の補助記憶装置などを含む、通常のコンピュータとして構成され得る。制御部7は、光源3、光変調素子11及び温度調整部16と電気的に接続されている。制御部7は、外部制御基板17を介して、レーザ光Laの設定強度に関する情報A1を光源3に提供するか、または、レーザ光Laの設定強度に関する情報A1を光源3から受け取る。加えて、制御部7は、外部制御基板17を介して、光変調素子11の複数の画素それぞれにおいて目標とされる位相変調量を示す階調値に関する情報A2を光変調素子11に提供する。加えて、制御部7は、外部制御基板17を介して、冷却部15の設定温度に関する情報A3を温度調整部16の制御ドライバ回路に提供する。
【0045】
一般的に、光変調素子11の各画素の位相変調量は、各画素電極114に印加される電圧の大きさに対して非線形の関係を有する。そのため、外部制御基板17は、制御部7から入力される階調値を電圧の大きさに変換するためのルックアップテーブルを有し、このルックアップテーブルを用いて当該階調値をアナログ電圧値に変換し、駆動回路層119に入力する。図6は、ルックアップテーブルの例を示す図である。階調値は、全階調数がN(0からN-1)のデジタル信号であり、本実施形態ではN=256である。0からN-1までの全N階調の画素入力値が0から2πまでの1周期分の位相変調量を示す。図6には参考のため位相変調量も示されているが、駆動回路層119は位相変調量に関する情報を有していない。駆動回路層119は、各画素について入力されたアナログ電圧値に基づいて各画素の画素電極114に電圧を印加する。後述するように、液晶層115の屈折率は温度が高くなるほど小さくなるので、或る大きさの電圧が印加された場合における液晶層115による位相変調量は、液晶層115の温度が高くなるほど小さくなる。したがって、外部制御基板17は、液晶層115の温度毎に異なるルックアップテーブルを有する。なお、駆動回路層119が、ルックアップテーブルを有してもよい。この場合、駆動回路層119は、ルックアップテーブルを用いて、制御部7から入力される階調値をアナログ電圧値に変換する。そして、駆動回路層119は、変換されたアナログ電圧値に基づいて、各画素の画素電極114に電圧を印加する。または、制御部7が、ルックアップテーブルを有してもよい。この場合、制御部7は、ルックアップテーブルを用いて、階調値をアナログ電圧値に変換する。そして、駆動回路層119は、制御部7から入力されるアナログ電圧値に基づいて、各画素の画素電極114に電圧を印加する。
【0046】
図7は、光変調素子11の位相変調量と画素電極114への印加電圧との関係を調べるための試験装置2の構成を概略的に示す図である。試験装置2は、レーザ光源31と、1/2波長板32と、偏光ビームスプリッタ33と、光吸収体34と、ビームエキスパンダ35と、誘電体ミラー36aと、誘電体ミラー36bと、ホモジナイザ37と、偏光ビームスプリッタ38と、光吸収体39と、アパーチャ40と、パワーメータ43とを備える。
【0047】
レーザ光源31は、レーザ光Laを模擬する試験光Lcを出力する。試験光Lcは、1/2波長板32を通過したのちに偏光ビームスプリッタ33に入射する。試験光Lcの偏光方向が1/2波長板32において調整され、試験光Lcのうち所定の偏光方向を有する成分のみが偏光ビームスプリッタ33を通過する。試験光Lcのうち該成分を除く他の成分は、偏光ビームスプリッタ33によって反射され、光吸収体34に吸収される。1/2波長板32及び偏光ビームスプリッタ33によって、試験光Lcの偏光方向は、光変調素子11の液晶層115における液晶の配向方向に対して45°回転する。
【0048】
ビームエキスパンダ35は、光変調素子11の変調面の大きさ(例えば16mm×12.8mm)に試験光Lcのビーム径を適合させるために、試験光Lcのビーム径を拡大する。拡大前の試験光Lcのビーム径は例えば7mmである。拡大後の試験光Lcのビーム径は、光変調素子11の変調面の大きさが例えば16mm×12.8mmである場合、例えば11mmである。ビームエキスパンダ35は、例えば凹レンズと凸レンズとの組み合わせによって構成され得る。ビーム径拡大後の試験光Lcは、誘電体ミラー36a及び36bによってホモジナイザ37に導かれる。試験光Lcは、ホモジナイザ37によって、特定形状(例えば円形)の領域内に、均一な光強度分布を有するものとなる。
