(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044469
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0587 20100101AFI20240326BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20240326BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240326BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240326BHJP
H01M 50/491 20210101ALI20240326BHJP
H01M 50/531 20210101ALI20240326BHJP
H01M 50/46 20210101ALI20240326BHJP
【FI】
H01M10/0587
H01M10/0566
H01M10/052
H01M4/13
H01M50/491
H01M50/531
H01M50/46
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149999
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】丸山 舜也
【テーマコード(参考)】
5H021
5H029
5H043
5H050
【Fターム(参考)】
5H021EE03
5H021EE04
5H021HH02
5H029AJ02
5H029AK03
5H029AL07
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029BJ14
5H029HJ04
5H043AA03
5H043BA19
5H043CA12
5H050AA02
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB08
5H050FA05
5H050HA04
(57)【要約】
【課題】入出力特性を向上可能としたリチウムイオン二次電池を提供すること。
【解決手段】リチウムイオン二次電池は、負極基材21と負極合材層22とを有する負極板20と、正極基材31と正極合材層32とを有する正極板30と、負極板20と正極板30との間に設けられるセパレータ40と、非水電解液とを備える。負極基材21は、負極合材層22よりも第1幅方向W1に突出して、負極外部端子に電気的に接続される負極接続部23を有し、正極基材31は、正極合材層32よりも第1幅方向W1の反対方向である第2幅方向W2に突出して、正極外部端子に電気的に接続される正極接続部33を有する。負極板20は、第1幅方向W1に向かうほど厚みが厚く形成され、正極板30は、第2幅方向W2に向かうほど厚みが厚く形成され、セパレータ40は、第2幅方向W2に向かうほど空孔率が大きくなるように構成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極基材と前記負極基材の両面に設けられる負極合材層とを有する負極板と、
正極基材と前記正極基材の両面に設けられる正極合材層とを有する正極板と、
前記負極板と前記正極板との間に設けられるセパレータと、
非水電解液と、を備え、
前記負極基材は、前記負極合材層よりも第1幅方向に突出して、負極外部端子に電気的に接続される負極接続部を有し、
前記正極基材は、前記正極合材層よりも前記第1幅方向の反対方向である第2幅方向に突出して、正極外部端子に電気的に接続される正極接続部を有する、リチウムイオン二次電池であって、
前記負極板は、前記第1幅方向に向かうほど厚みが厚く形成され、
前記正極板は、前記第2幅方向に向かうほど厚みが厚く形成され、
前記セパレータは、前記第2幅方向に向かうほど空孔率が大きくなるように構成されている、
リチウムイオン二次電池。
【請求項2】
前記負極板は、前記負極合材層が前記第1幅方向に向かうほど厚みが厚く形成され、
前記正極板は、前記正極合材層が前記第2幅方向に向かうほど厚みが厚く形成されている、
請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項3】
前記セパレータの空孔率は、前記第1幅方向の端部に対して前記第2幅方向の端部が102%以上である、
請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項4】
