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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044479
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 1/00 20060101AFI20240326BHJP
   B23Q 11/08 20060101ALI20240326BHJP
   B23B 29/24 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B23Q1/00 E
B23Q11/08 A
B23B29/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150015
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100162237
【弁理士】
【氏名又は名称】深津 泰隆
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】浅川 和哉
【テーマコード(参考)】
3C046
3C048
【Fターム(参考)】
3C046NN01
3C046NN27
3C048AA07
(57)【要約】
【課題】タレット本体の剛性を高め、且つ、タレット本体に配管の配置スペースを確保できる工作機械を提供すること。
【解決手段】工作機械は、旋回軸と、旋回軸に取り付けられた刃物台と、旋回軸を回転させ刃物台を回転させる刃物台駆動源を設けられたタレット本体と、刃物台が配置された加工室と、刃物台駆動源が設けられた機械室とを区画する区画部材と、機械室から加工室の刃物台へ流体を供給する配管と、を備える。タレット本体は、区画部材に挿入される挿入部を、断面が矩形となる形状で形成され、且つ、挿入部の内部に旋回軸が設けられる。配管は、断面が矩形の挿入部の内部で、且つ、旋回軸の外側となる位置に配設される。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回軸と、
前記旋回軸に取り付けられた刃物台と、
前記旋回軸を回転させ前記刃物台を回転させる刃物台駆動源を設けられたタレット本体と、
前記刃物台が設けられた加工室と、前記刃物台駆動源が設けられた機械室とを区画する区画部材と、
前記機械室から前記加工室の前記刃物台へ流体を供給する配管と、
を備え、
前記タレット本体は、
前記区画部材に挿入される挿入部を、断面が矩形となる形状で形成され、且つ、前記挿入部の内部に前記旋回軸が設けられ、
前記配管は、
断面が矩形の前記挿入部の内部で、且つ、前記旋回軸の外側となる位置に配設される、工作機械。
【請求項2】
前記刃物台は、
回転工具を取り付け可能であり、
前記旋回軸は、
前記回転工具を回転させる駆動軸が内部に設けられる、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記挿入部は、
前記旋回軸の軸方向に直交する平面で切断した断面形状が四角形をなし、
前記区画部材は、
前記刃物台の移動に合わせて伸縮するテレスコカバーであり、前記挿入部の断面形状に合わせて形成された四角形の貫通孔を形成され、
前記旋回軸は、
四角形の前記貫通孔の中央に配置される、請求項1又は請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
ワークを保持するワーク保持装置を、さらに備え、
前記刃物台は、
前記刃物台の移動に応じて前記ワーク保持装置に保持された前記ワークと接触するプッシャを取り付け可能であり、前記プッシャと連通される連通孔が形成され、
前記タレット本体は、
前記配管を通じて供給された流体を、前記連通孔を介して前記刃物台に取り付けられた前記プッシャに供給する連結部を有する、請求項1又は請求項2に記載の工作機械。
【請求項5】
制御装置を、さらに備え、
前記連結部は、
本体側連結部材と、
前記本体側連結部材を移動させる連結部駆動部と、
を有し、
前記制御装置は、
前記連結部駆動部を駆動し、前記本体側連結部材を前記連通孔に連結する連結処理と、
前記連結処理を実行した後、前記本体側連結部材から前記連通孔を通じて前記プッシャに流体を供給し、供給した流体の圧力に基づいて前記ワーク保持装置に保持された前記ワークの保持状態を判断する判断処理と、
を実行する、請求項4に記載の工作機械。
【請求項6】
前記連結部は、
前記プッシャを前記刃物台の作業位置に配置した場合、前記旋回軸の軸方向と平行な方向において前記連通孔と互いに対向する位置に設けられ、
前記連結部駆動部は、
気体の供給に応じて、前記旋回軸の軸方向と平行な方向において前記本体側連結部材を前記連通孔に近づく方向へ移動させる前進用シリンダ部と、
気体の供給に応じて、前記旋回軸の軸方向と平行な方向において前記本体側連結部材を前記連通孔から離れる方向へ移動させる後退用シリンダ部と、
を有する、請求項5に記載の工作機械。
【請求項7】
前記プッシャは、
前記ワークに接触する当接部材と、
前記当接部材を前記ワーク側へ付勢する弾性部材と、
前記連通孔を介して供給された流体を排出する排出口と、
を有し、
前記当接部材は、
前記ワークと接触していない状態では前記弾性部材の弾性力によって前記排出口を開放する位置に配置され、前記ワークと接触した状態では前記ワークから付与された力に応じて前記弾性部材を収縮させ前記排出口を閉塞する位置に配置され、
前記制御装置は、
前記判断処理において、前記プッシャに供給した流体の圧力の上昇に基づいて前記プッシャが前記ワーク保持装置に保持された前記ワークに接触したか否かを判断する、請求項5に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、工作機械における流体を流す配管の技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、工作機械において流体を流す配管に係わる技術が種々提案されている。例えば、下記特許文献1には、刃物台本体に軸支されたタレット軸を回転させ、タレット軸の先端に固定された刃物台を回転させる旋盤について記載されている。この旋盤のタレット軸の内部には、タレットに連通する配管が形成されている。この配管には、切削液や作動油などの流体が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-25403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、工作機械は、必要な機能などに応じてタレット軸の構成が変更される。タレット軸の構成によっては、配管をタレット軸の内部に設けることが困難となる場合がある。一方で、刃物台本体は、タレットの工具をワークに当てて加工を行なう間、タレット軸を安定して軸支する必要があり、一定の剛性が要求される。このため、剛性を高めつつ、配管を配置できる刃物台本体が必要となってくる。
【0005】
