(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044490
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】現像ローラ
(51)【国際特許分類】
G03G 15/08 20060101AFI20240326BHJP
F16C 13/00 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
G03G15/08 235
F16C13/00 B
F16C13/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150041
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 拓弥
【テーマコード(参考)】
2H077
3J103
【Fターム(参考)】
2H077AD02
2H077AD06
2H077FA12
2H077FA13
2H077FA16
2H077FA22
2H077FA27
2H077GA03
2H077GA04
3J103AA02
3J103AA14
3J103BA41
3J103FA02
3J103GA02
3J103GA57
3J103GA58
3J103GA60
3J103HA02
3J103HA12
3J103HA20
3J103HA48
3J103HA52
(57)【要約】
【課題】圧縮永久歪が改善された現像ローラを提供する。
【解決手段】本発明は、軸体2と、軸体2の外周に弾性層3と被覆層4とをこの順に備える現像ローラ1であって、弾性層3が、シリコーンゴム及びカーボンナノチューブを含むものである。弾性層は、シリコーンゴム組成物の硬化物であり、シリコーンゴム組成物100質量部に対しカーボンナノチューブの含有量は、0.1質量部以上5質量部以下であることが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、該軸体の外周に弾性層と被覆層とをこの順に備える現像ローラであって、
前記弾性層が、シリコーンゴム及びカーボンナノチューブを含む現像ローラ。
【請求項2】
前記弾性層が、シリコーンゴム組成物の硬化物であり、前記シリコーンゴム組成物100質量部に対しカーボンナノチューブの含有量が、0.1質量部以上5質量部以下である請求項1記載の現像ローラ。
【請求項3】
前記被覆層が、ウレタン樹脂を含有する請求項1記載の現像ローラ。
【請求項4】
前記カーボンナノチューブが、単層カーボンナノチューブである請求項1記載の現像ローラ。
【請求項5】
圧縮永久歪が、5%以上15%以下である請求項1記載の現像ローラ。
【請求項6】
前記弾性層が、さらにカーボンナノチューブ以外の導電性付与剤を含有する請求項1記載の現像ローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリ等の画像形成装置に用いられる現像ローラは、トナーに均一な摩擦電荷を付与し、かつ、所定量のトナーを現像領域に安定して搬送する機能を有する。近年の電子写真装置の高速化、長寿命化、高画質化の対応の過程でトナーの特性向上が図られており、それに伴い、現像ローラを構成する各種材料の電気的特性を調整して現像ローラの現像剤搬送性を向上させることも検討されている。
【0003】
電子写真方式の画像形成装置に用いられる現像ローラは、一般的に、軸体の外周に弾性層と被覆層を備えている。弾性層には通常シリコーンゴムが用いられ、導電性付与剤としてカーボンブラックが添加されている。近年では、カーボンブラックに替えてカーボンナノチューブを弾性層に含有させて、高い熱伝導率を実現した定着部材が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子写真方式の画像形成装置における現像ローラは、トナーを担持して感光体へ供給するため導電性を付与する必要がある。通常、現像ローラの弾性層中には、導電性付与剤としてカーボンブラックが添加されている。しかしながら、カーボンブラックの添加量を増加させると、ゴム物性、特に、圧縮永久歪が悪化するという問題がある。現像ローラの圧縮永久歪が悪化すると、感光体との接触を良好に行うことができず、画像の品質低下を招くこととなる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、圧縮永久歪が改善された現像ローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、軸体と、軸体の外周に弾性層と被覆層とをこの順に備える現像ローラであって、弾性層が、シリコーンゴム及びカーボンナノチューブを含む現像ローラである。
【0007】
