(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044432
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】巻取装置及び印刷装置
(51)【国際特許分類】
B65H 23/038 20060101AFI20240326BHJP
B41J 15/04 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B65H23/038 Z
B41J15/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149940
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 聡
【テーマコード(参考)】
2C060
3F104
【Fターム(参考)】
2C060BA04
2C060BC03
2C060BC04
2C060BC42
2C060BC47
2C060BC48
2C060BC52
2C060BC99
3F104CA15
3F104CA27
3F104CA34
(57)【要約】
【課題】媒体を巻き取る際の巻きずれを抑制することが可能な巻取装置及び印刷装置を提供する。
【解決手段】巻取ユニット40は、Y軸に沿う軸回りに回転して、搬送される長尺の媒体Mを巻き取る巻取ローラー41と、Y軸に沿って延在し、巻取ローラー41に巻き取られる前の媒体Mが巻き掛けられる巻取ガイド部材44と、巻取ガイド部材44の一部を、巻取ガイド部材44に巻き掛けられた媒体Mに向かって押圧して、巻取ガイド部材44を媒体Mに向かって凸状に変形させる押圧部材80と、を備え、押圧部材80は、Y軸に沿って移動可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に沿う軸回りに回転して、搬送される長尺の媒体を巻き取る巻取ローラーと、
前記第1方向に沿って延在し、前記巻取ローラーに巻き取られる前の前記媒体が巻き掛けられるガイド部材と、
前記ガイド部材の一部を、前記ガイド部材に巻き掛けられた前記媒体に向かって付勢して、前記ガイド部材を前記媒体に向かって凸状に変形させる付勢部材と、を備え、
前記付勢部材は、前記第1方向に沿って移動可能であることを特徴とする巻取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の巻取装置であって、
前記ガイド部材は、前記媒体の搬送に従動して回転し、
前記付勢部材は、前記ガイド部材の回転に従動して回転する押圧ローラーを有し、前記押圧ローラーによって前記ガイド部材を押圧することを特徴とする巻取装置。
【請求項3】
請求項2に記載の巻取装置であって、
前記押圧ローラーは、前記ガイド部材を押圧する方向に沿う軸回りに回動可能であることを特徴とする巻取装置。
【請求項4】
請求項1に記載の巻取装置であって、
前記ガイド部材は、前記媒体の搬送に従動して回転しないことを特徴とする巻取装置。
【請求項5】
請求項1に記載の巻取装置であって、
前記付勢部材は、前記ガイド部材を付勢する付勢量を調整可能であることを特徴とする巻取装置。
【請求項6】
請求項1に記載の巻取装置であって、
前記第1方向に沿って延在し、前記付勢部材を支持する支持梁を備え、
前記付勢部材は、前記支持梁に沿って移動可能であることを特徴とする巻取装置。
【請求項7】
請求項6に記載の巻取装置であって、
前記支持梁には、前記第1方向に沿って目盛りが付されていることを特徴とする巻取装置。
【請求項8】
請求項1に記載の巻取装置であって、
前記ガイド部材には、前記第1方向に沿って目盛りが付されていることを特徴とする巻取装置。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の巻取装置であって、
前記媒体の前記第1方向の長さ、及び前記媒体の前記第1方向の位置の少なくとも一方を表す媒体情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記媒体情報に基づいて、前記付勢部材を配置すべき位置に対応する目盛りの値を報知する報知部と、を備えることを特徴とする巻取装置。
【請求項10】
請求項1に記載の巻取装置であって、
前記付勢部材は、前記ガイド部材の前記第1方向に沿う複数の位置を前記媒体に向かって付勢することを特徴とする巻取装置。
【請求項11】
請求項1に記載の巻取装置であって、
前記付勢部材を前記第1方向に沿って移動させる駆動部を備えることを特徴とする巻取装置。
【請求項12】
請求項11に記載の巻取装置であって、
前記駆動部による駆動を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
前記媒体の前記第1方向の長さ、及び前記媒体の前記第1方向の位置の少なくとも一方を表す媒体情報を取得し、
前記駆動部を制御して、取得した前記媒体情報に応じた位置に前記付勢部材を移動させることを特徴とする巻取装置。
【請求項13】
長尺の媒体に印刷を行う印刷部と、
第1方向に沿う軸回りに回転して、前記印刷が行われた前記媒体を巻き取る巻取ローラーと、
前記第1方向に沿って延在し、前記印刷が行われた後で且つ前記巻取ローラーに巻き取られる前の前記媒体が巻き掛けられる第1ガイド部材と、
前記第1ガイド部材の一部を、前記第1ガイド部材に巻き掛けられた前記媒体に向かって付勢して、前記第1ガイド部材を前記媒体に向かって凸状に変形させる第1付勢部材と、を備え、
前記第1付勢部材は、前記第1方向に沿って移動可能であることを特徴とする印刷装置。
【請求項14】
請求項13に記載の印刷装置であって、
前記第1方向に沿う軸回りに回転して、前記印刷部に向けて前記媒体を繰り出す供給ローラーと、
前記第1方向に沿って延在し、前記供給ローラーから繰り出された後で且つ前記印刷がなされる前の前記媒体が巻き掛けられる第2ガイド部材と、
前記第2ガイド部材の一部を、前記第2ガイド部材に巻き掛けられた前記媒体に向かって付勢して、前記第2ガイド部材を前記媒体に向かって凸状に変形させる第2付勢部材と、を備え、
前記第2付勢部材は、前記第1方向に沿って移動可能であることを特徴とする印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺の媒体を巻き取る巻取装置、及びこの巻取装置を備える印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
