IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ紡織株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-乗物用シート 図1
  • 特開-乗物用シート 図2
  • 特開-乗物用シート 図3
  • 特開-乗物用シート 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044520
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/58 20060101AFI20240326BHJP
   A47C 31/02 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B60N2/58
A47C31/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150082
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牛山 剛志
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DE03
(57)【要約】
【課題】シートカバーのヘッドレスト用の孔部周りの見栄えをより確実に確保することにある。
【解決手段】シートバック6と、シートバック6のシート上側に配設されるヘッドレストとを備え、シートバック6の意匠面は、ファブリック製のシートカバー6Sにて形成されていると共に、シートカバー6Sには、ヘッドレストから突出するステー部材を、筒状のヘッドレストサポートを介してシートバック6に挿設するための孔部20が形成されている乗物用シートにおいて、シートカバー6Sの糸材100が孔部20の周縁に沿うように延びていると共に、孔部20には、糸材100の延びる方向における両端部を分断する一対の分断部31,32が形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックと、前記シートバックのシート上側に配設されるヘッドレストとを備え、
前記シートバックの意匠面は、ファブリック製のシートカバーにて形成されていると共に、前記シートカバーには、前記ヘッドレストから突出するステー部材を、筒状のヘッドレストサポートを介して前記シートバックに挿設するための孔部が形成されている乗物用シートにおいて、
前記シートカバーの糸材が前記孔部の周縁に沿うように延びていると共に、前記孔部には、前記糸材の延びる方向における両端部を分断する一対の分断部が形成されている乗物用シート。
【請求項2】
前記分断部は、前記孔部の周縁を切り欠くことで形成されていると共に、前記分断部の周縁は、前記孔部の周縁に対して前記孔部の中心から離れる方向に延びるように形成されている請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記分断部の周縁は、円弧形状をなしている請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
四つの前記分断部が、前記孔部に対して等間隔で形成されている請求項1~3のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートバックと、シートバックのシート上側に配設されるヘッドレストとを備えた乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の乗物用シートに関連する技術が特許文献1に開示されている。この特許文献1では、ヘッドレストが車両下側に突出するステー部材を有し、このステー部材が、シートバックに設けられた筒状のヘッドレストサポートに挿設されている。そしてシートバックは、その意匠面がファブリック製のシートカバーで構成されており、このシートカバーに、ヘッドレストサポートを挿通するための孔部が形成されている。上記した構成では、ヘッドレストサポートをシートカバーの孔部を通じてシートバックに取付けたのち、このヘッドレストサポートにヘッドレストのステー部材を挿設できるようになる。またヘッドレストサポートは、その上部側に設けられた頭部が孔部よりも大寸とされており、この頭部によって孔部が隠されるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5570859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで上記したシートバックでは、そのファブリック製のシートカバーの糸材が、ヘッドレストを挿設するための孔部の周縁に沿うように延びている。このような構成では、ヘッドレストサポートを孔部に挿入する際に、このヘッドレストサポートが孔部周りの糸材に引っかかることがある。そして糸材が孔部周りにほつれた状態で残存した場合、この糸材のほつれが原因となって孔部周りのシートカバーに伝線が生じ、シートの見栄えを確保し難くなるおそれがあった。