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特開2024-44542偽造防止用透明積層体、及び情報処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044542
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】偽造防止用透明積層体、及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/18 20060101AFI20240326BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20240326BHJP
   B42D 25/328 20140101ALI20240326BHJP
【FI】
G02B5/18
G02B5/30
B42D25/328
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150121
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 舜也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 春菜
(72)【発明者】
【氏名】山口 布士人
【テーマコード(参考)】
2C005
2H149
2H249
【Fターム(参考)】
2C005HA02
2C005JB09
2C005KA02
2C005LB07
2H149BA02
2H249AA02
2H249AA12
2H249AA60
(57)【要約】
【課題】対象物の表面の性状による影響を受けにくい、偽造防止用透明積層体、及び情報処理方法。
【解決手段】細線パターンと、前記細線パターンよりも張付面側に位置する機能層と、を有する偽造防止用透明積層体であって、前記機能層の、レーザー光の位相均一性を低下させるインコヒーレント誘起性をΔPとしたとき、下記式(1)で表されるΔPが20%以上である、偽造防止用透明積層体。
ΔP=(P-P)/P×100 (1)
(式中、Pは、2枚の偏光板により測定する偏光度、Pは、前記2枚の偏光板に前記機能層を挟んで測定する偏光度である。)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細線パターンと、
前記細線パターンよりも張付面側に位置する機能層と、
を有する偽造防止用透明積層体であって、
前記機能層の、レーザー光の位相均一性を低下させるインコヒーレント誘起性をΔPとしたとき、下記式(1)で表されるΔPが20%以上である、偽造防止用透明積層体。
ΔP=(P-P)/P×100 (1)
(式中、Pは、2枚の偏光板により測定する偏光度、Pは、前記2枚の偏光板に前記機能層を挟んで測定する偏光度である。)
【請求項2】
前記機能層のヘイズ値は、5%以下である、請求項1に記載の偽造防止用透明積層体。
【請求項3】
前記機能層のヘイズ値は、5%超である、請求項1に記載の偽造防止用透明積層体。
【請求項4】
前記機能層の厚みは、10μm~100μmである、請求項1に記載の偽造防止用透明積層体。
【請求項5】
前記機能層の可視光透過率は、50%以上である、請求項1に記載の偽造防止用透明積層体。
【請求項6】
前記機能層は、透明支持体と、パターン層と、粘着層とを有し、貼付後の偽造防止用透明積層体の剥離によって前記透明支持体とパターン層との間に空隙を発生させて剥離検知可能に構成される、請求項1に記載の偽造防止用透明積層体。
【請求項7】
前記偽造防止用透明積層体は、透明基材をさらに有し、
前記細線パターンは該透明基材上に形成されている、請求項1に記載の偽造防止用透明積層体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の偽造防止用透明積層体と、
該偽造防止用透明積層体が付された対象物と、を備える、
偽造防止用透明積層体付帯物。
【請求項9】
情報処理装置が、
細線パターンと、前記細線パターンよりも張付面側に位置する機能層と、を有する偽造防止用透明積層体であって、前記細線パターンよりも前記張付面側に、透過する光の位相均一性を低下させるインコヒーレント誘起性をΔPとしたとき、下記式(1)で表されるΔPが20%以上である、偽造防止用透明積層体に対して光を照射する照射ステップと、
ΔP=(P-P)/P×100 (1)
(式中、Pは、2枚の偏光板により測定する偏光度、Pは、前記2枚の偏光板に機能層を挟んで測定する偏光度である。)
前記細線パターンから反射された反射光がフーリエ変換レンズを通過することで光学像を結像し、該光学像を取得する撮像ステップと、
前記光学像に関する光学像情報と、正解情報と、を照合して、照合結果を生成する照合ステップと、を実行する、
情報処理方法。
【請求項10】
前記情報処理装置が、
目視により確認される偽造防止用透明積層体の異常情報が入力されているか否かを確認する、異常情報確認ステップを更に実行する、請求項9に記載の情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止用透明積層体、及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、偽造品の流通防止策として、商品に二次元コードやRF(Radio Frequency)タグを付し、商品が正規品であることを判定するようなシステムが知られている。例えば、特許文献1には、携帯端末で照合対象製品の識別情報を読み取ることで、その情報を用いて照合対象製品が正規品であるかを判定できるようにし、また、その照合対象製品の流通情報についても確認できるようにする情報処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-123108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術によれば、二次元コードは容易に複製でき、また、RFタグにおいても容易に情報を読み取ることができ、また書き換えることができるため、なりすましや複製が可能である。このように、従来の偽造品の流通防止策には未だセキュリティ上の問題がある。一方で、RFタグの中には認証や暗号の機能を備えた高機能タグも存在するが、そのようなコスト低減が強く求められる流通市場においてはなじまない。
