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特開2024-44477竪型乾留炉、高炉用原料製造装置及び高炉用原料製造方法
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  • 特開-竪型乾留炉、高炉用原料製造装置及び高炉用原料製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044477
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】竪型乾留炉、高炉用原料製造装置及び高炉用原料製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10B 37/02 20060101AFI20240326BHJP
   C10B 3/00 20060101ALI20240326BHJP
   C21B 5/00 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C10B37/02
C10B3/00
C21B5/00 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150013
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】横森 玲
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 成人
(72)【発明者】
【氏名】今西 大輔
【テーマコード(参考)】
4K012
【Fターム(参考)】
4K012BA04
(57)【要約】
【課題】竪型乾留炉の炉内における装入物の分布、特に、装入物に含まれる粉体の分布を改善する竪型乾留炉及び高炉用原料製造方法を提供する。
【解決手段】
炭素含有物質を含む装入物を乾留して高炉用原料を製造するための竪型乾留炉であって、前記装入物を内部に堆積させる乾留炉本体と、前記装入物を前記乾留炉本体に送通させる装入シュートと、前記乾留炉本体の内部に設けられ、前記乾留炉本体の内部に堆積した前記装入物を撹拌する撹拌機と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素含有物質を含む装入物を乾留して高炉用原料を製造するための竪型乾留炉であって、
前記装入物を内部に堆積させる乾留炉本体と、
前記装入物を前記乾留炉本体に送通させる装入シュートと、
前記乾留炉本体の内部に設けられ、前記乾留炉本体の内部に堆積した前記装入物を撹拌する撹拌機と、
を有する、竪型乾留炉。
【請求項2】
請求項1に記載の竪型乾留炉を用いて、高炉用原料を製造する高炉用原料製造装置。
【請求項3】
前記撹拌機は、回転軸部と、前記回転軸部の周囲に配置されたプロペラ部とを有し、
前記乾留炉本体の内部において、前記回転軸部の軸方向が鉛直方向に平行になるように配置される、請求項1に記載の竪型乾留炉。
【請求項4】
前記撹拌機は、鉛直方向における前記プロペラ部の上端部が、前記乾留炉本体の内部に堆積した前記装入物の頂部よりも下方の位置となるように炉内に配置される、請求項3に記載の竪型乾留炉。
【請求項5】
前記撹拌機は、鉛直方向における前記プロペラ部の下端部が、前記乾留炉本体の炉壁に設けられた低温羽口の中心軸の位置よりも上方の位置になるように配置される、請求項3に記載の竪型乾留炉。
【請求項6】
前記撹拌機は、鉛直方向における前記プロペラ部の下端部が、前記乾留炉本体の炉壁に設けられた低温羽口の中心軸の位置よりも上方の位置になるように配置される、請求項4に記載の竪型乾留炉。
【請求項7】
前記撹拌機の前記プロペラ部は、水平方向における前記プロペラ部の回転領域の直径dと、前記乾留炉本体の奥行方向長さWとの比d/Wが、下記(1)式の関係を満たす寸法である、請求項3に記載の竪型乾留炉。
