(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044426
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/639 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
H01R13/639 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149932
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松浦 純弥
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA05
5E021FA09
5E021FA16
5E021FB07
5E021FB20
5E021FC09
5E021HC09
5E021KA03
(57)【要約】
【課題】ロックアームの基端部に応力が集中することを回避でき、ロックフィーリングを向上させることが可能なコネクタを提供する。
【解決手段】ハウジング20は、ハウジング本体28とロックアーム31とを有している。ロックアーム31は、ハウジング本体28の前側の端部に連結される基端部38と、基端部38から後方に片持ち状に延び、後端側に自由端部42を有するアーム本体39と、アーム本体39の前後方向の途中に設けられ、相手ハウジング80の相手ロック部82に係止されるロック部41と、を有している。ハウジング本体28は、その上面である中央側上面部32に、嵌合過程においてアーム本体39の自由端部42に接触する当接部51を有している。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手ハウジングに嵌合可能なハウジングを備え、
前記ハウジングは、
前記相手ハウジングおよび前記ハウジングを嵌合状態に保持する弾性変位可能なロックアームと、
前記ハウジングおよび前記相手ハウジングの嵌合過程において前記ロックアームが弾性変位する方向で前記ロックアームに対向する一面を有するハウジング本体と、を有し、
前記相手ハウジングに対する前記ハウジングの嵌合方向前側を前側とした場合に、
前記ロックアームは、
前記ハウジング本体の前記前側の端部に連結される基端部と、
前記基端部から後方に片持ち状に延び、後端側に自由端部を有するアーム本体と、
前記アーム本体の前後方向の途中に設けられ、前記相手ハウジングの相手ロック部に係止されるロック部と、を有し、
前記ハウジング本体は、前記一面に、前記嵌合過程において前記アーム本体の前記自由端部に接触する当接部を有している、コネクタ。
【請求項2】
前記嵌合過程において前記アーム本体が前記一面側に弾性変位した状態から前記当接部が前記自由端部に接触するように設定されている、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記当接部は、前記一面に突設されている、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記アーム本体は、前記前後方向に関して前記自由端部と前記ロック部との間に、前記一面側と反対側に突出する解除操作部を有している、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は開示されたコネクタは、互いに嵌合可能な雌コネクタハウジングおよび雄コネクタハウジングを備えている。雌コネクタハウジングには、ロックアームが設けられている。ロックアームは、雌コネクタハウジングの上面に連結された支持脚部から後方に片持ち状に延びる形状である。両コネクタハウジングの嵌合過程で、ロックアームが弾性変位する。ロックアームの後端部は、雌コネクタハウジングの上面に近づくものの、雌コネクタハウジングの上面に接触することはない。両コネクタハウジングの嵌合時に、ロックアームが所定の弾性反力をもって弾性復帰して雄コネクタハウジングに係止される。これにより、両コネクタハウジングが嵌合状態に保持される。ロックアームのロックを解除する際には、ロックアームの後端部が下方に押圧される。特許文献1の場合、ロックアームの後端部は、限界位置まで押し下げられて雌コネクタハウジングの上面に当接するようになっている。ロックアームを備えたコネクタは、特許文献2、3にも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-55259号公報
【特許文献2】特開2001-250636号公報