【0005】
流通する商品の真正性を保証することを目的として、照合対象製品に付された細線パターンから得られる光学像に関する光学像情報を取得し照合することが提案されている。当該照合方法においては、照合対象製品に細線パターンを付するために、細線パターンを有する偽造防止用透明積層体が張り付けられる。偽造防止用透明積層体を照合対象製品に貼り付けて光を照射すると、細線パターンからの反射光が干渉することで光学像が得られる。当該光学像を照合することで、偽造防止が図られる。
【0006】
上述の偽造防止用透明積層体に光を照射すると、細線パターンからの反射光のみならず、積層体に入射する光が、偽造防止用透明積層体と対象物との界面で反射し、当該反射光が細線パターンを通過して回折することで、光の干渉が発生し、形成される光学像の光量が変化するということを見出した。つまり、偽造防止用透明積層体を張付ける対象がラミネートされた化粧箱のように光沢を有する箱である場合と、段ボールのような艶消しの表面性状を有する箱である場合とで、偽造防止用透明積層体への光照射により形成される光学像の光量が異なり、測定条件を対象物ごとに設定する必要があるという課題を有することを見出した。
【0007】
本発明は、対象物の表面の性状による影響を受けにくい、偽造防止用透明積層体、及び情報処理方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、偽造防止用透明積層体の細線パターンよりも張付面側に位置する機能層の、レーザー光の位相均一性を低下させるインコヒーレント誘起性を所定値以上とすることで、張付面における対象物の表面からの反射光に由来する光学像の光量を低減することにより、上述の課題を解決しうることを見出した。
【0009】
本発明は、以下の実施形態を包含する。
<1>
細線パターンと、
前記細線パターンよりも張付面側に位置する機能層と、
を有する偽造防止用透明積層体であって、
前記機能層の、レーザー光の位相均一性を低下させるインコヒーレント誘起性をΔPとしたとき、下記式(1)で表されるΔPが20%以上である、偽造防止用透明積層体。
ΔP=(P-P)/P×100 (1)
(式中、Pは、2枚の偏光板により測定する偏光度、Pは、前記2枚の偏光板に前記機能層を挟んで測定する偏光度である。)
<2>
前記機能層のヘイズ値は、5%以下である、<1>に記載の偽造防止用透明積層体。
<3>
前記機能層のヘイズ値は、5%超である、<1>又は<2>に記載の偽造防止用透明積層体。
<4>
前記機能層の厚みは、10μm~100μmである、<1>~<3>のいずれかに記載の偽造防止用透明積層体。
<5>
前記機能層の可視光透過率は、50%以上である、<1>~<4>のいずれかに記載の偽造防止用透明積層体。
<6>
前記機能層は、透明支持体と、パターン層と、粘着層とを有し、貼付後の偽造防止用透明積層体の剥離によって前記透明支持体とパターン層との間に空隙を発生させて剥離検知可能に構成される、<1>~<5>のいずれかに記載の偽造防止用透明積層体。
<7>
前記偽造防止用透明積層体は、透明基材をさらに有し、
前記細線パターンは該透明基材上に形成されている、<1>~<6>のいずれかに記載の偽造防止用透明積層体。
<8>
<1>~<7>のいずれか一項に記載の偽造防止用透明積層体と、
該偽造防止用透明積層体が付された対象物と、を備える、
偽造防止用透明積層体付帯物。
<9>
情報処理装置が、
細線パターンと、前記細線パターンよりも張付面側に位置する機能層と、を有する偽造防止用透明積層体であって、前記細線パターンよりも前記張付面側に、透過する光の位相均一性を低下させるインコヒーレント誘起性をΔPとしたとき、下記式(1)で表されるΔPが20%以上である、偽造防止用透明積層体に対して光を照射する照射ステップと、
ΔP=(P-P)/P×100 (1)
(式中、Pは、2枚の偏光板により測定する偏光度、Pは、前記2枚の偏光板に機能層を挟んで測定する偏光度である。)
前記細線パターンから反射された反射光がフーリエ変換レンズを通過することで光学像を結像し、該光学像を取得する撮像ステップと、
前記光学像に関する光学像情報と、正解情報と、を照合して、照合結果を生成する照合ステップと、を実行する、
情報処理方法。
<10>
前記情報処理装置が、
目視により確認される偽造防止用透明積層体の異常情報が入力されているか否かを確認する、異常情報確認ステップを更に実行する、<9>に記載の情報処理方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、対象物の表面の性状による影響を受けにくい、偽造防止用透明積層体、及び情報処理方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る偽造防止用透明積層体の概略構成を示す平面図である。
図2】本実施形態に係る偽造防止用透明積層体の概略構成を示すA―A’断面図である。
図3】本実施形態の偽造防止用積層体の一態様を示す断面図である。
図4】本実施形態の偽造防止用積層体の一態様を示す断面図である。
図5】本実施形態の偽造防止用積層体の一態様を示す断面図である。
図6】本実施形態の偽造防止用積層体の一態様を示す断面図である。
図7】本実施形態におけるシステムの構成の一態様を示す図である。
図8】本実施形態における端末の構成の一態様を示すブロック図である。
図9】本実施形態における端末が光学像情報を取得する際の一態様を示す模式図である。
図10】本実施形態における端末が光学像情報を取得する際の別態様を示す模式図である。
図11】本実施形態におけるサーバの構成の一態様を示すブロック図である。
図12】本実施形態における正解データの一態様を示す図である。
図13】本実施形態における正解データの他の態様を示す図である。
図14】本実施形態における正解データの他の態様を示す図である。
図15】本実施形態における台帳データの一態様を示す図である。
図16】第1実施形態の情報処理方法の処理シーケンスである。
図17】第2実施形態の情報処理方法の処理シーケンスである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右などの位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0013】