0.5≦d/W≦0.9 ・・・(1)
【請求項8】
前記撹拌機の前記プロペラ部は、水平方向における前記プロペラ部の回転領域の直径dと、前記乾留炉本体の奥行方向長さWとの比d/Wが、下記(1)式の関係を満たす寸法である、請求項4に記載の竪型乾留炉。
0.5≦d/W≦0.9 ・・・(1)
【請求項9】
前記撹拌機の前記プロペラ部は、水平方向における前記プロペラ部の回転領域の直径dと、前記乾留炉本体の奥行方向長さWとの比d/Wが、下記(1)式の関係を満たす寸法である、請求項5に記載の竪型乾留炉。
0.5≦d/W≦0.9 ・・・(1)
【請求項10】
前記撹拌機の前記プロペラ部は、水平方向における前記プロペラ部の回転領域の直径dと、前記乾留炉本体の奥行方向長さWとの比d/Wが、下記(1)式の関係を満たす寸法である、請求項6に記載の竪型乾留炉。
0.5≦d/W≦0.9 ・・・(1)
【請求項11】
前記撹拌機の前記プロペラ部は、鉛直方向における前記プロペラ部の翼幅hと、前記乾留炉本体の奥行方向長さWとの比h/Wが、下記(2)式の関係を満たす寸法である、請求項3に記載の竪型乾留炉。
0.05≦h/W≦0.3 ・・・(2)
【請求項12】
前記撹拌機の前記プロペラ部は、鉛直方向における前記プロペラ部の翼幅hと、前記乾留炉本体の奥行方向長さWとの比h/Wが、下記(2)式の関係を満たす寸法である、請求項4に記載の竪型乾留炉。
0.05≦h/W≦0.3 ・・・(2)
【請求項13】
前記撹拌機の前記プロペラ部は、鉛直方向における前記プロペラ部の翼幅hと、前記乾留炉本体の奥行方向長さWとの比h/Wが、下記(2)式の関係を満たす寸法である、請求項5に記載の竪型乾留炉。
0.05≦h/W≦0.3 ・・・(2)
【請求項14】
前記撹拌機の前記プロペラ部は、鉛直方向における前記プロペラ部の翼幅hと、前記乾留炉本体の奥行方向長さWとの比h/Wが、下記(2)式の関係を満たす寸法である、請求項6に記載の竪型乾留炉。
0.05≦h/W≦0.3 ・・・(2)
【請求項15】
前記撹拌機の前記プロペラ部は、鉛直方向における前記プロペラ部の翼幅hと、前記乾留炉本体の奥行方向長さWとの比h/Wが、下記(2)式の関係を満たす寸法である、請求項7に記載の竪型乾留炉。
0.05≦h/W≦0.3 ・・・(2)
【請求項16】
前記撹拌機の前記プロペラ部は、鉛直方向における前記プロペラ部の翼幅hと、前記乾留炉本体の奥行方向長さWとの比h/Wが、下記(2)式の関係を満たす寸法である、請求項8に記載の竪型乾留炉。
0.05≦h/W≦0.3 ・・・(2)
【請求項17】
前記撹拌機の前記プロペラ部は、鉛直方向における前記プロペラ部の翼幅hと、前記乾留炉本体の奥行方向長さWとの比h/Wが、下記(2)式の関係を満たす寸法である、請求項9に記載の竪型乾留炉。
0.05≦h/W≦0.3 ・・・(2)
【請求項18】
前記撹拌機の前記プロペラ部は、鉛直方向における前記プロペラ部の翼幅hと、前記乾留炉本体の奥行方向長さWとの比h/Wが、下記(2)式の関係を満たす寸法である、請求項10に記載の竪型乾留炉。
0.05≦h/W≦0.3 ・・・(2)
【請求項19】
請求項3~18のいずれか1項に記載の竪型乾留炉を用いて、高炉用原料を製造する高炉用原料製造装置。
【請求項20】
請求項19に記載の高炉用原料製造装置を用いて、前記撹拌機の前記プロペラ部の回転速度を45rpm以下として回転させて前記装入物を撹拌する、高炉用原料製造方法。
【請求項21】