【0049】
容器20に収容されたミラー4は、ホモジナイザ37と偏光ビームスプリッタ38との間の光軸上に配置される。ホモジナイザ37から出力された試験光Lcは、ミラー4によって反射され、光変調素子11に入力される。このとき、光変調素子11により与えられる位相変調量に応じて、変調後の試験光Ldの偏光方向が回転する。光変調素子11から出力された変調後の試験光Ldは、ミラー4によって反射され、偏光ビームスプリッタ38に達する。試験光Lcのうち所定の偏光方向成分が偏光ビームスプリッタ38を通過し、その後にアパーチャ40を通過して、パワーメータ43に入力される。アパーチャ40の開口径は例えば6mmである。試験光Lcのうち所定の偏光成分を除く他の成分は、偏光ビームスプリッタ38によって反射され、光吸収体39に吸収される。パワーメータ43は、アパーチャ40を通過した試験光Lcの光強度を計測する。この試験装置2では、光変調素子11により与えられる位相変調量に応じて、偏光ビームスプリッタ38及びアパーチャ40を通過し得る試験光Lcの偏光成分の光量が変化するので、光変調素子11における位相変化量がパワーメータ43における強度変化量として観測される。
【0050】
図8は、位相変化量に対応する階調値と、パワーメータ43において測定される光強度との関係の例を示すグラフである。パワーメータ43において測定される光強度Iは、下記の数式(1)によって表される。なお、θは位相変調量であり、Iは定数である。
【数1】
【0051】
図9は、パルス幅が10ピコ秒、波長が1030nm、繰返し周波数が1MHzである試験光Lcを用いて、光変調素子11に入力される階調値と位相変調量との関係を計測した結果を示すグラフである。横軸は階調値を表し、縦軸は位相変調量(rad)を表す。図9に示されるように、階調値と位相変調量とはほぼ線形の関係を有する。図10は、横軸を位相変調量(rad)とし、縦軸を階調値として、上記の階調値と位相変調量との関係を表したグラフである。この図10に示されるグラフを多項式で近似することによって、目標とする位相変調量を得るための階調値を求めることができる。例えば、図10に示されるグラフを1次関数で近似すると下記の数式(2)が得られる。
【数2】

数式(2)より、例えば2π(rad)の位相変調量を得るための階調値として、2×117=234が求められる。
【0052】
ここで、液晶層115の温度は、環境温度の変化もしくはレーザ光Laの照射に伴って変動する。液晶層115の屈折率は液晶層115の温度が高くなるほど小さくなるので、或る大きさの電圧が印加された場合における液晶層115による位相変調量は、液晶層115の温度が高くなるほど小さくなる。図11は、一例として、液晶層115の温度を20℃及び25℃に制御したときの階調値と位相変化量との関係を示すグラフである。図11に示されるように、液晶層115の温度が高いほど、或る階調値に対する位相変化量が小さくなる。そこで、冷却部15が液晶層115の温度を設定温度に近づけることにより、液晶層115の温度を一定とする。これにより、位相変調量を精度良く制御することができる。
【0053】
しかしながら、本実施形態の温度センサ14は、金属ブロック13の内部に配置されている。このように、多くの場合、温度センサ14は、液晶層115から離れた位置に配置される。したがって、液晶層115と温度センサ14との間にシリコン基板110、誘電体多層膜117、及び駆動回路層119といった様々な構成要素が介在することとなり、温度センサ14により検出される温度が液晶層115の温度から乖離する。特に、液晶層115に入射するレーザ光Laの強度が大きくなると、レーザ光Laのエネルギーによって液晶層115の温度が大きく上昇し、液晶層115と温度センサ14との間の温度の乖離が大きくなる。液晶層115と温度センサ14との間の温度の乖離が大きいと、温度センサ14により検出された液晶層115の温度を用いても印加電圧の大きさを正しく設定することが困難になる。その結果、実際の位相変調量が、目標とする位相変調量からずれることとなる。
【0054】