本願は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、タレット本体の剛性を高め、且つ、タレット本体に配管の配置スペースを確保できる工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本明細書は、旋回軸と、前記旋回軸に取り付けられた刃物台と、前記旋回軸を回転させ前記刃物台を回転させる刃物台駆動源を設けられたタレット本体と、前記刃物台が設けられた加工室と、前記刃物台駆動源が設けられた機械室とを区画する区画部材と、前記機械室から前記加工室の前記刃物台へ流体を供給する配管と、を備え、前記タレット本体は、前記区画部材に挿入される挿入部を、断面が矩形となる形状で形成され、且つ、前記挿入部の内部に前記旋回軸が設けられ、前記配管は、断面が矩形の前記挿入部の内部で、且つ、前記旋回軸の外側となる位置に配設される、工作機械を開示する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の工作機械によれば、区画部材によって加工室と機械室とを区画し、加工室で発生した切粉等が機械室へ侵入することを抑制できる。また、この区画部材に挿入する装着本体部の挿入部を、断面が矩形となる形状で形成することで、他の形状(丸形など)のタレット本体に比べて断面二次モーメントを大きくすることができ、タレット本体の剛性を高めることができる。そして、矩形の挿入部において、旋回軸の外側となる位置に配管を配置することで、旋回軸内部とは別に配管を配置するスペースを確保できる。従って、タレット本体の剛性を高め且つ、タレット本体に配管の配置スペースを確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施例の工作機械の斜視図。
図2】複合加工機の主要な構造を示す斜視図。
図3】複合加工機の主要な構造を示す右側面図。
図4】工作機械のブロック図。
図5】左側タレット及びテレスコカバーを加工室側から見た斜視図。
図6】左側タレット及びテレスコカバーを機械室側から見た斜視図。
図7】左側タレット及びテレスコカバーを機械室側から見た斜視図。
図8】テレスコカバーを加工室側から見た平面図。
図9】左側タレットの断面図。
図10】連結部、プッシャ、刃物台の断面図。
図11図10の連結部の拡大図。
図12図10のプッシャの拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の工作機械を具体化した一実施例について、図を参照しつつ詳しく説明する。図1は、本実施例の工作機械1を正面側の右上方から見た斜視図を示している。以下の説明では、図1に示すように、工作機械1を正面から見た方向を基準として、機械幅方向であって装置の設置面に水平な方向をZ軸方向(左右方向)、装置の設置面に平行でZ軸方向に垂直な方向をY軸方向(前後方向)、Z軸方向及びY軸方向の両方に垂直な方向をX軸方向(上下方向)と称して説明する。また、図1は、後述するワーク搬送装置7、スピンドルモータ27など、工作機械1の一部の部品の図示を省略している。また、図1は、前方に向かって回転する操作盤3の動作状態を連続的に図示している。
【0010】
(工作機械1の構成)
図1に示すように、工作機械1は、前面を機体カバー2によって覆われており、機体カバー2の前方に操作盤3が設けられている。操作盤3は、ユーザインタフェースであり、機体カバー2の前面に設けられ、タッチパネル、押しボタンなどを備えている。尚、図1は、機体カバー2の一部(左正面扉など)を取り外した状態を示している。また、機体カバー2の内部には、後述する複合加工機10(図2参照)が収納されている。工作機械1は、機械正面の中央部分を間に挟んだ左右両側に右正面扉4と、左正面扉(図示略)が設けられている。左正面扉は、右正面扉4と左右対称な構成となっている。各正面扉の後方には、後述する左側及び右側加工装置11L,11RによりワークWに対する加工を実行する加工室5が設けられている。ユーザは、右正面扉4等を開けることで加工室5にアクセス可能となっている。
【0011】
操作盤3は、例えば、工作機械1の前面に設けられたスライド装置3Aによって、機械正面の中央から右正面扉4の右端部の位置までZ軸方向と平行な方向にスライド移動可能となっている。また、工作機械1の前面側の上部には、自動工具交換装置6が設けられている。自動工具交換装置6は、後述する工具主軸装置14(図2参照)の交換用のツールT(回転工具や切削工具)が収納され、工具主軸装置14のツールTの交換を実行する。また、工作機械1の上部には、ワーク搬送装置7(図4参照)が設けられている。ワーク搬送装置7は、例えば、ガントリ式の搬送装置であり、他の工作機械や複合加工機10との間でワークWの受け渡しを実行する。
【0012】
図2は、工作機械1の機体カバー2内に設けられる複合加工機10の主要な構造の斜視図を示している。また、図3は、複合加工機10の右側面図を示している。尚、以下の説明では、概ね、工作機械1の左側に配置された装置に関する符号に「L」の文字を、右側に配置された装置に関する符号に「R」の文字を付加する。
【0013】
図1図3に示すように、複合加工機10は、左側加工装置11L、右側加工装置11R、工具主軸装置14を備えている。左側正面扉の後方には、左側加工装置11Lの加工室5が設けられている。左側加工装置11Lは、例えば、タレット型の旋盤であり、左側主軸装置12Lと、左側タレット13Lを備えている。左側主軸装置12Lは、例えば、ワークWの種類に応じた複数のチャック爪15と、チャック爪15を駆動するチャック本体16を着脱可能となっている。左側主軸装置12Lは、チャック本体16に取り付けられた複数のチャック爪15によってワークWを挟持し、Z軸方向と平行な主軸を中心にワークWを回転させる。左側タレット13Lは、複数のタレット工具19(回転工具や切削工具)を取り付け可能な刃物台21を有し、タレット工具19の割り出しを実行する。左側タレット13Lは、割り出したタレット工具19によって左側主軸装置12Lに挟持されたワークWに対する加工(切削加工や穴開け加工など)を、左側の加工室5で実行する。尚、右側加工装置11Rは、主軸(装置)の向きを除いて、左側加工装置11Lと同一の構成となっており、右側主軸装置12Rと、右側タレット13Rを備えている。
【0014】
右側主軸装置12Rの主軸は、Z軸方向と平行であり、左側主軸装置12Lの主軸とZ軸方向で対向している(向き合っている)。従って、左側及び右側加工装置11L,11Rは、左右対称に配置された所謂、対向2軸型の旋盤である。尚、左側及び右側加工装置11L,11Rは、左右対称な構成でなくとも良い。また、右側加工装置11Rは、左側加工装置11Lと同一構成でなくとも良い。例えば、左側加工装置11L及び右側加工装置11Rの少なくとも一方が、マシニングセンタなどの他の種類の加工装置でも良い。
【0015】
また、複合加工機10は、NC旋盤とマシニングセンタの両方の機能を備えた加工機である。複合加工機10は、左側及び右側加工装置11L,11R、及び工具主軸装置14を一つのベッド22の上に備えている。Z軸方向における複合加工機10の略中央には、工具主軸装置14が設けられている。工具主軸装置14は、左側及び右側タレット13L,13Rに挟まれるようにして機体中央に配置されている。工具主軸装置14は、旋盤である左側及び右側加工装置11L,11Rでは難しい加工を実行する。工具主軸装置14は、例えば、左側及び右側主軸装置12L,12Rのそれぞれに把持されたワークWに対しツールTを用いて旋盤加工の他にも穴あけ加工などをすることができ、左側及び右側タレット13L,13Rでは難しい深さや角度でのワーク加工を可能にするものである。
【0016】
左側及び右側主軸装置12L,12Rは、左側及び右側タレット13L,13Rの位置に比べ機体前方側に配置されている。左側及び右側タレット13L,13Rと工具主軸装置14は、何れも主軸(Z軸)と直交する機体前後方向と機体上下方向に移動する。特に、工具主軸装置14の移動方向が水平なY軸方向と鉛直なX軸方向であるのに対し、左側及び右側タレット13L,13Rの移動方向は、Y軸方向及びX軸方向を45度傾けたYL軸とXL軸である(図3参照)。
【0017】
