(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044436
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/02 20160101AFI20240326BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240326BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H02J7/02 H
H02J7/00 V
H02J7/00 302A
H01M10/48 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149944
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】八坂 賢史
(72)【発明者】
【氏名】金田 健佑
(72)【発明者】
【氏名】鬼束 講介
(72)【発明者】
【氏名】吉富 大祐
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503AA04
5G503BA01
5G503BB05
5G503DA13
5G503EA02
5G503FA06
5G503GB06
5G503HA03
5H030AA01
5H030AS20
5H030FF43
5H030FF44
(57)【要約】
【課題】バランス処理においてバッテリセルの過剰放電を防止できる制御装置を提供することにある。
【解決手段】制御装置において、第1蓄電部は、複数のバッテリセルを有しており、負荷に電力を供給する。特性値導出部は、前記複数のバッテリセルの各々の電圧のばらつきを示す特性値を導出する。バランス処理部は、前記電圧のばらつきを低減するバランス処理を実行可能である。前記制御部は、前記特性値導出部により導出された前記特性値が第1閾値以上である場合に、前記バランス処理の実行を指示する第1コマンドを前記バランス処理部に送信する。前記バランス処理部は、前記第1コマンドの受信に応じて、前記複数のバッテリセルの各々の電圧のうち最低電圧よりも所定電圧だけ高い目標電圧を決定する。前記バランス処理部は更に、決定した前記目標電圧に基づく前記バランス処理を実行する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバッテリセルを有しており、負荷に電力を供給する第1蓄電部と、
前記複数のバッテリセルの各々の電圧のばらつきを示す特性値を導出する特性値導出部と、
前記電圧のばらつきを低減するバランス処理を実行可能なバランス処理部と、
制御部と
を備え、
前記制御部は、前記特性値導出部により導出された前記特性値が第1閾値以上である場合に、前記バランス処理の実行を指示する第1コマンドを前記バランス処理部に送信し、
前記バランス処理部は、前記第1コマンドの受信に応じて、前記複数のバッテリセルの電圧のうち最低電圧よりも高い目標電圧を決定し、決定した前記目標電圧に基づく前記バランス処理を実行する、制御装置。
【請求項2】
前記バランス処理部は、前記複数のバッテリセルのうち、前記目標電圧より高い電圧を有するバッテリセルを前記目標電圧になるように放電させて、前記電圧のばらつきを低減する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記複数のバッテリセルの特性値が第2閾値以下である場合に、前記バランス処理を完了させ、
前記第2閾値は、前記第1閾値より小さく、前記複数のバッテリセルの電圧に対する前記目標電圧のばらつきを示す特性値よりも大きい、請求項1又は請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記目標電圧は、前記複数のバッテリセルの各々の電圧の平均値と、前記最低電圧との間の値を有する、請求項1又は請求項2に記載の制御装置。
【請求項5】
充放電可能な第2蓄電部と、
前記第1蓄電部から前記第2蓄電部に電力供給可能な給電部と
を更に備え、
前記制御部は、前記特性値導出部により導出された前記特性値が前記第1閾値以上である場合に、前記第1蓄電部から前記第2蓄電部への電力供給を指示する第2コマンドを前記給電部に送信する、請求項1又は請求項2に記載の制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記特性値導出部により導出された前記特性値が前記第1閾値以上であって、前記第2蓄電部の電圧が第3閾値以上である場合に、前記第2コマンドを前記給電部に送信せず、
前記バランス処理の実行中に、前記第2蓄電部の電圧が前記第3閾値未満である場合に、前記第2コマンドを前記給電部に送信する、請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記負荷の始動と停止とを切り替える切換部を更に備え、