弾性層は、シリコーンゴム組成物の硬化物であり、シリコーンゴム組成物100質量部に対しカーボンナノチューブの含有量は、0.1質量部以上5質量部以下であることが好ましい。
【0008】
被覆層は、ウレタン樹脂を含有することが好ましい。
【0009】
カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブであることが好ましい。
【0010】
圧縮永久歪は、5%以上15%以下であることが好ましい。
【0011】
弾性層は、さらにカーボンナノチューブ以外の導電性付与剤を含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、圧縮永久歪が改善された現像ローラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の現像ローラの一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】現像ローラの圧縮永久歪を測定する器具を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
[現像ローラ]
図1に示すように、本発明の現像ローラ1は、軸体2と、軸体2の外周に弾性層3と被覆層4とをこの順に備える現像ローラであって、弾性層3が、シリコーンゴム及びカーボンナノチューブを含む現像ローラ1である。
以下に、各構成の詳細を説明する。
【0015】
<軸体>
軸体2は、好ましくは、導電特性を有する、従来公知の現像ローラに用いられる軸体を用いることができる。軸体2は、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、及び真鍮からなる群より選択される少なくとも1種の金属で構成されていることが好ましい。なお、このような軸体2は、一般に、「芯金」の名称でも知られている。
【0016】
軸体2は、絶縁性樹脂を含むものであってもよい。絶縁性樹脂は、例えば、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよい。軸体2は、例えば、絶縁性樹脂からなる芯体と、この芯体上に設けられたメッキ層と、を備えるものであってよい。このような軸体2は、例えば、絶縁性樹脂からなる芯体にメッキを施して導電化することにより得ることができる。
軸体2は、良好な導電特性を得るために、芯金であることが好ましい。
【0017】
軸体2の形状は、例えば、棒状、管状等であることが好ましい。軸体2の断面形状は、例えば、円形、楕円形であってもよく、多角形等の非円形であってもよい。軸体2の外周面には、洗浄処理、脱脂処理、プライマー処理等の処理が施されていてもよい。
【0018】
軸体2の軸方向の長さは特に限定されず、設置される画像形成装置の形態に応じて適宜調整してもよい。また、軸体2の直径(外接円の直径)も特に限定されず、設置される画像形成装置の形態に応じて適宜調整すればよい。
【0019】
<弾性層>
弾性層3は、感光体の表面に形成された静電潜像にトナーを過不足なく供給することができるように、適切なニップ幅とニップ圧をもって感光体に押圧可能な硬度や弾性を現像ローラ1に付与するために設けられる。
弾性層3は、シリコーンゴム組成物を軸体2の外周面に塗布し、加熱硬化することにより形成される。シリコーンゴム組成物は、(a)オルガノポリシロキサン及び(b)カーボンナノチューブを少なくとも含有する。
【0020】
(a)オルガノポリシロキサン
オルガノポリシロキサンとしては、下記平均組成式(I)で表される重合度が100以上のオルガノポリシロキサンが好ましい。
R1
aSiO(4-a)/2 (I)
(式中、R1は同一又は異種の非置換若しくは置換の一価炭化水素基を示し、aは1.95以上2.05以下の正数である。)
【0021】
R1としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ドデシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、β-フェニルプロピル基等のアラルキル基などが挙げられる。また、R1は、これらの炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部が置換基で置換された基であってもよい。置換基は、例えばハロゲン原子、シアノ基等であってよい。置換基を有する炭化水素基としては、例えば、クロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。
【0022】
オルガノポリシロキサンは、分子鎖末端が、トリメチルシリル基等のトリアルキルシリル基、ジメチルビニルシリル基等のジアルキルアラルキルシリル基、ジメチルヒドロキシシリル基等のジアルキルヒドロキシシリル基、トリビニルシリル基等のトリアラルキルシリル基などで封鎖されていることが好ましい。
