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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044475
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ねじ込み補助具
(51)【国際特許分類】
   B25B 23/02 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
B25B23/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150009
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】513105144
【氏名又は名称】有限会社廣田板金
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】廣田 嘉久
【テーマコード(参考)】
3C038
【Fターム(参考)】
3C038AA01
3C038BB02
3C038BB04
3C038EA06
(57)【要約】
【課題】長さが異なるビスを安定に効率良く支持できるねじ込み補助具を提供する。
【解決手段】ねじ込み補助具10は、両端が開いた第1の溝12と、第1の溝12の長さと長さが異なる、両端が開いた第2の溝14と、第1の溝12の底13と第2の溝14の底15とに垂直な垂直面24と、を備え、2つの底13,15は同じ方向を向いている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスを支持するねじ込み補助具であって、
両端が開いた第1の溝と、
前記第1の溝の長さと長さが異なる、両端が開いた第2の溝と、
前記第1の溝の底と前記第2の溝の底とに垂直な垂直面と、を備え、
2つの前記底は同じ方向を向いているねじ込み補助具。
【請求項2】
前記第1の溝および前記第2の溝に前記ビスを吸引する磁石を備え、
前記第1の溝および前記第2の溝は非磁性であり、
前記磁石は、前記第1の溝および前記第2の溝に吸引した前記ビスから離れた位置にある請求項1記載のねじ込み補助具。
【請求項3】
前記第1の溝と前記第2の溝とは交差しており、
前記垂直面は、前記第1の溝の底に垂直な第2の面と、前記第2の面と異なる面であり前記第2の溝の底に垂直な第3の面と、を含む請求項1又は2に記載のねじ込み補助具。
【請求項4】
前記第1の溝と前記第2の溝とは直交している請求項3記載のねじ込み補助具。
【請求項5】
前記垂直面は、前記底が向く第1の方向の長さが、前記第1の方向に垂直な第2の方向の長さよりも長い請求項1又は2に記載のねじ込み補助具。
【請求項6】
前記第1の溝および前記第2の溝が設けられた第1の部材と、
前記第1の部材が結合する、前記垂直面を含む第2の部材と、を備える請求項1又は2に記載のねじ込み補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はビスをねじ込むときにビスを支持するねじ込み補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
ビスのねじ込み補助具として、特許文献1には、両端が開いた溝と、溝の底に垂直な面と、を備える治具半体を2つ突き合わせてできた孔にビスを入れ、ビスにトルクを加える前やトルクを加えたときにビスを支持する先行技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61-152379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行技術はビスが入る孔の長さ、すなわち溝の長さにビスの首下の長さがほぼ一致したものは安定に支持できるが、1つの補助具に溝が1つしかないので、その溝の長さよりも首下の長さが著しく長いビスは、トルクを加えたときにぐらぐらして斜めにねじ込まれることがあり、ビスの支持の安定性に欠けるという問題点がある。長さが異なるビスをそれぞれ安定に支持するには、溝の長さが異なる複数の補助具が必要になる。複数の補助具を使うと補助具の交換に手間がかかるので、ねじ込み作業の効率が悪くなる。
【0005】
