(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044455
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】弱電ケーブル布設治具及び布設方法
(51)【国際特許分類】
H02G 1/06 20060101AFI20240326BHJP
H02G 3/30 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H02G1/06
H02G3/30
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149975
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000136686
【氏名又は名称】合同会社ブレスト工業研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000163419
【氏名又は名称】株式会社きんでん
(74)【代理人】
【識別番号】100074251
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100066223
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 政美
(72)【発明者】
【氏名】小森 大輔
(72)【発明者】
【氏名】日高 一幸
【テーマコード(参考)】
5G352
5G363
【Fターム(参考)】
5G352CA02
5G352CE02
5G363AA16
5G363DA01
(57)【要約】
【課題】垂直ケーブルラックに弱電ケーブルを布設する作業効率を高めることができる弱電ケーブル布設治具を提供する。
【解決手段】ガイドワイヤーWに沿って自然落下する布設治具1を設ける。垂直ケーブルラックPの上下にガイドワイヤーWを張設する。垂直ケーブルラックPに布設するケーブルCを布設治具1に連結する。ガイドワイヤーWを挿通するワイヤー挿通具2を布設治具1に設ける。ケーブルCを連結するケーブル連結具3を布設治具1に設ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直ケーブルラックの上下にガイドワイヤーが張設され、ガイドワイヤーに沿って垂直ケーブルラックに布設するケーブルと共に自然落下で移動可能な布設治具であって、布設治具は、ガイドワイヤーを挿通するワイヤー挿通具と、ケーブルを連結するケーブル連結具とを備えることを特徴とするケーブル布設治具。
【請求項2】
前記ワイヤー挿通具は、前記ガイドワイヤーを導入する開閉ゲートを備えた環状を成し、前記ガイドワイヤーを前記布設治具の長手方向に沿った上下で保持するように配置された請求項1記載のケーブル布設治具。
【請求項3】
前記ケーブル連結具は、前記布設治具の上端に配置される、より戻しを備えた請求項1記載のケーブル布設治具。
【請求項4】
前記布設治具に前記布設治具の移動位置を知らせるブザーを設けた請求項1記載のケーブル布設治具。
【請求項5】
前記布設治具に前記布設治具の移動位置を知らせるライトを設けた請求項1記載のケーブル布設治具。
【請求項6】
前記ライトは前記布設治具の下端部にスライド自在に配置され、落下時の前記ライトを保護する緩衝材を備えた請求項5記載のケーブル布設治具。
【請求項7】
垂直ケーブルラックの上下にガイドワイヤーが張設され、ガイドワイヤーに沿って垂直ケーブルラックにケーブルを布設するケーブル布設工法であって、ガイドワイヤーに沿って自然落下で移動可能な布設治具にケーブルの端部を連結し、このケーブルを布設治具と共に自然落下させて垂直ケーブルラックに布設することを特徴とするケーブル布設工法。
【請求項8】
前記ケーブル布設工法において、前記布設治具に備えたブザーで前記ケーブルの移動位置を知らせる請求項7記載のケーブル布設工法。
【請求項9】
前記ケーブル布設工法において、前記布設治具に備えたライトで前記ケーブルの移動位置を知らせる請求項7記載のケーブル布設工法。
【請求項10】
前記ケーブル布設工法において、本のガイドワイヤーを使用して垂直ケーブルラックにケーブルを布設する請求項7記載のケーブル布設工法。
【請求項11】
前記布設治具は、ケーブルを連結するケーブル連結具を備え、該ケーブル連結具は、前記布設治具の上端に配置されるより戻しを備えた請求項10記載のケーブル布設工法。
【請求項12】
