IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝メモリ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-半導体装置 図1
  • 特開-半導体装置 図2
  • 特開-半導体装置 図3
  • 特開-半導体装置 図4
  • 特開-半導体装置 図5
  • 特開-半導体装置 図6
  • 特開-半導体装置 図7
  • 特開-半導体装置 図8
  • 特開-半導体装置 図9
  • 特開-半導体装置 図10
  • 特開-半導体装置 図11
  • 特開-半導体装置 図12
  • 特開-半導体装置 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044492
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H10B 12/00 20230101AFI20240326BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H01L27/108 671A
H01L27/108 621C
H01L27/108 681A
H01L27/06 102A
H01L27/088 C
H01L27/088 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150044
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 大地
(72)【発明者】
【氏名】池野 大輔
(72)【発明者】
【氏名】坂田 敦子
【テーマコード(参考)】
5F048
5F083
【Fターム(参考)】
5F048AA01
5F048AA07
5F048AB01
5F048AC10
5F048BB01
5F048BB09
5F048BB12
5F048BC03
5F048BC15
5F048BD07
5F048BF07
5F048BF16
5F083AD02
5F083AD03
5F083AD06
5F083AD24
5F083GA09
5F083GA25
5F083GA27
5F083JA38
5F083JA39
5F083JA40
5F083JA43
5F083JA44
5F083JA60
5F083KA01
5F083KA05
5F083KA19
(57)【要約】
【課題】 縦型トランジスタの特性を向上させることが可能な半導体装置を提供する。
【解決手段】 実施形態に係る半導体装置は、酸化物半導体で形成された半導体層10と、下部分と、上部分と、下部分と上部分との間に位置する中間部分とを含み、半導体層の側面を囲むゲート絶縁層20と、ゲート絶縁層の中間部分を囲むゲート電極30と、半導体層の下面に接続された第1の酸化物導電体部分41を含む下部電極40と、半導体層の上面に接続された上部電極50とを備え、ゲート電極は、所定の金属元素を含有する金属部分30bと、金属部分とゲート絶縁層との間に設けられ且つ所定の金属元素及び窒素を含有する第1の窒素含有部分30aとを含み、第1の酸化物導電体部分は、少なくとも第1の酸化物導電体部分とゲート絶縁層との界面の近傍に、窒素を含有する第2の窒素含有部分41aを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物半導体で形成された半導体層と、
下部分と、上部分と、前記下部分と前記上部分との間に位置する中間部分とを含み、前記半導体層の側面を囲むゲート絶縁層と、
前記ゲート絶縁層の前記中間部分を囲むゲート電極と、
前記半導体層の下面に接続された第1の酸化物導電体部分を含む下部電極と、
前記半導体層の上面に接続された上部電極と、
を備える半導体装置であって、
前記ゲート電極は、所定の金属元素を含有する金属部分と、前記金属部分と前記ゲート絶縁層との間に設けられ且つ前記所定の金属元素及び窒素を含有する第1の窒素含有部分とを含み、
前記第1の酸化物導電体部分は、少なくとも前記第1の酸化物導電体部分と前記ゲート絶縁層との界面の近傍に、窒素を含有する第2の窒素含有部分を含む
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第1の酸化物導電体部分は、前記第1の酸化物導電体部分と前記半導体層との界面の近傍にも前記第2の窒素含有部分を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ゲート絶縁層の前記下部分を囲む下部絶縁部分をさらに備え、
