(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044539
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】フランジ接続部のパージ構造および液化ガスタンク
(51)【国際特許分類】
F17C 13/00 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
F17C13/00 302Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150118
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100127797
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 晴洋
(72)【発明者】
【氏名】池崎 明博
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB01
3E172AB04
3E172AB05
3E172AB11
3E172AB15
3E172AB20
3E172BA06
3E172BB04
3E172BB12
3E172BB17
3E172BD05
3E172CA03
3E172DA15
3E172DA47
3E172EB03
3E172EB10
3E172EB19
3E172KA03
(57)【要約】
【課題】フランジ接続部から漏洩することのある流体の外部への流出を抑制する。
【解決手段】液化ガスタンク1は、液化水素LHを貯留するタンク本体10と、トップフランジ2Fを備えたバレル開口2Aを有し、タンク本体10を垂直方向に貫通するポンプバレル2と、タンク本体10内に設置され、ポンプバレル2を通して液化水素LHを外部へ払い出すポンプ3と、トップフランジ2Fに重ね合わされるように取り付けられてフランジ接続部4を形成し、バレル開口2Aを封止するヘッドプレート25と、を備える。フランジ接続部4の周囲には、外気と隔離されたパージ空間6が形成されている。さらに、パージ空間6に対してパージガスを供給する供給配管61と、パージ空間6からパージガスを漏洩ガスと共に排気する排気配管62とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの管体のフランジ同士の重ね合わせ部、もしくは管体のフランジと封止プレートとの重ね合わせ部からなるフランジ接続部と、
前記フランジ接続部の重ね合わせ部の周囲に、外気と隔離されたパージ空間を区画するハウジングと、
前記パージ空間に対するパージガスの供給とその排気を可能とするパージ配管と、
を備えるフランジ接続部のパージ構造。
【請求項2】
請求項1に記載のフランジ接続部のパージ構造において、
前記パージ空間は、前記重ね合わせ部の外周に沿って環状に形成される空間である、フランジ接続部のパージ構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載のフランジ接続部のパージ構造を備えた液化ガスタンクであって、
液化ガスを貯留するタンク本体と、
フランジを備えた上端開口を有し、前記タンク本体を垂直方向に貫通するポンプバレルと、
前記タンク本体内に設置され、前記ポンプバレルを通して前記液化ガスを外部へ払い出すポンプと、
前記フランジに重ね合わされるように取り付けられ、前記上端開口を封止するヘッドプレートと、を備え、
前記フランジ接続部は、前記上端開口の前記フランジと前記ヘッドプレートとの重ね合わせ部からなる、液化ガスタンク。
【請求項4】
請求項3に記載の液化ガスタンクにおいて、
前記フランジ接続部の外面を覆う保冷材をさらに備え、
前記パージ空間を区画するハウジングが、前記保冷材である、液化ガスタンク。
【請求項5】
請求項3に記載の液化ガスタンクにおいて、
前記フランジ接続部の前記重ね合わせ部に配設されるガス検知センサをさらに備える、液化ガスタンク。
【請求項6】
請求項5に記載の液化ガスタンクにおいて、
前記パージ配管を通して前記パージ空間に前記パージガスを供給するガス供給装置と、
前記ガス供給装置の動作を制御する制御部と、をさらに備え、
前記制御部は、前記ガス検知センサがガスを検知したときに、前記ガス供給装置を動作させる、液化ガスタンク。
【請求項7】