【0023】
オルガノポリシロキサンは、分子中に2つ以上のアルケニル基を有することが好ましい。オルガノポリシロキサンは、R1のうち0.001モル%以上5モル%以下(より好ましくは0.01モル%以上0.5モル%以下)のアルケニル基を有することが好ましい。オルガノポリシロキサンが有するアルケニル基としてはビニル基が特に好ましい。
【0024】
オルガノポリシロキサンは、例えば、オルガノハロシランの1種若しくは2種以上を共加水分解縮合することによって、又は、シロキサンの3量体若しくは4量体等の環状ポリシロキサンを開環重合することによって得ることができる。オルガノポリシロキサンは、基本的には直鎖状のジオルガノポリシロキサンであってよく、一部分岐していてもよい。また、オルガノポリシロキサンは、分子構造の異なる2種又はそれ以上の混合物であってもよい。
【0025】
オルガノポリシロキサンは、25℃における動粘度が100cSt以上であることが好ましく、100000cSt以上10000000cSt以下であることがより好ましい。また、オルガノポリシロキサンの重合度は、例えば100以上であることが好ましく、3000以上10000以下であることがより好ましい。
【0026】
(b)カーボンナノチューブ
カーボンナノチューブは、シリコーンゴム組成物100質量部に対し、0.1質量以上5質量部以下であり、0.1質量部以上1質量部以下であることが好ましい。
本発明に用いられるカーボンナノチューブは、平均長さが、5μm以上であり、外径が、1.0nm以上2.0nm以下であることが好ましい。また、カーボンナノチューブは、単層であっても多層であってもよい。現像ローラ1の体積抵抗値を1×102以上1×107Ω以下の範囲にするためには、単層のカーボンナノチューブが好ましい。例えば、単層カーボンナノチューブであれば、電気伝導性は、105~106S/m、密度は、1.8~2.0g/cm3であるものが挙げられる。
【0027】
(その他の成分)
シリコーンゴム組成物は、その他の成分として下記の成分を含有してもよい。
【0028】
(c)カーボンナノチューブ以外の導電性付与剤
(c)カーボンナノチューブ以外の導電性付与剤としては、カーボンブラック、金属、金酸化物、金属化合物、導電性ポリマー、イオン液体等が挙げられる。(c)カーボンナノチューブ以外の導電性付与剤の配合量は、シリコーンゴム組成物100質量部に対して、0.5質量部以上15質量部以下であることが好ましく、1質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。
【0029】
(d)充填剤
(d)充填材としては、例えばシリカ系充填材が挙げられる。シリカ系充填材としては、例えば、煙霧質シリカ、沈降性シリカ等が挙げられる。
【0030】
シリカ系充填材としては、R2Si(OR3)3で示されるシランカップリング剤で表面処理された、表面処理シリカ系充填材を好適に用いることができる。ここで、R2は、ビニル基又はアミノ基を有する基であってよく、例えば、グリシジル基、ビニル基、アミノプロピル基、メタクリロキシ基、N-フェニルアミノプロピル基、メルカプト基等であってよい。R3はアルキル基であってよく、例えばメチル基、エチル基等であってよい。シランカップリング剤は、例えば信越化学工業株式会社製の商品名「KBM1003」、「KBE402」等として、容易に入手できる。表面処理シリカ系充填材は、定法に従って、シリカ系充填材の表面をシランカップリング剤で処理することにより得ることができる。表面処理シリカ系充填材としては、市販品を用いてもよく、例えば、J.M.HUBER株式会社製の商品名「Zeothix 95」等が挙げられる。
【0031】
シリカ系充填材の配合量は、(a)オルガノポリシロキサン100質量部に対して11質量部以上39質量部以下であることが好ましく、15質量部以上35質量部以下であることがより好ましい。また、シリカ系充填材の平均粒子径は、1μm以上80μm以下であることが好ましく、2μm以上40μm以下であることがより好ましい。なお、シリカ系充填材の平均粒子径は、レーザー光回折法による粒度分布測定装置を用いて、メジアン径として測定できる。
【0032】
(e)化学発泡剤
(e)化学発泡剤としては、無機系発泡剤と有機系発泡剤のいずれもでもよい。無機系発泡剤としては、重炭酸ソーダ、炭酸アンモニウム等が挙げられ、有機系発泡剤としては、ジアゾアミノ誘導体、アゾニトリル誘導体、アゾジカルボン酸誘導体等の有機アゾ化合物等が挙げられる。有機アゾ化合物の中でも、アゾジカルボン酸アミド、アゾビス-イソブチロニトリル等が好適に使用される。特に、アゾビス-イソブチロニトリルが好適に使用できる。