本実施形態に係る偽造防止用透明積層体は、細線パターンと、前記細線パターンよりも張付面側に位置する機能層と、を有する。加えて本実施形態に係る偽造防止用透明積層体は、前記機能層の、レーザー光の位相均一性を低下させるインコヒーレント誘起性をΔPとしたとき、下記式(1)で表されるΔPが20%以上である。
ΔP=(P-P)/P×100 (1)
(式中、Pは、2枚の偏光板により測定する偏光度、Pは、前記2枚の偏光板に前記機能層を挟んで測定する偏光度である。)
以上の構成により、対象物の表面の性状による影響を受けにくい、偽造防止用透明積層体を提供することができる。本実施形態に係る偽造防止用透明積層体は、偽造防止措置を施す対象物に張り付けて使用し、偽造防止用透明積層体の細線パターンにレーザー光を照射することで形成される干渉縞に基づいて偽造判定をおこなう。ここで、レーザー光は、細線パターン側から照射され、細線パターンからの反射光によって干渉縞が形成される。また、照射されたレーザー光の一部は、細線パターンを通過して張付面と対象物の界面に到達し、当該界面で反射された光が細線パターンを通過する際に回折を生じ、干渉縞が形成される。つまり、細線パターンからの反射光による干渉縞と、張付面と対象物との界面での反射光による干渉縞と、が重ね合わされて観測される。
張付面と対象物との界面での反射光による干渉縞は、対象となる対象物の表面性状によって反射輝度が変化する。例えば、表面が艶消しされたボール紙のような光の反射が少ない対象物では、形成される干渉縞が薄くなり、ラミネート処理の施された材料を用いた化粧箱のように表面に光沢を有する対象物であれば、形成される干渉縞が濃くなる。このため、観測される干渉縞の輝度にも貼り付ける対象物によって違いが生じていた。
これに対して、本実施形態に係る偽造防止用透明積層体は、細線パターンよりも張付面側に位置する機能層の、レーザー光の位相均一性を低下させるインコヒーレント誘起性ΔPを20%以上とすることで、張付面と対象物との界面での反射光の位相の均一性を低下させて当該反射光による干渉縞が形成されにくくなる。これにより、偽造防止用透明積層体にレーザー光を照射して観測される干渉縞の輝度が、張り付ける対象物の表面性状による影響を受けにくくなる。
【0014】
1.偽造防止用透明積層体
図1は、本実施形態に係る偽造防止用透明積層体の概略構成を示す平面図である。図2は、本実施形態に係る偽造防止用透明積層体の概略構成を示すA―A’断面図である。
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る偽造防止用透明積層体300(以下、単に「積層体300」ともいう)は、細線パターン330と、最表にある張付面Sと、細線パターン330よりも張付面S側に位置する機能層340とを有する。なお「張付面」とは、偽造防止用透明積層体を対象物に貼り付ける面を意味する。張付面Sは粘着性を有していてもよい。機能層340は、レーザー光の位相均一性を低下させるインコヒーレント誘起性ΔPが20%以上である。図2に示すように、機能層の表面が、張付面Sであってもよい。細線パターン330は、例えば、複数の細線320から構成されている。
【0015】
本実施形態に係る積層体300は、透明基材310を有していてもよい。透明基材上に細線パターンが形成されていてもよい。
【0016】
1.1.機能層
本明細書における機能層は、細線パターンよりも張付面側に位置する層の総称である。機能層は、いかなる機能を有していてもよい。機能層は、1層であっても、2層以上の多層であってもよい。「インコヒーレント誘起性」とは、透過するレーザー光の位相均一性を乱す性質である。透過する光の位相均一性を乱す例としては、例えば、光の散乱、面内レタデーションの不均一化、蛍光色素による波長変換層などが挙げられる。
【0017】
機能層は、下記(1)式で表される、レーザー光の位相均一性を低下させるインコヒーレント誘起性ΔPが20%以上であることが好ましい。インコヒーレント誘起性ΔPは、透過するレーザー光の位相均一性を乱す一指標となる値である。インコヒーレント誘起性ΔPが20%以上であることで、対象物による反射回折光の輝度値の変動が抑制され、貼付ける対象物の表面の性状による影響を受けにくい偽造防止用透明積層体とすることができる。
ΔP=(P-P)/P×100 (1)
(式中、Pは、2枚の偏光板により測定する偏光度、Pは、前記2枚の偏光板に機能層を挟んで測定する偏光度である。)
【0018】
下記式(2)より偏光度(P)を求める。2枚の偏光板をその吸収軸方向が同一になるように重ね、平行位透過率(T)を測定する。つぎに2枚の偏光板をその吸収軸が直行するように重ね、直行位透過率(T)を測定する。
=100×〔(T-T)/(T+T)〕 (2)
ただし、上述の2枚の偏光板は、Pが99.99%以上の値となるものを使用する。
【0019】
下記の式(3)より偏光度(P)を求める。機能層のサンプルを2枚の偏光板の間に挟み、上記と同様に、サンプルを透過した場合の、平行位透過率(Tps)、直行位透過率(Tcs)を測定する。
=100×〔(Tps-Tcs)/(Tps+Tcs)〕 (3)
機能層のサンプルは、機能層と同一の組成及び同一の層構造を有するサンプルを用いてもよい。ここでの機能層のサンプルの厚みは、偽造防止用透明積層体における機能層の厚みに揃える。
インコヒーレント誘起性ΔPは、細線パターン330よりも張付面S側に位置する機能層すべての総計値である。また、機能層が多層である場合、機能層全体で測定してもよいし、機能層を構成する各層の偏光度(Psi)を求め、各層のPsi/100を総乗した値を機能層全体の偏光度(P)としてもよい。なお偏光度(Psi)は、上記式(3)におけるサンプルを、機能層の各層とし、算出する。
【0020】
偏光度(P)及び偏光度(P)は、635nmの波長で測定する。例えば、分光光度計(株式会社島津製作所製UV-2200)を用いて測定することができる。
【0021】
機能層のインコヒーレント誘起性ΔPは、対象物による反射回折光の輝度値の変動が抑制され、貼付ける対象物の表面の性状による影響を受けにくくする観点から、好ましくは20%以上であり、より好ましくは25%以上であり、より好ましくは30%以上である。機能層のインコヒーレント誘起性ΔPの上限値は、特に限定されないが、例えば、60%以下であってもよい。
【0022】
