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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044484
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】構造体の仕上げ方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/02 20060101AFI20240326BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20240326BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20240326BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240326BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20240326BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20240326BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240326BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
E04F13/02 C
C09D5/00 D
C09D201/00
C09D7/61
C09D7/65
B05D1/36 Z
B05D7/24 303G
B05D7/24 303A
E04F13/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150028
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000159032
【氏名又は名称】菊水化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】棚橋 泰士
【テーマコード(参考)】
2E110
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
2E110AA47
2E110AB03
2E110AB04
2E110AB22
2E110AB23
2E110GA42X
2E110GA42Z
2E110GA43X
2E110GA43Z
2E110GB02Y
2E110GB03Y
2E110GB06Y
2E110GB14X
2E110GB14Z
2E110GB16Y
2E110GB17Y
2E110GB18Y
2E110GB22Y
2E110GB23Y
2E110GB24W
2E110GB24Y
2E110GB32X
2E110GB32Z
2E110GB42X
2E110GB42Z
2E110GB45X
2E110GB45Z
2E110GB54X
2E110GB54Z
4D075AA01
4D075AE03
4D075BB92Y
4D075CA13
4D075CA47
4D075CA48
4D075DB12
4D075DC05
4D075EA05
4D075EA06
4D075EB22
4D075EC03
4D075EC07
4D075EC13
4D075EC22
4D075EC24
4D075EC30
4D075EC51
4D075EC53
4J038CB022
4J038CE022
4J038CG001
4J038CG002
4J038DB001
4J038DG001
4J038DJ052
4J038EA011
4J038HA026
4J038HA066
4J038HA286
4J038HA446
4J038HA486
4J038HA556
4J038KA08
4J038KA19
4J038KA20
4J038MA07
4J038MA08
4J038MA09
4J038MA10
4J038MA14
4J038NA12
4J038PA06
4J038PB05
4J038PC02
4J038PC04
4J038PC06
(57)【要約】
【課題】十分にアンカー効果を発揮できる下塗材を塗布した後に上塗材を塗布して、基材と上塗材との密着性が高い仕上がりを提供する。
【解決手段】基材に下塗材を塗布した後から上塗材を塗布する仕上げ方法であって、下塗材に樹脂結合材と繊維と骨材を含有させることにより、骨材が繊維の支えとなって下塗材から形成される塗膜表面から繊維が出ることによりアンカー効果が十分に付与されるため、基材と上塗材との密着性が高い仕上がりとなる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に下塗材を塗布し、上塗材を塗布する仕上げ方法であって、
前記下塗材に繊維と骨材を含有することを特徴とする仕上げ方法。
【請求項2】
前記繊維の長さが前記骨材の粒径より長いことを特徴とする請求項1の仕上げ方法。
【請求項3】
