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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044438
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20240326BHJP
   B60L 53/14 20190101ALN20240326BHJP
   B60L 50/60 20190101ALN20240326BHJP
   B60L 58/12 20190101ALN20240326BHJP
【FI】
H02J7/00 B
H02J7/00 S
B60L53/14
B60L50/60
B60L58/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149946
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】錦織 秀
(72)【発明者】
【氏名】金田 健佑
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB02
5G503CA08
5G503DA07
5G503FA06
5G503GB06
5H125AA01
5H125AA12
5H125AC12
5H125AC24
5H125BC08
5H125BC21
5H125DD02
5H125EE23
5H125EE27
(57)【要約】
【課題】バッテリの過充電による劣化を抑制可能な制御装置を提供することである。
【解決手段】制御装置において、前記第1充電モードでは、前記外部電源からの電力に基づき前記バッテリパックが充電される。前記第2充電モードでは、前記バッテリが充電可能であって、前記外部電源及び前記バッテリの少なくとも一方からの電力に基づき前記モータが駆動される。前記第1特性値導出部は、前記バッテリの充電状態を示す第1特性値を導出する。前記充電制御部は、前記バッテリの充電量が前記第1特性値の上限値となるように前記給電部を制御する。前記充電制御部は、前記第2充電モードにおいて、前記第1特性値が第1閾値より小さい場合に、前記外部電源から前記バッテリへの前記給電部による給電を制御する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
充放電可能なバッテリと、
外部電源から、前記モータと前記バッテリとに給電可能な給電部と、
動作モードを第1充電モードから第2充電モードに切り替えるモード切替部と
を備え、
前記第1充電モードでは、前記外部電源からの電力に基づき前記バッテリが充電され、
前記第2充電モードでは、前記バッテリが充電可能であって、前記外部電源及び前記バッテリの少なくとも一方からの電力に基づき前記モータが駆動され、
前記バッテリの充電状態を示す第1特性値を導出する第1特性値導出部と、
前記第1充電モードにおいて、前記バッテリの充電量が前記第1特性値の上限値となるように前記バッテリを制御する充電制御部と
を備え、
前記充電制御部は、前記第2充電モードにおいて、前記第1特性値が第1閾値より小さい場合に、前記外部電源から前記バッテリへの前記給電部による給電を制御する、制御装置。
【請求項2】
前記第2充電モードにおける前記第1特性値の上限値は、前記第1閾値より大きい、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記第1充電モードにおける前記第1特性値の上限値は、前記第2充電モードにおける前記第1特性値の上限値よりも大きい、請求項1又は請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記第1特性値は、前記バッテリの電圧又は充電率を示す、請求項1又は請求項2に記載の制御装置。
【請求項5】
前記バッテリは、複数のバッテリセルを有し、
前記複数のバッテリセルの各々の電圧のばらつきを示す第2特性値を導出する第2特性値導出部を更に備え、
前記第2充電モードにおいて前記第2特性値が第2閾値以上である場合に、前記充電制御部は、前記外部電源から前記バッテリへの前記給電部による給電を停止させ、前記モード切替部は、前記第2充電モードから、前記バッテリからの電力に基づき前記モータが駆動されるバッテリ駆動モードへと切り換え、
前記第2特性値が前記第2閾値未満になると、前記充電制御部は、前記外部電源から前記バッテリへの前記給電部による給電を開始させ、前記モード切替部は、前記バッテリ駆動モードから前記第2充電モードへと切り替える、請求項1又は請求項2に記載の制御装置。