本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、シートカバーのヘッドレスト用の孔部周りの見栄えをより確実に確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段として、第1発明の乗物用シートは、シートバックと、シートバックのシート上側に配設されるヘッドレストとを備えている。そしてシートバックの意匠面は、ファブリック製のシートカバーにて形成されていると共に、シートカバーには、ヘッドレストから突出するステー部材を、筒状のヘッドレストサポートを介してシートバックに挿設するための孔部が形成されている。この種の構成においては、シートカバーのヘッドレスト用の孔部周りの見栄えをより確実に確保できることが望ましい。そこで本発明では、シートカバーの糸材が孔部の周縁に沿うように延びていると共に、孔部には、糸材の延びる方向における両端部を分断する一対の分断部が形成されている。本発明では、孔部周りの糸材の両端を分断部によって分断することにより、この糸材を孔部の周縁から意図的に脱落し易くしている。このためヘッドレストの取付けの際に、孔部周りの糸材がヘッドレストサポートに引っかかったとしても、この引っかかった糸材を孔部の周縁から脱落させられるようになり、孔部周りの伝線の発生を抑制することが可能となる。
【0006】
第2発明の乗物用シートは、第1発明の乗物用シートにおいて、分断部は、孔部の周縁を切り欠くことで形成されていると共に、分断部の周縁は、孔部の周縁に対して孔部の中心から離れる方向に延びるように形成されている。本発明では、孔部の周囲を切り欠くように分断部を形成して、孔部を部分的に広げたことにより、孔部周りのシートカバー部分とヘッドレストサポートとの意図しない干渉を抑制できるようになる。
【0007】
第3発明の乗物用シートは、第2発明の乗物用シートにおいて、分断部の周縁は、円弧形状をなしている。本発明では、分断部の周縁を円弧形状としたことで、分断部の開口寸法が部分的に大きくなることを回避している。これにより、分断部の開口寸法の調整が容易となり、特にヘッドレストサポートの外形寸法を考慮しつつ分断部の開口寸法を調整する場合に、その開口寸法の調整が容易となる。
【0008】
第4発明の乗物用シートは、第1発明~第3発明のいずれかの乗物用シートにおいて、四つの分断部が、孔部に対して等間隔で形成されている。本発明では、分断部に対して孔部をバランスよく形成したことにより、この孔部周りの糸材をより適切に脱落し易くすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る第1発明によれば、シートカバーのヘッドレスト用の孔部周りの見栄えをより確実に確保することができる。また第2発明によれば、孔部周りの見栄えを更に確実に確保することができる。また第3発明によれば、孔部周りの見栄えをより適切に確保することができる。そして第4発明によれば、孔部周りの見栄えを一層確実に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】乗物用シートを部分的に分解して示す透視斜視図である。
図2】ヘッドレストサポートを挿設する前のシートバックの断面図である。
図3】孔部周りの糸材の配置状態を示す孔部の上面図である。
図4】ヘッドレストサポートと孔部の位置関係を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、図1図4を参照して説明する。各図には、便宜上、乗物用シートの前後方向と左右方向(シート幅方向)と上下方向を示す矢線を適宜図示する。そして図3では、便宜上、孔部周りの糸材を部分的に図示すると共に、隣り合う糸材同士の間隔を大きくして、孔部周りの糸材の配置状態を明確にしている。
【0012】
[乗物用シートの概要]
シートカバー6Sの各孔部20,21について説明する前に、先ず、図1に示す乗物用シート2の概要を説明する。この乗物用シート2は、そのシート構成部材として、シートクッション4と、シートバック6と、ヘッドレスト8を有する。これらシート構成部材(4,6,8)は、各々、シート骨格をなすシートフレーム(4F,6F,8F)と、シート外形をなすシートパッド(4P,6P,8P)と、シートパッドを被覆するシートカバー(4S,6S,8S)を有する。そしてシートクッション4の後部にシートバック6(詳細後述)の下部が起倒可能に連結されており、起立状態のシートバック6の上方にヘッドレスト8が配設されている。ここでヘッドレスト8の下面には、ステー部材としての右側のヘッドレストステー10と左側のヘッドレストステー11が突出しており、各ヘッドレストステー10,11は、左右に適宜の間隔をあけて配置されている。そして左右のヘッドレストステー10,11が、後述するようにシートバック6の上部に挿設されることにより、シートバック6の上方にヘッドレスト8が配設されるようになる。
【0013】
[シートバック]