請求項3に記載の液化ガスタンクにおいて、
前記パージ配管を通して前記パージ空間に前記パージガスを供給するガス供給装置と、
前記ガス供給装置の動作を制御する制御部と、をさらに備え、
前記制御部は、前記ガス供給装置を常時動作させる、液化ガスタンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フランジ接続部のパージ構造、および当該パージ構造が適用された液化ガスタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にフランジ接続部は、2つの管体のフランジ同士の重ね合わせ部からなる。管体のフランジと、当該フランジの管体開口を塞ぐ封止プレートとの重ね合わせ部からなるフランジ接続部も存在する。前記管体がガスや液体の流通用である場合、前記フランジ接続部においては前記重ね合わせ部からのガスや液体の漏洩が問題となる。
【0003】
液化水素や液化天然ガスなどの低温の液化ガスを貯留する液化ガスタンクにおいても、前記フランジ接続部が存在する。液化ガスタンクは、タンク本体を垂直方向に貫通するポンプバレルと、前記タンク本体内に設置されるポンプとを備える。前記ポンプバレルの上端には、前記ポンプのメンテナンス時に前記タンク本体内のポンプを取り出すバレル開口が設けられている。前記バレル開口は、ポンプバレルの上端フランジとフランジ接続部を構成するヘッドプレートにて、タンク運用時には「閉」とされる(例えば特許文献1)。液化ガスタンクにおいては、貯留している液化ガスもしくはその気化ガスの、前記フランジ接続部からの漏洩が問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フランジ接続部からのガスや液体の漏洩に対しては、前記重ね合わせ部におけるシール構造の強化により抑止するというアプローチが一般に取られる。しかし、例えば大口径のフランジ接続部や、分子サイズの小さいガス、あるいは高圧の流体の流通用管路のフランジ接続部では、前記シール構造の強化を図っても漏洩を十分に抑制できない場合を想定しておく必要がある。
【0006】
本開示の目的は、フランジ接続部から漏洩する流体の外部への流出を抑制できるフランジ接続部のパージ構造、および当該パージ構造が適用された液化ガスタンクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一局面に係るフランジ接続部のパージ構造は、2つの管体のフランジ同士の重ね合わせ部、もしくは管体のフランジと封止プレートとの重ね合わせ部からなるフランジ接続部と、前記フランジ接続部の重ね合わせ部の周囲に、外気と隔離されたパージ空間を区画するハウジングと、前記パージ空間に対するパージガスの供給とその排気を可能とするパージ配管と、を備える。
【0008】
本開示の他の局面に係る液化ガスタンクは、上記のフランジ接続部のパージ構造を備えた液化ガスタンクであって、液化ガスを貯留するタンク本体と、フランジを備えた上端開口を有し、前記タンク本体を垂直方向に貫通するポンプバレルと、前記タンク本体内に設置され、前記ポンプバレルを通して前記液化ガスを外部へ払い出すポンプと、前記フランジに重ね合わされるように取り付けられ、前記上端開口を封止するヘッドプレートと、を備え、前記フランジ接続部は、前記上端開口の前記フランジと前記ヘッドプレートとの重ね合わせ部からなる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、フランジ接続部から漏洩する流体の外部への流出を抑制できるフランジ接続部のパージ構造、および当該パージ構造が適用された液化ガスタンクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示のフランジ接続部のパージ構造が適用された液化ガスタンクを概略的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、前記液化ガスタンクのポンプバレル上端付近を、一部断面にて示す側面図である。
【
図3】
図3は、ポンプバレル上端を、一部断面にて示す上面図である。
【
図4】
