IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大王製紙株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ハンガー 図1
  • 特開-ハンガー 図2
  • 特開-ハンガー 図3
  • 特開-ハンガー 図4
  • 特開-ハンガー 図5
  • 特開-ハンガー 図6
  • 特開-ハンガー 図7
  • 特開-ハンガー 図8
  • 特開-ハンガー 図9
  • 特開-ハンガー 図10
  • 特開-ハンガー 図11
  • 特開-ハンガー 図12
  • 特開-ハンガー 図13
  • 特開-ハンガー 図14
  • 特開-ハンガー 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044471
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ハンガー
(51)【国際特許分類】
   A47G 25/02 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
A47G25/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150003
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横田 善行
【テーマコード(参考)】
3K099
【Fターム(参考)】
3K099AA01
3K099BA14
3K099BA23
3K099CA18
3K099CA49
3K099CB51
3K099DA11
(57)【要約】
【課題】プラスチックを用いないハンガーを提供する。
【解決手段】
衣服類を掛けるハンガー本体部と、支持体に掛けるためのフック部とを有し、
ハンガー本体部は、第一枠本体部と第二枠本体部とで構成され、フック部は、第一フック部形成片と第二フック部形成片とで構成され、第一枠本体部、第二枠本体部、第一フック部形成片及び第二フック部形成片は、一枚のシート材で構成され、第一枠本体部と第二枠本体部は、第一底部の底縁と第二底部の底縁とを共通の底側折り線として連接され、この底側折り線で折り返すことで、第一頂部と第二頂部とが突合せの対面位置となり、かつ、対面位置で、第一枠本体部と第二枠本体部とを繋ぐ差込片が差込部に差し込み可能となる、ハンガーにより解決される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣服用のハンガーであって、
衣服類を掛けるハンガー本体部と、支持体に掛けるためのフック部とを有し、
ハンガー本体部は、第一枠本体部と第二枠本体部とで構成され、
フック部は、第一フック部形成片及び第一フック部補強片と第二フック部形成片及び第二フック部補強片とで構成され、
第一枠本体部、第二枠本体部、第一フック部形成片、第一フック部補強片、第二フック部形成片及び第二フック部補強片は、一枚のシート材で構成され、
第一枠本体部は、
第一頂部と、
第一頂部から左右斜外方向に延設する第一右肩部及び第一左肩部と、
第一右肩部と第一左肩部の下部同士を繋ぐ第一底部と、
第一右肩部及び第一左肩部からそれぞれ第一肩部折り線を介して延出し、第一頂部側から第一底部側に向かって拡幅する第一肩部上部形成片と、
第一肩部上部形成片から差込片形成折り線を介して延出する差込片と、を有し、
第二枠本体部は、
第二頂部と、
第二頂部から左右斜外方向に延設する第二右肩部及び第二左肩部と、
第二右肩部と第二左肩部の下部同士を繋ぐ第二底部と、
第二右肩部及び第二左肩部からそれぞれ第二肩部折り線を介して延出する第二肩部上部形成片と、
第二右肩部及び第二左肩部と第二肩部上部形成片との間にそれぞれあって差込片を差し込み可能な差込部と、を有し、
第一フック部形成片は、
第一頂部から延設し、
第一フック部補強片は、
第一フック部折り線を介して第一フック部形成片に連接し、第一フック部折り線で折り返すことで、第一フック部形成片の一部又は全部に重なり、
第二フック部形成片は、
第二頂部から延設し、
第二フック部補強片は、
第二フック部折り線を介して第二フック部形成片に連接し、第二フック部折り線で折り返すことで、第二フック部形成片の一部又は全部に重なり、
第一枠本体部と第二枠本体部は、第一底部の底縁と第二底部の底縁とを共通の底側折り線として連接され、この底側折り線で折り返すことで、第一頂部と第二頂部とが突合せの対面位置となり、
かつ、第一肩部折り線、第二肩部折り線及び差込片形成折り線を折ることで、対面位置において、差込片が差込部に差し込み可能となる、
ことを特徴とする、ハンガー。
【請求項2】
第一フック部形成片は、先端部に第一係止溝を有し、
第一フック部補強片は、第一フック部折り線で折り返した際に、第一フック部形成片の先端部を除く範囲に重なり、
第一フック部形成片は、先端部に第一係止溝を有し、
第一フック部補強片は、第一フック部折り線で折り返した際に、第一フック部形成片の先端部を除く範囲に重なり、
前記第一頂部と第二頂部とが突合せの対面位置となった際に、第一係止溝と第二係止溝とが係止可能となる、
請求項1記載のハンガー。
【請求項3】
第一フック部折り線で第一フック部補強片を折り返して第一フック部形成片に重ね、
第二フック部折り線で第二フック部補強片を折り返して第二フック部形成片に重ね、
第一枠本体部と第二枠本体部を底側折り線で折り返すとことで、第一頂部と第二頂部とともに、第一フック部補強片と第二フック部補強片とが突合せの対面位置となり、
その対面位置において、差込片を差込部に差し込んだ際に、
第一フック部形成片、第一フック部補強片、第二フック部形成片及び第二フック部補強片によってシート材が四層積層されたフック部が形成される、
請求項1記載のハンガー。
【請求項4】
第一フック部折り線、第二フック部折り線、第一肩部折り線、第二肩部折り線、差込片形成折り線がハーフスリットであり、かつ、同一面に形成されている、
請求項1記載のハンガー。
【請求項5】
シート材が、パルプ繊維を抄紙した紙であり、その紙が、複数の紙層が積層されている多層紙である、
請求項1記載のハンガー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンガーに関する。
【背景技術】
【0002】
上着やズボン、下着等の衣服類を展示販売したり、通信販売したり、クリーニング店や家庭にて衣服類を収容保管したりするため、硬質プラスチック製のハンガーが広く使用されている。また、ホテルや旅館等の宿泊施設においては、部屋備え付けのクローセット等に宿泊者等が利用するための硬質プラスチック製や木製のハンガーが備えられていることがある(下記、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