前記負極板と前記正極板とは、積層された際の全体の厚みが幅方向に一定となるように設定されている、
請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リチウムイオン二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、リチウムイオン二次電池としては、負極板と、正極板と、セパレータと、非水電解液とを備えたものがある。負極板は、負極基材と、負極基材の表面に設けられる負極合材層とを有し、正極板は、正極基材と、正極基材の表面に設けられる正極合材層とを有する。セパレータは、負極板と正極板との間に設けられる。
【0003】
そして、このようなリチウムイオン二次電池としては、負極板と正極板の厚さを幅方向で異ならせたものがある(例えば、特許文献1参照)。この負極板は、負極の外部端子に電気的に接続されることになる負極接続部を有し、その負極接続部が設けられる方向に向かうほど厚さが厚く形成されている。また、正極板は、正極の外部端子に電気的に接続されることになる正極接続部を有し、その正極接続部が設けられる方向に向かうほど厚さが厚く形成されている。このようなリチウムイオン二次電池では、電流が集中する負極接続部側及び正極接続部側の抵抗が小さくなることによって、リチウムイオン二次電池の入出力特性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようなリチウムイオン二次電池では、負極板の抵抗が幅方向で異なるため、例えば、充電時に正極板から負極板に向かう電流が幅方向の一部に集中することがある。よって、電流の集中した箇所でリチウム金属の析出が生じ易かった。このことは、例えば、リチウムイオン二次電池の入出力特性を悪化させる原因となる。なお、例えば充電時の電流を小さく制御することで、リチウム金属の析出を抑えることも可能ではあるが、この場合、入力特性も抑制されてしまう。
【0006】
本開示の目的は、入出力特性を向上可能としたリチウムイオン二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するリチウムイオン二次電池の態様を記載する。
[態様1]負極基材と前記負極基材の両面に設けられる負極合材層とを有する負極板と、正極基材と前記正極基材の両面に設けられる正極合材層とを有する正極板と、前記負極板と前記正極板との間に設けられるセパレータと、非水電解液と、を備え、前記負極基材は、前記負極合材層よりも第1幅方向に突出して、負極外部端子に電気的に接続される負極接続部を有し、前記正極基材は、前記正極合材層よりも前記第1幅方向の反対方向である第2幅方向に突出して、正極外部端子に電気的に接続される正極接続部を有する、リチウムイオン二次電池であって、前記負極板は、前記第1幅方向に向かうほど厚みが厚く形成され、前記正極板は、前記第2幅方向に向かうほど厚みが厚く形成され、前記セパレータは、前記第2幅方向に向かうほど空孔率が大きくなるように構成されている。
【0008】
同構成によれば、負極板は負極接続部が設けられる第1幅方向に向かうほど厚みが厚く形成され、正極板は正極接続部が設けられる第2幅方向に向かうほど厚みが厚く形成されるため、電流が集中する負極接続部側及び正極接続部側の抵抗が小さくなる。よって、リチウムイオン二次電池の入出力特性が向上する。また、負極板は、第2幅方向に向かうほど厚みが薄くなることから、負極板の単体での抵抗は第2幅方向に向かうほど大きくなる。しかし、セパレータは、第2幅方向に向かうほど空孔率が大きくなることで第2幅方向に向かうほど非水電解液の補液量も多くなることから、セパレータと負極板とを合わせた抵抗は幅方向で一定に近づくことになる。よって、例えば、充電時に正極板から負極板に向かう電流が幅方向の一部に集中することが抑制されることになり、ひいては電流の集中に基づくリチウム金属の析出が抑制される。よって、例えば、リチウムイオン二次電池の入出力特性が良好に維持される。
【0009】
[態様2][態様1]に記載のリチウムイオン二次電池において、前記負極板は、前記負極合材層が前記第1幅方向に向かうほど厚みが厚く形成され、前記正極板は、前記正極合材層が前記第2幅方向に向かうほど厚みが厚く形成されていることが好ましい。
【0010】
