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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044491
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/739 20060101AFI20240326BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20240326BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20240326BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20240326BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20240326BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H01L29/78 655F
H01L29/78 652Q
H01L29/78 655G
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/78 652M
H01L29/78 652C
H01L29/91 D
H01L29/78 652P
H01L29/06 301G
H01L29/06 301V
H01L29/78 657D
H01L27/06 102A
H01L27/04 A
H01L27/04 H
H01L27/088 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150042
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】伊喜利 勇貴
【テーマコード(参考)】
5F038
5F048
【Fターム(参考)】
5F038BH16
5F038CA02
5F038CA05
5F038CA08
5F038CA09
5F038CA10
5F038CA12
5F038CD09
5F038CD12
5F038EZ13
5F038EZ20
5F048AA03
5F048AC06
5F048AC10
5F048BC03
5F048BC12
5F048BF15
5F048BF16
5F048CB06
(57)【要約】
【課題】破壊を抑制することができる半導体装置を提供する。
【解決手段】一実施の形態によれば、半導体装置1は、半導体基板50を備え、表面51側から見たとき、半導体基板50は、複数のIGBT1aを含むIGBT領域10と、IGBT領域10を囲むように配置され、複数のダイオード1b~1dを含むダイオード領域20と、ダイオード領域20を囲むように配置された周辺領域30と、を有し、IGBT1aは、ドリフト層53と、バリア層54と、チャネル層55と、エミッタ層56と、1対のトレンチ電極60と、トレンチ絶縁膜65と、フィールドストップ層57と、コレクタ層58と、を有し、ダイオード1bは、ドリフト層53と、半導体層53aと、チャネル層55と、1対のトレンチ電極60と、トレンチ絶縁膜65と、フィールドストップ層57と、カソード層66と、を有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面及び前記第1主面と反対側の第2主面を有する半導体基板を備え、
前記第1主面側から見たとき、前記半導体基板は、
前記半導体基板に形成された複数のIGBTを含むIGBT領域と、
前記IGBT領域を囲むように配置され、前記半導体基板に形成された複数のダイオードを含むダイオード領域と、
前記ダイオード領域を囲むように配置された周辺領域と、
を有し、
前記IGBTは、
第1導電型のドリフト層と、
前記ドリフト層よりも前記第1主面側に設けられた第1導電型のバリア層と、
前記バリア層よりも前記第1主面側に設けられた第2導電型のチャネル層と、
前記チャネル層よりも前記第1主面側に設けられた第1導電型のエミッタ層と、
前記バリア層、前記チャネル層及び前記エミッタ層を、前記第1主面に平行な面内における一方向において両側から挟むように設けられた1対のトレンチ電極と、
前記トレンチ電極と、前記ドリフト層、前記バリア層、前記チャネル層及び前記エミッタ層と、の間に設けられたトレンチ絶縁膜と、
前記ドリフト層よりも前記第2主面側に設けられた第1導電型のフィールドストップ層と、
前記フィールドストップ層よりも前記第2主面側に設けられた第2導電型のコレクタ層と、
を有し、
前記ダイオードは、
第1導電型の前記ドリフト層と、
前記ドリフト層よりも前記第1主面側に設けられた第1導電型の半導体層と、
前記半導体層よりも前記第1主面側に設けられた第2導電型の前記チャネル層と、
前記半導体層及び前記チャネル層を、前記一方向において両側から挟むように設けられた1対の前記トレンチ電極と、
前記トレンチ電極と、前記ドリフト層、前記半導体層及び前記チャネル層と、の間に設けられた前記トレンチ絶縁膜と、
前記ドリフト層よりも前記第2主面側に設けられた第1導電型の前記フィールドストップ層と、
前記フィールドストップ層よりも前記第2主面側に設けられた第1導電型のカソード層と、
を有する、
半導体装置。
【請求項2】
前記ダイオード領域は、前記半導体基板に形成された複数の別のダイオードを含み、
前記別のダイオードは、
前記ドリフト層と、
前記ドリフト層よりも前記第1主面側に設けられた第1導電型の前記半導体層と、
前記半導体層よりも前記第1主面側に設けられた第2導電型の前記チャネル層と、
前記半導体層及び前記チャネル層を、前記一方向において両側から挟むとともに前記一方向に交差する他方向において両側から挟むように設けられた角筒状の角筒トレンチ電極と、
前記角筒トレンチ電極と、前記ドリフト層、前記半導体層及び前記チャネル層と、の間に設けられた前記トレンチ絶縁膜と、
前記ドリフト層よりも前記第2主面側に設けられた第1導電型の前記フィールドストップ層と、
前記フィールドストップ層よりも前記第2主面側に設けられた第1導電型の前記カソード層と、
を有する、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記周辺領域の前記半導体基板は、
前記ドリフト層と、
前記ドリフト層よりも前記第1主面側に設けられた第2導電型のフローティング層と、
前記ドリフト層よりも前記第2主面側に設けられた第1導電型の前記フィールドストップ層と、
前記フィールドストップ層よりも前記第2主面側に設けられた第1導電型の前記カソード層と、
を有する、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1主面側から見たとき、
前記ダイオード領域は、
前記IGBT領域の前記一方向における一端と前記周辺領域との間に配置された第1部分と、
前記IGBT領域の前記一方向における他端と前記周辺領域との間に配置された第2部分と、
前記IGBT領域の前記一方向に交差した他方向おける一端と前記周辺領域との間に配置された第3部分と、
前記IGBT領域の前記他方向における他端と前記周辺領域との間に配置された第4部分と、
を有する、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1主面に絶縁膜を介して設けられたエミッタ電極と、
前記第1主面に前記絶縁膜を介して設けられ、前記IGBT領域よりも前記一方向における前記他端側に配置されたゲート電極と、
前記第2主面に設けられたコレクタ電極と、
をさらに備えた、
請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記一方向において前記IGBT領域と前記周辺領域とを隔てる前記第1部分の幅は、前記一方向において前記IGBT領域と前記周辺領域とを隔てる前記第2部分の幅よりも大きい、
請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記一方向において前記IGBT領域と前記周辺領域とを隔てる前記第1部分の幅は、前記他方向において前記IGBT領域と前記周辺領域とを隔てる前記第3部分の幅よりも大きい、
請求項5に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記IGBTの前記1対のトレンチ電極は、第1トレンチ電極及び第2トレンチ電極を含み、
前記ダイオードの前記1対のトレンチ電極は、2つの前記第2トレンチ電極を含み、
前記第1トレンチ電極は、前記ゲート電極に接続し、
前記エミッタ層、チャネル層及び前記第2トレンチ電極は、前記エミッタ電極に接続した、
請求項5に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記ダイオード領域は、前記半導体基板に形成された複数の別のダイオードを含み、
前記別のダイオードは、
前記ドリフト層と、
前記ドリフト層よりも前記第1主面側に設けられた第1導電型の前記半導体層と、
前記半導体層よりも前記第1主面側に設けられた第2導電型の前記チャネル層と、