硬質プラスチック製のハンガーは、金型を作成して射出成形して形成することから、ハンガー自体に厚みがあったり、折り畳みや分解が難しい構造のものが多く、収納や運搬が行いにくいという問題があった。
【0004】
他方で、近年では、マイクロプラスチックによる海洋汚染等の問題が注目され、環境保護の点等から脱プラスチック化が世界的に進んでいる。日本においても、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が成立し、例えば、特定の事業者に対して、使い捨てプラスチック製品の削減が義務化されることとなった。そして、この「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」では、「特定プラスチック使用製品」として、プラスチック製のハンガーが指定されており、ハンガーにおける脱プラスチック化の要望が高まっている。
【0005】
ここで、ハンガーをプラスチックに代えて紙製とした技術が、例えば、下記特許文献3、特許文献4、特許文献5等に提案されている。
【0006】
特許文献3に開示されるハンガーは、フック部とハンガー部とを別体とすることで、シート状のパーツ毎に分解することができるようになっており、紙製としながらフック部及びハンガー部が一体成型されているプラスチック製のハンガーより収納及び運搬がしやすいものとなっている。
【0007】
特許文献4及び特許文献5に開示されるハンガーは、一枚のシート材を折り曲げ組み立てて立体的な形状となっており、使用時に衣類に皺や型崩れが発生しにくいものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第6954700号
【特許文献2】特許第6694198号
【特許文献3】特開2011-182807号公報
【特許文献4】実用新案登録第3159829号
【特許文献5】特開2019-151364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、これら特許文献3~特許文献5の紙等のシート材で構成されるハンガーは、組み立て前のシート材の状態での収納性、運搬性には優れるものの、一度組み立てた後には、シート形状に戻しがたく、廃棄、再収納や再持ち運びの際に嵩張るという問題があった。特に、特許文献3のハンガーは、使用時、運搬時に複数部材の組み立及び分解という煩雑な操作を要する。
【0010】
他方で、クリーニング店や衣服類等の展示販売・通信販売を行う会社の店舗や倉庫等、宿泊施設等においては、ハンガーに吊るした衣類を、ハンガーバーやハンガーラックに掛けたり外したりする操作を繰り返し行うことがある。また、特に、クリーニング店や店舗や倉庫での作業には、多量の衣類を扱うため、迅速な操作が求められることがある。そして、このような操作では、特にフック部にひねりやねじりが加わりやすい。紙素材はプラスチック素材と比較すると強度が発現しがたい傾向にある。引用文献3及び引用文献4のハンガーは、フック部がシート二枚重ねのみの構造となっているため、このような繰り返しの操作や素早く掛けたり外したりする操作の際に、フック部の強度が不十分で折れてしまうおそれがある。特許文献5のハンガーは、フック部がフック部補強片によって補強され、全体としてシート四枚で構成されているとともに、係止片によって立体的にフック部が形成されておりフックの強度が高められているものの、係止片によりシート四枚が完全に積層されない構造のため、ねじり等に対する強度が十分でない場合がある。
【0011】
他方で、特にクリーニング店や衣服類等の展示販売・通信販売を行う会社の店舗や倉庫等においては、図14に示すように、ハンガー100に掛けた衣類150に塵や埃が付着しないように、ポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂や不織布製の使い捨てのドレスカバー200が用いられることがある。なお、ドレスカバーは、衣類カバー、ドレスパック、ハンガーカバー、ビニールカバー等とも称される。ドレスカバー200は、一方が幅広の開口部210、他方が幅狭の開口部220となっている筒型をなしており、幅が狭い開口部にハンガー100のフック部103を通すようにして使用する。このドレスカバー200は、図15に示すように、特に、使い捨てのものでは、ポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂製のシート同士、不織布シート同士、又は樹脂製のシートと不織布シートの、縁部200Eを融着するなどしたもので、マチが無いのが通常である。このため、引用文献5のハンガーのように、係止片によってフック部を立体的で厚みのある形状とすると、特に、ドレスカバー200の幅が狭い開口部220の縁220tが裂けたり破れるおそれが高く、使用し難いという問題があった。
【0012】
また、特許文献5のハンガーは、組み立て前のシート状体において一方面に谷折り部分と山折り部分とが存在し、折り筋等をシート材の両面から形成する必要があるため製造工程が煩雑であり、また、面積の広い二枚の台紙吊着部がフック部形成片間の短い屈曲線で連接する構造であるため、屈曲線が破れて台紙吊着部同士が意図せず分離してしまうおそれがある。
【0013】
このように、特許文献3~特許文献5に開示されるような従来の紙製のハンガーは、組み立て前の状態がシート状の薄い紙である点において、一体成型のプラスチック製ハンガーと比較して収納性及び運搬性に優れるものの、組み立てた後にシート形状に戻しがたく廃棄や再収納がし難い、クリーニング店や衣服類等の展示販売・通信販売を行う会社の店舗や倉庫等、宿泊施設等における使用実態に照らしてフック部の強度が十分ではないおそれがある、使い捨てドレスカバーの使用時に破れるおそれがある、等の問題があった。
【0014】
そこで、本発明の主たる課題は、上記の問題に鑑みて、使用時に立体的な使用形態でありながら、シート状に戻しやすく、さらにフック部の強度に優れ、ドレスカバーを使用しても、そのドレスカバーの口が破れ難い構造であり、しかも、非プラスチック性のシート材から容易に製造することができるハンガーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決した第一の手段は、
衣服用のハンガーであって、
衣服類を掛けるハンガー本体部と、支持体に掛けるためのフック部とを有し、
ハンガー本体部は、第一枠本体部と第二枠本体部とで構成され、
フック部は、第一フック部形成片及び第一フック部補強片と第二フック部形成片及び第二フック部補強片とで構成され、
第一枠本体部、第二枠本体部、第一フック部形成片、第一フック部補強片、第二フック部形成片及び第二フック部補強片は、一枚のシート材で構成され、
第一枠本体部は、
第一頂部と、
第一頂部から左右斜外方向に延設する第一右肩部及び第一左肩部と、
第一右肩部と第一左肩部の下部同士を繋ぐ第一底部と、
第一右肩部及び第一左肩部からそれぞれ第一肩部折り線を介して延出し、第一頂部側から第一底部側に向かって拡幅する第一肩部上部形成片と、