同構成によれば、負極合材層が第2幅方向に向かうほど厚みが薄くなることで第2幅方向に向かうほど非水電解液の補液量も少なくなることから、負極板の単体での抵抗は第2幅方向に向かうほど大きくなる。しかし、セパレータは、第2幅方向に向かうほど空孔率が大きくなることで第2幅方向に向かうほど非水電解液の補液量も多くなることから、セパレータと負極板とを合わせた抵抗は幅方向で一定に近づくことになる。よって、例えば、充電時に正極板から負極板に向かう電流が幅方向の一部に集中することが抑制されることになり、ひいては電流の集中に基づくリチウム金属の析出が抑制される。よって、例えば、リチウムイオン二次電池の入出力特性が良好に維持される。
【0011】
[態様3][態様1]または[態様2]に記載のリチウムイオン二次電池において、前記セパレータの空孔率は、前記第1幅方向の端部に対して前記第2幅方向の端部が102%以上であることが好ましい。
【0012】
同構成によれば、セパレータの空孔率は、第1幅方向の端部に対して第2幅方向の端部が102%以上であるため、例えば、リチウムイオン二次電池の入出力特性が良好に維持される。
【0013】
[態様4][態様1]から[態様3]のいずれか1つに記載のリチウムイオン二次電池において、前記負極板と前記正極板とは、積層された際の全体の厚みが幅方向に一定となるように設定されていることが好ましい。
【0014】
同構成によれば、負極板と正極板とは、積層された際の全体の厚みが幅方向に一定となるように設定されているため、例えば、幅方向のいずれか一方の厚みが厚くなって歪んでしまうといったことを回避できる。
【発明の効果】
【0015】
本開示のリチウムイオン二次電池によれば、入出力特性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、一実施形態におけるリチウムイオン二次電池の斜視図である。
【
図2】
図2は、一実施形態における電極体の構成を示す模式一部展開図である。
【
図3】
図3は、一実施形態における電極体の構成を示す模式一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[本実施形態の説明]
以下、リチウムイオン二次電池10の一実施形態について
図1から
図3を用いて説明する。
【0018】
<リチウムイオン二次電池10の全体の構成>
図1に示すように、リチウムイオン二次電池10は、セル電池として構成される。リチウムイオン二次電池10は、電池ケース11と、蓋体12とを備える。電池ケース11は、上側に図示しない開口部を備える。蓋体12は、開口部を封止する。電池ケース11は、アルミニウム合金等の金属で構成されている。蓋体12は、電力の充放電に用いられる負極外部端子13及び正極外部端子14を備える。
【0019】
リチウムイオン二次電池10は、電極体15と、負極集電体16と、正極集電体17とを備える。電極体15は、電池ケース11の内部に収容される。負極集電体16は、電極体15の負極と負極外部端子13とを接続する。正極集電体17は、電極体15の正極と正極外部端子14とを接続する。
【0020】
リチウムイオン二次電池10は、非水電解液18を備える。非水電解液18は、電池ケース11内に注入されている。リチウムイオン二次電池10には、電池ケース11に蓋体12が取り付けられることで密閉された電槽が構成される。このように、電池ケース11は、電極体15及び非水電解液18を収容する。
【0021】
<電極体15>
図2に示すように、電極体15は、負極板20と、正極板30と、セパレータ40とを備える。電極体15の長手の方向を「長さ方向Z」という。電極体15の厚さの方向を「厚み方向D」という。電極体15の長さ方向Z及び厚み方向Dに交わる方向を「幅方向W」という。幅方向Wのうち一方の方向を「第1幅方向W1」といい、幅方向Wのうち他方の方向を「第2幅方向W2」という。つまり、第2幅方向W2は、第1幅方向W1の反対方向である。
【0022】
電極体15は、負極板20と、正極板30と、セパレータ40とが積層されてなる。セパレータ40は、負極板20と正極板30との間に設けられる。詳しくは、電極体15は、セパレータ40、負極板20、セパレータ40、正極板30の順に積層される。
【0023】
電極体15は、負極板20と、正極板30と、セパレータ40とが積層された状態で、幅方向Wに沿った軸を中心として捲回されてなる。なお、電極体15の幅方向Wは、捲回される前の状態の帯状の負極板20や正極板30やセパレータ40の幅方向と一致する方向である。電極体15は、厚み方向Dに扁平形状とされている。また、電極体15は、捲回されることによって、厚み方向Dに沿って、セパレータ40、負極板20、セパレータ40、正極板30が、この順に繰り返し積層された状態となる。
【0024】
<負極板20>