前記竪型乾留炉に先行装入物が装入され、前記先行装入物に対して前記撹拌機による撹拌がなされた後、後行装入物を装入する、請求項20に記載の高炉用原料製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークスを製造するための竪型乾留炉、高炉用原料製造装置及び高炉用原料製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の観点から、鉄鋼業界においてCOガスの発生量の低減が求められている。このため、化石燃料の使用量の削減は、急務となっている。鉄鋼業においては、高炉内で鉄鉱石を炭素(石炭をコークス炉で乾留して製造したコークス)で還元することにより、溶銑を製造している。そして、コークス原単位の低減のため、フェロコークスを高炉用原料として用いる技術の開発が行われている。フェロコークスは、石炭に鉄鉱石を一定量混合して塊成化した後、乾留処理を施すことでコークス中に微細な金属鉄粒子を分散させたものであり、金属鉄の触媒作用によりコークスの反応性を高めた成型コークスである。
【0003】
フェロコークスの乾留方法として、竪型の乾留炉を用いる方法が提案されている。特許文献1には、上部に乾留ゾーン、下部に冷却ゾーンを有する竪型乾留炉が開示されている。竪型乾留炉におけるフェロコークスの製造方法は、装入装置を用いて炭素含有物質と鉄含有物質とからなる成型物を竪型乾留炉に装入する装入工程と、乾留ゾーンにおいて加熱ガスを吹き込むと共に成型物を乾留しフェロコークスを製造する乾留工程と、冷却ゾーンにおいて冷却ガスを吹き込むことでフェロコークスを冷却する冷却工程と、竪型乾留炉の炉頂部の排出口から炉内ガスを排出する炉内ガス排出工程と、冷却ゾーン下部からフェロコークスを排出するフェロコークス排出工程とを有している。
【0004】
乾留工程では、乾留ゾーンの中間部分の低温ガス吹き込み羽口から低温ガスを、乾留ゾーンの下部の高温ガス吹き込み羽口から高温ガスを、それぞれ炉内に吹き込むことで成型物を加熱する。冷却工程では、冷却ゾーンの下部の冷却ガス吹き込み羽口から冷却ガスを吹き込むことで、フェロコークスの冷却を行う。
【0005】
ここで、フェロコークスの生産量を増加させるためには、竪型乾留炉の容積を大きくする必要がある。一般的に、装入物は、斜めに傾いた装入シュートを用いて斜め方向を装入方向として装入されるが、加熱ガスおよび冷却ガスは、竪型乾留炉の奥行方向(装入物の装入方向の水平成分に平行)に噴射されるため、ガスを炉内中央部まで浸透させるには奥行方向の内寸を一定以下に抑える必要がある。よって、竪型乾留炉は奥行方向に比べて炉幅方向(乾留炉横断面において奥行方向と直交する方向)を長い内寸として構成し、大きな容積を確保している。
【0006】
また、特許文献2には、材料の均一装入(搬送)方法として、搬送路の幅方向中央部から出口側へ向かって放射状に下る傾斜面を有する分散誘導部を設けることで、材料を放射状に分散させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-057970号公報
【特許文献2】特開2011-162271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、奥行方向に比べて炉幅方向のサイズを大きくした構造を有する竪型乾留炉では、炉幅方向のサイズに対応して炭素含有物質を均等に分散させるために、装入シュートを炉幅方向の全ての位置に対応するよう多数配置することが困難である。一方、成型物と装入シュートとの壁面が、もしくは成型物同士が衝突することで生成した粉体は偏析しやすく、竪型乾留炉の炉内底部において、装入シュート側に密集する傾向にある。これは、装入シュート内を送通する過程で、装入物中の粉体の大部分が成型物の間をすり抜けて沈降することで、乾留炉へ到達するまでに装入物が成型物層(上層)と粉体層(下層)との2層に分離することを原因とする。1トンの成型物を装入した場合、乾留炉内に突入する際の装入物の厚みは、最大で150mm程度になるが、成型物はその下側に存在する粉体分高い位置から装入されるため、装入口から離れた位置まで飛来しやすい一方で、下層の粉体は装入口近傍に落下する。