そこで、本実施形態の制御部7は、レーザ光Laの設定強度に基づいて、冷却部15の設定温度を決定する。すなわち、制御部7は、液晶層115の温度を所定温度に近づける際に、レーザ光Laの設定強度が大きいほど冷却部15の設定温度が該所定温度よりも低くなるように、レーザ光Laの設定強度に基づいて冷却部15の設定温度を決定する。言い換えると、制御部7は、液晶層115の温度を所定温度に近づける際に、冷却部15の設定温度が該所定温度よりも低くなるように、且つ、冷却部15の設定温度と該所定温度との差が、レーザ光Laの設定強度が大きいほど大きくなるように、レーザ光Laの設定強度に基づいて冷却部15の設定温度を決定する。なお、ルックアップテーブルは、冷却部15の設定温度ではなく、例えば室温などの所定温度(若しくは、レーザ光Laの設定強度がゼロであると仮定したときの冷却部15の設定温度)における位相変調量と印加電圧の大きさとの関係を示す。
【0055】
具体的には、制御部7は、レーザ光Laの設定強度と冷却部15の設定温度との関係を示すデータテーブルを予め保持しており、既知であるレーザ光Laの設定強度に基づいて該データテーブルを参照することにより、冷却部15の設定温度を決定する。或いは、制御部7は、レーザ光Laの設定強度と冷却部15の設定温度との関係を示す計算式(例えば後述する数式(3))を予め保持しており、既知であるレーザ光Laの設定強度を該計算式に適用することにより、冷却部15の設定温度を決定する。なお、計算式を保持するとは、計算式に含まれる係数を保持することを意味する。
【0056】
図12は、冷却部15の設定温度を20℃及び25℃とした場合の、試験光Lcの光強度と光変調素子11の最大位相変調量との関係の一例を示すグラフである。図12において、横軸は試験光Lcの光強度(W)を表し、縦軸は最大位相変調量(πrad)を表す。図中のプロットP1は、冷却部15の設定温度を20℃とした場合の最大位相変調量の実測値を示し、Q1はその近似直線である。図中のプロットP2は、冷却部15の設定温度を25℃とした場合の最大位相変調量の実測値を示し、Q2はその近似直線である。なお、図中には、冷却部15の設定温度を23℃とした場合の近似直線Q3も併せて示されている。
【0057】
図12から明らかなように、冷却部15の設定温度が同一である条件下では、試験光Lcの光強度が大きくなるほど、光変調素子11の最大位相変調量は小さくなる。そして、試験光Lcの光強度と、光変調素子11の最大位相変調量とは、ほぼ線形の関係を有する。また、試験光Lcの光強度が同一である条件下では、冷却部15の設定温度が大きいほど、最大位相変調量は小さくなる。例えば、この例において、設定温度が25℃であり試験光Lcの光強度が10Wであるときの最大位相変調量は2.105π(rad)である。設定温度が25℃であり試験光Lcの光強度が75Wであるときの最大位相変調量は2.066π(rad)である。設定温度が20℃であり試験光Lcの光強度が10Wであるときの最大位相変調量は2.193π(rad)である。設定温度が20℃であり試験光Lcの光強度が75Wであるときの最大位相変調量は2.167π(rad)である。このことから、レーザ光Laの光強度が変動する場合であっても、冷却部15の設定温度を制御することにより、光変調素子11の最大位相変調量を補正することが可能であることがわかる。すなわち、各温度に対応する近似直線Q1~Q3の隙間を補完し、レーザ光Laの設定強度の変更に対応して冷却部15の設定温度を変更することによって、レーザ光Laの設定強度を変えた場合でも位相変調量を安定させることができる。
【0058】
図13は、位相変調量を一定とすることができる、レーザ光Laの設定強度と冷却部15の設定温度との関係の例を示すグラフである。同図において、横軸はレーザ光Laの設定強度(W)を表し、縦軸は冷却部15の設定温度(℃)を表す。図中のプロットP4は、位相変調量を一定としたときの設定強度に対する設定温度の値の実測値を示す。図中のQ4はその近似直線である。近似直線Q4は、例えば下記の数式(3)により得られる。なお、Tは冷却部15の設定温度(℃)であり、Iはレーザ光Laの設定強度(W)である。
【数3】

数式(3)から明らかなように、冷却部15の設定温度はレーザ光Laの設定強度に比例する。数式(3)より、例えばレーザ光Laの設定強度が10Wであるときには冷却部15の設定温度を24.5℃とし、レーザ光Laの設定強度が75Wであるときには冷却部15の設定温度を23℃とすることによって、それぞれの位相変調量がほぼ等しくなる。