【請求項6】
前記第2特性値は、前記複数のバッテリセルの電圧における最大値と最小値との差である、請求項5に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動式建設機械又は電動式作業機械では、外部電源の電力、又は機体に搭載された二次電池(以下、単に「バッテリ」と記載する。)が給電ケーブルを介してモータに供給可能に構成されている。制御装置は、外部電源又はバッテリからモータへの給電制御を実行する(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-234475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バッテリは過充電により劣化するため、バッテリへの充電は適切に制御される必要がある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、バッテリからの電力によりモータを駆動可能である場合において、バッテリの過充電による劣化を抑制可能な制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る制御装置は、モータと、充放電可能なバッテリと、外部電源から、前記モータと前記バッテリとに給電可能な給電部と、第1充電モードから第2充電モードへと切り替えるモード切替部とを備える。前記第1充電モードでは、前記外部電源からの電力に基づき前記バッテリパックが充電される。前記第2充電モードでは、前記バッテリが充電可能であって、前記外部電源及び前記バッテリの少なくとも一方からの電力に基づき前記モータが駆動される。制御装置は、第1特性値導出部と、充電制御部とを備える。前記第1特性値導出部は、前記バッテリの充電状態を示す第1特性値を導出する。前記充電制御部は、前記バッテリの充電量が前記第1特性値の上限値となるように前記給電部を制御する。前記充電制御部は、前記第2充電モードにおいて、前記第1特性値が第1閾値より小さい場合に、前記外部電源から前記バッテリへの前記給電部による給電を制御する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、バッテリからの電力によりモータを駆動可能である場合において、バッテリの過充電による劣化を抑制可能な制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る制御装置を備える作業機械のブロック図である。
図2図1に示されるバッテリパックの構成例を示すブロック図である。
図3図1に示される制御装置の充電制御の手順を示すフローチャートである。
図4】第1充電モードによりバッテリパック2が第1上限値UL1付近まで充電される場合の充電量等の経時変化を示す図である。
図5】第1充電モードによりバッテリパック2が第1閾値Vth1未満の充電量である場合の充電量等の経時変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態及び各種変形例を説明する。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0010】
[実施形態]
以下、図1を参照して、本発明の一実施形態に係る制御装置100を備える作業機械200について説明する。作業機械200は、例えば油圧ショベル又はホイルローダである。図1は、実施形態に係る制御装置100を備える作業機械200のブロック図である。図1に示されるように、作業機械200は、制御装置100と、負荷としてのモータ201と、油圧ポンプ202と、コントロールバルブ203と、油圧アクチュエータ204とを備えている。
【0011】
モータ201は、例えば三相交流モータであり、インバータ3から交流電力が与えられると、駆動力を生成する。油圧ポンプ202は、モータ201からの駆動力により動作する。その結果、コントロールバルブ203を介して油圧アクチュエータ204に作動油が供給される。油圧アクチュエータ204は、例えば、ブームシリンダ、アームシリンダ、作業具シリンダ、スイング用油圧シリンダ、旋回用の油圧シリンダである。
【0012】
制御装置100は、モータ201と電気的に接続されており、モータ201への電力供給を制御する。制御装置100は、整流器1と、バッテリパック2と、インバータ3と、ECU(Electronic Control Unit)4と、キースイッチ5とを備える。整流器1は、給電部の一例である。バッテリパック2は、バッテリの一例である。ECU4は、制御部の一例である。