第一肩部上部形成片から差込片形成折り線を介して延出する差込片と、を有し、
第二枠本体部は、
第二頂部と、
第二頂部から左右斜外方向に延設する第二右肩部及び第二左肩部と、
第二右肩部と第二左肩部の下部同士を繋ぐ第二底部と、
第二右肩部及び第二左肩部からそれぞれ第二肩部折り線を介して延出する第二肩部上部形成片と、
第二右肩部及び第二左肩部と第二肩部上部形成片との間にそれぞれあって差込片を差し込み可能な差込部と、を有し、
第一フック部形成片は、
第一頂部から延設し、
第一フック部補強片は、
第一フック部折り線を介して第一フック部形成片に連接し、第一フック部折り線で折り返すことで、第一フック部形成片の一部又は全部に重なり、
第二フック部形成片は、
第二頂部から延設し、
第二フック部補強片は、
第二フック部折り線を介して第二フック部形成片に連接し、第二フック部折り線で折り返すことで、第二フック部形成片の一部又は全部に重なり、
第一枠本体部と第二枠本体部は、第一底部の底縁と第二底部の底縁とを共通の底側折り線として連接され、この底側折り線で折り返すことで、第一頂部と第二頂部とが突合せの対面位置となり、
かつ、第一肩部折り線、第二肩部折り線及び差込片形成折り線を折ることで、対面位置において、差込片が差込部に差し込み可能となる、
ことを特徴とする、ハンガーである。
【0016】
第二の手段は、
第一フック部形成片は、先端部に第一係止溝を有し、
第一フック部補強片は、第一フック部折り線で折り返した際に、第一フック部形成片の先端部を除く範囲に重なり、
第一フック部形成片は、先端部に第一係止溝を有し、
第一フック部補強片は、第一フック部折り線で折り返した際に、第一フック部形成片の先端部を除く範囲に重なり、
前記第一頂部と第二頂部とが突合せの対面位置となった際に、第一係止溝と第二係止溝とが係止可能となる、
上記第一の手段に係るハンガーである。
【0017】
第三の手段は、
第一フック部折り線で第一フック部補強片を折り返して第一フック部形成片に重ね、
第二フック部折り線で第二フック部補強片を折り返して第二フック部形成片に重ね、
第一枠本体部と第二枠本体部を底側折り線で折り返すとことで、第一頂部と第二頂部とともに、第一フック部補強片と第二フック部補強片とが突合せの対面位置となり、
その対面位置において、差込片を差込部に差し込んだ際に、
第一フック部形成片、第一フック部補強片、第二フック部形成片及び第二フック部補強片によってシート材が四層積層されたフック部が形成される、
上記第一の手段に係るハンガーである。
【0018】
第四の手段は、
第一フック部折り線、第二フック部折り線、第一肩部折り線、第二肩部折り線、差込片形成折り線がハーフスリットであり、かつ、同一面に形成されている、
上記第一の手段に係るハンガーである。
【0019】
第五の手段は、
シート材が、パルプ繊維を抄紙した紙であり、その紙が、複数の紙層が積層されている多層紙である、
上記第一の手段に係るハンガーである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、立体的な使用形態であるとともにシート状に戻しやすく、フック部の強度に優れ、ドレスカバーを使用しても、そのドレスカバーの口が破れ難い構造であり、しかも、非プラスチック性のシート材から容易に製造することができるハンガーが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態のハンガーの斜視図である。
図2】本実施形態のハンガーの展開図である。
図3】本実施形態のハンガーの展開状態の側面図である。
図4】本実施形態のハンガーに係るフック部の組み立てを説明する図である。
図5】本実施形態のハンガーに係る底折り線を折り返し、第一枠本体部側から見た図である。
図6】本実施形態のハンガーに係る底折り線を折り返し、第二枠本体部側から見た図である。
図7】本実施形態のハンガーの構造及び組み立てを説明する第一の側面図である。
図8】本実施形態のハンガーの構造及び組み立てを説明する第二の側面図である。
図9】本実施形態のハンガーの構造及び組み立てを説明する第三の側面図である。
図10】本実施形態のハンガーの構造及び組み立て後の左側面図である。
図11】本実施形態のハンガーの構造及び組み立て後の正面図である。
図12】本実施形態のハンガーの構造及び組み立て後の右側面図である。
図13】多層紙を説明するための断面図である。
図14】ドレスカバーを使用したハンガーの使用形態を説明するための図である。
図15】ドレスカバーを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次いで、本発明の実施形態を図1図15を参照しながら以下に詳述する。但し、本発明は、図示の形状やこの実施形態に限定されるわけではない。本発明の範囲において、各部の詳細な形状や位置を変更できることはいうまでもない。
【0023】
本実施形態に係るハンガー1は、衣服用のハンガーであり、図1に示すように、使用形態において、衣服類を掛ける略三角形状のハンガー本体部2と、支持体に掛けるための鎌形のフック部分3Fを有するフック部3とを有している。
【0024】
ハンガー本体部2は、第一枠本体部20Aと第二枠本体部20Bとが対面するようにして構成され、フック部3は、第一フック部形成片30A、第一フック部補強片33A、第二フック部形成片30B及び第二フック部補強片33Bが重なるようにして構成され、全体としては立体的な形状となっている。
【0025】
このハンガー1は、第一枠本体部20A、第二枠本体部20B、第一フック部形成片30A、第一フック部補強片33A、第二フック部形成片30B及び第二フック部補強片33Bの各部は、薄板状であって、特に図2及び図3に示すように一枚の撓み可能なシート材に展開される。
【0026】
この展開状態において、第一枠本体部20Aは、第一頂部21と、第一頂部21から左右斜外方向に延設する第一右肩部22R及び第一左肩部22Lと、第一右肩部22Rと第一左肩部22Lの下部同士を繋ぐ第一底部23とを有しており、特に図示の形態では、第一頂部21、第一右肩部22R、第一左肩部22L及び第一底部23で囲まれる第一開口部24とを有し、これら第一枠本体部20A及び第一開口部24が、全体として略二等辺三角形状をなすものとなっている。但し、第一開口部24の形状は、この形状に限定されない。
【0027】
第二枠本体部20Bは、第二頂部25と、第二頂部25から左右斜外方向に延設する第二右肩部26R及び第二左肩部26Lと、第二右肩部26Rと第二左肩部26Lの下部同士を繋ぐ第二底部27とを有しており、特に図示の形態では、第二頂部25、第二右肩部26R、第二左肩部26L及び第二底部27で囲まれる第二開口部28とを有し、これら第二枠本体部20B及び第二開口部28は、全体として略二等辺三角形状をなしている。但し、第二開口部28の形状は、この形状に限定されない。
【0028】