【0059】
なお、レーザ光Laの設定強度に対する液晶層115の温度の上昇度合いはレーザ光Laの条件(パルス幅、波長、及び繰り返し周波数等)により異なる。よって、レーザ光Laの設定強度に対する位相変調量の変動の度合いもまた、レーザ光Laの態様により異なる。従って、レーザ光Laの設定強度と冷却部15の設定温度との関係を示すデータテーブル、またはレーザ光Laの設定強度と冷却部15の設定温度との関係を示す計算式は、レーザ光Laの条件の組み合わせの数に応じて複数用意されてもよい。
【0060】
図14は、本実施形態による空間光変調器10の制御方法を示すフローチャートである。まず、制御部7は、液晶層115の温度を所定温度に近づける際に、レーザ光Laの設定強度が大きいほど設定温度が所定温度よりも低くなるように、レーザ光Laの設定強度に基づいて冷却部15の設定温度を決定する(決定ステップS11)。このとき、制御部7は、レーザ光Laの設定強度と冷却部15の設定温度との関係を示すデータテーブルを参照しつつ、既知であるレーザ光Laの設定強度に基づいて、冷却部15の設定温度を決定する。或いは、制御部7は、既知であるレーザ光Laの設定強度を、レーザ光Laの設定強度と冷却部15の設定温度との関係を示す計算式に適用することにより、冷却部15の設定温度を決定する。
【0061】
続いて、上記の設定強度に応じた強度を有するレーザ光Laが、光変調素子11の液晶層115に入力される(光入力ステップS12)。レーザ光Laは液晶層115において画素毎に位相変調され、変調後のレーザ光Lbが光変調素子11から出力される。
【0062】
以上に説明した、本実施形態による光変調装置1A、及び本実施形態による空間光変調器10の制御方法によって得られる効果をまとめると次のとおりである。本実施形態の光変調装置1A、および本実施形態による空間光変調器10の制御方法では、制御部7が(または決定ステップS11において)、液晶層115の温度を所定温度に近づける際に、液晶層115に入力されるレーザ光Laの設定強度が大きいほど、冷却部15の設定温度が所定温度よりも低くなるように、レーザ光Laの設定強度に基づいて冷却部15の設定温度を決定する。これにより、液晶層115に入射するレーザ光Laの強度の大小にかかわらず液晶層115の温度を一定に近づけることができるので、共通のルックアップテーブルを用いても、印加電圧の大きさを正しく設定することが可能になり、実際の位相変調量を、目標とする位相変調量に精度良く近づけることができる。よって、本実施形態の光変調装置1A、および本実施形態による空間光変調器10の制御方法によれば、目標とする位相変調量からの実際の位相変調量のずれを低減することができる。また、後述する第2実施形態と異なり、レーザ光Laの強度の大小にかかわらず、位相変調量と階調値との対応を示す参照データ(図17を参照)を共通して用いることができる。
【0063】
本実施形態のように、制御部7は、レーザ光Laの設定強度と冷却部15の設定温度との関係を示すデータテーブルを予め保持し、該データテーブルを用いて設定温度を決定してもよい。或いは、制御部7は、レーザ光Laの設定強度と冷却部15の設定温度との関係を示す計算式を予め保持し、該計算式を用いて設定温度を決定してもよい。これらのうち何れかの場合、制御部7は、レーザ光Laの設定強度に応じて冷却部15の設定温度を決定することを容易にできる。同様に、決定ステップS11において、レーザ光Laの設定強度と冷却部15の設定温度との関係を示すデータテーブルを用いて冷却部15の設定温度を決定してもよい。或いは、決定ステップS11において、レーザ光Laの設定強度と冷却部15の設定温度との関係を示す計算式を用いて冷却部15の設定温度を決定してもよい。これらのうち何れかの場合、決定ステップS11において、レーザ光Laの設定強度に応じて冷却部15の設定温度を決定することを容易にできる。なお、制御部7の機能を外部制御基板17或いは光変調素子11の駆動回路層119に持たせてもよい。
【0064】