図1に示すシートバック6は、乗員の背凭れとなる正面視で概ね矩形の部材であり、上述の基本構成6F,6P,6Sと、左右一対のヘッドレストサポート12,13とを有している。そしてシートバック6では、シートフレーム6F上にシートパッド6Pが配置され、このシートパッド6Pが、意匠面をなすファブリック製のシートカバー6Sで被覆されている。またシートバック6の上部には、右側のヘッドレストサポート12と左側のヘッドレストサポート13が挿設される。この左右のヘッドレストサポート12(13)は、対応するヘッドレストステー10(11)を挿設するための筒状部材である。また各ヘッドレストサポート12(13)は、その上端部に、上方視で略角形に形成された寸大な頭部120(130)を有している。そして各ヘッドレストサポート12(13)は、後述するシートカバー6Sの対応する孔部20(21)に挿通された状態で、シートフレーム6Fに設けられた筒状のサポートブラケット14(15)に組付けられる。
【0014】
そして図1に示すヘッドレストサポート12(13)は、上記したようにシートカバー6Sの対応する孔部(右側の孔部20,左側の孔部21)に挿通されるが、このとき孔部周りの見栄えを確保できるように配慮すべきである。即ち、シートバック6では、ヘッドレスト用の孔部20(21)の周縁に、ファブリック製のシートカバー6Sの糸材100が沿うように延びている(図3参照)。上記した構成では、挿通作業時のヘッドレストサポート12(13)が孔部周りの糸材100に引っかかることで、この孔部周りのシートカバー6S部分に伝線が生じるおそれがある。そこで本実施例では、後述する孔部の構成(分断部31~34)によって、シートカバー6Sのヘッドレスト用の孔部周りの見栄えをより確実に確保することとした。以下、シートカバー6Sの各構成について詳述する。
【0015】
[シートカバー、孔部]
図1に示すシートカバー6Sは、意匠面を構成する面材であり、天然繊維又は合成繊維からなるファブリックの一種である織物にて形成されている。このシートカバー6Sは、シートパッド6Pを被覆可能な立体形状に形成されており、その上面部分に左右一対の孔部20,21が設けられている。この左右の孔部20,21は、図1及び図2を参照して、対応するヘッドレストサポート12,13の通過を許容するように略角形に形成されて、シートバック6を厚み方向に貫通している。そして左右の孔部20,21は、後述するヘッドレストサポート12(13)の略角形の頭部120(130)に覆い隠されるように、その開口寸法が調節されている。
【0016】
[孔部周りの糸材の配置状態]
ここで図3に示す右側の孔部20を一例に、その孔部周りの糸材100の配置状態について説明する。先ず、シートカバー6Sは上記したように織物で形成されており、その織物の糸材100(経糸101,縦糸102)が互いに交絡しつつ縦横に延びている。そして右側の孔部20では、その右側の周縁(右縁201)に沿うように縦糸102が前後に延びるように配置されている。また右側の孔部20の左側の周縁(左縁203)にも、それに沿うように縦糸102が配置されている。そして右側の孔部20の前後の側の周縁(前縁202、後縁204)には、それに沿うように経糸101が左右に延びるように配置されている。なお図示は省略するが、図1に示す左側の孔部21も、右側の孔部20と同様の配置状態で糸材100が配置されている。
【0017】
[分断部]
そして図1に示す左右の孔部20,21は、概ね同一の基本構成を有すると共に、その周縁に四つの分断部が形成されている(図1では、便宜上、左右の孔部の分断部に共通の符号31~34を付す)。例えば図3に示す右側の孔部20を一例に分断部を説明すると、これら四つの分断部31~34は、右側の孔部20の周回りに等間隔で形成されており、右側の孔部20の四つ角部分にそれぞれ配置されている。即ち、第一分断部31は、右側の孔部20の右前側に形成されていると共に、第二分断部32は、右側の孔部20の右後側に形成されている。また第三分断部33は、右側の孔部20の左前側に形成されていると共に、第四分断部34は、右側の孔部20の左後側に形成されている。
【0018】
ここで図3に示す各分断部31~34は、その形成位置が異なる以外は概ね同一の基本構成を有しているため、以下に、右前側の第一分断部31と右後側の第二分断部32を一例にその詳細を説明する。先ず、第一分断部31は、右側の孔部20の右前側の部分を略半円状に切り欠くことで形成されており、その第一分断部31の周縁310は、上方視で円弧形状に形成されている。そして第一分断部31の周縁310は、右側の孔部20の中心Cから離れるように右前側に延びており、右側の孔部20の右縁201に対して外側に張出している。これにより、右側の孔部20の右縁201から第一分断部31の周縁310(後縁部分)にかけての部分に、段差形状の第一段差部41が形成されるようになる。
【0019】
次に、図3に示す右後側の第二分断部32は、上記した第一分断部31と同様に略半円状に形成されており、右側の孔部20の中心Cから離れるように右後側に延びている。これにより、右側の孔部20の右縁201から第二分断部32の周縁320(前縁部分)にかけての部分に、段差形状の第二段差部42が形成されるようになる。そして右側の孔部20では、その第一分断部31と第二分断部32間のシートカバー6S部分に、第一段差部41と第二段差部42とに囲まれた略台形状の第一帯状部51が前後に延びるように形成される。この第一帯状部51には、シートカバー6Sの縦糸102が、右側の孔部20の右縁201に沿うように配置されている。そして、上記した縦糸102の前後の端部(糸材の延びる方向における両端部)は、第一分断部31と第二分断部32とによって分断された状態となっている。
