(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044541
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】酸化亜鉛、ゴム-スチールコード複合体用ゴム組成物および空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
C01G 9/02 20060101AFI20240326BHJP
C01G 9/00 20060101ALI20240326BHJP
C08K 3/105 20180101ALI20240326BHJP
C08K 3/11 20180101ALI20240326BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20240326BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C01G9/02 A
C01G9/00 B
C08K3/105
C08K3/11
C08L21/00
B60C1/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150120
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永井 芙茉
(72)【発明者】
【氏名】箕内 則夫
【テーマコード(参考)】
3D131
4G047
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA13
3D131AA39
3D131BA18
3D131BC36
4G047AA02
4G047AA04
4G047AB01
4G047AC03
4G047AD03
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC071
4J002AC081
4J002AC091
4J002BC051
4J002BL011
4J002BL021
4J002DA030
4J002DA087
4J002DA097
4J002DE106
4J002FD010
4J002FD156
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】スチールコードなどの金属部材に対し、剥離力が向上した加硫ゴムの原料となるゴム組成物用途に使用可能な酸化亜鉛、該酸化亜鉛を含有するゴム-スチールコード複合体用ゴム組成物および該ゴム組成物の加硫ゴムを備える空気入りタイヤを提供すること。
【解決手段】アルミニウムおよび鉄を含有する酸化亜鉛。該酸化亜鉛は、鉄の含有量が15ppm以上100ppm以下であり、アルミニウムの含有量が40ppm以上100ppm以下であることが好ましく、アルミニウムの含有量に対する鉄の含有量の比が、0.2~2.3倍であることが好ましく、鉄の含有量が15ppm以上80ppm以下であることがより好ましい。該酸化亜鉛はゴム-スチールコード複合体用ゴム組成物用途に好適であり、該ゴム組成物の加硫ゴムは剥離力が向上するため、空気入りタイヤ用途に使用されることが好ましい。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムおよび鉄を含有する酸化亜鉛。
【請求項2】
前記鉄の含有量が15ppm以上100ppm以下であり、前記アルミニウムの含有量が40ppm以上100ppm以下である請求項1に記載の酸化亜鉛。
【請求項3】
前記アルミニウムの含有量に対する前記鉄の含有量の比が、0.2~2.3倍である請求項1に記載の酸化亜鉛。
【請求項4】
前記鉄の含有量が15ppm以上80ppm以下である請求項1に記載の酸化亜鉛。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の酸化亜鉛を含有するゴム組成物。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載の酸化亜鉛を含有するゴム-スチールコード複合体用ゴム組成物。
【請求項7】
請求項5に記載のゴム組成物の加硫ゴムを備える空気入りタイヤ。
【請求項8】
請求項6に記載のゴム-スチールコード複合体用ゴム組成物の加硫ゴムを備える空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化亜鉛、ゴム-スチールコード複合体用ゴム組成物および空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは、加硫ゴムやスチールコードなどの金属部材などから構成され、安全性や低燃費性などの多くの性能が要求される。特に、空気入りタイヤを構成する一部材であるベルト部では、スチールコードと該スチールコードを覆う加硫ゴム(以下、「トッピングゴム」ともいう)との接着性を向上させる、つまりトッピングゴムの剥離力を向上することが要求される。トッピングゴムの剥離力を向上するために、トッピングゴムの原料となるゴム組成物中に、各種配合剤を添加する技術が存在する。
【0003】
下記特許文献1では、ゴム組成物の原料として使用される酸化亜鉛として、亜鉛塩を含む水溶液を中和して水酸化物などの沈殿物を合成し、これを濾過・乾燥の後、加熱して酸化亜鉛粉末を合成する方法(「アメリカ法」、「湿式法」などともいう)により合成した、酸化亜鉛が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、湿式法で酸化亜鉛を製造することに特徴があり、酸化亜鉛の性状などについては特に記載されていない。