前記下部絶縁部分は、前記下部絶縁部分と前記ゲート絶縁層との界面の近傍に、窒素を含有する第3の窒素含有部分を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ゲート絶縁層の前記上部分を囲む上部絶縁部分をさらに備え、
前記上部絶縁部分は、前記上部絶縁部分と前記ゲート絶縁層との界面の近傍に、窒素を含有する第4の窒素含有部分を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記ゲート電極の前記第1の窒素含有部分の仕事関数は、前記半導体層の仕事関数よりも大きい
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記ゲート電極の前記第1の窒素含有部分の仕事関数は、前記ゲート電極の前記金属部分の仕事関数よりも大きい
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記所定の金属元素は、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ルテニウム(Ru)及びチタン(Ti)から選択される
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記半導体層は、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、カドミウム(Cd)及び錫(Sn)から選択された少なくとも1つの金属元素と酸素(O)とを含有する
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1の酸化物導電体部分は、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)及び錫(Sn)から選択された少なくとも1つの金属元素と酸素(O)とを含有する
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記ゲート絶縁層は、シリコン(Si)及び酸素(O)を含有する
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記上部電極は、前記半導体層の上面に接続された第2の酸化物導電体部分を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記下部電極に接続されたキャパシタをさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板上に酸化物半導体を用いた縦型トランジスタが集積化された半導体装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第10714400号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
縦型トランジスタの特性を向上させることが可能な半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る半導体装置は、酸化物半導体で形成された半導体層と、下部分と、上部分と、前記下部分と前記上部分との間に位置する中間部分とを含み、前記半導体層の側面を囲むゲート絶縁層と、前記ゲート絶縁層の前記中間部分を囲むゲート電極と、前記半導体層の下面に接続された第1の酸化物導電体部分を含む下部電極と、前記半導体層の上面に接続された上部電極と、を備える半導体装置であって、前記ゲート電極は、所定の金属元素を含有する金属部分と、前記金属部分と前記ゲート絶縁層との間に設けられ且つ前記所定の金属元素及び窒素を含有する第1の窒素含有部分とを含み、前記第1の酸化物導電体部分は、少なくとも前記第1の酸化物導電体部分と前記ゲート絶縁層との界面の近傍に、窒素を含有する第2の窒素含有部分を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態に係る半導体装置の構成を模式的に示した断面図である。
図2】実施形態に係る半導体装置の構成を模式的に示した断面図である。
図3】実施形態に係る半導体装置の構成を模式的に示した断面図である。
図4】実施形態に係る半導体装置の製造方法の一部を模式的に示した断面図である。
図5】実施形態に係る半導体装置の製造方法の一部を模式的に示した断面図である。
