(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044461
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H10B 43/27 20230101AFI20240326BHJP
H10B 43/50 20230101ALI20240326BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H01L27/11582
H01L27/11575
H01L29/78 371
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149986
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】住谷 まり子
(72)【発明者】
【氏名】山本 亮介
【テーマコード(参考)】
5F083
5F101
【Fターム(参考)】
5F083EP18
5F083EP22
5F083EP32
5F083EP76
5F083ER21
5F083GA01
5F083GA10
5F083GA27
5F083JA03
5F083JA19
5F083JA37
5F083MA06
5F083MA16
5F083MA19
5F083PR05
5F083PR21
5F083ZA01
5F101BA46
5F101BB02
5F101BD16
5F101BD22
5F101BD30
5F101BD34
5F101BE07
5F101BH02
5F101BH15
(57)【要約】
【課題】貼合の際に用いられる支持基板を容易に再利用することが可能な半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、第1の基板の上に設けられた第1の多結晶半導体層と、第1の基板と第1の多結晶半導体層との間に設けられ、第1の多結晶半導体層よりもp型不純物の濃度が低く且つn型不純物の濃度が高い第2の多結晶半導体層と、を有する剥離層を形成し、第1の多結晶半導体層を陽極化成することにより第1の多孔質層を形成し、第1の多孔質層の上に第1のデバイス層を形成し、第1のデバイス層と、第2の基板に設けられた第2のデバイス層と、を貼合する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板の上に設けられた第1の多結晶半導体層と、前記第1の基板と前記第1の多結晶半導体層との間に設けられ、前記第1の多結晶半導体層よりもp型不純物の濃度が低く且つn型不純物の濃度が高い第2の多結晶半導体層と、を有する剥離層を形成し、
前記第1の多結晶半導体層を陽極化成することにより第1の多孔質層を形成し、
前記第1の多孔質層の上に第1のデバイス層を形成し、
前記第1のデバイス層と、第2の基板に設けられた第2のデバイス層と、を貼合する、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
第1の基板の上に設けられた第1の多結晶半導体層と、前記第1の基板と前記第1の多結晶半導体層との間に設けられるとともに前記第1の多結晶半導体層よりもp型不純物の濃度が低い第2の多結晶半導体層と、前記第1の多結晶半導体層の上に設けられるとともに前記第1の多結晶半導体層よりも前記p型不純物の濃度が低い第3の多結晶半導体層と、を有する剥離層を形成し、
前記第1の多結晶半導体層、前記第2の多結晶半導体層、および前記第3の多結晶半導体層を陽極化成することにより第1の多孔質層、第2の多孔質層、および第3の多孔質層を形成し、
前記第3の多孔質層の上に第1のデバイス層を形成し、