前記上塗材の膜厚が0.2mm以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の仕上げ方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の内外壁面や天井面、柱や梁などの構造体の仕上げ方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、構造物の内外壁面や天井面、柱や梁などの構造体などには、美観や基材の耐候性や耐久性の向上、耐火性等の機能を付与するために塗材を塗布されていることが多い。
この塗材と構造体などに使用される基材を密着させるために、通常は基材に下塗材を塗布した後にこの塗材を上塗材として塗布して仕上げられる。
【0003】
この下塗材には、合成樹脂からなるプライマーもしくはシーラーと呼ばれる塗材を塗布して基材と上塗材との密着性を高めている。しかしながら、このプライマーもしくはシーラーと呼ばれる下塗材を塗布後、上塗材を塗布するまでに時間が空いた場合やごみなどが付着した場合に上塗材への密着性が低下し、上塗材が剥離してしまうことがあった。
そこで、特開平7-310418号公報では、下地モルタルの表面にプライマーとしてポリマーディスパージョンを塗布する上で、予め該ポリマーディスパージョン中に、微小繊維を混合分散させておくことが記載され、これにより、仕上げ材に対する接着効果に加えて自動的にメカニカルキー(アンカー)効果を得られることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-310418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ポリマーディスパージョン中に、微小繊維を混合分散させた場合でも、微小繊維が塗膜中に埋まってしまい表面に十分に露出できずにそのアンカー効果を発揮できないことがあった。
本発明の仕上げ方法は、十分にアンカー効果を発揮できる下塗材を塗布した後に上塗材を塗布して基材と上塗材との密着性が高い仕上がりを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
基材に下塗材を塗布し、上塗材を塗布する仕上げ方法であって、前記下塗材に樹脂結合材と繊維と骨材を含有させることである。
このことにより、下塗材から形成される塗膜にアンカー効果が付与されて基材と上塗材との密着性が高い仕上がりとなる。
【0007】
前記繊維の長さが前記骨材の粒径より長いことが好ましい。このことにより、下塗材から形成される塗膜のアンカー効果が十分に発揮されて、基材と上塗材との密着性がより高い仕上がりとなる。
前記上塗材の膜厚が0.2mm以上であることが好ましい。このことにより、下塗材に含有されている繊維や骨材が上塗材に覆われてきれいな仕上がりとなる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態を説明する。
本発明は、基材に下塗材を塗布し、上塗材を塗布する仕上げ方法であって、前記下塗材に樹脂結合材と繊維と骨材を含有することを特徴とする仕上げ方法である。
【0009】
まず、本発明の基材とは、構造物の内外壁面や天井面、柱や梁などの構造体などに使用されるもので、コンクリートやモルタル、窯業系サイディングボード,フレキシブルボード,ケイ酸カルシウム板,押出成形板,プレキャストコンクリート板,軽量気泡コンクリート板,石膏ボード等の板材等がある。
また、アルミニウム,鉄及びステンレス等の金属材料で形成されたもの、ベニヤ板や合板等の木質系のもの、合成樹脂を発泡させた断熱フォーム材なども挙げられる。
【0010】
本発明の下塗材は、一般的にプライマーもしくはシーラーと呼ばれる塗材で、樹脂結合材と繊維と骨材を含有する。下塗材に樹脂結合材を含有することにより、基材と上塗材との密着性が優れたものとなる。
下塗材に繊維を含有することにより、下塗材から形成される塗膜の表面に繊維が突き出て、そのアンカー効果により上塗材との密着性が向上する。さらに、下塗材に繊維と骨材を含有することにより、繊維が骨材に乗り、下塗材から形成される塗膜の表面に繊維を安定的に突き出し、アンカー効果が十分に発揮され上塗材との密着性がより向上する。
【0011】
この下塗材に含有する樹脂結合材は、塗料や接着剤に一般的に用いられる樹脂結合材であればよく、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂、酢酸ビニル樹脂、エステル樹脂、スチレン樹脂、フッ素樹脂、ビニルアルコール樹脂、これらの樹脂が共重合させた樹脂、またはこれらの樹脂に他のモノマーが共重合させた樹脂等の合成樹脂が挙げられる。
これらの合成樹脂は単独で用いられてもよく、2種類以上が混合されて用いられてもよい。なお、この下塗材には、合成樹脂を水に分散させた合成樹脂エマルション、又は水や有機溶剤等の溶媒に溶解させた合成樹脂溶液等の形態のものが用いられる。
【0012】
好ましくは、常温で乾燥した際にタックがあるものである。このような樹脂結合材を下塗材に使用することで、下塗材から形成される塗膜にタックが出て、上塗材との密着性が良くなる。なお、ここで言うタックとは、指で触れた際にべたつきが感じられることを言う。
【0013】
下塗材の樹脂結合材の固形分の含有率は、5~50重量%が好ましい。含有率がこの範囲であれば、基材と上塗材との密着性が向上し、下塗材に含まれる繊維や骨材も保持することができる。
