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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044434
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】高炉用原料の製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
   C10B 53/08 20060101AFI20240326BHJP
   C10B 47/20 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C10B53/08
C10B47/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149942
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 成人
(72)【発明者】
【氏名】横森 玲
(72)【発明者】
【氏名】廣池 承一郎
【テーマコード(参考)】
4H012
【Fターム(参考)】
4H012KA06
(57)【要約】
【課題】フェロコークスなどの高炉用原料を高品質かつ高生産性で製造する方法および装置を提供する。
【解決手段】炭素含有物質と鉄含有物質とを含有する成型物を乾留炉にて高炉用原料を製造する方法において、前記乾留炉の炉上部から前記成型物を装入する工程と、前記乾留炉の炉頂から堆積された前記成型物の頂点までの高さを測定する工程と、前記炉上部のガスを吸引する工程とを有し、ガス吸引口の位置から堆積された成型物の頂点までの距離(D)が200~700mmの範囲内となるように装入量を制御することが好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素含有物質と鉄含有物質とを含有する成型物を乾留炉にて高炉用原料を製造する方法において、
前記乾留炉の炉上部から前記成型物を装入する工程〔装入工程〕と、
前記乾留炉の炉頂から堆積された前記成型物の頂点までの高さを測定する工程〔測定工程〕と、
前記炉上部のガスを吸引する工程〔ガス吸引工程〕と、
を有することを特徴とする高炉用原料の製造方法。
【請求項2】
前記装入工程は、前記測定工程において得られた前記成型物の装入高さに応じて前記成型物の装入量を制御することを特徴とする請求項1に記載の高炉用原料の製造方法。
【請求項3】
前記装入工程において、前記ガスを吸引するための吸引口の位置から堆積された前記成型物の頂点までの距離(D)が、200mm~700mmの範囲内となるように装入量を制御することを特徴とする請求項2に記載の高炉用原料の製造方法。
【請求項4】
前記装入工程において、さらに、前記成型物を前記乾留炉へ間欠的(断続的)に装入するステップを有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の高炉用原料の製造方法。
【請求項5】
前記装入工程において、さらに、前記成型物を拡散しながら装入するステップを有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の高炉用原料の製造方法。
【請求項6】
前記装入工程において、さらに、前記成型物を拡散しながら装入するステップを有することを特徴とする請求項4に記載の高炉用原料の製造方法。
【請求項7】
前記ガス吸引工程が、前記乾留炉の側面の複数個所から吸引することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の高炉用原料の製造方法。
【請求項8】
前記ガス吸引工程が、前記乾留炉の側面の複数個所から吸引することを特徴とする請求項4に記載の高炉用原料の製造方法。
【請求項9】
前記ガス吸引工程が、前記乾留炉の側面の複数個所から吸引することを特徴とする請求項5に記載の高炉用原料の製造方法。
【請求項10】
前記ガス吸引工程が、前記乾留炉の側面の複数個所から吸引することを特徴とする請求項6に記載の高炉用原料の製造方法。
【請求項11】
炭素含有物質と鉄含有物質とを含有する成型物を乾留炉にて高炉用原料を製造する装置において、