負極板20は、リチウムイオン二次電池10の負極として機能する。
図2及び
図3に示すように、負極板20は、負極基材21と、負極基材21の表面に設けられる負極合材層22とを有する。負極基材21は、負極の電極基材である。負極合材層22は、負極の電極合材層であり、負極基材21の両面に設けられる。
【0025】
負極基材21は、負極接続部23を有する。負極接続部23は、負極基材21の両面に負極合材層22が設けられていない領域である。負極接続部23は、電極体15の第1幅方向W1における端部に設けられる。言い換えると、負極接続部23は、負極合材層22よりも第1幅方向W1に突出する。また、負極接続部23は、正極板30及びセパレータ40よりも第1幅方向W1に突出する。そして、負極接続部23は、負極集電体16に接続されることで、負極外部端子13に電気的に接続されることになる。
【0026】
本実施形態では、負極基材21は、Cu箔から構成されている。負極基材21は、負極合材層22の骨材としてのベースとなる。負極基材21は、負極合材層22から電気を集電する集電部材の機能を有している。
【0027】
負極合材層22は、負極活物質と、負極添加物とを有する。負極板20は、例えば、負極活物質と負極添加物とを混練し、混練後の負極合材ペーストを負極基材21に塗布した状態で乾燥させることで作製される。
【0028】
負極活物質は、負極の活物質であり、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な材料である。負極活物質としては、例えば黒鉛(グラファイト)等からなる粉末状の炭素材料を用いることができる。
【0029】
負極添加物は、負極の添加物であり、負極溶媒、負極結着材(バインダー)及び負極増粘材を含む。負極溶媒としては、例えば水等を用いることができる。負極結着材としては、例えばスチレンブタジエンラバー(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルアルコール(PVA)等を用いることができる。負極増粘材としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等を用いることができる。負極添加物は、例えば負極導電材等を更に含んでもよい。
【0030】
<正極板30>
正極板30は、リチウムイオン二次電池10の正極として機能する。
図2及び
図3に示すように、正極板30は、正極基材31と、正極基材31の表面に設けられる正極合材層32とを有する。正極基材31は、正極の電極基材である。正極合材層32は、正極の電極合材層であり、正極基材31の両面に設けられる。
【0031】
正極基材31は、正極接続部33を有する。正極接続部33は、正極基材31の両面に正極合材層32が設けられていない領域である。正極接続部33は、電極体15の第2幅方向W2における端部に設けられる。言い換えると、正極接続部33は、正極合材層32よりも第2幅方向W2に突出する。また、正極接続部33は、負極板20及びセパレータ40よりも第2幅方向W2に突出する。そして、正極接続部33は、正極集電体17に接続されることで、正極外部端子14に電気的に接続されることになる。また、正極合材層32は、負極合材層22よりも幅方向Wの大きさが小さく形成されている。言い換えると、負極合材層22は、正極合材層32よりも第1幅方向W1及び第2幅方向W2に突出するように、正極合材層32よりも幅方向Wの大きさが大きく形成されている。
【0032】
本実施形態では、正極基材31は、Al箔やAl合金箔から構成されている。正極基材31は、正極合材層32の骨材としてのベースとなる。正極基材31は、正極合材層32から電気を集電する集電部材の機能を有している。
【0033】
正極合材層32は、正極活物質と、正極添加物とを有する。正極板30は、例えば、正極活物質と正極添加物とを混練し、混練後の正極合材ペーストを正極基材31に塗布した状態で乾燥することで作製される。
【0034】
正極活物質は、正極の活物質であり、リチウムを吸蔵・放出可能な材料である。正極活物質としては、例えば、ニッケル、マンガン及びコバルトを含有する三元系(NMC)リチウム含有複合酸化物であり、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(LiNiCoMnO2)を用いることができる。正極活物質としては、例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)の何れか一つを用いてもよい。正極活物質としては、例えば、ニッケル、コバルト及びアルミニウム(NCA)を含有するリチウム含有複合酸化物を用いてもよい。