本実施形態のように、冷却部15の設定温度はレーザ光Laの設定強度に比例してもよい。本発明者の知見によれば、温度センサ14により検出される温度に対して、液晶層115の温度は、液晶層115に入力されるレーザ光Laの強度に比例して乖離する。冷却部15の設定温度がレーザ光Laの設定強度に比例するように決定されることによって、液晶層115に入射するレーザ光Laの強度の大小にかかわらず液晶層115の温度をより一定に近づけることが可能になり、実際の位相変調量を、目標とする位相変調量に更に精度良く近づけることができる。よって、目標とする位相変調量からの実際の位相変調量のずれを更に低減することができる。
[第2実施形態]
【0065】
続いて、本開示の第2実施形態について説明する。本実施形態では、制御部7が、冷却部15の設定温度を決定する代わりに、複数の画素電極114に印加される電圧の大きさを決定する。すなわち、制御部7は、液晶層115の各画素の位相を所定の位相に設定する際に、レーザ光Laの設定強度が大きいほど、所定の位相に対応する電圧が大きくなるように、複数の画素電極114に印加される電圧の大きさを決定する。
【0066】
図15は、階調値と位相変調量との関係の一例を示すグラフである。横軸は階調値を表し、縦軸は位相変調量(πrad)を表す。同図には、レーザ光Laの光強度が10Wであるときの関係を示す近似直線Q5と、レーザ光Laの光強度が100Wであるときの関係を示す近似直線Q6とが示されている。図15から明らかなように、階調値が同じである場合、レーザ光Laの光強度が大きくなるに従って位相変調量は小さくなる。これは、第1実施形態において説明したように、レーザ光Laの光強度が大きいほど液晶層115の温度が冷却部15の設定温度から乖離して上昇し、その分だけ液晶層115の屈折率が小さくなることに因る。そこで、本実施形態では、レーザ光Laの設定強度が大きいほど、所定の位相に対応する印加電圧を大きくして、レーザ光Laの設定強度の変動にかかわらず位相変調量を一定に保つ。
【0067】
具体的には、制御部7は、外部制御基板17が保持する、画素電極114への印加電圧の大きさと複数の階調値それぞれとの関係を示すルックアップテーブル(例えば図6を参照)において使用される全階調数と、レーザ光Laの設定強度との相関を示す相関データを予め保持する。図16は、そのような相関データの一例を示すグラフである。同図において、横軸はレーザ光Laの光強度を表し、縦軸は全階調数を表す。図中において、プロットP7は、位相変調量を一定としたときの、レーザ光Laの設定強度に対する階調値の実測値を示す。図中のQ7はその近似直線である。図16に示されるように、位相変調量を一定とした場合、レーザ光Laの設定強度と階調値とは、ほぼ線形の関係を有する。制御部7は、このような相関データを用いて、外部制御基板17が保持するルックアップテーブルにおいて使用される全階調数を、レーザ光Laの設定強度に基づいて決定する。
【0068】
また、制御部7は、液晶層115による位相変調量とルックアップテーブルの各階調値との対応を示す参照データを有する。図17の(a)及び(b)は、そのような参照データの例を示す図である。図17の(a)に示される参照データは、全階調数が245である場合における、位相変調量0(rad)~2.1π(rad)の各値と階調値0~244の各値との対応関係を示す。図17の(b)に示される参照データは、全階調数が251である場合における、位相変調量0(rad)~2.1π(rad)の各値と階調値0~250の各値との対応関係を示す。制御部7は、図16に示される相関データを参照して、レーザ光Laの設定強度が70Wである場合には全階調数を245とし、図17の(a)に示される参照データを使用する。また、制御部7は、図16に示される相関データを参照して、レーザ光Laの設定強度が140Wである場合には全階調数を251とし、図17の(b)に示される参照データを使用する。
【0069】
本実施形態の制御部7は、目標とする位相変調量を示す入力値を、光変調装置1Aの外部から入力する。制御部7は、図17に示された参照データを用いて、その入力値を階調値に変換する。制御部7は、変換した階調値を光変調素子11に提供する。光変調素子11は、ルックアップテーブルを利用して、その階調値に応じた印加電圧を決定し、該印加電圧を画素電極114に印加する。
【0070】