【0033】
(f)未膨張マイクロバルーン
(f)未膨張マイクロバルーンとして、樹脂マイクロバルーンを挙げることができる。樹脂マイクロバルーンとしては、外殻に熱可塑性樹脂を用いたものが好ましく用いられる。外殻を構成する熱可塑性樹脂としては、塩化ビニリデン/アクリロニトリル共重合体、メチルメタクリレート/アクリロニトリル共重合体、メタアクリロニトリル/アクリロニトリル共重合体等を挙げることができる。シリコーンゴムの硬化温度に合わせて、外殻となる樹脂の軟化温度が適当な範囲内にある樹脂マイクロバルーンを用いることが好ましい。また、内包される蒸発性物質としては、ブタン、イソブタン等の炭化水素を挙げることができる。
(f)未膨張マイクロバルーンの平均粒子径は、5μm以上50μm以下であることが好ましく、5μm以上25μm以下であることがより好ましい。
【0034】
本発明に好適な(f)未膨張マイクロバルーンは、「マツモトマイクロスフェアーFシリーズ」(松本油脂製薬株式会社製)、「エクスパンセルシリーズ」(エクスパンセル社製)等として市販されている。この発明に好適な未膨張の樹脂マイクロバルーンは、弾性層を形成するのに使用される化学発泡剤の分解温度よりも高い温度で膨張する機能を有する樹脂マイクロバルーンから選択される。
化学発泡剤又は未膨張マイクロバルーンの配合量は、シリコーンゴム組成物100質量部に対しての低比重でありながら、大きさが均一なセルを得る観点から、0.5質量%以上6質量%以下であることが好ましい。
【0035】
(g)架橋剤
シリコーンゴム組成物は、架橋剤を含有してもよい。架橋剤としては、付加反応架橋剤、有機過酸化物架橋剤等を挙げることができる。
付加反応架橋剤として、例えば、一分子中に二個以上のSiH基(SiH結合)を有する付加反応型の架橋剤として公知のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好適に挙げられる。付加反応架橋剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
付加架橋剤の配合量は、通常、シリコーンゴム組成物100質量部に対して0.1質量部以上7質量部以下である。
【0036】
付加反応架橋剤を使用する場合、有機過酸化物架橋剤は、単独でミラブル型シリコーンゴムを架橋させることも可能であるが、付加反応架橋剤の補助架橋剤として併用すると、得られるトナー供給ローラの強度、歪み等の物性をより一層向上させることができる。有機過酸化物架橋剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ビス-2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン等が挙げられる。
有機過酸化物架橋剤の配合量は、通常、シリコーンゴム組成物100質量部に対して0.1質量部以上7質量部以下である。有機過酸化物架橋剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0037】
付加反応架橋剤は、付加反応触媒を併用するのが好ましい。付加反応触媒は白金黒、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等が挙げられる。なお、この付加反応触媒の配合量は触媒量とすることができる。
【0038】
また、シリコーンゴム組成物は、各種の添加剤が含有されてもよい。各種の添加剤として、例えば鎖延長剤等の助剤、触媒、分散剤、老化防止剤、酸化防止剤、シリカ系以外の充填材として、例えばガラスビーズ、顔料、着色剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、乳化剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、溶剤等が挙げられる。これらの各種添加剤は、通常用いられる添加剤であってもよく、用途に応じて特別に用いられる添加剤であってもよい。
【0039】
弾性層3は、公知の成形方法によって、加熱硬化と成形とを同時に又は連続して行い、軸体2の外周面に形成される。シリコーンゴム組成物の硬化方法はゴム組成物の硬化に必要な熱を加えられる方法であればよい。また、弾性層3の成形方法も、押出成形による連続加硫、プレス、インジェクションによる型成形等、特に制限されるものではない。例えば、押出成形等を選択することができる。また、軸体2上に形成された弾性層3を研削又は研磨等してもよい。
【0040】