前記半導体層及び前記チャネル層を、前記一方向において両側から挟むとともに前記一方向に交差する他方向において両側から挟むように設けられた角筒状の角筒トレンチ電極と、
前記角筒トレンチ電極と、前記ドリフト層、前記半導体層及び前記チャネル層との間に設けられた前記トレンチ絶縁膜と、
前記ドリフト層よりも前記第2主面側に設けられた第1導電型の前記フィールドストップ層と、
前記フィールドストップ層よりも前記第2主面側に設けられた第1導電型の前記カソード層と、
を有し、
前記IGBTの前記1対のトレンチ電極は、第1トレンチ電極及び第2トレンチ電極を含み、
前記第1トレンチ電極は、前記ゲート電極に接続し、
前記エミッタ層、チャネル層、前記第2トレンチ電極及び前記角筒トレンチ電極は、前記エミッタ電極に接続した、
請求項5に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記IGBTは、
前記トレンチ電極を挟んで前記バリア層、前記チャネル層及び前記エミッタ層の反対側に設けられた第2導電型のフローティング層をさらに有し、
前記別のダイオードは、
前記角筒トレンチ電極を挟んで前記半導体層及び前記チャネル層の反対側に設けられた第2導電型の前記フローティング層をさらに有する、
請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記IGBT領域の前記一方向における一端の前記フローティング層と、前記一方向における他端の前記フローティング層との間の前記フローティング層は、前記第1トレンチ電極及び前記第2トレンチ電極に接している、
請求項10に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記半導体基板は、前記IGBT領域を区分するように前記IGBT領域の内部に配置され、複数の前記ダイオードを含む内部ダイオード領域をさらに有する、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記内部ダイオード領域は、前記一方向に交差する他方向に延び、前記ダイオード領域に接続した、
請求項12に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記周辺領域の半導体基板は、
前記ドリフト層と、
前記ドリフト層よりも前記第1主面側に設けられた第2導電型のフローティング層と、
前記ドリフト層よりも前記第2主面側に設けられた第1導電型の前記フィールドストップ層と、
を有し、
前記フィールドストップ層は、コレクタ電極に接続された、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記ダイオード領域は、前記半導体基板に形成された複数の別のダイオードを含み、
前記別のダイオードは、
前記ドリフト層と、
前記ドリフト層よりも前記第1主面側に設けられた第1導電型の前記半導体層と、
前記半導体層よりも前記第1主面側に設けられた第2導電型の前記チャネル層と、
前記半導体層及び前記チャネル層を、前記一方向において両側から挟むとともに前記一方向に交差する他方向において両側から挟むように設けられた角筒状の角筒トレンチ電極と、
前記角筒トレンチ電極と、前記ドリフト層、前記半導体層及び前記チャネル層との間に設けられた前記トレンチ絶縁膜と、
前記ドリフト層よりも前記第2主面側に設けられた第1導電型の前記フィールドストップ層と、
前記フィールドストップ層よりも前記第2主面側に設けられた第1導電型の前記カソード層と、
を有し、
前記第1主面側から見たとき、
前記ダイオード領域は、
前記IGBT領域の前記一方向における一端と前記周辺領域との間に配置された第1部分と、
前記IGBT領域の前記一方向における他端と前記周辺領域との間に配置された第2部分と、
前記IGBT領域の前記一方向に交差した他方向おける一端と前記周辺領域との間に配置された第3部分と、
前記IGBT領域の前記他方向における他端と前記周辺領域との間に配置された第4部分と、
を有し、
前記第3部分及び前記第4部分の少なくともいずれかは、前記別のダイオードを含む、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記第1主面に絶縁膜を介して設けられたエミッタ電極と、
前記第1主面に前記絶縁膜を介して設けられた第1ゲート電極と、
前記第1主面に前記絶縁膜を介して設けられた第2ゲート電極と、
前記第2主面に設けられたコレクタ電極と、
をさらに備え、
前記IGBTの前記1対のトレンチ電極は、第1トレンチ電極及び第2トレンチ電極を含み、
前記ダイオードの前記1対のトレンチ電極は、2つの第3トレンチ電極を含み、
前記第1トレンチ電極は、前記第1ゲート電極に接続し、
前記エミッタ層、前記チャネル層及び前記第2トレンチ電極は、前記エミッタ電極に接続し、
前記第3トレンチ電極は、前記第2ゲート電極に接続した、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記第3トレンチ電極に負電圧を印可した後で、前記第1トレンチ電極に負電圧を印可し、前記第3トレンチ電極に正電圧を印可した後で、前記第1トレンチ電極に正電圧を印可する、
請求項16に記載の半導体装置。
【請求項18】
前記周辺領域の半導体基板は、
前記ドリフト層と、
前記ドリフト層上に設けられ、前記ドリフト層の一部を前記一方向において挟むように設けられた複数の第2導電型のフローティング層と、
前記ドリフト層上及び隣り合う前記フローティング層上に設けられた絶縁膜と、
前記ドリフト層上及び隣り合う前記フローティング層上に前記絶縁膜を介して設けられたプレーナゲートと、
前記ドリフト層よりも前記第2主面側に設けられた第1導電型の前記フィールドストップ層と、
前記フィールドストップ層よりも前記第2主面側に設けられた第1導電型の前記カソード層と、
を有する、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項19】
前記IGBTをオフにする場合に、前記プレーナゲートに負電圧を印可する、
請求項18に記載の半導体装置。
【請求項20】
第1主面及び前記第1主面と反対側の第2主面を有する半導体基板を備え、
前記第1主面側から見たとき、前記半導体基板は、
前記半導体基板に形成された複数のIGBTを含むIGBT領域と、
前記半導体基板に形成された複数のダイオードを含むダイオード領域と、
前記IGBT領域及び前記ダイオード領域を囲むように配置された周辺領域と、
を有し、
前記IGBTは、
第1導電型のドリフト層と、
前記ドリフト層よりも前記第1主面側に設けられた第1導電型のバリア層と、
前記バリア層よりも前記第1主面側に設けられた第2導電型のチャネル層と、
前記チャネル層よりも前記第1主面側に設けられた第1導電型のエミッタ層と、
前記バリア層、前記チャネル層及び前記エミッタ層を、前記第1主面に平行な面内における一方向において両側から挟むように設けられた1対のトレンチ電極と、
前記トレンチ電極と、前記ドリフト層、前記バリア層、前記チャネル層及び前記エミッタ層と、の間に設けられたトレンチ絶縁膜と、
前記ドリフト層よりも前記第2主面側に設けられた第1導電型のフィールドストップ層と、
前記フィールドストップ層よりも前記第2主面側に設けられた第2導電型のコレクタ層と、
を有し、
前記ダイオードは、
前記ドリフト層と、
前記ドリフト層よりも前記第1主面側に設けられた第1導電型の半導体層と、
前記半導体層よりも前記第1主面側に設けられた第2導電型の前記チャネル層と、
前記半導体層及び前記チャネル層を、前記一方向において両側から挟むように設けられた1対の前記トレンチ電極と、
前記トレンチ電極と、前記ドリフト層、前記半導体層及び前記チャネル層と、の間に設けられた前記トレンチ絶縁膜と、
前記ドリフト層よりも前記第2主面側に設けられた第1導電型の前記フィールドストップ層と、
前記フィールドストップ層よりも前記第2主面側に設けられた第1導電型のカソード層と、
を有し、
前記周辺領域の半導体基板は、
前記ドリフト層と、
前記ドリフト層よりも前記第1主面側に設けられた第2導電型のフローティング層と、
前記ドリフト層よりも前記第2主面側に設けられた第1導電型の前記フィールドストップ層と、
前記フィールドストップ層よりも前記第2主面側に設けられた第1導電型の前記カソード層と、
を有する、
半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、1つの半導体基板にIGBT領域及びダイオード領域を有するRC-IGBT(Reverse Conducting-Insulated Gate Bipolar Transistor)が記載されている。IGBTとダイオードとを1チップ化したRC-IGBTは、ガードリング面積を縮小(チップシュリンク)することができる。また、RC-IGBTは、IGBTの動作時にダイオード領域から放熱が行われ、ダイオードの動作時にIGBT領域から放熱が行われる。よって、RC-IGBTは、チップ熱抵抗を低減することができる。したがって、RC-IGBTは、現行のIGBTに比べて、小型化することができるとともに、熱による影響を低減することができる。RC-IGBTは、今後の需要の増加を期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6969662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、RC-IGBTは、IGBT領域とダイオード領域とが交互に面内配置されている。IGBTは、ターンオフの際に蓄積していたキャリア(ホール)をエミッタ側から排出する。しかしながら、IGBTは、周辺領域にエミッタ電極に接続されたコンタクトを有していない。このため、行き場を失ったキャリアは、IGBT領域のアクティブ端に集中する。そうすると、アクティブ端に集中したキャリアによって、発熱等により破壊が引き起こされる場合がある。