前記ケーブル布設工法において、2本以上のガイドワイヤーを使用して垂直ケーブルラックにケーブルを布設する請求項7記載のケーブル布設工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直ケーブルラックに弱電ケーブルを布設する際にワイヤーをガイドとして利用する弱電ケーブル布設治具及び布設方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、垂直ケーブルラックに弱電ケーブルを布設する場合、弱電ケーブルを上から吊り下げて布設する作業が一般的である。ところが、弱電ケーブルは軽く柔らかいのでケーブル先端が簡単に湾曲する傾向がある。
【0003】
そのため、弱電ケーブルを吊り下げて布設する場合、弱電ケーブルの湾曲した先端がケーブルラックの子桁の間を通過し、あるいは貫通枠を通過できなかったりすることが多く、効率の悪い作業になっていた。
【0004】
一方、弱電ケーブルを垂直ケーブルラックの下から上に布設するケーブル布設移動システムが特許文献1に記載されている。このシステムは、ガイドとして利用する駆動用ロープ12にケーブル2を連結して布設するものである。すなわち、下方側に引き出す駆動用ロープ12に予め連結体14を複数個取り付けておく。一方、ケーブル2の先端側に第1ケーブルグリップ3を被覆すると共に、ケーブル2の中途部にも第2ケーブルグリップ4を被覆しておく。
【0005】
そして、下方側に引き出した駆動用ロープ12の連結体14に、ケーブル2側の第1ケーブルグリップ3と第2ケーブルグリップ4とを連結することで駆動用ロープ12にケーブル2を連結する。この状態で駆動用ロープ12を吊り上げると、駆動用ロープ12に沿ってケーブル2が垂直ケーブルラックの下から上に移動するというシステムである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のケーブル布設移動システムでは、ケーブル2を引き上げながら布設するので、軽量な弱電ケーブルの布設作業にウインチや、ウインチで巻き上げる駆動用ロープ等を準備する必要がある。そのため、弱電ケーブルの布設作業に大掛かりな装置を要するものであった。
【0008】
また、ガイドとして利用する駆動用ロープ12にケーブル2を連結するために、予め駆動用ロープ12に連結体14を複数個取り付ける必要がある。更に、ケーブル2にも先端側の第1ケーブルグリップ3と、ケーブル2の中途部の第2ケーブルグリップ4とを予め被覆する必要もある。
【0009】
そのためこのシステムでは、これら複数の連結体14の取付け作業や、第1ケーブルグリップ3と第2ケーブルグリップ4との被覆作業に多くの手間をするものである。
【0010】
一方、弱電ケーブルを吊り下げながら布設する一般的な作業にあっては、例えばビルの上階から下に吊り下げて布設する作業になる。ところが弱電ケーブルの湾曲した先端がケーブルラックの子桁の間を通過し、あるいは貫通枠を通過できなかったりすることがあるので、中間位置に監視用作業員を配置する必要があった。
【0011】
しかも、ビルの垂直ケーブルラック設置場所は、暗く見通しの悪い場所になることがある。この場合、ケーブルが正常な状態に布設されていることを目視で確認することが困難になる場合もあった。
【0012】
そこで、本発明は従来の課題を解消すべく創出されたもので、垂直ケーブルラックに弱電ケーブルを布設する作業効率を高めることができる弱電ケーブル布設治具及び布設方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的を達成すべく本発明における第1の手段は、垂直ケーブルラックPの上下にガイドワイヤーWが張設され、ガイドワイヤーWに沿って垂直ケーブルラックPに布設するケーブルCと共に自然落下で移動可能な布設治具1であって、布設治具1は、ガイドワイヤーWを挿通するワイヤー挿通具2と、ケーブルCを連結するケーブル連結具3とを備えることにある。
【0014】
第2の手段の前記ワイヤー挿通具2は、前記ワイヤーを導入する開閉ゲート2Aを備えた環状を成し、前記ガイドワイヤーWを前記布設治具1の長手方向に沿った上下で保持するように配置されている。
【0015】
第3の手段の前記ケーブル連結具3は、前記布設治具1の上端に配置される、より戻し7、8を備えたものである。
【0016】
第4の手段の前記布設治具1に前記布設治具1の移動位置を知らせるブザー4を設けている。
【0017】
第5の手段は、前記布設治具1に前記布設治具1の移動位置を知らせるライト5を設けたものである。