第一枠本体部20Aと第二枠本体部20Bは、第一底部23の底縁23Eと第二底部27の底縁27Eとを共通の一直線の底側折り線51として連接されて一体となっており、第一枠本体部20A又は第二枠本体部20Bを底側折り線51で折り返すと、第一頂部21と第二頂部25とが、突合せの対面位置となるように構成されている。図示の形態は、特に好ましい形態として、底側折り線51に対して、第一頂部21と第二頂部25、第一右肩部22Rと第二右肩部26R、第一左肩部22Lと第二左肩部26L、第一底部23と第二底部27、第一開口部24と第二開口部28とが、線対称の位置あり、折り返しによって重なる形状となっている。
【0029】
他方で、本実施形態のハンガー1における第一フック部形成片30Aは、第一頂部21から第一底部側と反対方向に延設し、図2及び図4に示すように、第一頂部21の上方に第一フック部分31Fが突出されるように構成されている。また、第一フック部形成片30Aの先端部31tには、略V字状に切欠かれた第一係止溝31mが設けられている。
【0030】
また、本実施形態のハンガー1における第二フック部形成片30Bは、第二頂部25から第二底部側と反対方向に延設し、図2及び図4に示すように、第二頂部25の上方に第二フック部分32Fが突出されるように構成されている。また、第二フック部形成片30Bの先端部32tには、略V字状に切欠かれた第二係止溝32mが設けられている。
【0031】
図示の形態では、第一フック部形成片30Aと第二フック部形成片30Bとは、先端部を除いて同形状となっており、底側折り線51に対して、実質的に線対称となっており、底側折り線51の折り返しによって対面し重なるように構成され、その重なり位置で第一係止溝31mと第二係止溝32mとが互いに係止可能となるように構成されている。なお、第一フック部形成片30Aと第二フック部形成片30Bは、先端部以外の部分においても完全に同形状でなくてもよいが、同形状であるのが望ましい。
【0032】
他方で、本実施形態のハンガー1における第一フック部補強片33Aは、第一フック部折り線55を介して第一フック部形成片30Aに連接し、この第一フック部折り線55で折り返すことで、第一フック部形成片30Aの一部又は全部に重なるように構成される。図示の形態では、好ましい形状として、第一フック部形成片30Aの先端部31tを除いた範囲と略同形状となっており、前記第一フック部折り線55を対象軸として、その第一フック部形成片30Aの先端部31tを除いた範囲と略線対称の関係にある形状となっている。但し、第一フック部補強片33Aの形状は、必ずしも限定されない。例えば、第一フック部形成片30Aの先端部31tに第一係止溝31mを形成しない場合には、第一フック部形成片30Aと先端部31tを含む形状としてもよい。
【0033】
第一フック部形成片30Aと第一フック部補強片33Aの連接位置は必ずしも限定されない。展開状態において一枚のシート状にできる位置であればよい。但し、シート状において意図せず分離し難いように、この連接部分は長いほうが望ましい。図示の形態では、第一フック部形成片30Aの第一頂部21側から第一フック部形成片30Aの鎌形の外周側端までを直線に形成し、この直線部分を第一フック部折り線55として連接するように構成している。
【0034】
他方で、本実施形態のハンガー1における第二フック部補強片33Bは、第二フック部折り線56を介して第二フック部形成片30Bに連接し、この第二フック部折り線56で折り返すことで、第二フック部形成片30Bの一部又は全部に重なるように構成される。図示の形態では、好ましい形状として、第二フック部形成片30Bの先端部32tを除いた範囲と略同形状となっており、前記第二フック部折り線56を対象軸として、その第二フック部形成片30Bの先端部32tを除いた範囲と略線対称の関係にある形状となっている。但し、第二フック部補強片33Bの形状は、必ずしも限定されない。例えば、第二フック部形成片30Bの先端部32tに第二係止溝32mを形成しない場合には、第二フック部形成片30Bの先端部32tを含む形状としてもよい。
【0035】
第二フック部形成片30Bと第二フック部補強片33Bの連接位置は必ずしも限定されない。展開状態において一枚のシート状にできる位置であればよい。但し、シート状において意図せず分離し難いように、この連接部分は長いほうが望ましい。図示の形態では、第二フック部形成片30Bの第二頂部25側から第二フック部形成片30Bの鎌形の外周側端までを直線に形成し、この直線部分を第二フック部折り線56として連接するように構成している。なお、図示の形態では、第二フック部補強片33Bと第一フック部補強片33Aとが略同形状とされ、また、底側折り線51を対象軸として略線対称の関係となっているが、必ずしもこのように形成する必要はない。
【0036】
本実施形態のハンガー1では、図2に示す展開状態から、図4に示す第一フック部折り線55で第一フック部補強片33Aを第一フック部形成片30Aに重ねるように折り返し、かつ、第二フック部折り線56で第二フック部補強片33Bを第二フック部形成片30Bに重ねるように折り返した状態で、第一フック部補強片33Aと第二フック部補強片33Bとが対面するように、第一枠本体部20A又は第二枠本体部20Bを底側折り線51で折り返すと、図1図5図7に示すように、第一フック部形成片30Aと第一フック部補強片33Aとが積層された第一頂部21より上方に突出する第一フック部分31Fと、第二フック部形成片30Bと第二フック部補強片33Bとが積層された第二頂部25より上方に突出する第二フック部分32Fが重なり対面し、シート材が四重となったひねりやねじりに対する強度のあるフック部3が形成される。また、このとき、図示の形態では、図5及び図6に示すように、第一フック部補強片33Aが第一フック部形成片30Aの先端部31tに重なっておらず、第二フック部補強片33Bが第二フック部形成片30Bの先端部32tに重なっていないため、第一フック部形成片30Aの先端部31tと、第二フック部形成片30Bの先端部32tとの間に、第一フック部補強片33A及び第二フック部補強片33Bとが位置していないため、第一フック部形成片30Aの先端部31tに形成された第一係止溝31mと、第二フック部形成片30Bの先端部32tに形成された第二係止溝32mが対面して、係止可能となる。そして、図10図12に示すように、これら第一係止溝31mと第二係止溝32mとを係合することで、極めて簡易な操作で第一フック部形成片30A、第一フック部補強片33A、第二フック部形成片30B及び第二フック部補強片33Bを積層一体化される。また、この係合を解除するだけで第一フック部形成片30A、第一フック部補強片33A、第二フック部形成片30B及び第二フック部補強片33Bの一体化が解除される。なお、第一フック部形成片30A、第一フック部補強片33A、第二フック部形成片30B及び第二フック部補強片33Bを積層一体化する手段は、第一係止溝31mと第二係止溝32mとの係合によらず、例えば、接着剤や粘着テープ、クリップ等によって行ってもよい。但し、上記のとおり簡易に一体化と解除ができることから第一係止溝31mと第二係止溝32mとの係合により行う形態が望ましい。