【0005】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施の形態によれば、半導体装置は、第1主面及び前記第1主面と反対側の第2主面を有する半導体基板を備え、前記第1主面側から見たとき、前記半導体基板は、前記半導体基板に形成された複数のIGBTを含むIGBT領域と、前記IGBT領域を囲むように配置され、前記半導体基板に形成された複数のダイオードを含むダイオード領域と、前記ダイオード領域を囲むように配置された周辺領域と、を有し、前記IGBTは、第1導電型のドリフト層と、前記ドリフト層よりも前記第1主面側に設けられた第1導電型のバリア層と、前記バリア層よりも前記第1主面側に設けられた第2導電型のチャネル層と、前記チャネル層よりも前記第1主面側に設けられた第1導電型のエミッタ層と、前記バリア層、前記チャネル層及び前記エミッタ層を、前記第1主面に平行な面内における一方向において両側から挟むように設けられた1対のトレンチ電極と、前記トレンチ電極と、前記ドリフト層、前記バリア層、前記チャネル層及び前記エミッタ層との間に設けられたトレンチ絶縁膜と、前記ドリフト層よりも前記第2主面側に設けられた第1導電型のフィールドストップ層と、前記フィールドストップ層よりも前記第2主面側に設けられた第2導電型のコレクタ層と、を有し、前記ダイオードは、第1導電型の前記ドリフト層と、前記ドリフト層よりも前記第1主面側に設けられた第1導電型の半導体層と、前記半導体層よりも前記第1主面側に設けられた第2導電型の前記チャネル層と、前記半導体層及び前記チャネル層を、前記一方向において両側から挟むように設けられた1対の前記トレンチ電極と、前記トレンチ電極と、前記ドリフト層、前記半導体層及び前記チャネル層との間に設けられた前記トレンチ絶縁膜と、前記ドリフト層よりも前記第2主面側に設けられた第1導電型の前記フィールドストップ層と、前記フィールドストップ層よりも前記第2主面側に設けられた第1導電型のカソード層と、を有する。
【0007】
一実施の形態によれば、半導体装置は、第1主面及び前記第1主面と反対側の第2主面を有する半導体基板を備え、前記第1主面側から見たとき、前記半導体基板は、前記半導体基板に形成された複数のIGBTを含むIGBT領域と、前記半導体基板に形成された複数のダイオードを含むダイオード領域と、前記IGBT領域及び前記ダイオード領域を囲むように配置された周辺領域と、を有し、前記IGBTは、第1導電型のドリフト層と、前記ドリフト層よりも前記第1主面側に設けられた第1導電型のバリア層と、前記バリア層よりも前記第1主面側に設けられた第2導電型のチャネル層と、前記チャネル層よりも前記第1主面側に設けられた第1導電型のエミッタ層と、前記バリア層、前記チャネル層及び前記エミッタ層を、前記第1主面に平行な面内における一方向において両側から挟むように設けられた1対のトレンチ電極と、前記トレンチ電極と、前記ドリフト層、前記バリア層、前記チャネル層及び前記エミッタ層との間に設けられたトレンチ絶縁膜と、前記ドリフト層よりも前記第2主面側に設けられた第1導電型のフィールドストップ層と、前記フィールドストップ層よりも前記第2主面側に設けられた第2導電型のコレクタ層と、を有し、前記ダイオードは、前記ドリフト層と、前記ドリフト層よりも前記第1主面側に設けられた第1導電型の半導体層と、前記半導体層よりも前記第1主面側に設けられた第2導電型の前記チャネル層と、前記半導体層及び前記チャネル層を、前記一方向において両側から挟むように設けられた1対の前記トレンチ電極と、前記トレンチ電極と、前記ドリフト層、前記半導体層及び前記チャネル層との間に設けられた前記トレンチ絶縁膜と、前記ドリフト層よりも前記第2主面側に設けられた第1導電型の前記フィールドストップ層と、前記フィールドストップ層よりも前記第2主面側に設けられた第1導電型のカソード層と、を有し、前記周辺領域の半導体基板は、前記ドリフト層と、前記ドリフト層よりも前記第1主面側に設けられた第2導電型のフローティング層と、前記ドリフト層よりも前記第2主面側に設けられた第1導電型の前記フィールドストップ層と、前記フィールドストップ層よりも前記第2主面側に設けられた第1導電型の前記カソード層と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
前記一実施の形態によれば、破壊を抑制することができる半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】比較例に係る半導体装置の表面を例示した平面図である。
図2】比較例に係る半導体装置の裏面を例示した平面図である。
図3】比較例に係る半導体装置の周辺領域を例示した断面図である。
図4】実施形態1に係る半導体装置を例示した平面図である。
図5】実施形態1に係る半導体装置を例示した断面図であり、図4のV-V線の断面を示す。
図6】実施形態1に係る半導体装置において、ダイオード領域を例示した拡大平面図であり、図4のVI-VI線の平面を示す。
図7】実施形態1に係る半導体装置において、IGBT領域及びダイオード領域を例示した平面図であり、図4のVII-VII線の平面を示す。
図8】実施形態1に係る半導体装置において、IGBTを例示した断面図であり、図7のVIII-VIII線の断面を示す。
図9】実施形態1に係る半導体装置において、ダイオードを例示した断面図であり、図6のIX-IX線の断面を示す。
図10】実施形態1に係る半導体装置において、ダイオードを例示した断面図であり、図6のX-X線及び図7のX-Xの断面を示す。
図11】実施形態1に係る半導体装置において、裏面のN++型カソード層及びP++型コレクタ層の形成方法を例示した断面図である。
図12】実施形態1に係る半導体装置において、裏面のN++型カソード層及びP++型コレクタ層の形成方法を例示した断面図である。
図13】実施形態1に係る半導体装置において、半導体基板の裏面を例示した平面図である。
図14】実施形態2に係る半導体装置において、半導体基板の表面を例示した平面図である。
図15】実施形態2に係る半導体装置において、半導体基板の裏面を例示した平面図である。
図16】実施形態3に係る半導体装置を例示した断面図であり、図4のV-V線と同様の位置の断面を示す。
図17】実施形態4に係る半導体装置を例示した平面図であり、図4のVII-VII線と同様の位置の平面を示す。
図18】実施形態5に係る半導体装置を例示した断面図であり、図4のV-V線と同様の位置の断面を示す。
図19】実施形態5に係る半導体装置において、RC-IGBTの接続を例示した回路図である。
図20】実施形態5に係る半導体装置において、IGBTのトレンチ電極及びダイオードのトレンチ電極の電圧を例示したグラフであり、横軸は、時間を示し、縦軸は、電圧を示す。
図21】実施形態5に係る半導体装置において、キャリアの排出を例示した図である。
図22】実施形態5に係る半導体装置において、キャリアの排出を例示した図である。
図23】実施形態5に係る半導体装置において、キャリアの排出を例示した図である。
図24】実施形態6に係る半導体装置において、周辺領域の半導体基板を例示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、図面においては、却って、煩雑になる場合または空隙との区別が明確である場合には、断面であってもハッチング等を省略する場合がある。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。また、図が煩雑にならないように、適宜、符号を省略している。
【0011】
まず、比較例に係る半導体装置及びこれに対して発明者が発見した課題を説明する。その後、実施形態に係る半導体装置を説明する。なお、比較例に係る半導体装置及びその課題も、実施形態の技術思想の範囲に含まれる。
【0012】
(比較例)
図1は、比較例に係る半導体装置の表面を例示した平面図である。図2は、比較例に係る半導体装置の裏面を例示した平面図である。図1及び図2に示すように、比較例の半導体装置101では、半導体基板150の表面151側から見て、IGBT領域110及びダイオード領域120が一方向に交互に配置されている。半導体基板150の表面に直交する方向をZ軸方向とすれば、IGBT領域110及びダイオード領域120は、Y軸方向に延び、X軸方向に交互に配置されている。半導体基板150の表面151及び裏面152の周辺を、周辺領域130(ターミネーション領域とも呼ぶ。)と呼ぶ。半導体装置101は、例えば、表面151側にエミッタ電極が接続され、裏面152側にコレクタ電極が接続される。