図4は、本開示のフランジ接続部のパージ構造の他の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本開示に係るフランジ接続部のパージ構造の実施形態を詳細に説明する。本実施形態では、前記パージ構造が液化ガスタンクに適用される例を示す。ここで例示する液化ガスタンクは、低温の液化ガスを貯留する平底タンクである。貯留される液化ガスは、例えば液化水素、液体ヘリウム、液体窒素、液化天然ガス、液化石油ガスまたは液化アンモニア等である。
【0012】
[液化ガスタンクの全体構造]
図1は、本開示の一実施形態に係る液化ガスタンク1を概略的に示す断面図である。液化ガスタンク1は、極低温の液化水素LHを貯留するタンクであって地上据え置き式の多重殻構造を備えた平底タンクである。液化ガスタンク1は、液化水素LHを貯留するタンク本体10と、液化水素LHをタンク本体10から払い出すための構造体であるポンプバレル2(管体)と、タンク本体10内において液化水素LHに浸漬された状態で設置される潜没式のポンプ3と、を備える。
【0013】
タンク本体10は、液化水素LHを貯留する貯留空間を有する。
図1では簡略化して単殻構造を示しているが、実際のタンク本体10は、二重殻構造または三重殻構造 などの多重殻構造を備えている。二重殻構造の場合、タンク本体10は、基礎の上に立設される外槽と、この外槽に内包される内槽と、外槽と内槽との間の保冷層とで構成される。液化水素LHは、前記内槽の内部に貯留される。前記保冷層には、例えば粒状パーライトのような粉体断熱材と低沸点ガスとが充填される。三重殻構造の場合、タンク本体10は、前記外槽と前記内槽との間にさらに中間槽を備える構造となる。この他、タンク本体10は、平底以外の形状を備えるタンク、あるいは地中埋め込み式のタンク等であっても良い。
【0014】
ポンプバレル2は、タンク本体10を垂直方向に貫通するように設置された円筒体であり、タンク本体10内の液化水素LHを外部へ払い出す際の導出管である。ポンプバレル2は、液化水素LHが流通する内部空間であるバレル内空間20を有する。ポンプバレル2は、タンク本体10内に収容される内側部分と、タンク本体10から上方へ延び出す突出部分とを含む。ポンプバレル2の下端部21は、タンク本体10の底板付近に配置され液化水素LH内に没入されている。ポンプバレル2の上端部22は、タンク屋根11を貫通して所定高さ位置に配置されている。バレル内空間20は、下端部21と上端部22との間において鉛直方向に延び、ポンプ3を通過させ得る内径を有している。
【0015】
ポンプ3は、下端部21付近のバレル内空間20に収容されている。ポンプバレル2の下端部21の取り入れ開口には、フート弁23が取り付けられている。ポンプ3はフート弁23の上に載置された状態で配置されている。ポンプ3の自重によってフート弁23が垂下することで、下端部21の前記取り入れ開口が開放された状態となる。ポンプ3は、
図1に矢印で示すように、タンク本体10内の液化水素LHを取り込み、圧力を上げてバレル内空間20へ液化水素LHを送り出す。ポンプバレル2の上端部22付近の側面には、液化水素LHを外部へ払い出す払い出しポート24が突設されている。ポンプ3の稼働により、バレル内空間20から払い出しポート24を通して、液化水素LHが払い出される。
【0016】
ポンプバレル2の上端には、バレル内空間20と外部空間とを連通させるバレル開口2A(上端開口)と、当該バレル開口2Aの外周縁に配置されたトップフランジ2F(管体のフランジ)とが設けられている。バレル開口2Aは、フランジ接続部4によって封止されている。フランジ接続部4は、トップフランジ2Fとヘッドプレート25(封止プレート)との重ね合わせ部からなる。液化ガスタンク1の運用時、トップフランジ2Fにヘッドプレート25が取り付けられることで、バレル開口2Aが封止される。
【0017】
ヘッドプレート25は、例えばポンプ3のメンテナンス時に取り外される。メンテナンスの際、バレル開口2Aを通してポンプ3の出し入れが行われる。この出し入れは、バレル開口2Aの上方に設置した吊り上げ装置による、ポンプ3に繋がれたリフティングワイヤの巻き取り・繰り出しによって実行される。
【0018】
ポンプバレル2のタンク本体10からの突出部分およびフランジ接続部4の外面は、保冷材5によって覆われている。保冷材5としては、硬質ウレタンフォーム等の固体断熱材、粒状パーライト等の粉体断熱材やグラスウール等をパッケージングしてなる断熱ブロック材などを用いることができる。保冷材5の周囲を、例えばステンレス鋼帯等の金属帯でバインドし、さらにその外周を防湿テープ等で覆う構成としても良い。