前記第1のデバイス層と、第2の基板に設けられた第2のデバイス層と、を貼合する、半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記n型不純物は、リンまたはヒ素を含む、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1の多孔質層は、前記第1の多結晶半導体層の前記第1の基板側から正電位を印加するとともに前記第1の多結晶半導体層の前記第1の基板の反対側から負電位を印加して前記第1の多結晶半導体層を陽極化成することにより形成される、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第2の多孔質層の空隙率および前記第3の多孔質層の空隙率のそれぞれは、前記第1の多孔質層の空隙率よりも低い、請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1の多結晶半導体層の平均結晶粒径は、前記第2の多結晶半導体層の平均結晶粒径および前記第3の多結晶半導体層の平均結晶粒径のそれぞれよりも小さい、請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記p型不純物は、ボロンを含む、請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1の多孔質層を介して前記第1の基板と前記第1のデバイス層とを分離する、請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
第1の基板に設けられた第1のデバイス層と、第2の基板に設けられた第2のデバイス層とを貼合することにより形成可能な半導体装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1-217941号公報
【特許文献2】特開2000-349266号公報
【特許文献3】特開2022-34881号公報
【特許文献4】特開2022-49603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明が解決しようとする課題の一つは、貼合の際に用いられる支持基板を容易に再利用することが可能な半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の半導体装置の製造方法は、第1の基板の上に設けられた第1の多結晶半導体層と、第1の基板と第1の多結晶半導体層との間に設けられ、第1の多結晶半導体層よりもp型不純物の濃度が低く且つn型不純物の濃度が高い第2の多結晶半導体層と、を有する剥離層を形成し、第1の多結晶半導体層を陽極化成することにより第1の多孔質層を形成し、第1の多孔質層の上に第1のデバイス層を形成し、第1のデバイス層と、第2の基板に設けられた第2のデバイス層と、を貼合する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】半導体装置の製造方法の例を説明するための模式図である。
【
図2】剥離層11Aの第1の構造例を説明するための断面模式図である。
【
図3】剥離層11Aの第1の構造例に対する陽極化成処理の例を説明するための断面模式図である。
【
図4】剥離層11Aの第1の構造例に対する陽極化成処理の例を説明するための断面模式図である。
【
図5】剥離層11Aの第2の構造例を説明するための断面模式図である。
【
図6】剥離層11Aの第2の構造例に対する陽極化成処理の例を説明するための断面模式図である。
【
図7】半導体装置の構造例を示す断面模式図である。
【
図8】メモリピラーMPの構造例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。図面に記載された各構成要素の厚さと平面寸法との関係、各構成要素の厚さの比率等は現物と異なる場合がある。また、実施形態において、実質的に同一の構成要素には同一の符号を付し適宜説明を省略する。
【0008】
本明細書において、「接続」とは、特に指定する場合を除き、物理的な接続だけでなく電気的な接続も含む。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、半導体装置の製造方法の例を説明するための模式図である。ここでは、一例として、3次元構造を有するNANDフラッシュメモリの製造方法例について説明する。
【0010】
まず、支持基板として単結晶シリコン基板等の基板10を準備するとともに、単結晶シリコン基板等の基板20に設けられた周辺回路を含むデバイス層21を準備する(
図1(A1)、(A2))。次に、基板10の上に半導体層を有する剥離層11Aを形成する(