インコヒーレント誘起性ΔPは、機能層のヘイズ値を高めることで、その値を大きくすることができる。そのほか、レーザー光などの照射光のスポット範囲内、例えばφ5mmの範囲において、機能層の厚み方向のレタデーション分布を大きくすることでも、その値を大きくすることができる。
【0023】
機能層のヘイズ値は、積層体300の透明性を高める観点から、好ましくは20%以下である。機能層のヘイズ値は、より好ましくは10%以下であり、更に好ましくは5%以下である。このようなヘイズを有しながら、上述のインコヒーレント誘起性ΔP20%以上を示す機能層を得るためには、前記したように照射光のスポット範囲φ5mmにおける、レタデーション分布が100nm以上であると好ましく、300nm以上であるとより好ましく、500nm以上であると更に好ましい。
【0024】
機能層のヘイズ値は、対象物による反射回折光の輝度値の変動が抑制され、貼付ける対象物の表面の性状による影響を受けにくい偽造防止用透明積層体とする観点から、好ましくは5%超である。機能層のヘイズ値は、より好ましくは10%~60%であり、更に好ましくは20%~50%である。機能層のヘイズ値は、当該下限値以上であることで、対象物による反射回折光の輝度値の変動が抑制される傾向にある。機能層のヘイズ値は、当該上限値以下であることで、積層体300の透明性を担保することができる。機能層のヘイズ値は、機能層と同一の組成及び同一の層構造を有するサンプルを用いて、JIS K 7136:2000に準拠して測定する。ヘイズ値は、細線パターン330よりも張付面S側に位置する機能層すべての総計値である。また、機能層が多層である場合、機能層全体で測定してもよいし、機能層を構成する各層のヘイズ値を求め、各層のヘイズ値/100を総乗した値を機能層全体のヘイズ値としてもよい。
【0025】
機能層の厚みは、厚い方がインコヒーレントをより誘起しやすく好ましいが、厚すぎると、前記偽造防止用透明積層体が剥離しやすくなる。これらの観点から、好ましくは10μm~100μmであり、より好ましくは20μm~80μmであり、さらに好ましくは0μm~60μmである。機能層の厚みは、細線パターン330よりも張付面S側に位置する機能層すべての厚みの合計値である。
【0026】
また、機能層の可視光透過率は、偽造防止用透明積層体の透明性を保持する観点から、好ましくは50%超である。機能層の可視光透過率は、60%超であると、偽造防止用積層体の貼付面の透過性が向上するので好ましく、70%超であると、偽造防止用積層体の製品全体に対する視認性が低下より好ましい。機能層の可視光透過率は、JIS R83106に準拠した方法で測定できる。また、機能層が複数の層を有する場合には、機能層を構成する各層の可視光透過率を測定し、その総乗をとって機能層の可視光透過率としてもよい。可視光透過率値は、細線パターン330よりも張付面S側に位置する機能層すべての総計値である。
【0027】
1.2.細線パターン
細線パターン330は、透明基材310上に形成される細線320から構成されるパターンであってもよい。例えば、偽造防止用積層体の真正性を保証することを目的として、偽造防止用積層体に付された細線パターンから得られる光学像に関する光学像情報を取得し照合することができる。つまり、偽造防止用積層体に光を照射すると細線パターンからの反射光が干渉することで光学像が得られるため、当該光学像を照合することで、偽造防止が図られる。
【0028】
積層体300の細線パターン330は、金属製の細線320による所望のパターンとして形成されていてもよい。図1には、金属製の細線320により構成されるグリッドパターンからなる細線パターン330を示す。
【0029】
なお、細線パターン330は、細線320から構成される任意のパターンであって、三角形、四角形、又は六角形等のグリッドパターン(メッシュパターン)であってもよいし、ラインパターンであってもよい。また、細線320は、直線に限られず曲線や波線であってもよい。
【0030】
このような細線パターン330に対して、照射装置から所定の光を照射すると、細線パターン330は所定の回折光を反射し、それがフーリエ変換レンズを通過することで所定の光学像を得ることができる。
【0031】
例えば、細線パターン330において、線幅5μm以下の複数の細線が、数百μm程度の周期のピッチで等間隔に配列されていると、反射光に回折像が観察され、光学像はこのような回折像を含む。なお、この場合において、発生する回折像には、回折スポット像や回折縞模様が含まれる他、異なる回折像を組み合わせて得られる文字、数字、記号、その他のマークや図形が含まれてもよい。
【0032】
また、細線パターン330が、線幅5μ以下の複数の金属細線で構成され、数百μm程度のピッチで等間隔に配列されていると、個々の金属細線は不可視であり、細線パターン330は透明となる。つまり細線パターン330は、視認困難なパターンであってもよい。そのため、照合対象製品又はそのパッケージに対して細線パターン330を付したとしても、その意匠性や掲示情報が損なわれることがない。一方で、前記したように、このような透明な細線パターン330であっても、所定角度の光を照射した時にのみ発生する回折光により生じる回折像を取得することができる。
【0033】
細線320は、金属を含む細線であることが好ましい。金属としては、特に限定されないが、例えば、金、銀、銅、アルミニウムが挙げられる。これらの中でも、銀又は銅が好ましく、銅がより好ましい。
【0034】
上記のような観点から、細線320は肉眼により視認されにくいものが好ましい。例えば、細線320の線幅W1(図1参照)は、好ましくは5.0μm以下であり、より好ましくは0.1~5.0μmであり、さらに好ましくは0.3~5.0μmである。線幅W1が5.0μm以下であることにより、細線320の視認性が低下する。これにより、細線パターンを付した照合対象製品の意匠を損なわず細線パターンを付することができる。また、このような視認性の低い細線はそれ自体製造することが困難であり、複製され難さを担保する要因ともなる。ここで、本実施形態の線幅W1とは、透明基材310の細線320が配された面側から、細線320を透明基材310の表面上に投影したときの細線の線幅をいう。
【0035】
