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特開2024-44518天然石積層体及び天然石積層体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044518
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】天然石積層体及び天然石積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 19/04 20060101AFI20240326BHJP
   E04F 13/07 20060101ALI20240326BHJP
   E04F 13/14 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B32B19/04
E04F13/07 B
E04F13/14 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150080
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】597128428
【氏名又は名称】クワザワホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106404
【弁理士】
【氏名又は名称】江森 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100112977
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 有子
(72)【発明者】
【氏名】鵜沼 杏
【テーマコード(参考)】
2E110
4F100
【Fターム(参考)】
2E110AA41
2E110AA42
2E110AA57
2E110AB04
2E110AB22
2E110AB23
2E110AB32
2E110BA02
2E110BA16
2E110BB09
2E110BB12
2E110BC02
2E110CA03
2E110CA04
2E110CA16
2E110DA12
2E110DC21
2E110EA09
2E110GA07W
2E110GA15W
2E110GA29X
2E110GA32W
2E110GA33Y
2E110GA42X
2E110GA43W
2E110GB13W
2E110GB44Z
2E110GB49Z
2E110GB52Z
2E110GB53Z
2E110GB54Z
2E110GB62X
4F100AA37C
4F100AC06A
4F100AC06C
4F100AJ04C
4F100AK25D
4F100AK41B
4F100AT00C
4F100BA04
4F100BA07
4F100CB00B
4F100CB00D
4F100DC11A
4F100DG01C
4F100DJ01D
4F100EJ17
4F100EJ39
4F100JG01C
4F100JK17
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00D
(57)【要約】
【課題】切断性や柔軟性に富み、曲面を有する被着体に対しても貼付け可能な天然石積層体等を提供する。
【解決手段】
表面側から、天然石層、第1の接着剤層、補強材層、及び、第2の接着剤層を順次に備えてなる天然石積層体等であって、(A)天然石層が、表面に開口部やクラックを有し、(B)第2の接着剤層の厚さが0.3~0.8mmであり、(C)180°剥離粘着力が5N/20mm以上であり、(D)せん断クリープ試験において、ズレ長さが0.1mm以下であり、(E)マンドレル試験において、直径10mmの丸棒に巻き付けても剥離幅が1mm以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側から、天然石層、第1の接着剤層、補強材層、及び、第2の接着剤層を順次に備えてなる天然石積層体であって、以下の構成(A)~(E)を満たすことを特徴とする天然石積層体。
(A)前記天然石層が、表面に開口部及びクラック、あるいは、いずれか一方を有する。
(B)前記第2の接着剤層の厚さを0.3~0.8mmの範囲内の値とする。
(C)JIS Z 0237に準じて、測定温度0℃、引張速度300mm/分の条件で測定される、180°剥離粘着力を5N/20mm以上の値とする。
(D)JIS K 6859に準じて、荷重50g、張り合わせ面積25mm×25mm、80℃、7週間の条件で測定されるせん断クリープ試験において、ズレ長さを0.1mm以下の値とする。
(E)JIS K 5600-5-1に準じて測定されるマンドレル試験において、直径10mmの丸棒に巻き付けた場合の、剥離幅を1mm以下の値とする。
【請求項2】
前記第1の接着剤層が、厚さ0.2~0.8mmのポリエステル樹脂から構成してあることを特徴とする請求項1に記載の天然石積層体。
【請求項3】
前記天然石積層体の全体厚さを1.1~2.2mmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1に記載の天然石積層体。
【請求項4】
前記補強材層が、導電材料含有繊維であることを特徴とする請求項1に記載の天然石積層体。
【請求項5】
前記第2の接着剤層が、アクリルフォームから構成してあることを特徴とする請求項1に記載の天然石積層体。
【請求項6】
前記クラックを有する場合、その長さを10~5000μmの範囲内の値とし、前記開口部を有する場合、その円相当径を0.1~1000μmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1に記載の天然石積層体。
【請求項7】
LED光に対して、光透過性を有することを特徴とする請求項1に記載の天然石積層体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の天然石積層体の製造方法であって、下記工程(1)~(2)を含むことを特徴とする天然石積層体の製造方法。
(1)天然石シートと、補強材層とを、第1の接着剤層を介して積層し、天然石積層体の原反シートとする工程
(2)前記天然石積層体の原反シートに、第2の接着剤層を積層して、天然石積層体とする工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然石積層体及び天然石積層体の製造方法に関する。
特に、表面に天然石層を有するにもかかわらず、切断性や柔軟性に富み、曲面を有する被着体に対しても容易に貼り付け可能な天然石積層体(以下、天然石積層体粘着シートと称する場合がある。)及びそのような天然石積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天然石が有する深みのある風合いを、より忠実に醸し出すことができる天然石調加飾成形品や化粧用石材が各種提案されている。
例えば、以下の工程(a)~(c)を有する、図7に示すような天然石調加飾成形品の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
(a)天然石調の模様が印刷された繊維シートを切断して、扁平粒子状の加飾用粒子を作成する工程。
(b)加飾用粒子を硬化性樹脂液に配合して加飾成形品用コンパウンドを作成する工程。
(c)加飾成形品用コンパウンドを硬化成形し、天然石調加飾成形品とする工程。
【0003】
又、自然石板を表面に用いた、構造物に簡単に取り付けることができる化粧用石材が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
より具体的には、図8に示すように、自然石板の裏面に、剥離シート付きの両面粘着テープを設け、自然石板の裏面側に凹凸があっても合成樹脂層によって凹凸を均一にすることができ、剥離シートを剥がすだけで、壁面に簡単に貼り付けることができる化粧用石材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-328128号公報(特許請求の範囲、図1等)
【特許文献2】特開2005-146608号公報(特許請求の範囲、図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の天然石調加飾成形品の製造方法によれば、天然石の代替物として加飾用粒子を用いているため、天然石特有の石調や硬度等を十分に再現できないという問題が見られた。
より具体的には、加飾用粒子として、天然石調の模様が印刷された繊維シートを使用しているため、天然石が有する深みのある風合いや硬さを十分に再現することができず、大理石模様の加飾成形品しか製造できないという問題が見られた。
又、カッターやはさみ等による切断性や柔軟性などについては、何ら考慮されておらず、天然石調加飾成形品を所定形状に切断したり、曲面に対して、精度良く、密着させて貼付することができない等の問題も見られた。
【0006】
又、特許文献2に開示された化粧用石材は、自然石板が割れやすいため、自然石板の厚みを5mm以上にする必要があり、そのため、柔軟性、加工性、切断性、更には光透過性に乏しいという問題が見られた。
すなわち、かかる化粧用石材は、曲面箇所への貼付が困難なばかりか、折曲げ加工やロール状の保管も困難であって、切断加工するのも難しく、更には、光透過性が全く無いことから汎用性に欠けるという問題も見られた。
【0007】
そこで、本発明の発明者らは、鋭意検討した結果、所定構成(A)~(E)を満たすことを前提として、所定のクラック等を有する天然石層等を備える天然石積層体によれば、曲面を有する被着体に対しても容易に貼付可能であって、しかも、良好な切断性等が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、表面側に、高級感や重厚な質感等を有する天然石層を備えているにもかかわらず、優れた貼付性、柔軟性、切断性、加工性等が得られる天然石積層体、及びそのような天然石積層体の効率的な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、表面側から、天然石層、第1の接着剤層、補強材層、及び、第2の接着剤層を順次に備えてなる天然石積層体であって、以下の構成(A)~(E)を満たすことを特徴とする天然石積層体が提供され、上述した課題を解決することができる。