【0037】
他方で、本実施形態のハンガー1の第一枠本体部20Aは、第一右肩部22R及び第一左肩部22Lからそれぞれ第一肩部折り線52を介して延出し、第一頂部21側から第一底部23側に向かって拡幅する第一肩部上部形成片41と、第一肩部上部形成片41から差込片形成折り線53を介して延出する差込片42と、を有している。図示の形態では、第一肩部上部形成片41は、頂部側が先細の略三角形状となっているが、必ずしも限定されない。略台形状としてもよい。また、第一肩部上部形成片41は、複数あってもよい。さらに、差込片42は、図示の形態では、先端が角丸の略長方形であるが、これに限定されない。先端先細に形成してもよい。また、図示の形態では、一つの第一肩部上部形成片41に一つの差込片42を形成した例であるが、一つの第一肩部上部形成片41に複数の差込片42を形成してもよい。
【0038】
第二枠本体部20Bは、第二右肩部26R及び第二左肩部26Lからそれぞれ第二肩部折り線54を介して延出する第二肩部上部形成片43と、第二右肩部26R及び第二左肩部26Lと第二肩部上部形成片43との間にそれぞれあって差込片42を差し込み可能な差込部44と、を有している。
【0039】
第二枠本体部20Bにおける第二肩部上部形成片43は、図示の形態では、第一肩部上部形成片41と同様に、第二頂部25側から第二底部27側に向かって拡幅する略三角形状となっているが、この形状に必ずしも限定されない。第二肩部上部形成片43は、少なくとも第二右肩部26R及び第二左肩部26Lとの間に差込部44を形成するための余剰代として機能すればよい。ただし、後述する組み立て時に第一肩部上部形成片41と平面視で重なる形状とし、好適には、第一肩部上部形成片41をやや小さくした相似形状とするのが望ましい。
【0040】
差込部44は、第一枠本体部20Aに形成された差込片42が差込可能な形状であればよく、好適には、差込片42の幅、すなわち、差込片42と第一肩部上部形成片41との接続長さである差込片形成折り線53の長さと同じに幅とするのがよい。差込片42を差込部44に根本まで差し込むことが可能となる。また、差込部44は、図示の形態ではシート材を貫通するスリットで形成されている。図7及び図8に示すように、第二肩部上部形成片43を折り返した際に、スリットが開いて、孔となる差込部44が形成されるようになっている。ただし、差込部44は、スリットに限定されず。打ち抜き、くり抜きによって細長形状の貫通孔としてもよい。また、図示の形態は、各肩部26R,26Lにつき、一つの差込部44を形成しているが、差込片42の数等に応じて、差込部44の数を複数にしてもよい。
【0041】
実施形態のハンガー1における差込片42及び差込部44は、図9に示すように、第一枠本体部20A又は第二枠本体部20Bを底側折り線51で折り返し、第一頂部21と第二頂部25とが突合せの対面位置となるようにした状態で、第一肩部折り線52、第二肩部折り線54及び差込片形成折り線53が折り曲げられていると、差込片42が差込部44に差し込み可能となるように構成される。
【0042】
図示の形態では、底側折り線51で第一枠本体部20Aと第二枠本体部20Bを折り返した際に、各肩部から延出する第一肩部上部形成片41と第二肩部上部形成片43とが近接対面する位置に形成されており、この近接対面する位置で、第一肩部折り線52、第二肩部折り線54及び差込片形成折り線53が折り曲げられていると、差込片42が差込部44に差し込み可能となるように構成されている。そして、差込片42を差込部44に差込むことで、図10図12に示すように、第二肩部上部形成片43と第一肩部上部形成片41とが重なるとともに、第一右肩部22Rと第二右肩部26Rとの間、第一左肩部22Lと第二左肩部26Lとの間のそれぞれに、第一肩部上部形成片41が架橋され、底側折り線51で折り返して対面位置にある第一枠本体部20Aと第二枠本体部20Bとが、第一右肩部22Rと第二右肩部26Rとの間、第一左肩部22Lと第二左肩部26Lのそれぞれで連結される。なお、第二肩部上部形成片43の形状は、この第一肩部上部形成片41が架橋された際に、第一肩部上部形成片41の範囲内で重なり可能な形状であればよい。なお、本実施形態のハンガー1では、この組み立てに際し、底側折り線51、第一肩部折り線52、第二肩部折り線54及び差込片形成折り線53のいずれを先に折り曲げるかは限定されない。
【0043】
ここで、本実施形態のハンガー1では、第一肩部上部形成片41は、第一頂部21側から第一底部23側に向かって漸次拡幅する形状となっており、好ましい図示の形態では、略三角形状となっている。このため、差込片42を差込部44に差し込み、第一右肩部22Rと第二右肩部26Rとの間及び第一左肩部22Lと第二左肩部26Lとの間のそれぞれに、第一肩部上部形成片41が架橋されると、対面位置にある第一枠本体部20Aと第二枠本体部20Bとは、第一右肩部22Rと第二右肩部26R及び第一左肩部22Lと第二左肩部26Lとの間が、頂部側から底側に向かって第一肩部上部形成片41の底側位置まで、離間距離が漸次広がる立体的形状に形成される。また、差込片42を差込部44から引き抜くだけで、第一枠本体部20Aと第二枠本体部20Bとを分離させることができる。
【0044】
また、本実施形態のハンガー1では、第一肩部上部形成片41は、第一頂部21側から第一底部23側に向かって漸次拡幅する形状となっているため、シート材の厚みに応じて、第一頂部21側の幅を調整することで、第一頂部21と第二頂部25の近接が位置され、フック部3を構成する、第一フック部形成片30A、第一フック部補強片33A、第二フック部形成片30B及び第二フック部補強片33Bを隙間なく又は略隙間なく積層された状態とすることができる。そして、第一フック部形成片30A、第一フック部補強片33A、第二フック部形成片30B及び第二フック部補強片33Bを隙間なく又は略隙間なく積層されて形成されるフック部3は、既述のとおり、ひねりやねじりに対する強度が高められている。さらに、フック部3の第一頂部21及び第二頂部25の近傍に過度に厚みがないため、使い捨てのドレスカバーを使用しても、そのドレスカバーの口が破れ難い構造となる。
【0045】
