(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044494
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ポリプロピレン系樹脂組成物、及びポリプロピレン系樹脂用耐衝撃性改質剤
(51)【国際特許分類】
C08L 23/10 20060101AFI20240326BHJP
C08L 51/04 20060101ALI20240326BHJP
C08L 53/02 20060101ALI20240326BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240326BHJP
【FI】
C08L23/10
C08L51/04
C08L53/02
C08K3/013
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150046
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】園山 亜里紗
(72)【発明者】
【氏名】木村 勝彦
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB111
4J002BB121
4J002BB141
4J002BB15W
4J002BN14X
4J002BP01Y
4J002BP021
4J002DE236
4J002DJ006
4J002DJ036
4J002DJ046
4J002DJ056
4J002FD016
(57)【要約】
【課題】衝撃強度が改善されたポリプロピレン系樹脂組成物の提供。
【解決手段】ポリプロピレン系樹脂(A)、ゴム質重合体(b1)にビニル系単量体成分(b2)がグラフト重合されたグラフト共重合体(B)、及び、ブロック共重合体(C)を含有する硬化性組成物。前記ビニル系単量体成分(b2)が、芳香族ビニル化合物を30重量%以上含む。前記ブロック共重合体(C)が、芳香族ビニル化合物を含む単量体成分から形成された重合体ブロック(c1)、及び、共役ジエン系単量体を含む単量体成分から形成され、さらに水添された重合体ブロック(c2)、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂(A)、
ゴム質重合体(b1)にビニル系単量体成分(b2)がグラフト重合されたグラフト共重合体(B)、及び、
ブロック共重合体(C)を含有し、
前記ビニル系単量体成分(b2)が、芳香族ビニル化合物を30重量%以上含み、
前記ブロック共重合体(C)が、芳香族ビニル化合物を含む単量体成分から形成された重合体ブロック(c1)、及び、共役ジエン系単量体を含む単量体成分から形成され、さらに水添された重合体ブロック(c2)、を含む、ポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項2】
前記ブロック共重合体(C)が、重合体ブロック(c1)-重合体ブロック(c2)-重合体ブロック(c1)で表されるトリブロック共重合体である、請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項3】
前記共役ジエン系単量体が、イソプレンである、請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項4】
前記ブロック共重合体(C)は、前記芳香族ビニル化合物の含有量が10~50重量%である、請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項5】
前記ゴム質重合体(b1)が、ジエン系ゴムである、請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリプロピレン系樹脂(A)、前記グラフト共重合体(B)、及び前記ブロック共重合体(C)の合計含有量のうち、前記グラフト共重合体(B)と前記ブロック共重合体(C)の合計含有量が占める割合が1~40重量%である、請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項7】
前記グラフト共重合体(B)と前記ブロック共重合体(C)の合計含有量のうち、前記ブロック共重合体(C)の含有量が占める割合が、20~80重量%である、請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項8】
前記ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、無機フィラー5~60重量部をさらに含む、請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂組成物からなるペレット。
【請求項10】
請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂組成物からなる成形体。
【請求項11】
ゴム質重合体(b1)にビニル系単量体成分(b2)がグラフト重合されたグラフト共重合体(B)、及び、
ブロック共重合体(C)を含有し、
前記ビニル系単量体成分(b2)が、芳香族ビニル化合物を30重量%以上含み、