前記制御部は、前記切換部が停止に切り替えられ、且つ、前記特性値導出部により導出された前記特性値が前記第1閾値以上である場合に、前記第1コマンドを前記バランス処理部に送信する、請求項1又は請求項2に記載の制御装置。
【請求項8】
前記バランス処理の実行中に前記バランス処理に関連する画像を表示する表示部を更に備える、請求項7に記載の制御装置。
【請求項9】
前記制御部は、第1文字列及び第2文字列の少なくとも一方と、第3文字列とを含む前記画像を生成し、
前記第1文字列は、前記バランス処理の終了後に前記制御装置が停止することを示し、
前記第2文字列は、前記バランス処理の実行中に前記切換部により始動に切り替えることが可能であることを示し、
前記第3文字列は、前記バランス処理が実行されていることを示す、請求項8に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術に係るセル容量調整装置は、複数のバッテリセルが直列接続されたバッテリモジュールを搭載する電動機器に設けられる。セル容量調整装置は、電動機器の動作を休止すると、バランス処理を実行する。バランス処理では、バッテリモジュールに含まれるバッテリセルの電圧が取得された後、全電圧の中の最低電圧が目標電圧として設定される。セル容量調整装置は、全てのバッテリセルの電圧が目標電圧に揃うようにバランス処理を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、背景技術では、目標電圧(即ち、最低電圧)を下回るまで過剰にバッテリセルを放電させるおそれがある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、バランス処理においてバッテリセルの過剰放電を防止できる制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る制御装置は、第1蓄電部と、特性値導出部と、バランス処理部と、制御部とを備える。前記第1蓄電部は、複数のバッテリセルを有しており、負荷に電力を供給する。前記特性値導出部は、前記複数のバッテリセルの各々の電圧のばらつきを示す特性値を導出する。前記バランス処理部は、前記電圧のばらつきを低減するバランス処理を実行可能である。前記制御部は、前記特性値導出部により導出された前記特性値が第1閾値以上である場合に、前記バランス処理の実行を指示する第1コマンドを前記バランス処理部に送信する。前記バランス処理部は、前記第1コマンドの受信に応じて、前記複数のバッテリセルの電圧のうち最低電圧よりも所定電圧だけ高い目標電圧を決定する。前記バランス処理部は更に、決定した前記目標電圧に基づく前記バランス処理を実行する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、バランス処理においてバッテリセルの過剰放電を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る制御装置を備える作業機械のブロック図である。
【
図2】
図1に示されるバッテリパックの構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図1に示される制御装置100の処理を示すフローチャートである。
【
図4】
図3に示されるバランス処理の詳細を示す図である。
【
図5】
図1に示されるディスプレイ9の表示画面例を示す図である。
【
図6A】
図1に示される制御装置100の処理の変形例の第1部分を示すフローチャートである。
【
図6B】
図1に示される制御装置100の処理の変形例の第2部分を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態及び各種変形例を説明する。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0010】
[実施形態]
以下、
図1を参照して、本発明の一実施形態に係る制御装置100を備える作業機械200について説明する。作業機械200は、例えば油圧ショベル又はホイルローダである。
図1は、実施形態に係る制御装置100を備える作業機械200のブロック図である。
図1に示されるように、作業機械200は、制御装置100と、負荷としての電動モータ201と、油圧ポンプ202と、コントロールバルブ203と、油圧アクチュエータ204とを備えている。
【0011】
電動モータ201は、例えば三相交流モータであり、インバータ3から交流電力が与えられると、駆動力を生成する。油圧ポンプ202は、電動モータ201からの駆動力により動作する。その結果、コントロールバルブ203を介して油圧アクチュエータ204に作動油が供給される。油圧アクチュエータ204は、例えば、ブームシリンダ、アームシリンダ、作業具シリンダ、スイング用油圧シリンダ、旋回用の油圧シリンダである。