図1(B))。次に、剥離層11Aに対し陽極化成処理を行い、剥離層11Aの半導体層の少なくとも一部をポーラス化することにより多孔質層(ポーラス層)を有する剥離層11Bを形成する(
図1(C))。次に、剥離層11Bの上にメモリセルアレイを含むデバイス層12を形成する(
図1(D))。次に、デバイス層12とデバイス層21とを対向させてデバイス層12とデバイス層21とを貼合する(
図1(E))。次に、剥離層11Aを介して基板10とデバイス層12とを分離する(
図1(F1)、(F2))。分離は、例えばウォータージェット等の方法を用いて物理的に行われてもよい。分離された基板10およびデバイス層12のそれぞれの表面を、ウェットエッチング等の方法を用いてクリーニングし、それぞれの表面に剥離層11Bの一部が残存する場合には、これを除去する。これにより、基板10を新たなデバイス層12を形成するための支持基板として半導体装置の製造に再利用できる。その後、デバイス層12とデバイス層21との積層構造は、ダイシング工程により複数の半導体チップに分割される。各半導体チップは、NANDフラッシュメモリである。以上が半導体装置の製造方法例の説明である。
【0011】
陽極化成処理は、対象物をフッ化水素等の薬液に浸漬させ、対象物に電圧を印加することにより、対象物を部分的に溶出させて加工する方法である。陽極化成処理を用いて半導体層から多孔質層を形成する場合、半導体層とともに基板10が加工されて薄くなると、基板10を支持基板として繰り返し再利用することが困難である。
【0012】
そこで、本実施形態の半導体装置の製造方法は、陽極化成されやすい第1の多結晶半導体層と基板との間に陽極化成されにくい第2の多結晶半導体層を有する剥離層を形成することにより、陽極化成処理により基板10が不必要に加工されることを抑制できる。よって、基板10を再利用しやすくできる。剥離層の具体的な構造例について以下に説明する。
【0013】
[剥離層の第1の構造例]
図2は、剥離層11Aの第1の構造例を説明するための断面模式図である。
図2に示す剥離層11Aは、多結晶半導体層111Aと、多結晶半導体層112Aと、を有する。
【0014】
多結晶半導体層111Aは、基板10の上方に設けられる。基板10の例は、例えば、シリコンウエハ等の半導体基板である。または、基板10は、ガラス基板、SiC基板等であってもよい。多結晶半導体層111Aの例は、ポリシリコン層を含む。多結晶半導体層111Aは、p型の導電型を付与するp型不純物を含むp型半導体層である。p型不純物の例は、ボロンである。多結晶半導体層111Aのp型不純物の濃度は、例えば1×1018cm-3以上1×1023cm-3以下が好ましい。また、多結晶半導体層111Aは、n型の導電型を付与するn型不純物の濃度がp型不純物の濃度よりも低いことが好ましく、n型不純物の濃度は、例えば1×1016cm-3以下が好ましい。n型不純物の例は、リン、ヒ素である。
【0015】
多結晶半導体層112Aは、基板10と多結晶半導体層111Aとの間に設けられる。多結晶半導体層112Aは、陽極化成処理の際に基板10の加工を抑制するための保護層としての機能を有する。多結晶半導体層112Aの例は、ポリシリコン層を含む。多結晶半導体層112Aは、n型不純物を含むn型半導体層である。n型不純物の例は、リン、ヒ素である。多結晶半導体層112Aのn型不純物の濃度は、例えば1×1018cm-3以上1×1023cm-3以下が好ましい。また、多結晶半導体層112Aは、p型不純物の濃度がn型不純物の濃度よりも低いことが好ましい。多結晶半導体層112Aのp型不純物の濃度は、例えば1×1016cm-3以下が好ましい。さらに、多結晶半導体層112Aのp型不純物の濃度は、多結晶半導体層111Aのp型不純物の濃度よりも低いことが好ましい。
【0016】
n型不純物やp型不純物の濃度は、例えば二次イオン質量分析法(SIMS)を用いて測定可能である。なお、多結晶半導体層111Aのn型不純物の濃度は、SIMSによる検出限界以下の値であってもよい。
【0017】
剥離層11Aの厚さは、例えば1μm以上20μm以下である。多結晶半導体層111Aの厚さは、例えば0.2μm以上15μm以下である。多結晶半導体層112Aの厚さは、例えば0.2μm以上15μm以下である。
【0018】