前記ブロック共重合体(C)が、芳香族ビニル化合物を含む単量体成分から形成された重合体ブロック(c1)、及び、共役ジエン系単量体を含む単量体成分から形成され、さらに水添された重合体ブロック(c2)、を含む、ポリプロピレン系樹脂用耐衝撃性改質剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂組成物、及びポリプロピレン系樹脂用耐衝撃性改質剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性樹脂の耐衝撃性を改善する技術として、ゴム成分を含むグラフト共重合体を熱可塑性樹脂に配合する方法が知られている。
【0003】
しかし、熱可塑性樹脂がポリプロピレン系樹脂である場合、一般にポリプロピレン系樹脂とゴム含有グラフト共重合体は相溶性が低いため、ポリプロピレン系樹脂中でゴム含有グラフト共重合体が十分に分散せず、ゴム含有グラフト共重合体の配合によるポリプロピレン系樹脂の耐衝撃性改善効果が必ずしも十分なものではなかった。
【0004】
特許文献1では、衝撃強度の向上を目的とするものではないが、ポリプロピレン系樹脂(A)、ジエン系ゴム質重合体(b-1)、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(b-2)、芳香族ビニル系単量体及び/又はシアン化ビニル系単量体(b-3)とから構成されるグラフト共重合体(B)、並びに、スチレン系エラストマー(C)を特定比率で含有するポリプロピレン樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑み、衝撃強度が改善されたポリプロピレン系樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ポリプロピレン系樹脂に対して、特定のモノマー組成を有するゴム含有グラフト共重合体と共に、特定の重合体ブロックを含むブロック共重合体を配合することによって、ポリプロピレン系樹脂の衝撃強度を改善できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、ポリプロピレン系樹脂(A)、
ゴム質重合体(b1)にビニル系単量体成分(b2)がグラフト重合されたグラフト共重合体(B)、及び、
ブロック共重合体(C)を含有し、
前記ビニル系単量体成分(b2)が、芳香族ビニル化合物を30重量%以上含み、
前記ブロック共重合体(C)が、芳香族ビニル化合物を含む単量体成分から形成された重合体ブロック(c1)、及び、共役ジエン系単量体を含む単量体成分から形成され、さらに水添された重合体ブロック(c2)、を含む、ポリプロピレン系樹脂組成物に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、衝撃強度が改善されたポリプロピレン系樹脂組成物を提供することができる。
本発明の好適な態様によれば、衝撃強度が改善され、かつ良好な引張伸びを示すポリプロピレン系樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施形態を詳細に説明する。
本開示に係るポリプロピレン系樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂(A)、グラフト共重合体(B)、及び、ブロック共重合体(C)を含有する。
【0011】
<ポリプロピレン系樹脂(A)>
ポリプロピレン系樹脂(A)としては特に限定されず、プロピレンの単独重合体、プロピレンと共重合可能なモノマーとプロピレンとの共重合体のいずれでもよい。また、前記単独重合体と前記共重合体との混合物でもよい。
【0012】
前記共重合体としては、ブロック共重合体、ランダム共重合体のいずれでもよい。前記共重合体としては、プロピレンを51重量%以上含有する共重合体が好ましく、ポリプロピレン系樹脂の特徴である結晶性、剛性、耐薬品性などが保持されている点で、プロピレンを75重量%以上含有する共重合体がより好ましい。
【0013】
プロピレンと共重合可能なモノマーとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3,4-ジメチル-1-ブテン、1-ヘプテン、3-メチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセンなどの炭素数4~12のα-オレフィン;シクロペンテン、ノルボルネン、テトラシクロ[6,2,11,8,13,6]-4-ドデセンなどの環状オレフィン;5-メチレン-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、1,4-ヘキサジエン、メチル-1,4-ヘキサジエン、7-メチル-1,6-オクタジエンなどのジエン;塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼンなどのビニル単量体などが挙げられる。これらは、1種類のみを使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0014】