【特許文献3】特開2006-179266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のようにロックアームが前端側の基端部(特許文献1の支持脚部)から後方に片持ち状に延びる場合、コネクタ嵌合過程でロックアームが弾性変位するときに、基端部に応力が集中する懸念がある。例えば、コネクタの小型化に起因し、基端部の厚み(断面係数)が減少すると、基端部が折損する懸念がある。
【0005】
これに対し、ロックアームが前後両端をハウジングの本体部分に連結させた両持ち梁状をなっていれば、ロックアームの前後両端側に応力を分散させることができる。さらに、ロックアームが両持ち梁状をなっていれば、コネクタの嵌合時におけるロックアームの弾性反力を高めることができ、ロックフィーリングを向上させることができる。しかし、ロックアームの弾性反力が高くなり過ぎると、ロックアームの前後両端側にも応力が集中する懸念があり、且つ嵌合抵抗が過大になって作業性の悪化を招く懸念がある。
【0006】
そこで、本開示は、ロックアームの基端部に応力が集中することを回避でき、ロックフィーリングの向上を図ることが可能なコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のコネクタは、相手ハウジングに嵌合可能なハウジングを備え、前記ハウジングは、前記相手ハウジングおよび前記ハウジングを嵌合状態に保持する弾性変位可能なロックアームと、前記ハウジングおよび前記相手ハウジングの嵌合過程において前記ロックアームが弾性変位する方向で前記ロックアームに対向する一面を有するハウジング本体と、を有し、前記相手ハウジングに対する前記ハウジングの嵌合方向前側を前側とした場合に、前記ロックアームは、前記ハウジング本体の前記前側の端部に連結される基端部と、前記基端部から後方に片持ち状に延び、後端側に自由端部を有するアーム本体と、前記アーム本体の前後方向の途中に設けられ、前記相手ハウジングの相手ロック部に係止されるロック部と、を有し、前記ハウジング本体は、前記一面に、前記嵌合過程において前記アーム本体の前記自由端部に接触する当接部を有している。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ロックアームの基端部に応力が集中することを回避でき、ロックフィーリングを向上させることが可能なコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態1に係るコネクタにおいて、ハウジングが相手ハウジングに嵌合された状態を示す断面図である。
【
図4】
図4は、ハウジングにおけるロックアームの部分を拡大して示す断面図である。
【
図5】
図5は、ロックアームのロック部と相手ロック部との摺動が開始された状態を示す
図4対応図である。
【
図6】
図6は、ロックアームが最大限に弾性変位した状態を示す
図4対応図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のコネクタは、
(1)相手ハウジングに嵌合可能なハウジングを備え、前記ハウジングは、前記相手ハウジングおよび前記ハウジングを嵌合状態に保持する弾性変位可能なロックアームと、前記ハウジングおよび前記相手ハウジングの嵌合過程において前記ロックアームが弾性変位する方向で前記ロックアームに対向する一面を有するハウジング本体と、を有し、前記相手ハウジングに対する前記ハウジングの嵌合方向前側を前側とした場合に、前記ロックアームは、前記ハウジング本体の前記前側の端部に連結される基端部と、前記基端部から後方に片持ち状に延び、後端側に自由端部を有するアーム本体と、前記アーム本体の前後方向の途中に設けられ、前記相手ハウジングの相手ロック部に係止されるロック部と、を有し、前記ハウジング本体は、前記一面に、前記嵌合過程において前記アーム本体の前記自由端部に接触する当接部を有している。
【0011】
上記構成によれば、ハウジングおよび相手ハウジングの嵌合過程において、ロックアームに作用する応力が基端部側と自由端部側とに分散されるので、基端部側のみに応力が集中することを回避できる。
また、アーム本体の自由端部は当接部に接触するものの、当接部と一体化していないので、自由端部側に作用する応力を抑えることができ、且つロックアームの弾性反力が高くなり過ぎることを回避できる。その結果、ハウジングおよび相手ハウジングの嵌合時に良好なロックフィーリングを得ることができる。
【0012】
(2)前記嵌合過程において前記アーム本体が前記一面側に弾性変位した状態から前記当接部が前記自由端部に接触するように設定されていることが好ましい。