工作機械1のベッド22は、機体前後方向における複合加工機10の寸法を抑えるため、スラントベッド構造となっている。左側及び右側主軸装置12L,12Rの搭載面は、前を低くした前側傾斜面23となっている。逆に、機体後方側に配置された左側及び右側タレット13L,13Rの搭載面は、後を低くした後側傾斜面24(図3参照)となっている。そして、装置全体の配置が前傾になるように、前側傾斜面23は低い位置に形成され、後側傾斜面24は高い位置に形成されている。左側及び右側主軸装置12L,12Rは同じ構造であり、円筒形状の主軸台25にスピンドルが回転自在に組み込まれている。左側及び右側主軸装置12L,12Rの各々は、装置の外側に設けられたスピンドルモータ27の駆動に基づいてワークWを回転させる。
【0018】
左側及び右側主軸装置12L,12Rの各々の主軸台25やスピンドルモータ27は、主軸スライド29に搭載されている。左側及び右側主軸装置12L,12Rの各々には、その主軸スライド29を前側傾斜面23に沿ってZ軸方向と平行な方向に移動させる駆動機構が設けられている。主軸スライド29は、ベッド22の前側傾斜面23に設けられた一対のガイドレール31に沿ってZ軸方向に移動可能となっている。一対のガイドレール31は、前側傾斜面23の左側と右側にそれぞれ設けられている。主軸スライド29の下面には、一対のガイドブロック33(図3参照)が固定されている。一対のガイドブロック33は、一対のガイドレール31の各々に摺動可能に取り付けられている。主軸スライド29は、下面が前側傾斜面23の傾斜角度に合わせられている。主軸台25及びスピンドルモータ27は、前側傾斜面23から前方側に大きく突き出ないように、上下に搭載されている。
【0019】
左側及び右側主軸装置12L,12Rは、ボールネジ機構によってZ軸方向の移動が可能であり、2本のガイドレール31の間にはZ軸方向に平行なネジ軸35が軸受を介して支持されている。また、左側及び右側主軸装置12L,12Rの各々は、機体幅方向の外側にZ軸サーボモータ37(図3参照)を備えている。Z軸サーボモータ37の回転軸は、ネジ軸35に連結されている。一方、主軸スライド29にはネジ軸35が通ったナット部材が固定されている。これにより、左側及び右側主軸装置12L,12Rの各々は、Z軸サーボモータ37を駆動してネジ軸35を回転させることで、主軸スライド29をZ軸方向の任意の位置に直線移動させることができる。
【0020】
また、工具主軸装置14の前方側には、自動工具交換装置6が設けられている。工具主軸装置14は、自動工具交換装置6との間でツールT(主軸ヘッド工具)を取り替え可能となっている。自動工具交換装置6は、複数のツールTを収納したツールマガジンを装置上部に備え、工具主軸装置14と向かい合った位置に設けられたツールチェンジャによって、ツールマガジンから交換用のツールTを、工具主軸装置14の工具交換位置まで搬送する。
【0021】
工作機械1は、左側及び右側加工装置11L,11Rの各々でワークWの加工を実行中に、工具主軸装置14の工具交換も実行できる。工作機械1は、例えば、Z軸方向における工具主軸装置14の左右両側にそれぞれ配置された分離シャッタ41(図2参照)を備えている。工作機械1は、駆動機構(図示略)によってY軸方向に2枚の分離シャッタ41を個別に移動可能となっている。工作機械1は、2枚の分離シャッタ41により、左側加工装置11L、右側加工装置11Rの各々の加工室5と、工具主軸装置14の工具交換スペースを分離する。これにより、各装置がクーラントや切粉の影響を受けないようにすることができる。また、一方の分離シャッタ41だけを閉じることにより、工具交換スペースを含めた空間を一方のタレットや工具主軸装置14の加工室5に拡張することもできる。
【0022】
また、図4に示すように、工作機械1の制御装置43は、例えば、CPU43Aと、記憶装置43Bを備え、コンピュータを主体とする処理装置である。記憶装置43Bは、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ等を備える。制御装置43は、各装置(左側加工装置11Lやワーク搬送装置7等)と電気的に接続され、各装置を制御可能となっている。記憶装置43Bには、各種の制御プログラム44が記憶されている。制御プログラム44には、例えば、ワークWに対する加工において左側及び右側加工装置11L,11Rの各々の動作を制御するNCプログラム、ワーク搬送装置7の動作を制御するプログラム、各種の信号を処理するラダー回路用のプログラム等が含まれている。また、制御プログラム44には、後述する連結部110の連結処理や、着座検出用エアを用いたワークWの保持状態の判断処理を実行するプログラムが含まれている。
【0023】
(左側及び右側タレット13L,13Rの駆動構成)
次に、左側及び右側タレット13L,13Rの駆動構成について説明する。尚、上記したように、右側タレット13Rは、装置(旋回軸81)の向きを除いて、左側タレット13Lと同一構成となっている。このため、以下の説明では、左側タレット13Lの駆動構成について主に説明し、右側タレット13Rの駆動構成についての説明を省略する。また、図3は、右側タレット13Rを図示しているが、この図3を用いて左側タレット13Lの説明を行なう。図5は、左側タレット13Lと、後述するテレスコカバー74の斜視図を示している。図2図3図5に示すように、左側タレット13Lは、円盤状の刃物台21と、刃物台21を回転可能に保持するタレット本体53を備えている。刃物台21の外周面には、タレット工具19を取り付け可能なホルダ21Aが設けられている。本実施例の刃物台21には、例えば、15個のホルダ21Aが周方向に等間隔に設けられている。ホルダ21Aには、後述するプッシャ54が取り付け可能となっている。
【0024】
タレット本体53は、Z軸方向における基端部(左側、右側タレット13Rであれば右側)に割り出し用サーボモータ55が設けられている。タレット本体53は、制御装置43の制御に基づいて割り出し用サーボモータ55を回転させ刃物台21を回転させることで、任意のタレット工具19を円周上の所定の作業位置57に位置決めする。ここでいう作業位置57とは、ワークWに接触させて加工に使用するタレット工具19を配置する位置である。図5においては、作業位置57にプッシャ54を配置した状態を示している。刃物台21には、バイトやドリルなどのタレット工具19が取り付けられており、バイト等の先端をZ軸方向の外側に向けた状態でタレット工具19が取り付けられている。従って、加工時には、左側主軸装置12LがZ軸方向に移動することにより、向かってくるワークWに対して作業位置57に配置したタレット工具19が機体中央側から当てられることになる。
【0025】
左側タレット13Lは、作業位置57に割り出したタレット工具19の位置を調整するための移動機構を備えている。左側タレット13Lは、この移動機構により、Z軸に直交するXY平面上であって、水平方向(Y軸方向)に対して45度の角度をもったYL軸方向と、鉛直方向(X軸方向)に対して45度の角度をもったXL軸方向に刃物台21を移動させる。
【0026】
詳述すると、図3に示すように、YL軸方向は、例えば、Y軸方向に対して下方へ45度だけ傾いた方向である。XL軸方向は、例えば、X軸方向に対して後方へ45度だけ傾いた方向である。後側傾斜面24には、YL軸と平行にYL軸ガイドレール59が設けられている。後側傾斜面24の上方には、略三角形状のベーススライド61が設けられている。ベーススライド61の一辺には、YL軸ガイドレール59に摺動可能に取り付けられたガイド部63が設けられている。また、ガイド部63が設けられた辺と90度で隣り合う辺には、刃物台21を搭載する搭載面を形成され、その搭載面にXL軸ガイドレール65が設けられている。左側タレット13Lのタレット本体53の下面には、ガイド部67に摺動可能に取り付けられるガイド部67が設けられている。左側タレット13Lは、XL軸ガイドレール65に対してガイド部67を摺動可能に噛み合せることで、XL軸と平行な加工移動線L1に沿って移動可能となっている。