【0012】
制御装置100は、電動モータ201と電気的に接続されており、電動モータ201への電力供給を制御する。制御装置100は、整流器1と、バッテリパック2と、インバータ3と、DC-DCコンバータ(以下、「コンバータ」と略記する。)4と、低電圧バッテリ5と、ECU(Electronic Control Unit)6と、自己保持回路7と、キースイッチ8と、ディスプレイ9とを備える。
【0013】
バッテリパック2は、第1蓄電部の一例である。コンバータ4は、給電部の一例である。低電圧バッテリ5は、第2蓄電部の一例である。ECU6は、制御部の一例である。キースイッチ8は、切換部の一例である。ディスプレイ9は、表示部の一例である。
【0014】
整流器1は、外部電源300から給電経路301を介して交流電圧(交流電力)の供給を受けることが可能である。外部電源300は、例えば商用電源又は電源装置である。給電経路301は、例えば電力ケーブルである。整流器1は更に、バッテリパック2とインバータ3とに電気的に接続されている。整流器1は、作業機械200の動作モードが第1モードであるとき、交流電圧を直流電圧に変換し、変換した直流電圧をバッテリパック2に与える。整流器1は更に、動作モードが第2モードであるとき、交流電圧を直流電圧に変換し、変換した直流電圧をインバータ3に与える。整流器1は更に、動作モードが第3モードであるとき、整流器1からバッテリパック2及びインバータ3への給電経路を遮断する。その結果、バッテリパック2により直流電圧がインバータ3に与えられる。第1モード、第2モード及び第3モードは、作業機械200に設けられたモードスイッチ(図示せず)により選択的に切り替えられる。
【0015】
バッテリパック2は、充放電可能な二次電池である。バッテリパック2は、典型的には、リチウムイオンバッテリである。バッテリパック2は、第1モードのとき、整流器1から直流電圧が与えられることで、充電を行う。バッテリパック2は、第3モードのときには放電することにより、直流電圧をインバータ3に与える。
【0016】
インバータ3は、整流器1又はバッテリパック2から与えられた直流電圧を交流電圧に変換し、変換した交流電圧を電動モータ201に与える。換言すると、バッテリパック2は、インバータ3を介して、負荷としての電動モータ201に交流電圧を与える。
【0017】
コンバータ4は、バッテリパック2から与えられる直流電圧を降圧して、低電圧バッテリ5の充電に適した直流電圧に変換する。コンバータ4は、変換した直流電圧を低電圧バッテリ5に与える。即ち、コンバータ4は、バッテリパック2から低電圧バッテリ5に電力供給が可能である。
【0018】
低電圧バッテリ5は、充放電可能な二次電池である。低電圧バッテリ5は、コンバータ4から直流電圧が与えられることで充電を行う。低電圧バッテリ5は、給電経路101を介してECU6に電気的に接続されている場合に、直流電圧をECU6に与える。なお、低電圧バッテリ5は、典型的には、リチウムイオンバッテリ又は鉛蓄電池である。
【0019】
ECU6は、低電圧バッテリ5からの直流電圧により動作する。即ち、ECU6は、低電圧バッテリ5から電力供給を受ける。ECU6は、回路基板上に実装された各種ICを有する。各種ICは、例えば電源回路及びマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータは、メモリを内蔵する。なお、メモリは、マイクロコンピュータとは別のICとして回路基板に実装されてもよい。メモリは、制御プログラム及び各種データを記憶する。マイクロコンピュータは、動作を開始すると、制御プログラムの実行を開始し、作業機械200の構成各部を制御する。
【0020】
自己保持回路7は、給電経路101上に設けられたリレーの動作を保持する回路である。自己保持回路7は、キースイッチ8からの始動信号が入力されると、リレーをオンにする。その結果、ECU6と低電圧バッテリ5とは給電経路101により電気的接続される。即ち、低電圧バッテリ5からECU6への電力供給が開始される。自己保持回路7は、ECU6から解除信号が入力されると、リレーをオフにする。その結果、給電経路101が遮断される。
【0021】
キースイッチ8は、作業機械200のステアリングホイール(図示せず)の付近に配置されている。キースイッチ8は、オペレータの操作により、作業機械200の始動(即ち、オン)と停止(即ち、オフ)とを切り替えるスイッチである。即ち、キースイッチ8は、負荷としての電動モータ201の始動と停止とを切り替える。キースイッチ8は、始動に切り換えられると、始動信号を自己保持回路7に送信する。また、キースイッチ8が始動に切り換えられると、作業機械200のエンジン(図示せず)が始動する。それに対し、キースイッチ8は、停止に切り替えられることにより、停止信号をECU6に送信する。また、キースイッチ8が停止に切り換えられると、エンジンが停止する。