図18は、本実施形態による空間光変調器10の制御方法を示すフローチャートである。まず、制御部7は、液晶層115の各画素の位相を所定の位相に設定する際に、レーザ光Laの設定強度が大きいほど、所定の位相に対応する電圧が大きくなるように、各画素電極114に印加される電圧の大きさを決定する(決定ステップS21)。このとき、制御部7は、印加電圧の大きさと複数の階調値それぞれとの関係を示すルックアップテーブル(例えば図6を参照)において使用される全階調数と、レーザ光Laの設定強度との相関を示す相関データ(例えば図16を参照)を用いて、ルックアップテーブルにおいて使用される全階調数を、レーザ光Laの設定強度に基づいて決定する。更に、制御部7は、液晶層115による位相変調量とルックアップテーブルの各階調値との対応を示す参照データ(例えば図17を参照)を有するとともに、位相変調量を示す入力値を光変調装置1Aの外部から入力し、参照データを用いて入力値を階調値に変換する。
【0071】
続いて、上記の設定強度に応じた強度を有するレーザ光Laが、光変調素子11の液晶層115に入力される(光入力ステップS22)。レーザ光Laは液晶層115において画素毎に位相変調され、変調後のレーザ光Lbが光変調素子11から出力される。
【0072】
以上に説明した、本実施形態による光変調装置1A、及び本実施形態による空間光変調器10の制御方法によって得られる効果をまとめると次のとおりである。前述したように、液晶層115に入射するレーザ光Laの強度が大きくなると、レーザ光Laのエネルギーによって液晶層115の温度が大きく上昇し、液晶層115と温度センサ14との間の温度の乖離が大きくなる。また、液晶の屈折率は温度が高くなるほど小さくなるので、或る大きさの電圧が印加された場合における液晶層115による位相変調量は、液晶層115の温度が高くなるほど(すなわち、液晶層115に入力されるレーザ光Laの強度が大きくなるほど)小さくなる。そこで、本実施形態の光変調装置1A、および本実施形態による空間光変調器10の制御方法では、制御部7が(または決定ステップS21において)、液晶層115の各画素の位相を所定の位相に設定する際に、レーザ光Laの設定強度が大きいほど、所定の位相に対応する電圧が大きくなるように、各画素電極114に印加される電圧の大きさを決定する。これにより、レーザ光Laの強度の変動に伴い液晶層115の温度が変動したとしても、実際の位相変調量を、目標とする位相変調量に精度良く近づけることができる。よって、本実施形態による光変調装置1A、及び本実施形態による空間光変調器10の制御方法によれば、目標とする位相変調量からの実際の位相変調量のずれを低減することができる。
【0073】
本実施形態のように、制御部7は(または決定ステップS21において)、各画素電極114に印加される電圧の大きさと複数の階調値それぞれとの関係を示すルックアップテーブルにおいて使用される全階調数と、レーザ光Laの設定強度との相関を示す相関データを用いて、ルックアップテーブルにおいて使用される全階調数を、レーザ光Laの設定強度に基づいて決定してもよい。この場合、制御部7は(または決定ステップS21において)、レーザ光Laの設定強度に応じて印加電圧の大きさを決定することを容易にできる。
【0074】
本実施形態のように、制御部7は(または決定ステップS21において)、位相変調量を示す入力値を光変調装置1Aの外部から入力し、液晶層115による位相変調量とルックアップテーブルの各階調値との対応を示す参照データを用いて、入力値を階調値に変換してもよい。この場合、光変調装置1A(またはこの制御方法)を使用する者が、位相変調量を自在に設定することができる。なお、本実施形態においても、制御部7の機能を外部制御基板17或いは光変調素子11の駆動回路層119に持たせてもよい。
[変形例]
【0075】