【0009】
また、竪型乾留炉の炉内底部において、堆積した成型物は、安息角に応じて形成された山形の斜面となる。そして、形成された山形の斜面は、頂部に近くなる程傾斜が大きくなる。そのため、粉体は、装入口から離れた位置に着地した場合であっても、装入口側に多少押し戻されて静止する。よって、粉体は、着地してから静止するまでの移動距離が大きくなる。即ち、成型物による山形の斜面は、乾留炉の奥行方向の分散を低減させ、粉体の著しい偏在を引き起こす。粉体の偏析によって、炉内のガス流れが不均一となり、成型物の乾留不良等の問題が生じる。
【0010】
また、特許文献2に開示された分散誘導部は、粉体の飛距離に影響しないため、当該分散誘導部を設置しても、装入口側の粉体偏析を解消できない。
【0011】
本発明は、かかる事情を鑑みてなされたもので、竪型乾留炉の炉内における装入物の分布、特に、装入物に含まれる粉体の分布を改善する竪型乾留炉、高炉用原料製造装置及び高炉用原料製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明の要旨構成は以下のとおりである。
[1]炭素含有物質を含む装入物を乾留して高炉用原料を製造するための竪型乾留炉であって、前記装入物を内部に堆積させる乾留炉本体と、前記装入物を前記乾留炉本体に送通させる装入シュートと、前記乾留炉本体の内部に設けられ、前記乾留炉本体の内部に堆積した前記装入物を撹拌する撹拌機と、を有する、竪型乾留炉。
[2][1]に記載の竪型乾留炉を用いて、高炉用原料を製造する高炉用原料製造装置。
[3]前記撹拌機は、回転軸部と、前記回転軸部の周囲に配置されたプロペラ部とを有し、前記乾留炉本体の内部において、前記回転軸部の軸方向が鉛直方向に平行になるように配置される、[1]に記載の竪型乾留炉。
[4]前記撹拌機は、鉛直方向における前記プロペラ部の上端部が、前記乾留炉本体の内部に堆積した前記装入物の頂部よりも下方の位置となるように炉内に配置される、[3]に記載の竪型乾留炉。
[5]前記撹拌機は、鉛直方向における前記プロペラ部の下端部が、前記乾留炉本体の炉壁に設けられた低温羽口の中心軸の位置よりも上方の位置になるように配置される、[3]又は[4]に記載の竪型乾留炉。
[6]前記撹拌機の前記プロペラ部は、水平方向における前記プロペラ部の回転領域の直径dと、前記乾留炉本体の奥行方向長さWとの比d/Wが、下記(1)式の関係を満たす寸法である、[3]~[5]のいずれか1つに記載の竪型乾留炉。
0.5≦d/W≦0.9・・・(1)
[7]前記撹拌機の前記プロペラ部は、鉛直方向における前記プロペラ部の翼幅hと、前記乾留炉本体の奥行方向長さWとの比h/Wが、下記(2)式の関係を満たす寸法である、[3]~[6]のいずれか1つに記載の竪型乾留炉。
0.05≦h/W≦0.3・・・(2)
[8][3]~[7]のいずれか1つに記載の竪型乾留炉を用いて、高炉用原料を製造する高炉用原料製造装置。
[9][8]に記載の高炉用原料製造装置を用いて、前記撹拌機の前記プロペラ部の回転速度を45rpm以下として回転させて前記装入物を撹拌する、高炉用原料製造方法。
[10]前記竪型乾留炉に先行装入物が装入され、前記先行装入物に対して前記撹拌機による撹拌がなされた後、後行装入物を装入する、[9]に記載の高炉用原料製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、竪型乾留炉の炉内における装入物の分布、特に、装入物に含まれる粉体の分布を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】従来の竪型乾留炉の一例を示す側面模式図である。
図2】本発明の一実施形態である竪型乾留炉を示す側面模式図である。