(A)天然石層が、表面に開口部及びクラック、あるいは、いずれか一方を有する。
(B)第2の接着剤層の厚さを0.3~0.8mmの範囲内の値とする。
(C)JIS Z 0237に準じて、測定温度0℃、引張速度300mm/分の条件で測定される、180°剥離粘着力を5N/20mm以上の値とする。
(D)JIS K 6859に準じて、荷重50g、張り合わせ面積25mm×25mm、80℃、7週間の条件で測定されるせん断クリープ試験における、ズレ長さを0.1mm以下の値とする。
(E)JIS K 5600-5-1に準じて測定されるマンドレル試験において、直径10mmの丸棒に巻き付けた場合の、剥離幅を1mm以下の値とする。
すなわち、天然石層が表面に開口部及びクラック、あるいは、いずれか一方を有するとともに、所定構成(A)~(E)を備えるため、天然石積層体を折り曲げて使用しても、開口部又はクラックにより応力が緩和され、天然石層が割れることを防ぐことができる。
従って、表面側に、比較的硬度が高く、かつ判断しやすい天然石層を有するにもかかわらず、曲面を有する被着体に対しても容易に貼付可能であって、かつ、良好な切断性や加工性に富み、しかも、製造容易な天然石積層体を提供することができる。
【0009】
又、本発明の天然石積層体を構成するにあたり、第1の接着剤層が、厚さ0.2~0.8mmのポリエステル樹脂から構成してあることが好ましい。
このように構成することにより、天然石層と、補強材層とを十分に接着かつ固定することができるとともに、良好な切断性や柔軟性を維持することができる。
【0010】
又、本発明の天然石積層体を構成するにあたり、天然石積層体の全体厚さを1.1~2.2mmの範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、曲面を有する被着体に対しても容易に貼り付け可能であって、かつ、切断性や柔軟性に富み、しかも、良好なハンドリング性や軽量性についても、得ることができる。
【0011】
又、本発明の天然石積層体を構成するにあたり、補強材層が、導電材料含有繊維であることが好ましい。
このように構成することにより、天然石層表面において帯電防止性を発揮し、天然石層表面に埃などが付着しづらくなる。
【0012】
又、本発明の天然石積層体を構成するにあたり、第2の接着剤層が、アクリルフォームから構成してあることが好ましい。
このように構成することにより、剥離強度と、せん断強度との間のバランスが更に良好な接着特性を示す天然石積層体とすることができる。
よって、天然石積層体であっても、通常、難接着性樹脂であるポリプロピレンやポリエチレン等からなる被着体に対して、適度な接着性をもって、長時間にわたって、安定的に貼付することができる。
【0013】
又、本発明の天然石積層体を構成するにあたり、クラックを有する場合、その長さを10~5000μmの範囲内の値とし、開口部を有する場合、その円相当径を0.1~1000μmの範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、天然石層表面の模様を保ちながら、切断性と柔軟性とを天然石積層体に付与することができる。
【0014】
又、本発明の天然石積層体を構成するにあたり、LED光に対して、光透過性を有することが好ましい。
より具体的には、所定条件下、20%以上の光透過性を有することが好ましい。
このように構成することにより、天然石積層体を、LEDライトと組み合わせて、例えば、照明器具やスイッチ等の分野に用いることができ、良好な汎用性を得ることができる。
【0015】
又、本発明の別の態様は、天然石積層体の製造方法であって、下記工程(1)~(2)を含むことを特徴とする天然石積層体の製造方法である。
(1)天然石シートと、補強材層とを、第1の接着剤層を介して積層し、天然石積層体の原反シートとする工程
(2)天然石積層体の原反シートに、第2の接着剤層を積層して、天然石積層体とする工程
このように天然石積層体を製造することにより、表面に天然石層を有するにもかかわらず、曲面を有する被着体に対しても容易に貼付可能であって、かつ、良好な切断性や加工性に富む天然石積層体を、効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1(a)~(d)は、それぞれ本発明の天然石積層体を説明するために供する断面図である。
図2図2(a)~(c)は、それぞれ本発明の天然石積層体を様々な被着体に対して貼付した状態を説明するために供する断面図である。
図3図3は、実施例1に用いた補強材層の背面側の表面写真(倍率:100倍)である。
図4図4は、実施例1に用いた天然石層の表面写真(倍率:1500倍)である。
図5図5は、実施例3に用いた天然石層の表面写真(倍率:1500倍)である。
図6図6は、本発明の天然石積層体の製造方法を説明するために供する図である。
図7図7は、従来の天然石調加飾成形品を説明するために供する図である。
図8図8は、従来の天然石積層体を説明するために供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態は、例えば、図1(a)に示すように、表面側から、天然石層12、第1の接着剤層14、補強材層16、及び、第2の接着剤層18を順次に備えてなる天然石積層体であって、以下の構成(A)~(E)を満たすことを特徴とする天然石積層体10である。
(A)天然石層が、表面に開口部及びクラック、あるいは、いずれか一方を有する。
(B)第2の接着剤層の厚さを0.3~0.8mmの範囲内の値とする。
(C)JIS Z 0237に準じて、測定温度0℃、引張速度300mm/分の条件で測定される、180°剥離粘着力を5N/20mm以上の値とする。
(D)JIS K 6859に準じて、荷重50g、張り合わせ面積25mm×25mm、80℃、7週間の条件で測定されるせん断クリープ試験における、ズレ長さを0.1mm以下の値とする。
(E)JIS K 5600-5-1に準じて測定されるマンドレル試験において、直径10mmの丸棒に巻き付けた場合の、剥離幅を1mm以下の値とする。
以下、第1の実施形態の天然石積層体を、図面等を適宜参照して、具体的に説明する。
【0018】
1.基本的構成
図1(a)等に示すように、第1の実施形態の天然石積層体10は、天然石特有の深みのある風合いを有する天然石層12と、天然石層12と補強材層16を接着するための第1の接着剤層14と、天然石層12を補強するための補強材層16と、これらの積層体を壁等の被着体に貼り付けるための第2の接着剤層18と、を表面側から順次に備え、後述する構成(A)~(E)を有する天然石積層体10である。
第1の実施形態の天然石積層体は、表面に天然石層を用いているのにもかかわらず、全体として十分な柔軟性を有するため、折り曲げて使用し、曲面等に貼り付けることができ、ロール状にして保管することもできる。
より具体的には、図2(a)~(c)に示すように、壁などの直線上の被着体26のみならず、曲面を有する被着体26´や円形上の被着体26´´に対しても天然石積層体10を好適に貼り付けることができる。
又、第1の実施形態の天然石積層体は、十分な柔軟性を有するとともに、優れた加工性を有しており、所定形状に切断したり、穴あき加工や切り抜き加工なども容易に行うことができる。
【0019】
又、図1(b)に示すように、第1の実施形態の天然石積層体10´は、文字や図柄を示す装飾層20と組み合わせたものであっても良い。
より具体的には、天然石積層体10´の一部を、穴あき加工や切り抜き加工し、加工部から装飾層20の表面を露出した、天然石積層体10´である。
このように、天然石層12と装飾層20とを表面に露出させることで、装飾層20に由来する文字や図柄を天然石層12の表面模様とともに表示することができる。
【0020】
2.天然石層
(1)基本的種類
天然石層は、鉱山などから産出される堆積岩や堆積岩が変性作用を受けた岩石に由来するものであることが好ましい。
より具体的には、粘板岩(スレート)や角岩(チャート)などの多層石材から剥離された層であることがより好ましい。
この理由は、これらの岩石であれば、スレート劈開などにより、面に沿って薄く剥離しやすくなっているため、天然石層が製造しやすいためである。
【0021】
(2)形態
又、天然石層は、図4及び図5に示すように、薄片状の鉱物などが層状(一部水平方向に重畳)に堆積した、複数の薄片状物の積層体であることが好ましい。
この理由は、天然石層が薄片状物の積層体であることで、天然石層がより多くの開口部を有しやすくなり、天然石積層体の切断性や柔軟性が向上しやすくなるためである。
より具体的には、天然石層が、通常、10~200μmの厚さを有する複数の薄片状物の積層体であることが好ましく、20~120μmの厚さを有する複数の薄片状物の積層体であることがより好ましく、30~60μmの厚さを有する複数の薄片状物の積層体であることが更に好ましい。
【0022】
又、天然石層は、所定の柔軟性が保たれる限り、特に限定されないが、多層石材から剥離された一層からなるものであっても良く、複数層からなるものであっても良く、更には、複数の石種の混合物からなる層であっても良い。
この理由は、これらの天然石層であれば、表面の天然石特有の深みのある風合いを十分に保つことができるためである。
又、天然石層は、堆積岩などに由来する天然石層を接着剤層に貼り付けた後に、熱や圧力等を加えて固めたものであっても良い。
この理由は、これらの天然石層であれば、より薄い天然石層とすることができるためである。