【0013】
整流器1は、外部電源300から給電経路301を介して交流電圧(交流電力)の供給を受けることが可能である。外部電源300は、例えば商用電源又は電源装置である。給電経路301は、例えば電力ケーブルである。整流器1は更に、バッテリパック2とインバータ3とに電気的に接続されている。整流器1は更に、ECU4からコマンドを受け付ける。コマンドは、第1給電コマンドと、第1給電停止コマンドとを含む。第1給電コマンドを受け付けると、整流器1は、交流電圧を直流電圧に変換し、変換した直流電圧を出力する。第1給電停止コマンドを受け付けると、整流器1は、直流電圧の出力を停止する。即ち、整流器1からの出力電流値はゼロになる。
【0014】
バッテリパック2は、充放電可能な二次電池である。バッテリパック2は、典型的には、リチウムイオンバッテリである。バッテリパック2は、整流器1とインバータ3とに電気的に接続されている。
【0015】
インバータ3は、整流器1及びバッテリパック2から直流電流(直流電力)の供給を受けることが可能である。インバータ3は更に、モータ201と電気的に接続されている。インバータ3は更に、ECU4からコマンドを受け付ける。コマンドは、第2給電コマンドと、第2給電停止コマンドとを含む。インバータ3は、典型的には、複数のスイッチング素子で構成されたHブリッジ回路を有する。第2給電コマンドを受け付けると、インバータ3における各スイッチング素子のオンオフが周知のパターンで切り替えられる。その結果、インバータ3は、整流器1及びバッテリパック2の少なくとも一方から与えられる直流電圧を交流電圧に変換し、変換した交流電圧をモータ201に与える。第2給電停止コマンドを受け付けると、インバータ3における全てのスイッチング素子がオフにされる。この場合、インバータ3は、交流電圧をモータ201に与えない。
【0016】
本実施形態では、制御装置100には3種の動作モードが規定される。動作モードは、第1充電モード、第2充電モード、及びバッテリ駆動モードである。
【0017】
第1充電モードでは、整流器1が第1給電コマンドを受け付け、インバータ3が第2給電停止コマンドを受け付ける。この場合、整流器1は、変換した直流電圧を、インバータ3及びバッテリパック2のうちバッテリパック2だけに与える。
【0018】
第2充電モードでは、整流器1が第1給電コマンドを受け付け、インバータ3が第2給電コマンドを受け付けている。この場合、整流器1は、変換した直流電圧を、インバータ3とバッテリパック2とに与えることになる。
【0019】
また、バッテリ駆動モードでは、整流器1が第1給電停止コマンドを受け付けており、インバータ3が第2給電コマンドを受け付けている。この場合、整流器1は、変換した直流電圧を出力せず、バッテリパック2の直流電圧がインバータ3に与えられる。
【0020】
ECU4は、回路基板上に実装された各種ICを有する。各種ICは、例えば電源回路及びマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータは、メモリを内蔵する。なお、メモリは、マイクロコンピュータとは別のICとして回路基板に実装されてもよい。メモリは、制御プログラム及び各種データを記憶する。マイクロコンピュータは、動作を開始すると、制御プログラムの実行を開始し、作業機械200の構成各部を制御する。
【0021】
キースイッチ5は、作業機械200のステアリングホイール(図示せず)の付近に配置されている。キースイッチ5は、オペレータの操作により、作業機械200の始動(即ち、オン)と停止(即ち、オフ)とを切り替えるスイッチである。即ち、キースイッチ5は、作業機械200の始動と停止とを切り替える。キースイッチ5は、始動に切り替えられると、始動信号をECU4に送信する。一方、キースイッチ5は、停止に切り替えられると、停止信号をECU4に送信する。
【0022】
次に、図2を参照して、バッテリパック2の詳細について説明する。図2は、図1に示されるバッテリパック2の構成例を示すブロック図である。図2に示されるように、バッテリパック2は、4つのバッテリモジュール21と、BMU(Battery Management Unit)22とを備える。なお、バッテリモジュール21は、組電池とも呼ばれる。バッテリモジュール21の数は1以上であればよい。
【0023】