長尺の媒体を搬送する装置において、長尺の媒体の幅方向へのずれを抑制する技術が種々提案されている。特許文献1には、搬送されるテープが巻き掛けられて、テープの搬送をガイドするテープガイドが記載されている。このテープガイドは、円筒状のガイド部材であり、テープと接触するガイド面は、テープの幅方向において、中央が頂部となるような円弧状に湾曲している。このため、このテープガイドに巻き掛けられたテープの張力は、ガイド面の幅方向の中央で最大となる。この結果、ガイド面上のテープには、幅方向の張力を均等に保つために、テープの幅方向の中央がガイド面の幅方向の中央に移動するセンタリング効果が生じるため、テープの幅方向のずれが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、幅が異なる複数種類の長尺の媒体を搬送可能な装置において、特許文献1に記載のガイド部材を採用すると、長尺の媒体の幅に関わらず、長尺の媒体の幅方向の中央をガイド部材の幅方向の中央に合わせて搬送させる必要がある。このため、長尺の媒体の幅方向の中央がガイド部材の幅方向の中央からずれた状態で長尺の媒体がセットされた場合や、長尺の媒体の幅方向の中央をガイド部材の幅方向の中央以外の位置に合わせたい場合には、幅方向のずれを抑制することができなかった。つまり、幅が異なる複数種類の媒体を巻き取り可能な巻取装置においては、巻き取りの進行に伴って媒体が幅方向にずれる巻きずれが生じてしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
巻取装置は、第1方向に沿う軸回りに回転して、搬送される長尺の媒体を巻き取る巻取ローラーと、前記第1方向に沿って延在し、前記巻取ローラーに巻き取られる前の前記媒体が巻き掛けられるガイド部材と、前記ガイド部材の一部を、前記ガイド部材に巻き掛けられた前記媒体に向かって付勢して、前記ガイド部材を前記媒体に向かって凸状に変形させる付勢部材と、を備え、前記付勢部材は、前記第1方向に沿って移動可能であることを特徴とする。
【0006】
印刷装置は、長尺の媒体に印刷を行う印刷部と、第1方向に沿う軸回りに回転して、前記印刷が行われた前記媒体を巻き取る巻取ローラーと、前記第1方向に沿って延在し、前記印刷が行われた後で且つ前記巻取ローラーに巻き取られる前の前記媒体が巻き掛けられる第1ガイド部材と、前記第1ガイド部材の一部を、前記第1ガイド部材に巻き掛けられた前記媒体に向かって付勢して、前記第1ガイド部材を前記媒体に向かって凸状に変形させる第1付勢部材と、を備え、前記第1付勢部材は、前記第1方向に沿って移動可能であることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態のプリンターの構成を示す断面模式図。
【
図7】第2実施形態のプリンターの構成を示すブロック図。
【
図8】第3実施形態のプリンターの構成を示す断面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.第1実施形態
以下、第1実施形態のプリンター10について説明する。
図1は、第1実施形態のプリンター10の構成を示す断面模式図である。
図1に示すように、プリンター10は、液体であるインクを媒体Mに吐出して印刷を行うインクジェットプリンターである。プリンター10は、長尺の媒体Mに印刷を行う印刷ユニット20と、媒体Mを印刷ユニット20に送出する供給ユニット30と、印刷後の媒体Mを巻き取る巻取ユニット40とを備えている。プリンター10は、印刷装置に相当し、印刷ユニット20は、印刷部に相当する。また、巻取ユニット40は、巻取装置に相当する。
【0009】
図1を含む各図には、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸が示されている。X軸は、プリンター10の設置面に対して平行であり、プリンター10の幅方向に対応する。Y軸は、プリンター10の設置面に対して平行であり、プリンター10の奥行き方向及び媒体Mの幅方向に対応する。Z軸は、プリンター10の設置面に対して垂直であり、プリンター10の高さ方向に対応する。
【0010】
以降、X軸に平行な+X方向は、供給ユニット30から巻取ユニット40へ向かう方向である。
図1の場合、+X方向は、図の左に向かう方向である。X軸に平行な-X方向は、+X方向の反対の方向である。Y軸に平行な+Y方向は、供給ユニット30に対して巻取ユニット40を左に配置したときの、プリンター10の奥から手前に向かう方向である。
図1の場合、+Y方向は、図の手前に向かう方向である。Y軸に平行な-Y方向は、+Y方向の反対の方向である。Z軸に平行な+Z方向は、プリンター10の設置面から上方に向かう方向である。
図1の場合、+Z方向は、図の上に向かう方向である。Z軸に平行な-Z方向は、+Z方向の反対の方向である。なお、±Y方向は、Y軸に沿う方向であり、第1方向に相当する。つまり、Y軸に沿うことは、第1方向に沿うことと同義である。
【0011】
印刷ユニット20は、供給ガイドフレーム21、搬送ローラー対22、プラテン23、印刷ヘッド24、キャリッジ25、搬送ローラー駆動機構28、排出ガイドフレーム29、及び制御ユニット50を備えている。
【0012】
供給ガイドフレーム21は、供給ユニット30から送出された媒体Mを搬送ローラー対22に案内する。供給ガイドフレーム21は、+X成分と+Z成分とを有する斜め方向に媒体Mを案内する。供給ガイドフレーム21は、1つの部材で構成されてもよいし、複数の部材で構成されてもよい。
【0013】
搬送ローラー対22は、第1搬送ローラー22a及び第2搬送ローラー22bを有し、媒体Mを搬送する。第1搬送ローラー22aは、媒体Mに対して-Z側に配置され、第2搬送ローラー22bは、媒体Mに対して+Z側に配置される。第1搬送ローラー22aまたは第2搬送ローラー22bは、搬送ローラー駆動機構28からの駆動力により回転駆動される。第1搬送ローラー22a及び第2搬送ローラー22bは、互いに押圧されることにより媒体Mを挟持し、一方のローラーの回転駆動により、媒体Mを印刷ヘッド24が位置する+X方向に搬送する。
【0014】
プラテン23は、印刷ヘッド24に対して-Z方向の位置に設けられる。プラテン23は、搬送ローラー対22によって搬送された媒体Mを支持する平板状の部材である。なお、プラテン23に対して-Z方向の位置に吸引ファンが設けられてもよい。この場合、プラテン23には、気流を流通させる貫通孔が設けられ、吸引ファンの気流により、媒体Mはプラテン23に引き付けられる。
【0015】
印刷ヘッド24は、プラテン23に支持された媒体Mに画像の形成、即ち印刷を行う。本実施形態の印刷ヘッド24は、複数のノズルが形成されたインクジェットヘッドであり、印刷ヘッド駆動機構61(
図3参照)から出力される駆動信号に基づいて、ノズルから媒体Mにインクを吐出することにより、媒体M上に画像を形成する。
【0016】
キャリッジ25は、印刷ヘッド24を支持する。キャリッジ25は、キャリッジ駆動機構62(