【0023】
(3)厚さ
図1(a)等に示す天然石層の厚さ(t1)は、所定の切断性や柔軟性等が保持される限り、特に限定されないものの、通常、0.05~0.3mmの範囲内の値であることが好ましい。
この理由は、天然石層の厚さ(t1)が、0.05mm未満の値になると、天然石層の強度を十分に保てずに、製造途中で天然石層が割れるなどの問題が生じ、天然石積層体を安定的に製造することが難しくなる場合があるためである。
又、天然石層の厚さ(t1)が、0.3mmより大きい値になると、天然石積層体が柔軟性を失い、曲面を有する被着体に貼り付ける際に割れてしまう場合があるためである。
更に、天然石層の厚さ(t1)が、0.3mmより大きい値になると、天然石積層体の切断性が著しく低下し、カッターやはさみ等により迅速かつ精度良く加工することが難しくなる場合があるためである。
従って、天然石層の厚さ(t1)を0.06~0.25mmの範囲内の値とすることがより好ましく、0.07~0.20mmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、天然石層の厚さは、例えば、天然石積層体の断面(SEM写真)から、算出することが可能である。
【0024】
(4)構成元素1
又、天然石層に含まれる元素の種類としては、Si、Al、Oなどが挙げられ、天然石層に含まれる主成分としては、例えば、SiO2、Al23などが挙げられる。
又、天然石層は、Fe、Ca、Ni、Co、Cr、Zn、C、及びTiなどの元素を含んでも良く、従って、それらの酸化物であるFe23、Fe34、FeO2、CaO、NiO、CoO2、CrO、ZnO、TiO2及びC(黒鉛)等の少なくとも一つの成分を含むことも好ましい。
この理由は、天然石層がこれらの成分やその酸化物を含むことによって、天然石層の結合力が高まるとともに、着色剤として、質感や光沢感などが異なる、多様な模様の天然石積層体とできるためである。
なお、天然石層における元素分析や、その含有量の定量は、実施例1において詳述するが、通常、SEM観察の際に、EDX分析を同時に行うことによって、正確かつ迅速に行うことができる。
【0025】
(5)構成元素2
又、天然石層に、SiO2を含む場合、その含有量を、天然石層の全体量を100重量%としたときに、20~80重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、SiO2、自然石として存在する天然石の主成分であって、その含有量は、天然石層の硬さ、強度、耐久性、質感、模様等に影響し、かつ、他の配合成分のマトリックスとしての機能を発揮するためである。
すなわち、SiO2の含有量が20重量%未満の値になると、天然石の硬さ、強度、耐久性等が著しく低下する場合がある。
一方、SiO2の含有量が80重量%を超えた値になると、他の配合成分の含有量が相対的に低下し、天然石層の質感が低下したり、あるいは、天然石としての模様等のバリエーションが著しく低下する場合があるためである。
従って、かかる天然石層に含まれるSiO2の含有量を25~75重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、30~70重量%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0026】
なお、所定面積の天然石層において、質感や模様等が大きく変わることから、天然石層の一部に、SiO2を相対的に多く含む領域と、SiO2を相対的に少なく含む領域と、を有することも好ましい。
その場合、単位重量当たり、SiO2を相対的に多く含む領域の含有量を50~90重量%の範囲内の値とすることが好ましく、SiO2を相対的に少なく含む領域の含有量を10~45重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
【0027】
(6)構成元素3
又、天然石層に、Al23を含む場合、その含有量を、天然石層の全体量を100重量%としたときに、10~50重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、Al23もまた、SiO2と並んで、自然石として存在する天然石の主成分の一つであって、その含有量は、天然石層の硬さ、強度、耐久性、質感、光沢、模様等に影響し、かつ、他の配合成分のマトリックスとしての機能を発揮するためである。
すなわち、Al23の含有量が10重量%未満の値になると、天然石の硬さ、強度、耐久性等が著しく低下する場合がある。
一方、Al23の含有量が50重量%を超えた値になると、他の配合成分の含有量が相対的に低下し、天然石層の質感が低下したり、あるいは、天然石としての模様等のバリエーションが著しく低下する場合があるためである。
従って、かかる天然石層に含まれるAl23の含有量を12~40重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、15~30重量%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0028】
なお、所定面積の天然石層において、質感や模様等が大きく変わることから、天然石層の一部に、Al23を相対的に多く含む領域と、Al23を相対的に少なく含む領域と、を有することも好ましい。
その場合、単位重量当たり(100重量%)、Al23を相対的に多く含む領域の含有量を30~60重量%の範囲内の値とすることが好ましく、Al23を相対的に少なく含む領域の含有量を5~28重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
【0029】
(5)構成元素4
又、天然石層に、酸化鉄としてのFe23、Fe34、FeO2の少なくとも一つを含む場合、その含有量を、天然石層の全体量100重量%としたときに、1~25重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、酸化鉄は、自然石として存在する天然石の着色光沢成分(黒色成分や赤色成分)、あるいは、主成分を結合させるバインダー成分の一つであって、その含有量は、天然石層の硬さ、強度、磁性、耐久性、質感、光沢、模様等に影響するためである。
すなわち、酸化鉄の含有量が1重量%未満の値になると、天然石の質感、磁性、耐久性、光沢等が著しく低下する場合がある。
一方、酸化鉄の含有量が25重量%を超えた値になると、天然石層の強度、硬さ、耐久性、光沢等が著しく低下する場合がある。
従って、かかる酸化鉄の含有量を2~18重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、5~15重量%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、所定面積の天然石層において、質感や模様等が大きく変わることから、天然石層の一部に、酸化鉄を相対的に多く含む領域と、酸化鉄を相対的に少なく含む領域と、を有することも好ましい。
【0030】
(6)構成元素5
又、天然石層に、CaO、MgO、K2O、Na2Oの少なくとも一つを含む場合、その含有量を、天然石層の全体量を100重量%としたときに、0.01~15重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、これらのアルカリ土類金属酸化物や、アルカリ金属酸化物は、このような含有量において、主成分と、着色剤成分との間の分散剤として機能し、かつ、単独でも着色剤としての機能を発揮するためである。
従って、かかる天然石層に含まれるCaO等の少なくとも一つの含有量を0.1~10重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、0.5~5重量%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0031】
(7)構成元素6
又、天然石層に、ZnOやTiO2のいずれかを含む場合、その含有量を、天然石層の全体量を100重量%としたときに、0.01~10重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、ZnOやTiO2のいずれかを含むことによって、透明感のある天然石層とすることができ、かつ、着色剤としての機能を発揮するためである。
従って、かかる天然石層に含まれるZnOやTiO2のいずれかの含有量を0.1~8重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、0.5~5重量%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0032】
(8)構成元素7
又、天然石層に、C(黒鉛)を含む場合、その含有量を、天然石層の全体量を100重量%としたときに、0.1~50重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、所定量のC(黒鉛)を含むことによって、黒色化やグレー色化された天然石層とすることができるためである。
従って、かかる天然石層に含まれるC(黒鉛)の含有量を1~40重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、5~30重量%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0033】
3.第1の接着剤層
(1)種類1
第1の接着剤層の種類や形態は、天然石層と補強材層とを接着することができる限り、特に限定されないが、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン樹脂等の少なくとも一つが挙げられ、特にポリエステル樹脂であることが好ましい。
この理由は、このような樹脂であれば、天然石層と補強材層とを接着できるとともに、第1の接着剤層が十分な光透過性を有し、天然石積層体が後述するような光透過性特性を有するためである。