【0022】
ディスプレイ9は、作業機械200の運転座席(図示せず)の付近に配置されている。ディスプレイ9は、ECU6から送信されてくる各種画像データが示す画像を画面に表示する。特に、ディスプレイ9は、バランス処理(後述)の実行中にバランス処理に関連する画像を画面に表示する。
【0023】
次に、
図2を参照して、バッテリパック2の詳細について説明する。
図2は、
図1に示されるバッテリパック2の構成例を示すブロック図である。
図2に示されるように、バッテリパック2は、4つのバッテリモジュール21と、BMU(Battery Management Unit)22とを備える。なお、バッテリモジュール21は、組電池とも呼ばれる。バッテリモジュール21の数は1以上であればよい。
【0024】
各バッテリモジュール21は、CMU(Cell Management Unit)211と、4つのバッテリセル212と、4つのセルバランス回路213と、4つの電圧検出回路214とを有する。即ち、バッテリパック2は、複数のバッテリセル212を有する。なお、
図2では、都合上、参照符号「211」,「212」,「213」,「214」は、1つのCMUと、1つのバッテリセルと、1つのセルバランスと、1つの電圧検出回路とに付されている。
【0025】
CMU211は、同一バッテリモジュール21が有する4つのバッテリセル212の状態を監視し制御する。
【0026】
各バッテリセル212は、充放電可能である。バッテリセル212は、バッテリパック2に合計16個設けられる。16個のバッテリセル212は、直列に接続される。また、16個のバッテリセル212の各々には、セルバランス回路213と電圧検出回路214とが1つずつ並列に接続される。
【0027】
各セルバランス回路213は、放電抵抗及びスイッチング素子を有する。スイッチング素子は、同一バッテリモジュール21に含まれるCMU(以下、「対応CMU」と記載する。)211の制御下でオンオフにされる。スイッチング素子がオンの間、放電抵抗と並列接続されたバッテリセル212が放電する。その結果、バッテリパック2が有するセル電圧のばらつきが低減する。
【0028】
各電圧検出回路214は、対応CMU211の制御下で、自身と並列接続されたバッテリセル212の電圧(以下、「セル電圧」と記載する。)を検出して、検出されたセル電圧を対応CMU211に出力する。
【0029】
BMU22は、バッテリパック2に含まれる4つのバッテリモジュール21の状態を制御する。BMU22は、各電圧検出回路214からのセル電圧を、各CMU214から取得する。BMU22は、特性値導出部の一例として機能し、取得した各セル電圧のばらつきの大きさを示す特性値を導出する。BMU22は、導出した特性値を、ECU6に出力する。詳細には、特性値は、全てのセル電圧における最大値と最小値との差である。従って、特性値が簡単な演算で導出される。
【0030】
次に、
図1から
図3を参照して、制御装置100の処理について詳細に説明する。
図3は、
図1に示される制御装置100の処理を示すフローチャートである。
【0031】
図3に示されるように、キースイッチ8が始動に切り換えられたことに応じて、制御装置100は処理を開始し、作業機械200が始動する。
【0032】
ステップS101において、ECU6は、特性値の送信要求をBMU22に周期的に送信する。
【0033】
ステップS102において、BMU22は、送信要求の受信に応じて、各電圧検出回路214からセル電圧を、同一バッテリモジュール21のCMU211を通じて取得する。BMU22は、取得したセル電圧に基づいて特性値を導出する。BMU22は、導出した特性値をECU6に送信する。
【0034】
ステップS103において、ECU6は、受信した特性値が第1閾値以上か否かを判定する。第1閾値は、セル電圧のばらつきが大きいか小さいかを示す基準値であって、予め定められている。ECU6は、第1閾値以上でないと判定した場合(ステップS103でNo)、ステップS106を実行する。一方、ECU6は、第1閾値以上であると判定した場合(ステップS103でYes)、ステップS104を実行する。
【0035】
ステップS104において、ECU6は、第1コマンドをBMU22に送信する。第1コマンドは、バランス処理の実行を指示するためのコマンドである。
【0036】
ステップS105において、BMU22は、第1コマンドの受信に応じて、ステップS102で取得した複数のセル電圧のうち最低電圧を特定する。BMU22は、特定した最低電圧よりも高い目標電圧を決定する。
【0037】
ステップS105において、BMU22は更に、バランス処理の実行を各CMU211に指示する。BMU22及び各CMU211は、バランス処理部の一例として、決定された目標電圧に基づくバランス処理を実行する。目標電圧に基づくバランス処理の結果、各バッテリモジュール21における複数のバッテリセル212のセル電圧のばらつきが低減する。目標電圧は、最低電圧より高い値に設定されるため、全バッテリセル212が放電により最低電圧を下回らない。即ち、バランス処理においてバッテリセルの過剰放電を防止できる。