前記乾留炉の炉上部から前記成型物を装入する手段〔装入口〕と、
前記乾留炉の炉頂から堆積された前記成型物の頂点までの高さを測定する手段〔高さ測定器〕と、
前記炉上部のガスを吸引する手段〔ガス吸引口〕と、
を備えることを特徴とする高炉用原料の製造装置。
【請求項12】
前記装入手段〔装入口〕は、前記測定手段〔高さ測定器〕において得られた前記成型物の装入高さに応じて前記成型物の装入量を制御する手段〔装入量制御装置〕を有することを特徴とする請求項11に記載の高炉用原料の製造装置。
【請求項13】
前記装入量制御手段〔装入量制御装置〕が、前記ガス吸引口の位置から堆積された前記成型物の頂点までの距離(D)が、200mm~700mmの範囲内となるように装入量を制御する手段であることを特徴とする請求項12に記載の高炉用原料の製造装置。
【請求項14】
前記装入手段〔装入口〕は、さらに、前記装入口の出口に開閉式のゲートを設けることを特徴とする請求項11ないし13のいずれか1項に記載の高炉用原料の製造装置。
【請求項15】
前記装入手段〔装入口〕は、さらに、前記装入手段〔装入口〕の出口直下に拡散部を設けることを特徴とする請求項11ないし13のいずれか1項に記載の高炉用原料の製造装置。
【請求項16】
前記装入手段〔装入口〕は、さらに、前記装入手段〔装入口〕の出口直下に拡散部を設けることを特徴とする請求項14に記載の高炉用原料の製造装置。
【請求項17】
前記ガス吸引手段〔ガス吸引口〕は、前記乾留炉の側面の複数個所に設けることを特徴とする請求項11ないし13のいずれか1項に記載の高炉用原料の製造装置。
【請求項18】
前記ガス吸引手段〔ガス吸引口〕は、前記乾留炉の側面の複数個所に設けることを特徴とする請求項14に記載の高炉用原料の製造装置。
【請求項19】
前記ガス吸引手段〔ガス吸引口〕は、前記乾留炉の側面の複数個所に設けることを特徴とする請求項15に記載の高炉用原料の製造装置。
【請求項20】
前記ガス吸引手段〔ガス吸引口〕は、前記乾留炉の側面の複数個所に設けることを特徴とする請求項16に記載の高炉用原料の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉用原料の製造方法および製造装置に関し、特に、成型コークスであるフェロコークスの製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉操業において、石炭をコークス炉で乾留して製造したコークスが一般的に用いられている。近年、コークスの反応性を向上させるため石炭に鉄鉱石を一定量混合して塊成化した後、乾留処理をした成型コークスであるフェロコークスを高炉用原料として用いる技術が開発されている。その中で、フェロコークスの乾留方法として竪型の乾留炉を用いる方法が提案されている。例えば、特許文献1には、上部に乾留ゾーン、下部に冷却ゾーンを有する竪型乾留炉を用いた製造方法が開示されている。このフェロコークスの製造方法は、まず炭素含有物質と鉄含有物質からなる成型物を竪型乾留炉に装入する装入工程を有している。次に、乾留ゾーンにおいて加熱ガスを吹き込み、成型物を乾留し、フェロコークスを製造する乾留工程を有している。そして、冷却ゾーンに設けられた冷却ガスを吹き込み、フェロコークスを冷却する冷却工程を有し、竪型乾留炉の炉上部の排出口から炉内ガスを排出する炉内ガス排出工程を有している。最後に、冷却ゾーン下部からフェロコークスを排出するフェロコークス排出工程を有している。乾留工程では、乾留炉の中間部分の低温ガス吹き込み羽口から、低温ガスを吹き込み、下部の高温ガス吹き込み羽口から高温ガスを吹き込む。ここで、フェロコークスの生産量を増加させるためには、乾留炉の容積を大きくする必要がある。しかし、冷却ガスや高温ガスは、乾留炉の奥行方向(ガス吹込み側から対向する側面への方向)に噴射される。従って、炉内の中央部まで浸透させるためには、炉の奥行方向は、一定以上大きくすることができない。すなわち、乾留炉の形状は、奥行方向に比べて炉幅方向(奥行方向と直交する方向)に長い構造とする必要がある。
【0003】
一方、特許文献2には、成型物を炉幅方向に均一に装入する装置として、装入シュートの出側に、下方になるにしたがって幅広となる斜面を有する分散材を設けるフェロコークスの製造装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-57970号公報