【0018】
第6の手段の前記ライト5は前記布設治具1の下端部にスライド自在に配置され、落下時の衝撃を吸収する緩衝材6を備えている。
【0019】
第7の手段は、垂直ケーブルラックPの上下にガイドワイヤーWが張設され、ガイドワイヤーWに沿って垂直ケーブルラックPにケーブルCを布設するケーブル布設工法であって、ガイドワイヤーWに沿って自然落下で移動可能な布設治具1にケーブルCの端部を連結し、このケーブルCを布設治具1と共に自然落下させて垂直ケーブルラックPに布設するケーブル布設工法である。
【0020】
第8の手段は、前記ケーブル布設工法において、前記布設治具1に備えたブザー4で前記ケーブルCの移動位置を知らせるものである。
【0021】
第9の手段は、前記ケーブル布設工法において、前記布設治具1に備えたライト5で前記ケーブルCの移動位置を知らせるケーブル布設工法である。
【0022】
第10の手段は、前記ケーブル布設工法において、1本のガイドワイヤーWを使用して垂直ケーブルラックPにケーブルCを布設する工法である。
【0023】
第11の手段の前記布設治具1は、ケーブルCを連結するケーブル連結具3を備え、該ケーブル連結具3は、前記布設治具1の上端に配置されるより戻し7、8を備えたケーブル布設工法である。
【0024】
第12の手段は、前記ケーブル布設工法において、2本以上のガイドワイヤーWを使用して垂直ケーブルラックPにケーブルCを布設するケーブル布設工法にある。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、弱電ケーブルがワイヤーに沿って布設されるため、ケーブルラックの子桁の間を通過したり、貫通枠を通過できなくなったりすることがなくなる。この結果、垂直ケーブルラック上に弱電ケーブルを布設する作業効率を高めることができる。
【0026】
しかも、布設状態を常に確認しながら安全な施工が可能になり、その上、中間階で監視する作業員を削減することができ、労務費コストの削減にもつながる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、垂直ケーブルラックPに弱電ケーブルを布設する際に使用する布設治具1である。すなわち、垂直ケーブルラックPの上下に張設されたガイドワイヤーWに沿ってケーブルCと共に自然落下で移動しながら垂直ケーブルラックPに布設するものである(
図8参照)。
【0029】
布設治具1は、ワイヤー挿通具2とケーブル連結具3とを備える(
図1参照)。図示の布設治具1は上下に長い帯板状を成し、上端部にケーブル連結具3を備え、板面側にワイヤー挿通具2を設けている。
【0030】
ワイヤー挿通具2は環体状の部材であり、このワイヤー挿通具2にガイドワイヤーWを挿通する。そのため、このワイヤー挿通具2は、ワイヤーを導入する開閉ゲート2Aを備えたカラビナ状に形成している(
図4参照)。
【0031】
このワイヤー挿通具2は、ワイヤー挿通具2に挿通したガイドワイヤーWを布設治具1の長手方向に沿って保持するように構成し、移動時の布設治具1の安定性を高めている(
図7参照)。図示のワイヤー挿通具2は、同一板面側の上下に一対形成している(
図2参照)が、ワイヤー挿通具2の数、形状、位置等は任意に変更することができる。
【0032】
ケーブル連結具3はアイボルト状を成し、布設治具1にケーブルCを連結する連結部材である。そして、ケーブル連結具3に連結したケーブルCをケーブル連結具3の自然落下と共に移動する(
図8参照)。このときケーブル連結具3が回転してケーブルCに負荷を与えないように、ケーブル連結具3により戻し7、8を設けている(
図7参照)。図示例では、2個のより戻し7、8を介してケーブルCに連結している。より戻しは1個でもよい。
【0033】
そして、上部のより戻し8にケーブルグリップ10を介してケーブルCを連結する構造である(
図7参照)。また、このケーブルグリップ10が抜けて布設治具1が落下しないように、より戻し8とケーブルC側面とを紐状の落下防止具11でつなぎ、さらに結束バンド9で結止めしている。
【0034】
また、この布設治具1には、布設治具1の移動位置を知らせるブザー4を設けている(
図5参照)。図示のブザー4は、布設治具1の長手中央に配置され、ワイヤー挿通具2の反対側に設けているスイッチ4Aで作動するもので(
図3参照)、ブザー4の上部に電池ケース4Bを備えている(
図5参照)。
【0035】
更に、布設治具1に布設治具1の移動位置を知らせるライト5を設けている(