【0038】
バランス処理の詳細は、下記の通りである。まず、各CMU211は、同一バッテリモジュール21が有する4つのバッテリセル212から、対象バッテリセル212を特定する。対象バッテリセル212は、目標電圧より高いセル電圧を有するバッテリセル212である。各CMU211は、対象バッテリセル212に並列接続されたセルバランス回路(以下、「対応セルバランス回路」と記載する。)213のスイッチング素子をオンにする。その結果、対象バッテリセル212は、対応セルバランス回路213に含まれる放電抵抗から放電する。各CMU211は、対象バッテリセル212に並列接続された電圧検出回路214によるセル電圧が目標電圧に到達したことに応じて、各対応セルバランス回路213のスイッチング素子をオフにする。各CMU211は、全ての対象バッテリセル212のセル電圧を目標電圧よりも若干高い電圧まで低減させる。
【0039】
バランス処理において、ECU6は、ステップS105Aを周期的に実行する。ステップS105Aにおいて、ECU6は、ステップS101,S102と同様にして、BMU22から特性値を受信する。ECU6は更に、受信した特性値が第2閾値以下か否かを判定する。第2閾値は、第1閾値より小さく、且つ複数のバッテリセル212のセル電圧の前記目標電圧に対するばらつきを示す特性値である。第2閾値は、予め定められている。ECU6は、第2閾値以下でないと判定した場合(ステップS105AでNo)、ステップS105Aを実行する。一方、ECU6は、第2閾値以下であると判定した場合(ステップS105AでYes)、バランス処理を終了し、次の送信要求の送信周期になるまで、ステップS101の実行を待機する。
【0040】
ステップS106において、ECU6は、キースイッチ8から停止信号を受信したか否かを判定する。ECU6は、停止信号を受信していないと判定した場合(ステップS106でNo)、次の送信要求の送信周期になるまで、ステップS101の実行を待機する。一方、ECU6は、停止信号を受信したと判定した場合(ステップS106でYes)、ステップS107を実行する。
【0041】
ステップS107~S109は、ステップS101~S103と同様の処理である。ECU6は、第1閾値以上でないと判定した場合(ステップS109でNo)、ステップS110を実行する。一方、ECU6は、第1閾値以上であると判定した場合(ステップS109でYes)、ステップS111を実行する。
【0042】
ステップS110において、ECU6は、バランス処理を実行する必要がないことから、自己保持回路7に解除信号を送信する。自己保持回路7は、解除信号の受信に応じて、リレーをオフにすることにより給電経路101を遮断する。その結果、作業機械200は停止する。即ち、
図3の処理は終了する。
【0043】
ステップS111において、ECU6は、第1コマンドをBMU22に送信する。即ち、ECU6は、キースイッチ8が停止に切り替えられ且つBMU22により導出された特性値が第1閾値以上である場合に、第1コマンドをBMU22に送信する。従って、バランス処理は、作業機械200の停止後に実行される。その結果、次回の作業機械200の動作時にバッテリパック2から電力が安定的に供給される。
【0044】
ステップS111では更に、ECU6は、第2コマンドをコンバータ4に送信する。第2コマンドは、バッテリパック2から低電圧バッテリ5への電力供給を指示するためのコマンドである。
【0045】
ステップS112において、コンバータ4は、第2コマンドの受信に応じて、バッテリパック2から低電圧バッテリ5に直流電圧を与える。その結果、低電圧バッテリ5は充電される。ECU6は、キースイッチ8が停止に切り替えられ且つBMU22により導出された特性値が第1閾値以上である場合に、第2コマンドをコンバータ4に送信する。従って、ECU6には、低電圧バッテリ5からの直流電圧が途絶えることなく与えられ続けるため、バランス処理が安定的に実行される。
【0046】
ステップS113において、BMU22は、第1コマンドの受信に応じて、ステップS105と同様に、バランス処理の実行を各CMU211に指示する。その結果、ステップS105の同様のバランス処理が実行される。
【0047】
バランス処理において、ECU6は、ステップS113Aを周期的に実行する。ステップS113Aにおいて、ECU6は、ステップS101,S102と同様にして、BMU22から特性値を受信する。ECU6は更に、受信した特性値が第2閾値以下か否かを判定する。ECU6は、第2閾値以下でないと判定した場合(ステップS113AでNo)、ステップS113Aを実行する。一方、ECU6は、第2閾値以下であると判定した場合(ステップS113AでYes)、バランス処理を終了して、ステップS110を実行する。