上記構成によれば、アーム本体の自由端部が当接部に接触するまでの間、コネクタの嵌合抵抗を抑えることができる。
【0013】
(3)前記当接部は、前記一面に突設されていると良い。
上記構成によれば、当接部の突出寸法等を変更するだけで、アーム本体の自由端部が当接部と接触するタイミングや自由端部と当接部との間の接触抵抗を簡単に調整することができる。
【0014】
(4)前記アーム本体は、前記前後方向に関して前記自由端部と前記ロック部との間に、前記一面側と反対側に突出する解除操作部を有していると良い。
本開示のように、アーム本体の自由端部が当接部に接触する構成であると、自由端部側の部分を押圧してもロックアームのロックを解除できず、ハウジングおよび相手ハウジングを離脱させることができない。その点、上記構成によれば、アーム本体の自由端部とロック部との間に解除操作部が配置されているので、解除操作部を押圧することにより、ロックアームのロックを解除でき、ハウジングおよび相手ハウジングを離脱させることができる。
【0015】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0016】
<実施形態1>
本開示の実施形態1に係るコネクタ10は、
図1に示すように、ハウジング20と、ハウジング20に収容される端子金具60と、を備えている。ハウジング20は、相手ハウジング80に嵌合される。なお、以下の説明において、前後方向については、ハウジング20が相手ハウジング80に嵌合される側を前側とする。
図1の左側が前側(
図1-
図3の符号Xを参照)になる。上下方向は、
図1の上下方向を基準とする。
図1の上側が上側(
図1-
図3の符号Zを参照)になる。上下方向は、高さ方向と同義である。左右方向は、前側から見た場合の左右方向を基準とする。ハウジング20を背面視した
図3の左側が右側(
図1-
図3の符号Yを参照)になる。左右方向は、幅方向と同義である。これらの方向の基準は、便宜的なものであり、コネクタ10が図示しない車両等に搭載された状態における方向の基準と必ずしも一致しない。
また、以下の説明において、ハウジング20および相手ハウジング80の嵌合時は、ハウジング20および相手ハウジング80の嵌合完了時と同義である。ハウジング20および相手ハウジング80の嵌合過程は、ハウジング20および相手ハウジング80の嵌合開始時から嵌合完了時に至るまでの間のことを言い、嵌合開始時と嵌合完了時を含まない。
【0017】
(相手ハウジング)
相手ハウジング80は合成樹脂製であって、
図1に示すように、回路基板100の表面に配置されている。相手ハウジング80は、筒状をなし、奥壁に相手端子金具85を装着させている。相手端子金具85は、ピン状またはタブ状をなし、相手ハウジング80の内部に突出する端子接続部86を有している。相手端子金具85は、相手ハウジング80の外部で屈曲させられ、回路基板100に半田付けして接続される。相手ハウジング80の上壁83の内面には、相手ロック部82が突出して形成されている。
【0018】
(ハウジングおよび端子金具)
ハウジング20は合成樹脂製であって、上下方向に積層される上側ハウジング21および下側ハウジング22によって構成されている。
図2および
図3に示すように、上側ハウジング21および下側ハウジング22は、左右方向に並ぶ複数のキャビティ23を有している。また、
図1に示すように、上側ハウジング21および下側ハウジング22は、各キャビティ23の内部に突出するランス24と、各キャビティ23に対応して配置されるリテーナ部25と、を有している。上側ハウジング21のリテーナ部25は、上側ハウジング21および下側ハウジング22の組み付けによって下側ハウジング22のキャビティ23に進入する。下側ハウジング22のリテーナ部25は、上側ハウジング21および下側ハウジング22の組み付けによって上側ハウジング21のキャビティ23に進入する。
【0019】
上側ハウジング21および下側ハウジング22の組み付け前、上側ハウジング21および下側ハウジング22の各キャビティ23には、後方から端子金具60が挿入される。各キャビティ23に挿入された端子金具60は、ランス24によって一次的に係止される。
【0020】