【0013】
IGBT領域110におけるIGBTは、ターンオフの際に蓄積していたキャリア(例えば、ホール)をエミッタ電極側から排出する。しかしながら、周辺領域130には、エミッタ電位に接続されたコンタクトが形成されていない。このため、行き場を失ったキャリアがIGBT領域110等のアクティブ領域の端部に集中することになる。よって、半導体装置101は、このキャリアの集中により、発熱破壊を起こす場合がある。このように、比較例の半導体装置101は、キャリア集中による発熱破壊の課題を有している。
【0014】
また、比較例の半導体装置101は、リーク電流の課題を有している。図3は、比較例に係る半導体装置101の周辺領域130を例示した断面図である。図3に示すように、半導体装置101は、空乏層169が拡がる周辺領域130において、N-型ドリフト層153、P型半導体層159、絶縁膜164、エミッタ電極141、N+型フィールドストップ層157、P+型コレクタ層158、コレクタ電極142を有している。
【0015】
このように、比較例の半導体装置101は、周辺領域130の裏面152に、P+型コレクタ層158が形成されている。よって、比較例の半導体装置101には、P+型コレクタ層158、N+型フィールドストップ層157及びP型半導体層159による寄生pnpバイポーラが形成される。これにより、半導体装置101に寄生pnpバイポーラを通してリーク電流が流れてしまう。リーク電流は、半導体装置101の発熱破壊を誘発させ、アプリケーションの損失を引き起こす。
【0016】
例えば、半導体装置は、半導体基板150の表面151における一方向側の一端にゲートパッドを有する場合がある。IGBTのターンオフの際に、ゲートパッドから遠い領域において、ゲート配線抵抗によるゲート遅延が起こる。これにより、半導体装置には、電流集中が発生する。
【0017】
RC-IGBTは、IGBTとダイオードとを並列接続するよりも面積は小さくなる。しかしながら、1チップのサイズは、IGBT単体よりも大きくなることが想定される。そのため、ゲート遅延による各エミッタパッド間の電位差が大きくなると考えられる。よって、ゲートパッドから離れた一方向の端部において、ゲート遅延による電流集中が発生する。
【0018】
(実施形態1)
次に、実施形態1に係る半導体装置を説明する。本実施形態の半導体装置は、上述した比較例の半導体装置101における課題の少なくとも1つを解決する。図4は、実施形態1に係る半導体装置を例示した平面図である。図5は、実施形態1に係る半導体装置を例示した断面図であり、図4のV-V線の断面を示す。図6は、実施形態1に係る半導体装置において、ダイオード領域を例示した拡大平面図であり、図4のVI-VI線の平面を示す。図7は、実施形態1に係る半導体装置において、IGBT領域及びダイオード領域を例示した平面図であり、図4のVII-VII線の平面を示す。図8は、実施形態1に係る半導体装置において、IGBTを例示した断面図であり、図7のVIII-VIII線の断面を示す。図9は、実施形態1に係る半導体装置において、ダイオードを例示した断面図であり、図6のIX-IX線の断面を示す。図10は、実施形態1に係る半導体装置において、ダイオードを例示した断面図であり、図6のX-X線及び図7のX-Xの断面を示す。図6及び図7において、エミッタ電極41の一部及び絶縁膜64の一部は、取り除かれている。
【0019】
図4図10に示すように、半導体装置1は、表面51(第1主面)及び裏面52(第2主面)を有する半導体基板50を備える。裏面52は、表面51と反対側の面である。半導体装置1は、表面51に絶縁膜64を介して設けられたエミッタ電極41、表面51に絶縁膜64を介して設けられたゲート電極40、及び、裏面52に設けられたコレクタ電極を備えてもよい。
【0020】
ここで、半導体装置1の説明の便宜のために、XYZ直交座標軸系を導入する。表面51に直交する方向をZ軸方向とし、Z軸方向に直交する2つの方向をX軸方向及びY軸方向とする。裏面52から表面51に向かう方向を+Z軸方向とする。+Z軸方向を、便宜上、上方とし、-Z軸方向を、下方とする。なお、上方及び下方は、実際の半導体装置1を使用する際の方向を示すものではない。
【0021】
表面51側から見たとき、半導体装置1は、IGBT領域10、ダイオード領域20及び周辺領域30を有している。IGBT領域10は、半導体基板50に形成された複数のIGBT1aを含む。ダイオード領域20は、半導体基板50に形成された複数のダイオード1b~1dを含む。ダイオード領域20は、IGBT領域10と周辺領域30との間に配置されている。ダイオード領域20は、IGBT領域10を囲むように配置されている。周辺領域30は、IGBT領域10及びダイオード領域20を囲むように配置されている。
【0022】
IGBT領域10は、例えば、X軸方向に延びた領域11、領域12及び領域13を有している。領域11、領域12及び領域13は、Y軸方向に並んでいる。具体的には、領域11は、IGBT領域10の+Y軸方向側に配置され、領域13は、IGBT領域10の-Y軸方向側に配置されている。領域12は、領域11と領域13との間に配置されている。
【0023】
ダイオード領域20は、大まかに言えば、矩形の枠状である。ダイオード領域20は、表面51側から見たとき、領域21(第1部分)、領域22a(第2部分)、領域22b(第2部分)、領域23(第3部分)、及び、領域24(第4部分)を有している。
【0024】
領域21は、IGBT領域10よりも+X軸方向側の部分である。具体的には、領域21は、領域11、領域12及び領域13よりも+X軸方向側の部分である。領域21は、Y軸方向に延びている。領域21は、IGBT領域10のX軸方向における+X軸方向側の一端と周辺領域30との間に配置されている。領域21は、X軸方向において、IGBT領域10と周辺領域30とを隔てている。
【0025】
領域22aは、IGBT領域10における領域11よりも-X軸方向側の部分である。領域22aは、Y軸方向に延びている。領域22bは、IGBT領域10における領域13よりも-X軸方向側の部分である。領域22bは、Y軸方向に延びている。領域22a及び領域22bは、IGBT領域10のX軸方向における-X軸方向側の他端と周辺領域30との間に配置されている。領域22a及び領域22bは、X軸方向において、IGBT領域10と周辺領域30とを隔てている。
【0026】
領域23は、IGBT領域10よりも+Y軸方向側の部分である。具体的には、領域23は、領域11よりも+Y軸方向側の部分である。領域23は、X軸方向に延びている。領域23は、IGBT領域10のY軸方向における+Y軸方向側の一端と周辺領域30との間に配置されている。領域23は、Y軸方向において、IGBT領域10と周辺領域30とを隔てている。
【0027】
領域24は、IGBT領域10よりも-Y軸方向側の部分である。具体的には、領域24は、領域13よりも-Y軸方向側の部分である。領域24は、X軸方向に延びている。領域24は、IGBT領域10のY軸方向における-Y軸方向側の他端と周辺領域30との間に配置されている。領域24は、Y軸方向において、IGBT領域10と周辺領域30とを隔てている。
【0028】
X軸方向において、IGBT領域10と周辺領域30とを隔てる領域21の幅は、X軸方向において、IGBT領域10と周辺領域30とを隔てる領域22a及び領域22bの幅よりも大きい。また、X軸方向において、IGBT領域10と周辺領域30とを隔てる領域21の幅は、Y軸方向において、IGBT領域10と周辺領域30とを隔てる領域23の幅及び領域24の幅よりも大きい。
【0029】
周辺領域30は、矩形の枠状である。周辺領域30は、領域31、領域32、領域33及び領域34を有している。領域31は、領域21よりも+X軸方向側の部分である。領域31は、Y軸方向に延びている。領域32は、領域22a及び領域22bよりも-X軸方向側の部分である。領域32は、Y軸方向に延びている。領域33は、領域23よりも+Y軸方向側の部分である。領域33は、X軸方向に延びている。領域34は、領域24よりも-Y軸方向側の部分である。領域33は、X軸方向に延びている。
【0030】
ゲート電極40は、IGBT領域10のX軸方向における他端側に配置されている。例えば、ゲート電極40は、IGBT領域10の-X軸方向側に配置されている。具体的には、ゲート電極40は、領域12よりも-X軸方向側に配置されている。ゲート電極40は、ゲート電極40よりも+Y軸方向側に配置された領域11、ゲート電極40よりも+X軸方向側に配置された領域12、及び、ゲート電極40よりも-Y軸方向側に配置された領域13に囲まれている。ゲート電極40は、表面51に絶縁膜64を介して設けられてもよい。
【0031】
本実施形態の半導体装置1は、IGBT領域10を囲む領域において、周辺領域30と連結する形でダイオード領域20が配置されている。また、半導体装置1は、ゲート電極40から遠い位置のダイオード領域20の幅を広くしている。
【0032】
<IGBT領域>