【0048】
次に、
図1から
図4を参照して、バランス処理の詳細について説明する。
図4は、
図3に示されるバランス処理の詳細を示す図である。
図4には、セル電圧の分布状況A~Dが示されている。分布状況A~Dの各々には、複数のバッテリセル212の例示として、4つのバッテリセルA1~D1が示されている。
【0049】
セル電圧の分布状況Aには、第1コマンドの送信時(
図3のステップS111を参照)におけるバッテリセルA1~D1のセル電圧が示されている。セル電圧の分布状況Aには、バッテリセルA1のセル電圧は、2.54[V]と例示されている。バッテリセルB1~D1のセル電圧は、図示された通りである。
【0050】
セル電圧の分布状況Bには、目標電圧の決定時(
図3のステップS113を参照)におけるバッテリセルA1~D1のセル電圧が示されている。セル電圧の分布状況Bにおいて、バッテリセルA1~D1のセル電圧は、第1コマンドの送信時と同様である。セル電圧の分布状況Bには、目標電圧として、バッテリセルA1~D1の中で最低のセル電圧(2.50[V])に所定電圧としての20[mV]を加算した2.52[V]が示されている。
【0051】
セル電圧の分布状況Cは、バランス処理の実行中(
図3のステップS113を参照)におけるバッテリセルA1~D1のセル電圧が示されている。セル電圧の分布状況Cに示されるように、バッテリセルA1~D1のうち、目標電圧より高いセル電圧を有するバッテリセルA1,C1は放電する。そのため、バッテリセルA1,C1のセル電圧は、バランス処理の開始前と比較して、目標電圧に近づく。
【0052】
セル電圧の分布状況Dに示されるように、バランス処理の実行中、バッテリパック2からの直流電圧により低電圧バッテリ5は充電される。その結果、バッテリセルA1~D1の各セル電圧は低下する。しかしながら、目標電圧は、最低セル電圧より高い値に設定されるため、全バッテリセル212が放電により最低電圧を下回らない。
【0053】
次に、
図5を参照して、
図3のステップS113(バランス処理)をより詳細に説明する。
図5は、
図1に示されるディスプレイ9に表示される通知画像93を示す図である。通知画像93は、画像の一例である。
【0054】
ECU6は、ステップS113(バランス処理)の実行中に、
図5に示されるような通知画像93を示す画像データをディスプレイ9に表示させる。通知画像93は、バランス処理に関連する画像であって、第1文字列931及び第2文字列932の少なくとも一方と、第3文字列933とを含む。第1文字列931は、バランス処理の終了後に制御装置100が停止することを示す文字列である。第2文字列932は、バランス処理の実行中にキースイッチ8により作業機械200を始動に切り替えることが可能であることを示す文字列である。第3文字列933は、バランス処理が実行されていることを示す文字列である。
【0055】
第2変形例によれば、作業機械200のオペレータは、通知画像93を観ることにより、停止中の作業機械200でバランス処理が実行されていることを理解できる。また、オペレータは、第1文字列931及び第2文字列932の少なくとも一方と、第3文字列933とを観ることで、様々な情報を視覚的に得ることができる。
【0056】
[変形例]
次に、
図1、
図2、
図6A及び
図6Bを参照して、制御装置100の処理の変形例について詳説する。
図6A及び
図6Bは、
図1に示される制御装置100の処理の変形例の第1部分及び第2部分をそれぞれ示すフローチャートである。
【0057】
図6A及び
図6Bに示されるように、制御プログラムを実行している場合に、制御装置100は、ステップS201~S219,S205A,S214A,S219Aを実行する。これらのうち、ステップS201~S210,S205Aは、
図3のステップS101~S110,S105Aと同様であるため、それぞれの説明を控える。
【0058】
ステップS211は、ステップS209において特性値が第1閾値以上であると判定された場合に実行される。ステップS211において、ECU6は、低電圧バッテリ5の現在の電圧値が第3閾値に到達しているか否かを判定する。第3閾値は、低電圧バッテリ5への電力供給を実行するか否かを示す基準値である。電圧値が第3閾値以上でないと判定した場合(ステップS211でNo)、ステップS212~S214,S214Aが実行される。なお、ステップS212~S214は、
図3のステップS111~S113,S113Aと同様であるため、それぞれの説明を控える。一方、電圧値が第3閾値以上であると判定した場合(ステップS211でYes)、ステップS215が実行される。
【0059】