【0020】
また図3に示す右側の孔部20では、右前側の第一分断部31と同様に、左前側の第三分断部33も略半円状に形成される。これにより、第一分断部31と第三分断部33間のシートカバー6S部分に略台形状の第二帯状部52が左右に延びるように形成される。そして第二帯状部52には、シートカバー6Sの経糸101が右側の孔部20の周縁(前縁202)に沿うように配置されると共に、その経糸101の左右の端が、第一分断部31と第三分断部33とによって分断された状態となっている。
【0021】
さらに図3に示す右側の孔部20では、左後側の第四分断部34も略半円状に形成されることで、第三分断部33と第四分断部34間のシートカバー6S部分に略台形状の第三帯状部53が前後に延びるように形成される。そして第三帯状部53においても、シートカバー6Sの縦糸102が右側の孔部20の周縁(左縁203)に沿うように配置されると共に、その縦糸102の前後の端が、第三分断部33と第四分断部34とによって分断された状態となる。さらに第二分断部32と第三分断部33間のシートカバー6S部分に略台形状の第四帯状部54が左右に延びるように形成される。そして第四帯状部54には、シートカバー6Sの経糸101が右側の孔部20の周縁(後縁204)に沿うように配置されると共に、その経糸101の左右の端が、第二分断部32と第四分断部34とによって分断された状態となる。こうして右側の孔部20では、四つの分断部31~34がバランス良く配置されることで、孔部周りの経糸101と縦糸102(糸材100)を適切に分断しておけるようになる。
【0022】
[分断部の開口寸法]
また図4を参照して、各分断部31~34の開口寸法は、右側のヘッドレストサポート12の頭部120の外形寸法を考慮して設定することができる。例えば第一分断部31を例に説明すると、この第一分断部31は、その開口寸法が適切に設定されることで、右側のヘッドレストサポート12の頭部120からはみ出さないようになる。即ち、頭部120の周縁と第一分断部31の周縁間の距離を適切に確保することで、ヘッドレストサポート12を挿設した際に、その頭部120によって第一分断部31が覆い隠されるようになる。そして第一分断部31では、その周縁を円弧形状に形成しているため、外側に向けて大きく張り出す角部が存在しない構成となっている。このような構成の第一分断部31では、頭部120の右縁121からの最短距離L1と頭部120の前縁122からの最短距離L2との双方を稼ぎ易くなり、所望の設定距離の確保が容易な構成となっている。特に第一分断部31が円形状をなすように形成される場合、その中心位置C1を、上記最短距離を基に設定することができる。このため上記した構成によれば、右側のヘッドレストサポート12の頭部120の外形寸法を考慮して第一分断部31の開口寸法を調整する場合、その開口寸法の調整が容易となる。
【0023】
[シートバックに対するヘッドレストサポートの組付け作業]
図1図3を参照して、シートバック6では、左右のヘッドレストサポート12,13を、シートカバー6Sの孔部20,21に挿通して組付けておく。そして孔部20,21の周縁には、上記したようにシートカバー6Sの糸材100が沿うように延びている。このような構成では、挿通作業時の左右のヘッドレストサポート12,13が孔部周りの糸材100に引っかかることで、孔部周りに伝線が生じるなどしてシートの見栄えを確保し難くなるおそれがある。そこで本実施例では、図3に示すように、シートカバー6Sの糸材100が孔部(20等)の周縁に沿うように延びていると共に、孔部(20等)には、糸材100の延びる方向における両端部を分断する一対の分断部(31,32等)が形成されている。上記した構成によると、孔部周りの糸材100の両端を分断部(31,32等)にて分断して、この糸材100を孔部(20等)から脱落し易くすることにより、シートの見栄えをより確実に確保できるようになる。そこで以下に、右側の孔部20の第一分断部31及び第二分断部32を一例にその働きを具体的に説明する。
【0024】
[分断部の働き]
図2及び図3を参照して、右側のヘッドレストサポート12を右側の孔部20に挿入する際、この右側のヘッドレストサポート12が、右側の孔部20の右縁201部分に引っかかった場合を想定する。この右側の孔部20の右縁201部分(第一帯状部51)では、上記したように、シートカバー6Sの縦糸102が、第一段差部41と第二段差部42間に直線的に配置されている。さらにこの縦糸102の前後の端は、第一分断部31と第二分断部32とによって分断された状態となっている。このため、右側の孔部20の右縁201部分の縦糸102が右側のヘッドレストサポート12に引っかかったとしても、この引っかかった縦糸102を右側の孔部20の内側に脱落させられるようになる。こうして、引っかかった縦糸102を脱落させて孔部周りに残存させないようにしたことで、孔部周りのシートカバー6Sに伝線が生じ難くなり、シートの優れた見栄えの確保に資する構成となる。さらに右側の孔部20では、その周囲を切り欠くように円弧形状の各分断部31~34が形成されることで、この右側の孔部20が部分的に広げられている。上記した構成によれば、第一帯状部51が引っ掛けられた際にも、それ以外の孔部周りのシートカバー6S部分と右側のヘッドレストサポート12との意図しない干渉を抑制できるようになる。これにより、孔部周りのシートカバー6Sが右側のヘッドレストサポート12の挿入に過度に巻き込まれるといった事態を回避でき、またシートカバー6Sの意図しない箇所に過度の力がかからないようになる。