多結晶半導体層111Aおよび多結晶半導体層112Aは、例えば低圧プラズマ化学気相成長法(LP-CVD)を用いてn型不純物がドープされた第1の非晶質半導体膜とp型不純物がドープされた第2の非晶質半導体膜とを連続的に形成し、その後これらの非晶質半導体膜を熱処理等の方法を用いて結晶化することにより形成可能である。これに限定されず、イオン注入法を用いて一つの非晶質半導体膜にn型不純物やp型不純物を深さ方向に制御して導入し、その後結晶化を行うことにより多結晶半導体層111Aおよび多結晶半導体層112Aを形成してもよい。非晶質半導体膜の例は、アモルファスシリコン膜である。n型不純物やp型不純物の導入量は、p型不純物を含むソースガスの流量や、非晶質半導体膜の成膜温度によっても変化する。成膜レートが速いほどn型不純物やp型不純物の濃度は低い。なお、非晶質半導体膜の成膜方法は、バッチ式・枚葉式いずれの方式でもよい。
【0019】
図3および
図4は、剥離層11Aの第1の構造例に対する陽極化成処理の例を説明するための断面模式図である。剥離層11Aへの電圧の印加は、例えば電極を用い、
図3に示すように、剥離層11Aの基板10側に正電位を印加し、剥離層11Aの基板10の反対側に負電位を印加することにより行われる。電圧の値は、形成したい多孔質層の空隙率等のパラメータに応じて適宜設定される。
【0020】
p型半導体層である多結晶半導体層111Aとn型半導体層である多結晶半導体層112Aは、pn接合を形成するため、p型半導体層である多結晶半導体層111Aには正孔hが集まり、n型半導体層である多結晶半導体層112Aには電子eが集まり、これらの領域の間に空乏領域を形成する。
【0021】
多結晶半導体層111Aは、多結晶半導体層112Aよりも正孔hの数が多いため、陽極化成されてポーラス化が生じやすく、空隙111Xを有する多孔質層111Bを形成する。これにより、剥離層11Bが形成される。多孔質層111Bは、ポーラス化された多結晶半導体層111Aである。ポーラス化は、多結晶半導体層111Aの表面全体で生じることが好ましい。多結晶半導体層のポーラス化により不純物濃度や厚さは大きく変化しないため、多孔質層111Bの厚さや不純物濃度は、多結晶半導体層111Aの厚さや不純物濃度と同等の範囲内である。
【0022】
一方、多結晶半導体層112Aは、多結晶半導体層111Aよりも正孔hの数が少ないため、多結晶半導体層111Aよりも陽極化成されにくい。よって、多結晶半導体層112Aの少なくとも一部は、多結晶半導体層112Aのままである。なお、多結晶半導体層112Aがポーラス化される場合であっても、多結晶半導体層112Aの多孔質層のポーラス度は、多孔質層111Bのポーラス度よりも低い。ポーラス度は、例えば空隙率(%)により定義できる。
【0023】
第1の構造例を有する剥離層11Aを用いた半導体装置の製造方法は、p型半導体層である多結晶半導体層111Aとn型半導体層である多結晶半導体層112Aとの積層を形成し、逆バイアス電圧を印加することにより、多結晶半導体層112Aの陽極化成を抑制できるため、多結晶半導体層112Aが保護層として機能して陽極化成処理による基板10の加工を抑制できる。よって、支持基板として基板10を再利用しやすくできる。
【0024】
[剥離層の第2の構造例]
剥離層11Aの構造は、第1の構造例に限定されない。
図5は、剥離層11Aの第2の構造例を説明するための断面模式図である。
図2に示す剥離層11Aは、多結晶半導体層121Aと、多結晶半導体層122Aと、多結晶半導体層123Aと、を有する。
【0025】
多結晶半導体層121Aは、基板10の上方に設けられる。基板10の例は、例えば、シリコンウエハ等の半導体基板である。または、基板10は、ガラス基板、SiC基板等であってもよい。多結晶半導体層121Aの例は、ポリシリコン層を含む。多結晶半導体層111Aは、p型不純物を含むp型半導体層である。p型不純物の例は、ボロンを含む。多結晶半導体層121Aのp型不純物の濃度は、多結晶半導体層122Aのp型不純物の濃度および多結晶半導体層123Aのp型不純物の濃度のそれぞれよりも高く、例えば1×1020cm-3以上1×1023cm-3以下が好ましい。また、多結晶半導体層121Aは、n型不純物の濃度がp型不純物の濃度よりも低いことが好ましく、例えば1×1018cm-3以下が好ましい。
【0026】