本発明はこの問題点を解決するためになされたものであり、長さが異なるビスを安定に効率良く支持できるねじ込み補助具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明のねじ込み補助具は、ビスのねじ込み作業のときにビスを支持するものであり、両端が開いた第1の溝と、第1の溝の長さと長さが異なる、両端が開いた第2の溝と、第1の溝の底と第2の溝の底とに垂直な垂直面と、を備え、第1の溝の底と第2の溝の底は同じ方向を向いている。
【発明の効果】
【0007】
第1の態様によれば、作業者が、ビスをねじ込む面にねじ込み補助具の垂直面を当て、第1の溝または第2の溝に配置したビスにトルクを加えると、第1の溝または第2の溝に沿ってビスを垂直にねじ込むことができる。長さが異なるビスは、長さが互いに異なる第1の溝および第2の溝で安定に支持できる。第1の溝の底と第2の溝の底が同じ方向を向いているので、第1の溝の底と第2の溝の底とが異なる方向を向いている場合に比べ、作業者が第1の溝に沿ってビスをねじ込んでから、次にビスをねじ込む位置に第2の溝を移動させるまでの間に、作業者の視線が変化する角度や補助具の動きを小さくできる。第2の溝に沿ってビスをねじ込んでから第1の溝に沿ってビスをねじ込むときも同様に、作業者の視線が変化する角度や補助具の動きを小さくできる。従ってねじ込み作業をはかどらせることができる。
【0008】
第2の態様によれば、第1の態様において、ビスが強磁性であるとビスは磁石に吸引される。非磁性である第1の溝および第2の溝は磁気を帯びても弱いので、磁石によって磁気を帯びた強磁性の溝がビスを吸引する場合に比べ、磁石に最も近い溝の定位置にビスを吸引できる。溝に吸引したビスから磁石は離れた位置にあるので、ビスをねじ込むときにねじ山が擦れて磁石が摩耗しないようにできる。
【0009】
第3の態様によれば、第1又は第2の態様において、垂直面は、第1の溝の底に垂直な第2の面と、第2の溝の底に垂直な第3の面と、を含み、第1の溝と第2の溝は交差している。これにより第1の溝と第2の溝とが交差していない場合に比べ、溝が交差している分だけ溝が設けられた面をコンパクトにできる。従って第1の溝と第2の溝とを変えるときに作業者の視線が変化する角度をさらに小さくできる。
【0010】
第4の態様によれば、第3の態様において、第1の溝と第2の溝とは直交しているので、長さが異なるビスをねじ込むときに第1の溝と第2の溝とを変える動作を、ねじ込み補助具を90°回転させるという単純なものにできる。
【0011】
第5の態様によれば、第1又は第2の態様において、第1の溝の底や第2の溝の底が向く第1の方向における垂直面の長さは、第1の方向に垂直な第2の方向における垂直面の長さよりも長いので、垂直面の長さがその逆の関係にある場合に比べ、狭い隙間にビスをねじ込む作業がしやすくなる。
【0012】
第6の態様によれば、第1又は第2の態様に加え、第1の溝および第2の溝が設けられた第1の部材が、垂直面を含む第2の部材に結合している。従ってねじ込み補助具を簡易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施の形態におけるねじ込み補助具の斜視図である。
図2】ねじ込み補助具の断面図である。
図3】第2実施の形態におけるねじ込み補助具の斜視図である。
図4】ねじ込み補助具の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。図1は第1実施の形態におけるねじ込み補助具10の斜視図である。ねじ込み補助具10は、第1の溝12及び第2の溝14が設けられた第1の部材11と、第1の部材11が結合した第2の部材20と、を備えている。第1の溝12及び第2の溝14は、ねじ込まれるビス(図示せず)をそれぞれ支持する。
【0015】
第1の部材11は反磁性または常磁性の物質(非磁性体)からなり、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金、銅または銅合金、チタン又はチタニウム合金、非磁性ステンレス、木材、合成樹脂などで作られている。第1の部材11はビスが擦れるので、耐摩耗性の観点から、アルミニウム合金や非磁性ステンレスなどの金属製が特に好ましい。第2の部材20は特に制限がなく、非磁性体であっても良いし強磁性体であっても良いが、磁気を帯びて鉄粉などが付着するのを低減するため、非磁性体であるのが好ましい。本実施形態では、第1の部材11はアルミニウム合金からなり、第2の部材20は合成樹脂からなる。