【0027】
ベーススライド61及びYL軸ガイドレール59には、ボールネジ機構が設けられている。また、タレット本体53とXL軸ガイドレール65には、ボールネジ機構が設けられている。YL軸ガイドレール59には、YL軸と平行な方向に配置されたネジ軸が軸受によって支持され、XL軸ガイドレール65には、XL軸と平行な方向に配置されたネジ軸が軸受によって支持されている。各ネジ軸は、ベーススライド61及びタレット本体53の各々に設けられたナット部材に挿入されている。YL軸ガイドレール59の下端には、YL軸ガイドレール59のネジ軸を回転させるYL軸サーボモータ69が設けられている。また、XL軸ガイドレール65の上端には、XL軸ガイドレール65のネジ軸を回転させるXL軸サーボモータ70が設けられている。制御装置43は、YL軸サーボモータ69及びXL軸サーボモータ70の回転を制御することによって、刃物台21(割り出したタレット工具19又はプッシャ54)のYL軸及びXL軸の各軸方向の移動を制御するほかに、両軸方向の移動を合成した水平方向の移動を制御可能となっている。
【0028】
(加工室5について)
次に、工作機械1の加工室5を区画する構成について説明する。工作機械1は、2つの加工室5を備え、左側の加工室5と、右側の加工室5が左右方向で対象な構成となっている。このため、以下の説明では、左側の加工室5について説明する。図1に示すように、左側の加工室5は、装置カバー71によって、機械室73と区画されている。機械室73には、上記したスピンドルモータ27(図2参照)、割り出し用サーボモータ55などの各装置を駆動させる駆動源や、Z軸サーボモータ37やXL軸サーボモータ70などの各装置を移動させる駆動源が配置されている。装置カバー71は、左右方向の右側に配置された加工室5と、左側に配置された機械室73との空間を分離している。これにより、加工室5で発生した切粉やクーラントが機械室73へ浸入することを、装置カバー71によって防止できる。
【0029】
装置カバー71は、左側主軸装置12Lを覆う主軸装置カバー71Aと、左側タレット13Lを覆うタレットカバー71Bを有している。左側主軸装置12Lは、チャック爪15を保持するチャック本体16を、主軸装置カバー71Aに設けられた挿入孔から加工室5に突出させ、チャック本体16よりも基端側を装置カバー71によって覆われている。主軸装置カバー71Aは、例えば、上下方向において主軸台25の位置に合わせて設けられたテレスコカバーと、スピンドルモータ27の位置に合わせて設けられたテレスコカバーの2つのテレスコカバーを連結して構成されている。各テレスコカバーは、複数のカバー部材をZ軸方向に重ねて構成されており、左側主軸装置12LのZ軸方向の移動に合わせて伸縮する。図1は、主軸装置カバー71Aの下方のテレスコカバーを伸ばした状態を示している。
【0030】
タレットカバー71Bは、主軸装置カバー71Aの上方に設けられている。タレットカバー71Bは、タレット本体53の形状に合わせて形成され、タレット本体53を外側から覆っている。タレットカバー71Bは、Z軸方向の右端部に、図5に示すテレスコカバー74を有している。図5図7に示すように、テレスコカバー74は、XL軸方向及びYL軸方向に伸縮可能に構成された複数のカバー部材75と、枠部材77とを有している。複数のカバー部材75は、例えば、金属製の部材であり、最も外側のカバー部材75から最も内側のカバー部材75に行くに従って、順番により内側に重ね合わせて構成されており、刃物台21のXL軸方向及びYL軸方向へ移動に合わせて連結された状態のまま伸縮する。図5図7は、テレスコカバー74の前方側の辺部分である前辺部74A側に刃物台21を最も近づけた状態、即ち、刃物台21を左側タレット13Lに最も近づけた状態を示している。前辺部74A側のカバー部材75は、前辺部74A内に重なって収容されている。また、図5図7は、テレスコカバー74の上方側の辺部分である上辺部74B側へ刃物台21を最も近づけた状態を示している。
【0031】
枠部材77は、重ね合わせられたカバー部材75の最も内側に取り付けられ、カバー部材75の伸縮に合わせてXL軸方向及びYL軸方向に移動する。枠部材77は、例えば、Z軸方向に所定の厚みを有する金属板である。図8に示すように、枠部材77には、貫通孔77Aが形成されている。貫通孔77Aは、Z軸方向(枠部材77の厚さ方向)に枠部材77を貫通して形成されている。Z軸方向に垂直な平面で切断した貫通孔77Aの断面形状は、例えば、隣り合う辺がXL軸方向及びYL軸方向の各々に沿った正方形をなしている。尚、貫通孔77Aの形状は正方形に限らず、長方形でも良く、3角形、5角形、6角形などの他の多角形でも良い。
【0032】
タレット本体53は、貫通孔77Aに挿入され、枠部材77に対して固定されている。従って、テレスコカバー74は、貫通孔77Aに挿入されたタレット本体53の移動に合わせてXL軸方向及びYL軸方向に伸縮する。以下の説明では、タレット本体53のうち、貫通孔77Aに挿入されている部分を、挿入部53Aと称して説明する。タレット本体53は、貫通孔77Aから刃物台21側に突出させた部分を環状カバー79(図5参照)によって覆われている。尚、図6図7は、環状カバー79を取り外した状態を示している。環状カバー79は、例えば、刃物台21よりも半径が小さい円環状の金属部材であり、刃物台21の背面(テレスコカバー74側の面)に固定されている。環状カバー79は、Z軸方向におけるテレスコカバー74と刃物台21との間に配置されるタレット本体53の一部(タレット本体53の刃物台21との接続部分)を外側から覆うように配置されている。環状カバー79内には、後述する連結部110(図6参照)やクーラント供給部111(図6参照)が配置されている。Z軸方向における環状カバー79の長さL2(図5参照)は、Z軸方向における刃物台21の長さL3に比べて短くなっている。従って、刃物台21は、Z軸方向における自身の厚み(長さL3)よりも短い長さL2の隙間をテレスコカバー74との間に設け、テレスコカバー74に近接して配置されている。このように、刃物台21をよりテレスコカバー74に近い位置に配置することで、枠部材77や貫通孔77Aに必要な剛性を小さくでき、且つ、装置全体の小型化を図ることができる。尚、長さL2は、長さL3よりも長くとも良い。
【0033】
図9は、左側タレット13Lの断面図を示している。尚、図9は、環状カバー79の図示を省略している。また、図9は、例えば、加工室5側を、作業位置57を通りXL軸方向に平行な平面で切断し、機械室73側を後述する旋回軸81を通りYL軸方向に平行な平面で切断した断面を示している。タレット本体53は、旋回軸81、ハウジング83、駆動軸86を備えている。ハウジング83は、タレット本体53の外側を覆うカバーである。旋回軸81は、略円筒形状をなし、ハウジング83内に設けられ、ハウジング83に取り付けられた軸受部材87によって旋回中心82を中心に回転可能となっている。旋回中心82は、Z軸方向と平行な軸である。軸受部材87は、例えば、ボールベアリングである。
【0034】