ポリプロピレン系樹脂(A)としては、プロピレンの単独重合体(ホモポリマー)、プロピレン-エチレンのランダム共重合体、プロピレン-エチレンのブロック共重合体、その他のプロピレン-エチレン共重合体が好ましい。これらを混合して使用してもよい。中でも、プロピレンの単独重合体が特に好ましい。
【0015】
プロピレン-エチレン共重合体は、プロピレンを主成分とする直鎖ポリマーの中に、エチレンを主成分とするポリマー、およびエチレン-プロピレン・ゴム状共重合体が分散し、海島構造を形成しているような、プロピレン系ポリマーであっても良い。
【0016】
<グラフト共重合体(B)>
グラフト共重合体(B)は、ゴム質重合体(b1)にビニル系単量体成分(b2)がグラフト重合されたものである。グラフト共重合体(B)は、通常、コア粒子と、該コア粒子の外側に位置するシェル層とを含むコアシェル構造を有する。
コア粒子は、グラフト共重合体粒子の内側に位置する粒子のことを指し、ゴム質重合体(b1)から構成される。
【0017】
一方、シェル層は、グラフト共重合体粒子の表面側に位置し、コア粒子の表面を被覆している重合体層のことを指し、グラフト層ともいう。シェル層は、ビニル系単量体成分(b2)の重合体から構成される。シェル層は、コア粒子の表面を被覆しているが、コア粒子の全表面を被覆するものに限定されず、コア粒子の表面の少なくとも一部を被覆していればよい。
【0018】
<ゴム質重合体(b1)>
ゴム質重合体(b1)としては特に限定されず、例えば、ジエン系ゴム、(メタ)アクリレート系ゴム、オルガノシロキサン系ゴム等が挙げられる。中でも、ポリプロピレン系樹脂(A)の耐衝撃性改善効果に優れる点から、ゴム質重合体(b1)は、ジエン系ゴムであることが好ましい。
【0019】
(ジエン系ゴム)
前記ジエン系ゴムは、共役ジエン系単量体の重合体から構成される。該共役ジエン系単量体としては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエンなどが挙げられる。共役ジエン系単量体は1種類のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
前記共役ジエン系単量体の含有量は、ゴム質重合体(b1)全量のうち50~100重量%の範囲であることが好ましく、70~100重量%の範囲であることがより好ましく、90~100重量%の範囲であることが更に好ましい。共役ジエン系単量体の含有量が50重量%以上であると、ポリプロピレン系樹脂組成物の衝撃強度がより良好になり得る。
【0021】
前記ジエン系ゴムは、共役ジエン系単量体を他のビニル系単量体と共重合したものであってもよい。共役ジエン系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレンなどのビニルアレーン類;アクリル酸、メタクリル酸などのビニルカルボン酸類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのビニルシアン類;塩化ビニル、臭化ビニル、クロロプレンなどのハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンなどのアルケン類;ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼンなどの多官能性モノマーなどが挙げられる。これらのビニル系単量体は1種類のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。特に好ましくはスチレンである。
【0022】
前記他のビニル系単量体の含有量は、ゴム質重合体(b1)全量のうち0~50重量%の範囲であることが好ましく、0~30重量%の範囲であることがより好ましく、0~10重量%の範囲であることが更に好ましい。当該他のビニル系単量体の含有量が50重量%以下であると、ポリプロピレン系樹脂組成物の衝撃強度がより良好になり得る。
【0023】
ポリプロピレン系樹脂(A)の耐衝撃性改善効果に優れる点から、ジエン系ゴムは、1,3-ブタジエンの重合体であるブタジエンゴム、及び/又は、1,3-ブタジエンとスチレンの共重合体であるブタジエン-スチレンゴムであることが好ましく、ブタジエンゴムがより好ましい。
【0024】
ゴム質重合体(b1)の割合は、グラフト共重合体(B)全量を100重量%として40~95重量%が好ましく、50~90重量%がより好ましく、60~85重量%が更に好ましく、65~80重量%が特に好ましい。ゴム質重合体(b1)の割合が40重量%以上であると、ポリプロピレン系樹脂組成物の衝撃強度がより良好になり得る。。ゴム質重合体(b1)の割合が95重量%以下であると、グラフト共重合体(B)とブロック共重合体(C)との相溶性が良好となり、ポリプロピレン系樹脂組成物中でのグラフト共重合体(B)の分散性が向上するため、ポリプロピレン系樹脂組成物の衝撃強度がより良好になり得る。
【0025】
ゴム質重合体(b1)から構成されるコア粒子は単層構造であることが多いが、多層構造であってもよい。コア層が多層構造の場合は、各層のポリマー組成は、前記開示の範囲内で各々相違していてもよい。
【0026】
<ビニル系単量体成分(b2)>
グラフト共重合体(B)のコアシェル構造におけるシェル層は、ビニル系単量体成分(b2)の重合体から構成される。ビニル系単量体成分(b2)の重合体はコア粒子にグラフト結合していることが好ましいが、グラフト結合していないものも存在し得る。