他方で、この組み立て状態において本実施形態のハンガー1では、第一右肩部22Rと第二右肩部26R及び第一左肩部22Lと第二左肩部26Lとの間が、頂部側から底側に向かって第一肩部上部形成片41の底側位置まで、離間距離が漸次広がる一方で、第一枠本体部20Aと第二枠本体部20Bとは、底側折り線51で連接されているため、特に第一肩部上部形成片41の底側位置から底側折り線51までの長さが短い場合や第一肩部上部形成片41の底側の拡幅幅が広い場合には、組み立て時に、第一肩部上部形成片41の底側位置から底側折り線51の間において、第一枠本体部20Aと第二枠本体部20Bとの離間距離が急激に短くなる。このため、例えば、特にシート材が、撓み難いコシの強い素材である場合に、組み立てがしやすく、また、組み立て後に破損し難いように、第一肩部上部形成片41の底側位置又はその位置よりも底側折り線51に近い位置及び第二肩部上部形成片43の底側位置又はその位置よりも底側折り線51に近い位置に、底側折り線51と平行な折り曲げを容易とする第一折り曲げ補助線57と第二折り曲げ補助線58とを設けるのが望ましい。図示の形態は、第一肩部上部形成片41の底側位置が、第一右肩部22Rと第一左肩部22Lと第一底部23との間の位置となっており、この位置に第一折り曲げ補助線57を設け、第二肩部上部形成片43の底側位置が、第二右肩部26Rと第二左肩部26Lと第二底部27との間の位置となっており、この位置に第二折り曲げ補助線58を設けている。第一折り曲げ補助線57及び第二折り曲げ補助線58を設けた場合、これら折り曲げ補助線によってシート材の撓みが解消されるため、コシの強い素材であっても、組み立てが容易となるととのに、形状保持性に優れ組み立て後の破損や意図しない分解のおそれが小さくなる。
【0046】
本実施形態のハンガー1における底側折り線51、第一フック部折り線55、第二フック部折り線56、第一肩部折り線52、第二肩部折り線54、差込片形成折り線53及び第一折り曲げ補助線57、第二折り曲げ補助線58は、シート材の折り曲げ折り返しや折り曲げを容易に行えるようにするための線であり、位置決めのための単なる印刷による線であってもよいが、好ましくは、折筋とも称される罫線、ミシン目、ハーフスリットである。特に、好ましくは、コシの強い素材であっても折り曲げを容易にできるハーフスリットである。ミシン目とする場合のカットタイ比、ハーフスリットとする場合のスリット深さは、シート材の厚みや強度によって変更すればよい。また、本実施形態のハンガーにおける第一フック部折り線55、第二フック部折り線56、第一肩部折り線52、第二肩部折り線54、差込片形成折り線53、第一折り曲げ補助線57、第二折り曲げ補助線58は、すべてが同種の線である必要はなく、例えば、底側折り線51をミシン目として、その他をハーフスリットとしてもよい。また、ミシン目とする場合のカットタイ比、ハーフスリットとする場合のスリット深さは同一でなくてもよい。
【0047】
ここで、本実施形態のハンガー1の構造は、特徴的に、底側折り線51、第一フック部折り線55、第二フック部折り線56、第一肩部折り線52、第二肩部折り線54、差込片形成折り線53、さらに、第一折り曲げ補助線57及び第二折り曲げ補助線58での各部の折り曲げ方向をすべて同一方向にすることができる。具体的には、図示の形態では、図2に示す展開状態から組み立てるにあたって、各折り線はすべて山折り線となっており、折り曲げ方向が同一方向となっている。つまり、底側折り線51では、第一枠本体部20A又は第二枠本体部20Bが紙面の奥側方向に折り返され、第一フック部折り線55で、第一フック部補強片33Aが、紙面の奥側方向に折り返され、第二フック部折り線56で、第二フック部補強片33Bが、紙面の奥側方向に折り返され、第一肩部折り線52で、第一肩部上部形成片41が紙面の奥側方向に折り返され、第二肩部折り線54で、第二肩部上部形成片43が紙面の奥側方向に折り返され、差込片形成折り線53で、差込片42が紙面の奥側方向に折り返される。第一折り曲げ補助線57及び第二折り曲げ補助線58を形成した場合も同様に、第一折り曲げ補助線57及び第二折り曲げ補助線58で分断される各領域のいずれかが、紙面の奥側方向に折り曲げられるようになっている。
【0048】
したがって、本実施形態のハンガー1においては、底側折り線51、第一フック部折り線55、第二フック部折り線56、第一肩部折り線52、第二肩部折り線54及び差込片形成折り線53、さらに第一折り曲げ補助線57及び第二折り曲げ補助線58を形成する場合は、これらも含めてハーフスリットとして、同一面に形成するのが望ましい。ハーフスリットは、折り曲げ時にスリット側が開くようになるため、強度のあるハンガーにしやすい厚みがあって撓むもののコシの強い素材であっても直線的な折り曲げを容易にでき、組み立てしやすく強度のあるハンガーとしやすい。さらに、同一面にハーフスリットを形成することができる場合、紙面の双方からカットする製造方法に比して製造が極めて容易となる。
【0049】
本実施形態のハンガー1における各折り線をハーフスリットとする場合、スリット深さは限定されないが、好ましくは、スリット間における引張強度が150N以上、好ましくは、170N以上とするのが望ましい。組み立て時や使用時、さらに折り畳み時に、ハーフスリット位置で意図せず破断するおそれが各段に小さくなる。なお、この引張強度は、JIS P 8113に準拠し、大きさを幅15mm×長さ180mmの長方形とし、長さの半分の90mmの位置にハーフスリットを形成した試料を用いて測定した値であり、また、測定は、引張速度を20mm/minとしロードセル容量を1KNとする。
【0050】
以上の構造の本実施形態のハンガー1は、特に、第一枠本体部20Aと第二枠本体部20Bの各肩部間に第一肩部上部形成片41が架橋された立体的な使用形態となる。しかも、フック部3が四層積層であるとともに厚みなく形成できるため、強度に優れ、ドレスカバーを使用しても、そのドレスカバーの口が破れ難い構造となる。しかも、展開状態が紙のような一枚のシート材となるため、非プラスチック性のシート材から製造することができる。さらに、展開状態から各部の折り曲げ方向を同一方向とすることができ、ハーフスリットや罫線を一方面のみから形成して容易に製造することができる。また、組み立て後には、第一係止溝31mと第二係止溝32mの係合解除と、差込片42を差込部44からの引き抜きだけで、フック部3及び第一枠本体部20Aと第二枠本体部20Bとを展開状態のシート状に戻すことができる。なお、図示の形態における説明は、図2に示す展開状態、つまり第一枠本体部20Aの第一頂部21が紙面上方、第二枠本体部20Bの第二頂部25が紙面下方となる位置関係において左右を説明した。第一右肩部22R、第一左肩部22L、第二右肩部26R及び第二左肩部26Lにおける左右は、展開状態のハンガー1と観者の位置によって変わる便宜的なものであることは言うまでもない。
【0051】
ここで、さらに本実施形態のハンガー1に、特に好適なシート材について説明する。本実施形態のシート材は、脱プラスチックの観点から、パルプ繊維を抄紙した紙であるのが望ましい。具体的には、段ボール紙、コートボール紙、複数の紙層が積層されている多層紙が例示できる。もちろんプラスチックを含む合成繊維を含まない天然素材由来の繊維のみから構成される紙であるのがより望ましい。好適には、パルプ繊維のみからなる紙が望ましい。また、特に好ましい紙は、三以上の紙層を有する多層紙である。図13に示すように、多層紙80は、複数の紙層81,82が積層されているため各層の特性を変えることができ、強度を有しつつ折り曲げやすくできる。例えば、耐水性や耐摩耗性に優れるものの硬いが折れ易い傾向の一対の表層81に柔軟な中層82を組み合わせることで、強靭性や耐久性に優れるようになり、強度を有しつつ折り曲げたり組み立てやすくすることができる。また、各折り線をハーフスリットとした際に表層を含む複数層が完全に切断されないようにすることができ、各折り線における破断の恐れが格段に小さくなる、なお、多層紙80は、多層抄きによって製造することができる。また、多層紙80は、市販されているものであってよく、例えば、大日製紙株式会社製のエリプラペーパー等が例示できる。