各バッテリモジュール21は、CMU(Cell Management Unit)211と、4つのバッテリセル212と、4つのセルバランス回路213と、4つの電圧検出回路214とを有する。即ち、バッテリパック2は、複数のバッテリセル212を有する。なお、図2では、都合上、参照符号「211」,「212」,「213」,「214」は、1つのCMUと、1つのバッテリセルと、1つのセルバランス回路と、1つの電圧検出回路とに付されている。
【0024】
各バッテリセル212は、充放電可能である。バッテリセル212は、バッテリパック2に合計16個設けられる。16個のバッテリセル212は、直列に接続される。また、16個のバッテリセル212の各々には、セルバランス回路213と電圧検出回路214とが1つずつ並列に接続される。
【0025】
各セルバランス回路213は、放電抵抗及びスイッチング素子を有する。スイッチング素子は、同一バッテリモジュール21に含まれるCMU(以下、「対応CMU」と記載する。)211の制御下でオンオフにされる。スイッチング素子がオンの間、放電抵抗と並列接続されたバッテリセル212が放電する。
【0026】
各電圧検出回路214は、対応CMU211の制御下で、自身と並列接続されたバッテリセル212の電圧(以下、「セル電圧」と記載する。)を検出して、検出されたセル電圧を対応CMU211に出力する。なお、セル電圧は、バッテリセル212の充電量を示す。
【0027】
各CMU211は、同一バッテリモジュール21が有する4つのバッテリセル212の状態を監視し制御する。詳細には、各CMU211は、受け取ったセル電圧をBMU22に出力する。
【0028】
BMU22は、バッテリパック2に含まれる4つのバッテリモジュール21の状態を監視し制御する。詳細には、BMU22は、第1特性値導出部の一例として機能する場合、バッテリパック2の充電状態を示す第1特性値として導出する。また、BMU22は、第2特性値導出部の一例として機能する場合、全てのバッテリセル212の各々のセル電圧のばらつきを示す第2特性値を導出する。BMU22は、導出した第1特性値と第2特性値とを、ECU4に出力する。第1特性値は、例えば、各CMU211から受け取った全てのセル電圧の総和である。即ち、第1特性値は、バッテリパック2の電圧を示す。第1特性値は、バッテリパック2の電圧以外にも、バッテリパック2の充電率を示していてもよい。第2特性値は、例えば、全セル電圧のうち最大値と最小値との差である。この場合、第1特性値及び第2特性値が簡単な演算で導出される。
【0029】
次に、図1から図4を参照して、制御装置100の処理について詳細に説明する。図3は、図1に示される制御装置100による充電制御の手順を示すフローチャートである。
【0030】
作業機械200の動作中に、制御装置100の動作モードは、第2充電モード又はバッテリ駆動モードである。この場合、インバータ3は、整流器1又はバッテリパック2からの直流電圧から交流電圧を生成して、モータ201に与える。
【0031】
作業機械200の動作中に作業機械200を停止する場合、オペレータは、キースイッチ5を停止に切り替えられる。その結果、キースイッチ5は、停止信号をECU4に送信する。
【0032】
ECU4は、作業機械200の動作中に、図3に示されるステップS101を周期的に実行する。ステップS101において、ECU4は、停止信号を受信しているか否かを判定する。ECU4は、停止信号を受信していないと判定した場合(ステップS101でNo)、次回のステップS101の実行タイミングを待機する。この場合、作業機械200は動作を継続する。一方、ECU4は、ステップS101の実行時に停止信号を受信していると判定した場合(ステップS101でYes)、ステップS102を実行する。
【0033】
ステップS102において、ECU4は、制御装置100の動作モードを第1充電モードに切り替える。ステップS102において、ECU4は、整流器1に第1給電コマンドを送信し、インバータ3に第2給電停止コマンドを送信し、BMU22に第1モード通知を送信する。第1モード通知は、第1充電モードに切り換わったことを示す情報である。
【0034】
次に、ステップS103(即ち、第1充電モード)では、外部電源300からの直流電圧(直流電力)に基づきバッテリパック2が充電される。詳細には、整流器1は、第1給電コマンドを受け付けると、供給された交流電圧から変換した直流電圧を出力する。インバータ3が第2給電停止コマンドを受け付けると、インバータ3における全スイッチング素子がオフになる。従って、整流器1から出力された全直流電圧は、バッテリパック2に供給され、バッテリパック2の充電に使用される。
【0035】