図1に示すように、上側ハウジング21および下側ハウジング22の組み付け後、下側ハウジング22のキャビティ23に挿入された端子金具60は、上側ハウジング21のリテーナ部25によって二次的に係止される。同様に、上側ハウジング21のキャビティ23に挿入された端子金具60は、下側ハウジング22のリテーナ部25によって二次的に係止され、上側ハウジング21に抜け止め状態に収容される。また、上側ハウジング21および下側ハウジング22の組み付け後、上側ハウジング21の各ランス24と下側ハウジング22の各ランス24とが背合わせ状態で対向し、各ランス24の撓み動作が阻止される。これにより、各端子金具60は、上側ハウジング21および下側ハウジング22に抜け止め状態に保持される。
【0021】
図2に示すように、下側ハウジング22は、左右両側の端部から上方に突出する一対のロック片26を有している。上側ハウジング21は、左右両側の端面に、各ロック片26に対応する位置にロックリブ27を有している。各ロック片26が各ロックリブ27を係止することで、上側ハウジング21および下側ハウジング22の組み付け状態(積層状態)が保持される。
【0022】
端子金具60は、導電金属製の雌型端子であって、
図1に示すように、筒状の箱部61と、箱部61より後方に配置されるバレル部62と、を有している。箱部61は、ハウジング20および相手ハウジング80の嵌合時、相手端子金具85の端子接続部86を受け入れ、相手端子金具85に電気的に接続される。バレル部62は、電線70の端末部に圧着して電気的および機械的に接続される。
【0023】
上側ハウジング21(ハウジング20)は、各キャビティ23、ランス24およびリテーナ部25を有するハウジング本体28と、ハウジング本体28から突出するロックアーム31と、を有している。
図2および
図3に示すように、ハウジング本体28において、左右真ん中のキャビティ23Aは、左右両側のキャビティ23Bより低い位置に配置されている。下側ハウジング22は、左右真ん中のキャビティ23Aに対応する位置に、このキャビティ23Aの下端部分を嵌め入れる嵌合凹部29を有している。
【0024】
図3に示すように、ハウジング本体28の上面(一面)は、真ん中のキャビティ23Aに対応する中央側上面部32と、左右両側のキャビティ23Bに対応する一対の端側上面部33と、を有している。中央側上面部32は、各端側上面部33より一段落ちて配置されている。
【0025】
図2および
図3に示すように、ハウジング本体28は、各端側上面部33の端部から上方に突出する側壁部34と、各側壁部34の上端間に架け渡される覆い壁部35と、各端側上面部33から立ち上がって側壁部34および覆い壁部35に連結される一対の閉塞壁36と、を有している。各側壁部34は、ハウジング本体28の後側に形成されている。
図2に示すように、覆い壁部35の後端には、平面視で湾曲状に凹む退避部37が形成されている。
【0026】
図4に示すように、ロックアーム31は、中央側上面部32の前端部から起立する基端部38と、基端部38の上端側から後方に延びるアーム本体39と、を有している。また、ロックアーム31は、アーム本体39の前後方向途中から上方に突出するロック部41と、後端部に位置する自由端部42と、前後方向に関して自由端部42とロック部41との間の位置から上方に突出する解除操作部43と、を有している。
【0027】
図6に示すように、ハウジング20および相手ハウジング80の嵌合過程において、ロックアーム31は、基端部38を含む前端部位55および後述する後端部位56を支点としてアーム本体39の前後方向の中間部(ロック部41に対応する部分)が中央側上面部32に近づく方向(下方向)に弾性変位する。ハウジング20および相手ハウジング80の嵌合完了時に、ロックアーム31が弾性復帰し、アーム本体39が元の位置に向けて上昇し、アーム本体39の上面においてロック部41に隣接する打撃面44が相手ハウジング80の相手ロック部82を叩くとともに、ロック部41が相手ロック部82に係止可能に配置される(
図7を参照)。これにより、ハウジング20および相手ハウジング80が嵌合状態に保持される。
【0028】
アーム本体39および基端部38は、板状をなし、
図2に示すように、左右方向に一定の幅寸法を有している。
図4に示すように、アーム本体39は、ロック部41を挟んだ前後両側に前部45および後部46を有している。アーム本体39の後部46は、アーム本体39の前部45より上下方向に薄くされ、ロックアーム31が自然状態にあるときに、中央側上面部32に平行に対向して配置されている。
【0029】
解除操作部43は、アーム本体39の後部46の上面に連結されている。
図2および
図3に示すように、解除操作部43は、角筒状をなし、前後方向に貫通する貫通孔47を有している。