【0052】
シート材を紙とする場合、その紙の坪量は、好ましくは300g/m2以上、より好ましくは330g/m2以上、特に好ましくは360g/m2以上である。この坪量の紙であれば、各部の折り曲げによる組み立てをしやすく、しかも十分な剛性及び強度をハンガーとしやすい。坪量の上限値は限定されないが、抄造時にカレンダーロール等で折れジワが発生しやすくなるおそれがあり、この点からは上限値については、1400g/m2が好ましく、1240g/m2がより好ましい。また、シート材を紙とする場合の紙厚は、340μm以上1400μm以下が好ましく、より好ましくは370μm以上1350μm以下である。なお、坪量は、JIS P 8124(2011)に記載の「紙及び板紙-坪量測定方法」に準拠して測定した値であり、紙厚は、JIS-P8118(2014)に記載の「紙及び板紙-厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定した値である。
【0053】
シート材を紙とする場合、その紙の構成パルプ繊維は、必ずしも限定されないが、好ましい構成パルプ繊維は、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)等の針葉樹クラフトパルプ及び、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)等広葉樹クラフトパルプである。その他のパルプとして、古紙パルプ、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等の化学パルプ、あるいは、ケナフ、麻、葦等の非木材繊維から化学的にまたは機械的に製造されたパルプ等の公知の種々のパルプを適宜組合せて使用されていれもよい。強度を発現させやすいことから、針葉樹クラフトパルプ及び広葉樹クラフトパルプが90~100質量%であるのが望ましい。この場合、針葉樹クラフトパルプ及び広葉樹クラフトパルプの配合割合は、5:95~30:70であるのが望ましい。清潔感及び硬質感のある意匠性を有するハンガーとするならば、白パルプであり白色度が高い、針葉樹晒クラフトパルプ及び広葉樹晒クラフトパルプを用いることが特に好ましい。
【0054】
シート材を紙とする場合、その紙は、JIS P 8113(2006)に準拠して測定された縦方向及び横方向の引張強度が、ともに20kN/m以上、好ましくは25kN/m以上であるのが望ましい。この引張強度を有していれば、折り畳みや組み立てに適し、また、十分な強度のハンガーとしやすい。
【0055】
また、シート材を紙とする場合、その紙は、JIS P 8125(2000)に準拠して測定されたテーバー剛度が縦方向で120mN・m以上であり、横方向で40mN・m以上であるのが望ましい。この範囲であれば、ハンガーとして十分な剛性及び強度とすることができ、また、折り畳みや組み立てやすい。
【0056】
さらに、シート材を紙とする場合その紙は、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.18-1:2000に準拠して測定されるZ軸強度が400kN/m2以上、好ましくは450kN/m2以上であるのが望ましい。トムソン加工等の打ち抜き、カッティングプロッター等のカッティングによって展開状態のハンガーを製造しやすい。
【0057】
シート材を紙とする場合、その紙は、JIS P 8147 ISO水平法による静摩擦係数が、0.25~0.65であるのが望ましい。衣服類をかけた際に適度な摩擦があって滑り落ち難く、また、生地を傷め難い適度な表面性となる。なお、本測定法は、シート材の裏面同士、表面同士で各3回の測定を行い、裏面同士、表面同士の3回目の測定値がいずれも上記範囲であるのが望ましい。ISO水平法は,最初の滑りの静摩擦係数、3回目の滑りの静摩擦係数又は3回目の滑りの動摩擦係数の少なくとも一つを測定すればよく、最初の静摩擦係数よりも3回目の静摩擦係数が小さくなる傾向にあり、また、3回目の静摩擦係数の方がばらつきは小さくなる。
【0058】
シート材を紙とする場合、その紙は、JIS P 8151に準拠するPPS(パーカープリントサーフラフネス)が、表面及び裏面ともに好ましくは3~8μm、より好ましくは4~7μmであるのがよい。衣服類をかけた際に滑り落ち難く、また、生地を傷め難い適度な表面性となる。
【0059】
シート材を紙とする場合、その紙は、MMDの値が、表面及び裏面ともに好ましくは10~25である。衣服類をかけた際に滑り落ち難く、また、生地を傷め難い適度な表面性となる。MMDの測定は、摩擦感テスター(KES-SE、カトーテック社製)及びその相当機を用いて測定する。なお、摩擦子は、標準付属の直径0.5mmのピアノ線を20本隣接させて構成された、長さ及び幅がともに10mmの接触面を有するものを用いる。
【0060】
シート材を本実施形態に係るハンガー1に特に好ましい多層紙80とする場合、その層数は、限定されないものの、五~九層とし、中層82の層数を三層以上、特に五層とするのがよい。特に図13に示す形態は、三層の中層82を有するものとなっている。中層82の総数が三層以上であると、多層紙80の強靭性や耐久性がより発現しやすいとされている。中層82の総数の上限としては、層間強度を維持する観点から、七層以下であることが好ましい。また、三層~七層は、円網多筒式抄き合わせ抄紙機を使用する場合における層間強度を維持しながら操業を行いやすい。
【0061】
なお、シート材を多層紙80とする場合、表層81及び中層82の坪量は、上記のシート材を紙とする場合の全体の坪量の範囲で調整することができ、特に限定されないが、好ましくは、表層81の坪量としては、1層あたり50.0g/m2以上150.0g/m2以下、特には60~145g/m2が好ましい。また、中層82全体の坪量としては、200g/m2以上1100g/m2以下、特には250g/m2以上740g/m2以下が好ましい。さらに、多層紙80は、多層紙80全体の坪量に対する一対の表層81,81の合計の坪量の割合が、15.0%以上33.0%以下のものであるのが好ましい。一対の表層81の剛直性が高く、中層82の柔軟性が優れるようになる。よって、折り線位置で折り曲げやすく、折り線以外の位置で折れ曲がり難くなり、強度と組み立て易さに優れるハンガーとしやすい。
【0062】