【0006】
本発明者らは、トッピングゴムの剥離力を向上するために、原料となるゴム組成物中に配合する酸化亜鉛の金属組成に着目した結果、特定の金属組成の酸化亜鉛をゴム組成物中に配合すると、その加硫ゴムは、スチールコードなどの金属部材に対し、剥離力が著しく向上することを見出した。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、スチールコードなどの金属部材に対し、剥離力が向上した加硫ゴムの原料となるゴム組成物用途に使用可能な酸化亜鉛、該酸化亜鉛を含有するゴム-スチールコード複合体用ゴム組成物および該ゴム組成物の加硫ゴムを備える空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は下記の如き構成により解決し得る。すなわち本発明は、アルミニウムおよび鉄を含有する酸化亜鉛(1)に関する。
【0009】
上記酸化亜鉛(1)において、前記鉄の含有量が15ppm以上100ppm以下であり、前記アルミニウムの含有量が40ppm以上100ppm以下である酸化亜鉛(2)が好ましい。
【0010】
上記酸化亜鉛(1)または(2)において、前記アルミニウムの含有量に対する前記鉄の含有量の比が、0.2~2.3倍である酸化亜鉛(3)が好ましい。
【0011】
上記酸化亜鉛(1)~(3)いずれかにおいて、前記鉄の含有量が15ppm以上80ppm以下である酸化亜鉛(4)が好ましい。
【0012】
また本発明は、前記酸化亜鉛(1)~(4)のいずれかの酸化亜鉛を含有するゴム組成物、または前記酸化亜鉛(1)~(4)のいずれかの酸化亜鉛を含有するゴム-スチールコード複合体用ゴム組成物に関する。
【0013】
さらに本発明は、前記ゴム組成物の加硫ゴムを備える空気入りタイヤ、または前記ゴム-スチールコード複合体用ゴム組成物の加硫ゴムを備える空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明者らが知り得る範囲では、酸化亜鉛に含まれる金属組成について、詳細に検討された技術はこれまでに存在しない。このような事情の下、本発明者らが鋭意検討した結果、特定の金属組成を有する酸化亜鉛、具体的にはアルミニウムおよび鉄を含有する酸化亜鉛をゴム組成物に配合した場合、その加硫ゴムはスチールコードなどの金属部材に対し、剥離力が向上することが判明した。特に、酸化亜鉛中のアルミニウムと鉄との含有量が、鉄の含有量が15ppm以上100ppm以下であり、アルミニウムの含有量が40ppm以上100ppm以下である酸化亜鉛、さらにはアルミニウムの含有量に対する鉄の含有量の比が、0.2~2.3倍である酸化亜鉛をゴム組成物中に配合した場合、その加硫ゴムはスチールコードなどの金属部材に対し、剥離力がより向上することが判明した。
【0015】
なお、空気入りタイヤは長期間使用されるものであるため、スチールコードなどの金属部材に対する加硫ゴム(トッピングゴム)の剥離力は、製造初期の剥離力(以下、「初期剥離力」ともいう)だけでなく、製造後長期間経過した時点での剥離力(かかる剥離力に相当する劣化試験経過後の剥離力を「湿熱剥離力」ともいう)も必要とされる。本発明において、特に鉄の含有量が15ppm以上80ppm以下である酸化亜鉛をゴム組成物中に場合に配合した場合、初期剥離力だけでなく、湿熱剥離力も向上するため好ましい。
【0016】
本発明に係る酸化亜鉛を含有するゴム組成物の加硫ゴムは、スチールコードなどの金属部材に対し、剥離力に優れる。このため、本発明に係る酸化亜鉛は、空気入りタイヤ用ゴム組成物、特にはゴム-スチールコード複合体用ゴム組成物用途に好適に使用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る酸化亜鉛は、好適には粉末状の酸化亜鉛(酸化亜鉛粉末)であり、好ましくは比表面積が2~10[m2/g]であり、より好ましくは2~6[m2/g]である。本発明に係る酸化亜鉛粉末の比表面積は、例えばBET法(JIS R1626)により測定可能である。
【0018】
前記のとおり、酸化亜鉛の製造方法としてアメリカ法(湿式法)が知られているが、それ以外にフランス法がある。フランス法は、金属亜鉛を加熱して気化させ、これを酸化して酸化亜鉛粉末とする方法である。ここで、原料となる金属亜鉛ソースとしては、様々なものが選択可能であり、蒸留亜鉛、電気亜鉛、再生亜鉛などが挙げられ、さらに再生亜鉛としては亜鉛ドロス、サンカ灰、電炉ダストなどが挙げられる。本発明に係る酸化亜鉛は、フランス法により、亜鉛ドロスを加熱して気化させ、これを酸化した酸化亜鉛粉末であることが好ましい。
【0019】
本発明に係る酸化亜鉛は、アルミニウムおよび鉄を含有する。本発明では特に、(i)鉄の含有量が15ppm以上100ppm以下であり、アルミニウムの含有量が40ppm以上100ppm以下である酸化亜鉛、あるいは(ii)アルミニウムの含有量に対する鉄の含有量の比が、0.2~2.3倍である酸化亜鉛をゴム組成物に配合した場合、その加硫ゴムがスチールコードなどの金属部材に対し、剥離力がより優れるため好ましい。前記(i)および(ii)の酸化亜鉛、特に前記(ii)の酸化亜鉛を含有するゴム組成物の加硫ゴムがスチールコードなどの金属部材に対し、剥離力が優れる理由は明らかではないが、加硫ゴム中にアルミニウムおよび鉄が微量存在することにより、金属部材との接着膜(接着界面)が複雑化し、所謂アンカー効果を奏することにより、剥離力が向上するものと推察される。