割り出し用サーボモータ55の出力軸は、遊星歯車や平歯車を有する回転伝達機構89を介して旋回軸81の基端部に連結されている。刃物台21は、タレット本体53側にダイヤフラム型のベース部材21Bを有している。刃物台21は、旋回軸81の先端にベース部材21Bを固定され、旋回軸81と一体になって旋回中心82を中心に回転する。ここで、制御装置43は、左側タレット13Lの割り出したタレット工具19を加工位置まで移動させる際、刃物台21の回転中心と左側主軸装置12Lにおける主軸の回転中心とを結んだ直線がXL軸と平行になるようにYL軸方向の位置を調整する。この際の両方の回転中心を結んだ直線を加工移動線L1とする。従って、刃物台21のタレット工具19は、旋回割り出しによって加工移動線L1上に配置され、XL軸方向の移動によってワークWに対する加工を行なう位置を決定される。
【0035】
制御装置43は、左側タレット13Lのタレット本体53と前後方向で重なる位置に左側主軸装置12Lを移動させ、刃物台21をXL軸方向に移動させ、ワークWとZ軸方向で互いに対向する加工位置にタレット工具19を配置させる。その際、左側から移動してくる左側主軸装置12Lと、XL軸方向の上方から移動してくるタレット本体53(環状カバー79など)が干渉しないように、刃物台21の外径が長くなっている。しかしながら、刃物台21を大きくすると、旋回中心82からタレット工具19まで距離が長くなり、タレット工具19をワークWに当てる加工時の加工外力に対する刃物台21の剛性が低くなる。こうした剛性の低下はミクロン単位で行う加工精度の低下を招く。
【0036】
本実施例の刃物台21は、このような剛性の低下を抑制するため、刃物台21の外径の長さに応じてベース部材21Bを大きく(ベース部材21Bの外径を長く)している。さらに、左側タレット13Lは、タレット本体53の先端であって、径方向のタレット本体53の外側にクロスローラベアリング(以下、単に「ベアリング」という)90を設け、ベアリング90によってベース部材21Bを支持している。さらに、ベース部材21Bは、ベアリング90の外側に配置されベアリング90によって支持される部分を他の部分に比べて肉厚に形成されている。これにより、ベース部材21Bを内側からタレット本体53によって支持し、ベース部材21Bの剛性を高め、加工外力に対してタレット工具19を安定して支持することができる。
【0037】
また、本実施例の左側タレット13Lは、タレット工具19として回転工具を取り付け可能となっている。タレット本体53は、回転工具を駆動する駆動源として、工具用サーボモータ91を基端部に備えている。タレット本体53は、筒状の旋回軸81がハウジング83内に回転可能に組み付けられ、旋回軸81の内側に筒状の固定軸93が同軸の状態で設けられている。そして、駆動軸86は、固定軸93の内側で回転可能に保持され、旋回中心82を中心に回転する。駆動軸86は、例えば、略円筒形状の旋回軸81の中心を通って基端部を工具用サーボモータ91に連結されている。駆動軸86は、軸受92によって固定軸93内で回転可能に支持されている。
【0038】
固定軸93の先端は、刃物台21の内部で軸受カバー94に固定されている。刃物台21は、例えば、内部の軸受カバー94の位置を固定された状態で、旋回軸81と一体に回転する。軸受カバー94の中には、工具用シャフト95が回転自在に組み込まれている。工具用シャフト95は、刃物台21の半径方向に配置され軸受96によって回転可能に支持されている。駆動軸86の先端は、刃物台21の内部に挿入され、直交する工具用シャフト95と傘歯車97を歯合させて連結されている。刃物台21に装着されたタレット工具19(回転工具)は、工具用シャフト95の先端部に設けられたクラッチ部99に連結されることで、工具用サーボモータ91の駆動(駆動軸86の回転)に応じてドリル等を回転させる。
【0039】
(配管について)
本実施例の複合加工機10は、機械室73から加工室5へ供給する流体として、エア及びクーラントを供給する。流体の一例として、本実施例では、着座検出用エア、クーラント、前進用エア、後退用エアを採用している。着座検出用エアは、左側主軸装置12Lのチャック爪15に挟持されたワークWにプッシャ54が接触したか否かを判断するためのエアである。クーラントは、例えば、ホルダ21Aに取り付けられたノズルやタレット工具19に設けられたノズルから噴出され、加工時の潤滑や冷却、切粉の洗浄などに用いられる。前進用エアは、プッシャ54に着座検出用エアを供給する連結部110を刃物台21側へ移動(前進)させるための駆動用エアである。後退用エアは、連結部110を刃物台21から離れる方向へ移動(後退)させるための駆動用エアである。
【0040】
図4に示すように、工作機械1は、各種のエアを供給するエア供給装置100A、クーラントを供給するクーラント供給装置100Bを備えている。図6に示すように、タレット本体53の左側主軸装置12L側(XL軸の下方側)であって挿入部53Aに近い部分には、着座検出用エアを供給する配管101の開口が設けられている。また、配管101よりも刃物台21側となる位置には、クーラントを供給する配管102の開口が設けられている。図6及び図7に示すように、挿入部53Aの外形は、貫通孔77Aの形状に合わせて正方形で形成されている。図8に示すように、貫通孔77A内の挿入部53Aには、旋回軸81、固定軸93、駆動軸86がZ軸方向と平行な方向に貫通している。駆動軸86の中心、即ち、旋回中心82は、例えば、正方形の貫通孔77A及びタレット本体53の中心を通ってZ軸方向と平行な方向に沿っている。換言すれば、旋回軸81や駆動軸86は、正方形の貫通孔77Aの中央に配置されている。例えば、旋回軸81及び旋回軸81内に配置された部材(固定軸93、駆動軸86)は、貫通孔77A内の挿入部53Aの断面積において50%程度の面積を占めている。
【0041】
配管101,102は、貫通孔77Aを通るタレット本体53(挿入部53A)において、旋回軸81の外側に配設されている。具体的には、配管101,102は、例えば、貫通孔77A内において、旋回軸81よりも外側の位置で、左側主軸装置12L側(前辺部74A)の位置で、且つテレスコカバー74の上辺部74B側に設けられている。図6に示すように、タレット本体53は、Z軸方向におけるテレスコカバー74と刃物台21の間となる位置に、連結部110と、クーラント供給部111とを有している。例えば、タレット本体53における貫通孔77A(テレスコカバー74)よりも刃物台21側に突出した部分には、保持部材113が取り付けられている。連結部110及びクーラント供給部111は、この保持部材113に固定されている。連結部110、クーラント供給部111、及び保持部材113は、上記した環状カバー79(図5参照)によって外から覆われている。配管101の先端は、挿入部53A、保持部材113内を通じて連結部110まで延びている。制御装置43は、エア供給装置100Aを駆動して配管101を通じて連結部110まで着座検出用エアを供給する。また、配管102の先端は、挿入部53A、保持部材113内を通じてクーラント供給部111まで延びている。制御装置43は、クーラント供給装置100Bを駆動しクーラントをクーラント供給部111まで供給する。
【0042】
また、図7に示すように、XL軸方向におけるタレット本体53の上方側であって挿入部53Aに近い部分には、前進用エアを供給する配管103が設けられている。また、配管103よりも刃物台21側となる位置には、後退用エアを供給する配管104が設けられている。図8に示すように、配管103,104は、貫通孔77Aを通るタレット本体53(挿入部53A)において、旋回軸81の外側に配設されている。具体的には、配管103,104は、例えば、貫通孔77A内において、旋回軸81よりも外側で、配管101,102(旋回軸81を間に挟んで前辺部74Aとは反対側)で、且つ上辺部74B側の位置に設けられている。図6に示すように、配管103,104の先端は、貫通孔77Aを通過した後、タレット本体53から外に取り出され、環状カバー79(図5参照)内においてタレット本体53の外周を回って連結部110まで配設されている。制御装置43は、エア供給装置100Aを駆動し配管103,104を通じて連結部110まで前進用エアや後退用エアを供給する。