【0016】
第1の溝12は第1の部材11の端から端まで直線状に延びており、溝の両端が開いている。第2の溝14も第1の部材11の別の端から端まで直線状に延びており、溝の両端が開いている。第1の溝12の底13と第2の溝14の底15は同じ方向を向いている。溝12,14の底13,15が同じ方向を向くというのは、底13の垂線と底15の垂線とが平行であること、又は、底13の垂線と底15の垂線とが重なることをいう。
【0017】
本実施形態では、第1の溝12は第2の溝14に交差している。第1の溝12は第2の溝14に各々の溝の長さの半分の位置で直交しており、第1の溝12と第2の溝14は形、幅および深さが同じである。第1の溝12及び第2の溝14は形がU字形である。溝の長さは、第1の溝12が第2の溝14より長い。例えば第1の溝12の長さは第2の溝14の長さの2倍である。但し2種類の溝の長さの比率は適宜設定できる。
【0018】
第2の部材20は、第1の部材11が取り付けられた平面からなる第1の面21と、第1の面21につながる2つの平面からなる第2の面22と、第1の面21及び第2の面22につながる2つの平面からなる第3の面23と、を含む。第2の面22は、第1の溝12の底13に垂直である。第3の面23は、第2の溝14の底15に垂直である。第2の面22及び第3の面23は、第1の溝12の底13及び第2の溝14の底15にそれぞれ垂直な垂直面24を構成する。第2の部材20は、第1の面21に向かい合う背面25を含む。背面25に鉤状の留金(ホック)を設けても良い。
【0019】
第2の面22と第3の面23とは直角に交わっており、第2の部材20は直方体の形をしている。互いに向かい合う第2の面22と第2の面22との間の距離は第1の溝12の長さ以上である。互いに向かい合う第3の面23と第3の面23との間の距離は第2の溝14の長さ以上である。第2の面22と第2の面22との間の距離は、第3の面23と第3の面23との間の距離よりも長い。第1の面21と背面25との間の距離は、第2の面22と第2の面22との間の距離よりも長い。
【0020】
第2の面22及び第3の面23は、溝12,14の底13,15の垂線に平行である。底13,15が向く第1の方向(底13,15の垂線が延びる向き)における第2の面22の長さは、第1の方向に垂直な第2の方向における第2の面22の長さよりも長い。同様に第1の方向における第3の面23の長さは、第2の方向における第3の面23の長さよりも長い。
【0021】
図2は第1の溝12に沿って切断したねじ込み補助具10の断面図である。第2の部材20は、第1の面21のほぼ中央に有底の穴26が設けられている。第1の部材11は、溝12,14の底13,15を含む基部16のほぼ中央に接続部17が設けられている。接続部17は、第2の部材20の穴26にはまる突起である。接続部17には有底の凹部18が設けられており、接続部17の外周には凸部19が設けられている。
【0022】
本実施形態では凹部18は接続部17の先端から基部16へ向かって窪んでいるが、接続部17の外周から接続部17の中心へ向かって窪むように凹部18を設けても良い。凸部19は、接続部17の外周に亘って連続する鍔状であっても良いし、接続部17の外周の1乃至複数か所に設けられていても良い。凹部18は、磁石27(永久磁石)がはまる窪みである。磁石27は磁力が強い希土類磁石が好適である。
【0023】
凸部19は、磁石27を凹部18にはめた接続部17を穴26にはめるときに、抜け防止のため、穴26に食い込む部分である。接続部17と穴26とが接着されていても良い。ねじ込み補助具10は垂直面24を含む第2の部材20に第1の部材11が結合しているので、ねじ込み補助具10を簡易に製造できる。
【0024】
ねじ込み補助具10の使用方法を説明する。作業者は、電動のレンチやドライバー等の工具を持つ手と反対の手にねじ込み補助具10を持ち、ビスを取り付ける面(以下「取付面」と称す)にねじ込み補助具10の第2の面22を当てたときは、ビスの先端が取付面を向くように、第1の溝12にビスの首下を入れ、ビスの頭部を第1の溝12の外に出す。作業者は、取付面に第3の面23を当てたときは、ビスの先端が取付面を向くように、第2の溝14にビスの首下を入れ、ビスの頭部を第2の溝14の外に出す。首下の長さが、第2の溝14の長さよりも長く第1の溝12の長さよりも短いビスは第2の溝14に入れ、第1の溝12の長さよりも首下の長さが長いビスは第1の溝12に入れる。