図6】実施形態に係る半導体装置の製造方法の一部を模式的に示した断面図である。
図7】実施形態に係る半導体装置の製造方法の一部を模式的に示した断面図である。
図8】実施形態に係る半導体装置の製造方法の一部を模式的に示した断面図である。
図9】実施形態に係る半導体装置の製造方法の一部を模式的に示した断面図である。
図10】実施形態に係る半導体装置の第1の変形例を模式的に示した断面図である。
図11】実施形態に係る半導体装置の第1の変形例を模式的に示した断面図である。
図12】実施形態に係る半導体装置の第2の変形例を模式的に示した断面図である。
図13】実施形態に係る半導体装置の適用例の構成を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0008】
図1図2及び図3は、本実施形態に係る半導体装置の構成を模式的に示した断面図である。図1はZ方向に平行な断面であり、図2及び図3はZ方向に垂直な断面である。図1のA-A線に沿った断面が図2に対応し、図1のB-B線に沿った断面が図3に対応する。
【0009】
なお、図に示したX方向、Y方向及びZ方向は、互いに交差する方向である。より具体的には、X方向、Y方向及びZ方向は互いに直交している。
【0010】
図1図2及び図3に示した構造は、半導体基板(図示せず)を含む下部構造(図示せず)上に形成されている。
【0011】
図1図2及び図3に示した半導体装置は、縦型MOSトランジスタとして機能し、半導体層10、ゲート絶縁層20、ゲート電極30、下部電極40及び上部電極50を含んでいる。下部電極40及び上部電極50の一方はソース電極として機能し、下部電極40及び上部電極50の他方はドレイン電極として機能する。
【0012】
半導体層10は、半導体基板(図示せず)の主面に対して垂直な方向(Z方向に対応)に延伸しており、酸化物半導体で形成されている。より具体的には、半導体層10は、金属元素及び酸素を含有する金属酸化物半導体で形成されている。
【0013】
具体的には、半導体層10は、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、カドミウム(Cd)及び錫(Sn)から選択された少なくとも1つの金属元素と酸素(O)とを含有している。
【0014】
例えば、半導体層10は、In23 、ZnO、SnO2 、InGaZnO、InMgO、InAlO、或いはZnSnO等が用いられる。本実施形態では、半導体層10は、InGaZnOで形成されている。なお、以下の説明では、InGaZnOをIGZOと呼ぶこともある。
【0015】
ゲート絶縁層20は、半導体層10の側面を囲み、シリコン(Si)及び酸素(O)を含有するシリコン酸化物で形成されている。ゲート絶縁層20は、下部分と、上部分と、下部分と上部分との間に位置する中間部分とを含んでいる。下部分は半導体層10と後述する下部絶縁部分61との間に位置し、上部分は半導体層10と後述する上部絶縁部分62との間に位置し、中間部分は半導体層10と後述するゲート電極30との間に位置している。
【0016】
ゲート電極30は、ゲート絶縁層20の中間部分を囲んでいる。また、本実施形態の縦型MOSトランジスタを後述するDRAMに適用する場合には、ゲート電極30はワード線として機能する。この場合、ワード線として機能するゲート電極30は、所定の方向(図1及び図2では、X方向)に延伸している。
【0017】
ゲート電極30は、所定の金属元素MEを含有する金属部分30bと、金属部分30bとゲート絶縁層20との間に設けられ且つ所定の金属元素ME及び窒素を含有する窒素含有部分30aとを含んでいる。すなわち、窒素含有部分30a及び金属部分30bは金属元素MEを含有し、窒素含有部分30aの窒素濃度は金属部分30bの窒素濃度よりも高い。例えば、金属部分30bは所定の金属元素MEで形成され、窒素含有部分30aは所定の金属元素ME及び窒素を含有する金属窒化物で形成されている。具体的には、窒素含有部分30aは、金属部分30bの表面を窒化することで形成される。所定の金属元素MEは、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ルテニウム(Ru)及びチタン(Ti)から選択される。なお、所定の金属元素MEがチタン(Ti)である場合、Ti単独ではなく、TiNとして用いられる場合が多い。
【0018】