【0020】
さらに本発明では、特に(iii)鉄の含有量が15ppm以上80ppm以下である酸化亜鉛は、ゴム組成物に配合した場合、その加硫ゴムがスチールコードなどの金属部材に対し、初期剥離力だけでなく、湿熱剥離力にも優れるため好ましい。前記(iii)の酸化亜鉛を含有するゴム組成物の加硫ゴムがスチールコードなどの金属部材に対し、湿熱剥離力が著しく優れる理由は明らかではないが、酸化亜鉛中の鉄の含有量を15ppm以上80ppm以下に設計した場合、金属部材への加硫ゴムのアンカー効果を奏しつつ、鉄の酸化劣化による影響を抑制することで、金属部材に対する加硫ゴムの湿熱剥離力を維持向上できるものと推察される。
【0021】
本発明に係る酸化亜鉛をゴム組成物、特にはゴム-スチールコード複合体用ゴム組成物に配合する場合、その配合量は、ゴム成分の全量を100質量部としたとき、1~15質量部であることが好ましく、3~10質量部であることがより好ましい。
【0022】
本発明に係る酸化亜鉛は、ゴム組成物用途、特にはゴム-スチールコード複合体用ゴム組成物用途に好適に使用可能である。以下に、本発明に係るゴム組成物、特にはゴム-スチールコード複合体用ゴム組成物を構成する材料(酸化亜鉛以外)について説明する。
【0023】
本発明に係るゴム組成物、特にゴム-スチールコード複合体用ゴム組成物はゴム成分を含有する。ゴム成分としては、例えばジエン系ゴムが好ましい。ジエン系ゴムとしては、特に限定されるものでなく、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、スチレン-イソプレン共重合体ゴム、ブタジエン-イソプレン共重合体、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体ゴムなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0024】
本発明に係るゴム組成物、特にゴム-スチールコード複合体用ゴム組成物は、充填剤としてのカーボンブラックおよび/またはシリカ、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、ステアリン酸、ワックスやオイルなどの軟化剤、加工助剤などを含有してもよい。
【0025】
補強性充填剤としては、カーボンブラックおよび/またはシリカを用いることが好ましい。すなわち、補強性充填剤は、カーボンブラック単独でも、シリカ単独でも、カーボンブラックとシリカとの併用でもよい。好ましくは、カーボンブラック単独、またはカーボンブラックとシリカの併用である。補強性充填剤の含有量は、特に限定されず、例えばゴム成分の全量を100質量部としたとき、10~140質量部であることが好ましく、より好ましくは20~100質量部であり、さらに好ましくは30~80質量部である。
【0026】
カーボンブラックは、例えばSAF、ISAF、HAF、FEF、GPFなど、通常のゴム工業で使用されるカーボンブラックの他、アセチレンブラックやケッチェンブラックなどの導電性カーボンブラックを使用することができる。シリカとしては、通常のゴム補強に用いられる湿式シリカ、乾式シリカ、ゾル-ゲルシリカ、表面処理シリカなどが用いられる。なかでも、湿式シリカが好ましい。
【0027】
充填剤としてシリカを含有する場合、併せてシランカップリング剤を含有することも好ましい。シランカップリング剤としては、分子中に硫黄を含むものであれば特に限定されず、ゴム組成物においてシリカとともに配合される各種のシランカップリング剤を用いることができる。例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(例えば、デグサ社製「Si69」)、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(例えば、デグサ社製「Si75」)、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエキトシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィドなどのスルフィドシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプトシラン、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-プロピオニルチオプロピルトリメトキシシランなどの保護化メルカプトシランが挙げられる。
【0028】
加硫剤としては、好適には硫黄が使用可能である。硫黄は通常のゴム用硫黄であればよく、例えば粉末硫黄、沈降硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などを用いることができる。本発明に係るゴム組成物、特にゴム-スチールコード複合体用ゴム組成物では、ゴム成分の全量を100質量部としたとき、加硫剤の含有量は、3~10質量部であることが好ましい。
【0029】