【0025】
ビスが強磁性であると、磁石27は、第1の溝12又は第2の溝14の中のビスを吸引して、第1の溝12の底13又は第2の溝14の底15にビスを固定する。第2の面22は第1の溝12の底13に垂直であり、第3の面23は第2の溝14の底15に垂直なので、ビスは取付面に垂直に支持される。工具を使って作業者がビスの頭部にトルクを加えると、ビスは第1の溝12又は第2の溝14に沿って取付面に垂直にねじ込まれる。ビスの頭部が第1の溝12又は第2の溝14の縁に近づいたら、ねじ込み補助具10を取り除いた後、さらに頭部にトルクを加えてビスを締め付ける。
【0026】
ねじ込み補助具10は、長さが互いに異なる第1の溝12及び第2の溝14があるので長さが異なるビスを安定に支持できる。第1の溝12及び第2の溝14は溝の底13,15が同じ方向を向いているので、2つの溝の底が異なる方向を向いている場合に比べ、第1の溝12に沿ってビスをねじ込んでから、次にビスをねじ込む位置に第2の溝14を移動させるまでの間に、作業者の視線が左右に変化する角度やねじ込み補助具10の動きを小さくできる。
【0027】
これに対し2つの溝の底が異なる方向を向いている場合、例えば第1の面21に第1の溝12があり、第2の面22に第2の溝14がある場合、第1の溝12に沿って取付面にビスをねじ込んでから、次にビスをねじ込む位置に第2の溝14を移動するときは、ねじ込み補助具10を反転して第3の面23を取付面に当てた後、取付面に沿って第3の面23をスライドして回転させ、ビスをねじ込む位置に第2の溝14を移動させる必要がある。取付面に沿って第3の面23をスライドするときに作業者の視線は左右に大きく変化する。
【0028】
また、第1の面21に第1の溝12があり、第3の面23に第2の溝14がある場合、第1の溝12に沿って取付面にビスをねじ込んでから、次にビスをねじ込む位置に第2の溝14を移動するときは、取付面に沿って第2の面22をスライドして回転させ、ビスをねじ込む位置に第2の溝14を移動させる必要がある。この場合も取付面に沿って第2の面22をスライドするときに、作業者の視線は左右に大きく変化する。
【0029】
一方、ねじ込み補助具10を使うときは、取付面に第2の面22を当て、第1の溝12に沿って取付面にビスをねじ込んでから、第1の溝12と第2の溝14との交点を中心にねじ込み補助具10を回転して、次にビスをねじ込む位置に第2の溝14を移動させながら第3の面23を取付面に当てる。第1の溝12から第2の溝14へ変わるときのねじ込み補助具10の左右の揺れ動きが少ないので、この間に作業者の視線が左右に変化する角度やねじ込み補助具10の動きを小さくできる。作業者の集中を妨げないようにできるので、ねじ込み作業をはかどらせることができる。
【0030】
非磁性である第1の溝12及び第2の溝14は磁気を帯びても弱いので、磁気を帯びた強磁性の溝がビスを吸引する場合に比べ、磁石27に最も近い溝の定位置(本実施形態では溝の底13,15)にビスを吸引できる。溝に吸引したビスから磁石27は離れた位置にあるので、ビスをねじ込むときにねじ山が擦れて磁石27が摩耗しないようにできる。磁石27が摩耗して発生した微粉末は自然発火や着火のおそれがあるので、磁石27の摩耗を防ぐことで安全性を向上できる。
【0031】
ねじ込み補助具10は第1の溝12と第2の溝14とが交差しているので、第1の溝12と第2の溝14とが交差しないで第1の面21に設けられている場合に比べ、溝が交差している分だけ第1の面21をコンパクトにできる。従って第1の溝12と第2の溝14とを変えてビスをねじ込むときに、作業者の視線が変化する角度をさらに小さくできる。
【0032】
特に第1の溝12と第2の溝14は直交しているので、長さが異なるビスをねじ込むときに第1の溝12と第2の溝14とを変える動作を、第1の溝12と第2の溝14との交点を中心に、ねじ込み補助具10を90°回転させるという単純なものにできる。
【0033】