該シェル層によって、グラフト共重合体(B)とブロック共重合体(C)との相溶性が向上し、ポリプロピレン系樹脂組成物中、グラフト共重合体(B)が均一に分散することが可能になる。シェル層は、単一の層から構成されてもよいし、互いに組成が異なる複数の層から構成されてもよい。
【0027】
ビニル系単量体成分(b2)は、グラフト共重合体(B)とブロック共重合体(C)との相溶性向上のため、少なくとも、芳香族ビニル化合物を含有する。
【0028】
前記芳香族ビニル化合物としては特に限定されないが、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-イソプロピルスチレン、o-クロルスチレン、p-クロルスチレン、ジクロロスチレン等が挙げられる。芳香族ビニル化合物は1種類のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。このうちスチレンが特に好ましい。
【0029】
グラフト共重合体(B)とブロック共重合体(C)との相溶性向上の観点から、ビニル系単量体成分(b2)全量のうち芳香族ビニル化合物の割合が30~100重量%となるように芳香族ビニル化合物を使用する。ビニル系単量体成分(b2)中の芳香族ビニル化合物の割合が30重量%未満であると、ポリプロピレン系樹脂組成物中におけるグラフト共重合体(B)の分散性が低下し、衝撃強度が良好なポリプロピレン系樹脂組成物を得ることが困難になる。前記割合の下限値は、50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上がより好ましく、90重量%以上がさらに好ましい。
【0030】
ビニル系単量体成分(b2)は、芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル化合物を含有してもよい。当該他のビニル化合物としては特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、シアン化ビニル化合物等が挙げられる。
【0031】
前記シアン化ビニル化合物としては特に限定されないが、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
【0032】
前記(メタ)アクリル酸エステルとしては特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸ベンジルなどの芳香環含有(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルアルキル(メタ)アクリレートなどのグリシジル(メタ)アクリレート類;アルコキシアルキル(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
【0033】
シェル層は、架橋構造を有する重合体から構成されてもよいが、架橋構造を持たない重合体から構成されることが好ましい。即ち、シェル層は、架橋性単量体を使用せずに形成された重合体から構成されることが好ましい。
【0034】
<グラフト共重合体(B)の製造方法>
(コア粒子の製造方法)
ゴム質重合体(b1)から構成されるコア粒子は、例えば、乳化重合、懸濁重合、マイクロサスペンジョン重合などによって製造することができる。例えば、国際公開第2005/028546号に記載の方法を用いることができる。
【0035】
(シェル層の形成方法)
シェル層は、コア粒子の存在下、ビニル系単量体成分(b2)を、公知のラジカル重合により重合することによって形成できる。コア粒子をエマルジョンとして得た場合には、ビニル系単量体成分(b2)の重合は乳化重合法により行うことが好ましい。例えば、国際公開第2005/028546号に記載の方法に従って製造することができる。
【0036】
乳化重合において用いることができる乳化剤(分散剤)としては、ジオクチルスルホコハク酸やドデシルベンゼンスルホン酸などに代表されるアルキルまたはアリールスルホン酸、アルキルまたはアリールエーテルスルホン酸、ドデシル硫酸に代表されるアルキルまたはアリール硫酸、アルキルまたはアリールエーテル硫酸、アルキルまたはアリール置換燐酸、アルキルまたはアリールエーテル置換燐酸、ドデシルザルコシン酸に代表されるN-アルキルまたはアリールザルコシン酸、オレイン酸やステアリン酸などに代表されるアルキルまたはアリールカルボン酸、アルキルまたはアリールエーテルカルボン酸などの各種の酸類、これら酸類のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩などのアニオン性乳化剤(分散剤);アルキルまたはアリール置換ポリエチレングリコールなどの非イオン性乳化剤(分散剤);ポリビニルアルコール、アルキル置換セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸誘導体などの分散剤が挙げられる。これらの乳化剤(分散剤)は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