シリコーンゴム組成物を加硫させる際の加熱温度は、100℃以上500℃以下が好ましく、120℃以上300℃以下がより好ましい。加熱時間は数秒以上1時間以下が好ましく、10秒以上35分以下がより好ましい。また、必要に応じ、二次加硫してもよい。更に三次加硫として180~280℃、特に200~250℃で1~15分間時間加熱してもよい。このように複数の回数をもって加熱すると未膨張マイクロバルーンの膨張、ミラブル型シリコーンゴムの硬化、残留する低分子シロキサンの排除、膨張したマイクロバルーンの熱収縮を必要に応じてコントロールすることが可能となって好ましい。このように複数回の加熱操作を行うことにより、未膨張マイクロバルーンが膨張すると同時にシリコーンゴムが硬化してセル壁が形成され、その後に膨張したマイクロバルーンのみ熱収縮された状態となって平均セル径を150μm以下に調整することができる。また、ゴム組成物は既知の方法で発泡硬化させることにより、気泡を有する弾性層3を容易に形成することもできる。
【0041】
このようにして得られる現像ローラを更に研磨工程に供してもよい。研磨工程は、軸体の外周面に形成された現像ローラの形状を、軸体の軸線方向において現像ローラの厚みを軸体の中央に向かって徐々に増大させ、軸体の中央から軸体の先端に向かって徐々に減少させる形状、つまり逆クラウン形状、或いは軸体の中央から軸体の両端に向かって現像ローラの厚み増加させる形状、つまり逆クラウン形状に調整する工程である。
【0042】
弾性層3の厚さは特に限定されず、0.1mm以上6mm以下であることが好ましく、1mm以上4mm以下であることがより好ましい。なお、本明細書における厚さは、現像ローラ1の軸線方向に垂直な方向の厚さを示す。
【0043】
弾性層3の外径は特に限定されず、例えば6mm以上25mm以下であることが好ましく、7mm以上21mmであることがより好ましい。
【0044】
弾性層3の外周面には、被覆層4との接着性向上等の目的で、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理、エキシマ処理、UV処理、イトロ処理、フレーム処理等の表面処理が施されていてよい。
【0045】
<被覆層>
被覆層4は、弾性層3の外周であって、現像ローラ1の最表面に設けられるものであり、ウレタン樹脂を含有することが好ましい。被覆層4は、弾性層3、又は、所望により形成されたプライマー層の外周面に、被覆層用樹脂組成物を塗工し、次いで、塗工された被覆層用樹脂組成物を加熱硬化させて、形成される。
被覆層用樹脂組成物は、(A)ポリオール、(B)イソシアネート、(C)表面粗さ材、及び(D)イオン導電材を含有する。
以下、被覆層用樹脂組成物の各成分(A)~(D)について説明する。
【0046】
(A)ポリオール
ポリオールは、ポリウレタンの調製に通常使用される各種のポリオールであればよく、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリカーボネートポリオールから選択された少なくとも1種のポリオールであるのが好ましい。
【0047】
ポリエーテルポリオールは、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール-エチレングリコール等のポリアルキレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、テトラヒドロフランとアルキレンオキサイドとの共重合ポリオール、及び、これらの各種変性体又はこれらの混合物等が挙げられる。
【0048】
ポリエステルポリオールは、分子内に2つ以上のエステル結合と、2つ以上のヒドロキシル基を有する。ポリエステルポリオールとしては、例えば、ジカルボン酸とポリオールとの縮合反応物等が挙げられる。ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。
【0049】
ポリアクリレートポリオールは、ヒドロキシル基含有モノマーと他のオレフィン系不飽和モノマー、例えば(メタ)アクリル酸のエステル、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルエステル、マレイン酸モノアルキルエステル及びマレイン酸ジアルキルエステル、及びフマル酸モノアルキルエステル及びフマル酸ジアルキルエステル、α-オレフィン並びに他の不飽和オリゴマー及び不飽和ポリマーとのコポリマーである。
【0050】
ポリカーボネートポリオールは、分子内に2つ以上のカーボネート結合と、2つ以上のヒドロキシル基を有する。ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリオールとカーボネート化合物との縮合反応物等が挙げられる。また、カーボネート化合物としては、例えば、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート、アルキレンカーボネート等が挙げられる。ポリカーボネートポリオールの原料として用いられるポリオールとしては、例えば、ヘキサンジオール、ブタンジオール等のジオール、2,4-ブタントリオール等のトリオールなどが挙げられる。