【特許文献2】特開2014-208768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、奥行方向に比べ、炉幅方向に長い構造を有する竪型乾留炉(後述する図1を参照)では、炉幅方向に装入口を複数列配置しても、炉幅長さに対して充分な数の装入口を設置することは困難である。そして、限られた装入口を設置した場合、装入された成型物(以下、「装入物」ともいう。)の安息角に応じた装入分布となり、均一な装入形状が得られないという問題がある。さらに、炉幅方向に均一に成型物が装入できない場合、局所的に粉体圧の高い個所が炉内に生じ、その装入物の重みによって、成型物に割れが生じる可能性がある。また、成型物を炉に装入した際に炉幅方向に成型物の多い個所と少ない個所が発生した場合、炉内のガス流れが不均一となり成型物の乾留に影響を与えるという問題がある。
【0006】
一方、装入物の均一装入装置として前述の特許文献2の装置が開示されているが、装入物には微粉が混入しており、微粉が混入した状態で装入すると、乾留後の成型物の強度にバラツキが生じ、十分な強度を有する成型物を得ることが難しいという問題がある。
【0007】
本発明は上記のような問題点に対してなされたものであり、フェロコークスなどの高炉用原料を高品質かつ高生産性で製造する方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記に記した種々の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、成型コークスを製造する際に、装入後に混入している微粉をガス吸引により効率よく回収するには、ガス吸引口の位置と装入物の高さとが関係していることを見出した。さらに、装入物の高さを測定しながら装入量を制御することが有効であることを知見した。
【0009】
本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものであり、本発明の要旨は、次のとおりである。
〔1〕炭素含有物質と鉄含有物質とを含有する成型物を乾留炉にて高炉用原料を製造する方法において、
前記乾留炉の炉上部から前記成型物を装入する工程〔装入工程〕と、
前記乾留炉の炉頂から堆積された前記成型物の頂点までの高さを測定する工程〔測定工程〕と、
前記炉上部のガスを吸引する工程〔ガス吸引工程〕と、
を有することを特徴とする高炉用原料の製造方法。
〔2〕前記〔1〕において、前記装入工程は、前記測定工程において得られた前記成型物の装入高さに応じて前記成型物の装入量を制御することを特徴とする高炉用原料の製造方法。
〔3〕前記〔1〕または〔2〕において、前記装入工程において、前記ガスを吸引するための吸引口の位置から堆積された前記成型物の頂点までの距離(D)が、200mm~700mmの範囲内となるように装入量を制御することを特徴とする高炉用原料の製造方法。
〔4〕前記〔1〕ないし〔3〕のいずれか一つに記載の前記装入工程において、さらに、前記成型物を前記乾留炉へ間欠的(断続的)に装入するステップを有することを特徴とする高炉用原料の製造方法。
〔5〕前記〔1〕ないし〔4〕のいずれか一つに記載の前記装入工程において、さらに、前記成型物を拡散しながら装入するステップを有することを特徴とする高炉用原料の製造方法。
〔6〕前記〔1〕ないし〔5〕のいずれか一つにおいて、前記ガス吸引工程が、前記乾留炉の側面の複数個所から吸引することを特徴とする高炉用原料の製造方法。
〔7〕炭素含有物質と鉄含有物質とを含有する成型物を乾留炉にて高炉用原料を製造する装置において、
前記乾留炉の炉上部から前記成型物を装入する手段〔装入口〕と、
前記乾留炉の炉頂から堆積された前記成型物の頂点までの高さを測定する手段〔高さ測定器〕と、
前記炉上部のガスを吸引する手段〔ガス吸引口〕と、
を備えることを特徴とする高炉用原料の製造装置。
〔8〕前記〔7〕において、前記装入手段〔装入口〕は、前記測定手段〔高さ測定器〕において得られた前記成型物の装入高さに応じて前記成型物の装入量を制御する手段〔装入量制御装置〕を有することを特徴とする高炉用原料の製造装置。