また、ステップS103では、ECU4は、BMU22とともに充電制御部の一例として、第1充電モードにおいて、バッテリパック2の充電量(即ち、直流電圧)が第1特性値の上限値となるように、バッテリパック2を制御する。詳細には、BMU22は、ECU4からの第1モード通知を受け取ると、各バッテリセル212のセル電圧が第1上限セル電圧になるように、各バッテリモジュール21を制御する。第1上限セル電圧は、各バッテリセル212の満充電時、又は満充電に近い時の電圧であり、BMU22又はCMU211に予め記憶されている。詳細には、各CMU211はまず、同一バッテリモジュール21に含まれるセルバランス回路213のスイッチング素子をオンにする。その後、各CMU211は、各電圧検出回路214からのセル電圧が第1上限セル電圧に到達するまで、対応するセルバランス回路213のスイッチング素子をオンにし続ける。各セル電圧が第1上限セル電圧になったとき、バッテリパック2の充電量は、第1充電モードにおける第1特性値の上限値、又は上限値付近となる。以下の説明では、第1充電モードにおける第1特性値の上限値又は上限値付近のことを「第1上限値UL1」と記載する場合がある。ステップS103によれば、作業機械200は次回、バッテリパック2の充電量が十分な状態(即ち、第1上限値UL1)で始動されるため、作業機械200の稼働時間が長くなる。
【0036】
なお、ECU4は、BMU22とともに、バッテリパック2の充電量が第1上限値UL1に到達した後には、バッテリパック2が過充電にならないように、定電圧制御を行う。定電圧制御は、CV(Costant Voltage)とも呼ばれる。定電圧制御によれば、入力電圧、負荷電流、温度等の変化に対して、バッテリパック2の出力電圧が概ね第1上限値UL1に保たれる。
【0037】
次に、ステップS104において、ECU4は、キースイッチ5から始動信号を受信しているか否かを判定する。ECU4は、ステップS104において始動信号を受信していないと判定した場合(ステップS104でNo)、ステップS103を実行する。この場合、第1充電モードが継続する。一方、ECU4は、ステップS104で始動信号を受信していると判定した場合(ステップS104でYes)、ステップS105を実行する。
【0038】
ステップS105において、ECU4は、モード切替部として機能し、動作モードを第1充電モードから第2充電モードに切り替える。従って、第1充電モードでは、ステップS102からステップS104までが繰り返し実行される。
【0039】
次に、ステップS106では、ECU4は、第1特性値の送信要求をBMU22に送信する。
【0040】
ステップS107において、BMU22は、送信要求の受信に応じて、各電圧検出回路214からセル電圧を、同一バッテリモジュール21のCMU211を通じて取得する。BMU22は、取得したセル電圧に基づいて第1特性値を導出する。ステップS107において、ECU4は、BMU22との通信により第1特性値を受信する。
【0041】
次に、ステップS108において、ECU4は、第1特性値が第1閾値Vth1以上か否かを判定する。ところで、第1充電モードでは、バッテリパック2に第1上限値UL1を目標として充電が実行される。この場合、第2充電モードに遷移直後では、バッテリパック2は満充電に近い。従って、整流器1が第1給電コマンドを受け付け、インバータ3が第2給電コマンドを受け付けると、バッテリパック2は、整流器1からの直流電圧、又はモータ201からの回生電圧により充電されうる。即ち、バッテリパック2には過充電のおそれがある。そこで、第1閾値Vth1は、第1上限値UL1、及び後述の第2上限値UL2よりも低い電圧値に予め定められる。
【0042】
第1特性値が第1閾値Vth1以上と判定した場合(ステップS108でYes)、バッテリパック2の充電量は、第1上限値UL1から低下しているが、第1閾値Vth1を下回っていない状況にある。この場合、ECU4は、過充電の防止のため、ステップS109を実行する。一方、第1特性値が第1閾値Vth1以上でないと判定した場合(ステップS108でNo)、過充電のおそれがないとして、ステップS110を実行する。
【0043】
ステップS109において、ECU4は、整流器1に第1給電コマンドを送信せず、インバータ3に第2給電コマンドを送信し、第2モード通知をBMU22に送信しない。この場合、整流器1は、変換した直流電圧を出力せず、バッテリパック2の直流電圧がインバータ3に与えられる。その結果、バッテリパック2の過充電が防止される。また、バッテリパック2の充電量は、第1上限値UL1から更に低下する。ステップS109の終了後、ECU4は、ステップS106を再度実行する。