ポリオールは、後述するイソシアネート等との相溶性に優れる点で、1000~8000の数平均分子量を有するのが好ましく、1000~5000の数平均分子量を有するのがより好ましい。数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレンに換算したときの分子量である。
【0051】
(B)イソシアネート
イソシアネートは、ポリウレタンの調製に通常使用される各種イソシアネートであればよく、例えば、脂肪族イソシアネート、芳香族イソシアネート及びこれらの誘導体等が挙げられる。イソシアネートは、貯蔵安定性に優れ、反応速度を制御しやすい点で、脂肪族イソシアネートであるのが好ましい。
【0052】
芳香族イソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(トリレンジイソシアネートとも称する。TDI)、3,3’-ビトリレン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネートウレチジンジオン(2,4-TDIの二量体)、キシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、メタフェニレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0053】
脂肪族イソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、オルトトルイジンジイソシアネート、リジンジイソシアネートメチルエステル、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルナンジイソシアネートメチル、トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、トリフェニルメタン-4,4’,4’’-トリイソシアネート等が挙げられる。
誘導体としては、ポリイソシアネートの多核体、ポリオール等で変性したウレタン変性物(ウレタンプレポリマーを含む)、ウレチジオン形成による二量体、イソシアヌレート変性物、カルボジイミド変性物、ウレトンイミン変性物、アロハネート変性物、ウレア変性物、ビュレット変性物等が挙げられる。ポリイソシアネートは、1種単独で又は2種以上を用いることができる。ポリイソシアネートは、500~2000の分子量を有するのが好ましく、700~1500の分子量を有するのが更に好ましい。
【0054】
被覆層用樹脂組成物に用いられる(b)イソシアネートはポリイソシアネートであることが好ましい。(b)イソシアネート1分子中のイソシアネート基の数が2を超えることが好ましく、2.5以上がより好ましく、3以上がさらに好ましい。
ポリオールとポリイソシアネートとの混合物における混合割合は、特に限定されないが、通常、ポリオールに含まれる水酸基(OH)と、ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基(NCO)とのモル比(NCO/OH)が0.7以上1.15以下であるのが好ましい。このモル比(NCO/OH)は、ポリウレタンの加水分解を防止することができる点で、0.85以上1.10以下であるのがより好ましい。なお、実際には、作業環境、作業上の誤差を考慮して適正モル比の3倍から4倍相当量を配合してもよい。
【0055】
被覆層用樹脂組成物には、(A)ポリオールと(B)イソシアネートとの反応に通常使用される助剤、例えば、鎖延長剤、架橋剤等を併用してもよい。鎖延長剤、架橋剤としては、例えば、グリコール類、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン及びアミン類等が挙げられる。
【0056】
(C)表面粗さ材
表面粗さ材は、被覆層4の表面粗さを調整する粒子である。被覆層4に配合される表面粗さ材の平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上20μm以下であり、より好ましくは1μm以上15μm以下である。被覆層4にこのような表面粗さ材を配合することで、外周面の表面粗さを、容易に適切な範囲に調整することができる。現像ローラ1の外周面の表面粗さを調整することで、トナー搬送性が向上し、一層優れた印字特性が得られる。なお、表面粗さ材の平均粒子径は、レーザー光回折法による粒度分布測定装置を用いて、メジアン径として測定できる。
【0057】
被覆層4の表面粗さ(Rz)は、例えば、1μm以上20μm以下であることが好ましく、1μm以上15μm以下であることがより好ましい。