上述した第2実施形態では、制御部7が、ルックアップテーブルにおいて使用される全階調数とレーザ光Laの設定強度との相関を示す相関データを用いて、全階調数をレーザ光Laの設定強度に基づいて決定している。これに対し、本変形例では、制御部7が、全階調数が互いに異なる複数のルックアップテーブルを保持する。なお、制御部7が、全階調数とレーザ光Laの設定強度との相関を示す相関データを有する点は、第2実施形態と同じである。本変形例の制御部7は、相関データを用いて、複数のルックアップテーブルのうち使用されるルックアップテーブルを、レーザ光Laの設定強度に基づいて決定し、該ルックアップテーブルを外部制御基板17に提供する。そして、制御部7は、第2実施形態と同様に、位相変調量を示す入力値を光変調装置1Aの外部から入力する。制御部7は、液晶層115による位相変調量と複数のルックアップテーブルそれぞれの各階調値との対応を示す複数の参照データを保持し、複数の参照データのうち、使用されるルックアップテーブルに対応する参照データを用いて、入力値を階調値に変換する。
【0076】
本変形例のように、制御部7は(または決定ステップS21において)、全階調数が互いに異なる複数のルックアップテーブルのうち使用されるルックアップテーブルを、全階調数とレーザ光Laの設定強度との相関を示す相関データを用いて、レーザ光Laの設定強度に基づいて決定してもよい。この場合、制御部7は(または決定ステップS21において)、レーザ光Laの設定強度に応じて印加電圧の大きさを決定することを容易にできる。
【0077】
本変形例のように、制御部7は(または決定ステップS21において)、位相変調量を示す入力値を光変調装置1Aの外部から入力し、液晶層115による位相変調量と複数のルックアップテーブルそれぞれの各階調値との対応を示す複数の参照データのうち、使用されるルックアップテーブルに対応する参照データを用いて、入力値を階調値に変換してもよい。この場合、光変調装置1A(またはこの制御方法)を使用する者が、位相変調量を自在に設定することができる。なお、本変形例においても、制御部7の機能を外部制御基板17或いは光変調素子11の駆動回路層119に持たせてもよい。
【0078】
本発明による光変調装置および空間光変調器の制御方法は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、光変調装置の制御部は、第1実施形態に係る制御部7の機能と、第2実施形態に係る制御部7の機能とを共に備えてもよい。すなわち、制御部は、レーザ光Laの設定強度が大きいほど冷却部15の設定温度を低くすることと、レーザ光Laの設定強度が大きいほど所定の位相に対応する印加電圧を大きくすることとを、同時に行ってもよい。
【0079】
また、上述した第1実施形態において、制御部7は、レーザ光Laの設定強度と冷却部15の設定温度との関係を示すデータテーブルまたは計算式を用いて冷却部15の設定温度を決定しているが、冷却部15の設定温度を決定する方式はこれに限られない。また、上述した第1実施形態において、冷却部15の設定温度はレーザ光Laの設定強度に比例しているが、冷却部15の設定温度とレーザ光Laの設定強度との関係は比例関係に限られない。
【0080】
また、上述した各実施形態では、冷却部としてペルチェ素子を例示しているが、冷却部は他の構成(例えば水冷板による水冷方式など)を有してもよい。
【符号の説明】
【0081】
1A…光変調装置、2…試験装置、3…光源、4…ミラー、5…結像光学系、6…集光レンズ、7…制御部、10…空間光変調器、11…光変調素子、11a…光入出射面、11b…裏面、12…基板、12a…第1面、12b…第2面、12c…開口、13…金属ブロック、14…温度センサ、15…冷却部、16…温度調整部、17…外部制御基板、20…容器、21…筐体、21a,21b,21d,21e…側面、21c…光学窓、21f…開口、22…放熱器、23…ファン、31…レーザ光源、32…1/2波長板、33,38…偏光ビームスプリッタ、34,39…光吸収体、35…ビームエキスパンダ、36a,36b…誘電体ミラー、37…ホモジナイザ、40…アパーチャ、41,42…反射面、43…パワーメータ、51,52…レンズ、110…シリコン基板、112…ガラス基板、112a…表面、112b…裏面、113…透明導電膜、114…画素電極、115…液晶層、115a,115b…配向膜、116…透明層、117…誘電体多層膜、118…遮光層、119…駆動回路層、B…対象物、D1,D2…方向、La,Lb…レーザ光、Lc,Ld…試験光、Q1~Q6…近似直線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図16
図17
図18