また第1の溝12と第2の溝14は各々の溝の長さの半分の位置で直交しているので、第1の溝12と第2の溝14との交点を中心に、ねじ込み補助具10を90°回転させると、ねじ込み補助具10を左右に揺れ動かさなくても溝の位置が重なる。取付面の上に引いた仮想の直線上に長さの異なるビスをねじ込むときに、ねじ込み補助具10を左右に揺れ動かすことなく、直線に沿ってねじ込み補助具10を移動させながら、必要に応じてねじ込み補助具10を90°回転させれば良いので、作業性に優れる。
【0034】
第2の面22の面積および第3の面23の面積は、第1の面21の面積よりも大きいので、第2の面22及び第3の面23の面積が、第1の面21の面積よりも小さい場合に比べ、第2の面22や第3の面23を取付面に当ててビスを支持するときの、ねじ込み補助具10の取付面に対する安定性を向上できる。
【0035】
第2の面22の第1の方向(底13,15の垂線が延びるの向き)の長さは、第1の方向に垂直な第2の方向における第2の面22の長さよりも長い。同様に第3の面23の第1の方向の長さは、第3の面23の第2の方向の長さよりも長い。垂直面の長さがその逆の関係にある場合に比べ、取付面の狭い隙間にねじ込み補助具10を当てることができるので、狭い隙間にビスをねじ込む作業がしやすくなる。また垂直面の長さがその逆の関係にある場合に比べ、第1の溝12と第2の溝14とを変える動作をするときのねじ込み補助具10の動きを小さくできる。
【0036】
図3及び図4を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施形態では第1の溝12と第2の溝14とが交差している場合について説明した。これに対し第2実施形態では、第1の溝34と第2の溝36とが並んで設けられる場合について説明する。図3は第2実施の形態におけるねじ込み補助具30の斜視図である。ねじ込み補助具30は、第1の溝34及び第2の溝36が設けられた第1の部材31と、第1の部材31が結合した第2の部材40と、を備えている。第1の溝34及び第2の溝36は、第1の部材31に並んで互いに平行に設けられている。
【0037】
第1の部材31は非磁性体からなる。本実施形態では第1の部材31及び第2の部材40はアルミニウム合金からなる。第1の部材31は、溝の長さ方向の中間の位置で第1の溝34及び第2の溝36が分割された第1部32及び第2部33を含む。第1の溝34は、第1部32及び第2部33を並べたときの全体に亘って直線状に延びており、溝の両端が開いている。第2の溝36は、第1部32及び第2部33を並べたときの全体に亘って直線状に延びており、溝の両端が開いている。第2の溝36の長さは第1の溝34の長さよりも短い。本実施形態では第1の溝34及び第2の溝36は形、幅および深さが同じであり、溝の形はV字形である。第1の溝34の底35と第2の溝36の底37は同じ方向を向いており、底34の垂線と底35の垂線とは平行である。
【0038】
第2の部材40は帯状の板を折り曲げて作られている。第2の部材40は、第1の部材31が取り付けられた平面からなる第1の面41と、第1の面41の一辺につながる平面からなる垂直面42と、第1の面41の一辺以外の部分(本実施形態では一辺に向かい合う辺)につながる取っ手43と、を含む。
【0039】
第1の部材31は、第1の溝34の底35が同一直線上に位置し、第2の溝36の底37が同一直線上に位置するように、第1の面41のうち垂直面42の近くに第1部32が配置され、垂直面42から遠くに第1部32と間隔をあけて第2部33が配置されている。第1部32と第2部33との間に、第1の溝34から第2の溝36まで延びる棒状の磁石46が配置されている。磁石46は第1の面41に取り付けられている。垂直面42は、第1の溝34の底35及び第2の溝36の底37に垂直である。垂直面42の面積は、第1の面41の面積よりも大きい。底35,37の垂線が延びる第1の方向における垂直面42の長さは、第1の方向と垂直な第2の方向の長さよりも長い。
【0040】
図4は第1の溝34の底35に沿って切断したねじ込み補助具30の断面図である。第1の面41からの磁石46の高さは、第1の面41からの第1の溝34の底35の高さと同じであり、同様に第1の面41からの第2の溝36(図3参照)の底37の高さと同じである。磁石46によって第1の溝34及び第2の溝36に吸引されたビス(図示せず)は、溝34,36の底35,37から離れた位置に固定されるので、ビスは磁石46から離れた位置にある。