【0034】
(2)種類2
又、これらの樹脂は、架橋剤や触媒を含み、或いは、自己架橋性として、熱硬化性、光硬化性、湿気硬化性等の硬化特性を有することがより好ましい。
そして、特に、第1の接着剤層が、ポリエステル樹脂から構成してあれば、天然石層と、補強材層とを強固に、かつ短時間で接着することができる。しかも、天然石積層体を構成した場合に、優れた柔軟性、加工性、光透過性等を発揮することができる。
なお、第1の接着剤層は、補強材層とともに、天然石層自体の補強に寄与させることも可能である。
【0035】
(3)厚さ
又、図1(a)等に示す第1の接着剤層の厚さ(t2)を、0.2~0.8mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような厚さの第1の接着剤層であれば、天然石層と補強材層とを十分に接着することができ、かつ、切断性や柔軟性、更には、所定の光透過率を維持することができるためである。
より具体的には、第1の接着剤層の厚さが、0.2mm未満の値になると、天然石層と補強材層とを接着するのに十分な接着性を保つことができず、曲面を有する被着体に貼り付けた際に、天然石層と補強材層とが、経過時間によって、剥離する場合があるためである。
一方、第1の接着剤層の厚さが、0.8mmを超えると、柔軟性や切断性が乏しくなるばかりか、天然石層と補強材層とを均一に接着することが困難となったり、得られる天然石積層体の厚さが過度に厚くなって、取り扱い性が低下したりする場合があるためである。
従って、第1の接着剤層の厚さを0.25~0.7mmの範囲内の値とすることがより好ましく、0.3~0.6mmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、第1の接着剤層の厚さは、例えば、天然石積層体の断面(SEM写真)から、算出することが可能である。
【0036】
4.補強材層
(1)種類1
補強材層は、天然石層を補強し、天然石積層体の柔軟性が保つことができる限り特に限定されないが、コットン繊維であることが好ましく、コットンメッシュ繊維であることがより好ましい。
これは、補強材層がこれらの繊維であれば、天然石層を補強しつつ、曲面を有する被着体に天然石積層体を貼り付けるために十分な柔軟性を維持することができるためである。
【0037】
(2)種類2
又、補強材層は、導電材料含有繊維に由来することが好ましく、より具体的には、セルロース系樹脂中に、所定量の導電材料を含有してなる、導電材料含有コットン繊維又は、そのメッシュ繊維であることがより好ましい。
この理由は、補強材層が、水酸基を多数有する樹脂を主剤(100重量部)として、それに、通常、所定量(10~200重量部)の導電材料を含むことで、体積抵抗率を1×106Ωcm以下の値に調整しやすくなるためである。従って、アース効果を発揮し、天然石層表面が静電気を帯びるのを防ぎやすくなり、表面にほこりなどが付着しにくくなるためである。
更に、補強材層に含まれる導電材料の種類は特に制限されるものではないが、炭素材料に由来した導電材料、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、鱗片状黒鉛及びカーボンナノチューブのうちの少なくとも一つであることが好ましい。
この理由は、カーボンブラック等であっても、平均粒子径がnmサイズの極小であって、平均直径1~10μmの繊維中に、安定的に、かつ均一含有することができるためである。又、着色効果も優れており、補強材層の色が黒色になり、表面側から補強材層を透視した場合であっても、天然石が有する深みのある風合いを高めることができるためである。
【0038】
(3)種類3
又、補強材層は、表面に開口部(以下、貫通孔と称する場合もある。)を有することが好ましい。
より具体的には、図3に示すように、単位面積(cm2)当たり、通常、1~80個の円形状の開口部を有することがより好ましい。
この理由は、補強材層がこのような開口部を有することで、後述するような所望の光透過率を得ることができ、良好な汎用性を得ることができるためである。
又、開口部は、後述する天然石積層体の原反シートに対して、パンチング処理、ニードル処理、エンボス処理、プレス処理等の少なくとも一つの加工処理を実施することにより形成することが好ましい。
なお、補強材層における開口部の円相当径につき、0.1~1000μmの範囲内の値とすることが好ましく、0.5~300μmの範囲内の値とすることがより好ましく、1~100μmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0039】
(4)厚さ
又、図1(a)等に示す補強材層の厚さ(t3)は、天然石積層体の強度及び柔軟性が保たれる限り、特に限定されないが、例えば、0.02~0.3mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、補強材層の厚さ(t3)をこのような範囲の値とすることにより、天然石積層体の柔軟性を維持したまま、天然石層を補強できるためである。
より具体的には、補強材層の厚さ(t3)が、0.02mm未満の値になると、天然石層を十分に補強できなくなり、曲面を有する被着体などに貼り付けた際の破損などを防止できない場合があるためである。
一方、補強材層の厚さ(t3)が、0.3mmより大きい値であると、天然石積層体の柔軟性が低下し、曲面を有する被着体等に貼り付けることが難しくなる場合があるためである。
従って、補強材層の厚さ(t3)を0.03~0.25mmの範囲内の値とすることがより好ましく、0.04~0.20mmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、補強材層の厚さは、例えば、天然石積層体の断面(SEM写真)から、算出することが可能である。
【0040】
5.第2の接着剤層
(1)種類
第2の接着剤層(単に、粘着剤層と称する場合がある。)は、天然石積層体を、曲面を有する被着体に貼り付けることができるのに十分な粘着力を有する限り、特に限定されないが、アクリル樹脂粘着剤の内部に気泡構造を含有してなるアクリルフォームから構成してあることが好ましい。
この理由は、かかる粘着剤層をアクリルフォームから構成することにより、0℃以下などの低温下の環境下においても十分な粘着力を示し、寒冷地においても、平坦な被着体はもちろんのこと、曲面を有する被着体に対しても、天然石積層体を容易に貼付することができるためである。
しかも、このような粘着剤層は、両面 テープとして、幅広い使用温度域において、優れた剥離力(ピール力)や凝集力を発揮することができためである。
【0041】
又、アクリルフォームから構成される粘着剤層は、例えば、メカニカルフロス法により、製造することができる。
より具体的には、エマルジョンと起泡剤とを含有するエマルジョン組成物を、メカニカルフロス法を用いて発泡させて発泡体を形成し、当該発泡体を硬化させる工程を含む方法により、製造することが好ましい。
又、上記製造方法において、エマルジョン組成物に対して、更に架橋剤を含有させて、上記硬化工程において、紫外線や熱などのエネルギーを印加してエマルジョンを構成する樹脂を、架橋剤を介して架橋させることにより、発泡体を硬化させることが好ましい。
【0042】
又、アクリルフォームの原料であるエマルジョン組成物は、アクリル系エマルジョンと、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョンからなる混合エマルジョンの全体量(100重量%)に対して、30重量%未満のウレタンエマルジョンを混合してなるエマルジョン組成物であることが好ましく、20重量%以下のウレタンエマルジョンを混合してなるエマルジョン組成物であることがより好ましい。
より具体的には、10重量%超、90重量%以下のアクリル系エマルジョンと、10重量%以上90重量%未満のエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョンと、を混合してなる混合エマルジョンに対して、所定量以下のウレタンエマルジョンを配合してなる組成物であることが好ましい。
更に、アクリル系エマルジョンと、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョンからなる混合エマルジョンの合計量が、全体量の70重量%を超えるように混合してなるエマルジョン組成物であることが好ましい。
又、上記エマルジョン組成物は、アクリル系エマルジョンやエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョンの代わりにポリエチレン樹脂エマルジョンを混合してなるエマルジョン組成物であっても良く、粘着剤層をポリエチレンフォームから構成しても良い。
【0043】
(2)構造
又、第2の接着剤層を構成するアクリルフォームは、半連続気泡構造を有することが好ましい。
この理由は、このような構造とすることにより、吸盤効果によって被着体に対する粘着性を向上させることができるためである。
ここで、半連続気泡構造とは、半通気性を有する構造を意味し、例えば、JIS L1096A法に準拠した、フラジール型通気性試験機を用いて測定した通気性が、2[ml/cm2/sec.]以上、80[ml/cm2/sec.]未満であれば、半連続気泡構造であると判断できる。
【0044】
又、アクリルフォームの断面における気泡の平均径(平均断面セル径)を50μm以下の値とすることが好ましく、5~40μmの範囲内の値とすることがより好ましく、10~30μmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
この理由は、セル径が微細な程、被着体と接する面が大きくなる上、強い吸盤効果が期待できるためである。