ステップS215において、ECU6は、第1コマンドをBMU22に送信する。しかし、ステップS215では、第2コマンドは送信されない。詳細には、BMU22により導出された特性値が第1閾値以上であって、低電圧バッテリ5の現在の電圧値が第3閾値以上であると判定した場合に、バッテリパック2の直流電圧は、低電圧バッテリ5に供給されない。従って、バランス処理の実行中に、バッテリパック2の各セル電圧が安定する。
【0060】
ステップS216において、BMU22は、第1コマンドの受信に応じて、ステップS205と同様に、バランス処理の実行を各CMU211に指示する。その結果、ステップS205の同様のバランス処理が実行される。
【0061】
次に、ステップS217において、ECU6は、ステップS211と同様に、低電圧バッテリ5の現在の電圧値が第3閾値に到達しているか否かを判定する。電圧値が第3閾値以上であると判定した場合(ステップS217でYes)、ステップS219Aが実行される。一方、電圧値が第3閾値以上でないと判定した場合(ステップS217でNo)、ステップS218が実行される。
【0062】
ステップS218では、ECU6は、第2コマンドをコンバータ4に送信する。即ち、ECU6は、バランス処理の実行中に、低電圧バッテリ5の電圧値が第3閾値以上であると判定した場合に、第2コマンドを送信する。
【0063】
ステップS219において、コンバータ4は、第2コマンドの受信に応じて、バッテリパック2から低電圧バッテリ5に直流電圧を与える。その結果、バランス処理が電力不足により途絶えることなく安定的に実行される。
【0064】
ステップS217でYesと判定された場合、又はステップS219の実行後に、ステップS219Aが実行される。ステップS219Aは、ステップS105Aと同様の処理である。ECU6は、第2閾値以下でないと判定した場合(ステップS219AでNo)、ステップS217を実行する。一方、ECU6は、第2閾値以下であると判定した場合(ステップS219AでYes)、ステップS210を実行する。
【0065】
以上、図面を参照して本開示の実施形態について説明した。ただし、本開示は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施できる。また、上記の実施形態に開示される複数の構成要素は適宜改変可能である。例えば、ある実施形態に示される全構成要素のうちのある構成要素を別の実施形態の構成要素に追加してもよく、又は、ある実施形態に示される全構成要素のうちのいくつかの構成要素を実施形態から削除してもよい。
【0066】
また、図面は、本開示の理解を容易にするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚さ、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の構成は一例であって、特に限定されるものではなく、本開示の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【0067】
(1)実施形態では、電動モータ201が三相交流モータであるため、バッテリパック2は、インバータ3を介して、負荷としての電動モータ201に交流電力を与える。しかし、これに限らず、電動モータ201が直流モータの場合には、バッテリパック2は、DC-DCコンバータを介して、又は直接的に電動モータ201に直流電圧を与えることができる。
【0068】
(2)実施形態では、特性値は、全てのセル電圧における最大値と最小値との差であった。しかし、これに限らず、特性値は、全てのセル電圧の分散又は標準偏差でもよい。他にも、バッテリモジュール21ごとにセル電圧の最小値(即ち、実施形態では4つのセル電圧)が選択される。選択されたセル電圧における最大値と最小値との差が特性値として導出されてもよい。
【0069】
(3)実施形態では、制御装置100は、作業機械200の電動モータ201を制御していた。しかし、これに限らず、制御装置100は、例えば電気自動車のモータを制御してもよい。他にも、制御装置100は、バッテリパック2を備える電気機器又は電子機器に適用可能である。
【0070】
(4)実施形態では、制御装置100は、オペレータにより操作される作業機械200に適用されていた。しかし、これに限らず、制御装置100は、遠隔操作可能な作業機械200に適用されてもよい。この場合、制御装置100は、キースイッチ8の代わりに、始動及び停止が切り換えるためのリモートコントローラを備える。他にも、制御装置100は、自動運転可能な作業機械200に適用されてもよい。この場合、制御装置100は、キースイッチ8の代わりに、ECU6が作業機械200の始動及び停止を切り換える。
【0071】
(5)実施形態では、制御装置100は、ディスプレイ9を備えていた。しかし、これに限らず、作業機械200がリモートコントローラにより遠隔操作可能であったり、クラウドコンピュータにより監視可能であったりする場合、制御装置100がディスプレイ9を備えている必要はない。詳細には、制御装置100は、無線通信インタフェースを通じて、状態画像データをリモートコントローラ又はクラウドコンピュータに送信すればよい。