図3参照)の駆動により、Y軸に沿って往復移動が可能である。キャリッジ25がY軸に沿って媒体M上を移動しているときに、印刷ヘッド24が媒体Mにインクを吐出することにより、Y軸に沿って画像が形成される。そして、この動作と、媒体Mを所定量だけ+X方向に搬送する動作とを交互に繰り返すことにより、媒体Mの広い範囲に画像が形成される。
【0017】
図2は、キャリッジ25を-X側から見た側面図である。
図2に示すように、キャリッジ25は、±Y方向において、媒体Mに印刷が実行される印刷領域PLと、印刷領域PLの±Y方向における一端に設けられた退避領域NPLと、に移動可能である。
【0018】
印刷領域PLは、±Y方向においてプラテン23を含む領域であり、印刷ヘッド24による媒体Mへの印刷が実行可能な領域である。退避領域NPLは、±Y方向においてキャリッジ25が移動可能な領域のうち、印刷領域PL以外の領域であり、本実施形態では、印刷領域PLの+Y側に設けられている。退避領域NPLには、例えば、印刷ヘッド24のメンテナンスを行うメンテナンス部26が配置されており、長い時間ノズル内に留まっているインクを排出させる処理等、印刷ヘッド24のメンテナンスが行われる際に、キャリッジ25は、退避領域NPLに移動する。
【0019】
図1に戻って、排出ガイドフレーム29は、印刷ヘッド24により印刷が行われた媒体Mを巻取ユニット40に案内する。排出ガイドフレーム29は、媒体Mを+X成分と-Z成分とを有する斜め方向に案内する。排出ガイドフレーム29は、1つの部材で構成されてもよいし、複数の部材で構成されてもよい。
【0020】
なお、媒体Mを挟んで排出ガイドフレーム29と対向する位置に、乾燥ユニットが設けられてもよい。乾燥ユニットは、例えば、加熱源としてヒーターを備える。乾燥ユニットは、排出ガイドフレーム29上の媒体Mを加熱し、吐出されたインクの媒体Mへの定着を促す。
【0021】
制御ユニット50は、媒体Mの搬送制御、媒体Mへの印刷制御等の各種制御を行う。例えば、制御ユニット50は、図示しない外部のコンピューター等から印刷データを取得し、取得した印刷データに基づいて印刷を行う。制御ユニット50は、1または複数のユニットで構成されてもよい。制御ユニット50の詳細については後述する。
【0022】
供給ユニット30は、供給ローラー31、供給ローラー駆動機構32、供給ガイド部材33、及び供給バー部材34を備えている。供給ユニット30には、長尺の媒体Mをロール状に巻き掛けた媒体ロール60が装着される。
【0023】
供給ローラー31は、Y軸に沿って延在し、媒体ロール60を支持する。供給ローラー31は、Y軸に沿った回転軸回りに回転可能であり、
図1の側面視で時計回りに回転することにより、媒体ロール60から印刷ユニット20に向けて媒体Mを繰り出す。供給ローラー31は、供給ユニット30の+Y方向の端部、及び-Y方向の端部に配置された図示しないフレーム等によって回転可能に支持される。
【0024】
供給ローラー駆動機構32は、制御ユニット50の制御に基づいて供給ローラー31を回転させる。供給ローラー駆動機構32は、図示しないモーター等の駆動源と、駆動源からの駆動力を伝達する伝達機構と、制御ユニット50からの制御信号に基づいて駆動源を動作させる制御回路とを備える。
【0025】
供給ガイド部材33及び供給バー部材34は、供給ローラー31と同様、Y軸に沿って延在する。つまり、供給ガイド部材33及び供給バー部材34は、供給ローラー31の回転軸に沿って延在する。具体的には、供給ガイド部材33及び供給バー部材34は、供給ローラー31の回転軸と平行である。供給ガイド部材33及び供給バー部材34は、例えば、アルミニウム、SUS等の金属材料を用いて形成される押出成形部材またはパイプ加工部材によって構成され得るが、媒体Mと隙間なく接触できるように、弾性部材によって構成されてもよい。
【0026】
供給ガイド部材33は、供給ローラー31の+X側に配置されている。供給ガイド部材33には、供給ローラー31から繰り出された後で且つ印刷ユニット20で印刷がなされる前の媒体Mが巻き掛けられる。供給ガイド部材33は、巻き掛けられた媒体Mを+X成分と-Z成分とを有する斜め方向に案内する。供給ガイド部材33は、直接、もしくは図示しないカバー部材を介して、媒体Mと接触する。供給ガイド部材33は、例えば、円筒状の部材である。供給ガイド部材33は、供給ユニット30の+Y方向の端部、及び-Y方向の端部に配置された図示しないフレーム等に回転可能に支持され、媒体Mの搬送に従動して回転する。供給ガイド部材33は、第2ガイド部材に相当する。
【0027】
供給バー部材34は、供給ガイド部材33の+X側に配置されている。供給バー部材34には、供給ガイド部材33に案内されて搬送される媒体Mが巻き掛けられ、媒体Mにテンションを付与する。供給バー部材34は、巻き掛けられた媒体Mが供給ガイドフレーム21を介して搬送ローラー対22に搬送されるよう、媒体Mを+X成分と+Z成分とを有する斜め方向に案内する。供給バー部材34は、直接、または図示しないカバー部材を介して媒体Mと接触する。供給バー部材34は、供給バー駆動機構35(
図3参照)の駆動によって、±Z方向に揺動可能であり、供給バー部材34の揺動により、媒体Mに付与されるテンションが調整される。供給バー部材34は、媒体Mにテンションを付与することが可能であれば形状を問わないが、その形状は、円筒状であることが望ましい。
【0028】
巻取ユニット40は、巻取ローラー41、巻取ローラー駆動機構42、巻取バー部材43、巻取ガイド部材44、支持梁45、及び押圧部材80を備えている。巻取ユニット40は、印刷ユニット20から搬送される媒体M、即ち印刷ユニット20で印刷が行われた媒体Mを巻き取る。
【0029】
巻取ローラー41は、Y軸に沿って延在する円筒状のローラーであり、搬送される印刷後の媒体Mを、巻取ローラー41に装着されたロール芯71に巻き取る。つまり、巻取ローラー41は、Y軸に沿う回転軸回りに回転可能であり、
図1の側面視で時計回りに回転することにより、印刷ユニット20で印刷が行われた媒体Mをロール芯71に巻き取る。ロール芯71に巻き取られた媒体Mは、ロール状の印刷媒体ロール70となり、巻き取りが進行するにつれて、印刷媒体ロール70のロール径、即ち直径が増加する。
図1に破線で示した印刷媒体ロール70は、媒体Mの全体が巻き取られた場合の状態を示している。巻取ローラー41は、巻取ユニット40の+Y方向の端部、及び-Y方向の端部に配置された図示しないフレーム等によって回転可能に支持される。なお、媒体Mがロール芯71に巻き取られる構成に限定されず、媒体Mが巻取ローラー41に直接巻き取られる構成であってもよい。
【0030】