重合体粒子の水性ラテックスの分散安定性に支障を来さない限り、乳化剤(分散剤)の使用量は少なくすることが好ましい。また、乳化剤(分散剤)は、その水溶性が高いほど好ましい。水溶性が高いと、乳化剤(分散剤)の水洗除去が容易になり、最終的な樹脂組成物又は成形体への悪影響を容易に防止できる。
【0038】
乳化重合法を採用する場合には、公知の開始剤、すなわち2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどを熱分解型開始剤として用いることができる。
【0039】
また、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、パラメンタンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ヘキシルパーオキサイドなどの有機過酸化物;過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの無機過酸化物といった過酸化物と、必要に応じてナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、グルコースなどの還元剤、および必要に応じて硫酸鉄(II)などの遷移金属塩、さらに必要に応じてエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムなどのキレート剤、さらに必要に応じてピロリン酸ナトリウムなどのリン含有化合物などを併用したレドックス型開始剤を使用することもできる。
【0040】
レドックス型開始剤を用いた場合には、前記過酸化物が実質的に熱分解しない低い温度でも重合を行うことができ、重合温度を広い範囲で設定できるようになり好ましい。中でもクメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物をレドックス型開始剤として用いることが好ましい。前記開始剤の使用量、レドックス型開始剤を用いる場合には前記還元剤・遷移金属塩・キレート剤などの使用量は公知の範囲で用いることができる。追加的に界面活性剤を添加してもよい。
【0041】
<ブロック共重合体(C)>
ブロック共重合体(C)は、いわゆる熱可塑性エラストマーの一種であり、芳香族ビニル化合物を含む単量体成分から形成された重合体ブロック(c1)、及び、共役ジエン系単量体を含む単量体成分から形成され、さらに水添された重合体ブロック(c2)、を含むものである。
【0042】
芳香族ビニル化合物を含む重合体ブロック(c1)がグラフト共重合体(B)のシェル層と相溶し、かつ、共役ジエン系単量体を含み水添された重合体ブロック(c2)がポリプロピレン系樹脂(A)と相溶することで、グラフト共重合体(B)のポリプロピレン系樹脂(A)への分散性が向上し、結果、ポリプロピレン系樹脂組成物の耐衝撃性が改善され得るものと推測される。つまり、グラフト共重合体(B)及びブロック共重合体(C)を、ポリプロピレン系樹脂(A)に対する耐衝撃性改質剤として使用することができる。
【0043】
ブロック共重合体(C)は、重合体ブロックを2個有するジブロック共重合体、重合体ブロックを3個有するトリブロック共重合体、重合体ブロックを4個以上有するマルチブロック共重合体のいずれであってもよい。
中でも、ブロック共重合体(C)は、トリブロック共重合体であることが好ましく、重合体ブロック(c1)-重合体ブロック(c2)-重合体ブロック(c1)で表されるトリブロック共重合体が特に好ましい。
【0044】
重合体ブロック(c1)に含まれる芳香族ビニル化合物としては特に限定されないが、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、インデン等が挙げられる。これらは1種類のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、スチレン、α-メチルスチレンが好ましく、スチレンが特に好ましい。
【0045】
重合体ブロック(c1)には、芳香族ビニル化合物以外のビニル系単量体が含まれてもよい。このような他のビニル系単量体の含有量は、重合体ブロック(c1)を形成する単量体成分のうち0~10重量%程度であってよく、0~5重量%程度であってもよい。
【0046】
重合体ブロック(c2)に含まれる共役ジエン系単量体としては特に限定されないが、1,3-ブタジエン、イソプレン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン等が挙げられる。これらは1種類のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、イソプレンが好ましい。
【0047】
重合体ブロック(c2)には、共役ジエン系単量体以外のビニル系単量体が含まれてもよい。このような他のビニル系単量体の含有量は、重合体ブロック(c2)を形成する単量体成分のうち0~10重量%程度であってよく、0~5重量%程度であってもよい。
【0048】