IGBT領域10の半導体基板50には、複数のIGBT1aが形成されている。IGBT1aは、N-型ドリフト層53、N+型バリア層54、P型チャネル層55、N+型エミッタ層56、1対のトレンチ電極60、トレンチ絶縁膜65、N+型フィールドストップ層57、P++型コレクタ層58、及び、P型フローティング層59を有している。図が煩雑にならないように、トレンチ絶縁膜65及び半導体基板50上の絶縁膜64及を太線で示している。
【0033】
なお、N++型及びP++型は、それぞれ低抵抗のN導電型及びP導電型を示す。N+型及びP+型は、それぞれN++型及びP++型よりも高抵抗であるが、N型及びP型よりも低抵抗のN導電型及びP導電型を示す。P-型及びN-型は、それぞれN型及びP型よりも高抵抗のN導電型及びP導電型であることを示す。よって、N型及びP型は、それぞれN+型及びP+型とP-型及びN-型との間の抵抗のN導電型及びP導電型であることを示す。N+型及びP+型は、それぞれN++型及びP++型とP型及びN型との間の抵抗のN導電型及びP導電型であることを示す。以下、特に言及しない場合には同様の意味を示す。N導電型を第1導電型という場合があり、P導電型を第2導電型という場合がある。
【0034】
なお、N導電型を第2導電型とし、P導電型を第1導電型としてもよい。また、本開示の各構成の導電型を逆にした半導体装置も、本開示の技術思想の範囲に含まれる。さらに、N++型、N+型、N型及びN-型の各半導体層の抵抗は、例示である。本開示で示される抵抗よりも大きい場合があってもよいし、本開示で示される抵抗よりも小さい場合があってもよい。同様に、P++型、P+型、P型及びP-型の各半導体層の抵抗は、例示である。各半導体層の抵抗の大小関係は、場合によっては逆転してもよい。
【0035】
N-型ドリフト層53は、N+型フィールドストップ層57よりも表面51側に設けられている。後述するように、N-型ドリフト層53は、IGBT領域10、ダイオード領域20及び周辺領域30に渡って設けられている。
【0036】
N+型バリア層54は、N-型ドリフト層53よりも表面51側に設けられている。N+型バリア層54は、表面51側から見て、例えば、Y軸方向に延びている。N+型バリア層54は、X軸方向において両側から1対のトレンチ電極60に挟まれている。すなわち、N+型バリア層54は、1対のトレンチ電極60の間に配置されている。
【0037】
P型チャネル層55は、N+型バリア層54よりも表面51側に設けられている。P型チャネル層55は、1対のトレンチ電極60の間に配置されている。P型チャネル層55は、絶縁膜64及びN+型エミッタ層56を貫通した貫通孔に充填されたエミッタ電極41と接続する。
【0038】
N+型エミッタ層56は、P型チャネル層55よりも表面51側に設けられている。N+型エミッタ層56は、1対のトレンチ電極60の間に配置されている。N+型エミッタ層56は、絶縁膜64を貫通した貫通孔に充填されたエミッタ電極41と接続する。
【0039】
1対のトレンチ電極60は、N+型バリア層54、P型チャネル層55及びN+型エミッタ層56を、X軸方向において両側から挟むように設けられている。各トレンチ電極60は、表面51側から見て、例えば、Y軸方向に延びている。例えば、1対のトレンチ電極60のうち、-X軸方向側のトレンチ電極60を、トレンチ電極61と呼び、+X軸方向側のトレンチ電極60を、トレンチ電極62と呼ぶ。よって、IGBT1aの1対のトレンチ電極60は、トレンチ電極61(第1トレンチ電極)及びトレンチ電極62(第2トレンチ電極)を含む。トレンチ電極61は、例えば、図示しないゲート配線を介してゲート電極40に接続する。トレンチ電極62は、絶縁膜64を貫通した貫通孔に充填されたエミッタ電極41と接続する。よって、N+型エミッタ層56、P型チャネル層55及びトレンチ電極62は、エミッタ電極41と接続する。1対のトレンチ電極60の間の構造をトレンチ間構造と呼ぶ。例えば、IGBT1aのトレンチ間構造は、N+型バリア層54、P型チャネル層55、及び、N+型エミッタ層56を含む。IGBT1aのトレンチ間構造は、コンタクト層等の他の部材を含んでもよい。
【0040】
P型フローティング層59は、複数のIGBT1aにおける隣り合うIGBT1aの間に設けられている。例えば、P型フローティング層59は、隣り合うIGBT1aのうち、-X軸方向側のIGBT1aのトレンチ電極62と、+X軸方向側のIGBT1aのトレンチ電極61との間に設けられている。P型フローティング層59は、トレンチ電極60を挟んでN+型バリア層54、P型チャネル層55及びN+型エミッタ層56の反対側に設けられている。
【0041】
P型フローティング層59は、N-型ドリフト層53よりも表面51側に設けられている。よって、N-型ドリフト層53上には、-X軸方向側から、X軸方向に沿って、P型フローティング層59、トレンチ電極61(トレンチ絶縁膜65で覆われている。)、トレンチ間構造、トレンチ電極62(トレンチ絶縁膜65で覆われている。)、及び、P型フローティング層59が配置されている。IGBT領域10において、このような構成がX軸方向に繰り返すように配置されている。
【0042】
IGBT領域10のX軸方向における+X軸方向側の一端のP型フローティング層59と、IGBT領域10のX軸方向における-X軸方向側の他端のP型フローティング層59との間のP型フローティング層59は、トレンチ電極61及びトレンチ電極62に接している。言い換えれば、IGBT領域10のX軸方向の端部以外では、隣り合うIGBT1aの間にP型フローティング層59が形成されている。
【0043】
トレンチ絶縁膜65は、トレンチ電極60と、N-型ドリフト層53、N+型バリア層54、P型チャネル層55、N+型エミッタ層56及びP型フローティング層59と、の間に設けられている。
【0044】
N+型フィールドストップ層57は、N-型ドリフト層53よりも裏面52側に設けられている。P++型コレクタ層58は、N+型フィールドストップ層57よりも裏面52側に設けられている。P++型コレクタ層190は、コレクタ電極と接続されている。なお、図が煩雑にならないように、コレクタ電極は省略されている。
【0045】
<ダイオード領域>
ダイオード領域20の半導体基板50には、複数のダイオードが形成されている。複数のダイオードは、複数のダイオード1b、複数のダイオード1c及び複数のダイオード1dを含んでいる。ダイオード1b、ダイオード1c、ダイオード1dを総称して、ダイオード1bcdと呼ぶ場合がある。ダイオード1b、ダイオード1c及びダイオード1dは、半導体層等の形状が異なる。
【0046】
ダイオード1bは、N-型ドリフト層53、N-型半導体層53a、P型チャネル層55、1対のトレンチ電極60、トレンチ絶縁膜65、N+型フィールドストップ層57及びN++型カソード層66を有している。
【0047】
N-型ドリフト層53は、N+型フィールドストップ層57よりも表面51側に設けられている。N-型ドリフト層53は、IGBT領域10、ダイオード領域20及び周辺領域30に渡って設けられている。
【0048】
N-型半導体層53aは、N-型ドリフト層53よりも表面51側に設けられている。N-型半導体層53aは、表面51側から見て、例えば、Y軸方向に延びている。N-型半導体層53aは、N-型ドリフト層53の一部が一対のトレンチ電極60の間に延びたものでもよい。よって、N-型半導体層53aは、N-型ドリフト層53と同じ抵抗値を有してもよい。N-型半導体層53aは、X軸方向において両側から1対のトレンチ電極60に挟まれている。すなわち、N-型半導体層53aは、1対のトレンチ電極60の間に配置されている。
【0049】
P型チャネル層55は、N-型半導体層53aよりも表面51側に設けられている。P型チャネル層55は、1対のトレンチ電極60の間に配置されている。P型チャネル層55は、絶縁膜64を貫通した貫通孔に充填されたエミッタ電極41と接続する。
【0050】
1対のトレンチ電極60は、N-型半導体層53a及びP型チャネル層55を、X軸方向において両側から挟むように設けられている。各トレンチ電極60は、表面51側から見て、例えば、Y軸方向に延びている。例えば、各トレンチ電極60は、図示しないエミッタ配線を介してエミッタ電極41に接続されている。よって、各トレンチ電極60は、IGBT1aのトレンチ電極62と同様に、エミッタ電極41に接続する。したがって、ダイオード1bの1対のトレンチ電極60は、2つのトレンチ電極62を含む。
【0051】
1対のトレンチ電極60の間の構造をトレンチ間構造と呼ぶ。例えば、ダイオード1bのトレンチ間構造は、N-型半導体層53a及びP型チャネル層55を含む。ダイオード1bのトレンチ間構造は、コンタクト層等の他の部材を含んでもよい。
【0052】
N-型ドリフト層53上には、-X軸方向側から、X軸方向に沿って、トレンチ電極62(トレンチ絶縁膜65で覆われている。)、トレンチ間構造、トレンチ電極62(トレンチ絶縁膜65で覆われている。)が配置されている。ダイオード領域20における複数のダイオード1bが配置された領域において、このような構成がX軸方向に繰り返すように配置されている。
【0053】