【0041】
作業者は、電動のレンチやドライバー等の工具を持つ手と反対の手にねじ込み補助具30の取っ手43を持って、取付面にねじ込み補助具30の垂直面42を当て、ビスの先端が取付面を向くように、第1の溝34又は第2の溝36にビスを入れる。ビスが強磁性であると、磁石46はビスを吸引して、第1の溝34の底35又は第2の溝36の底37の近くにビスを固定する。作業者が工具を使ってビスの頭部にトルクを加えると、ビスは第1の溝34又は第2の溝36に沿って取付面に垂直にねじ込まれる。
【0042】
ねじ込み補助具30は、長さが互いに異なる第1の溝34及び第2の溝36があるので長さが異なるビスを安定に支持できる。第1の溝34及び第2の溝36が同じ第1の面41に設けられているので、長さが異なるビスをねじ込むために第1の溝34と第2の溝36とを変えるときのねじ込み補助具30の左右の揺れ動きを少なくできる。作業者の視線が左右に変化する角度やねじ込み補助具30の動きを小さくできるので、ねじ込み作業をはかどらせることができる。
【0043】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0044】
実施形態では第1の溝12,34と第2の溝14,36の形、深さ及び幅が同じ場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1の溝12,34と第2の溝14,36の形、深さ及び幅のうち1種以上を異ならせても良い。2つの溝の形や深さ、幅が異なっていても、2つの溝の底の垂線が延びる方向を同じにできる。
【0045】
第1実施形態では第1の溝12及び第2の溝14は断面がU字形、第2実施形態では第1の溝34及び第2の溝36は断面がV字形の場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1の溝12,34や第2の溝14,36の形は、U字形、V字形、四角形など、溝の中にビスを固定できるものが適宜設定される。
【0046】
実施形態では、細長くくぼんだ溝12,14,34,36を設ける場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、ピンを立てて並べたピンの列と列との間にビスの首下が入る隙間を設けたり、ビスの首下が入る隙間をあけて2枚の板を並べたりしても良い。ピンや板が作る隙間の部分(ビスの首下が入る部分)が溝に該当する。
【0047】
実施形態では垂直面24,42が平面からなる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。垂直面24,42に1つ又は複数の凹みを設けることは当然可能である。垂直面24,42のうち凹みを除いた部分をつないでできる平面が、第1の溝12,34や第2の溝14,36の底13,15,35,37に垂直であれば、取付面に垂直面24,42を当てたときにビスを垂直に支持できるからである。
【0048】
また、第2の部材40の垂直面42をぎざぎざに屈曲した形にすることは当然可能である。垂直面42が屈曲してできた複数の凸の先端をつないでできる平面が、第1の溝34や第2の溝36の底35,37に垂直であれば、垂直面42を取付面に当てたときにビスを垂直に支持できるからである。
【0049】
実施形態では第1の溝12,34と第2の溝14,36をそれぞれ1つ設ける場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1の溝12,34を複数設けたり第2の溝14,36を複数設けたりすることは当然可能である。第1の溝12,34や第2の溝14,36が複数設けられる場合に、溝の幅や形、長さを異ならせることは当然可能である。幅が異なる溝が設けられると、太さが異なるビスを支持するときに都合が良い。
【0050】
第1実施形態では、第1の溝12と第2の溝14が各々の溝の長さの半分の位置で直交する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。溝が交差する位置は適宜設定できる。
【0051】
第1実施形態では、第1の溝12と第2の溝14が直交する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1の溝12と第2の溝14が交差する角度は適宜設定できる。第1の溝12と第2の溝14が90°以外の角度で交わる場合、第2の面22と第3の面23とのなす角は、第1の溝12と第2の溝14が交差する角度に応じて適宜設定される。