なお、本明細書中、被覆層4の表面粗さ(Rz)は、JIS-1994に規定の方法で測定される十点平均粗さを示す。被覆層4の表面粗さは、例えば、配合する表面粗さ材の種類、配合量等により容易に調整することができる。
【0058】
被覆層4に配合される表面粗さ材の種類は特に限定されず、公知のフィラー(充填剤)から適宜選択して使用できる。例えば、シリカ、球状樹脂粒子、金属酸化物等であってよい。
【0059】
表面粗さ材の被覆層用樹脂組成物中の含有量は、被覆層用樹脂組成物100質量部に対し、0.1~50質量部であることが好ましく、1~40質量部であることがより好ましい。
【0060】
(D)イオン導電材
イオン導電性物質としては、例えば、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸カルシウム、塩化リチウム、リチウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、カリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、カリウム N,N-ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド等の無機イオン性導電性物質などが挙げられる。イオン導電材の被覆層用樹脂組成物中の含有量は、被覆層用樹脂組成物100質量部に対し、0.01~5質量部であることが好ましく、0.1~3質量部であることがより好ましい。
【0061】
被覆層4は上記以外の添加剤を更に含有してもよい。例えば、被覆層4は、シランカップリング剤、潤滑剤、帯電調整剤、重合触媒、分散剤、充填剤等の添加剤を更に含有してもよい。
【0062】
被覆層4は、被覆層用樹脂組成物を弾性層3上に塗布し、加熱等により(A)ポリオール成分と(B)イソシアネート成分とを重合及び硬化させることにより形成することができる。塗布液に使用される溶媒は、ポリオール成分及びイソシアネート成分を溶解可能な溶媒であることが好ましく、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等であってよい。
【0063】
被覆層4の厚みは、フィルミングを良好に抑制しつつ、耐久印字性能を向上させる観点から、具体的には1μm以上15μm以下であることが好ましく、3μm以上10μm以下がより好ましい。
【0064】
被覆層用樹脂組成物の塗工は、例えば、被覆層用樹脂組成物の塗工液を塗工する塗布法、塗工液に弾性層等を浸漬するディッピング法、塗工液を弾性層等に吹き付けるスプレーコーティング法等の公知の塗工方法によって行われる。被覆層用樹脂組成物は、そのまま塗工してもよいし、被覆層用樹脂組成物に、例えば、メタノール及びエタノール等のアルコール、キシレン及びトルエン等の芳香族系溶媒、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル系溶媒等の揮発性溶媒、又は、水を加えた塗工液を塗工してもよい。このようにして塗工された被覆層用樹脂組成物を硬化する方法は、被覆層用樹脂組成物の硬化等に必要な熱を加えられる方法であればよく、例えば、被覆層用樹脂組成物が塗工された弾性層等を加熱器で加熱する方法、樹脂組成物が塗工された弾性層等を高湿度下に静置する方法等が挙げられる。被覆層用樹脂組成物を加熱硬化させる際の加熱温度は、例えば、100℃以上200℃以下であることが好ましく、特に120℃以上160℃以下であることがより好ましく、加熱時間は10分以上120分以下であることが好ましく、30分以上60分以下であることがより好ましい。
このようにして形成される被覆層においては、樹脂を形成する前駆体とイオン導電材が反応して一体になっていてもよく、複合体を形成していてもよい。また、イオン導電材が樹脂を形成する前駆体と反応せず、樹脂中に分散していてもよい。
【0065】
[現像ローラの特性]
(硬度)
現像ローラ1のJIS A硬度は、5以上40以下であることが好ましく、10以上30以下であることがより好ましい。
硬度は、被覆層まで形成した現像ローラを、JIS A 6253に従って測定した値とする。
【0066】
(圧縮永久歪)
本発明における現像ローラ1の圧縮永久歪は、1%以上15%以下であることが好ましく、11%以上14%以下であることがより好ましい。
本発明における現像ローラ1の圧縮永久歪は、
図2に示す装置で、下記手順で測定した値とする。
図2に示すように、現像ローラ1の上下を鉄板20で挟む。その際、上下の鉄板20の間にスペーサー21を挟み、圧縮率が25%となるように鉄板の間隔が一定の距離を保つように調整する。その状態のまま、180℃の乾燥機中で22時間放置する。その後、現像ローラ1を挟んでいた鉄板を外し、室温で30分間放置する。その現像ローラ1の直径を測定し、以下の式で圧縮永久歪みを計算する。