【0019】
フランジ接続部4には、当該フランジ接続部4の前記重ね合わせ部から漏洩することのあるガスを、外部への流出を抑制することのできるパージ構造が付設されている。前記パージ構造は、保冷材5の内側であってフランジ接続部4の周囲に配置されたパージ空間6と、当該パージ空間6に連通する供給配管61および排気配管62を含む。以下、このパージ構造について詳述する。
【0020】
[パージ構造]
図2は、液化ガスタンク1のポンプバレル2の上端部22付近を、一部断面にて示す側面図、
図3はその上面図であって、前記パージ構造を示す図である。
図3には、前記パージ構造の付帯構成がブロックで示されている。前記パージ構造は、フランジ接続部4、保冷材5およびパージ空間6と、パージ配管である供給配管61および排気配管62とから構成されている。前記付帯構成は、ガス供給装置71、ガス検知センサ72および制御部8を含む。
【0021】
フランジ接続部4には、シール性を確保するため、ガスケット26が組み入れられている。ガスケット26は、バレル開口2Aの径方向外側において、トップフランジ2Fとヘッドプレート25との間に介在されるリング状のシール部材である。極低温の液化水素LHへの耐性を有し、且つ、分子サイズの小さい水素に対して、完全なシール性を発揮するガスケット26を準備することが困難な場合がある。とりわけ、バレル開口2Aが大口径である場合や高圧が加わる場合には、よりシール性の確保が困難化する。従って、フランジ接続部4からのある程度の水素ガスまたは液化水素LHの漏洩を想定せねばならない場合がある。
【0022】
この点に鑑み、本実施形態では、フランジ接続部4におけるトップフランジ2Fとヘッドプレート25との重ね合わせ部の周囲に、外気と隔離されたパージ空間6が配設されている。パージ空間6は、外気と隔離された空間を区画することが可能なハウジングにて形成される。本実施形態では、パージ空間6を区画するハウジングが保冷材5である例を示している。パージ空間6は、トップフランジ2Fとヘッドプレート25との重ね合わせ部の外周に沿って環状に形成される空間である。このようなパージ空間6の配置により、前記重ね合わせ部から漏洩した水素ガスあるいは液化水素LHを、当該パージ空間6に閉じ込めることができる。なお、パージ空間6には、グラスウールや粒状パーライト等の保冷材やシールガスを充填しても良い。
【0023】
保冷材5は、フランジ保冷材51とバレル保冷材52とを含む。フランジ保冷材51は、フランジ接続部4の上面、下面および側面を包み込むように覆っている。バレル保冷材52は、ポンプバレル2の上端部22からタンク屋根11(
図1)に至る部分の側面を覆っている。フランジ保冷材51の、フランジ接続部4の側面に対応する箇所には、環状の窪みが設けられている。窪みの形成により、フランジ保冷材51の側方部分とフランジ接続部4の側面とは密着していない。
【0024】
フランジ保冷材51の前記窪みが、パージ空間6を区画するハウジングの役目を果たしている。すなわち、本実施形態ではフランジ保冷材51が、フランジ接続部4の保冷の役目と、前記ハウジングとしての役目とを兼用している。このため、ハウジング専用の部材が不要となり、パージ構造を簡素化することができる。なお、前記窪みに代えて、別途準備されたダクト状のハウジングを、フランジ接続部4の側面に付設し、その外周をフランジ保冷材51で覆うようにしても良い。
【0025】
供給配管61および排気配管62は、パージ空間6に対するパージガスの供給とその排気を可能とするパージ配管である。供給配管61は、供給側連結管63と供給ターミナル管64とを含む。供給側連結管63は、パージガスの供給源であるガス供給装置71から、当該パージガスをフランジ接続部4まで導く配管である。パージガスとしては、不活性ガスを用いることができる。ここでは、ガス供給装置71が窒素ガスの供給源であり、当該窒素ガスが供給側連結管63によりフランジ接続部4の近傍まで導かれる例を示す。
【0026】