〔9〕前記〔8〕において、前記装入量制御手段〔装入量制御装置〕が、前記ガス吸引口の位置から堆積された前記成型物の頂点までの距離(D)が、200mm~700mmの範囲内となるように装入量を制御する手段であることを特徴とする高炉用原料の製造装置。
〔10〕前記〔7〕ないし〔9〕のいずれか一つにおいて、前記装入手段〔装入口〕は、さらに、前記装入口の出口に開閉式のゲートを設けることを特徴とする高炉用原料の製造装置。
〔11〕前記〔7〕ないし〔10〕のいずれか一つにおいて、前記装入手段〔装入口〕は、さらに、前記装入手段〔装入口〕の出口直下に拡散部を設けることを特徴とする高炉用原料の製造装置。
〔12〕前記〔7〕ないし〔11〕のいずれか一つにおいて、前記ガス吸引手段〔ガス吸引口〕は、前記乾留炉の側面の複数個所に設けることを特徴とする高炉用原料の製造装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、成型コークスの製造において、竪型乾留炉への装入した後に微粉を炉内ガスとともに吸引して除去することにより、比較的簡便に乾留後の成型コークスの品質を均一化することが可能となり、生産性も向上するという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る製造装置の一例の概要を示す炉上部の模式斜視図である。
図2】本発明に係る製造装置の一例の概要を示す炉上部の模式断面図である。
図3】本発明に係る製造装置を模した試験装置を示す模式断面図である。
図4】本発明に係る製造装置のガス吸引口の位置と粉率との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る高炉用原料の製造方法および製造装置の実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。また、図面は、本発明を概念的に説明するためのものであるから、表わされた各部材の寸法やそれらの比は、実際のものとは異なる場合もある。
【0013】
[製造方法の工程(手順)]
本発明に係る製造方法は、炭素含有物質と鉄含有物質とを含有する成型物を乾留炉にて高炉用原料を製造する方法において、次の工程を有していることを特徴とする。
(1)乾留炉の炉上部から成型物を装入する工程〔装入工程〕
(2)乾留炉の炉頂から堆積された成型物の頂点までの高さを測定する工程〔測定工程〕
(3)炉上部のガスを吸引する工程〔ガス吸引工程〕
以下、図面を参照しながら、上記工程を説明する。
【0014】
図1は、本発明に係る製造装置の一例であるフェロコークスの製造装置(竪型乾留炉)の概要を示す炉上部の模式斜視図である。
【0015】
[装入工程]
まず、装入工程は、乾留炉の炉上部5に設けられた装入シュート1からフェロコークスの原料となる炭素含有物質(石炭等)と鉄含有物質(鉄鉱石等)を含む成型物を装入する工程である。炉上部5とは、乾留炉の上部構造であって、乾留炉の炉頂から成型物が堆積する領域までをいうものとする。成型物を装入する装入シュート1の設置場所は、炉上部内であれば、特に限定されない。
【0016】
さらに、この装入工程においては、以下に述べる間欠的装入ステップおよび成型物拡散装入ステップのいずれかのステップまたは両方のステップを設けることが好ましい。
【0017】
[間欠的装入ステップ]
成型物を乾留炉へ間欠的(断続的)に装入するステップとは、例えば、装入シュート1の出側(装入口の出口)に開閉式のゲート2を設けて、ゲート2を開閉することにより、成型物を炉内に間欠的に装入する方法である。このステップを設ける理由は、乾留炉内部の圧力を一定に保つためと、炉内のガス濃度の変動を小さくするためである。
【0018】
成型物は、微粉が混入した状態で乾留炉の炉上部5内へ装入される。装入前は、ゲート2によって成型物の経路が閉鎖されているが、ゲート2が閉の状態から開となることで装入シュート1内の成型物の経路が開放されて、装入される。ゲート2を閉じて成型物の経路を閉鎖すると、ゲート2の上流側に成型物を1バッチ分(例えば、600~800kg)貯留することができる。通常の操業では、1バッチ分ごとにゲート2を開放し、成型物を装入していく。装入ごとに装入物高さを測定する測定工程へと移る。