重合体ブロック(c2)は、ポリプロピレン系樹脂(A)との相溶性を高めるため、共役ジエン系単量体を含む単量体成分を重合した後に、水添(水素添加)されたものである。水添とは、共役ジエン系単量体の重合後に残留した不飽和結合に対し、水素原子を付加することで、不飽和結合を低減することをいう。この処理は公知の方法によって実施でき、例えば、不均一系触媒又は均一系触媒を用いた接触水素化等によって実施できる。水添の程度は特に限定されず、部分水添、完全水添のいずれであってもよいが、完全水添であることが好ましい。
【0049】
ブロック共重合体(C)において重合体ブロック(c2)が占める割合は特に限定されないが、例えば、10~90重量%であってよく、20~80重量%であってもよい。
【0050】
ブロック共重合体(C)としては特に限定されないが、例えば、スチレン-エチレン・ブチレン共重合体(SEB)、スチレン-エチレン・プロピレン共重合体(SEP)、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレン共重合体(SEPS)、ビニルSEPS、スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレン共重合体(SEEPS)、ビニルSEEPS、スチレン-エチレン・ブチレン-オレフィン結晶共重合体(SEBC)等が挙げられる。ブロック共重合体(C)は1種類のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、SEPS、ビニルSEPSが好ましい。尚、SEPSとビニルSEPSはいずれも、共役ジエン系単量体としてイソプレンを使用したものである。
【0051】
ブロック共重合体(C)中の芳香族ビニル化合物の含有割合は特に限定されないが、ポリプロピレン系樹脂(A)の耐衝撃性改善効果に優れる観点から、10~50重量%であることが好ましく、15~40重量%がより好ましく、20~35重量%がさらに好ましい。
【0052】
(配合量)
グラフト共重合体(B)とブロック共重合体(C)の配合量は、当業者が発明の効果を勘案して適宜設定できるが、耐衝撃性改善効果の観点から、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の合計含有量100重量%のうち、(B)成分と(C)成分の合計含有量が占める割合が、1~40重量%であることが好ましい。より好ましくは5~30重量%、さらに好ましくは10~25重量%である。
【0053】
グラフト共重合体(B)の含有量とブロック共重合体(C)の含有量の比率も当業者が発明の効果を勘案して適宜設定できるが、耐衝撃性改善効果の観点から、前記グラフト共重合体(B)と前記ブロック共重合体(C)の合計含有量100重量%のうち、ブロック共重合体(C)の含有量が占める割合が、20~80重量%であることが好ましく、25~75重量%がより好ましい。また、ポリプロピレン系樹脂組成物の引張伸びを顕著に向上させることができるため、前記割合は30重量%以上が好ましく、40重量%以上がより好ましく、50重量%以上がさらに好ましい。
【0054】
本実施形態に係るポリプロピレン系樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂以外の熱可塑性樹脂をさらに含有するものであってもよい。このような熱可塑性樹脂としては特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、アミド系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、環状ポリオレフィン等が挙げられる。これらは1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0055】
他の熱可塑性樹脂の配合量としては特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン系樹脂(A)100重量部に対して、例えば0~100重量部であってよい。0~50重量部であってもよいし、0~30重量部であってもよいし、0~10重量部であってもよい。
【0056】
前記ポリプロピレン系樹脂組成物は、一般的な熱可塑性樹脂組成物に配合され得る添加剤を適宜含有することができる。そのような添加剤としては特に限定されないが、例えば、難燃剤、難燃助剤、滴下防止剤、強化材、充填材、酸化防止剤、顔料、染料、導電性付与剤、加水分解抑制剤、増粘剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、流動性改良剤、離型剤、相溶化剤、熱安定剤等が挙げられる。
【0057】
衝撃強度の向上の観点から、前記ポリプロピレン系樹脂組成物は、無機フィラーをさらに含有することが好ましい。無機フィラーとしては特に限定されないが、例えば、タルク、炭酸カルシウム、天然マイカ、合成マイカ、ワラストナイト、モンモリロナイト等が挙げられる。無機フィラーは1種類のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、無機フィラーと有機フィラーを併用してもよい。
【0058】
無機フィラーの配合量は適宜設定することができるが、ポリプロピレン系樹脂(A)100重量部に対して5~60重量部が好ましく、10~50重量部がより好ましく、15~40重量部がさらに好ましい。
【0059】
(樹脂組成物の製造方法)