多結晶半導体層122Aは、基板10と多結晶半導体層121Aとの間に設けられる。多結晶半導体層122Aは、陽極化成処理の際に基板10の加工を抑制するための保護層としての機能を有する。多結晶半導体層122Aの例は、ポリシリコン層を含む。多結晶半導体層122Aは、p型不純物を含むp型半導体層である。p型不純物の例は、ボロンを含む。多結晶半導体層122Aのp型不純物の濃度は、多結晶半導体層121Aのp型不純物の濃度よりも低く、例えば1×1020cm-3以上1×1023cm-3以下が好ましい。また、多結晶半導体層122Aは、n型不純物の濃度がp型不純物の濃度よりも低いことが好ましく、例えば1×1018cm-3以下が好ましい。
【0027】
多結晶半導体層123Aは、多結晶半導体層121Aの上に設けられる。多結晶半導体層123Aは、デバイス層12とデバイス層21とを貼合する際に基板10または基板20を支持する支持層としての機能を有する。多結晶半導体層123Aを設けることにより、剥離層11Aの平坦性を高めることができる。多結晶半導体層123Aの例は、ポリシリコン層を含む。多結晶半導体層123Aは、p型不純物を含むp型半導体層である。p型不純物の例は、ボロンを含む。多結晶半導体層123Aのp型不純物の濃度は、多結晶半導体層121Aのp型不純物の濃度よりも低く、例えば1×1020cm-3以上1×1023cm-3以下が好ましい。また、多結晶半導体層123Aは、n型不純物の濃度がp型不純物の濃度よりも低いことが好ましく、例えば1×1018cm-3以下が好ましい。
【0028】
n型不純物やp型不純物の濃度は、例えばSIMS用いて測定可能である。なお、多結晶半導体層121A、多結晶半導体層122A、多結晶半導体層123Aのそれぞれのn型不純物の濃度は、SIMSによる検出限界以下の値であってもよい。
【0029】
第2の構造例において、剥離層11Aの厚さは、例えば1μm以上20μm以下である。多結晶半導体層121Aの厚さは、例えば0.2μm以上15μm以下である。多結晶半導体層122Aの厚さは、例えば0.2μm以上15μm以下である。多結晶半導体層123Aの厚さは、例えば0.2μm以上15μm以下である。
【0030】
多結晶半導体層121Aの平均結晶粒径は、多結晶半導体層122Aの平均結晶粒径および多結晶半導体層123Aの平均結晶粒径のそれぞれよりも小さいことが好ましい。平均結晶粒径を小さいほど粒界が増加するため、粒界に沿って陽極化成処理によりポーラス化が生じやすい。多結晶半導体層121Aの平均結晶粒径は、例えば100nm以上1000nm未満が好ましい。多結晶半導体層122Aの平均結晶粒径は、例えば10nm以上100nm未満が好ましい。多結晶半導体層123Aの平均結晶粒径は、例えば10nm以上100nm未満が好ましい。各平均結晶粒径は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた断面観察により複数の結晶粒の径を測定することにより求められる。
【0031】
多結晶半導体層121A、多結晶半導体層122A、および多結晶半導体層123Aは、例えばLP-CVDを用いてp型不純物がドープされた第1ないし第3の非晶質半導体層を連続的に形成し、その後これらの非晶質半導体層を熱処理等の方法を用いて結晶化することにより形成可能である。これに限定されず、イオン注入法を用いて一つの非晶質半導体層にp型不純物を導入し、p型不純物の導入量を深さ方向に制御することにより第1ないし第3の非晶質半導体層を形成し、その後、後結晶化を行うことにより多結晶半導体層121A、多結晶半導体層122A、および多結晶半導体層123Aを形成してもよい。第1ないし第3の非晶質半導体層の例は、アモルファスシリコン膜である。n型不純物やp型不純物の導入量は、p型不純物を含むソースガスの流量や、非晶質半導体膜の成膜温度によっても変化する。成膜レートが速いほどn型不純物やp型不純物の濃度は低い。なお、非晶質半導体膜の成膜方法は、バッチ式・枚葉式いずれの方式でもよい。
【0032】