巻取ローラー駆動機構42は、制御ユニット50の制御に基づいて、巻取ローラー41を回転させる。巻取ローラー駆動機構42は、図示しないモーター等の駆動源と、駆動源からの駆動力を伝達する伝達機構と、制御ユニット50からの制御信号に基づいて駆動源を動作させる制御回路とを備える。巻取ローラー駆動機構42は、巻取ローラー41を回転させることによって、巻取ローラー41に媒体Mを巻き取らせる。
【0031】
巻取バー部材43及び巻取ガイド部材44は、巻取ローラー41と同様、Y軸に沿って延在する。つまり、巻取バー部材43及び巻取ガイド部材44は、巻取ローラー41の回転軸に沿って延在する。具体的には、巻取バー部材43及び巻取ガイド部材44は、巻取ローラー41の回転軸と平行である。巻取バー部材43及び巻取ガイド部材44は、例えば、アルミニウム、SUS等の金属材料を用いて形成される押出成形部材またはパイプ加工部材によって構成され得るが、媒体Mと隙間なく接触できるように、弾性部材によって構成されてもよい。
【0032】
巻取バー部材43は、巻取ローラー41の-X側に配置されている。巻取バー部材43には、印刷ヘッド24で印刷された媒体Mが巻き掛けられ、媒体Mにテンションを付与する。巻取バー部材43は、巻き掛けられた媒体Mを、巻取ガイド部材44に向けて+X成分と+Z成分とを有する斜め方向に案内する。巻取バー部材43は、直接、または図示しないカバー部材を介して、媒体Mの印刷面と接触する。巻取バー部材43は、巻取バー駆動機構46(
図3参照)の駆動によって、±Z方向に揺動可能であり、巻取バー部材43の揺動により、媒体Mに付与されるテンションが調整される。巻取バー部材43は、媒体Mにテンションを付与することが可能であれば形状を問わないが、その形状は、円筒状であることが望ましい。
【0033】
巻取ガイド部材44は、巻取バー部材43の+X側で、且つ巻取ローラー41の-X側に配置されている。つまり、巻取ガイド部材44は、±X方向において、巻取バー部材43と巻取ローラー41との間に配置されている。巻取ガイド部材44には、巻取バー部材43を通過して、巻取ローラー41に巻き取られる前の媒体Mが巻き掛けられる。巻取ガイド部材44は、巻き掛けられた媒体Mを、巻取ローラー41に向けて+X成分と-Z成分とを有する斜め方向に案内する。巻取ガイド部材44は、直接、もしくは図示しないカバー部材を介して、媒体Mの裏面、即ち印刷面の反対側の面と接触する。巻取ガイド部材44は、例えば、円筒状の部材である。巻取ガイド部材44は、巻取ユニット40の+Y方向の端部、及び-Y方向の端部に配置された図示しないフレーム等に回転可能に支持され、媒体Mの搬送に従動して回転する。巻取ガイド部材44は、ガイド部材及び第1ガイド部材に相当する。
【0034】
押圧部材80は、Y軸に沿って延在する支持梁45に支持され、巻取ガイド部材44の一部を+Z方向に押圧する。支持梁45は、巻取ユニット40の+Y方向の端部、及び-Y方向の端部に配置された図示しないフレーム等によって支持されている。押圧部材80の詳細については、後述する。
【0035】
図3は、プリンター10の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、制御ユニット50は、制御部51と、記憶部52と、インターフェイス部53と、操作部54と、報知部55とを備えている。記憶部52及びインターフェイス部53は、制御部51に接続されている。
【0036】
制御部51は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーを有する。制御部51は、記憶部52に記憶されている図示しない制御プログラムに従って動作することにより、プリンター10の各種動作を制御する。
【0037】
記憶部52は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の半導体メモリー、或いはHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等のストレージを含む。記憶部52は、上述の制御プログラムとともに、様々な情報を記憶する。
【0038】
インターフェイス部53には、プリンター10に備わる各駆動機構が接続されている。具体的には、インターフェイス部53には、印刷ユニット20の搬送ローラー駆動機構28、印刷ヘッド駆動機構61、及びキャリッジ駆動機構62が接続され、さらに、供給ユニット30の供給ローラー駆動機構32及び供給バー駆動機構35が接続され、さらに、巻取ユニット40の巻取ローラー駆動機構42及び巻取バー駆動機構46が接続されている。制御部51は、インターフェイス部53を介して、これらの駆動機構に制御信号を送信し、各駆動機構の動作を制御する。
【0039】
インターフェイス部53には、さらに、印刷ユニット20の媒体検出部63が接続されている。媒体検出部63は、例えば、キャリッジ25に搭載された光センサーであり、-Z方向における媒体Mの有無を検出する。制御部51は、キャリッジ駆動機構62を制御してキャリッジ25をY軸に沿って移動させながら、媒体検出部63に媒体Mの有無を検出させることにより、媒体Mの幅、即ち媒体Mの±Y方向の長さと、媒体Mの±Y方向の位置、即ち±Y方向における媒体Mの設置位置とを取得することができる。
【0040】
操作部54は、操作ボタン等によって構成され、ユーザーによってなされる入力操作を受け付けて、入力操作に対応する情報を制御部51に伝達する。報知部55は、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の表示装置によって構成され、制御部51の制御に基づく情報等を、文字や画像によって報知する。なお、操作部54は、タッチパネルのように、報知部55の表示装置と一体的な構成であってもよい。また、報知部55は、表示装置の代わりに、音声発生装置で構成されてもよい。この場合、報知部55は、制御部51の制御に基づく情報等を、音声によって報知する。また、報知部55は、通信装置によって構成されてもよい。この場合、報知部55は、ユーザーが所持する端末装置等に、制御部51の制御に基づく情報等を送信する。
【0041】
なお、制御ユニット50は、印刷ユニット20に備えられる構成に限定されず、供給ユニット30または巻取ユニット40に備えられてもよいし、印刷ユニット20、供給ユニット30及び巻取ユニット40とは独立した構成であってもよい。
【0042】
図4は、押圧部材80を示す斜視図である。
図4に示すように、押圧部材80は、ベース部81と、支持軸82と、ローラー保持部83と、ローラー回転軸84と、押圧ローラー85とを備えている。
【0043】
ベース部81は、±Y方向から見て-Z方向に開口するU字状の部材である。ベース部81は、上部から-Z方向に延出する一対の側片によって支持梁45の一部を±X方向から挟むように支持梁45上に設置される。ベース部81は、支持梁45に沿って±Y方向に移動可能である。