なお、アクリルフォームの断面の気泡の平均径は、アクリルフォームを有する粘着剤層の断面(SEM写真)から径の値を算出し、それらの値の平均値を計算することにより求めることができる。
すなわち、JIS Z 8901:2006に準拠した平均粒子径の算出方法に準じた方法により、気泡の平均径を求めることができる。
【0045】
(3)剥離シート
又、図1(c)に示すように、第2の接着剤層18は、補強材層16と対向する面(図1(c)中、記号B面)と反対の面(図1(c)中、記号A面)に剥離シート22を設けることも好ましい。
この理由は、このように第2の接着剤層に対して、剥離シートを設けておくことによって、ロール状に席巻することもできるためである。
又、剥離シートを使用直前に剥がすことにより、粘着力が十分に保たれた状態で天然石積層体を被着体に貼り付けることができる。
【0046】
ここで、剥離シートの種類としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの透明又は不透明なプラスチックフィルム、コート紙やグラシン紙、ラミネート紙などの紙を採用することができる。
又、かかる剥離シートは、剥離処理として、片面に、シリコーン樹脂やフッ素樹脂等の剥離材料がコーティングされたものであっても好ましい。
更に言えば、剥離シートの剥離性を両面で異ならせ、ロール状に席巻しやすくなることから、異なる剥離性を示す、複数のシリコーン樹脂等を、それぞれ一方の面にコーティングした態様であっても好ましい。
【0047】
6.構成(A)~(E)
(1)構成(A)
天然石積層体において、構成(A)として、図4図5に例示するように、天然石層の表面に、開口部及びクラック、あるいは、いずれか一方を有することを特徴とする。
この理由は、天然石層が表面に開口部やクラックを有することにより、天然石積層体を曲げた場合に発生する応力などが開口部又はクラックにおいて緩和され、ひいては、天然石層が破断したり、剥離したりすることを有効に防止できるためである。
又、天然石積層体が表面に開口部等を有することから、柔軟性に富み、かつ、加工性が良好になって、所定形状に切断したり、穴あき加工や切り抜き加工などの加工を容易に実施できるためである。
しかも、開口部及びクラックの大きさや数等にもよるが、これらを通して、所望の光透過率を得ることができるためである。
従って、表面に、所定の開口部及びクラック、あるいは、いずれか一方を有することにより、所望の光透過率が得られ、ひいては、照明器具、画像表示装置、スイッチ、安全灯、視認灯等の光用途にも幅広く用いることができる。
又、本発明に用いられる天然石層は、湿度が高い空間において使用した場合であっても、天然石表面に付着した水が開口部やクラックに染み込むため、天然石表面における結露の発生を抑制することができる。
【0048】
ここで、開口部とは、天然石層を構成する鉱物質の間、特に、複数の薄片状物の間に所定大きさをもって生じた孔や隙間を意味する。少なくとも天然石層を貫通する孔であることが好ましいが、図1(b)に示すように、第1の接着剤層等まで到達している態様も好ましい。
又、クラックとは、天然石層の表面における鉱物質の間、特に、複数の薄片状物の間に生じた、連続又は不連続の直線的又は湾曲した隙間や間隔を意味する。
又、これらの天然石層の開口部及びクラックは、天然石自体に由来するものでも良く、後述する方法により、開口部やクラックを有しない状態の天然石に、所定の開口処理やクラック形成処理を施すことで、形成しても良い。
従って、かかる天然石層における開口部の大きさは、天然石特有の深みのある風合いや使用した場合に割れない程度の強度が保たれる範囲であれば特に限定されないが、開口部を有する場合、通常、円相当径として、0.1~1000μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、開口部の大きさをこのような範囲の値とすることにより、天然石層表面の模様を保ちながら、切断性と柔軟性とを天然石積層体に付与することができるためである。
従って、天然石層の開口部の大きさ(円相当径)を0.5~500μmの範囲内の値とすることがより好ましく、1~200μmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0049】
又、天然石層がクラックを有する場合、その長さは、天然石特有の深みのある風合いや使用した場合に割れない程度の強度を考慮して定めることが好ましいが、通常、10~5000μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、クラックの長さをこのような範囲の値とすることにより、天然石層表面の模様を保ちながら、切断性と柔軟性とを天然石積層体に付与することができるためである。
従って、天然石層のクラックの長さを100~3000μmの範囲内の値とすることがより好ましく、300~1000μmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
又、同様の理由により、天然石層のクラックの平均幅についても、0.01~100μmの範囲内の値とすることが好ましく、0.1~50μmの範囲内の値とすることがより好ましく、0.5~30μmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0050】
なお、天然石層の開口部及びクラックの面積比率を、天然石層の単位面積(100cm2)当たり、0.01~10cm2の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、クラックの面積比率をこのような範囲内の値とすることにより、天然石層表面の模様を保ちながら、切断性と柔軟性とを天然石積層体に付与することができるためである。
従って、かかる天然石層の開口部及びクラックの面積比率を0.1~5cm2の範囲内の値とすることがより好ましく、0.5~3cm2の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0051】
(2)構成(B)
天然石積層体において、構成(B)として、図1(a)等に示す第2の接着剤層の厚さ(t4)を0.3~0.8mmの範囲内の値とすることを特徴とする。
この理由は、このような厚さの第2の接着剤層であれば、各種被着体に対する粘着力を十分に保つことができるとともに、後述するLED光に対する光透過性などの所定物性を示すためである。
より具体的には、第2の接着剤層の厚さ(t4)が、0.3mm未満の値であると、被着体に対する粘着力を十分に保つことができなくなり、天然石積層体が被着体から剥がれる場合があるためである。
一方、第2の接着剤層の厚さ(t4)が、0.8mmよりも大きい値であると、光透過性などの所定物性を示さなくなり、天然石積層体の用途が限定されてしまう場合があるためである。
従って、第2の接着剤層の厚さ(t4)を0.35~0.7mmの範囲内の値とすることが好ましく、0.4~0.6mmの範囲内の値とすることがより好ましい。
【0052】
(3)構成(C)
天然石積層体において、構成(C)として、JIS Z 0237に準じて、測定温度0℃、引張速度300mm/分の条件で測定される、180°剥離粘着力を5N/20mm以上の値とすることを特徴する。
この理由は、天然石積層体の180°剥離粘着力をこのような値とすることにより、低温条件下においても各種被着体に対する粘着力を十分に保つことができ、寒冷地など温度が低い環境においても天然石積層体を使用することができるためである。
従って、当該条件において測定される、180°剥離粘着力が7N/20mm以上の値とすることが好ましく、9N/20mm以上の値とすることがより好ましい。
【0053】
(4)構成(D)
天然石積層体において、構成(D)として、JIS K 6859に準じて、荷重50g、張り合わせ面積25mm×25mm、80℃、7週間の条件で測定されるせん断クリープ試験における、ズレ長さを0.1mm以下の値とすることを特徴とする。
この理由は、天然石積層体のせん断クリープ試験におけるズレ長さをこのような値にすることにより、天然石積層体が壁等の被着体から剥がれづらくなり、天然石積層体を長期間にわたって使用することができるためである。
従って、当該条件で測定される、せん断クリープ試験におけるズレ長さを0.05mm以下とすることが好ましく、0.025mm以下とすることがより好ましい。
【0054】
(5)構成(E)
天然石積層体において、構成(E)として、JIS K 5600-5-1に準じて測定されるマンドレル試験において、直径10mmの丸棒に巻き付けた場合の、剥離幅を1mm以下の値とすることを特徴とする。
この理由は、天然石積層体のマンドレル試験における剥離幅をこのような値にすることにより、曲面を有する被着体に天然石積層体を貼り付けた場合であっても、天然石積層体が被着体から剥離せず、曲面を有する被着体を天然石模様に装飾することができるためである。
従って、当該マンドレル試験における剥離幅を0.8mm以下にすることが好ましく、0.6mm以下にすることがより好ましい。
【0055】
7.その他の層構成
(1)表面保護層
又、天然石積層体は、図1(d)に示すように、天然石層12の表面上に透明な表面保護層24を有することが好ましい。
この理由は、天然石積層体が透明な表面保護層を有することで、天然石特有の深みのある風合いを維持しながら、天然石表面の強度を高めることができる場合があるためである。
より具体的には、天然石表面に物などが接触した場合に、天然石層から鉱物の一部が剥離したり、天然石層が傷付いたりするのを効果的に防止できるためである。
【0056】
又、かかる表面保護層は、天然石積層体が天然石特有の深みのある風合いを維持できる限り特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、あるいはこれらの複合樹脂などの少なくとも一つが挙げられる。