図3】最大粉体率と、プロペラ部の回転領域の直径との関係を示す図である。
図4】最大粉体率と、プロペラ部の翼幅との関係を示す図である。
図5】最大粉体率と、プロペラ部の回転速度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、石炭に鉄鉱石を一定量混合して塊成化した成型コークスの一種であるフェロコークスを製造する場合を例に、本発明の実施形態を通じて本発明を説明する。ここで、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0016】
図1を参照して、従来の竪型乾留炉100の構成について説明する。図1は、竪型乾留炉100の側面模式図を示す。以下の説明において「装入物」は、フェロコークスを製造するための「炭素含有物質と鉄含有物質とを含有する成型物」に限らず、「炭素含有物質を含む成型物」も含んでよい。即ち、少なくとも炭素含有物質を含む成型物であればよい。「装入物」は、「成型物」と、「成型物」に付着又は分離した「粉体」とが含まれる。また、「高炉用原料」は、フェロコークスを含む「コークス」を意味する。
【0017】
竪型乾留炉100は、装入シュート10と、装入ゲート20と、拡散部30と、乾留炉本体70とを有する。先ず、炭素含有物質(石炭)と鉄含有物質(鉄鉱石)とを含有する成型物を含む装入物は、装入シュート10に供給される。装入物は、装入ゲート20の閉鎖(図中の一点鎖線を参照)により、一旦、装入シュート10の内部(装入シュート10の途中)に蓄積される。装入物は、装入ゲート20の開放(図中にて実線で表示)により、乾留炉本体70に向けて装入シュート10の内部を送通する。装入物は、装入シュート10の内部を送通する際、拡散部30を通過することで、装入シュート10の内部に拡がるように分散される。装入物は、装入シュート10の内部を送通した後、乾留炉本体70の内部に堆積する。装入物は、乾留炉本体70の内部において、安息角に応じた山形を形成する。
【0018】
ここで、先述した通り、乾留炉本体70に装入される装入物は、乾留炉本体70に到達するまでに、装入シュート10の内部において、成型物層(上層)と粉体層(下層)との2層に分離した状態となる。よって、図1に示す通り、乾留炉本体70に装入される装入物は、成型物層40及び粉体層50に分離しつつ乾留炉本体70の内部に落下する。このため、乾留炉本体70の内部に堆積した装入物60は、成型物と粉体とが偏在した状態となる。つまり、従来の竪型乾留炉100においては、乾留炉本体70の内部のガス流れが不均一となり、成型物の乾留不良等の問題が生じていた。
【0019】
<撹拌機等の構成>
次に、図2を参照して、本発明の一実施形態である竪型乾留炉11の構成について説明する。図2は、高炉用原料製造装置12が有する竪型乾留炉11の側面模式図である。図2に示す竪型乾留炉11は、図1に示した竪型乾留炉100に対して、撹拌機8を更に備える。
【0020】
図2に示す通り、本発明の一実施形態である竪型乾留炉11は、乾留炉本体7の炉内に撹拌機8を設ける。撹拌機8は、回転軸部8aと、プロペラ部8bと、撹拌制御部8cとを有する。撹拌機8は、乾留炉本体7の内部において、回転軸部8aの軸方向が鉛直方向に平行になるように配置される。回転軸部8aは、撹拌制御部8cからの制御信号を受信して、乾留炉本体7の炉内にて回転制御される。プロペラ部8bは、回転軸部8aの周囲に配置される。プロペラ部8bは、回転軸部8aの回転に伴い乾留炉本体7の炉内にて回転制御される。撹拌制御部8cは、回転軸部8aに回転制御のための制御信号を送信する。
【0021】
本実施形態によれば、乾留炉本体7の炉内に撹拌機8が設けられる。このため、撹拌機8は、炉内に堆積した装入物6を撹拌することで、山形に形成された装入物6を均すことができる。そして、山形に形成された装入物6を均すことにより、鉛直方向及び水平方向において装入物6の「成型物」及び「粉体」の混合が推進される。このため、竪型乾留炉11の炉内における装入物6の分布、特に、装入物6に含まれる粉体の分布を改善できる。