ベース部81の上部には、支持軸82が接続されている。支持軸82は、ベース部81の上部から+Z方向に延出する円柱状の軸である。
【0044】
ローラー保持部83は、+Z方向に開口するU字状の部材であり、その底部は、支持軸82の上端に回動可能に接続されている。つまり、ローラー保持部83は、ローラー回転軸84及び押圧ローラー85とともに、巻取ガイド部材44を押圧する方向である+Z方向に沿う支持軸82回りに回動可能である。ローラー保持部83の底部から+Z方向に延出する一対の側片は、ローラー回転軸84の両端を支持する。ローラー回転軸84は、水平方向に延在する円柱状の軸である。
【0045】
ローラー回転軸84の長さ方向の略中央には、円盤状の押圧ローラー85が取り付けられている。押圧ローラー85は、ローラー回転軸84回りに回転可能である。押圧ローラー85の上端、即ち+Z側の端部は、巻取ガイド部材44に当接し、巻取ガイド部材44を+Z方向に押圧する。
【0046】
つまり、上記のように構成された押圧部材80は、巻取ガイド部材44の一部を、押圧ローラー85によって+Z方向に押圧し、巻取ガイド部材44を+Z方向に凸となるように変形させる。言い換えれば、押圧部材80は、巻取ガイド部材44の、押圧ローラー85と当接する部位を、巻取ガイド部材44に巻き掛けられた媒体Mに向かって付勢し、巻取ガイド部材44を媒体Mに向かって凸状に変形させる。押圧部材80は、付勢部材及び第1付勢部材に相当する。また、押圧部材80は、支持梁45に沿って、即ちY軸に沿って移動可能である。ユーザーは、支持梁45に対してベース部81を摺動せることにより、押圧部材80を、支持梁45上の任意の位置に配置することができる。
【0047】
プリンター10で媒体Mの搬送や印刷を行う際には、ユーザーは、押圧ローラー85が媒体Mの±Y方向の中央に対応する位置で巻取ガイド部材44を押圧するように、設置した媒体Mの幅や設置位置に応じて、ベース部81の±Y方向の位置を調整する。さらに、ユーザーは、押圧部材80を、
図4に示す姿勢、即ちローラー回転軸84がY軸に沿った姿勢となるように、ローラー保持部83を支持軸82回りに回動させる。これにより、巻取ユニット40での媒体Mの搬送に伴って、巻取ガイド部材44が回転すると、押圧ローラー85は、巻取ガイド部材44への押圧、即ち巻取ガイド部材44の凸状の変形を維持したまま、巻取ガイド部材44の回転に従動して回転する。この結果、巻取ガイド部材44において、媒体Mの±Y方向の中央を凸にした状態でロール芯71への巻き取りが進行するため、媒体Mは、センタリング効果により、±Y方向にずれることが抑制される。
【0048】
なお、押圧部材80の±Y方向の位置を調整する場合、ユーザーは、
図4に示す状態から、ローラー保持部83を支持軸82回りに90°回動させ、
図5に示すように、ローラー回転軸84をX軸に沿った姿勢にする。この状態で、ベース部81を±Y方向に移動させると、押圧ローラー85は、巻取ガイド部材44の下面を転がるように回転するため、押圧部材80の±Y方向の移動を容易に行うことができる。
【0049】
また、
図6に示すように、支持梁45には、Y軸に沿って目盛りScが付されていることが望ましい。この構成によれば、ユーザーは、押圧部材80の±Y方向の位置を調整する際に、この目盛りScを目安にすることで、押圧部材80を所望の位置に移動させることが容易になる。なお、支持梁45に目盛りScが付される代わりに、巻取ガイド部材44に、Y軸に沿って同様の目盛りScが付されてもよいし、支持梁45と巻取ガイド部材44の双方に目盛りScが付されてもよい。ただし、巻取ガイド部材44に目盛りScが付される場合には、巻取ガイド部材44の回転により、目盛りScが媒体Mに覆われて見えづらくなることがないよう、巻取ガイド部材44の周方向に複数列の目盛りScが付されることが望ましい。
【0050】
さらに、支持梁45及び巻取ガイド部材44の少なくとも一方に目盛りScが付される場合において、制御部51は、押圧部材80を配置すべき位置に対応する目盛りScの値、即ち媒体Mの±Y方向の中央に対応する目盛りScの値を、報知部55によってユーザーに報知することが望ましい。この構成によれば、ユーザーは、押圧部材80を配置すべき位置を容易に認識することができる。報知すべき目盛りScの値は、例えば、媒体検出部63の検出結果に基づいて、制御部51が取得した媒体Mの幅と、媒体Mの±Y方向における設置位置とを用いて導出可能である。または、操作部54を介してユーザーに媒体Mの幅及び設置位置を入力させ、制御部51がこの値を取得して、報知すべき目盛りScの値を導出してもよい。制御部51が取得する媒体Mの幅及び±Y方向の設置位置は、媒体情報に相当し、この場合の制御部51は、取得部に相当する。なお、制御部51が取得すべき媒体情報は、媒体Mの幅及び±Y方向の設置位置のいずれか一方であってもよい。
【0051】
また、図示は省略するが、押圧部材80は、巻取ガイド部材44に対する押圧量、即ち巻取ガイド部材44の+Z方向への変形量を調整可能であることが望ましい。押圧量の調整は、例えば、支持軸82の外周にねじを形成して、ベース部81とローラー保持部83との距離を調整可能にするとともに、ダブルナットを用いてその距離を維持すること等で実現可能である。また、支持軸82を、ウォームギア等の伝達機構を介してモーター等の駆動源に接続し、押圧量を電動で調整できるようにしてもよい。この構成によれば、押圧部材80による押圧量が調整可能であるため、媒体Mの種類等に応じて押圧量を調整することにより、押圧によって得られるセンタリング効果を媒体Mの種類等に応じて最適化することができる。押圧部材80によって巻取ガイド部材44を押圧する押圧量は、巻取ガイド部材44を付勢する付勢量に相当する。
なお、
図4~
図6では、巻取ガイド部材44が大きく変形した状態が示されているが、押圧部材80による実際の押圧量、即ち巻取ガイド部材44の変形量は、例えば、数ミリメートル程度の小さな量であってもよい。
【0052】
以上、説明したように、本実施形態の巻取ユニット40及びプリンター10によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施形態によれば、巻取ガイド部材44を凸状に変形させる押圧部材80が、媒体Mの幅方向である±Y方向に沿って移動可能であるため、巻取ガイド部材44において凸の頂点となる位置を、媒体Mの幅や、±Y方向における媒体Mの設置位置に応じて変更することが可能となる。この結果、媒体Mの幅や設置位置に関わらず、媒体Mを巻き取る際の巻きずれを抑制することが可能となる。
【0053】