図6は、剥離層11Aの第2の構造例に対する陽極化成処理の例を説明するための断面模式図である。剥離層11Aへの電圧の印加は、剥離層11Aの基板10側に負電位を印加し、剥離層11Aの基板10の反対側に正電位を印加することにより行われる。これにより、多結晶半導体層121A、多結晶半導体層122A、および多結晶半導体層123Aのそれぞれは陽極化成されてポーラス化が生じ、空隙121Xを有する多孔質層121Bと、空隙122Xを有する多孔質層122Bと、空隙123Xを有する多孔質層123Bと、を形成する。ポーラス化は、多結晶半導体層121Aの表面全体で生じることが好ましい。これにより、剥離層11Bが形成される。p型不純物の濃度が低いほど陽極化成処理に対するエッチングレートが低いため、多孔質層122Bおよび多孔質層123Bのポーラス度は、多孔質層121Bのポーラス度よりも低い。ポーラス度は、例えば空隙率(%)により定義できる。
【0033】
第2の構造例を有する剥離層11Aを用いた半導体装置の製造方法は、p型不純物の濃度が高い多結晶半導体層121Aと、p型不純物の濃度が低い多結晶半導体層122Aと多結晶半導体層123Aと、を形成し、電圧を印加することにより、多結晶半導体層122Aの陽極化成を抑制できるため、多孔質層122Bが保護層として機能して陽極化成処理による基板10の加工を抑制できる。よって、支持基板として基板10の再利用しやすくできる。なお、第2の構造例は、第1の構造例と適宜組み合わせることができる。
【0034】
(第2の実施形態)
本実施形態では、第1の実施形態の半導体装置の製造方法により製造可能な半導体装置の構造例について説明する。
図7は、半導体装置の構造例を示す断面模式図であり、基板20の表面に沿うX軸方向と、当該表面に沿ってX軸に略垂直なY軸方向と、当該表面に略垂直なZ軸方向と、を図示する。
【0035】
図7に示す半導体装置1は、基板20と、領域R1と、領域R2と、を有する。基板20は、例えばシリコン基板等である。領域R1は、
図1のデバイス層21の周辺回路を有する領域である。領域R2は、
図1のデバイス層12のメモリセルアレイを有する領域である。
図7は、基板20に設けられた電界効果トランジスタ(FET)TR
Nおよび電界効果トランジスタTR
Pと、導電層221と、導電層224と、導電層225と、メモリピラーMPと、選択ゲート線SGSと、ワード線WL(ワード線WL0~ワード線WL(M-1)(Mは整数)と、選択ゲート線SGDと、ビット線BLと、導電層231と、導電層234と、接続パッド261と、接続パッド262と、を図示する。
【0036】
電界効果トランジスタTRNは、Nチャネル型トランジスタである。電界効果トランジスタTRPは、Pチャネル型トランジスタである。電界効果トランジスタTRN、電界効果トランジスタTRP等の電界効果トランジスタは、高速動作を目的とした超低圧耐圧トランジスタであり、例えば低電圧駆動および高速動作が可能な周辺回路に適用可能である。電界効果トランジスタTRNおよび電界効果トランジスタTRPのそれぞれは、上記周辺回路のいずれかを構成する。
【0037】
メモリピラーMPは、選択ゲート線SGS、複数のワード線WL、および選択ゲート線SGDを含む積層体を貫通して配線層301に接続され、配線層301を介して図示しないソース線SLに接続される。ここで、メモリピラーMPの構造例について説明する。
図8は、メモリピラーMPの構造例を示す断面模式図である。
図8は、導電層241と、絶縁層242と、ブロック絶縁膜251と、電荷蓄積膜252と、トンネル絶縁膜253と、半導体層254と、コア絶縁層255と、キャップ層256と、導電層231と、を図示する。
【0038】
導電層241および絶縁層242は、交互に積層されて積層体を構成する。複数の導電層241は、選択ゲート線SGS、ワード線WL、選択ゲート線SGDをそれぞれ構成する。導電層241は、金属材料を含む。絶縁層242は、例えば酸素とシリコンとを含む。
【0039】
ブロック絶縁膜251、電荷蓄積膜252、トンネル絶縁膜253、半導体層254、およびコア絶縁層255は、メモリピラーMPを構成する。メモリピラーMPの各構成要素は、Z軸方向に沿って延伸する。1つのメモリピラーMPが1つのNANDストリングNSに対応する。また、ブロック絶縁膜251、電荷蓄積膜252、およびトンネル絶縁膜253は、導電層241と絶縁層242との積層体と半導体層254との間にメモリ層を構成する。
【0040】