供給ターミナル管64は、パージガスを実際にパージ空間6へ導入するための配管である。供給ターミナル管64の先端の端縁開口64Eは、フランジ保冷材51を貫通してパージ空間6に入り込んでいる。供給ターミナル管64の基端側は、フランジ保冷材51の側周面から突出しており、供給側連結管63の終端部とフランジ接続されている。供給ターミナル管64の突出部分の外周面は、補助保冷材53によって覆われている。なお、供給側連結管63および供給ターミナル管64は常設管としても良いが、供給側連結管63は必要に応じて取り付けられる仮設管としても良い。また、補助保冷材53による被覆を省いても良い。さらに、供給側連結管63には、ガスの非漏洩時にパージ空間6を密閉化することが可能な開閉弁を設けることが望ましい。
【0027】
排気配管62は、排気ターミナル管65と排気側連結管66とを含む。排気ターミナル管65は、供給ターミナル管64からパージ空間6へ供給されたパージガスを、パージ空間6から導出するための配管である。排気ターミナル管65の先端の端縁開口65Eは、フランジ保冷材51を貫通してパージ空間6に入り込んでいる。
図2および
図3では、排気ターミナル管65が供給ターミナル管64と対極の位置に配置されている例を示している。この配置は一例であり、両ターミナル管64、65が極端に接近し過ぎない限りにおいて、これらフランジ接続部4に周方向の任意の位置に配置して良い。但し、図例の通り両ターミナル管64、65を対極配置とすれば、パージの効率を高めることができる。排気ターミナル管65のフランジ保冷材51からの突出部分も、補助保冷材53にて覆われている。この補助保冷材53による被覆も省いても良い。
【0028】
排気側連結管66は、パージガスとフランジ接続部4から漏洩したガスを外部へ排出する配管である。本実施形態では、窒素ガスおよび水素ガスが排気側連結管66により排出される。排気側連結管66の始端と排気ターミナル管65の基端とは、フランジ接続されている。排気側連結管66の終端は、排出ガスを回収するタンクに接続される、あるいは大気への放散処理や他の適宜な処理を行う設備に導かれる。排気側連結管66は、仮設管としても良く、また開閉弁を設けることが望ましい。
【0029】
ガス供給装置71は、既述の通り、窒素ガス等のパージガスの供給源である。ガス供給装置71は、パージガスを貯留するタンクと、このタンクから供給配管61を通してパージガスをパージ空間6へ供給するポンプ装置とを含む。
【0030】
ガス検知センサ72は、フランジ接続部4からのガス漏れを検知するセンサである。ガス検知センサ72は、プローブチューブ73を備える。プローブチューブ73は、フランジ接続部4の外周面41からパージ空間6を経て、フランジ保冷材51を貫通して外部へ引き出されるように配設されている。フランジ接続部4付近の気体成分は、プローブチューブ73を介してガス検知センサ72にて検出される。
【0031】
プローブチューブ73の先端74は、トップフランジ2Fとヘッドプレート25との重ね合わせ部の外周、もしくはガスケット26の外周面付近に配置される。先端74は、検知対象のガス、本実施形態では水素ガスの取り入れ口である。
図3では、先端74が供給ターミナル管64の端縁開口64Eに対向する位置に配置された例を示している。これに代えて、排気ターミナル管65の端縁開口65Eに対向する位置、もしくは端縁開口64E、65Eに対して周方向に90度シフトした位置に配置しても良い。
【0032】
プローブチューブ73のフランジ保冷材51からの引き出し部には、検知ノズル75が取り付けられている。検知ノズル75は、配管等を介してガス検知センサ72と接続される。ガス検知センサ72としては、例えば金属酸化物半導体が水素ガスを吸着することによる電気伝導度の変化を利用する熱線半導体式センサを用いることができる。
【0033】
制御部8は、ガス供給装置71の動作を制御することで、パージ空間6のパージ動作を制御する。制御部8が稼働指令を与えると、ガス供給装置71は供給配管61に窒素ガスをパージガスとして送り出す。当該パージガスは、供給配管61からパージ空間6へ供給される。パージガスの供給圧に押されて、パージ空間6に存在する気体はパージガスと共に排気配管62から排出される。フランジ接続部4から水素ガスが漏洩している場合、窒素ガスと水素ガスとが排気配管62から排出されることになる。
【0034】