【0025】
そして図2を参照して、右側のヘッドレストサポート12を右側の孔部20を通じてシートバック6に組付けることで、この右側のヘッドレストサポート12の頭部120によって右側の孔部20が覆い隠される。このとき右側の孔部20では、図4を参照して、各分断部31~34の周縁が円弧形状をなしているため、この各分断部31~34が頭部120に隠されるように、その開口寸法を適切に調節しておくことができる。こうして上記した構成によれば、右側の孔部20周りの伝線の発生を抑制しつつ、更に各分断部31~34の外部露出を極力回避できるため、シートの優れた見栄えの確保に一層資する構成となる。そして図1に示す左側のヘッドレストサポート13も同様に左側の孔部21を通じてシートバック6に組付けられる。これにより、シートバック6のシート上側に、左右のヘッドレストサポート12,13を介してヘッドレスト8を取付けられるようになる。
【0026】
以上説明した通り、本実施例では、孔部周りの糸材100の両端を分断部によって分断することにより、この糸材100を孔部20,21の周縁から意図的に脱落し易くしている。このためヘッドレスト8の取付けの際に、孔部周りの糸材100がヘッドレストサポート12,13に引っかかったとしても、この引っかかった糸材100を孔部20,21の周縁から脱落させられるようになり、孔部周りの伝線の発生を抑制することが可能となる。このため本実施例によれば、シートカバー6Sのヘッドレスト用の孔部周りの見栄えをより確実に確保することができる。そして上記した構成によれば、シートカバー6Sの生産性や品質をより確実に確保できると共に、伝線の発生によるシートカバー6Sの廃棄が極力回避されることから、コストアップを抑制できるようになる。
【0027】
更に本実施例では、孔部20,21の周囲を切り欠くように分断部31~34を形成して、孔部20,21を部分的に広げたことにより、孔部周りのシートカバー6S部分とヘッドレストサポート12,13との意図しない干渉を抑制できるようになる。また本実施例では、分断部31~34の周縁を円弧形状としたことで、分断部31~34の開口寸法が部分的に大きくなることを回避している。これにより、分断部31~34の開口寸法の調整が容易となり、特にヘッドレストサポート12,13の外形寸法を考慮しつつ分断部31~34の開口寸法を調整する場合に、その開口寸法の調整が容易となる。そして本実施例では、分断部31~34に対して孔部20,21をバランスよく形成したことにより、この孔部周りの糸材100をより適切に脱落し易くすることができる。
【0028】
本実施形態の乗物用シートは、上述した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。本実施形態では、孔部と分断部の構成を例示したが、これら各部の構成を限定する趣旨ではない。例えば孔部には、少なくとも一対の分断部(前後一対又は左右一対の分断部など)を設けることができ、また5つ以上の分断部を設けることもできる。そして一対の分断部を形成する場合、その形成位置は、孔部周りの糸材の延びる方向に応じて適宜設定される。また孔部は、略角形のほか、略円形や略楕円形や各種の多角形状に形成することができる。そして分断部も、略半円形のほか、略円形や略半楕円形や略楕円形や各種の多角形状に形成でき、更にスリット状の切目で形成してもよい。
【0029】
また本実施形態では、織物製のシートカバーを例示したが、編物製のシートカバーに本実施例の構成を適用することもできる。例えば編物製のシートカバーでは、そのコース方向等に延びる糸材が孔部の周縁に沿うように配置された場合、その糸材の両端を分断部で分断しておくことで糸材が孔部から脱落し易くなる。また乗物用シートの構成も適宜変更可能であり、本実施形態の構成は、車両や航空機や電車や船舶などの乗物用シート全般に適用できる。
【符号の説明】
【0030】
2 乗物用シート
4 シートクッション
6 シートバック
8 ヘッドレスト
6S シートカバー
6P シートパッド
6F シートフレーム
10,11 ヘッドレストステー(本発明のステー部材)
12,13 ヘッドレストサポート
120,130 頭部
14,15 サポートブラケット
20 右側の孔部
21 左側の孔部
201 (右側の孔部の)右縁
202 (右側の孔部の)前縁
203 (右側の孔部の)左縁
204 (右側の孔部の)後縁
31 第一分断部
310 (第一分断部の)周縁
32 第二分断部
320 (第二分断部の)周縁
33 第三分断部
34 第四分断部
41 第一段差部
42 第二段差部
51 第一帯状部
52 第二帯状部
53 第三帯状部
54 第四帯状部
100 糸材
101 経糸
102 縦糸
図1
図2
図3
図4