図3に示すように、ロック部41は、貫通孔47を通して後方から視認可能とされている。解除操作部43の上面には、前後方向および左右方向に沿って平坦な押圧面48が形成されている。解除操作部43の押圧面48は、覆い壁部35の退避部37より後方に露出して配置されている。押圧面48が上方から押圧されることにより、ロックアーム31のロックを解除することが可能とされている。
【0030】
図3および
図4に示すように、ハウジング本体28の上面には、当接部51が設けられている。当接部51は、左右方向に延びるリブ状をなし、ハウジング本体28の中央側上面部32に突設されている。当接部51の上面は、左右方向に沿った当て面52として構成される。当接部51の当て面52は、ロックアーム31が自然状態にあるときに、アーム本体39の自由端部42の下面との間に隙間を置いて、自由端部42の下面に平行に対向して配置されている。そして、当接部51の当て面52は、ハウジング20および相手ハウジング80の嵌合過程で、アーム本体39の自由端部42の下面に対して面接触または線接触状態で接触する。
図2に示すように、基端部38の左右方向の中間部には、当接部51と対向する位置に、抜き孔53が貫通して形成されている。当接部51は抜き孔53を通して前方から視認可能とされている(
図3を参照)。この抜き孔53は、断面矩形状(当接部51を投影した断面形状)をなし、当接部51の前面を成形する図示しない金型の引き抜きに伴って形成される。
【0031】
(コネクタの作用)
嵌合作業を開始するに際し、ハウジング20が相手ハウジング80の内部に挿入される。ハウジング20の相手ハウジング80の嵌合過程において、ロック部41が相手ロック部82に干渉して摺動し、アーム本体39が中央側上面部32に近づくように傾動して、ロックアーム31が前端部位55を支点として弾性変位する。
図5に示すように、ロック部41と相手ロック部82との摺動が開始された初期段階では、アーム本体39の自由端部42が当接部51から離間し、基端部38のみが撓み動作の支点を構成する。よって、この初期段階では、ロックアーム31が見かけ上の両持ち梁状態になることがなく、ロックアーム31の弾性反力が特に大きくなることがないので、コネクタ10の嵌合抵抗を抑えることができる。
【0032】
コネクタ10の嵌合が進み、ロック部41と相手ロック部82との摺動動作が継続すると、アーム本体39が上記より中央側上面部32に近づくように傾動し、ロックアーム31が上記より大きく弾性変位する。これにより、アーム本体39の自由端部42の下面における左右方向の中間部が当接部51の当て面52に左右方向に沿って接触し、自由端部42のそれ以上の下降が阻止される。ここで、ロックアーム31は、前端側の基端部38がハウジング本体28に一体に連結され、後端側の自由端部42が当接部51に接触して支持された状態になる。つまり、ロックアーム31は、見かけ上、前後両側の端部がハウジング本体28に支持された両持ち梁状態になる。
【0033】
図6に示すように、ロック部41が相手ロック部82の頂面84(下端面)に至って下方に大きく沈み込むと、ロックアーム31が最大限に弾性変位して前端部位55(基端部38とハウジング本体28の前端側との連結部位)と後端部位56(自由端部42と当接部51との接触部位)とを支点として弓なりに弾性変位する。後端部位56は、自由端部42と当接部51との摺動変位を許容するので、前端部位55と異なり、固定端にはならない。よって、ロックアーム31の弾性反力は、後端部位56がハウジング本体28に接触しない片持ち梁のロックアーム31の弾性反力よりは大きいものの、前後両側が固定端となる両持ち梁のロックアーム31の弾性反力より小さくなる。
また、上記したロックアーム31の弾性変位時、ロックアーム31に作用する応力は、前端部位55に応力が集中することがなく、前端部位55と後端部位56とに分散される。
【0034】
その後、ロック部41が相手ロック部82の頂面84を通過すると、ロックアーム31が復帰方向に弾性変位し、アーム本体39が元の水平姿勢に向けて上昇する。本実施形態1の場合、
図7に示すように、自由端部42は当接部51の当て面52に接触する状態を維持する。そして、ロック部41が相手ロック部82を係止可能な位置に至ることで、ハウジング20および相手ハウジング80が嵌合状態に保持される。このとき、アーム本体39の打撃面44が相手ロック部82の頂面84に突き当たってロック音を発生させる。よって、ハウジング20および相手ハウジング80が嵌合されたことを聴覚によって検知することができる。また、見かけ上、両持ち梁状態のロックアーム31が適度な弾性反力でロック部41に係止されることにより、作業者が良好なロックフィーリングを得ることができる。
【0035】