本実施形態では、所定の金属元素MEとしてモリブデン(Mo)が用いられる。したがって、金属部分30bにはモリブデン(Mo)が用いられ、窒素含有部分30aにはモリブデン窒化物(MoN)が用いられる。
【0019】
金属部分30bの仕事関数はN型半導体である半導体層10の仕事関数よりも大きいことが好ましく、窒素含有部分30aの仕事関数は半導体層10の仕事関数よりも大きいことが好ましい。
【0020】
また、窒素含有部分30aの仕事関数は、金属部分30bの仕事関数よりも大きいことが好ましい。金属窒化物の仕事関数は、その金属窒化物を構成する金属の仕事関数よりも必ずしも大きいとは限らないが、MoNはMoよりも大きな仕事関数を有しており、MoN及びMoは窒素含有部分30a及び金属部分30bの材料として好ましい。
【0021】
なお、Tiの仕事関数はIGZOの仕事関数よりも小さいため、IGZOの仕事関数よりも大きな仕事関数を有するTi窒化物を用いる。この場合、ゲート絶縁層20側でより安定なTi窒化物が形成されることが好ましい。窒素含有部分30a及び金属部分30bともに、仕事関数が大きいほど好ましい。
【0022】
下部電極40は、半導体層10の下面に接続されている。下部電極40は酸化物導電体部分41を含んでおり、酸化物導電体部分41が半導体層10の下面に接続されている。すなわち、酸化物導電体部分41は半導体層10の下面に接している。酸化物導電体部分41は、金属元素及び酸素を含有する金属酸化物導電体で形成されている。
【0023】
具体的には、酸化物導電体部分41は、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)及び錫(Sn)から選択された少なくとも1つの金属元素と酸素(O)とを含有している。
【0024】
例えば、酸化物導電体部分41には、InSnO、InZnO、InTiO、或いはZnSnO等が用いられる。本実施形態では、酸化物導電体部分41は、InSnOで形成されている。なお、以下の説明では、InSnOをITOと呼ぶこともある。
【0025】
なお、下部電極40は、酸化物導電体部分41に加えて他の導電体部分を含んでいてもよい。この場合にも、酸化物導電体部分41が半導体層10の下面に接しており、他の導電体部分は半導体層10の下面には接していない。
【0026】
酸化物導電体部分41は、少なくとも酸化物導電体部分41とゲート絶縁層20との界面の近傍に、窒素を含有する窒素含有部分(窒素を含有する酸化物導電体部分)41aを含んでいる。具体的には、窒素含有部分41aは、酸化物導電体部分41の表面を窒化することで形成される。本実施形態では、酸化物導電体部分41は、酸化物導電体部分41と半導体層10との界面の近傍にも窒素含有部分41aを含んでいる。具体的には、窒素含有部分41aは、半導体層10の下面及びゲート絶縁層20の下面を覆うように設けられている。
【0027】
上部電極50は、半導体層10の上面に接続されている。上部電極50は酸化物導電体部分51を含んでおり、酸化物導電体部分51が半導体層10の上面に接続されている。すなわち、酸化物導電体部分51は半導体層10の上面に接している。酸化物導電体部分51は、金属元素及び酸素を含有する金属酸化物導電体で形成されている。酸化物導電体部分51には、酸化物導電体部分41の材料と同様の材料を用いることができる。本実施形態では、酸化物導電体部分51はITOで形成されている。
【0028】
なお、上部電極50は、酸化物導電体部分51に加えて他の導電体部分を含んでいてもよい。この場合にも、酸化物導電体部分51が半導体層10の上面に接しており、他の導電体部分は半導体層10の上面には接していない。
【0029】
層間絶縁層60は、ゲート電極30の下面、上面及び側面(Y方向で対向する側面)を囲んでおり、シリコン酸化物等の絶縁材料で形成されている。層間絶縁層60は、下部絶縁部分61及び上部絶縁部分62を含んでいる。下部絶縁部分61はゲート絶縁層20の下部分を囲み、上部絶縁部分62はゲート絶縁層20の上部分を囲んでいる。下部絶縁部分61は、下部絶縁部分61とゲート絶縁層20との界面の近傍に、窒素を含有する窒素含有部分61aを含んでいる。上部絶縁部分62は、上部絶縁部分62とゲート絶縁層20との界面の近傍に、窒素が含有された窒素含有部分62aを含んでいる。また、上部絶縁部分62は、上部絶縁部分62の上表面領域にも、窒素含有部分62aを含んでいる。窒素含有部分61a及び窒素含有部分62aは、下部絶縁部分61及び上部絶縁部分62の表面を窒化することで形成される。
【0030】