【0022】
撹拌機8のプロペラ部8bは、水平方向におけるプロペラ部8bの回転領域の直径をdとし、乾留炉本体7の奥行方向Sにおける奥行方向長さをWとした場合に、直径dと奥行方向長さWとの比(d/W)が、下記(1)式の関係を満たす寸法とすることが好ましい。
0.5≦d/W≦0.9 ・・・(1)
【0023】
d/Wが0.5未満となると、プロペラ部8bの回転領域が狭くなり、撹拌される範囲も狭くなることから、効率良く粉体偏析を緩和することができない。d/Wが0.8を超えると、プロペラ部8bと竪型乾留炉11の炉壁との間隔が狭くなり、プロペラ部8bと炉壁との間の装入物(成型物)が粉化する。
【0024】
撹拌機8のプロペラ部8bは、鉛直方向における前記プロペラ部の翼幅をhとし、乾留炉本体7の奥行方向Sにおける奥行方向長さをWとした場合に、翼幅hと奥行方向長さWとの比(h/W)が、下記(2)式の関係を満たす寸法であることが好ましい。
0.05≦h/W≦0.3 ・・・(2)
【0025】
h/Wが0.05未満となると、プロペラ部8bと接触する装入物の大部分がプロペラ部8bの上下に回り込み、効率良く粉体偏析を緩和することができない。h/Wが0.3を超えると、プロペラ部8bとの接触に伴う過剰な負荷が装入物6に付与され、装入物6に含まれる成型物が勢いよく炉壁に激突して粉化する。
【0026】
撹拌機8のプロペラ部8bは、鉛直方向におけるプロペラ部8bの下端部Bが、乾留炉本体7の炉壁に設けられた低温羽口9の中心軸Oの位置よりも上方の位置になるように設けられることが好ましい。
【0027】
具体的に、乾留炉本体7は、炉内に装入された装入物6を加熱するため、低温羽口9を介して、加熱用のガスを炉内に導入する。そして、図2に示す通り、プロペラ部8bの下端部Bが、低温羽口9の中心軸Oの位置よりも上方の位置になるように設けられることで、低温羽口9から導入され炉内にて上昇しつつある加熱用のガスの偏流を改善できる。このため、プロペラ部8bの回転により、装入物6に含まれる粉体の偏在が解消されると共に、プロペラ部8bの鉛直方向の下方に存在する加熱用のガスの偏流も緩和できる。
【0028】
<高炉用原料製造方法>
次に、撹拌機8を有する竪型乾留炉11により、乾留炉本体7の内部に堆積した装入物6を撹拌する高炉用原料製造方法について、説明する。
【0029】
図2に示す通り、撹拌機8は、乾留炉本体7に装入物が装入された際に、炉内に堆積した装入物6の頂部Pよりも下方の位置に浸漬した状態となるように、炉内に配置されることが好ましい。具体的には、乾留炉本体7に装入物が装入された際に、鉛直方向における撹拌機8のプロペラ部8bの上端部Tが、炉内に堆積した装入物6の頂部Pよりも下方の位置となるように、炉内に配置されることが好ましい。
【0030】
そして、乾留炉本体7の内部に堆積した装入物6に対する撹拌機8の浸漬状態を上記の通りにすることで、効率良く装入物6の撹拌を行える。
【0031】
撹拌機8は、プロペラ部8bの回転速度を45rpm以下として回転して装入物6を撹拌することが好ましい。なお、プロペラ部8bの回転速度が45rpmを超えると、プロペラ部8bと接触した成型物について、粉化が発生する。
【0032】
ここで、図1を用いて先述した通り、先に竪型乾留炉11に装入される装入物(以下、「先行装入物」ともいう。)は、乾留炉本体7の内部において山形に形成されて堆積した状態となる。そして、その後に竪型乾留炉11に装入される装入物(以下、「後行装入物」ともいう。)は、装入シュート1から乾留炉本体7の内部に向けて落下する際に、成型物層4と粉体層5との2層に分離した状態となっている。そして、後行装入物の粉体層5は、先行装入物によって形成された山形の頂部Pの近辺に着地した際に、山形の斜面を移動して静止するまでの移動距離が大きくなる。このため、後行装入物の粉体層5に含まれていた粉体の移動距離が大きくなると共に、乾留炉本体7の内部に堆積した装入物6における粉体の偏在が顕著なものとなってしまう。