制御部8によるガス供給装置71の制御態様として、次の2つの制御を例示することができる。第1の制御例では、制御部8は、ガス検知センサ72がフランジ接続部4からの水素ガスの漏洩を検知したときに、ガス供給装置71を動作させる。フランジ接続部4にはガスケット26が組み込まれているので、一応のシール性は確保されている。従って、常時パージ動作を行わせるのではなく、何らかの原因でシール性が低下して水素ガスの漏洩がガス検知センサ72によって検出されたときに、ガス供給装置71を稼働させてパージ動作を実行させる。第1の制御例によれば、フランジ接続部4からのガス漏洩が検知されたときだけ、タイムリーにパージ動作を行わせることができる。
【0035】
第2の制御例では、制御部8は、水素ガスの漏洩の如何に関わらず、ガス供給装置71を常時動作させる。すなわち、常にガス供給装置71からパージガスをパージ空間6に供給させる。本実施形態では、フランジ保冷材51によってパージ空間6を区画するハウジングが構成されている。フランジ保冷材51とフランジ接続部4との界面のシール性を万全にすることが困難な場合、前記界面からのガス漏洩の可能性を拭いきれない。このため、ガス検知センサ72がガス漏洩を検知する段階では、既に前記界面から外気へのガス漏洩が生じ得る。この問題は、パージ動作が常時行われる状態とすることで解決できる。従って、ガス供給装置71を常時動作させる第2の制御例によれば、パージ空間6から外部へのガスの流出を未然に抑止できる。
【0036】
以上は制御部8による制御例であるが、制御部8を省いた態様でのオペレーションも可能である。例えば、上記の第1の制御例において、ガス検知センサ72がガス漏洩を検出した場合に、作業者等がガス供給装置71を手動で起動させて、上記のパージ動作を行わせても良い。また、上記の第2の制御例において、制御部8のようなコントロール系統を外して、単純にガス供給装置71を常時動作させても良い。
【0037】
[他の実施形態]
図4は、本開示のフランジ接続部のパージ構造の他の実施形態を示す模式図である。上記実施形態では、管体のフランジと封止プレートとの重ね合わせ部からなるフランジ接続部4に適用されるパージ構造を例示した。ここでは、2つの管体のフランジ同士の重ね合わせ部からなるフランジ接続部40に適用されるパージ構造を例示する。
【0038】
フランジ接続部40は、第1管内空間20Aを有する第1管体201(管体)と、第2管内空間20Bを有する第2管体202(管体)との接続部である。ここでは、両者の直線接続部を例示している。第1管体201の終端には第1フランジF1が、第2管体202の終端には第2フランジF2が、各々備えられている。第1フランジF1と第2フランジF2とは、間にガスケット260を挟んで突き合わせ接続されている。フランジ接続部40により、第1管内空間20Aと第2管内空間20Bとは密閉状態で連通している。第1管体201および第2管体202は、例えば液化水素や液体ヘリウム等の極低温の液化ガスを輸送する配管である。
【0039】
フランジ接続部40の外周面410は、ハウジング6Hにより覆われている。ハウジング6Hは、第1フランジF1と第2フランジF2との重なり部分の周囲に、外気と隔離されたパージ空間6を区画するハウジングである。ハウジング6Hに対して、パージ配管として供給配管610および排気配管620が取り付けられている。供給配管610は、パージ空間6へパージガスを供給する配管、排気配管620はパージ空間6から排気ガスを導出する配管である。
【0040】
フランジ接続部40から液化ガスの漏洩が生じた場合、その気化ガスは外部へ漏出することなく、ハウジング6H内のパージ空間6に閉じ込められる。そして、供給配管610から供給されるパージガスの供給圧により、漏洩した気化ガスはパージガスと共に排気配管620から排出させることができる。従って、気化ガスを外部へ流出させることなく、排気配管620に接続された回収タンクに回収する、あるいは所定の処理設備で処理することができる。
【0041】
[本開示のまとめ]
以上説明した具体的実施形態には、以下の構成を有する開示が含まれている。
【0042】
本開示の第1の態様に係るフランジ接続部のパージ構造は、2つの管体のフランジ同士の重ね合わせ部、もしくは管体のフランジと封止プレートとの重ね合わせ部からなるフランジ接続部と、前記フランジ接続部の重ね合わせ部の周囲に、外気と隔離されたパージ空間を区画するハウジングと、前記パージ空間に対するパージガスの供給とその排気を可能とするパージ配管と、を備える。
【0043】