この理由は、これらの表面保護層であれば、天然石層表面に対して、所定の密着性を示すとともに、透明性に富んでいることから、天然石特有の深みのある風合いを、そのまま視認することができるためである。
なお、表面保護層に、撥水性又は防水性を付与したい場合には、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂などの少なくとも一つを用いることが好ましい。
表面保護層としてこのような樹脂を用いることにより、台所や屋外など、天然石層表面が水に触れる環境においても、天然石積層体を劣化させることなく使用することができる場合があるためである。
【0057】
又、図1(d)に示す表面保護層の厚さ(t6)は、天然石積層体の天然石表面を十分に保護できる限り、特に限定されないが、例えば、0.1~100μmの範囲の値であることが好ましい。
この理由は、表面保護層の厚さ(t6)をこのような範囲の値にすることにより、天然石特有の風合いを十分に維持しながら、天然石表面を保護することができるためである。
従って、表面保護層の厚さ(t6)は、1~90μmの範囲の値であることがより好ましく、5~80μmの範囲の値であることが更に好ましい。
【0058】
(2)全体厚さ
天然石積層体の全体の厚さ(天然石層の厚さ+第1の接着剤層の厚さ+補強材層の厚さ+第2の接着剤層の厚さ)は、特に限定されるものではないが、通常、1.1~2.2mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、天然石積層体の全体厚さがこの範囲内の値であれば、容易かつ精度良く積層して、作成することができ、ひいては、切断性及び柔軟性等に富んだ天然石積層体とすることできるためである。
より具体的には、かかる天然石積層体の全体厚さが、1.1mm未満の値になると、天然石積層体自体の正確な作成が困難になったり、取り扱い性等が著しく低下したりする場合があるためである。
又、かかる天然石積層体の全体厚さが、2.2mmより大きな値になると、天然石積層体の柔軟性、切断性、更には、光透過率等が著しく低下する場合があるためである。
従って、天然石積層体の全体厚さを1.2~2.0mmの範囲内の値とすることがより好ましく、1.3~1.7mmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0059】
(3)中間層
又、天然石積層体は、特に図示しないものの、中間層を有することが好ましい。
中間層は、例えば、天然石層と第1の接着剤層との間の層であってもよく、第1の接着剤層と補強材層との間の層であってもよく、補強材層と第2の接着剤層との間の層であってもよい。
この理由は、このような中間層によって、天然石積層体の耐久性、機械的強度、耐熱性、柔軟性等を所望範囲に容易に調整できるためである。
又、このような中間層によって、層同士の密着性(接着性)を更に良好にすることができるためである。
【0060】
8.各種特性
(1)180°剥離力(40℃)
又、本発明の天然石積層体は、JIS Z 0237に準じて、測定温度40℃、引張速度300mm/分の条件で測定される、180°剥離粘着力が11N/20mm以上の値とすることが好ましい。
この理由は、当該測定条件において測定される180°剥離粘着力をこのような値とすることにより、比較的温度が高い環境においても天然石積層体が被着体から剥がれることなく、天然石積層体を使用することができるためである。
従って、当該条件において測定される、180°剥離粘着力が13N/20mm以上の値とすることが好ましく、15N/20mm以上の値とすることがより好ましい。
【0061】
(2)180°剥離力(クリープ試験後)
又、本発明の天然石積層体は、JIS K 6859に準じて、荷重50g、80℃、7週間の条件で測定されるせん断クリープ試験後の天然石積層体を測定サンプルとし、JIS Z 0237に準じて、測定温度40℃、引張速度300mm/分の条件で測定される、180°剥離粘着力を15N/20mm以上の値とすることが好ましい。
この理由は、当該測定条件において測定される180°剥離粘着力をこのような値とすることにより、比較的温度が高い環境においても長期間に渡って天然石積層体を使用することができるためである。
従って、当該条件において測定される、180°剥離粘着力が20N/20mm以上の値とすることが好ましく、30N/20mm以上の値とすることがより好ましい。
【0062】
(3)折り曲げ試験
又、天然石積層体は、第2の接着剤層を内側とし、曲率半径1.0mmで折り曲げたとき、天然石層に破断が生じるまでの回数が50回以上であることが好ましく、100回以上であることがより好ましく、300回以上であることが更に好ましい。
この理由は、このような折り曲げ試験における、所定耐性を有する天然石積層体であれば、曲面を有する被着体に貼り付けた場合であっても、天然石層表面が破断するおそれが、更に少なくなるためである。
【0063】
(4)切断性試験
又、天然石積層体の切断性は、例えば、市販のカッター(例えば、万能L型11BS、オルファー(株)製)を用いてなる切断速度によって判断することができる。そして、通常、10秒/cm以下の速度で切断可能であれば、切断性としては問題ないと言える。
従って、3秒/cm以下の速度で切断可能であることがより好ましく、0.5秒/cm以下の速度で切断可能であることがより好ましい。
なお、切断速度は、自動計測又はストップウォッチなどを用い、測定することができる。
【0064】
(5)光透過性
又、天然石積層体は、LED光に対し、光透過性を有することが好ましい。
より具体的には、波長400~550nm、輝度100cd/m2のLED光に対し、所定の光透過性、例えば、20%以上の光透過性を有することが好ましい。
この理由は、天然石積層体がこのような光透過性を有することにより、LED光源等に天然石積層体を貼り付け、LED光を天然石積層体の裏側から照らすことで、天然石層表面にLED光による文字や図形を映すことができるためである。
又、LED面光源等を天然石積層体の裏側に貼り付けることで、天然石表面の意匠を消灯時と点灯時で異なったものとすることができるためである。
従って、天然石積層体を、40%以上の光透過性とすることがより好ましく、60%以上の光透過性とすることが更に好ましい。
【0065】
(6)誘電特性
又、本発明の天然石積層体は、静電容量型タッチパネル上に貼り付けた場合に、天然石積層体を通して、当該タッチパネルを操作できる程度の誘電特性を有することが好ましい。
このような誘電特性を有する天然石積層体であれば、静電容量型タッチパネル、静電容量型タッチスクリーン、静電容量型スイッチ等と組み合わせることで、全体的には天然石模様の装飾性に富んだ、複合的な静電容量型タッチパネル等とすることができる。
又、基本的に、天然石積層体の誘電率は、温度変化等が少ないことから、高温環境使用に適していると言える。
従って、天然石積層体の比誘電率(ε)を2以上の値とすることが好ましく、3以上の値とすることが好ましく、4以上の値とすることが更に好ましい。
【0066】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、図6に例示するように、第1の実施形態の天然石積層体の製造方法であって、下記工程(1)~(2)を含むことを特徴とする天然石模様シートの製造方法である。
(1)天然石シートと、補強材層とを、第1の接着剤層を介して積層し、天然石積層体の原反シートとする工程(以下、第1工程と称する場合がある。)
(2)天然石積層体の原反シートに、第2の接着剤層を積層して、天然石積層体とする工程(以下、第2工程と称する場合がある。)
【0067】
1.工程(1)
第1工程は、図6の工程S1に示すように、天然石層である天然石シートと、補強材層とを、第1の接着剤層を介して積層する工程である。
すなわち、第1工程により、天然石積層体の原反シートを製造することができる。
【0068】
第1工程として、まずは、補強材層と第1の接着剤層とを、例えば、熱圧着法、ホットメルト法、超音波振動法、溶液塗布法、スプレー塗布法等の少なくとも一つによって、貼り付け、片面に第1の接着剤層が設けられた積層体とすることが好ましい。
次いで、第1の接着剤層の反対面に、例えば、熱圧着法、ホットメルト法、超音波振動法等の少なくとも一つによって、天然石層の元になる天然石表面に積層することが好ましい。
この場合、天然石と第1の接着剤層とを強固に接着させるために、あらかじめ天然石の表面が平坦になるように加工しておくことがより好ましい。
最後に、第1の接着剤層と補強材層とからなる積層体を、天然石の表面から剥がすことで、天然石表面を剥離させて、天然石積層体の原反シートとすることが好ましい。
【0069】
又、あらかじめ所定厚さに加工した天然石層を準備し、補強材層が設けられた第1の接着剤層の接着面に、例えば、熱圧着法、ホットメルト法、超音波振動法等の少なくとも一つによって、天然石層を積層させ、天然石積層体の原反シートとすることも好ましい。
【0070】
又、第1工程により製造した天然石積層体の原反シートに対して、さらなる加工を施すことがより好ましい。
より具体的には、天然石積層体の原反シートの天然石層表面に平滑性をもたらすために、グラインダーなどにより天然石表面を研磨することがより好ましい。
又、原反シートの天然石層表面の開口部の数や面積を増やしたり、調整したりするために、パンチング処理、ニードル処理、エンボス処理、プレス処理等の少なくとも一つの加工処理を実施することがより好ましい。
更に、原反シートの天然石層表面のクラック数や面積を増やしたり、調整したりするために、原反シートの延伸処理、ニードル処理、エンボス処理、プレス処理等の少なくとも一つの加工処理を実施すことも好ましい。
【0071】
2.工程(2)
第2工程は、図6の工程S2に示すように、第1工程において製造した天然石積層体の原反シートの補強材層に第2の接着剤層を積層させて、天然石積層体とする工程である。