なお、印刷の途中で、定期的または不定期で印刷ヘッド24のメンテナンスを行う構成では、キャリッジ25が頻繁に退避領域NPLに移動するため、印刷に要する時間が長くなりやすい。このため、キャリッジ25の総移動距離を短くして印刷に要する時間を短縮するために、媒体Mは、その幅に関わらず、プラテン23上で退避領域NPL側、即ち+Y側に位置するように、プリンター10にセットされることが望ましい。
これに関して、本実施形態では、押圧部材80が±Y方向に移動可能であることから、媒体Mをプリンター10にセットする際に、媒体Mの±Y方向の中央を基準にする必要がなく、退避領域NPL側に寄せてセットすることが可能となる。このため、メンテナンスを行いつつ印刷を実行する際の印刷時間を短縮することが可能となる。
【0054】
また、本実施形態によれば、巻取ガイド部材44は、媒体Mの搬送に従動して回転し、押圧部材80は、巻取ガイド部材44の回転に従動して回転する押圧ローラー85によって巻取ガイド部材44を押圧する。この結果、巻取ガイド部材44と押圧ローラー85との間の摩擦が低減するため、巻取ガイド部材44及び押圧ローラー85の劣化を抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態によれば、押圧ローラー85が押圧方向に沿うZ軸回りに回動可能であるため、押圧部材80をY軸に沿って移動させる際には、押圧ローラー85を90°回動させることにより、押圧部材80を滑らかに移動させることができる。
【0056】
また、本実施形態によれば、押圧部材80が、Y軸に沿って延在する支持梁45に沿って移動可能であるため、押圧部材80をY軸に沿って精度よく移動させることができる。
【0057】
2.第2実施形態
次に、第2実施形態のプリンター10について説明する。
本実施形態のプリンター10は、押圧部材80の±Y方向の位置の調整が、制御部51の制御によってなされる点で第1実施形態と異なっている。それ以外の構成については、第1実施形態と共通であるため、その説明を省略する。
【0058】
図7は、第2実施形態のプリンター10の構成を示すブロック図である。
図7に示すように、第2実施形態の巻取ユニット40は、押圧部材駆動機構47を備えている。押圧部材駆動機構47は、図示しないモーター等の駆動源と、駆動源からの駆動力を伝達するラックアンドピニオン等の伝達機構と、制御ユニット50からの制御信号に基づいて駆動源を動作させる制御回路とを備え、押圧部材80を支持梁45に沿って、即ちY軸に沿って移動させる。そして、制御部51は、押圧部材駆動機構47を制御して、押圧部材80の±Y方向の位置を調整することができる。押圧部材駆動機構47は、駆動部に相当する。
【0059】
具体的には、制御部51は、媒体検出部63の検出結果に基づいて、媒体Mの幅と、媒体Mの±Y方向における設置位置とを含む媒体情報を取得する。そして、取得した媒体情報に応じて、媒体Mの±Y方向の中央に対応する位置、即ち押圧部材80を配置すべき押圧位置を決定する。その後、制御部51は、押圧部材駆動機構47を制御して、押圧部材80を、決定した押圧位置に移動させる。なお、制御部51が取得する媒体情報は、操作部54を介してユーザーが入力する情報であってもよい。また、制御部51が取得すべき媒体情報は、媒体Mの幅及び±Y方向の設置位置のいずれか一方であってもよい。
【0060】
また、押圧部材駆動機構47は、ローラー保持部83を支持軸82回りに回動させる機構を含んでいることが望ましい。この場合、制御部51は、押圧部材80を±Y方向に移動させる際に、まず、ローラー回転軸84がY軸に沿った姿勢(
図4参照)からX軸に沿った姿勢(
図5参照)となるように、ローラー保持部83を90°回動させる。そして、この状態で押圧部材80を押圧位置に移動させる。その後、制御部51は、ローラー保持部83を90°回動させ、ローラー回転軸84をY軸に沿った姿勢に戻す(
図4参照)。
【0061】
以上説明したように、本実施形態の巻取ユニット40及びプリンター10によれば、押圧部材80を±Y方向に移動させる押圧部材駆動機構47を備えるため、押圧部材80の移動が容易になる。また、制御部51は、媒体Mの幅や設置位置を取得して押圧位置を決定し、押圧部材駆動機構47によって押圧部材80を押圧位置に移動させるため、押圧部材80を移動させる際の精度が向上する。
【0062】
3.第3実施形態
次に、第3実施形態のプリンター10について説明する。
本実施形態のプリンター10は、印刷ユニット20の上流側に配置される供給ユニット30に押圧部材90が備わる点で第1実施形態と異なっている。それ以外の構成については、第1実施形態と共通であるため、その説明を省略する。
【0063】
図8は、第3実施形態のプリンター10の構成を示す断面模式図である。
図8に示すように、供給ユニット30は、押圧部材90を備えている。押圧部材90は、Y軸に沿って延在する支持梁36に支持され、供給ガイド部材33の一部を+Z方向に押圧する。支持梁36は、供給ユニット30の+Y方向の端部、及び-Y方向の端部に配置された図示しないフレーム等によって支持されている。
【0064】
押圧部材90の構成は、押圧部材80と同様であるため、詳細な説明は省略する。つまり、押圧部材90は、供給ガイド部材33の一部を+Z方向に押圧し、供給ガイド部材33を+Z方向に凸となるように変形させる。言い換えれば、押圧部材90は、供給ガイド部材33の一部を、供給ガイド部材33に巻き掛けられた媒体Mに向かって付勢し、供給ガイド部材33を媒体Mに向かって凸状に変形させる。押圧部材90は、第2付勢部材に相当する。また、押圧部材90は、支持梁36に沿って、即ちY軸に沿って移動可能である。ユーザーは、押圧部材90のベース部を支持梁36に対して摺動せることにより、押圧部材90を、支持梁36上の任意の位置に配置することができる。具体的には、ユーザーは、媒体Mの±Y方向の中央に対応する位置に押圧部材90を配置する。
【0065】
以上説明したように、本実施形態のプリンター10によれば、印刷ユニット20の上流側でも媒体Mの±Y方向へのずれが抑制されるため、媒体Mを巻き取る際の巻きずれを一層抑制することが可能となる。
なお、第2実施形態と同様、押圧部材90を±Y方向に移動させる駆動機構をさらに備え、制御部51の制御に基づいて、押圧部材90の±Y方向の位置の調整が可能な構成としてもよい。
【0066】
上記の各実施形態は、以下のように変更してもよい。
【0067】
上記実施形態では、押圧部材80が巻取ガイド部材44を押圧する押圧位置を、媒体Mの±Y方向の中央に対応する位置としているが、押圧位置は、媒体Mの±Y方向の中央に対応する位置以外であってもよい。例えば、巻取ガイド部材44の形状や設置状態の僅かな誤差等に起因して、押圧すべき位置が変化する場合があり得る。このため、媒体Mの幅や種類等に応じた適切な押圧位置を、実験等によって予め求めておくことが望ましい。
【0068】