【0035】
正極添加物は、正極の添加物であり、正極溶媒、正極導電材及び正極結着材(バインダー)を含む。正極溶媒としては、例えばNMP(N-メチル-2-ピロリドン)溶液等、非水溶媒を用いることができる。正極導電材としては、例えばカーボンナノチューブ(CNT)やカーボンナノファイバ(CNF)等の炭素繊維等を用いることができるが、黒鉛(グラファイト)、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック等のカーボンブラック等を用いてもよい。正極結着材としては、例えば負極結着材と同様のものを用いることができる。正極添加物は、例えば正極増粘材等を更に含んでもよい。
【0036】
<セパレータ40>
セパレータ40は、負極板20と正極板30との間に設けられる。セパレータ40は、負極合材層22及び正極合材層32よりも第1幅方向W1及び第2幅方向W2に突出するように、負極合材層22及び正極合材層32よりも幅方向Wの大きさが大きく形成されている。セパレータ40は、非水電解液18を保持する。セパレータ40は、多孔性樹脂であるポリプロピレン製等の不織布である。セパレータ40としては、多孔性ポリエチレン膜、多孔性ポリオレフィン膜、および多孔性ポリ塩化ビニル膜等の多孔性ポリマー膜、又は、リチウムイオンもしくはイオン導電性ポリマー電解質膜を、単独、又は組み合わせて使用することもできる。非水電解液18に電極体15を浸漬させるとセパレータ40の端部から中央部に向けて非水電解液18が浸透する。
【0037】
<非水電解液18>
非水電解液18は、非水溶媒に支持塩が含有された組成物である。本実施形態では、非水溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)を用いることができる。非水溶媒としては、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等からなる群から選択された一種または二種以上の材料でもよい。
【0038】
また、支持塩としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3、LiI等を用いることができる。またこれらから選択される一種または二種以上のリチウム化合物(リチウム塩)を用いることができる。このように、非水電解液18は、リチウム化合物を含む。
【0039】
<本実施形態の詳細な構成>
図3に示すように、負極板20は、第1幅方向W1に向かうほど厚みが厚く形成されている。詳しくは、負極板20は、負極合材層22が第1幅方向W1に向かうほど厚みが厚く形成されている。なお、本実施形態では負極基材21は、幅方向Wに厚みが一定とされている。
【0040】
また、正極板30は、第2幅方向W2に向かうほど厚みが厚く形成されている。詳しくは、正極板30は、正極合材層32が第2幅方向W2に向かうほど厚みが厚く形成されている。なお、本実施形態では正極基材31は、幅方向Wに厚みが一定とされている。
【0041】
また、負極板20と正極板30とは、積層された際の全体の厚みが幅方向Wに一定となるように設定されている。なお、
図3では、負極板20及び正極板30の厚みを含む形状を模式的に図示している。
【0042】
そして、セパレータ40は、第2幅方向W2に向かうほど空孔率が大きくなるように構成されている。なお、空孔率は、セパレータ40の外形の体積に対する空隙の体積の割合である。言い換えると、セパレータ40は、第2幅方向W2に向かうほど透気度が小さくなるように構成されている。なお、透気度は、一定量の流体が通過するまでにどれだけの時間を要するかを示す度合であって、その値が大きいほど流体が通りにくいことを意味する。
【0043】
セパレータ40の空孔率は、第1幅方向W1の端部に対して第2幅方向W2の端部が102%以上であることが好ましい。本実施形態のセパレータ40の空孔率は、第1幅方向W1の端部に対して第2幅方向W2の端部が102%以上とされている。また、セパレータ40の空孔率は、第1幅方向W1の端部に対して第2幅方向W2の端部が103%以上とされていてもよいし、105%以上とされていてもよい。なお、
図3では、空孔率の変化を、模式的にグラデーションを用いて図示している。
【0044】
セパレータ40は、例えば、製造時にセパレータ40に加える張力に差を付けることで、幅方向Wに空孔率を変化させることができる。また、セパレータ40は、例えば、製造時にセパレータ40を加熱する温度や時間等に差を付けることで、幅方向Wに空孔率を変化させることができる。