図6参照)。図示のライト5は布設治具1の下端部にスライド自在に配置され、ライト5の先端側の側面を保護する緩衝材6を備えている。したがって、ライト5の下端部に衝撃があるとライト5は布設治具1内に収納されて衝撃を吸収するので、作業員に接触しても作業員を保護することができる。
【0036】
ガイドワイヤーWは、予め垂直ケーブルラックPの上下に張設される(
図8参照)。たとえば垂直ケーブルラックPの最上段に設けた鋼材P2と最下段に設けた鋼材P2とにガイドワイヤーWを固定する。この固定位置や固定部材は任意に変更することができる。たとえば、床や天井に形成した開口部に鋼材P2を架け渡し、この鋼材P2にガイドワイヤーWを固定する。あるいは床に固定した鋼材P2の上に更に鋼材P2を重ね、重ねた鋼材P2にガイドワイヤーWを固定することも可能である。
【0037】
本発明ケーブル布設工法は、前記布設治具1を使用する布設工法である。すなわち、ガイドワイヤーWに沿って自然落下で移動可能な布設治具1にケーブルCの端部を連結し、このケーブルCを布設治具1と共に自然落下させて垂直ケーブルラックPに布設する布設工法である。
【0038】
この布設工法において、布設治具1に備えたブザー4を使用し、ケーブルCの布設開始や終了、あるいは布設治具1の接近状態を知らせる。また、布設治具1に備えたライト5でケーブルCの移動位置を確認する。
【0039】
尚、本発明の実施例は図示例に限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲での設計変更は自由である。
【0040】
上記実施例においては、ガイドワイヤーWを1本使用する態様を示したが、ガイドワイヤーWを2本使用することも可能である。その場合、布設治具1に2本のガイドワイヤーWを通せるよう、ガイドワイヤーWそれぞれに対するワイヤー挿通具2を設けてもよい。尚、ガイドワイヤーWを1本使用する態様は、ガイドワイヤーWを2本使用する態様より布設準備にかかる時間を短縮できるため作業性が向上する。すなわち、ガイドワイヤーWの本数は少ない方が工数が少なくて済むため、1本がよい。また、弱電ケーブルは軽いのでガイドワイヤーWが1本で充分であり、狭い貫通孔でも施工が容易になる。また、布設治具1の自重を調節するためにターンバックル3Aを省略したり、ターンバックル3Aを重いものに変更したりするなどしてもよい。さらに、自重ではなくワイヤーで下から引っ張ってもよい。
【符号の説明】
【0041】
C ケーブル
P 垂直ケーブルラック
P1 親桁
P2 鋼材
W ガイドワイヤー
1 布設治具
2 ワイヤー挿通具
2A 開閉ゲート
3 ケーブル連結具
3A ターンバックル
4 ブザー
4A スイッチ
4B 電池ケース
5 ライト
6 緩衝材
7 より戻し
8 より戻し
9 結束バンド
10 ケーブルグリップ
11 落下防止具
【手続補正書】
【提出日】2024-03-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項3
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項3】
前記ケーブル連結具は、前記布設治具の上端に配置される、より戻しを備えた請求項1または2記載のケーブル布設治具。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項4
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項4】
前記布設治具に前記布設治具の移動位置を知らせるブザーを設けた請求項1または2記載のケーブル布設治具。
【手続補正3】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項5
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項5】
前記布設治具に前記布設治具の移動位置を知らせるライトを設けた請求項1または2記載のケーブル布設治具。
【手続補正4】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項10
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項10】
前記ケーブル布設工法において、1本のガイドワイヤーを使用して垂直ケーブルラックにケーブルを布設する請求項7から9いずれか記載のケーブル布設工法。