【0044】
ステップS110において、ECU4は、整流器1に第1給電コマンドを送信し、インバータ3に第2給電コマンドを送信し、第2モード通知をBMU22に送信する。この場合、この場合、整流器1は、変換した直流電圧を、インバータ3とバッテリパック2とに与えることになる。その結果、バッテリパック2は、整流器1からの直流電圧、又はモータ201の回生電圧により充電される。従って、バッテリパック2の充電量は、第1閾値Vth1未満から増大する。
【0045】
ステップS110では、ECU4は、BMU22とともに充電制御部の一例として、第2充電モードにおいて、バッテリパック2の充電量が第1特性値の上限値となるように、バッテリパック2を制御する。詳細には、BMU22は、ECU4からの第2モード通知を受け取ると、各バッテリセル212のセル電圧が第2上限セル電圧になるように、各バッテリモジュール21を制御する。第2上限セル電圧は、第1上限セル電圧よりも低い電圧であり、BMU22又はCMU211に予め記憶されている。各セル電圧が第2上限セル電圧になったとき、バッテリパック2の充電量は、第2充電モードにおける第1特性値の上限値、又は上限値付近となる。以下の説明では、第2充電モードにおける第1特性値の上限値又は上限値付近のことを「第2上限値UL2」と記載する場合がある。第2上限値UL2は、第1閾値Vth1より大きい。
【0046】
ステップS110(即ち、第2充電モード)では、ECU4は、第1特性値が第1閾値Vth1より小さい場合に、外部電源300からバッテリパック2への整流器1による給電を制御する。従って、例えばモータ201の回生電圧によりバッテリパック2が充電されても、バッテリパック2は過充電とならない。よって、バッテリパック2の過充電による劣化が抑制される。
【0047】
第2充電モードでは、第2上限値UL2は、第1閾値Vth1より大きい。従って、例えばモータ201の回生電圧によりバッテリパック2が充電されても、過充電にはならない。
【0048】
第1充電モードでは、第1上限値UL1は、第2上限値UL2よりも大きい。第1充電モードでは、モータ201の回生電圧によりバッテリパック2が充電される可能性がない。従って、第1充電モードで、第1上限値UL1を目標にバッテリパック2を充電しても、過充電にはならない。
【0049】
なお、ECU4は、BMU22とともに、バッテリパック2の充電量が第2上限値UL2に到達した後には、バッテリパック2の出力電圧が概ね第2上限値UL2に保たれるように定電圧制御を行う。
【0050】
ステップS110の次に、ステップS111において、ECU4は、第2特性値の送信要求をBMU22に送信する。
【0051】
ステップS112において、BMU22は、送信要求の受信に応じて、各電圧検出回路214からセル電圧を、同一バッテリモジュール21のCMU211を通じて取得する。BMU22は、取得したセル電圧に基づいて第2特性値を導出する。ECU4は、BMU22との通信により第2特性値を受信する。
【0052】
次に、ステップS113において、ECU4は、受信した第2特性値が第2閾値以上か否かを判定する。第2閾値は、セル電圧のばらつきが大きいか小さいかを示す基準値であって、予め定められている。ECU4は、第2閾値以上であると判定した場合(ステップS113でYes)、特定のバッテリセル212が過充電されるおそれがあるとして、ステップS114を実行する。一方、ECU4は、第2閾値以上でないと判定した場合(ステップS113でNo)、特定のバッテリセル212が過充電されるおそれがないとして、ステップS115を実行する。
【0053】
ステップS114において、ECU4は、モード切替部として機能し、現在の動作モードが第2充電モードの場合、第2充電モードからバッテリ駆動モードへと切り替える。ステップS114において、ECU4は更に、充電制御部として機能し、第1給電停止コマンドを整流器1に送信し、第2給電コマンドをインバータ3に送信する。その結果、整流器1からバッテリパック2への給電が遮断され、モータ201の駆動のために、バッテリパック2の直流電圧がインバータ3に与えられる。従って、特定のバッテリセル212の過充電が防止される。
【0054】