より具体的には、第1工程において製造した天然石積層体の原反シートの補強材層における表面と、両面テープなどの第2の接着剤層における粘着面とを貼り合わせることで、天然石積層体とする工程である。
【0072】
又、第2工程において、両面テープなどの第2の接着剤層を補強材層と張り合わせる変わりに、補強材層に対して、粘着剤を塗布する工程を実施して、形成することも好ましい。
より具体的には、第1工程において製造した原反シートの補強材層に対して、紫外線硬化性粘着剤等の原料樹脂を塗布し、必要に応じて、紫外線(ブラックライトを含む。)を照射したり、加熱処理したりすることで、第2の接着剤層を形成する工程である。
このような工程を有することにより、天然石積層体の原反シートに合わせて、紫外線硬化性粘着剤等の粘着剤層の厚さなどを適宜調整することができるためである。
【0073】
3.プレス工程
又、第2の実施形態は、図6の工程S3に示すように、第1工程及び第2工程により製造した天然石積層体に対して、天然石積層体の両面又は片面から押圧するプレス工程(以下、第3工程と称する場合がある。)を実施することが好ましい。
より具体的には、ラミネーターやローラープレス機等を用い、天然石積層体の両面又は片面から、天然石積層体全体に、所定圧力を加える工程を実施し、天然石積層体の原反シートと第2の接着剤層とを、均一かつ確実に、積層することが好ましい。
すなわち、かかるプレス工程により、天然石積層体の原反シートと第2の接着剤層との接着性をより向上させることができるためである。
【0074】
4.切断工程
又、第2の実施形態は、図6の工程S4に示すように、第1工程及び第2工程を経て製造した天然石積層体を、所定形状に切断する工程(以下、第4工程と称する場合がある。)を有することが好ましい。
より具体的には、製造した天然石積層体を、所望のサイズや形状に合わせて、はさみ、カッター、押切り装置、チップソー、レーザーカッターなどの簡易工具を用いて、所定形状に切断する工程を有することが好ましい。
この理由は、所望のサイズや形状にあらかじめ切断しておくことで、使用者が天然石積層体を使用する際に、取り扱い性が良好になって、曲面等に対して、容易かつ精度良く貼付できるためである。
【0075】
又、切断工程において、天然石積層体を長方形状に切断する場合は、典型的には、600mm×200mmのサイズに切断することが好ましい。
又、天然石積層体を正方形状に切断する場合は、典型的には、200mm×200mmサイズに切断することが好ましい。
天然石積層体をこのようなサイズに切断することで、取り扱い性が良好になり、さらなる加工が必要な場合であっても、カッターやはさみ等により迅速かつ精度良く加工することができるためである。
【0076】
5.追加工程
天然石積層体の主用途の一つは、壁等に貼り付けるための装飾シート(屋外看板用マーキング用シートや車両用マーキング用シートを含む。)である。
すなわち、本発明の天然石積層体を、壁等に貼付し、高級感のある天然石模様を有する壁材や看板等の表面部として用いることが好ましい。
よって、第1工程~第4工程を経て得られた天然石積層体を、装飾シートとして、下地に貼付する工程を追加実施することが好ましい。
【0077】
又、天然石積層体の用途の一つは、天然石層の硬さや堅牢さを利用してなる補強用シートである。
すなわち、比較的柔らかく、耐久性、耐熱性等が乏しい下地に対して貼付し、これらの耐久性や耐熱性等を向上させる補強用シートとして用いることが好ましい。
【0078】
又、天然石積層体の用途の一つは、照明器具用シートである。すなわち、天然石層のLEDの光透過性を利用し、外観上、天然石模様を呈する照明器具やスイッチの表面等に利用してなる照明器具用シートである。
よって、第1工程~第4工程を経て得られた天然石積層体と、LEDライトを組み合わせて、天然石模様を呈する照明器具やスイッチを作成する工程を実施することが好ましい。
【0079】
又、天然石積層体で、天然石模様を呈する切り文字やパターンを作成し、それを、各種装飾シートや、ガラス、木、セラミック、紙等の上に配置し、高級感や質感の高い複合装飾シートや情報シートとする工程を追加することも好ましい。
更に、天然石積層体の優れた誘電特性、帯電防止性、接着性等を利用して、誘電特性を利用した電子機器、画像表示装置、帯電防止シート、ガラス飛散防止シート、外壁用下地シート等に適用する工程を追加することも好ましい。
【実施例0080】
以下、本発明を、実施例に基づいて詳細に説明するが、特に理由なく、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0081】
[実施例1]
1.天然石積層体の作成
(1)工程(1)
まず、第1工程として、天然石層としての薄膜天然石シート(厚さ200μm、SiO2の含有量:57重量%、Al23の含有量:20重量%、Na2Oの含有量:17重量%、CaOの含有量:5重量%)を準備した。
【0082】
次いで、天然石層と、カーボンブラック入りコットンメッシュ繊維からなる補強材層とをポリエステル樹脂接着剤層(厚さ:0.2mm)を介して、熱圧着法によって、貼り付け、片面に第1の接着剤層が設けられた天然石層積層体とした。
なお、天然石層と、第1の接着剤層とを、均一かつ強固に接着させるために、あらかじめ天然石層の接触表面が平坦になるように、196N/cm2(≒10MPa)の圧力で、プレス加工しておいた。
更に、エンボス加工において、天然石層に、直径20μmの開口部を複数設けて、開口部面積を1%にした。
【0083】
(2)工程(2)
次いで、かかる天然石積層体の補強材層に、第2の接着剤層として、市販のアクリルフォームテープ(厚さ450μm、コニシ株式会社製、以下AFと称する場合もある。)を、ラミネーターを用いて積層し、天然石積層体した。
最後に、得られた天然石積層につき、プレスロール装置を用いて、196N/cm2の圧力で、均一に押圧し、天然石積層体として、各種評価に供した。
【0084】
2.天然石積層体の評価
(1)天然石層の表面観察及び元素分析
EDX付きの電子顕微鏡装置TM3030Plius(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて、得られた天然石積層体における天然石層の表面観察及び元素分析を行った。図4に、参考として、かかる天然石層の表面状態を示すSEM写真を示す。
そして、天然石層の表面におけるクラック又は開口部の有無やそれらの状態から、下記基準に沿って、表面状態を評価した。
◎:長さが50μm以上のクラック、又は、円相当径が20μm以上の開口部が、それぞれ観察される。
〇:長さが10μm以上のクラック、又は、円相当径が10μm以上の開口部が、それぞれ観察される。
△:長さが3μm以上のクラック、又は、円相当径が1μm以上の開口部が、それぞれ観察される。
×:長さが3μm以上のクラック、及び、円相当径が1μm以上の開口部が、それぞれ全く観察されない。
【0085】
又、本明細書中において、上記SEM観察により、3μm以上の長さのクラックが観察される状態を天然石層がクラックを有する状態とし、円相当径が1μm以上の開口部が観察される状態を天然石層が開口部を有する状態とした。
又、上記SEM観察により、3μm以上の長さのクラック、及び、円相当径が1μm以上の開口部が観察されない状態を、天然石層がクラック及び開口部を有しない状態とした。
SEM観察により得られた、天然石層におけるクラック及び開口部の有無、並びに、天然石層に含まれる元素について表1に示した。
【0086】
(2)第2の接着剤層の厚さ
EDX付きの電子顕微鏡装置TM3030Plius(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて、得られた天然石積層体における天然石層の断面観察を行い、各層の厚さを算出した。特に、第2の接着剤層の厚さを算出し、下記基準に沿って評価した。
◎:第2の接着剤層の厚さが、0.4~0.7mmの範囲内の値である。
〇:第2の接着剤層の厚さが、0.3~0.8mmの範囲内の値である。
△:第2の接着剤層の厚さが、0.2~0.9mmの範囲内の値である。
×:第2の接着剤層の厚さが、0.2mm未満か、0.9mm超の値である。
【0087】
(3)180°剥離粘着力(0℃)
得られた天然石積層体の180°剥離粘着力を、JIS Z 0237に準じて、測定温度0℃、引張速度300mm/分の条件で測定し、下記基準に沿って評価した。
◎:10N/20mm以上である。
〇:5N/20mm以上である。
△:1N/20mm以上である。
×:1N/20mm未満である。
【0088】
(4)せん断クリープ試験(初期)
得られた天然石積層体のJIS K 6859に準じた、せん断クリープ試験における、ズレ長さを測定した。
すなわち、荷重50g、張り合わせ面積25mm×25mm、80℃、7週間の条件で測定されるせん断クリープ試験において、ズレ長さを測定し、下記基準に沿って、評価した。
◎:ズレ長さが、0.01mm以下である。
〇:ズレ長さが、0.1mm以下である。
△:ズレ長さが、0.5mm以下である。
×:ズレ長さが、0.5mm超である。
【0089】
(5)マンドレル試験
得られた天然石積層体のJIS K 5600-5-1に準じて測定されるマンドレル試験において、直径10mmの丸棒に巻き付け、その後の剥離幅を測定し、下記基準に沿って、評価した。
◎:剥離幅が、0.1mm以下である。
〇:剥離幅が、1mm以下である。
△:剥離幅が、5mm以下である。
×:剥離幅が、5mm超である。
【0090】
(6)180°剥離力(40℃)
得られた天然石積層体につき、JIS Z 0237に準じて、測定温度40℃、引張速度300mm/分の条件で測定される、180°剥離粘着力を測定し、下記基準に沿って評価した。
◎:15N/20mm以上である。
〇:11N/20mm以上である。
△:1N/20mm以上である。
×:1N/20mm未満である。
【0091】
(7)切断性試験