【0043】
尚、上記した流体の種類は一例である。例えば、工作機械1は、機械室73から加工室5へ供給する流体として、エア又はクーラントの一方のみを用いる構成でも良い。また、工作機械1は、エアの用途として、切粉を吹き飛ばす洗浄の目的でエアを用いても良い。また、本開示の流体は、エア(空気)以外の気体(窒素など)でも良く、クーラント以外の液体(冷却機能の低い潤滑油など)でも良い。
【0044】
また、図8に示す配管101~104の位置は、一例である。例えば、4つの配管101~104を全て旋回軸81よりも左側主軸装置12L側に配置しても良い。また、配管101~104を、図8における旋回軸81よりも下方側に配置しても良い。また、4つの配管101~104の何れかを旋回軸81内に配設しても良い。
【0045】
図6に示すように、刃物台21のテレスコカバー74側の面には、着座検出用エアを供給するための連通孔105と、クーラントを供給するための連通孔106が設けられている。連通孔105,106は、例えば、15個のホルダ21Aの各々に対応して設けられ、刃物台21の周方向において所定の回転角度(24度)ごとに設けられている。例えば、刃物台21内には、背面に設けられた15個の連通孔105の各々から各ホルダ21Aに通じる通路(後述する通路131)が設けられている。また、刃物台21内には、背面に設けられた15個の連通孔106の各々から各ホルダ21Aに通じる通路が設けられている。連結部110は、例えば、作業位置57に配置されたホルダ21Aに通じる連通孔105と、Z軸方向(旋回軸81)と平行な方向で対向する位置に配置されている。また、クーラント供給部111は、例えば、作業位置57に配置されたホルダ21Aに通じる連通孔106と、Z軸方向(旋回軸81)と平行な方向で対向する位置に配置されている。尚、刃物台21は、連通孔105又は連通孔106の一方のみを備える構成でも良い。また、刃物台21は、連通孔105を1つだけ備える構成でも良い。この場合、プッシャ54を取り付けるホルダ21Aを、連通孔105と繋がるホルダ21Aに限定しても良い。
【0046】
図10は、連結部110、プッシャ54、刃物台21の断面図を示している。図11は、連結部110の拡大図を示している。まず、連結部110について説明する。図10及び図11に示すように、連結部110は、シリンダ121と、連結ロッド122と、連結部駆動部123とを有している。シリンダ121は、例えば、金属製の部材であり、内部に連結ロッド122を収容する空間が設けられている。シリンダ121の基端部(テレスコカバー74側の端部)は、ボルト125によって保持部材113に固定されている。
【0047】
連結ロッド122は、金属製の筒状の部材であり、径方向の外側に広がるフランジ形状(円板形状)のピストン122Aを有する。連結ロッド122は、ピストン122Aや本体部分と、シリンダ121との間に密閉部材127を挟んだ状態で、Z軸方向と平行な方向、即ち、旋回軸81と平行な方向に移動可能にシリンダ121によって保持されている。密閉部材127は、例えば、Oリングなどの密閉性の高い弾性部材である。連結ロッド122内には、着座検出用エアを供給するエア通路122Bが形成されている。エア通路122Bの基端側の開口は、保持部材113まで配設された配管101(着座検出用エアの配管)と接続されている。
【0048】
また、エア通路122Bの先端側の開口は、Z軸方向と平行な方向において、連通孔105と対向する位置に配置される。換言すれば、作業位置57に所定のホルダ21Aを割り出すと、そのホルダ21Aに通じる連通孔105が、Z軸方向と平行な方向においてエア通路122Bの先端の開口と互いに対向する位置に配置される。エア通路122Bの先端部には、弾性部材129が取り付けられている。弾性部材129は、例えば、連結ロッド122の先端の外周を覆う環状のゴムである。弾性部材129は、エア通路122Bの先端を連通孔105に近づけた場合に、刃物台21の背面に密着する。これにより、エア通路122Bの先端の開口と、連通孔105とを対向させ、弾性部材129によって密閉した空間を形成することができる。
【0049】
連結部駆動部123は、前進用シリンダ部123A、後退用シリンダ部123Bを有し、Z軸方向と平行な方向に連結ロッド122を移動させる。前進用シリンダ部123Aは、例えば、Z軸方向におけるピストン122A(フランジ部分)の基端側の面と、シリンダ121の内壁とで形成される空間である。前進用エアの配管103の先端は、シリンダ121に連結され、前進用シリンダ部123Aと連通している。従って、制御装置43は、エア供給装置100Aを駆動して配管103に前進用エアを供給することで、連結ロッド122を連通孔105側へ前進させることができる。連結ロッド122は、前進することで弾性部材129を刃物台21の背面に密着させ、エア通路122Bと連通孔105を連通させる。制御装置43は、エア供給装置100Aから配管101へ着座検出用エアを供給することで、エア通路122Bを通じて連通孔105へ着座検出用エアを供給できる。
【0050】
また、後退用シリンダ部123Bは、例えば、Z軸方向におけるピストン122A(フランジ部分)の先端側の面と、シリンダ121の内壁とで形成される空間である。後退用エアの配管104の先端は、シリンダ121に連結され、後退用シリンダ部123Bと連通している。従って、制御装置43は、エア供給装置100Aを駆動して配管104に後退用エアを供給することで、連結ロッド122をテレスコカバー74側へ後退させることができる。連結ロッド122は、後退することで刃物台21と弾性部材129とが離間し、連通孔105との連結を解除された状態となる。制御装置43は、プッシャ54を使用するタイミングに合わせて前進用エアを供給して連結部110の連結を実行し、プッシャ54の使用が終了すると、後退用エアを供給して連結部110の連結を解除する。
【0051】
尚、図10は、連結部110(エア通路122B)と刃物台21(連通孔105)を連結した状態を示している。また、連結ロッド122は、本体側連結部材の一例である。本体側連結部材を移動させる連結部駆動部123は、エアシリンダに限らない。連結部駆動部123としては、油圧シリンダなどの他の流体圧を用いた駆動源でも良く、モータを駆動源としたアクチュエータ、偏心カム、ボールネジ機構などでも良い。
【0052】
次に、刃物台21及びプッシャ54について説明する。刃物台21に設けられた着座検出用エアを流す通路131は、連通孔105と、各ホルダ21Aに設けられた開口133とを連通している。図10は、作業位置57に配置したホルダ21Aにプッシャ54を取り付けてた状態を示しており、連通孔105は、通路131を通じてプッシャ54が取り付けられたホルダ21Aの開口133と連通している。
【0053】
図12は、図10のプッシャ54の拡大図を示している。図10及び図12に示すように、プッシャ54は、本体部141と、ロッド143と、当接部材145と、弾性部材147を有している。本体部141の基端部141Aは、複数のボルト151によってホルダ21Aに固定されている。また、本体部141内には、着座検出用エアを流す通路141Bと、挿入穴141Cが形成されている。通路141Bの一端は、開口133と接続され、通路141Bの他端は、挿入穴141Cと連通している。通路141Bは、挿入穴141Cと連通する排出口141Dから挿入穴141C内へ着座検出用エアを供給する。