【0019】
[成型物拡散装入ステップ]
装入の際に、成型物を拡散しながら装入するステップとは、具体的には、装入シュート1の出側(装入口の出口)直下に、四角錘形状(ピラミッド型形状)の拡散部3を設けて拡散する方法である。この拡散装入ステップを設ける理由は、この拡散部3の形状により、装入される成型物が前方だけでなく左右に広がって装入されるので、装入物表面がより均一な形状になるからである。
【0020】
[測定工程]
続いて、測定工程は、乾留炉の炉頂から装入後の堆積された成型物の頂点までの距離(以下、「装入物の高さ」ともいい、Hで表す。)を測定する工程である。
【0021】
ここで、装入物高さを測定する手段である測定装置としては、マイクロ波レベル計を用いることが好ましい。マイクロ波を用いることで、微小な粉体が混在する炉内環境においても、正確な距離が測定できるからである。その他には、レーザー距離計や接触式の距離計などが挙げられる。
【0022】
また、前述の装入工程において装入される成型物の量(装入量)は、この測定工程において測定した装入物の高さ(H)に応じて制御することが好ましい。その理由は、後述する「ガス吸引口設置位置の検討」にて説明する。
【0023】
[ガス吸引工程]
さらに、ガス吸引工程は、成型物装入後に炉上部と装入物間に浮遊する微小な粉体を炉内ガスとともに吸引する工程である。ここで、微小な粉体とは、一般的には粉体の平均粒子径が100μm以下のものをいうが、本発明においては、成型物との対比から、平均粒子径が20mm未満のものを粉体と定義した。
【0024】
炉内ガスを吸引するためには、炉上部5の炉壁側面に設けたガス吸引口6からガス吸引ダクト7を介して炉外に設置された吸引ポンプ(図示せず)によりガスを吸引している。
【0025】
[ガス吸引口設置位置の検討]
そこで、装入量を制御して炉内の微粉を減らすには、ガス吸引口をどのような位置に設置するかが重要であると考え、ガス吸引口の位置と粉体の混入状態について検討した試験について説明する。
【0026】
まず、図3に示した本発明に係る製造装置を模した試験装置(上部構造)10を用いて、ガス吸引口6の適正な設置位置に関する検討を行った。
【0027】
装入する試験用原料として、成型物90wt%と粉体10wt%を混合したものを用意した。この試験用原料を装入シュート1から装入し、所定時間のガス吸引を行い、ガス吸引後の装入物を採取し、その装入物における粉体の重量比率(粉率)を確認した。そして、ガス吸引におけるガス吸引口6の設置位置を変更して、同様の装入試験を行い、それぞれの粉率を確認した。ここで、平均粒子径が20mm以上の粒子を成型物とし、前述したように平均粒子径が20mm未満の粒子を粉体とし、粉率は、採取した装入物中の粉体の重量比率から算出した。
【0028】
それらの結果を図4に示す。ガス吸引口の設置位置としては、装入物の高さ(装入物の頂上)から下流側に200mm~700mmの範囲に設置した場合に、装入物の粉率が低減されることがわかった。より好ましくは、400mm~700mmである。
【0029】
以上の結果から、本発明者らは、実際の操業においては、装入量に応じてガス吸引口の設置位置を変更することは困難であるから、ガス吸引口の設置位置に対して、装入物をどこまで装入すれば良いかという観点で操業することが現実的であることを見出した。
【0030】
すなわち、装入物高さをガス吸引口の位置に対して上流側に、距離Dが200mm~700mmの範囲内に収まるように、高さ位置を測定しながら装入量を制御することで、装入物に含有する粉体を炉側面から効率的に排出することが可能となる。
【0031】
[ガス吸引口および吸引方法]
次に、ガス吸引口の設置位置は、炉体の装入シュート1側と反対側の両方の側面であって、前述した高さ位置に設置するのが望ましい。また、炉の奥行方向(図1のa方向)に複数個所設置するのが望ましい。例えば、装入シュート1が2基設置された炉の場合には、装入シュート1側の側面に、ガス吸引口6を3個所設置し、反対側の側面にも、3個所設置し、合計6個所設置する。装入シュート1側とその反対側側面にガス吸引口6を設置することで炉壁近傍に分散した粉体を効率的に回収することができる。また、炉の奥行方向にガス吸引口6を設置することで炉内の全面にわたり粉体の回収が可能となる。さらに、炉内に複数個所設置することで、炉内のガス流れが均一となり、均一な強度を有するフェロコークスを製造することができる。