天然石積層体の切断性を、市販のカッター(万能L型11BS、オルファー(株)製)によって、下記基準に沿って、評価した。
なお、切断速度は、ストップウォッチを用い測定した。
◎:1秒/cm以下の速度で切断可能である。
〇:5秒/cm以下の速度で切断可能である。
△:10秒/cm以下の速度で切断可能である。
×:10秒/cm超の速度であれば何とか切断可能であるか、あるいは、10秒/cm超の速度であっても切断不可能である。
【0092】
(8)光透過性
天然石積層体の光透過性を、光透過率をもとに評価した。
すなわち、天然石積層体の第2の接着剤層の側に、波長400~550nm、輝度100cd/m2のLEDランプを置いて、天然石積層体を透過する光量を測定して光透過率を算出し、下記基準に沿って、光透過性を評価した。
◎:光透過率が、40%以上である。
〇:光透過率が、20%以上である。
△:光透過率が、2%以上である。
×:光透過率が、2%未満である。
【0093】
[実施例2~8]
実施例2~8において、表1に示すように、天然石層の種類、天然石積層体の原反シートの処理方法、天然石層の厚さ(t1)、第1の接着剤層の厚さ(t2)、補強材層の厚さ(t3)、及び第2の接着剤層の厚さ(t4)を変えたほかは、実施例1と同様に天然石積層体を作成し、評価した。
【0094】
すなわち、実施例2において、天然石層として薄膜天然石シート(厚さ200μm、以下に示す領域2-1と領域2-2を、単位重量当たり、それぞれ、60重量%及び30重量%含む)を用い、第1の接着剤層の厚さ(t2)及び補強材層の厚さ(t3)を、それぞれ、0.5mm及び0.2mmとした以外は、実施例1と同様に、天然石積層体を作成し、評価した。
領域2-1(SiO2の含有量:57重量%、Al23の含有量:20重量%、Na2Oの含有量:17重量%、CaOの含有量:5重量%)
領域2-2(SiO2の含有量:30重量%、Al23の含有量:20重量%、Fe23の含有量:25重量%、MgOの含有量:18重量%)
【0095】
又、実施例3において、天然石層として薄膜天然石シート(厚さ200μm、以下に示す領域3-1と領域3-2を、単位重量当たり、それぞれ、70重量%及び20重量%含む)を用い、第1の接着剤層の厚さ(t2)、補強材層の厚さ(t3)及び第2の接着剤層の厚さ(t4)を、それぞれ、0.8mm、0.02mm及び0.3mmとし、エンボス処理の代わりに原反シートの延伸処理をした以外は、実施例1と同様に、天然石積層体を作成し、評価した。
領域3-1(SiO2の含有量:54重量%、Al23の含有量:24重量%、Cの含有量:12重量%、K2Oの含有量:11重量%)
領域3-2(CaOの含有量:25重量%、Fe23の含有量:22重量%、Cの含有量:15重量%、SiO2の含有量:15重量%、MgOの含有量:15重量%、Al23の含有量:8重量%)
又、図5に、参考として、かかる天然石層の表面状態を示すSEM写真を示す。
【0096】
又、実施例4において、天然石層として薄膜天然石シート(厚さ50μm、以下に示す領域4-1と領域4-2を、単位重量当たり、それぞれ、60重量%及び30重量%含む)を用い、第1の接着剤層の厚さ(t2)、補強材層の厚さ(t3)及び第2の接着剤層の厚さ(t4)を、それぞれ、0.5mm、0.2mm及び0.35mmとした以外は、実施例1と同様に、天然石積層体を作成し、評価した。
領域4-1(SiO2の含有量:43重量%、Al23の含有量:29重量%、Cの含有量:12重量%、K2Oの含有量:10重量%、MgOの含有量:3重量%、Fe23の含有量:2重量%)
領域4-2(Fe23の含有量:58重量%、SiO2の含有量:18重量%、Al23の含有量:10重量%、Cの含有量:9重量%、K2Oの含有量:4重量%)
【0097】
又、実施例5において、天然石層として薄膜天然石シート(厚さ200μm、以下に示す領域5-1と領域5-2を、単位重量当たり、それぞれ、60重量%及び30重量%含む)を用い、第1の接着剤層の厚さ(t2)、補強材層の厚さ(t3)及び第2の接着剤層の厚さ(t4)を、それぞれ、0.5mm、0.2mm及び0.4mmとし、エンボス処理の代わりに原反シートの延伸処理をした以外は、実施例1と同様に、天然石積層体を作成し、評価した。
領域5-1(Cの含有量:47重量%、SiO2の含有量:43重量%、24重量%、CaOの含有量:10重量%、Fe23の含有量:8重量%、Al23の含有量:5重量%、MgOの含有量:4重量%、K2Oの含有量:3重量%)
領域5-2(Cの含有量:90重量%)
【0098】
又、実施例6において、天然石層として薄膜天然石シート(厚さ200μm、以下に示す領域6-1と領域6-2を、単位重量当たり、それぞれ、60重量%及び30重量%含む)を用い、第1の接着剤層の厚さ(t2)、補強材層の厚さ(t3)及び第2の接着剤層の厚さ(t4)を、それぞれ、0.5mm、0.2mm及び0.5mmとし、エンボス処理の代わりに原反シートの延伸処理をした以外は、実施例1と同様に、天然石積層体を作成し、評価した。
領域6-1(SiO2の含有量:38重量%、Al23の含有量:28重量%、K2Oの含有量:11重量%、Brの含有量:10重量%、Cの含有量:6重量%、Fe23の含有量:4重量%、MgOの含有量:2重量%)
領域6-2(Fe23の含有量:37重量%、Al23の含有量:20重量%、SiO2の含有量:19重量%、MgOの含有量:11重量%、Cの含有量:9重量%、Brの含有量:4重量%)
【0099】
又、実施例7において、天然石層として薄膜天然石シート(厚さ200μm、以下に示す領域7-1と領域7-2を、単位重量当たり、それぞれ、60重量%及び30重量%含む)を用い、第1の接着剤層の厚さ(t2)、補強材層の厚さ(t3)及び第2の接着剤層の厚さ(t4)を、それぞれ、0.5mm、0.2mm及び0.6mmとし、エンボス処理とともに原反シートの延伸処理をした以外は、実施例1と同様に、天然石積層体を作成し、評価した。
領域7-1(SiO2の含有量:29重量%、Fe23の含有量:25重量%、Al23の含有量:22重量%、Cの含有量:9重量%、K2Oの含有量:8重量%、MgOの含有量:4重量%、TiO2の含有量:3重量%)
領域7-2(TiO2の含有量:41重量%、Fe23の含有量:40重量%、SiO2の含有量:9重量%、Al23の含有量:7重量%、Cの含有量:4重量%)
【0100】
又、実施例8において、天然石層として薄膜天然石シート(厚さ300μm、以下に示す領域8-1と領域8-2を、単位重量当たり、それぞれ、60重量%及び30重量%含む)を用い、第1の接着剤層の厚さ(t2)、補強材層の厚さ(t3)及び第2の接着剤層の厚さ(t4)を、それぞれ、0.5mm、0.2mm及び0.7mmとし、エンボス処理とともに原反シートの延伸処理をした以外は、実施例1と同様に、天然石積層体を作成し、評価した。
領域8-1(SiO2の含有量:29重量%、Al23の含有量:24重量%、Fe23の含有量:23重量%、Cの含有量:15重量%、K2Oの含有量:7重量%、MgOの含有量:3重量%)
領域8-2(Fe23の含有量:33重量%、Al23の含有量:24重量%、SiO2の含有量:23重量%、MgOの含有量:12重量%、Cの含有量:8重量%)
それぞれ得られた結果を表2に示す。
【0101】
[比較例1~4]
比較例1~4において、表1に示すように、天然石層の種類、天然石積層体の原反シートの処理方法、天然石層の厚さ(t1)、第1の接着剤層の厚さ(t2)、補強材層の厚さ(t3)、第2の接着剤層の厚さ(t4)の厚さ及び第2の接着剤層の種類を変えたほかは、実施例1と同様に天然石積層体を作成し、評価した。
【0102】
すなわち、比較例1において、第1の接着剤層の厚さ(t2)、補強材層の厚さ(t3)及び第2の接着剤層の厚さ(t4)を、それぞれ、0.1mm、0.5mm及び0.15mmとした以外は、実施例1と同様に、天然石積層体を作成し、評価した。
【0103】
又、比較例2において、第1の接着剤層の厚さ(t2)及び補強材層の厚さ(t3)を、それぞれ、0.5mm及び0.01mmとした以外は、実施例1と同様に、天然石積層体を作成し、評価した。
【0104】
又、比較例3において、アクリルフォームテープの代わりに市販のアクリル系粘着テープ(厚さ100μm、綜研化学株式会社製、商品名「SCA-7110」、以下ACと称する場合もある。)を用い、第1の接着剤層の厚さ(t2)及び補強材層の厚さ(t3)を、それぞれ、0.5mm及び0.2mmとし、エンボス処理の代わりに原反シートの延伸処理をした以外は、実施例1と同様に、天然石積層体を作成し、評価した。
【0105】
又、比較例4において、天然石層の厚さ(t1)、第1の接着剤層の厚さ(t2)、補強材層の厚さ(t3)及び第2の接着剤層の厚さ(t4)を、それぞれ、0.4mm、1.0mm、0.2mm及び1.1mmとし、エンボス処理を行わず、所定の開口部やクラックを形成しなかった以外は、実施例1と同様に、天然石積層体を作成し、評価した。
それぞれ得られた結果を表2に示す。
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の天然石積層体によれば、表面側に、天然石層を有するにもかかわらず、曲面を有する被着体に対しても容易に貼付可能であって、かつ、良好な切断性や加工性に富み、しかも、製造容易な天然石積層体が得られるようになった。
従って、例えば、装飾シート(マーキング用シートを含む。)、補強用シート、照明器具用シート、切文字と、装飾シートの組み合わせシート、帯電防止シート、ガラス飛散防止シート、外壁用下地シート等の各種用途に展開することができる。
【符号の説明】
【0109】
10:天然石積層体
12:天然石層
14:第1の接着剤層
16:補強材層
18:第2の接着剤層
20:装飾層
22:剥離シート
24:表面保護層
26:被着体

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8