含有率が5重量%未満の場合は、密着性が十分に得られない可能性がある。また、含有する繊維や骨材を保持することが難しい。含有率が50重量%より大きい場合は、繊維が樹脂結合材に埋もれてしまいアンカー効果が十分に発揮されない可能性がある。
【0014】
より好ましくは5~25重量%の範囲であり、この範囲であれば基材と上塗材との密着性に優れたものとなる。
この下塗材には繊維が含有される。下塗材に繊維を含有することにより、下塗材から形成される塗膜にアンカー効果が付与されて基材と上塗材との密着性が高い仕上がりとなる。
【0015】
この下塗材に含有する繊維は、アクリル繊維,アラミド繊維,ビニロン繊維,ポリエチレン繊維,ポリプロピレン繊維,セルロース繊維,炭素繊維,ガラス繊維,金属繊維,天然繊維等が挙げられる。
これらの繊維の中でもこしがあるものが好ましい。この場合のこしとは、例えば繊維を指で曲げた際に元に戻ろうとすることで、このこしがないと下塗材に繊維を混ぜたり、吹付け等で塗装して力が加わった際に繊維が折れたり曲がったりしてアンカー効果が十分に発揮されない可能性がある。
【0016】
また、無機繊維がより好ましい。無機繊維であれば燃えにくいため、不燃や耐火の性能が必要な内装や構造体等に施工しやすい。なかでもガラス繊維は入手しやすく、こしがあるためアンカー効果を十分に発揮することができるため好ましい。
前記繊維の長さは0.1~10mmの範囲が好ましい。繊維の長さが0.1mm未満の場合は、下塗材の表面に繊維が出ずアンカー効果が発揮されない可能性がある。
【0017】
繊維の長さが10mmより長い場合は、長すぎて繊維が折れてしまったり、たわんでしまったりしてアンカー効果が十分に発揮されない可能性がある。また、下塗材中にきれいに混合できない可能性や、下塗材を吹付けで塗装する場合に詰まってしまう可能性がある。
さらに、繊維の長さは、後述する骨材の粒径より長いことが好ましい。骨材の粒径より長いことにより、骨材が繊維を支えて下塗材から形成される塗膜の表面に繊維を突き出すことができ、アンカー効果を十分に発揮することができる。
【0018】
前記繊維の含有量は0.01~5.0重量%の範囲が好ましい。繊維の含有量が0.01重量%より少ない場合は、繊維の量が少な過ぎてアンカー効果が期待できない。5.0重量%より多い場合は、繊維の量が多過ぎて樹脂結合材の付着力を阻害してしまい上塗材との密着性が得られないことある。
より好ましくは0.1~3.0重量%の範囲である。この範囲であれば、効果的にアンカー効果を発揮することができる。
【0019】
この下塗材には骨材が含有される。下塗材に骨材を含有することにより、含有した繊維の支えとなって下塗材から形成される塗膜表面から繊維が出てアンカー効果を十分に発揮することができる。
この下塗材に含有する骨材は、塗材に一般的に用いられる骨材であればよく、例えば、炭酸カルシウム,珪砂,樹脂ビーズ,ガラスビーズ,パーライト,バーミキュライトなどが挙げられる。
【0020】
これらの骨材の中でも軽量骨材と呼ばれる比重が小さい骨材が好ましい。この下塗材は天井に塗布する場合があり、骨材の比重が大きいと負荷がかかり落下してしまうことがあるためである。
より好ましくは骨材の比重が1より小さいものであり、入手が容易な中空ガラスビーズ,パーライト,バーミキュライトが特に好ましい。そして、これらの骨材は無機質であるため、不燃や耐火の性能が必要な内装や構造体等に施工しやすい。
【0021】
この骨材の大きさは、この下塗材に含有する繊維の長さより小さいことが好ましい。骨材の大きさが繊維の長さより大きいと、繊維が骨材に埋もれてしまいアンカー効果が十分に発揮されない可能性がある。
具体的にはこの骨材の粒径は0.05~5.0mmの範囲が好ましい。骨材の粒径が0.05mmより小さい場合は、繊維を支える効果が小さく密着性を向上させる効果が期待できない。
【0022】
骨材の粒径が5.0mmより大きい場合は、下塗材の膜厚が厚くなるため下塗材の強度が弱くなり、上塗材を塗布した際に剥落する可能性がある。より好ましくは0.1~2.0mmの範囲であり、この範囲であれば、下塗材の強度や上塗材との密着性が十分なものとなる。
なお、骨材の粒径は、金属製網ふるいを使用したふるい振とう機で測定した値である。
【0023】
この骨材の含有量は、樹脂結合材100体積部に対して10~1000体積部の範囲であることが好ましい。骨材の含有量が樹脂結合材100体積部に対して10体積部より少ない場合は、繊維を支える効果が小さい。
骨材の含有量が樹脂結合材100体積部に対して1000体積部より多い場合は、下塗材の強度が下がってしまい上塗材を塗布した際に剥落する可能性がある。より好ましくは樹脂結合材100体積部に対して100~500体積部の範囲であり、この範囲であれば、下塗材の強度や上塗材との密着性が十分なものとなる。
【0024】
この下塗材には、上記の他に本発明の効果を損なわない範囲で、一般的に塗材に含有されるものを含有することができる。例えば、溶媒としての水や有機溶剤、消泡剤、分散剤、粘性調整剤、粘着付与剤、造膜助剤、凍結防止剤、顔料、防腐剤、防藻剤、防カビ剤等の添加剤を含有することができる。
本発明は、上記下塗材を塗布し、上塗材を塗布する仕上げ方法である。この上塗材としては、構造物の内外壁面や天井面、柱や梁などの構造体の仕上げで使用される塗材であれば良いが、好ましくは建築仕上塗材や耐火被覆材のような膜厚が0.2mm以上あるものが良い。