以上のように、本実施形態では、下部電極40の酸化物導電体部分41が、窒素を含有する窒素含有部分41aを含んでいる。そのため、以下に述べるように、酸化物導電体部分41のグルービング(grooving)に起因する特性劣化を抑制することができ、縦型MOSトランジスタの特性を向上させることが可能となる。
【0031】
ITO等の酸化物導電体は、結晶性を有している。そのため、酸化物導電体部分41内に窒素含有部分41aが設けられていない場合には、酸化物導電体部分41内の結晶粒界等によって酸化物導電体部分41内で自己拡散が生じ、酸化物導電体部分41の特性を低下させるおそれがある。本実施形態では、酸化物導電体部分41を窒化することで得られた窒素含有部分41aによって、上述したような自己拡散を抑制することが可能である。したがって、本実施形態では、確実なコンタクトが得られ、優れた特性を有する縦型トランジスタを得ることが可能である。
【0032】
また、本実施形態では、ゲート電極30の金属部分30bにモリブデン(Mo)を用い、窒素含有部分30aにモリブデン窒化物(MoN)を用いることにより、以下に述べるように、優れた特性を有する縦型MOSトランジスタを得ることが可能である。
【0033】
Moは低い抵抗を有しているため、Moをワード線として機能するゲート電極30として用いることで、配線抵抗を低減することが可能である。また、Moの仕事関数は、IGZO等の酸化物半導体の仕事関数に対して十分な高さを有している。そのため、Moをゲート電極30に用いた場合には、仕事関数が低い他の材料を用いた場合と比較して、内部電界差によってトランジスタのオフ特性をより効果的に確保することができる。しかしながら、Moをゲート電極30に用いた場合には、後述する製造工程の際にMoの表面が酸化され、その酸化物が昇華してパターン内に再付着するといった問題等が生じ、トランジスタのリーク特性が悪化するおそれがある。
【0034】
本実施形態では、Moで形成された金属部分30bとゲート絶縁層20との間にMoNで形成された窒素含有部分30aを設けることで、上述した問題を防止することが可能である。すでに述べたように、金属窒化物の仕事関数が、その金属窒化物を構成する金属の仕事関数よりも必ずしも高いとは限らないが、MoNの仕事関数はMoの仕事関数よりも高い。また、MoNの仕事関数は、IGZO等の酸化物半導体の仕事関数に対して十分な高さを有している。そのため、トランジスタのオフ特性をより十分に確保することが可能である。また、Mo層の表面にMoN層を形成しておくことで、Mo層の表面が酸化されることを抑制することが可能である。
【0035】
このように、ゲート電極30の金属部分30bにMoを用い、窒素含有部分30aにMoNを用いることで、酸化物半導体よりも高い仕事関数を確保することができ、優れた特性を有する縦型MOSトランジスタを得ることが可能である。
【0036】
次に、本実施形態に係る半導体装置の製造方法を、図4図9及び図1を参照して説明する。
【0037】
まず、図4に示すように、半導体基板(図示せず)を含む下部構造(図示せず)上に、酸化物導電体部分41を含む下部電極40、下部絶縁部分61及び上部絶縁部分62を含む層間絶縁層60、及びゲート電極の金属部分30bを形成する。酸化物導電体部分41にはITOが用いられ、金属部分30bにはMoが用いられ、層間絶縁層60にはシリコン酸化物が用いられる。
【0038】
次に、図5に示すように、上部絶縁部分62、金属部分30b及び下部絶縁部分61をエッチングして、ホール71を形成する。このとき、酸化物導電体部分41の上面も少しエッチングされる。
【0039】
次に、図6に示すように、図5の工程で得られた構造の表面を窒化する。この窒化処理により、金属部分30bの表面領域には窒素含有部分30aが形成され、酸化物導電体部分41の表面領域には窒素含有部分41aが形成され、下部絶縁部分61の表面領域には窒素含有部分61aが形成され、上部絶縁部分62の表面領域には窒素含有部分62aが形成される。
【0040】
次に、図7に示すように、図6の工程で得られた構造の表面に、ゲート絶縁層20としてシリコン酸化物層を形成する。このとき、ゲート電極30の金属部分30bの表面には窒素含有部分30aが形成されているため、金属部分30bが酸化されることを防止することができる。
【0041】