ブロック絶縁膜251、トンネル絶縁膜253、およびコア絶縁層255は、例えば酸素とシリコンとを含む。電荷蓄積膜252は、例えば窒素とシリコンとを含む。半導体層254およびキャップ層256は、例えばポリシリコンを含む。
【0041】
より具体的には、複数の導電層241を貫通してメモリピラーMPに対応するホールが形成される。ホールの側面にはブロック絶縁膜251、電荷蓄積膜252、及びトンネル絶縁膜253が順次積層されている。そして、側面がトンネル絶縁膜253に接するように半導体層254が形成される。
【0042】
半導体層254は、Z軸方向に沿って導電層241と絶縁層242との積層体を貫通する。半導体層254は、第1の選択トランジスタ、第2の選択トランジスタ、メモリトランジスタのチャネル形成領域を有する。よって、半導体層254は、第1の選択トランジスタ、第2の選択トランジスタ、メモリトランジスタの電流経路を接続する信号線として機能する。
【0043】
コア絶縁層255は、半導体層254の内側に設けられる。コア絶縁層255は、半導体層254に沿って延在する。
【0044】
キャップ層256は、半導体層254およびコア絶縁層255の上に設けられるとともに、トンネル絶縁膜253に接する。
【0045】
導電層231の一つは、コンタクトプラグを介してキャップ層256に接する。導電層231の一つは、ビット線BLを構成する。導電層231の他の一つは、酸素とシリコンとを有する絶縁層302を貫通するコンタクトプラグを介してボンディングパッド303に接続される。導電層231およびボンディングパッド303は、金属材料を含む。
【0046】
メモリピラーMPおよび各ワード線WLを構成する導電層241は、メモリトランジスタを構成する。メモリピラーMPおよび選択ゲート線SGDを構成する導電層241は、第1の選択トランジスタを構成する。メモリピラーMPおよび各選択ゲート線SGSを構成する導電層241は、第2の選択トランジスタを構成する。
【0047】
導電層225の一つは、コンタクトプラグ並びに導電層221および導電層224を介して電界効果トランジスタTRN、電界効果トランジスタTRP等の電界効果トランジスタのソースまたはドレインに接続される。
【0048】
導電層234の一つは、コンタクトプラグおよび導電層231を介して配線層301に接続される。導電層234の他の一つは、コンタクトプラグを介してビット線BLに接続される。導電層234の別の他の一つは、コンタクトプラグおよび導電層231を介して選択ゲート線SGS、複数のワード線WL、または選択ゲート線SGDに接続される。
【0049】
接続パッド261は、基板20側の接続パッドである。接続パッド261は、コンタクトプラグを介して導電層225に接続される。接続パッド261は、例えば銅や銅合金等の金属材料を含む。
【0050】
接続パッド262は、コンタクトプラグを介して導電層234に接続される。接続パッド262は、例えば銅や銅合金等の金属材料を含む。
【0051】
接続パッド261および接続パッド262は、例えば金属間の元素拡散、ファンデルワールス力、体積膨張や溶融による再結晶化等により直接接合される。さらに、絶縁物同士の元素拡散、ファンデルワールス力、脱水縮合やポリマー化等の化学反応等により直接接合することにより、
図1に示すデバイス層12とデバイス層21とを貼合することができる。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0053】
1…半導体装置、10…基板、11A…剥離層、11B…剥離層、12…デバイス層、20…基板、21…デバイス層、111A…多結晶半導体層、111B…多孔質層、111X…空隙、112A…多結晶半導体層、121A…多結晶半導体層、121B…多孔質層、121X…空隙、122A…多結晶半導体層、122B…多孔質層、122X…空隙、123A…多結晶半導体層、123B…多孔質層、123X…空隙、221…導電層、224…導電層、225…導電層、231…導電層、234…導電層、241…導電層、242…絶縁層、251…ブロック絶縁膜、252…電荷蓄積膜、253…トンネル絶縁膜、254…半導体層、255…コア絶縁層、256…キャップ層、261…接続パッド、262…接続パッド、301…配線層、302…絶縁層、303…ボンディングパッド。