【0033】
このため、本実施形態においては、先に竪型乾留炉11に装入される先行装入物が、乾留炉本体7の内部において山形に堆積した際に、当該先行装入物に対して撹拌機8によって撹拌を行って装入物を均す。その後、後行装入物を竪型乾留炉11に装入することで、後行装入物が乾留炉本体7の内部に向けて落下した際に、先行装入物が山形に形成されていないので、後行装入物に含まれる粉体の偏在が発生せず、粉体偏析を緩和することができる。
【0034】
先に述べた通り、撹拌機8は、乾留炉本体7に装入物が装入された際に、鉛直方向におけるプロペラ部8bの上端部Tが、乾留炉本体7の内部に堆積した装入物6の頂部Pよりも下方の位置となるように、炉内に配置されることが好ましい。
【0035】
つまり、撹拌機8は、乾留炉本体7の内部に堆積した装入物6の頂部Pの位置(高さ)に基づいて、配置される位置が決定されることが好ましい。ここで、乾留炉本体7に装入されて内部に堆積する装入物6は、1回の装入量(1バッチ量)が予め決められている。このため、過去の操業データ等の経験値に基づき、乾留炉本体7の内部に堆積する装入物6の頂部Pの位置(高さ)は、予め決定しておいてよい。そして、予め決定されている頂部Pの位置(高さ)に基づいて、本実施形態として先述した通り、撹拌機8の位置を決定しておいてよい。
【0036】
なお、竪型乾留炉11に装入される装入物6の装入量が決められておらず、装入の都度、装入物6の装入量が変更される場合には、竪型乾留炉11(乾留炉本体7)に、内部に堆積した装入物6の頂部Pの位置(高さ)を測定する測定装置を設け、当該測定装置による測定結果に基づいて、本実施形態として先述した通り撹拌機8の位置を決定し、決定された位置に向けて撹拌機8を移動制御してもよい。
【実施例0037】
以下、本実施形態に係る竪型乾留炉及び高炉用原料製造方法を用いて行った実施例を説明する。
【0038】
フェロコークス製造用の本実施形態の竪型乾留炉(図2参照)を模擬した試験用装置を用い、成型物を含む装入物を装入した際における竪型乾留炉の奥行方向の装入物分布を調査した。装入シュートは、実機に設置されているものと同形状のものを用い、装入シュートの出側に、乾留炉に見立てた回収ボックスを設置した。装入シュートから装入物(成型物:95%+粉体:5%)を25kg装入し、乾留炉に見立てた回収ボックスの内部に設置した撹拌機によって撹拌した後、回収ボックス内の奥行方向の5点について装入物をサンプリングし、粉率を調査した。「粉率」は、装入物中の粉体の重量比率(%)とした。
【0039】
なお、本実施例においては、直径20mm以上の粒子を「成型物」、直径20mm未満の粒子を「粉体」として調査した。また、粉率は、回収ボックス内の奥行方向の5点について得られるが、粉体偏析の指標として、「最大粉体率(%)」(サンプル(5点)の粉体率を比較して得られる粉体率の最大値)を用いた。
【0040】
先ず、「最大粉体率」に対するプロペラ部の回転領域の「直径d」の影響を調査した。「最大粉体率」と、「直径d」との関係を調査した結果を図3に示す。図3は、縦軸を「最大粉体率」とし、横軸を「d/W」として示す。
【0041】
図3において、横軸とした「d/W」は、プロペラ部の回転領域の直径dと、奥行方向長さWとの比(d/W)であって、(1)式により算出される値である。図3は、「d/W」を変化させて調査した実施例を示す。なお、本実施例において、撹拌機のプロペラ部は、翼幅hをh/W=0.2を満たす値、回転速度を30rpmとして実施した。
【0042】