トレンチ絶縁膜65は、トレンチ電極60と、N-型ドリフト層53、N-型半導体層53a及びP型チャネル層55と、の間に設けられている。
【0054】
N+型フィールドストップ層57は、N-型ドリフト層53よりも裏面52側に設けられている。N++型カソード層66は、N+型フィールドストップ層57よりも裏面52側に設けられている。N++型カソード層66は、コレクタ電極と接続されている。
【0055】
ダイオード領域20は、半導体基板50に形成された複数のダイオード1cを含んでもよい。ダイオード1cは、ダイオード1bとは別の構成を含んでいる。具体的には、ダイオード1cは、隣り合うトレンチ電極60を連結する連結トレンチ電極を含んでいる。トレンチ電極60及び連結トレンチ電極は、角筒トレンチ電極を形成する。
【0056】
ダイオード1cは、N-型ドリフト層53、N-型半導体層53a、P型チャネル層55、角筒トレンチ電極68、トレンチ絶縁膜65、N+型フィールドストップ層57、N++型カソード層66、及び、P型フローティング層59を有している。角筒トレンチ電極68は、1対のトレンチ電極60及び1対の連結トレンチ電極67を含んでいる。
【0057】
N-型ドリフト層53は、N+型フィールドストップ層57よりも表面51側に設けられている。N-型ドリフト層53は、IGBT領域10、ダイオード領域20及び周辺領域30に渡って設けられている。
【0058】
N-型半導体層53aは、N-型ドリフト層53よりも表面51側に設けられている。N-型半導体層53aは、角筒トレンチ電極68で囲まれた内部に配置されている。すなわち、N-型半導体層53aは、X軸方向において、両側から1対のトレンチ電極60で挟まれ、Y軸方向において、両側から1対の連結トレンチ電極67で挟まれている。N-型半導体層53aは、N-型ドリフト層53の一部が角筒トレンチ電極68で囲まれた内部に延びたものでもよい。よって、N-型半導体層53aは、N-型ドリフト層53と同じ抵抗値を有してもよい。
【0059】
P型チャネル層55は、N-型半導体層53aよりも表面51側に設けられている。P型チャネル層55は、角筒トレンチ電極68で囲まれた内部に配置されている。すなわち、P型チャネル層55は、X軸方向において、両側から1対のトレンチ電極60で挟まれ、Y軸方向において、両側から1対の連結トレンチ電極67で挟まれている。P型チャネル層55は、絶縁膜64を貫通した貫通孔に充填されたエミッタ電極41と接続する。
【0060】
角筒トレンチ電極68は、中心軸がZ軸方向に延びた角筒状である。角筒トレンチ電極68は、N-型半導体層53a及びP型チャネル層55を、X軸方向において両側から挟むとともにY軸方向において両側から挟むように設けられている。角筒トレンチ電極68における1対の連結トレンチ電極67は、表面51側から見て、トレンチ電極60が延びる方向に交差する方向に延びている。具体的には、1対の連結トレンチ電極67は、X軸方向に延びている。1対の連結トレンチ電極67は、1対のトレンチ電極60と接続している。一方の連結トレンチ電極67は、各トレンチ電極60の一端と接続する。他方の連結トレンチ電極67は、各トレンチ電極60の他端と接続する。
【0061】
具体的には、+Y軸方向側の連結トレンチ電極67の+X軸方向側の一端は、+X軸方向側のトレンチ電極60の+Y軸方向側の一端と接続する。+Y軸方向側の連結トレンチ電極67の-X軸方向側の他端は、-X軸方向側のトレンチ電極60の+Y軸方向側の一端と接続する。-Y軸方向側の連結トレンチ電極67の+X軸方向側の一端は、+X軸方向側のトレンチ電極60の-Y軸方向側の他端と接続する。-Y軸方向側の連結トレンチ電極67の-X軸方向側の他端は、-X軸方向側のトレンチ電極60の-Y軸方向側の他端と接続する。これにより、1対の連結トレンチ電極67及び1対のトレンチ電極60は、角筒トレンチ電極68を形成する。
【0062】
角筒トレンチ電極68は、絶縁膜64を貫通した貫通孔に充填されたエミッタ電極41に接続する。よって、N+型エミッタ層56、P型チャネル層55、トレンチ電極62(IGBT1a)及び角筒トレンチ電極68は、エミッタ電極41と接続する。角筒トレンチ電極68で囲まれた内部の構造をトレンチ間構造と呼ぶ。例えば、ダイオード1cのトレンチ間構造は、N-型半導体層53a及びP型チャネル層55を含む。ダイオード1cのトレンチ間構造は、コンタクト層等の他の部材を含んでもよい。
【0063】
P型フローティング層59は、複数のダイオード1cにおける隣り合うダイオード1cの間に設けられている。例えば、P型フローティング層59は、X軸方向に隣り合うダイオード1cのうち、-X軸方向側のダイオード1cの角筒トレンチ電極68と、+X軸方向側のダイオード1cの角筒トレンチ電極68との間に設けられている。また、P型フローティング層59は、Y軸方向に隣り合うダイオード1cのうち、-Y軸方向側のダイオード1cの角筒トレンチ電極68と、+Y軸方向側のダイオード1cの角筒トレンチ電極68との間に設けられている。P型フローティング層59は、角筒トレンチ電極68を挟んでN-型半導体層53a及びP型チャネル層55の反対側に設けられている。
【0064】
P型フローティング層59は、N-型ドリフト層53よりも表面51側に設けられている。よって、N-型ドリフト層53上には、-X軸方向側から、X軸方向に沿って、P型フローティング層59、トレンチ電極60(トレンチ絶縁膜65で覆われている。)、トレンチ間構造、トレンチ電極60(トレンチ絶縁膜65で覆われている。)、及び、P型フローティング層59が配置されている。ダイオード領域20における複数のダイオード1cが配置された領域において、このような構成がX軸方向に繰り返すように配置されている。また、N-型ドリフト層53上には、-Y軸方向側から、Y軸方向に沿って、P型フローティング層59、連結トレンチ電極67(トレンチ絶縁膜65で覆われている。)、トレンチ間構造、連結トレンチ電極67(トレンチ絶縁膜65で覆われている。)、及び、P型フローティング層59が配置されている。ダイオード領域20における複数のダイオード1cが配置された領域において、このような構成がY軸方向に繰り返すように配置されている。
【0065】
トレンチ絶縁膜65は、角筒トレンチ電極68と、N-型ドリフト層53、N-型半導体層53a、P型チャネル層55及びP型フローティング層59と、の間に設けられている。
【0066】
N+型フィールドストップ層57は、N-型ドリフト層53よりも裏面52側に設けられている。N++型カソード層66は、N+型フィールドストップ層57よりも裏面52側に設けられている。N++型カソード層66は、コレクタ電極と接続されている。
【0067】
ダイオード領域20は、半導体基板50に形成された複数のダイオード1dを含んでもよい。ダイオード1dは、例えば、領域23及び領域24に形成されている。ダイオード1dは、IGBT1aと同じトレンチを使用してもよい。この場合には、ダイオード1dは、IGBT1aの構成からN+型バリア層54及びN+型エミッタ層56を除くことにより形成される。よって、ダイオード1dは、IGBT1aの構成から非アクティブ化することにより形成される。裏面52にN++型カソード層66を形成することでダイオード1dとして動作させることができる。
【0068】
ダイオード1dは、N-型ドリフト層53、N-型半導体層53a、P型チャネル層55、1対のトレンチ電極60、トレンチ絶縁膜65、N+型フィールドストップ層57、N++型カソード層66、及び、P型フローティング層59を有している。
【0069】
N-型ドリフト層53は、N+型フィールドストップ層57よりも表面51側に設けられている。N-型ドリフト層53は、IGBT領域10、ダイオード領域20及び周辺領域30に渡って設けられている。
【0070】
N-型半導体層53aは、N-型ドリフト層53よりも表面51側に設けられている。N-型半導体層53aは、トレンチ電極60で囲まれた内部に配置されている。N-型半導体層53aは、表面51側から見て、例えば、Y軸方向に延びている。N-型半導体層53aは、N-型ドリフト層53の一部が一対のトレンチ電極60の間に延びたものでもよい。よって、N-型半導体層53aは、N-型ドリフト層53と同じ抵抗値を有してもよい。N-型半導体層53aは、X軸方向において両側から1対のトレンチ電極60に挟まれている。すなわち、N-型半導体層53aは、1対のトレンチ電極60の間に配置されている。
【0071】
P型チャネル層55は、N-型半導体層53aよりも表面51側に設けられている。P型チャネル層55は、1対のトレンチ電極60の間に配置されている。P型チャネル層55は、絶縁膜64を貫通した貫通孔に充填されたエミッタ電極41と接続する。
【0072】
1対のトレンチ電極60は、N-型半導体層53a及びP型チャネル層55を、X軸方向において両側から挟むように設けられている。各トレンチ電極60は、表面51側から見て、例えば、Y軸方向に延びている。トレンチ電極60は、IGBT1aのトレンチ電極62と同様に、絶縁膜64を貫通した貫通孔に充填されたエミッタ電極41に接続してもよい。したがって、ダイオード1bの1対のトレンチ電極60は、2つのトレンチ電極62を含む。P型チャネル層55及びトレンチ電極62は、絶縁膜64を貫通した貫通孔に充填されたエミッタ電極41と接続する。1対のトレンチ電極60の間の構造をトレンチ間構造と呼ぶ。例えば、ダイオード1dのトレンチ間構造は、N-型半導体層53a及びP型チャネル層55を含む。ダイオード1dのトレンチ間構造は、コンタクト層等の他の部材を含んでもよい。