ステップS115において、ECU4は、モード切替部として機能し、現在の動作モードがバッテリ駆動モードの場合、バッテリ駆動モードから第2充電モードに切り替える。ステップS114において、ECU4は更に、充電制御部として機能し、第1給電コマンドを整流器1に送信し、第2給電コマンドをインバータ3に送信する。その結果、整流器1からインバータ3とバッテリパック2とに給電が実行され、インバータ3は、外部電源300又はバッテリパック2の直流電圧に基づきモータ201を駆動する。
【0055】
ステップS113,S114の実行が終了する、ECU4は、ステップS111を実行する。
【0056】
図4は、第1充電モードによりバッテリパック2が第1上限値UL1付近まで充電される場合の充電量等の経時変化を示す図である。図4に示されるように、第1充電モードでは、第1上限値UL1を目標にバッテリパック2への充電が実行され、その結果、第1上限値UL1付近までバッテリパック2が充電される。この場合、第2充電モードへの遷移直後の時間区間T1では、ステップS109(図3参照)により、整流器1からの出力電流Ioがゼロになり、バッテリパック2の直流電圧Vo(即ち、充電量)がインバータ3に与えられる。その結果、バッテリパック2の過充電が防止される。また、時間区間T1では、バッテリパック2は、モータ201の回生電圧により充電されうるが、直流電圧Voは、第1閾値Vth1に到達するまでの間、減少傾向にある。
【0057】
また、直流電圧Voが第1閾値Vth1より小さくなると、ステップS110により(図3参照)、整流器1が動作することにより、外部電源300からバッテリパック2への給電が実行される(時間区間T2を参照)。時間区間T2では、直流電圧Voが第2上限値UL2に制限されるため、バッテリパック2の過充電による劣化が抑制される。なお、時間区間T2以降、ECU4は、バッテリパック2が過充電にならないように、定電圧制御を行う。その結果、出力電流Ioは減少傾向を示す。
【0058】
図5は、第1充電モードによりバッテリパック2が第1閾値Vth1未満の充電量である場合の充電量等の経時変化を示す図である。図5に示されるように、第1充電モードでは、第1上限値UL1を目標にバッテリパック2への充電が実行されるが、第2充電モードへの遷移時点で、直流電圧Voが第1閾値Vth1未満の場合がある。この場合、第2充電モードへの遷移以降では、ステップS110(図3参照)により、直流電圧Voが第2上限値UL2となるように、バッテリパック2への充電が制御される。なお、この場合、直流電圧Voが第2上限値UL2に到達する以前では、出力電流Ioは略一定であるが、到達後には減少傾向を示す。
【0059】
以上、図面を参照して本開示の実施形態について説明した。ただし、本開示は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施できる。また、上記の実施形態に開示される複数の構成要素は適宜改変可能である。例えば、ある実施形態に示される全構成要素のうちのある構成要素を別の実施形態の構成要素に追加してもよく、又は、ある実施形態に示される全構成要素のうちのいくつかの構成要素を実施形態から削除してもよい。
【0060】
また、図面は、本開示の理解を容易にするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚さ、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の構成は一例であって、特に限定されるものではなく、本開示の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【0061】
(1)実施形態では、制御装置100は、図3に示されるステップS101からS115を実行していた。しかし、これに限らず、制御装置100は、図3に示されるステップS101からS110までを実行するだけでも、バッテリパック2の過充電を抑制できる。他にも、制御装置100は、図3に示されるステップS111からS115までを実行するだけでも、バッテリパック2の過充電を抑制できる。
【0062】
(2)実施形態では、モータ201が三相交流モータであるため、バッテリパック2は、インバータ3を介して、負荷としてのモータ201に交流電力を与える。しかし、これに限らず、モータ201が直流モータの場合には、バッテリパック2は、DC-DCコンバータを介して、又は直接的にモータ201に直流電圧を与えることができる。
【0063】
(3)実施形態では、第2特性値は、全てのセル電圧における最大値と最小値との差であった。しかし、これに限らず、第2特性値は、全てのセル電圧の分散又は標準偏差でもよい。他にも、バッテリモジュール21ごとにセル電圧の最小値(即ち、実施形態では4つのセル電圧)が選択される。選択されたセル電圧における最大値と最小値との差が第2特性値として導出されてもよい。