シート材を多層紙80とする場合、その多層紙80における各層のパルプ繊維の配合は、表層81は針葉樹クラフトパルプと前記広葉樹クラフトパルプの質量比(%)が0/100以上15/85以下であるのが好ましい。また、この配合の表層81ととともに、中層82は、針葉樹クラフトパルプと前記広葉樹クラフトパルプの質量比(%)を15/85以上35/65以下であるのが好ましい。剛直で高密度化しやすい広葉樹クラフトパルプが多く含有され、表層が高密度で剛直な特性となるとともに、中層が表層よりも柔軟性に富む針葉樹クラフトパルプを多く含有するため、組み立て時の各折り線での折り曲げや繰り返しの折り畳みを行っても強度が低下しがたいハンガーとなりやすい。
【0063】
また、シート材を多層紙80とする場合、その多層紙80は、製紙用添加剤としてサイズ剤及び紙力増強剤の少なくとも一方を添加されているのが望ましい。所望の強度に調整しやすい。なお、多層紙80には、本発明の目的とする効果を損ねない範囲でその他の各種添加剤を含有させることができる。例えば、ポリビニルアルコールやワックス等を塗布することができる。
【0064】
サイズ剤としては、スチレン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニル無水琥珀酸(ASA)、中性ロジンサイズ剤、ロジンサイズ剤、変性ロジンエマルジョンサイズ剤などが挙げられる。これらの中でもロジンサイズ剤及び変性ロジンエマルジョンサイズ剤が好ましい。ロジンサイズ剤は、特に限定されない。ロジン系の物質は、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等のロジン類をフマル酸、マレイン酸、アクリル酸等のα,β-不飽和カルボン酸あるいはその無水物で変性した強化ロジンや、ロジン類をグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン等の多価アルコールを反応させて得られるロジンエステルを挙げることができる。また、ロジンサイズ剤には、これらの単独またはその混合物をエマルジョン化したもの、単独でエマルジョン化した後に混合したものも含まれる。さらに、エマルジョン化したものに、サイズ発現性をより向上させるために各種ポリマーを添加したものも含まれる。
【0065】
紙力増強剤としては、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミン系樹脂、アクリル樹脂系、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂など公知の種々のものを使用できる。これらの中でも、両性紙力増強剤を使用することが好ましい。両性ポリアクリルアミドとしては、アクリルアミドとアニオン性モノマー及びカチオン性モノマーの共重合物、アクリルアミドとアニオン性モノマーとの共重合物のマンニッヒ変性物、ホフマン分解物等が挙げられる。特に両性ポリアクリルアミドは、自己定着機能を有しているため、紙間強度を向上させるべく増添したとしても、カチオン過多になることがなく、変性ロジンエマルジョンサイズ剤とともに含むことでこれを安定的に定着させることができる。
【0066】
サイズ剤の添加量としては、固形分で0.5kg/t以上5.0kg/t以下が好ましい。紙力増強剤の添加量としては、固形分で12kg/t以上30kg/t以下が好ましい。なお、「kg/t」はパルプ1tあたりの質量(kg)を示す。サイズ剤の添加量をこの範囲とすると、耐水性が高まるため、湿った衣服類やタオルがかけられても十分な強度を保持しやすい。
【0067】
また、シート材を多層紙80とする場合、その多層紙80は、表層81及び中層82の各層に製紙用添加剤として上記のサイズ剤及び紙力増強剤の少なくとも一方を添加することが好ましい。この場合、表層81のサイズ剤の添加量としては、固形分で0.5kg/t以上5.0kg/t以下が好ましい。また、中層82のサイズ剤の添加量としては、固形分で2.0kg/t以上5.0kg/t以下が好ましい。また、各層の紙力増強剤の添加量としては、固形分で12kg/t以上30kg/t以下が好ましい。この範囲とするとで、ハンガーに適した多層紙の層間強度などの各種紙力としやすい。
【0068】
さらに、本実施形態に係るハンガーは、シロキサン化合物が含有されているのが望ましい。シロキサン化合物が含有されていると、シロキサン結合によって剛度、強度、耐水性が高まる。シロキサン化合物は、シロキサン結合を有するものであれば、必ずしも限定されないが、ハンガー1は、人体に接する衣類を掛けるため、生体に対して毒性が無いか、低いものが望ましい。また、シロキサン化合物は、組み立て後のハンガーにシロキサン化合物を塗工する態様のほか、組み立て前のシート材や、素材としてのシート材に対して、適宜のアルコキシシラン溶液やアルコキシシラン溶液加工品を含侵させた後、加温や加熱して含有させてもよい。このようにすると、シロキサン化合物が、パルプ繊維自体に結合したり、パルプ繊維をコーティングしたりする態様で含有されるようになるため望ましい。
【0069】
さらに、本実施形態に係るハンガーは、摩擦係数や表面粗さや折り畳み適性を過度に変化させず、ハンガーの機能及び本発明の効果を妨げない範囲で、表面保護剤や抗菌剤、抗ウィルス剤を塗布したり、含浸させたりしても良い。
【符号の説明】
【0070】
1…ハンガー、2…ハンガー本体部、2R…第一折り畳み線より幅方向外側領域、2L…第二折り畳み線より幅方向外側領域、2X,2Y…第四折り畳み線58及び第三折り畳み線57よりも頂部21,25側に位置する部分、
3…フック部、3F…フック部分、
20A…第一枠本体部、21…第一頂部、22R…第一右肩部、22L…第一左肩部、23…第一底部、23E…第一底部の底縁、24…第一開口部、
20B…第二枠本体部、25…第二頂部、26R…第二右肩部、26L…第二左肩部、
27…第二底部、27E…第二底部の底縁、28…第二開口部、
30A…第一フック部形成片、31F…第一フック部分、30B…第二フック部形成片、32F…第二フック部分、33A…第一フック部補強片、33B…第二フック部補強片、31t…第一フック部形成片の先端部、31m…第一フック部形成片の係止溝、32t…第二フック部形成片の先端部、32m…第二フック部形成片の係止溝、
41…第一肩部上部形成片、42…差込片、43…第二肩部上部形成片、44…差込部、51…底側折り線、52…第一肩部折り線、53…差込片形成折り線、54…第二肩部折り線、55…第一フック部折り線、56…第二フック部折り線、57…第一折り曲げ補助線、58…第二折り曲げ補助線、80…多層紙、81…表層、82…中層。
100…ハンガー、150…衣類、200…ドレスカバー、210,220…ドレスカバーの開口部、220t…ドレスカバー開口部の縁、200E…ドレスカバーの縁部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15