上記実施形態において、押圧部材80は、ローラー回転軸84回りに回転する押圧ローラー85を有し、この押圧ローラー85は、ローラー保持部83とともに支持軸82回りに回転可能な構成であるが、この構成に限定されない。例えば、押圧ローラー85の代わりに、任意の方向に回転が可能な球体を有するローラーによって押圧する構成であってもよい。この構成によれば、押圧部材80を±Y方向に移動する際に、ローラー保持部83を90°回動させる必要がなくなる。
【0069】
上記実施形態において、押圧部材80の±Y方向への移動が容易になるように、巻取ガイド部材44と押圧部材80とが一時的に離間する機構を備えるようにしてもよい。ただし、巻取ガイド部材44を可動式にすると、巻取ガイド部材44の平行度が乱れる恐れがあるため、例えば、支持梁45を可動式とすることが望ましい。
【0070】
上記実施形態では、巻取ガイド部材44は、図示しないフレーム等に回転可能に支持され、媒体Mの搬送に従動して回転可能であるが、巻取ガイド部材44がフレーム等に回転不能に支持される構成、つまり、巻取ガイド部材44が媒体Mの搬送に従動して回転しない構成であってもよい。この構成によれば、巻取ガイド部材44が従動回転しない部材であるため、巻取ガイド部材44と媒体Mとの間の摩擦が大きくなり、媒体Mに対して大きなテンションを付与することが可能となる。なお、この場合の押圧部材80は、巻取ガイド部材44の回転に従動して回転する押圧ローラー85を備える必要はなく、回転不能な部材で押圧する構成であってもよい。或いは、押圧部材80を、押圧ローラー85を備える構成にするとともに、押圧部材80の±Y方向への移動が容易になるように、ローラー回転軸84が常にX軸に沿った姿勢(
図5参照)である構成にすることもできる。また、巻取ガイド部材44が従動回転しない構成の場合には、巻取ガイド部材44は、媒体Mと接する部位については、円筒状等の円滑な形状である必要があるが、媒体Mと接しない部位については、いかなる形状であってもよい。また、従動回転しない巻取ガイド部材44に目盛りScを付す場合には、媒体Mと接しない部位、即ち媒体Mによって覆い隠されない位置に付すようにすればよい。
【0071】
上記実施形態において、複数の押圧部材80を±Y方向に並べて配置する構成、即ち複数の押圧部材80によって巻取ガイド部材44のY軸に沿う複数の位置を媒体Mに向かって付勢する構成としてもよい。この場合、複数の押圧部材80は、媒体Mの±Y方向の中央を基準にして対称に配置されることが望ましい。この構成によれば、媒体Mが幅広の場合等においても、媒体Mの巻きずれを抑制することができる。なお、複数の押圧部材80は、一体的に構成されてもよいし、各々が個別に±Y方向に移動できるように構成されてもよい。また、複数の押圧部材80のそれぞれの押圧量は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0072】
上記実施形態では、巻取ガイド部材44に当接する押圧部材80によって巻取ガイド部材44を+Z方向に押圧する構成、即ち押圧によって巻取ガイド部材44を付勢する構成であるが、この構成に限定されない。例えば、押圧部材80の代わりに、磁力等によって非接触で巻取ガイド部材44を付勢する部材を用いてもよい。例えば、巻取ガイド部材44を強磁性体の材料で構成するとともに、巻取ガイド部材44の+Z側に、±Y方向に移動可能な磁石を配置して、巻取ガイド部材44の一部を、磁石の磁力によって+Z方向に付勢する構成とすることが可能である。この場合には、磁石が付勢部材及び第1付勢部材に相当する。
【0073】
上記実施形態において、巻取ガイド部材44及び支持梁45の少なくとも一方に目盛りScを付す場合に、目盛りScに添えられる値は、基準位置からの距離を表す数値であってもよいが、これに限定されない。例えば、媒体Mの幅に関わらず、媒体Mの±Y方向の一端を所定の位置に合わせて媒体Mをプリンター10にセットする態様では、押圧位置は、媒体Mの幅によって定まる。このため、媒体Mの幅を表す数値を、対応する押圧位置の目盛りScに添えるようにすれば、ユーザーは、セットした媒体Mの幅に基づいて、適切な押圧位置を容易に認識することができる。
【0074】
上記実施形態では、巻取ローラー41が円筒状の場合を例示したが、ロール芯71を支持して回転させることが可能であれば、円筒状でなくてもよい。
【0075】
上記実施形態では、供給バー部材34及び巻取バー部材43は、巻き掛けられた媒体Mにテンションを付与させているが、この構成に限定されない。例えば、線接触または点接触する部材で媒体Mを押圧して媒体Mにテンションを付与する構成であってもよい。
【0076】
上記実施形態において、プリンター10は、媒体Mに印刷を行う装置であって、シリアルプリンター、ラテラル式プリンター、ラインプリンター、ページプリンター等であってもよい。また、印刷方式は、インクジェット式に限定されず、サーマル式、ドットインパクト式、レーザー式等であってもよい。
【0077】
上記実施形態では、印刷ユニット20の下流側に配置された巻取ユニット40が、印刷ユニット20によって印刷が行われた媒体Mを巻き取る構成を示したが、巻取ユニット40の用途はこれに限定されない。例えば、供給ユニット30に装着される媒体ロール60、即ち印刷前の媒体Mが巻き取られている媒体ロール60を形成する用途に用いられてもよい。
【0078】
以下に、実施形態から導き出される内容を記載する。
【0079】
巻取装置は、第1方向に沿う軸回りに回転して、搬送される長尺の媒体を巻き取る巻取ローラーと、前記第1方向に沿って延在し、前記巻取ローラーに巻き取られる前の前記媒体が巻き掛けられるガイド部材と、前記ガイド部材の一部を、前記ガイド部材に巻き掛けられた前記媒体に向かって付勢して、前記ガイド部材を前記媒体に向かって凸状に変形させる付勢部材と、を備え、前記付勢部材は、前記第1方向に沿って移動可能であることを特徴とする。
【0080】
この構成によれば、ガイド部材を凸状に変形させる付勢部材が、媒体の幅方向である第1方向に沿って移動可能であるため、ガイド部材において凸の頂点となる位置を、媒体の幅や、第1方向における媒体の設置位置に応じて変更することが可能となる。この結果、媒体の幅や設置位置に関わらず、媒体を巻き取る際の巻きずれを抑制することが可能となる。
【0081】
上記の巻取装置において、前記ガイド部材は、前記媒体の搬送に従動して回転し、前記付勢部材は、前記ガイド部材の回転に従動して回転する押圧ローラーを有し、前記押圧ローラーによって前記ガイド部材を押圧することが望ましい。
【0082】
この構成によれば、ガイド部材は、媒体の搬送に従動して回転し、付勢部材は、ガイド部材の回転に従動して回転する押圧ローラーによってガイド部材を押圧する。この結果、ガイド部材と付勢部材との間の摩擦が低減するため、ガイド部材及び付勢部材の劣化を抑制することができる。
【0083】