【0073】
P型フローティング層59は、複数のダイオード1dにおける隣り合うダイオード1dの間に設けられている。例えば、P型フローティング層59は、隣り合うダイオード1dのうち、-X軸方向側のダイオード1dの+X軸方向側のトレンチ電極60と、+X軸方向側のダイオード1dの-X軸方向側のトレンチ電極60との間に設けられている。P型フローティング層59は、トレンチ電極60を挟んでN-型半導体層53a及びP型チャネル層55の反対側に設けられている。
【0074】
P型フローティング層59は、N-型ドリフト層53よりも表面51側に設けられている。よって、N-型ドリフト層53上には、-X軸方向側から、X軸方向に沿って、P型フローティング層59、トレンチ電極60(トレンチ絶縁膜65で覆われている。)、トレンチ間構造、トレンチ電極60(トレンチ絶縁膜65で覆われている。)及びP型フローティング層59が配置されている。ダイオード領域20における複数のダイオード1dが配置された領域において、このような構成がX軸方向に繰り返すように配置されている。
【0075】
トレンチ絶縁膜65は、トレンチ電極60と、N-型ドリフト層53、N-型半導体層53a、P型チャネル層55、及び、P型フローティング層59と、の間に設けられている。
【0076】
N+型フィールドストップ層57は、N-型ドリフト層53よりも裏面52側に設けられている。N++型カソード層66は、N+型フィールドストップ層57よりも裏面52側に設けられている。N++型カソード層66は、コレクタ電極と接続されている。
【0077】
<周辺領域>
周辺領域30の半導体基板50は、N-型ドリフト層53、N+型フィールドストップ層57、N++型カソード層66、及び、P型フローティング層59を有している。P型フローティング層59は、N-型ドリフト層53よりも表面51側に設けられている。N+型フィールドストップ層57は、N-型ドリフト層53よりも裏面52側に設けられている。N++型カソード層66は、N+型フィールドストップ層57よりも裏面52側に設けられている。
【0078】
図11及び図12は、実施形態1に係る半導体装置1において、裏面52のN++型カソード層66及びP++型コレクタ層58の形成方法を例示した断面図である。図11に示すように、半導体基板50の裏面52側に、N+型フィールドストップ層57を形成する。例えば、イオンインプランテーションにより、N+型フィールドストップ層57を形成する。
【0079】
次に、図12に示すように、ダイオード領域20の裏面52及び周辺領域30の裏面52にイオンインプランテーション等により、N+型フィールドストップ層57よりも裏面52側にN++カソード層66を形成する。そして、図5に示すように、IGBT領域10の裏面52にイオンインプランテーション等により、N+型フィールドストップ層57よりも裏面52側にP++型コレクタ層58を形成する。
【0080】
図13は、実施形態1に係る半導体装置1において、半導体基板50の裏面52を例示した平面図である。図13に示すように、IGBT領域10の裏面52にP++型コレクタ層58が形成されている。ダイオード領域20の裏面52及び周辺領域30の裏面52にN++カソード層66が形成されている。裏面52側から見て、N++カソード層66は、P++型コレクタ層58を囲むように形成されている。
【0081】
次に、本実施形態の効果を説明する。本実施形態の半導体装置1は、ダイオード領域20を、IGBT領域10と周辺領域30との間に有している。すなわち、半導体装置1のダイオード領域20は、周辺領域30と連結する形で配置されている。よって、半導体装置1は、IGBT1aのターンオフの際に、ダイオード1bcdが寄生P-MOSとして動作する。これにより、半導体装置1は、周辺領域30に蓄積していたホール等のキャリアを排出する効果を向上させることができる。よって、アクティブ端への局所的なキャリア集中(電流集中)を抑制することできる。また、ダイオード領域20は、IGBT1aのオン時に電導度変調を抑制することができ、キャリア量を抑制することができる。これにより、破壊耐量を向上させることができる。
【0082】
また、半導体装置1は、ダイオード領域20の裏面52だけではなく、周辺領域30の裏面52にもN++カソード層66を有している。したがって、半導体装置1は、周辺領域30における寄生pnpバイポーラの形成を抑制することができる。よって、半導体装置1は、リーク電流を抑制させることができる。これにより、発熱を抑制し、破壊耐量を向上させることができる。一方で、ダイオード1bcdのオン時には、周辺領域30からも電子の供給が行われる。これにより、半導体装置1は、順方向電圧VF(Forward Voltage)を低減させることができる。
【0083】
さらに、半導体装置1は、ダイオード領域20におけるゲート電極40から遠い部分の幅を、ゲート電極40に近い部分の幅よりも大きくしている。よって、ゲート配線抵抗を小さくすることができ、ゲート遅延を低減することができる。これにより、各エミッタパッド間の電位差を抑制することができる。
【0084】
また、半導体装置1は、ダイオード領域20と周辺領域30とが連結した部分にシェアコンタクトを有したトレンチ断続構造を有している。すなわち、ダイオード領域20は、複数の角筒トレンチ電極68を分離して配置させている。よって、キャリアが角筒トレンチ電極68間を移動することができ、IGBT領域10のアクティブ端への局所的なキャリア集中(電流集中)を抑制することができる。
【0085】
(実施形態2)
次に、実施形態2に係る半導体装置を説明する。本実施形態の半導体装置において、半導体基板は、ダイオード領域20で囲まれたIGBT領域10を区分するように、IGBT領域10の内部に配置された内部ダイオード領域を有している。図14は、実施形態2に係る半導体装置において、半導体基板の表面を例示した平面図である。図15は、実施形態2に係る半導体装置において、半導体基板の裏面を例示した平面図である。
【0086】
図14及び図15に示すように、半導体装置2は、内部ダイオード領域20aをさらに有している。内部ダイオード領域20aは、IGBT領域10を区分するようにIGBT領域10の内部に配置されている。複数の内部ダイオード領域20aがIGBT領域10の内部に配置されてもよい。内部ダイオード領域20aは、Y軸方向に延びている。内部ダイオード領域20aは、ダイオード領域20に接続している。具体的には、内部ダイオード領域20aの+Y軸方向側の一端は、領域23に接続し、内部ダイオード領域20aの-Y軸方向側の他端は、領域24に接続する。
【0087】
内部ダイオード領域20aは、複数のダイオード1bcdが設けられている。複数のダイオード1bcdは、ダイオード1b、ダイオード1c及びダイオード1dの少なくともいずれかでもよい。ダイオード1dは、IGBT1aと同様のトレンチを使用することができるので、製造コストを低減することができる。
【0088】
本実施形態によれば、IGBT1aがオンしている際に、内部ダイオード領域20aが電導度変調を抑制し、キャリア量を抑制することができるので、破壊耐量を向上させることができる。これ以外の構成及び効果は、実施形態1の記載に含まれている。
【0089】
(実施形態3)
次に、実施形態3に係る半導体装置を説明する。本実施形態の半導体装置において、周辺領域30の裏面52には、N++カソード層66が設けられていない。N+型フィールドストップ層57は、コレクタ電極に接続されている。図16は、実施形態3に係る半導体装置を例示した断面図であり、図4のV-V線と同様の位置の断面を示す。
【0090】
図16に示すように、本実施形態の半導体装置3において、周辺領域30の半導体基板50は、N-型ドリフト層53、N+型フィールドストップ層57、及び、P型フローティング層59を有している。P型フローティング層59は、N-型ドリフト層53よりも表面51側に設けられている。N+型フィールドストップ層57は、N-型ドリフト層53よりも裏面52側に設けられている。N+型フィールドストップ層は、コレクタ電極42に接続されている。
【0091】
本実施形態によれば、周辺領域30における半導体基板50は、コレクタ電極42との間にショットキー障壁を形成する。これにより、コレクタ電極42からエミッタ電極41へのホールによるリーク電流を低減することができる。周辺領域30の裏面52にショットキー障壁を形成することにより、アバランシェ時のキャリア注入を抑制することができる。これ以外の構成及び効果は、実施形態1及び2の記載に含まれている。
【0092】
(実施形態4)