【0025】
上塗材の膜厚が0.2mmより薄い場合、下塗材から形成される塗膜表面から出た繊維や骨材の凹凸が、上塗材から形成される塗膜表面にその形状が表れて仕上がりが悪くなる可能性がある。より好ましくは膜厚が0.5~30mmの範囲である。
膜厚が0.5mm以上の場合は、下塗材から形成される塗膜表面から出た繊維や骨材の凹凸を覆うことができるため仕上がりに影響されず、下塗材と上塗材の密着も良好なものとなる。膜厚が30mmより厚い場合は、上塗材が重くなり剥落する可能性がある。
【0026】
この上塗材は、JIS A6909の軽量骨材仕上塗材や軽量モルタル,耐火モルタル等の軽量骨材を含有した塗材であることが好ましい。上塗材が軽量骨材を含有した塗材であれば、上塗材から形成される塗膜の重量が軽くなり剥落する可能性が低くなる。
また、一般的に軽量骨材を含有した塗材から形成される塗膜の表面は凹凸状で基材と点で接着している場合があるため密着性があまり良くないが、本発明の下塗材のアンカー効果により剥落し難い仕上がりとなる。特に軽量骨材を含有した塗材から形成される塗膜は空隙が多く、繊維が入り込みやすいため、その効果が十分に発揮される。
【0027】
そして、一般的に軽量骨材を含有した塗材から形成される塗膜は強度が弱いため、その入り込んだ繊維が、軽量骨材を含有した塗材から形成される塗膜を補強することができる。
これらの下塗材や上塗材を塗装する方法は、特に制限されるものではなく、一般的に行われている吹付けやローラー、刷毛、コテ、ヘラ等による塗装がある。
【0028】
本発明の下塗材の場合は、繊維や骨材が含有されているため、その長さや大きさによってはローラーや刷毛などの塗装が難しい場合がある。また、合成樹脂を発泡させた断熱フォーム材を現場で吹付けたもの等の表面形状が複雑な下地の場合もローラー塗装が難しい場合があり、吹付けなどの塗装方法が均一な塗膜を形成することができるため好ましい。
本発明の上塗材で好ましく用いられる軽量骨材を含有した塗材の場合は、ローラー塗装が難しいため、吹付けやコテで塗装することが好ましい。
【実施例0029】
以下に本発明の仕上げ方法の評価結果を示した。
表1に示す各原材料を、ディゾルバーを用いて均一に撹拌し下塗材を作製した。樹脂結合材として、不揮発分が50%のアクリル樹脂エマルションを用いた。このアクリル樹脂エマルションを乾燥させて表面を触るとべたつきがあった。
【0030】
繊維として、長さが0.05mm,6mm,12mmのガラス繊維、長さが6mmのアクリル繊維を用いた。なお、ガラス繊維は指で曲げた際に元に戻ったが、アクリル繊維は元に戻らず曲がったままだった。
骨材として、比重が0.4で平均粒径が0.05mmと1mmの中空ガラスビーズを用いた。なお、この骨材の粒径は、金属製網ふるいを使用したふるい振とう機で粒度分布を測定して求めたメディアン径である。
【0031】
【表1】
【0032】
これらの原材料を用いて作製した各下塗材を、基材のモルタルに吹付けて塗装した。下塗材が乾燥した後、上塗材を吹付け塗装し試験体を作製した。
上塗材としては、JIS A6909の軽量骨材仕上塗材に準拠した塗材と、JIS K5663の(2種)に準拠した塗料を用いた。なお、軽量骨材仕上塗材の膜厚は約5mm、合成樹脂エマルションペイントの膜厚は約100μmだった。
このようにして作製した試験体の外観と密着性を確認した。表2に各試験体の仕様と確認結果を示した。
【0033】
【表2】
【0034】
試験体の外観は、目視で塗膜表面を確認した。仕様12は、上塗材の膜厚が薄いため、下塗材に含有している繊維が試験体の塗膜表面に出てしまい見栄えが悪かった。仕様8は、試験体作製で下塗材を吹付けたときに詰まることがあり作業性が悪かった。
試験体の密着性は、JIS A6909 7.10付着強さ試験に準拠して確認した。
ただし、試験は試験用基板全面に下塗材と上塗材を吹付け塗装したものを、上部引張り用鋼製ジグを貼付け、ジグの周り4辺に基板に達するまで切込みを入れた後、引張試験機を用いて確認した。
【0035】
下塗材に繊維が含有されていない仕様1,2は、下塗材側の上塗材表層から剥離し、付着力がなかった。下塗材に繊維が含有している試験体は、上塗材表層から剥離したものはほとんどなく、付着力も上がった。
仕様7は、下塗材に含有された繊維の量が多く下塗材のタックが少なくなったためか、一部で上塗材表層から剥がれている箇所があった。
【0036】
仕様8は、下塗材に含有された繊維の長さが長すぎて倒れてしまい、下塗材から形成される塗膜表面を繊維が覆いタックが少なくなったためか、一部で上塗材表層から剥がれている箇所があった。
仕様9は、下塗材に含有された繊維の長さが短く、下塗材から形成される塗膜表面に繊維が出ておらずアンカー効果が発揮されなかったためか、一部で上塗材表層から剥がれている箇所があった。
【0037】
仕様10は、下塗材に含有された骨材の割合が多かったためか、一部で下塗材から剥がれている箇所があった。
仕様11は、下塗材に含有された繊維がアクリル繊維でこしが弱く、下塗材から形成される塗膜表面に繊維が出ておらずアンカー効果が発揮されなかったためか、一部で上塗材表層から剥がれている箇所があった。