また、所定面積の細線パターン330のうち細線320が形成されていない部分の面積の比率である開口率ORは、好ましくは80~99.9面積%であり、より好ましくは85~99.8面積%であり、さらに好ましくは90~99.6面積%であり、よりさらに好ましくは95~99.5面積%である。なお、開口率ORは透過率とも言い換えることができる。これにより、細線パターンを付したとしても、照合対象製品又はそのパッケージの意匠性や掲示情報を損なうことを回避できる。
【0036】
(厚さH1)
細線320を構成する細線の厚さH1(図2参照)は、好ましくは10nm以上1000nm以下であり、より好ましくは50nm以上あり、さらに好ましくは75nm以上である。
【0037】
(アスペクト比)
細線320の線幅W1に対する細線320の厚さH1で表されるアスペクト比(H1/W1)は、好ましくは0.05以上1.00以下である。アスペクト比の下限は、より好ましくは0.08以上、さらに好ましく0.10以上である。
【0038】
(ピッチP1)
細線320のピッチP1(図1参照)は、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは25μm以上であり、さらに好ましくは50μm以上である。細線320のピッチP1が5μm以上であることで、良好な可視光透過率を得ることができる。また、細線320のピッチP1は、好ましくは1000μm以下であり、より好ましくは500μm以下であり、さらに好ましくは250μm以下である。なお、細線320の正方形のグリッドパターンである場合には、線幅1μmの細線320のピッチP1を200μmとすることにより、開口率99%とすることができる。さらに、ピッチP1が上記範囲であると、細線320の非視認性を高めると共に、細線パターン330による回折像が明瞭となり好ましい。なお、ピッチP1は、線幅W1と細線間の距離の和を意味する。
【0039】
(占有面積率A1)
占有面積率A1は、好ましくは0.5%以上であり、より好ましくは1.0%以上であり、さらに好ましくは2%以上である。また、占有面積率A1は、好ましくは10%以下であり、より好ましくは7%以下である。占有面積率A1を当該値以下とすることにより、細線パターン330の可視光透過率がより向上する傾向にある。
なお、パターンにおける「占有面積率」とは、透明基材310上の細線パターン330が形成されている領域について以下の式で算出することができる。
占有面積率(%)=(細線パターンの占める面積/基材の細線パターンが形成されている領域の面積)×100
【0040】
開口部の開口幅W2(図1参照)は、好ましくは40μm以上であり、より好ましくは45μm以上であり、さらに好ましくは50μm以上である。当該範囲とすることで、細線パターン330の視認性をより低下させることができる傾向にある。開口部の開口幅W2は、好ましくは500μm以下であり、より好ましくは300μm以下であり、さらに好ましくは100μm以下である。
【0041】
「開口幅」とは、開口部の短手方向の幅を意味する。なお、開口が正方形である場合には、いずれか一辺の幅である。
【0042】
(細線パターンの可視光透過率T1)
細線パターン330の可視光透過率T1は、好ましくは75%以上99.0%以下であり、より好ましくは80%以上99.0%以下である。可視光透過率は、JIS K 7361-1:1997の全光線透過率に準拠して、その可視光(360~830nm)の範囲の透過率を算出することで測定することができる。
【0043】
また、細線パターン330は、透明基材310上に周期的な細線320によるパターンが形成されていることが好ましい。このような構成であると、細線パターン330が高透過性の回折格子となるために、積層体300を商品パッケージに対して貼合してもその意匠性や掲示情報を損なわない。
【0044】
上述の細線パターン330に対して光を照射することで、当該細線パターン330から反射された回折光がフーリエ変換レンズを通過することで光学像を結像し、当該光学像を取得することができる、当該光学像を利用することで、積層体の偽造防止が可能となるが、具体的な方法については、後述する。
【0045】
1.3.積層構造
積層体300は、細線パターン330よりも張付面S側に位置する機能層340を有するが、当該位置関係を有する限り、その他各層の積層順序は特に限定されない。
【0046】
図2に示すように、積層体300は、基材310と、細線パターン330と、機能層340とがこの順に積層されていてもよい。この場合、機能層340は、1層である。なおこの場合、機能層340の表面は張付面Sである。
【0047】
図3に示すように、積層体300は、基材310と、細線パターン330と、粘着層341と、インコヒーレント誘起層342とがこの順に積層されていてもよい。なおこの場合、機能層340は、粘着層341及びインコヒーレント誘起層342の2層であり、インコヒーレント誘起層342の表面は張付面Sである。
【0048】
ここで、インコヒーレント誘起層342とは、単層で上述のインコヒーレント誘起性ΔPが20%以上を示す層を意味する。インコヒーレント誘起層342のインコヒーレント誘起性ΔPは、好ましくは25%以上であり、より好ましくは30%以上である。インコヒーレント誘起層342のインコヒーレント誘起性ΔPの上限値は、特に限定されないが、例えば、60%以下であってもよい。
【0049】
図4に示すように、積層体300は、基材310と、細線パターン330と、粘着層341と、インコヒーレント誘起層342と、粘着層341と、がこの順に積層されていてもよい。なおこの場合、機能層340は、粘着層341、インコヒーレント誘起層342、及び粘着層341である。また、最外層に位置する粘着層350の表面が、張付面Sである。当該層構成とする場合、インコヒーレント誘起層340は、粘着性を有しなくともよいので、例えば、透明ポリスチレンなどの粘着性を有しない材料を使用することができる。
【0050】
図5に示すように、積層体300は、基材310と、細線パターン330と、機能層340とがこの順に積層されていてもよい。なおこの場合、機能層340の表面が、張付面Sである。機能層340は、粘着層341と、透明支持体343と、パターン層344と、粘着層341とを有し、貼付後の積層体300の剥離によって透明支持体343とパターン層344との間に空隙を発生させて剥離検知可能に構成される。より具体的には、パターン層344は、貼付後の積層体300の剥離によって、積層体300に「VOID」等の文字や、所定のパターンが目視できるように浮かび上がるように配置される。ここで、複数の粘着層341は、同一組成であっても異なる組成であってもよい。