次に、実施形態4に係る半導体装置を説明する。前述した実施形態1の半導体装置1は、ダイオード領域20におけるX軸方向側の領域21において、周辺領域30との接合部に複数のダイオード1cを含んでいる。ダイオード1cは、シェアコンタクトを有したトレンチ断続構造を有している。また、前述した実施形態1の半導体装置1は、ダイオード領域20におけるY軸方向側の領域23及び24において、IGBT1aと同じトレンチを使用する複数のダイオード1dを含んでいる。これに対して、本実施形態の半導体装置は、ダイオード領域20における領域23及び領域24に、ダイオード1cを含む。図17は、実施形態4に係る半導体装置を例示した平面図であり、図4のVII-VII線と同様の位置の平面を示す。
【0093】
図17に示すように、本実施形態の半導体装置4において、ダイオード領域20における領域23及び領域24は、複数のダイオード1cを含んでいる。このように、本実施形態は、領域23及び24にシェアコンタクトを有したトレンチ断続構造を追加で設けた構造である。図17の点線で囲んだ領域には、図7で示した構成が並んでいる。
【0094】
本実施形態によれば、領域23及び24にも、シェアコンタクトを有したトレンチ断続構造の複数のダイオード1cを含むので、キャリアがダイオード1c間を移動することができ、IGBT領域10のアクティブ端への局所的なキャリア集中(電流集中)を抑制することができる。これ以外の構成及び効果は、実施形態1~3の記載に含まれている。
【0095】
(実施形態5)
次に、実施形態5に係る半導体装置を説明する。本実施形態の半導体装置は、ダイオード1bのトレンチ電極60を、IGBT1aのゲートとは異なる第2ゲートとして制御する。図18は、実施形態5に係る半導体装置を例示した断面図であり、図4のV-V線と同様の位置の断面を示す。図19は、実施形態5に係る半導体装置において、RC-IGBTの接続を例示した回路図である。図20は、実施形態5に係る半導体装置において、IGBT1aのトレンチ電極61及びダイオード1bのトレンチ電極63の電圧を例示したグラフであり、横軸は、時間を示し、縦軸は、電圧を示す。図21図23は、実施形態5に係る半導体装置において、キャリアの排出を例示した図である。
【0096】
図18に示すように、本実施形態の半導体装置5において、IGBT1aの1対のトレンチ電極60は、トレンチ電極61及びトレンチ電極62を含む。トレンチ電極61は、図示しないゲート配線を介してゲート電極40に接続する。N+型エミッタ層56、P型チャネル層55及びトレンチ電極62は、エミッタ配線を介してエミッタ電極41に接続する。ダイオード1bは、2つのトレンチ電極60を含む。各トレンチ電極60は、別のゲート配線を介してゲート電極40とは異なる別のゲート電極に接続する。別のゲート電極に接続するトレンチ電極60をトレンチ電極63と呼ぶ。よって、複数のダイオード1bにおける1対のトレンチ電極60は、2つのトレンチ電極63を含む。
【0097】
図19に示すように、半導体装置5は、例えば、RC-IGBTA及びRC-IGBTBを有している。RC-IGBTAは、IBGT1a及びダイオード1bを有している。RC-IGBTAのダイオード1bをDIODEAと呼ぶ。RC-IGBTBは、IBGT1a及びダイオード1bを有している。RC-IGBTBのダイオード1bをDIODEBと呼ぶ。
【0098】
図20の上段に示すように、RC-IGBTAにおいて、DIODEAのトレンチ電極63(VG2と呼ぶ。)に負電圧を印可した後で、IBGT1aのトレンチ電極61(VG1と呼ぶ。)に負電圧を印可する。具体的には、IGBT1aがターンオフする直前にトレンチ電極63に負電圧を印可する。このように、IGBT1aがターンオフする直前にトレンチ電極63に負電圧を印可することで、キャリア掃き出し効果を向上させることができる。よって、IGBT1aの破壊耐量を向上させることができる。また、順方向電圧VFを低減させることができる。
【0099】
また、トレンチ電極63に正電圧を印可した後で、トレンチ電極61に正電圧を印可する。具体的には、IGBT1aがターンオンする直前にトレンチ電極63に正電圧を印可する。このように、IGBT1aがターンオンする直前にトレンチ電極63に正電圧を印可することで、逆回復損失Errを低減させることができ、ダイオードの性能を向上させることができる。RC-IGBTBは、RC-IGBTAとタイミングが異なるが同様の動作を行う。
【0100】
図20における各時間T1~時間T3のRC-IGBTAの動作を、図面を参照して説明する。図20に示すように、時間T1において、トレンチ電極63(VG2)にプラス電圧を印可している場合には、図21に示すように、ダイオード1b(DIODEA)の寄生P-MOSは、オフである。よって、ダイオード1b(DIODEA)は、キャリア排出を抑制されている。
【0101】
図20に示すように、時間T2において、トレンチ電極63(VG2)にマイナス電圧が印可されると、図22に示すように、ダイオード1b(DIODEA)の寄生P-MOSがオンとなる。よって、ダイオード1b(DIODEA)は、キャリアの排出を開始する。
【0102】
図20に示すように、時間T3において、IGBT1a(RC-IGBTA)がオフすると、図23に示すように、裏面52からのキャリア注入は止まる。蓄積していたキャリアは、ダイオード1b(DIODEA)の寄生P-MOSを通して排出される。
【0103】
本実施形態によれば、IGBT1aがターンオフの際には、直前にトレンチ電極63に負電圧を印可することで、キャリア掃き出し効果を向上させることができる。よって、IGBT1aの破壊耐量を向上させることができる。また、順方向電圧VFを低減させることができる。一方、IGBT1aがターンオンする直前にトレンチ電極63に正電圧を印可することにより、キャリア排出効果を抑制し、逆回復損失Errを低減させることができる。これ以外の構成及び効果は、実施形態1~4の記載に含まれている。
【0104】
(実施形態6)
次に、実施形態6に係る半導体装置を説明する。本実施形態の半導体装置は、周辺領域30にプレーナゲートを有している。図24は、実施形態6に係る半導体装置において、周辺領域の半導体基板を例示した断面図である。
【0105】
図24に示すように、本実施形態の半導体装置6において、周辺領域30の半導体基板50は、N-型ドリフト層53、複数のP型フローティング層59、絶縁膜64、プレーナゲート69、N+型フィールドストップ層57、及び、N++型カソード層66を有している。
【0106】
複数のP型フローティング層59は、N-型ドリフト層53上に設けられている。複数のP型フローティング層59は、N-型ドリフト層53の一部をX軸方向において挟むように設けられている。絶縁膜64は、N-型ドリフト層53上及び隣り合うP型フローティング層59上に設けられている。
【0107】
プレーナゲート69は、N-型ドリフト層53上及び隣り合うP型フローティング層59上に絶縁膜64を介して設けられている。N+型フィールドストップ層57は、N-型ドリフト層53よりも裏面52側に設けられている。N++型カソード層66は、N+型フィールドストップ層57よりも裏面52側に設けられている。
【0108】
本実施形態の半導体装置6は、IGBT1aをオフにする場合に、プレーナゲート69に負電圧を印可する。プレーナゲート69に負電圧を印可することにより、P型フローティング層59を経由する経路からもホールが流れる。このため、アノード領域が拡大し、順方向電圧VFを低減させることができる。
【0109】
本実施形態によれば、IGBT1aがターンオフする際に、プレーナゲート69に負電圧を印可することができるので、P型フローティング層59を経由する経路からも蓄積していたキャリアを排出させることができる。よって、キャリア排出効果を向上させることができる。これ以外の構成及び効果は、実施形態1~5の記載に含まれている。
【0110】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。また、実施形態1~6の各構成を組み合わせたものも、技術的思想の範囲である。
【符号の説明】
【0111】
1、2、3、4、5、6 半導体装置
1a IGBT
1b、1c、1d、1bcd ダイオード
10 IGBT領域
11、12、13 領域
20 ダイオード領域
20a 内部ダイオード領域
21、22a、22b、23、24 領域
30 周辺領域
31、32、33、34 領域
40 ゲート電極
41 エミッタ電極
50 半導体基板
51 表面
52 裏面
53 N-型ドリフト層
53a N-型半導体層
54 N+型バリア層
55 P型チャネル層
56 N+型エミッタ層
57 N+型フィールドストップ層
58 P++型コレクタ層
59 P型フローティング層
60、61、62、63 トレンチ電極
64 絶縁膜
65 トレンチ絶縁膜
66 N++型カソード層
67 連結トレンチ電極
68 角筒トレンチ電極
69 プレーナゲート
101 半導体装置
110 IGBT領域
120 ダイオード領域
130 周辺領域
141 エミッタ電極
142 コレクタ電極
150 半導体基板
151 表面
152 裏面
153 N-型ドリフト層
157 N+型フィールドストップ層
158 P+型コレクタ層
159 P型半導体層
164 絶縁膜
169 空乏層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24