加硫促進剤としては、ゴム加硫用として通常用いられる、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などの加硫促進剤を単独、または適宜混合して使用しても良い。
【0030】
老化防止剤としては、ゴム用として通常用いられる、芳香族アミン系老化防止剤、アミン-ケトン系老化防止剤、モノフェノール系老化防止剤、ビスフェノール系老化防止剤、ポリフェノール系老化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系老化防止剤、チオウレア系老化防止剤などの老化防止剤を単独、または適宜混合して使用しても良い。
【0031】
本発明に係るゴム組成物、特にゴム-スチールコード複合体用ゴム組成物は、酸化亜鉛、ゴム成分、充填剤、加硫剤、および加硫促進剤に加えて、老化防止剤、ステアリン酸、ワックスやオイルなどの軟化剤、加工助剤などを、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなどの通常のゴム工業において使用される混練機を用いて混練りすることにより得られる。
【0032】
また、上記各成分の配合方法は特に限定されず、加硫剤および加硫促進剤などの加硫系配合剤以外の配合成分を予め混練してマスターバッチとし、残りの成分を添加してさらに混練する方法、各成分を任意の順序で添加し混練する方法、全成分を同時に添加して混練する方法などのいずれでもよい。
【0033】
本発明に係る酸化亜鉛を含有するゴム組成物の加硫ゴムは、スチールコードなどの金属部材に対し、剥離力に優れる。したがって、本発明に係るゴム組成物またはゴム-スチールコード複合体用ゴム組成物は、空気入りタイヤを構成するベルト部用途に好適に使用可能である。
【実施例0034】
以下に、この発明の実施例を記載してより具体的に説明する。
【0035】
(酸化亜鉛1~4の調製)
亜鉛ドロスを950℃で加熱し、発生した亜鉛蒸気に空気を吹き込み酸化燃焼させ酸化亜鉛を生成した。生成した酸化亜鉛を冷却後捕集し酸化亜鉛粉末を回収した。一方、酸化亜鉛1については、市販品(三井金属鉱業社製の「酸化亜鉛3種」)を使用した。パーキンエルマー社製「Optima8300」を使用し、誘電結合プラズマ発光分析(ICP-OES)を行い、酸化亜鉛1~4中の鉄(Fe)およびアルミニウム(Al)の含有量を測定した。結果を表1に示す。なお、表1中の「N.D」は検出限界以下であることを意味する。
【0036】
【0037】
(ゴム-スチールコード複合体用ゴム組成物の調製)
ゴム成分100質量部に対して、表2の配合処方に従い、実施例4~6および比較例2のゴム組成物を配合し、通常のバンバリーミキサーを用いて混練し、ゴム組成物を調整した。表2に記載の各配合剤を以下に示す。
【0038】
・天然ゴム(NR):RSS#3
・カーボンブラック:商品名「シースト300」、東海カーボン社製
・ステアリン酸:商品名「ビーズステアリン酸」、日油社製
・老化防止剤:商品名「サントフレックス6PPD」、フレキシス社製
・ステアリン酸コバルト:商品名「ステアリン酸コバルト」、ジャパンエナジー社製
・メラミン誘導体(ヘキサメトキシメチルメラミン):商品名「サイレッツ963L」、三井サイテック社製
・レゾルシン系化合物(レゾルシン-アルキルフェノール-ホルマリン樹脂):商品名「スミカノール620」、住友化学工業社製
・硫黄:商品名「ミュークロンOT-20」、四国化成社製
・加硫促進剤:商品名「ノクセラーDZ-G」、大内新興化学社製
【0039】
上記で得られた実施例4~6および比較例2のゴム組成物を用いて、初期剥離力および湿熱剥離力を評価した。詳細には、ベルト用スチールコード(3×0.20+6×0.35mm構造、銅/亜鉛=64/36(質量比)、付着量5g/kgの真鍮めっき)を12本/25mmの打ち込み密度で平行配列したものの両面を、上記各ゴム組成物からなる厚さ1mmのゴムシートを用いて被覆し、この2枚をコードが平行になるように積層した剥離接着試験用の未加硫試料を作製した。得られた未加硫試料を用いて、以下の条件で初期剥離力および湿熱剥離力を評価した。
【0040】
(初期剥離力)
上記で得られた実施例4~6および比較例2のゴム組成物の未加硫試料を作製後、150°C×30分の条件で加硫し、島津製作所社製オートグラフ「DCS500」を用いて剥離接着試験を行い、剥離時の最高強度を初期剥離力として測定した。比較例2の剥離力を100とした際の指数で表示し、数値が大きいほど初期剥離力に優れ、接着性に優れることを示す。結果を表2に示す。
【0041】
(湿熱剥離力)
上記で得られた実施例4~6および比較例2のゴム組成物の未加硫試料を作成後、150°C×30分の条件で加硫し、加硫した試験片を105°Cの飽和蒸気内で96時間放置した後、島津製作所社製オートグラフ「DCS500」を用いて2層のスチールコード間の剥離試験を行い、破断までの最高強度を湿熱剥離力として測定した。比較例2の湿熱剥離力を100とした際の指数で表示し数値が大きいほど湿熱剥離力に優れ、湿熱接着性に優れることを示す。結果を表2に示す。
【0042】
【0043】
表2の結果から、実施例4~6に係るゴム-スチールコード複合体用ゴム組成物の加硫ゴムは、いずれも初期剥離力に優れることが分かる。特に、実施例4および5に係るゴム-スチールコード複合体用ゴム組成物の加硫ゴムは、鉄の含有量が15ppm以上80ppm以下である酸化亜鉛を含有するため、初期剥離力だけでなく、湿熱剥離力も向上していることがわかる。