本開示に係るポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法は特に限定されず、一般的な熱可塑性樹脂組成物の製造方法を適用することができる。例えば、ヘンシェルミキサーやタンブラーミキサーなどを利用して各原料を混合した後、溶融混錬を実施してポリプロピレン系樹脂組成物を得ることができる。当該溶融混練には、単軸または二軸押出機、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、ミキシングロールなどの混練機を利用することができる。このような溶融混錬によって、ポリプロピレン系樹脂組成物からなるペレットを製造することができる。
【0060】
本開示に係るポリプロピレン系樹脂組成物は、これを所定の形状に成形して成形体とすることができる。成形方法としては特に限定されず、例えば、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、カレンダー成形法、インフレーション成形法、回転成形法、プレス成形法等を利用することができる。
【0061】
以下の各項目では、本開示における好ましい態様を列挙するが、本発明は以下の項目に限定されるものではない。
[項目1]
ポリプロピレン系樹脂(A)、
ゴム質重合体(b1)にビニル系単量体成分(b2)がグラフト重合されたグラフト共重合体(B)、及び、
ブロック共重合体(C)を含有し、
前記ビニル系単量体成分(b2)が、芳香族ビニル化合物を30重量%以上含み、
前記ブロック共重合体(C)が、芳香族ビニル化合物を含む単量体成分から形成された重合体ブロック(c1)、及び、共役ジエン系単量体を含む単量体成分から形成され、さらに水添された重合体ブロック(c2)、を含む、ポリプロピレン系樹脂組成物。
[項目2]
前記ブロック共重合体(C)が、重合体ブロック(c1)-重合体ブロック(c2)-重合体ブロック(c1)で表されるトリブロック共重合体である、項目1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
[項目3]
前記共役ジエン系単量体が、イソプレンである、項目1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
[項目4]
前記ブロック共重合体(C)は、前記芳香族ビニル化合物の含有量が10~50重量%である、項目1~3のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
[項目5]
前記ゴム質重合体(b1)が、ジエン系ゴムである、項目1~4のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
[項目6]
前記ポリプロピレン系樹脂(A)、前記グラフト共重合体(B)、及び前記ブロック共重合体(C)の合計含有量のうち、前記グラフト共重合体(B)と前記ブロック共重合体(C)の合計含有量が占める割合が1~40重量%である、項目1~5のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
[項目7]
前記グラフト共重合体(B)と前記ブロック共重合体(C)の合計含有量のうち、前記ブロック共重合体(C)の含有量が占める割合が、20~80重量%である、項目1~6のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
[項目8]
前記ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、無機フィラー5~60重量部をさらに含む、項目1~7のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
[項目9]
項目1~8のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物からなるペレット。
[項目10]
項目1~8のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物からなる成形体。
[項目11]
ゴム質重合体(b1)にビニル系単量体成分(b2)がグラフト重合されたグラフト共重合体(B)、及び、
ブロック共重合体(C)を含有し、
前記ビニル系単量体成分(b2)が、芳香族ビニル化合物を30重量%以上含み、
前記ブロック共重合体(C)が、芳香族ビニル化合物を含む単量体成分から形成された重合体ブロック(c1)、及び、共役ジエン系単量体を含む単量体成分から形成され、さらに水添された重合体ブロック(c2)、を含む、ポリプロピレン系樹脂用耐衝撃性改質剤。
【実施例0062】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0063】
(重合転化率)
得られた重合体粒子ラテックスの一部を採取・精秤し、それを熱風乾燥器中で120℃、1時間乾燥し、その乾燥後の重量を固形分量として精秤した。次に、乾燥前後の精秤結果の比率をラテックス中の固形成分比率として求めた。最後に、この固形成分比率を用いて、下記式により重合転化率を算出した。
式:重合転化率=(仕込み原料総重量×固形成分比率-モノマー以外の原料総重量)/仕込みモノマー重量×100(%)
【0064】