【0072】
(6)実施形態では、
図3と、
図6A及び
図6Bに示されるように、キースイッチ8の停止信号の受信前及び受信後にバランス処理は実行可能であった。しかし、これに限らず、バランス処理は、少なくとも停止信号の受信後に実行されるように制御プログラムは作成されればよい。
【0073】
(7)実施形態では、目標電圧は、最低電圧よりも高い電圧であった。しかし、これに限らず、目標電圧は、最低電圧よりも所定電圧だけ高い電圧である。所定電圧は、予め定められた固定値である。固定値の場合、目標電圧を簡単に決定できるため、ECU6の処理負担が軽減される。他にも、目標電圧は、全セル電圧の平均値と、最低電圧との間の値(即ち、可変値)であってもよい。この場合、目標電圧が確実に低く抑えられるため、セル電圧のばらつきが比較的低減する。
【0074】
本願は、以下の付記を開示する。以下の付記は、本発明を限定するものではない。
【0075】
(付記1)
複数のバッテリセルを有しており、負荷に電力を供給する第1蓄電部と、
前記複数のバッテリセルの各々の電圧のばらつきを示す特性値を導出する特性値導出部と、
前記電圧のばらつきを低減するバランス処理を実行可能なバランス処理部と、
制御部と
を備え、
前記制御部は、前記特性値導出部により導出された前記特性値が第1閾値以上である場合に、前記バランス処理の実行を指示する第1コマンドを前記バランス処理部に送信し、
前記バランス処理部は、前記第1コマンドの受信に応じて、前記複数のバッテリセルの電圧のうち最低電圧よりも高い目標電圧を決定し、決定した前記目標電圧に基づく前記バランス処理を実行する、制御装置。
【0076】
(付記2)
前記バランス処理部は、前記複数のバッテリセルのうち、前記目標電圧より高い電圧を有するバッテリセルを前記目標電圧になるように放電させて、前記電圧のばらつきを低減する、付記1に記載の制御装置。
【0077】
(付記3)
前記複数のバッテリセルの特性値が第2閾値以下である場合に、前記バランス処理を完了させ、
前記第2閾値は、前記第1閾値より小さく、前記複数のバッテリセルの電圧に対する前記目標電圧のばらつきを示す特性値よりも大きい、付記1又は付記2に記載の制御装置。
【0078】
(付記4)
前記目標電圧は、前記複数のバッテリセルの各々の電圧の平均値と、前記最低電圧との間の値を有する、付記1から付記3に記載の制御装置。
【0079】
(付記5)
充放電可能な第2蓄電部と、
前記第1蓄電部から前記第2蓄電部に電力供給可能な給電部と
を更に備え、
前記制御部は、前記特性値導出部により導出された前記特性値が前記第1閾値以上である場合に、前記第1蓄電部から前記第2蓄電部への電力供給を指示する第2コマンドを前記給電部に送信する、付記1から付記4のいずれかに記載の制御装置。
【0080】
(付記6)
前記制御部は、
前記特性値導出部により導出された前記特性値が前記第1閾値以上であって、前記第2蓄電部の電圧が第3閾値以上である場合に、前記第2コマンドを前記給電部に送信せず、
前記バランス処理の実行中に、前記第2蓄電部の電圧が前記第3閾値未満である場合に、前記第2コマンドを前記給電部に送信する、付記5に記載の制御装置。
【0081】
(付記7)
前記負荷の始動と停止とを切り替える切換部を更に備え、
前記制御部は、前記切換部が停止に切り替えられ、且つ、前記特性値導出部により導出された前記特性値が前記第1閾値以上である場合に、前記第1コマンドを前記バランス処理部に送信する、付記1から付記6のいずれかに記載の制御装置。
【0082】
(付記8)
前記バランス処理の実行中に前記バランス処理に関連する画像を表示する表示部を更に備える、付記7に記載の制御装置。
【0083】
(付記9)
前記制御部は、第1文字列及び第2文字列の少なくとも一方と、第3文字列とを含む前記画像を生成し、
前記第1文字列は、前記バランス処理の終了後に前記制御装置が停止することを示し、
前記第2文字列は、前記バランス処理の実行中に前記切換部により始動に切り替えることが可能であることを示し、
前記第3文字列は、前記バランス処理が実行されていることを示す、付記8に記載の制御装置。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、制御装置に関するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0085】
100 制御装置
1 整流器
2 バッテリパック
21 バッテリモジュール
211 CMU
212 バッテリセル
213 セルバランス回路
214 電圧検出回路
22 BMU
3 インバータ
4 コンバータ
5 低電圧バッテリ
6 ECU
7 自己保持回路
8 キースイッチ
9 ディスプレイ
101 給電経路
200 作業機械