【0052】
第2実施形態では、第1の溝34と第2の溝36とが平行である場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1の溝34に対して第2の溝36に角度を付けることは当然可能である。第1の溝34に対して第2の溝36に角度を付けた場合、垂直面42は、第1の溝34の底35に垂直な部分と、第2の溝36の底37に垂直な部分と、に分けられる。
【0053】
実施形態では第1の溝12,34及び第2の溝14,36が設けられる第1の部材11,31の全体が非磁性体からなる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。強磁性体からなる母材に溝を設け、溝の表面を非磁性材で被覆して、第1の溝12,34及び第2の溝14,36を非磁性にすることは当然可能である。溝の表面を非磁性材で被覆する手段としては、非磁性材の接着、めっき、溶射などが例示される。
【0054】
実施形態ではねじ込み補助具10,30に磁石27,46が設けられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。ビスが非磁性体からなる場合、ビスは磁石に吸引されないので、ねじ込み補助具に磁石は不要である。磁石によってビスが溝に吸着されない場合、作業者は、工具でビスの先端を取付面に突き刺したり強く押し付けたりしてビスを取付面に固定しながら、ねじ込み補助具の溝にビスを密着させる。これによりビスを支持できる。ビスの支持を補助するため、取付面のビスをねじ込む位置に下穴をあけても良いし、ラチェット状の突起を溝に設けても良い。ラチェット状の突起は、ビスを溝の底に近づけるときはビスに当たって弾性的に撓み、溝の底からビスを遠ざけるときは変形が制限されるものである。これにより溝の底の近くにビスが保持される。
【0055】
実施形態では頭部があるビスを取付面にねじ込む場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。頭部が無い全ネジを取付面にねじ込むときに、ねじ込み補助具を使うことは当然可能である。
【0056】
第1実施形態では直方体の第2の部材20について説明し、第2実施形態では帯状の板を屈曲した第2の部材40について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第2の部材20,40の形は適宜設定される。
【0057】
第1実施形態における第2の部材20と、第2実施形態における第2の部材40と、を交換することは当然可能である。第1実施形態における第1の部材11に第2の部材40を結合するときは、第1の面41の裏側の面に磁石46を取り付けた後、第1の面41に第1の部材11を取り付ける。垂直面42の互いに向かい合う縁44と、取っ手43の互いに向かい合う縁45と、を含む平面(第3の面)が、第2の溝14の底15に垂直であると、第3の面を取付面に当て、第2の溝14に入れたビスを垂直にねじ込むことができる。
【0058】
実施形態では、それぞれ作成した第1の部材11,31と第2の部材20,40とを結合してねじ込み補助具10,30を製造する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。塊状の部材の切削、射出成形、鋳造などによりねじ込み補助具10,30を製造することは当然可能である。塊状の部材の切削、射出成形、鋳造によりねじ込み補助具10を製造する場合、第1の溝12や第2の溝14の近くに磁石27を配置するため、背面25から第1の面21へ向かって有底の穴をあけ、その穴の底に磁石27を配置する。磁石27が底に配置された穴に非磁性材などを詰めて、穴を埋めることができる。穴を埋めたあとに鉤状の留金(ホック)を設けても良い。
【符号の説明】
【0059】
10,30 ねじ込み補助具
11,31 第1の部材
12,34 第1の溝
13,35 第1の溝の底
14,36 第2の溝
15,37 第2の溝の底
20,40 第2の部材
22 第2の面
23 第3の面
24,42 垂直面
27,46 磁石
図1
図2
図3
図4