【0051】
パターン層344に用いられる材料は、特に限定されないが、例えば、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、及びエポキシ系樹脂が挙げられる。セルロース系樹脂としては、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースが挙げられる。アクリル系樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリレート、ポリメチル(メタ)アクリレートが挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレートが挙げられる。
【0052】
パターン層344は、例えば、上述の材料と溶剤とを含有するインキを用いて、一般的な印刷方法、例えば、グラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷等により形成することができる。
【0053】
図6に示すように、積層体300は、基材310と、細線パターン330と、機能層340と、がこの順に積層されていてもよい。なおこの場合、機能層340の表面が、張付面Sである。機能層340は、粘着層341と、透明支持体343と、パターン層344と、低弾性率層345と、高弾性率層346と、粘着層341とをこの順に有する。このように、低弾性率層345と、高弾性率層346とを設けることで、貼付後の積層体300の剥離によって透明支持体343とパターン層344との間に空隙を発生させやすくすることができる。ここで、複数の粘着層341は、同一組成であっても異なる組成であってもよい。
【0054】
低弾性率層345の23℃におけるせん断貯蔵弾性率G’は、好ましくは8.0×10Pa~6.0×10Paであり、より好ましくは9.0×10Pa~5.0×10Paであり、更に好ましくは9.5×10Pa~3.0×10Paである。
【0055】
せん断貯蔵弾性率G’の値は、測定対象となる層を形成する組成物と同一の組成物から形成した直径8mm×厚さ3mmの試験サンプルを粘弾性測定装置を用いて、試験開始温度-20℃、試験終了温度150℃、昇温速度3℃/分、周波数1Hzの条件で、ねじりせん断法によって、23℃における、試験サンプルのせん断貯蔵弾性率G’を測定することで得られる。粘弾性測定装置としては、例えば、Anton Paar社製、装置名「MCR300」を使用することができる。
【0056】
低弾性率層345は、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリイソブチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリルウレタン系樹脂及びポリエステル系樹脂等の粘着性樹脂により構成されていてもよい。
【0057】
高弾性率層346の23℃における引張貯蔵弾性率E’は、好ましくは10MPa~800MPaであり、より好ましくは15MPa~700MPaであり、好ましくは50MPa~500MPaである。
【0058】
引張貯蔵弾性率E’の値は、測定対象となる層を形成する組成物と同一の組成物から形成し、MD方向30mm×TD方向5mm×厚さ200μmの大きさに裁断した試験サンプルを、動的粘弾性自動測定機を用いて、試験開始温度-50℃、試験終了温度200℃、昇温速度3℃/分、振幅5μm、周波数1Hzの条件で、引張法によって、23℃における、試験サンプルの引張貯蔵弾性率E’を測定することで得られる。動的粘弾性自動測定機としては、例えば、株式会社オリエンテック製、製品名「レオバイブロン(登録商標)DDV-01FD」が挙げられる。なお、MD方向のMDとは、Machine Directionの略記であり、TD方向のTDとは、Transverse Directionの略記である。
【0059】
そして、当該測定方法で得られる引張貯蔵弾性率E’の値が、100MPa以下となる場合は、次に示す方法により引張貯蔵弾性率E’を測定する。まず、測定対象となる層を形成する組成物と同一の組成物から形成した直径8mm×厚さ3mmの試験サンプルを、粘弾性測定装置を用いて、試験開始温度-20℃、試験終了温度150℃、昇温速度3℃/分、周波数1Hzの条件で、ねじりせん断法によって、23℃における、試験サンプルのせん断貯蔵弾性率G’を測定する。次に、23℃での引張貯蔵弾性率E’の値を、23℃でのせん断貯蔵弾性率G’の値から近似式「E’=3G’」を用いて算出する。粘弾性測定装置としては、例えば、Anton Paar社製、装置名「MCR300」を使用することができる。
【0060】
高弾性率層346は、アクリルウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリアミド、ポリエステル系樹脂から形成されるフィルムにより構成されていてもよい。
【0061】
1.4.偽造防止用透明積層体付帯物
積層体300は、対象物に貼り付けて、後述するように真贋判定に使用することができる。偽造防止用透明積層体付帯物は、積層体300と、積層体300が付された対象物と、を備える。対象物としては、特に限定されず、例えば、照合対象製品であってもよい。
【0062】
2.情報処理方法
本実施形態に係る情報処理方法は、情報処理装置が、細線パターン330と、細線パターン330よりも張付面S側に位置する機能層340と、を有する偽造防止用透明積層体であって、機能層340の、レーザー光の位相均一性を低下させるインコヒーレント誘起性ΔPが20%以上である偽造防止用透明積層体300に対して光を照射する照射ステップと、細線パターン330から反射された反射光がフーリエ変換レンズを通過することで光学像を結像し、該光学像を取得する撮像ステップと、前記光学像に関する光学像情報と正解情報とを照合して、照合結果を生成する照合ステップと、を実行する。
【0063】
照射ステップにおいて機能層340を有する積層体300を用いることで、対象物への貼付け面の光反射率に係る影響を受けにくく、対象物による反射回折光の輝度値の変動が抑制され安定した光学像が得られる。
【0064】