上記の巻取装置において、前記押圧ローラーは、前記ガイド部材を押圧する方向に沿う軸回りに回動可能であることが望ましい。
【0084】
この構成によれば、押圧ローラーが押圧方向に沿う軸回りに回動可能であるため、付勢部材を第1方向に沿って移動させる際には、押圧ローラーを90°回動させることにより、付勢部材を滑らかに移動させることができる。
【0085】
上記の巻取装置において、前記ガイド部材は、前記媒体の搬送に従動して回転しなくてもよい。
【0086】
この構成によれば、ガイド部材が従動回転しない部材であるため、ガイド部材と媒体との間の摩擦が大きくなり、媒体に対して大きなテンションを付与することが可能となる。
【0087】
上記の巻取装置において、前記付勢部材は、前記ガイド部材を付勢する付勢量を調整可能であることが望ましい。
【0088】
この構成によれば、付勢部材による付勢量が調整可能であるため、媒体の種類等に応じて付勢量を調整することにより、付勢によって得られるセンタリング効果を媒体の種類等に応じて最適化することができる。
【0089】
上記の巻取装置において、前記第1方向に沿って延在し、前記付勢部材を支持する支持梁を備え、前記付勢部材は、前記支持梁に沿って移動可能であることが望ましい。
【0090】
この構成によれば、付勢部材が、第1方向に沿って延在する支持梁に沿って移動可能であるため、付勢部材を第1方向に沿って精度よく移動させることができる。
【0091】
上記の巻取装置において、前記支持梁には、前記第1方向に沿って目盛りが付されていることが望ましい。
【0092】
この構成によれば、支持梁に目盛りが付されているため、目盛りを目安にすることにより、付勢部材を所望の位置に移動させることが容易になる。
【0093】
上記の巻取装置において、前記ガイド部材には、前記第1方向に沿って目盛りが付されていることが望ましい。
【0094】
この構成によれば、ガイド部材に目盛りが付されているため、目盛りを目安にすることにより、付勢部材を所望の位置に移動させることが容易になる。
【0095】
上記の巻取装置において、前記媒体の前記第1方向の長さ、及び前記媒体の前記第1方向の位置の少なくとも一方を表す媒体情報を取得する取得部と、前記取得部が取得した前記媒体情報に基づいて、前記付勢部材を配置すべき位置に対応する目盛りの値を報知する報知部と、を備えることが望ましい。
【0096】
この構成によれば、取得部が取得した媒体の幅や設置位置に基づいて、付勢部材を配置すべき位置に対応する目盛りの値を報知部が報知するため、ユーザーは、付勢部材を配置すべき位置を容易に認識することができる。
【0097】
上記の巻取装置において、前記付勢部材は、前記ガイド部材の前記第1方向に沿う複数の位置を前記媒体に向かって付勢してもよい。
【0098】
この構成によれば、付勢部材がガイド部材の複数の位置を付勢するため、媒体が幅広の場合等においても、媒体の巻きずれを抑制することができる。
【0099】
上記の巻取装置において、前記付勢部材を前記第1方向に沿って移動させる駆動部を備えることが望ましい。
【0100】
この構成によれば、付勢部材を第1方向に沿って移動させる駆動部を備えるため、付勢部材の移動が容易になる。
【0101】
上記の巻取装置において、前記駆動部による駆動を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記媒体の前記第1方向の長さ、及び前記媒体の前記第1方向の位置の少なくとも一方を表す媒体情報を取得し、前記駆動部を制御して、取得した前記媒体情報に応じた位置に前記付勢部材を移動させることが望ましい。
【0102】
この構成によれば、制御部は、媒体の幅や設置位置等の媒体情報を取得する。そして、駆動部を制御して、取得した媒体情報に応じた位置に付勢部材を移動させるため、付勢部材を移動させる際の精度が向上する。
【0103】
印刷装置は、長尺の媒体に印刷を行う印刷部と、第1方向に沿う軸回りに回転して、前記印刷が行われた前記媒体を巻き取る巻取ローラーと、前記第1方向に沿って延在し、前記印刷が行われた後で且つ前記巻取ローラーに巻き取られる前の前記媒体が巻き掛けられる第1ガイド部材と、前記第1ガイド部材の一部を、前記第1ガイド部材に巻き掛けられた前記媒体に向かって付勢して、前記第1ガイド部材を前記媒体に向かって凸状に変形させる第1付勢部材と、を備え、前記第1付勢部材は、前記第1方向に沿って移動可能であることを特徴とする。
【0104】
この構成によれば、第1ガイド部材を凸状に変形させる第1付勢部材が、媒体の幅方向である第1方向に沿って移動可能であるため、第1ガイド部材において凸の頂点となる位置を、媒体の幅や、第1方向における媒体の設置位置に応じて変更することが可能となる。この結果、媒体の幅や設置位置に関わらず、媒体を巻き取る際の巻きずれを抑制することが可能となる。
【0105】
上記の印刷装置において、前記第1方向に沿う軸回りに回転して、前記印刷部に向けて前記媒体を繰り出す供給ローラーと、前記第1方向に沿って延在し、前記供給ローラーから繰り出された後で且つ前記印刷がなされる前の前記媒体が巻き掛けられる第2ガイド部材と、前記第2ガイド部材の一部を、前記第2ガイド部材に巻き掛けられた前記媒体に向かって付勢して、前記第2ガイド部材を前記媒体に向かって凸状に変形させる第2付勢部材と、を備え、前記第2付勢部材は、前記第1方向に沿って移動可能であることが望ましい。
【0106】
この構成によれば、印刷部の上流側でも媒体の第1方向へのずれが抑制されるため、媒体を巻き取る際の巻きずれを一層抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0107】
10…プリンター、20…印刷ユニット、21…供給ガイドフレーム、22…搬送ローラー対、22a…第1搬送ローラー、22b…第2搬送ローラー、23…プラテン、24…印刷ヘッド、25…キャリッジ、26…メンテナンス部、28…搬送ローラー駆動機構、29…排出ガイドフレーム、30…供給ユニット、31…供給ローラー、32…供給ローラー駆動機構、33…供給ガイド部材、34…供給バー部材、35…供給バー駆動機構、36…支持梁、40…巻取ユニット、41…巻取ローラー、42…巻取ローラー駆動機構、43…巻取バー部材、44…巻取ガイド部材、45…支持梁、46…巻取バー駆動機構、47…押圧部材駆動機構、50…制御ユニット、51…制御部、52…記憶部、53…インターフェイス部、54…操作部、55…報知部、60…媒体ロール、61…印刷ヘッド駆動機構、62…キャリッジ駆動機構、63…媒体検出部、70…印刷媒体ロール、71…ロール芯、80,90…押圧部材、81…ベース部、82…支持軸、83…ローラー保持部、84…ローラー回転軸、85…押圧ローラー、M…媒体、PL…印刷領域、NPL…退避領域、Sc…目盛り。