試験前の現像ローラ1の直径 D1
試験後の現像ローラ1の直径 D2
芯金の直径 L
スペーサーの高さ H
圧縮永久歪み(%)=(D1-D2)/(D1-H)×100
圧縮率(%)=(D1-H))/(D1-L)×100
【0067】
(現像ローラの体積抵抗値)
現像ローラ1の体積抵抗値は、1×102Ω以上9×109Ω以下であることが好ましい。現像ローラ1の抵抗値が1×102Ω以上であることにより、リーク発生を防止することができる。また、9×109Ω以下であることにより、画像のガサツキを防止することができる。
【0068】
本発明の現像ローラは圧縮永久歪が改善されているため、画像形成装置に組み込むことにより、高品質な画像を提供することができる。
【実施例0069】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0070】
[実施例1]
以下の手順により、実施例1の現像ローラを作製した。
(プライマー層の形成)
無電解ニッケルメッキ処理が施された軸体(SUM23製、直径10mm、長さ274.2mm)をエタノールで洗浄し、その表面にシリコーン系プライマー(商品名「プライマーNo.16」、信越化学工業株式会社製)を塗布した。プライマー処理した軸体を、ギヤオーブンを用いて、150℃の温度にて10分焼成処理した後、常温にて30分以上冷却し、軸体の外周面にプライマー層を形成した。
【0071】
(弾性層の形成)
下記のシリコーンゴム組成物を用いて、押出成形により、軸体の外周面上にシリコーンゴムを含む弾性層を成形した。なお、押出成形では、シリコーンゴム組成物を、正外線加熱炉(IR炉)を用いて270℃で5分間加熱し、更に、ギヤオーブンを用いて200℃で4時間加熱して硬化させた。これにより、プライマー処理された軸体の外周面上にシリコーンゴムを含む弾性層を形成した。弾性層の厚さは、4mmであった。
【0072】
シリコーンゴム組成物の詳細は、以下のとおりである。
(1)導電性付与剤を含まないゴム組成物(KE-904FU、信越化学工業株式会社製) 80質量部
(2)カーボンナノチューブ以外の導電性付与剤を含むゴム組成物(KE-87C40PU、信越化学工業株式会社製) 20質量部
(3)単層カーボンナノチューブ 0.2質量部
(4)付加架橋剤(C25B、信越化学工業株式会社製) 2質量部
(5)白金触媒(C25A、信越化学工業株式会社製) 0.5質量部
【0073】
(被覆層の形成)
次いで、被覆層用樹脂組成物を以下のように調製した。
-被覆層用樹脂組成物-
(A)ポリエステルポリオール(1,6-ヘキサンジオールとアジピン酸との混合モル比[COOH/OH]=12/13、上記測定方法で測定された数平均分子量は、1000~8000の範囲内にあった。) 28質量部
(B)イソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネート) 14質量部
(C)表面粗さ材(シリカ) 3質量部
(D)イオン導電材(カリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、商品名「EF-N112」、三菱マテリアル電子化成株式会社製) 0.2質量部
ポリイソシアネートとポリエステルポリオールとのモル比[NCO/OH]=1.1/1であった。
【0074】
上記被覆層用樹脂組成物を弾性層の外周面にスプレーコーティング法によって塗布し、160℃で30分間加熱して、層厚7μmの被覆層を形成した。このようにして、軸体、弾性層及び被覆層を備えた現像ローラを製造した。
【0075】
[実施例2~6、比較例1~4]
表1に示す配合で弾性層を形成したこと以外は、実施例1と同様に現像ローラを作製した。
【0076】
[評価]
上記実施例及び比較例について、以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0077】
(体積抵抗値)
体積抵抗値は、電気抵抗計(商品名:ULTRA HIGH RESISTANCE METER R8340A、株式会社アドバンテスト製)を用い、被覆層を形成後に現像ローラを水平に置き、現像ローラ全体を載せることのできる長さを有する金メッキ製板を電極とし、500gの荷重を現像ローラにおける軸体の両端それぞれに支持させた状態(合計荷重1000g)にして、軸体と電極との間にDC100Vを印加し、1秒後の電気抵抗計の値とした。
【0078】
(圧縮永久歪)
現像ローラの圧縮永久歪は、上記の方法で求めた。
【0079】
(JIS A硬度)
実施例及び比較例の現像ローラの表面のゴム硬度について、JIS K 6253に従って測定した。
【0080】