上記のフランジ接続部のパージ構造によれば、フランジ接続部の重ね合わせ部の周囲に、パージ空間が配置される。このため、前記重ね合わせ部から管体内の流体が漏洩したとしても、当該流体を外部へ流出させずに前記パージ空間内に閉じ込めることができる。さらに、前記パージ空間にはパージ配管が接続されているので、パージガスにより漏洩した流体を回収または処理することができる。従って、フランジ接続部から流体が漏洩しても、当該流体の外部への流出を抑制できる。
【0044】
第2の態様に係るパージ構造は、第1の態様のパージ構造において、前記パージ空間は、前記重ね合わせ部の外周に沿って環状に形成される空間として良い。
【0045】
第2の態様によれば、流体の漏洩の可能性のある箇所である重ね合わせ部の外周を覆いつつ、パージ空間を最小限のスペースで形成することができる。
【0046】
本開示の第3の態様係る液化ガスタンクは、上記のフランジ接続部のパージ構造を備えた液化ガスタンクであって、液化ガスを貯留するタンク本体と、フランジを備えた上端開口を有し、前記タンク本体を垂直方向に貫通するポンプバレルと、前記タンク本体内に設置され、前記ポンプバレルを通して前記液化ガスを外部へ払い出すポンプと、前記フランジに重ね合わされるように取り付けられ、前記上端開口を封止するヘッドプレートと、を備え、前記フランジ接続部は、前記上端開口の前記フランジと前記ヘッドプレートとの重ね合わせ部からなる。
【0047】
第3の態様の液化ガスタンクによれば、ポンプバレルのフランジと当該ポンプバレルの上端開口を封止するヘッドプレートとのフランジ接続部の重ね合わせ部の周囲に、パージ空間が配置される。ポンプバレルの上端付近には、タンク本体内に貯留されている液化ガスの気化ガスが滞留し得る。前記重ね合わせ部からポンプバレル内のガスが漏洩したとしても、上記のパージ構造が付設されているので、当該ガスをパージ空間内に閉じ込め且つパージガスにより漏洩したガスを回収または処理することができる。従って、フランジ接続部からガスが漏洩しても、当該ガスの外部への流出を抑制できる。
【0048】
第4の態様に係る液化ガスタンクは、第3の態様の液化ガスタンクにおいて、前記フランジ接続部の外面を覆う保冷材をさらに備え、前記パージ空間を区画するハウジングが、前記保冷材であっても良い。
【0049】
第4の態様によれば、保冷材が、フランジ接続部の保冷の役目と、パージ空間を区画するハウジングとしての役目とを兼用する。このため、ハウジング専用の部材が不要となり、構造を簡素化することができる。
【0050】
第5の態様に係る液化ガスタンクは、第3または第4の態様の液化ガスタンクにおいて、前記フランジ接続部の前記重ね合わせ部に配設されるガス検知センサをさらに備えていても良い。
【0051】
第5の態様によれば、ガス検知センサの配設により、前記重ね合わせ部から実際にガスの漏液が生じているか否かを判別することができる。
【0052】
第6の態様に係る液化ガスタンクは、第5の態様上記の液化ガスタンクにおいて、前記パージ配管を通して前記パージ空間に前記パージガスを供給するガス供給装置と、前記ガス供給装置の動作を制御する制御部と、をさらに備え、前記制御部は、前記ガス検知センサがガスを検知したときに、前記ガス供給装置を動作させても良い。
【0053】
第6の態様によれば、フランジ接続部からパージ空間へのガス漏洩が検知されたときに、タイムリーにパージガスを前記パージ空間へ供給させることができる。
【0054】
第7の態様に係る液化ガスタンクは、第3~第5のいずれかの態様の液化ガスタンクにおいて、前記パージ配管を通して前記パージ空間に前記パージガスを供給するガス供給装置と、前記ガス供給装置の動作を制御する制御部と、をさらに備え、前記制御部は、前記ガス供給装置を常時動作させても良い。
【0055】
第7の態様によれば、常時パージ空間にパージガスが供給されるので、ハウジングから外部へのガスの流出を未然に抑止できる。
【符号の説明】
【0056】
1 液化ガスタンク
10 タンク本体
2 ポンプバレル(管体)
2A バレル開口(上端開口)
2F トップフランジ(管体のフランジ)
25 ヘッドプレート(封止プレート)
201 第1管体(管体)
202 第2管体(管体)
3 ポンプ
4、40 フランジ接続部
5 保冷材
51 フランジ保冷材(保冷材)
6 パージ空間
6H ハウジング
61、610 供給配管(パージ配管)
62、620 排気配管(パージ配管)
71 ガス供給装置
72 ガス検知センサ
8 制御部
LH 液化水素(液化ガス)