【0054】
挿入穴141Cは、例えば、本体部141の先端部に形成され、Z軸方向と平行な方向に形成された略円筒形状の穴である。挿入穴141Cには、ロッド143が移動可能に挿入されている。ロッド143は、例えば、略円柱形状の金属部材であり、プッシャ54をホルダ21Aに取り付けた状態ではZ軸方向と平行な方向に軸方向を沿わせた状態で配置される。当接部材145は、ボルト153によってロッド143の先端に固定されている。当接部材145は、ワークWの形状に応じた構成となっている。例えば、円環状のワークWであれば、当接部材145は、3つ又に分岐した部材であり、分岐した先端部分にワークWを押圧する押圧部145Aをそれぞれ有する。
【0055】
ロッド143の基端部には、スライド部材155が設けられている。弾性部材147は、例えば、コイルバネ(圧縮バネ)であり、Z軸方向と平行な方向においてスライド部材155と挿入穴141Cの内壁(排出口141Dが形成された内壁)との間に配置されている。ロッド143は、当接部材145に外力を受けていない状態、即ち、当接部材145がワークWと接触していない状態では、弾性部材147によってテレスコカバー74側(左側主軸装置12L側)へ付勢される。ロッド143は、挿入穴141Cの係合部141Eと係合する位置に配置される。
【0056】
また、ロッド143は、ワークWによって当接部材145を押されるとワークWから離間する方向へ移動する。弾性部材147は、ロッド143の移動に合わせて収縮し、弾性変形に応じてロッド143をワークW側へ付勢する。また、スライド部材155には、排出口141Dの位置に合わせて閉塞部材149が設けられている。閉塞部材149は、例えば、環状のゴムであり、ロッド143がワークWから離間する方向へ移動すると、排出口141Dの周りの内壁に接触し、密閉された空間を形成する。尚、図10及び図12は、閉塞部材149によって排出口141Dを閉塞する位置にロッド143やスライド部材155を配置した状態を示している。
【0057】
図4に示すように、工作機械1は、着座検出用エアの圧力を検出する圧力センサ157を有する。制御装置43は、プッシャ54を用いて左側主軸装置12Lに保持されたワークWの保持状態を判断する場合、作業位置57に配置したプッシャ54によってワークWを押圧する。ロッド143が所定の位置まで移動し閉塞部材149によって排出口141Dが閉塞されると、着座検出用エアの圧力が上昇する。制御装置43は、例えば、プッシャ54を所定の位置まで移動させ、圧力センサ157によって検出した圧力が上昇したことを検出すると、左側主軸装置12LにワークWが保持されていると判断する。
【0058】
また、クーラント供給部111は、連結部110と同様に、連通孔106と連結され、クーラントを刃物台21に供給する。例えば、クーラント供給部111には、可動式の連結部材が設けられている。この連結部材は、クーラントを供給していない状態ではバネの弾性力によって連通孔106から離間する位置まで引き込まれ、クーラントが供給されるとクーラントの流圧によって連通孔106と連結される。これにより、クーラント供給装置100Bからホルダ21Aまでクーラントを供給することができる。尚、クーラント供給部111は、連結部110と同様に、エアシリンダなどの駆動源を備え、制御装置43の制御に基づいて連結と連結の解除を制御される構成でも良い。
【0059】
(ワークWの着座確認動作)
次に、制御装置43によるワークWの着座確認動作の一例について説明する。例えば、制御装置43は、ワーク搬送装置7によって左側主軸装置12LにワークWを配置する。制御装置43は、Z軸サーボモータ37を駆動して所定の位置まで左側主軸装置12Lを移動させる。この所定の位置は、後述するプッシャ54にワークWを接触させる検出位置から所定の距離だけ手前(左側)の位置である。また、制御装置43は、割り出し用サーボモータ55を駆動してプッシャ54が取り付けられたホルダ21Aを作業位置57に割り出す。制御装置43は、YL軸サーボモータ69及びXL軸サーボモータ70を駆動して割り出したプッシャ54を、Z軸方向においてワークWと対向する位置まで移動させる。
【0060】
また、制御装置43は、エア供給装置100Aから配管103に前進用エアを供給し、連結部110の連結ロッド122を連通孔105側へ前進させ、弾性部材129を刃物台21の背面に密着させる。エア通路122Bは、連通孔105と連通した状態となる(本開示の連結処理の一例)。
【0061】
次に、制御装置43は、エア供給装置100Aから連結部110に着座検出用エアを供給する。着座検出用エアは、連結部110から刃物台21の通路131を通じてプッシャ54に供給される。制御装置43は、Z軸サーボモータ37を駆動して左側タレット13Lを上記した所定の位置から右方向へ移動させ、加工対象のワークWに応じて設定された検出位置まで移動させる。プッシャ54のロッド143は、当接部材145とワークWとが接触することで、ワークWから離間する方向(右方向)へ移動する。スライド部材155は、弾性部材147を収縮させながら閉塞部材149によって排出口141Dを閉塞する。制御装置43は、圧力センサ157の検出値が所定の基準圧力以上になると、プッシャ54がワークWに接触した状態、即ち、左側主軸装置12LにワークWが保持されていると判断する(本開示の保持判断処理の一例)。このようにして、制御装置43は、着座検出用エアによってワークWの保持状態を判断できる。制御装置43は、ワークWの保持状態を判断すると、エア供給装置100Aから配管104に後退用エアを供給し、連結ロッド122を連通孔105から分離する。これにより、刃物台21の回転において、連結部110と刃物台21との干渉の発生を抑制できる。制御装置43は、タレット工具19の割り出し等を実行し、ワークWに対する加工を開始する。
【0062】
尚、制御装置43は、ワークWの脱落等によりプッシャ54とワークWとが接触せず、圧力センサ157の検出値が所定の基準圧力以上にならなかった場合、エラーの通知を実行しても良い。また、上記したワークWの保持状態の判断内容は、一例である。例えば、制御装置43は、ワークWの所定の溝にプッシャ54の押圧部145Aを挿入して溝内で押圧部145Aを移動させ、圧力センサ157の圧力を判断することで、左側主軸装置12Lに保持されたワークWの向き(表裏)を判断しても良い。即ち、本開示のワークWの保持状態とは、ワークWが挟持されているか否かの状態に限らず、他の状態でも良い。
【0063】
上記したように、本実施例のタレット本体53は、テレスコカバー74の貫通孔77Aに挿入部53Aを挿入される。挿入部53Aは、断面が四角形(矩形の一例)となる形状で形成され、且つ、内部に旋回軸81を設けられている。そして、各配管101~104は、断面が矩形の挿入部53Aの内部で、且つ、旋回軸81の外側となる位置に配設されている(図8参照)。ここで、一般的なタレット本体53では、刃物台21を支持する挿入部53Aの外形が円形となっている。しかしながら、本実施例のように旋回軸81内に駆動軸86を設ける場合や、あるいは他の電気的な配線などを旋回軸81内に設ける場合には、旋回軸81内に配管101~104を設けることが難しくなる。また、機械室73と加工室5とをテレスコカバー74で分離する場合、タレット本体53の外で機械室73から刃物台21に配管101~104を配設することは難しい。一方で、配管101~104を設けるために旋回軸81や円形の挿入部53Aの外形を大きくすると剛性が低下する虞がある。また、図8に示すように、テレスコカバー74の貫通孔77Aに挿入部53Aを挿入する態様では、旋回軸81の外径を長くすればするほど、左側主軸装置12Lと旋回軸81との距離が離れる。即ち、刃物台21と左側主軸装置12Lとの距離が離れるため、刃物台21の外径を長くする(刃物台21を大きくする)必要が生じる。好適には、図8に示すように、テレスコカバー74の左側主軸装置12L側(前辺部74A側)の複数のカバー部材75を全て折りたたんだ状態で、前辺部74Aに旋回軸81を可能な限り近づけることで、左側主軸装置12Lと旋回軸81の距離を縮めることができ、刃物台21を小型化することが可能となる。