嵌合状態にあるハウジング20および相手ハウジング80を離脱させるには、解除操作部43の押圧面48が上方から押圧され、解除操作部43が押し下げられる。すると、アーム本体39の前後方向の中間部が下降し、ロックアーム31が前端部位55および後端部位56を支点として弾性変位する(
図6を参照)。こうしてロックアーム31が見かけ上、両持ち梁状態で弾性変位した状態で、ロック部41が相手ロック部82から離間する。その状態からハウジング20を相手ハウジング80から引き離すことにより、ハウジング20および相手ハウジング80を離脱させることが可能となる。
【0036】
本実施形態1によれば、ハウジング20および相手ハウジング80の嵌合過程において、ロックアーム31に作用する応力が前端部位55(基端部38側)と後端部位56(自由端部42側)とに分散されるので、基端部38側のみに応力が集中することを回避できる。その結果、コネクタ10が小型になっても、基端部38が折損等する事態を防止できる。
【0037】
また、アーム本体39の自由端部42は当接部51に接触するものの、当接部51と一体化していないので、自由端部42側に作用する応力を抑えることができ、且つロックアーム31の弾性反力が高くなり過ぎることを回避できる。その結果、ハウジング20および相手ハウジング80の嵌合時に良好なロックフィーリングを得ることができる。特に、当接部51がハウジング本体28の中央側上面部32に突設されているため、当接部51の突出寸法等を変更するだけで、アーム本体39の自由端部42が当接部51と接触するタイミングや自由端部42と当接部51との間の接触抵抗を簡単に調整することができる。
【0038】
また、ハウジング20および相手ハウジング80の嵌合過程においてアーム本体39が中央側上面部32側に弾性変位した状態から当接部51が自由端部42に接触するため、アーム本体39の自由端部42が当接部51に接触するまでの間、コネクタ10の嵌合抵抗を抑えることができる。
【0039】
さらに、アーム本体39が自由端部42とロック部41との間に上方に突出する解除操作部43を有しているため、ロックアーム31のロックを解除する操作を支障なく行うことができる。
【0040】
[本開示の他の実施形態]
今回開示された上記実施形態1はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えるべきである。
上記実施形態1の場合、ロックアームの基端部は、ハウジング本体の上面における中央側上面部に連結されていた。これに対し、他の実施形態によれば、ロックアームの基端部は、ハウジング本体における中央側上面部と端側上面部との間で左右方向に対向する一対の側面部分に連結されていても良く、あるいは、各側壁部の相互の対向面に連結されていても良い。
上記実施形態1の場合、ハウジングが相手ハウジングに嵌合された状態で、アーム本体の自由端部が当接部の当て面に接触していた。これに対し、他の実施形態によれば、ハウジングが相手ハウジングに嵌合された状態で、アーム本体の自由端部が当接部の当て面から離間していても良い。
上記実施形態1の場合、当接部は、ハウジング本体の上面に突設されていた。これに対し、他の実施形態によれば、当接部は、ハウジング本体の上面に、突設されずに平坦に形成されていても良く、あるいは凹設されていても良い。
上記実施形態1の場合、ハウジングは、上側ハウジングおよび下側ハウジングに分割可能に構成されていた。これに対し、他の実施形態によれば、ハウジングは、上側ハウジングおよび下側ハウジングに分割不能な一体型のハウジングであっても良い。ハウジング本体は、一体型のハウジングにおいて、ロックアームを除く部分によって構成されていると良い。
【符号の説明】
【0041】
10…コネクタ
20…ハウジング
21…上側ハウジング
22…下側ハウジング
23…キャビティ
23A…左右真ん中のキャビティ
23B…左右両側のキャビティ
24…ランス
25…リテーナ部
26…ロック片
27…ロックリブ
28…ハウジング本体
29…嵌合凹部
31…ロックアーム
32…中央側上面部
33…端側上面部
34…側壁部
35…覆い壁部
36…閉塞壁
37…退避部
38…基端部
39…アーム本体
41…ロック部
42…自由端部
43…解除操作部
44…打撃面
45…前部
46…後部
47…貫通孔
48…押圧面
51…当接部
52…当て面
53…抜き孔
55…前端部位
56…後端部位
60…端子金具
61…箱部
62…バレル部
70…電線
80…相手ハウジング
82…相手ロック部
83…上壁
84…頂面
85…相手端子金具
86…端子接続部
100…回路基板