<グラフト共重合体粒子ラテックスの製造方法>
耐圧重合機中に、脱イオン水170重量部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.002重量部、硫酸第一鉄・7水和塩0.0012重量部、及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.13重量部を投入し、撹拌しつつ十分に脱気を行って酸素を除いた後、ブタジエン100重量部を系中に投入し、45℃に昇温した。そこに、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.05重量部、及びパラメンタンハイドロパーオキサイド0.03重量部を投入し重合を開始した。重合開始から6、10、14、17時間目それぞれに、パラメンタンハイドロパーオキサイド0.014重量部を投入した。重合20時間目に減圧下残存モノマーを脱揮除去して重合を終了し、ポリブタジエンゴムを主成分とするポリブタジエンゴムラテックスを得た。
【0065】
その後、温度計、攪拌機、還流冷却器、窒素流入口、原料の添加装置を有するガラス反応器に、脱イオン水30重量部、及び上記ポリブタジエンゴムラテックスを固形分が71重量部となるように仕込み、窒素気流中で攪拌しながら60℃に昇温した。次に、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.00042重量部、硫酸第一鉄0.00011重量部、及びホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.053重量部を仕込んだ。そこに、スチレン29重量部とクメンハイドロパーオキサイド0.032重量部の混合物を、90分間かけて添加した。添加終了5分後、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.020重量部を添加し、更に5分後にクメンハイドロパーオキサイド0.013重量部、また更に5分後にクメンハイドロパーオキサイド0.013重量部を添加する工程を2回繰り返した後に、50分間攪拌し、ポリブタジエンゴムにスチレンがグラフト重合してなるグラフト共重合体粒子ラテックスを重合転化率100%で得た。
【0066】
<グラフト共重合体粒子の白色樹脂粉末の取得>
脱イオン水760重量部、25重量%濃度の塩化カルシウム水溶液3.5重量部を攪拌しながら60℃に昇温し、そこに、ヒンダードフェノール系の抗酸化剤であるIRGANOX-1076〔n-オクタデシル-3-(3’,5’,ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕2.5重量部を添加したグラフト共重合体粒子ラテックスを投入し、凝固ラテックス粒子を含むスラリーを得た。その後、当該スラリーを90℃まで昇温し、脱水、乾燥させることにより、グラフト共重合体粒子の白色樹脂粉末を得た。
【0067】
(実施例1~5及び比較例1~3)
[使用原料]
(A)ポリプロピレン系樹脂:株式会社プライムポリマー製J108M
(B)グラフト共重合体:上記によって製造したグラフト共重合体粒子の白色樹脂粉末
(C)ブロック共重合体:
・SEPS:スチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体:株式会社クラレ製SEPTON 2002(スチレン含有量30重量%)
・ビニルSEPS:水添スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体:株式会社クラレ製HYBRAR R7125(スチレン含有量20重量%)
【0068】
[試験片作製条件]
前述した(A)、(B)、及び(C)の混合物を、表1に記載の重量部にて、バレル温度200℃に加熱した二軸押出機(株式会社テクノベル社製MFU25TW-60HG-NH)にてスクリュー回転数150rpmの条件で混錬し、押出して、ペレットを得た。
そのペレットを用いて、射出成形機(東洋機械金属工業株式会社製PLASTAR Si-1004/F75B)にて成形温度200℃、金型温度40℃の条件で、試験片を作製した。
【0069】
(Charpy強度測定条件)
前述した方法で作製した厚さ4mm、vノッチ付きの試験片について、JIS K 7111-1規格に準拠する方法によって、23℃でのCharpy衝撃強度を測定した。
【0070】
(引張伸び測定条件)
前述した方法で作製したJIS K 7161-2 1Aの試験片について、JIS K 7161-2規格に準拠する方法によって、テストスピード1mm/min.から始め、1分経過後に50mm/min.に上げる条件にて、23℃での引張伸びを測定した。
【0071】
【0072】
表1から、ポリプロピレン系樹脂(A)にグラフト共重合体(B)とブロック共重合体(C)の双方を配合した実施例1~5のポリプロピレン系樹脂組成物は、(A)単体の比較例1、並びに、(A)に(B)又は(C)のいずれか一方のみを配合した比較例2及び3よりも衝撃強度が高くなっていることが分かる。
また、実施例1~5は、比較例1~3と同等以上の引張伸びを達成しており、中でも実施例2~5は、比較例1~3より格段に高い伸びを達成していることが分かる。