本実施形態に係る情報処理方法は、情報処理装置が、目視により確認される偽造防止用透明積層体の異常情報が入力されているか否かを確認する、入力情報確認ステップを更に実行してもよい。例えば、上述の貼付後の偽造防止用透明積層体の剥離によって前記透明支持体とパターン層との間に空隙を発生させて剥離検知可能に構成された積層体300を用いる場合には、積層体300が剥離されると、「VOID」等の文字や、所定のパターンが目視できるように浮かび上がる。これらの目視により確認される偽造防止用透明積層体の異常情報が、確認されたときには、あらかじめ作業者が異常情報を入力する。情報処理装置が、当該異常情報が入力されているか否かを確認し、異常情報が入力されている場合には照射ステップに進まない等の処理を行ってもよい。
【0065】
情報処理方法において用いられる実施形態のシステムでは、情報処理装置(以下、「端末」ともいう。)が、細線パターンから反射された回折光をフーリエ変換レンズにより結像して得られる光学像に関する光学像情報(以下、単に「光学像情報」ともいう。)を取得し、その光学像情報と光学像の正解ラベルに関する正解情報(以下、単に「正解情報」ともいう。)とを用いて照合処理を行う。
【0066】
図7に、実施形態のシステムの構成の一例を示す。図7では、端末100A~100Dは、製造メーカの商品の発送拠点、流通業者の物流拠点、販売業者の物流拠点など、積層体を付した照合対象製品が搬入搬出される各拠点に設けられており、各端末100A~100DはネットワークNを介して、サーバ400に接続されている。
【0067】
これにより、各端末100A~100Dは、照合対象製品が各端末を通過するたびにサーバ400と連携して真贋判定を行うことができ、流通している照合対象製品が真正品であることを保証することができる。また、各端末100A~100Dは、積層体の付された照合対象製品が通過するたびに判定される積層体あるいは照合対象製品の真贋に関する情報をサーバ400に送信する。これにより、サーバ400は、各端末100を通過した対象製品の真贋に関する情報や、通過した場所や時間に関する物流情報を蓄積することができる。
【0068】
図7では、各拠点において一つの端末100が示されているが、端末100の数はこれに限定されず、各拠点の商品の搬入ゲートと搬出ゲートのそれぞれに端末100が設置されていてもよい。これにより搬入時と搬出時のそれぞれで端末100を用いた真贋判定を実施することができる。なお、端末100A~100Dを特に区別しないときは、単に端末100と表現する。
【0069】
本実施形態のシステムでは、端末100が、細線パターンから反射された回折光をフーリエ変換レンズにより結像して得られる光学像に関する光学像情報(以下、単に「光学像情報」ともいう。)を取得し、その光学像情報と光学像の正解ラベルに関する正解情報(以下、単に「正解情報」ともいう。)とを用いて照合処理を行ってもよい。
【0070】
以下、本実施形態で用いる用語について説明し、続いて端末100の構成について説明する。
【0071】
2.1.光学像情報
光学像情報は上記のような細線パターン330から取得できる光学像に関する情報であり、より具体的には、細線パターンに所定の角度で光を照射したときに生じる回折像に関する情報である。回折像は、細線が所定の周期で等間隔に配列された細線パターンに対して、所定の角度で光を照射したときに、その反射光に観察される像であって、回折スポット像や回折縞模様が含まれる。
【0072】
また、光学像情報は、これら光学像のイメージデータであってもよいし、非イメージデータであってもよいし、その両方であってもよい。ここで、「イメージデータ」とは画像そのもののデータをいい、「非イメージデータ」とは、イメージデータの特徴を示す情報であって、照合処理においてイメージデータと同等に使用できる情報をいう。
【0073】
非イメージデータとしては、特に制限されないが、例えば、回折格子の配置をより具体的に特定するためのパラメータ情報が挙げられる。さらに、非イメージデータには、光学像を生じさせるために用いた条件に関する情報が含まれてもよい。このような条件に関する情報としては、例えば、光の照射角度などの照射条件に関する情報が挙げられる。
【0074】
このような光学像情報の具体例としては、例えば、前記した回折格子を有する積層体300へレーザ光を照射して得られる反射光を、フーリエ変換レンズを透過して得られる反射回折像の回折点画像のイメージデータや、反射0次光中心に対する各次回折点の距離、反射0次光中心から減衰する次数回折点までの距離、回折像の交差角度などの非イメージデータが挙げられる。これらイメージデータや非イメージデータは、細線パターンのピッチ、線幅、正方形や矩形などの開口形状、積層体300を構成する材料により一意的に決定される。これら光学像情報は、細線パターンの微細構造から形成された偽造困難な固有値であるため、光学像情報を用いることで、積層体300を構成する細線パターンが真正なものである判定を行うことができる。
【0075】
さらに、光学像情報は、上記のような回折像などが複数組み合わされることで、文字、数字、記号、その他のマークや図形を示すものであってもよい。具体的には、アルファベットの「A」の形にある回折像が形成され、その「A」の周りには回折像が形成されないか、別の回折像が形成されることで、「A」という形を認識できる光学像が得られる場合などがこれに該当する。この場合、非イメージデータには、光学像を全体としてみたときに観測される、文字、数字、記号、その他のマークや図形などの情報が含まれていてもよい。
【0076】
3.正解情報
後述するように、例えば、端末100の照合部155は、正解ラベルに関する正解情報と光学像情報とを照合することで、その積層体が、真正なものであるという判定を行うことができる。ここで、正解情報は、細線パターンから得られる光学像情報に対応する情報であり、光学像の正解ラベルに関する情報を含むものである。
【0077】
正解ラベルは、例えば、光学像情報と一致する情報、又は、所定の変換処理をすることにより光学像情報と一致する情報が挙げられる。このような観点から、正解ラベルは、光学像情報と同様に、イメージデータであってもよいし、非イメージデータであってもよいし、その両方であってもよい。なお、ここで、「一致する」には、後述する類似度なども含まれる。
【0078】