【0064】
そこで、本実施例の挿入部53Aは、正方形に形成されている。これにより、円形の挿入部53Aに比べて断面二次モーメントを大きく、刃物台21を支える首部分の剛性を高めることができる。また、図8に示すように、挿入部53Aを正方形とすることで、旋回軸81を前辺部74A側に可能な限り近づけつつ、旋回軸81が設けられていない領域に配管101~104を通すスペースを確保することができる。従って、タレット工具19をワークWに当てる加工時の加工外力に対する刃物台21(刃物台21を支持するタレット本体53)の剛性を高め、且つ、タレット本体53に配管101の配置スペースを確保できる。
【0065】
また、刃物台21は、タレット工具19として回転工具を取り付け可能である。旋回軸81は、回転工具を回転させる駆動軸86を内部に設けられている(図9参照)。このような回転工具を取り付け可能な刃物台21では、駆動軸86を旋回軸81内に設けることで、配管101~104を旋回軸81に設けることがより困難となる。このため、回転工具を取り付け可能な刃物台21において、挿入部53Aの断面を矩形とすることは極めて有効である。
【0066】
また、テレスコカバー74は、挿入部53Aの断面形状に合わせて形成された正方形の貫通孔77Aを形成されている。旋回軸81は、正方形の貫通孔77Aの中央に配置されている。これによれば、貫通孔77A内において挿入部53Aの中央に旋回軸81を配置することで、配管101~104をバランス良く配置できる。
【0067】
また、刃物台21は、ホルダ21Aに取り付けられたプッシャ54と連通する連通孔105が形成されている。タレット本体53は、配管101を通じて供給された着座検出用エアを、連通孔105を介してプッシャ54に供給する連結部110を有する。これによれば、配管を通じた流体によってワークWの保持状態の判断等を実行できる。近接センサなどの電気的な装置をプッシャ54に設ける必要がなくなり、電気的な配線を機械室73から加工室5まで配設する必要がなくなる。
【0068】
また、制御装置43は、連結部駆動部123を駆動し、連結ロッド122を連通孔105に連結する(連結処理の一例)。制御装置43は、連結ロッド122から連通孔105を通じてプッシャ54に着座検出用エアを供給し、供給した着座検出用エアの圧力に基づいてワークWの保持状態を判断する(判断処理の一例)。これによれば、配管101,103,104を通じて供給した流体によって連結ロッド122の連結と、ワークWの保持状態の判断を実行できる。連結ロッド122の連結及び連結の解除のために、モータなどの電気的な装置や配線が不要となる。
【0069】
また、連結部110は、プッシャ54を刃物台21の作業位置57に配置した場合、旋回軸81の軸方向と平行な方向において連通孔105と互いに対向する位置に設けられる。連結部駆動部123は、連結ロッド122を前進させる前進用シリンダ部123Aと、連結ロッド122を後退させる後退用シリンダ部123Bを有する。これによれば、配管103,104から気体を供給することで2つのシリンダ部を駆動し、連結部110と連通孔105の連結、及び連結の解除を実行できる。
【0070】
また、プッシャ54の当接部材145は、ワークWと接触していない状態では弾性部材147の弾性力によって排出口141Dを開放する位置に配置され、ワークWと接触した状態ではワークWから付与された力に応じて弾性部材147を収縮させ排出口141Dを閉塞する位置に配置される。そして、制御装置43は、着座検出用エアの圧力の上昇に基づいてプッシャ54が左側主軸装置12Lに保持されたワークWに接触したか否かを判断する。これによれば、ワークWによって当接部材145を押して排出口141Dを閉じることで、着座検出用エアの圧力の上昇に基づいて、ワークWの保持状態を判断できる。
【0071】
因みに、上記実施例において、左側及び右側主軸装置12L,12Rは、ワーク保持装置の一例である。タレット工具19は、回転工具の一例である。割り出し用サーボモータ55は、刃物台駆動源の一例である。テレスコカバー74は、区画部材の一例である。エア、クーラントは、流体の一例である。連結ロッド122は、本体側連結部材の一例である。
【0072】
以上、上記した本実施例では、以下の効果を奏する。
本願の一実施例における挿入部53Aは、断面が四角形で形成され、且つ、内部に旋回軸81を設けられている。そして、各配管101~104は、挿入部53Aの内部で、且つ、旋回軸81の外側となる位置に配設されている。これにより、タレット本体53の剛性を確保しつつ、配管101~104を配置するスペースを挿入部53Aに確保できる。
【0073】
また、本開示の内容は、上記実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することが可能である。
例えば、上記実施例では、ワークWの保持状態をエアで判断したが、近接センサなどのセンサを用いて判断しても良い。
また、左側タレット13Lは、回転工具を取り付けできない構成で、駆動軸86等を備えない構成でも良い。この場合にも、旋回軸81内に配管101~104を全て設けることが難しい場合もあるため、挿入部53Aの断面を矩形とすることは極めて有効である。
また、旋回軸81を貫通孔77Aの中央に配置しなくとも良い。例えば、貫通孔77A内において挿入部53Aの上端や下端に旋回軸81を配置し、余った部分に配管101~104を設けても良い。
また、上記実施例では、本開示の工作機械として、対向2軸の旋盤と、工具主軸装置14を備える複合機を採用したが、この構成に限定されない。例えば、本開示の工作機械は、工具主軸装置14を備えない1又は複数の旋盤、あるいは、フライス盤、ボール盤、ミーリングセル、ターニングセンタ、マシニングセンタなどでも良い。
【0074】
尚、本開示の内容は、請求項に記載の従属関係に限定されない。例えば、請求項4において「請求項1又は請求項2に記載の工作機械」を「請求項1から請求項3の何れか1項に記載の工作機械」に変更した技術思想についても、本明細書は開示している。また、請求項7において「請求項5に記載の工作機械」を「請求項5又は請求項6に記載の工作機械」に変更した技術思想についても、本明細書は開示している。
【符号の説明】
【0075】
1 工作機械、5 加工室、12L,12R 左側及び右側主軸装置(ワーク保持装置)、19 タレット工具(回転工具)、21 刃物台、43 制御装置、53 タレット本体、53A、55 割り出し用サーボモータ(刃物台駆動源)、73 機械室、74 テレスコカバー(区画部材)、77A 貫通孔、81 旋回軸、86 駆動軸、101~104 配管、122 連結ロッド(本体側連結部材)、123 連結部駆動部、123A 前進用シリンダ部、123B 後退用シリンダ部、141D 排出口、145 当接部材、147 弾性部材、W ワーク。
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