【0032】
なお、ガス吸引口の形状は、例えば、縦100mm×横1000mmの長方形である。複数個設置した場合の隣の吸引口との間隔は、例えば、1200mmである。
【0033】
さらに、ガス吸引口の入口には、粒径の大きい成型物が吸引されないように、フィルター(ステンレス鋼などの金属製で格子形状またはスリット形状のもので、格子またはスリットの間隔は10mm程度)を設けるのが好ましい。
【0034】
また、ガスを吸引する能力としては、微粉だけを吸引することが好ましく、例えば、吸引速度が5~10m/sとするのが好ましい。吸引速度が5m/s未満では、十分な吸引能力が得られず微粉が充分に吸引されないためであり、10m/sを超えるとフィルター部に微粉以外の粒子が張り付いて吸引能力が低下するためである。より好ましくは、7~8m/sである。
【0035】
[フェロコークスの製造装置(乾留炉)]
ここで、フェロコークスの製造装置(乾留炉)の全体構造について説明する。
前述したように、図1は、本発明に係る製造装置の炉上部の概略斜視図である。この炉上部5を装入ゾーンともいう。炉上部5の形状は、例えば、奥行aが1.5m、炉幅bが6mである。乾留炉の全体の高さ(全長)は、例えば、28mである。乾留炉の全体構造としては、上部から装入ゾーン、乾留ゾーン、冷却ゾーンおよび排出ゾーンで構成されている。装入ゾーンの下部に、成型物を加熱して乾留するための乾留ゾーン9が設けられている。この乾留ゾーン9は、加熱温度によって、2つの加熱帯に分かれており、上側(装入ゾーン側)が低温帯(温度範囲は350~500℃)で、その下側に高温帯(温度範囲は700~850℃)が設けられている。それぞれ炉の側面(装入シュート側の対面側)から熱風を吹き込む羽口が備えられている。さらに、乾留ゾーン9の下部は、成型コークスを冷却するための冷却ゾーンが設けられており、冷却後に、炉の下部から成型コークスを排出する排出ゾーンが設けられている。
【実施例0036】
以下、実施例を挙げて本発明の実施形態をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
図1に示す本発明に係る製造装置を用いて、装入量と装入物高さ位置との関係を確認した。本発明例に相当する試料No.1~7は、装入の際の装入物高さ位置を測定しながら成型物の装入量を制御し、装入後の炉内ガスを吸引し、乾留した後の成型コークスをサンプルリングし、その強度を確認した。比較例に相当する試料No.8は、ガス吸引口を設置せずガス吸引を実施しない場合であり、その成型コークスの強度についても確認した。本実施例におけるガス吸引の吸引速度は、8m/sとした。
【0038】
サンプルリングした成型コークスの強度は、JIS K 2151に記載の回転強度試験法を用いてDI150 15を測定し、その強度の平均値、最大値および最小値を求めた。ここで、成型物の強度(表面破壊強度)であるDI150 15は、ドラム試験機で150回転の衝撃を与えた後の、15mm以上の成型物の質量割合を示す。
【0039】
これらの結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
表1の結果から、ガス吸引を実施しない試料No.8(比較例)に比べて、試料No.1~7(本発明例)の場合には、強度の平均値が高く、最大値と最小値のバラツキも少なくなっていることがわかる。さらに、装入物高さ位置が、好ましい範囲である200~700mmの場合に制御された場合(試料No.1~4)の場合には、平均強度が75以上であり、最大値と最小値のバラツキもさらに少なくなっていることがわかる。これにより、高品質な成型物を製造することが可能となった。
【符号の説明】
【0042】
1 装入シュート
2 ゲート
3 拡散部
4 装入物
5 炉上部
6 ガス吸引口
7 ガス吸引ダクト
8 装入物高さ測定器
9 乾留ゾーン
10 試験装置(上部構造)
a 奥行
b 炉幅
H 炉頂から装入物までの距離
D 装入物高さ位置からガス吸引口(中心部)までの距離
図1
図2
図3
図4