図3に示す通り、「d/W」を0.3≦d/W≦0.95の範囲を満たす値に調整することで、「比較例(加振なし)」に対して、「最大粉体率」を抑制できた。そして、プロペラ部の回転領域の直径dについて、0.5≦d/W≦0.9を満たす値とすることで、竪型乾留炉の内部に堆積した装入物に含まれる粉体の偏在について、効率良く緩和できることが確認できた。
【0043】
なお、d/Wが0.5未満の場合、プロペラ部の回転領域が狭くなり、撹拌される範囲も狭くなることから、効率良く粉体偏析を緩和できないことが確認できた。d/Wが0.9を超えた場合には、プロペラ部と竪型乾留炉の炉壁との間隔が狭くなり、プロペラ部と炉壁との間の装入物(成型物)が粉化する現象が確認できた。
【0044】
次に、「最大粉体率」に対するプロペラ部の「翼幅h」の影響を調査した。「最大粉体率」と、「翼幅h」との関係を調査した結果を図4に示す。図4は、縦軸を「最大粉体率」とし、横軸を「h/W」として示す。
【0045】
図4において、横軸とした「h/W」は、鉛直方向におけるプロペラ部の翼幅hと、奥行方向長さWとの比(h/W)であって、(2)式により算出される値である。図4は、「h/W」を変化させて調査した実施例を示す。なお、本実施例において、撹拌機のプロペラ部は、回転領域の直径dをd/W=0.6を満たす値、回転速度を30rpmとして実施した。
【0046】
図4に示す通り、「h/W」を0.025≦h/W≦0.45の範囲を満たす値に調整することで、「比較例(加振なし)」に対して、「最大粉体率」を抑制できた。そして、プロペラ部の翼幅hの寸法について、0.05≦h/W≦0.3を満たす値とすることで、竪型乾留炉の内部に堆積した装入物に含まれる粉体の偏在について、効率良く緩和できることが確認できた。
【0047】
なお、h/Wが0.05未満の場合、プロペラ部と接触する装入物の大部分がプロペラ部の上下に回り込み、撹拌の効率が悪くなることが確認できた。h/Wが0.3を超えた場合、プロペラ部8bの面積の増加に伴い、装入物とプロペラ部8bとの接触面積も増加するため、撹拌機8の稼働エネルギーが過大となり、エネルギー面での問題が発生する。
【0048】
次に、「最大粉体率」に対するプロペラ部の「回転速度」の影響を調査した。「最大粉体率」と、「回転速度」との関係を調査した結果を図5に示す。図5は、縦軸を「最大粉体率」とし、横軸を「回転速度(rpm)」として示す。
【0049】
図5は、「回転速度」を変化させて調査した実施例を示す。なお、本実施例において、撹拌機のプロペラ部は、回転領域の直径dをd/W=0.6を満たす値、翼幅hをh/W=0.2を満たす値として実施した。
【0050】
図5に示す通り、プロペラ部の回転(撹拌)により、「比較例(加振なし)」に対して、「最大粉体率」を抑制できた。そして、プロペラ部の回転速度を45rpm以下の値とすることで、竪型乾留炉の内部に堆積した装入物に含まれる粉体の偏在を効率良く緩和できることが確認できた。
【0051】
なお、プロペラ部の回転速度が45rpmを超えた場合には、プロペラ部と接触した成型物の一部が粉化する現象が確認できた。
【符号の説明】
【0052】
1 装入シュート
2 装入ゲート
3 拡散部
4 成型物層
5 粉体層
6 装入物
7 乾留炉本体
8 撹拌機
8a 回転軸部
8b プロペラ部
8c 撹拌制御部
9 低温羽口
11 竪型乾留炉
12 高炉用原料製造装置
10 装入シュート
20 装入ゲート
30 拡散部
40 成型物層
50 粉体層
60 装入物
70 乾留炉本体
100 竪型乾留炉
B (プロペラ部の)下端部
O (低温羽口の)中心軸
P (装入物の)頂部
S 竪型乾留炉の奥行方向
T (プロペラ部の)上端部
W 竪型乾留炉の奥行方向長さ
d (プロペラ部の回転領域の)直径
h (プロペラ部の)翼幅
図1
図2
図3
図4
図5