【0064】
(4)実施形態では、制御装置100は、作業機械200のモータ201を制御していた。しかし、これに限らず、制御装置100は、例えば電気自動車のモータを制御してもよい。他にも、制御装置100は、バッテリパック2を備える電気機器又は電子機器に適用可能である。
【0065】
(5)実施形態では、制御装置100は、オペレータにより操作される作業機械200に適用されていた。しかし、これに限らず、制御装置100は、遠隔操作可能な作業機械200に適用されてもよい。この場合、制御装置100は、キースイッチ5の代わりに、始動及び停止を切り替えるためのリモートコントローラを備える。他にも、制御装置100は、自動運転可能な作業機械200に適用されてもよい。この場合、制御装置100は、キースイッチ5の代わりに、ECU4が作業機械200の始動及び停止を切り替える。
【0066】
(6)バッテリパック2を構成するバッテリセル212は温度特性を有している。従って、第1上限値UL1、第2上限値UL2、第1閾値Vth1及び第2閾値の各々は、制御装置100の周囲温度により可変であってもよい。
【0067】
(7)実施形態では、制御装置100は、ECU4及びBMU22により、即ち2個のコントローラによりバッテリパック2の充電を制御していた。しかし、これに限らず、制御装置100は、単一のコントローラ、又は3以上のコントローラによりバッテリパック2の充電を制御してもよい。
【0068】
本願は、以下の付記を開示する。以下の付記は、本発明を限定するものではない。
【0069】
(付記1)
モータと、
充放電可能なバッテリと、
外部電源から、前記モータと前記バッテリとに給電可能な給電部と、
動作モードを第1充電モードから第2充電モードに切り替えるモード切替部と
を備え、
前記第1充電モードでは、前記外部電源からの電力に基づき前記バッテリが充電され、
前記第2充電モードでは、前記バッテリが充電可能であって、前記外部電源及び前記バッテリの少なくとも一方からの電力に基づき前記モータが駆動され、
前記バッテリの充電状態を示す第1特性値を導出する第1特性値導出部と、
前記第1充電モードにおいて、前記バッテリの充電量が前記第1特性値の上限値となるように前記バッテリを制御する充電制御部と
を備え、
前記充電制御部は、前記第2充電モードにおいて、前記第1特性値が第1閾値より小さい場合に、前記外部電源から前記バッテリへの前記給電部による給電を制御する、制御装置。
【0070】
(付記2)
前記第2充電モードにおける前記第1特性値の上限値は、前記第1閾値より大きい、付記1に記載の制御装置。
【0071】
(付記3)
前記第1充電モードにおける前記第1特性値の上限値は、前記第2充電モードにおける前記第1特性値の上限値よりも大きい、付記1又は付記2に記載の制御装置。
【0072】
(付記4)
前記第1特性値は、前記バッテリの電圧又は充電率を示す、付記1から付記3に記載の制御装置。
【0073】
(付記5)
前記バッテリは、複数のバッテリセルを有し、
前記複数のバッテリセルの各々の電圧のばらつきを示す第2特性値を導出する第2特性値導出部を更に備え、
前記第2充電モードにおいて前記第2特性値が第2閾値以上である場合に、前記充電制御部は、前記外部電源から前記バッテリへの前記給電部による給電を停止させ、前記モード切替部は、前記第2充電モードから、前記バッテリからの電力に基づき前記モータが駆動されるバッテリ駆動モードへと切り換え、
前記第2特性値が前記第2閾値未満になると、前記充電制御部は、前記外部電源から前記バッテリへの前記給電部による給電を開始させ、前記モード切替部は、前記バッテリ駆動モードから前記第2充電モードへと切り替える、付記1から付記4のいずれかに記載の制御装置。
【0074】
(付記6)
前記第2特性値は、前記複数のバッテリセルの電圧における最大値と最小値との差である、付記5に記載の制御装置。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、制御装置に関するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0076】
100 制御装置
1 整流器
2 バッテリパック
21 バッテリモジュール
211 CMU
212 バッテリセル
213 セルバランス回路
214 電圧検出回路
22 BMU
3 インバータ
4 ECU
5 キースイッチ
200 作業機械
図1
図2
図3
図4
図5