次に、図8に示すように、ゲート絶縁層20に対して異方性エッチングを行う。これにより、ゲート絶縁層20の一部が除去され、ホール71の側面にゲート絶縁層20の一部が残る。異方性エッチングが過度に行われた場合には、ホール71の底部に位置する窒素含有部分41aも除去されるおそれがあるが、少なくとも酸化物導電体部分41とゲート絶縁層20との界面の近傍には窒素含有部分41aが残る。
【0042】
次に、図9に示すように、ゲート絶縁層20が設けられたホール71内に、半導体層10としてIGZO層を形成する。
【0043】
その後、半導体層10の上面に接続される酸化物導電体部分51を含む上部電極50を形成することで、図1に示すような構造が得られる。
【0044】
上述した製造方法によれば、図6の窒化処理により、窒素含有部分30a及び窒素含有部分41aを同時に形成することができる。そのため、製造工程を大幅に増加させることなく、すでに述べたような効果を有する窒素含有部分30a及び窒素含有部分41aを形成することが可能である。
【0045】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
【0046】
図10及び図11は、第1の変形例を模式的に示した断面図である。
【0047】
上述した実施形態では、図6に示すように、パターン内及びパターン表面を含む全表面を窒化する例を示したが、図10及び図11に示すように、必ずしも全表面が窒化されなくてもよい。
【0048】
本変形例では、図10に示すように、金属部分30bの表面を優先的に窒化する。例えば、金属部分30bと層間絶縁層60のとの間で窒化反応温度に差がある場合に、この反応温度差を利用して金属部分30bの表面を優先的に窒化することが可能である。これにより、図11に示すような構造を得ることが可能である。また、層間絶縁層60の表面には吸着せずに、金属部分30bの表面に吸着するような窒素含有物を用い、金属部分30bの表面で窒化反応を生じさせることで、図11に示すような構造を得ることも可能である。
【0049】
図12は、第2の変形例を模式的に示した断面図である。
【0050】
本変形例では、図12に示すように、窒素含有部分30aの厚さの方が窒素含有部分41aの厚さよりも厚い。金属部分30bと酸化物導電体部分41との間で窒化反応に差があるような場合には、図12に示すような構造を得ることも可能である。
【0051】
上述した実施形態、第1の変形例及び第2の変形例で述べたように、金属部分30bの表面及び酸化物導電体部分41の表面に、窒素含有部分30a及び窒素含有部分41aを形成することが可能である。
【0052】
次に、上述した実施形態で得られた縦型MOSトランジスタをDRAMに適用した例について説明する。
【0053】
図13は、上述した実施形態で得られた縦型MOSトランジスタをDRAMに適用したときのメモリセル部の構成を模式的に示した断面図である。
【0054】
メモリセル部100は、縦型MOSトランジスタ110及びキャパシタ120を含んでいる。縦型MOSトランジスタ110には、上述した実施形態で説明した縦型MOSトランジスタが用いられる。キャパシタ120は、縦型MOSトランジスタ110に対して直列に接続され、電極121、電極122、及び電極121と電極122との間に設けられたキャパシタ絶縁層123とを含んでいる。
【0055】
縦型MOSトランジスタ110の下部電極40にはキャパシタ120の一方の電極121が接続され、縦型MOSトランジスタ110の上部電極50にはビット線130が接続されている。キャパシタ120の他方の電極122には、プレート線140が接続されている。
【0056】
上述した実施形態で得られた縦型MOSトランジスタを図13に示したようなメモリセル部100を有するDRAMに適用することで、優れた特性を有するDRAMを得ることが可能である。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
10…半導体層 20…ゲート絶縁層
30…ゲート電極 30a…窒素含有部分 30b…金属部分
40…下部電極 41…酸化物導電体部分 41a…窒素含有部分
50…上部電極 51…酸化物導電体部分
60…層間絶縁層 61…下部絶縁部分 61a…窒素含有部分
62…上部絶縁部分 62a…窒素含有部分
71…ホール
100…メモリセル 110…縦型MOSトランジスタ
120…キャパシタ 121、122…電極 123…キャパシタ絶縁層
130…ビット線 140…プレート線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13