【0045】
次に、上記実施形態の作用及び効果を以下に記載する。
(1)負極板20は負極接続部23が設けられる第1幅方向W1に向かうほど厚みが厚く形成され、正極板30は正極接続部33が設けられる第2幅方向W2に向かうほど厚みが厚く形成されている。よって、電流が集中する負極接続部23に近い側及び正極接続部33に近い側の抵抗が小さくなる。よって、リチウムイオン二次電池10の入出力特性が向上する。また、負極板20は、第2幅方向W2に向かうほど厚みが薄くなることから、負極板20の単体での抵抗は第2幅方向W2に向かうほど大きくなる。しかし、セパレータ40は、第2幅方向W2に向かうほど空孔率が大きくなることで第2幅方向W2に向かうほど非水電解液18の補液量も多くなることから、セパレータ40と負極板20とを合わせた抵抗は幅方向Wで一定に近づくことになる。よって、例えば、充電時に正極板30から負極板20に向かう電流が幅方向Wの一部に集中することが抑制されることになり、ひいては電流の集中に基づくリチウム金属の析出が抑制される。よって、例えば、リチウムイオン二次電池10の入出力特性が良好に維持される。なお、本実施形態のリチウムイオン二次電池10と、セパレータ40の空孔率が幅方向Wに一定のものとされたリチウムイオン二次電池とを比較した実験では、本実施形態の方が、析出が生じない限界の電流値が10%大きくなった。
【0046】
(2)本実施形態では、負極合材層22が第2幅方向W2に向かうほど厚みが薄くなることで第2幅方向W2に向かうほど非水電解液18の補液量も少なくなることから、負極板20の単体での抵抗は第2幅方向W2に向かうほど大きくなる。しかし、セパレータ40は、第2幅方向W2に向かうほど空孔率が大きくなることで第2幅方向W2に向かうほど非水電解液18の補液量も多くなることから、セパレータ40と負極板20とを合わせた抵抗は幅方向Wで一定に近づくことになる。よって、例えば、充電時に正極板30から負極板20に向かう電流が幅方向Wの一部に集中することが抑制されることになり、ひいては電流の集中に基づくリチウム金属の析出が抑制される。よって、例えば、リチウムイオン二次電池10の入出力特性が良好に維持される。
【0047】
(3)セパレータ40の空孔率は、第1幅方向W1の端部に対して第2幅方向W2の端部が102%以上であるため、例えば、リチウムイオン二次電池10の入出力特性が良好に維持される。
【0048】
(4)負極板20と正極板30とは、積層された際の全体の厚みが幅方向Wに一定となるように設定されているため、例えば、幅方向Wのいずれか一方の厚みが厚くなって歪んでしまうといったことを回避できる。
【0049】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、負極板20は、負極合材層22が第1幅方向W1に向かうほど厚みが厚く形成されるとしたが、これに限定されない。例えば、負極板20は、負極基材21が第1幅方向W1に向かうほど厚みが厚く形成されていてもよい。そして、この場合、負極合材層22は幅方向Wに厚みが一定とされていてもよい。
【0050】
また、正極板30は、正極合材層32が第2幅方向W2に向かうほど厚みが厚く形成されるとしたが、これに限定されない。例えば、正極板30は、正極基材31が第2幅方向W2に向かうほど厚みが厚く形成されていてもよい。そして、この場合、正極合材層32は幅方向Wに厚みが一定とされていてもよい。
【0051】
・上記実施形態では、セパレータ40の空孔率は、第1幅方向W1の端部に対して第2幅方向W2の端部が102%以上であるとしたが、これに限定されず、第1幅方向W1の端部に対して第2幅方向W2の端部が102%よりも小さくてもよい。
【0052】
・上記実施形態では、負極板20と正極板30とは、積層された際の全体の厚みが幅方向Wに一定となるように設定されるとしたが、これに限定されず、例えば、用途等に応じて、積層された際の全体の厚みが幅方向Wに異なるように設定してもよい。
【符号の説明】
【0053】
10 リチウムイオン二次電池
11 電池ケース
12 蓋体
13 負極外部端子
14 正極外部端子
15 電極体
16 負極集電体
17 正極集電体
18 非水電解液
20 負極板
21 負極基材
22 負極合材層
23 負極接続部
30 正極板
31 正極基材
32 正極合材層
33 正極接続部
40 セパレータ
D 厚み方向
W 幅方向
W1 第1幅方向
W2 第2幅方向
Z 長さ方向