さらに、正解情報は、複数の可視情報コード特定情報のうち、2以上の可視情報コード特定情報に対して共通の正解ラベルが設定されたものであってもよい。つまり、異なる照合対象製品に同一の正解ラベルが対応付けられた細線パターンが付されていてもよい。これにより、2以上の異なる可視情報コード特定情報に対して、同一の正解ラベルが対応付けられる。
【0079】
なお、異なる照合対象製品に同一の正解ラベルが設定されている態様としては、特に限定されないが、例えば、商品名Sという名称で販売される同一の商品からなる群に同一の正解ラベルが設定されている場合、商品名Sという同一の商品からなる群のうち任意の共通項を有する小群に同一の正解ラベルが設定されている場合、ある製品メーカの製品に同一の正解ラベルが設定されている場合、同時期に製造された製品に同一の正解ラベルが設定されている場合などが挙げられる。
【0080】
さらに、非イメージデータには、光学像を生じさせるために用いた条件に関する情報が含まれてもよい。このような条件に関する情報としては、例えば、光学像が回折像である場合には、光の照射角度などの照射条件に関する情報が挙げられる。
【0081】
正解ラベルは、細線パターンから得られる光学像についての多様なデータを含むことができる。例えば、正解ラベルは、回折像などの光学像を示す、回折スポットの位置などの少なくとも1つのパラメータであってもよいし、複数のパラメータの組み合わせであってもよい。また、正解ラベルは、取得条件の異なる光学像のイメージデータや非イメージデータを含んでいてもよい。このような、正解ラベルにおける、光学像情報と照合するパラメータの種類や数は、照合処理の精度や、細線パターンの模倣の困難性、あるいは照合処理の速度などに応じて、適宜決めることができる。
【0082】
また、例えば、ある正解ラベルが複数の回折スポットの位置という複数のパラメータを有するものであったとしても、後述する照合処理においては、その一部のパラメータ、例えば1つの回折スポットの位置のみを照合に使用するようにしてもよい。照合処理においては、正解ラベルに含まれるより多くのパラメータを使用することで、真贋判定の精度を向上したり、あるいは、より少ないパラメータを使用することで判定の処理速度を向上したりすることができる。
【0083】
また、正解情報は、正解ラベルに替えて又は正解ラベルに加えて、正解ラベルに関する情報として、例えば、他のデータを参照することで正解ラベルを特定できるような情報を含んでもよい。
【0084】
4.製品特定情報
製品特定情報は、照合対象製品に付されたシリアルコード又は照合対象製品の画像情報から取得できる、照合対象製品を特定可能な情報である。製品特定情報は照合対象製品を一意に識別するための情報であってもよいし、同一の商品からなる群を示す情報であってもよいし、同一の商品からなる群のうち任意の共通項を有する小群を示す情報であってもよい。
【0085】
例えば、商品名Sで販売されているスニーカーがある場合、「同一の商品からなる群を示す情報」とは、商品名Sに相当する情報であり、商品名Sという名称で販売される商品全体をさす情報をいう。また、同様の例において、「同一の商品からなる群のうち任意の共通項を有する小群を示す情報」とは、商品名Sのスニーカーのうち、特定の製造ロットに該当する商品の群や、特定の地域で販売される商品の群など、同じ商品として販売されたものの中で更に任意のカテゴリーに関する情報が付与された情報をいう。さらに、同様の例において、「一意に識別するための情報」とは、商品名Sのスニーカーのうち、特定の一つの商品を示す情報をいう。
【0086】
さらに、製品特定情報は、製品メーカを示す情報であってもよい。例えば、製品特定情報は、フットウェアメーカA、フットウェアメーカB、フットウェアメーカC、あるはその他のメーカを識別可能な情報であってもよい。この場合、ある製品特定情報が示す照合対象製品は、その製品特定情報に対応する製品メーカにより製造されたものと理解することができる。一例として、このような製品メーカを示す製品特定情報は、シリアルコードであってもよいし、画像情報として把握される商標であってもよい。
【0087】
シリアルコードとは、特に限定されないが、例えば、照合対象製品に付されたRFタグ等のICチップに記録された情報や、QRコード(登録商標)などの二次元コード若しくはバーコードから読み取ることのできる情報をいう。このようなシリアルコードから取得できる製品特定情報としては、特に限定されないが、例えば、GTIN(Global Trade Item Number)や、その他に、製品メーカ、流通拠点、流通業者、又は小売店などが商品の分類や判別のために付す情報が挙げられる。また、製品特定情報には、シリアルコードそのものの他に、そのようなシリアルコードを管理するデータベースにおいて、シリアルコードと対応付けて記録された製品に関する情報が含まれてもよい。
【0088】
照合対象製品には、シリアルコードと細線パターンが一体になって付されていても、シリアルコードと細線パターンが別々に付されていてもよい。シリアルコードと細線パターンが一体になったものを、「タグ」ともいう。このようなタグの例としては、特に限定されないが、例えば、RFタグ(Radio Frequencyタグ)において、ICチップにシリアルコードが記録され、アンテナ部分が金属の細線パターンで構成されたものが挙げられる。また、タグの他の例としては、二次元コード若しくはバーコードと細線パターンが一面に横並びに配置されて一体となったものや、二次元コード若しくはバーコードと透明性の高い細線パターンが重ねて配置されて一体となったものなども挙げられる。
【0089】
また、照合対象製品の画像情報から取得できる製品特定情報は、製品の画像情報から、その画像に映っている製品を検索して得られる情報が挙げられる。照合対象製品の画像情報から取得できる製品特定情報についても、シリアルコードと同様に、画像情報そのものの他に、画像情報から特定される製品に関する情報が含まれてもよい。なお、画像情報から製品を特定する手段については、従来公知の手段を用いることができる。
【0090】
5.ハードウェア構成
5.1.端末
端末100は、細線パターンに対して光を照射する照射装置131と、前記細線パターンから反射された回折光が通過して、光学像を結像するフーリエ変換レンズ132と、結像した光学像を取得する撮像装置133と、前記光学像の正解ラベルに関する正解情報と、前記光学像に関する光学像情報と、を照合して、照合結果を生成する照合部155と、を有する。
【0091】
図8に、端末100の構成を示すブロック図を示す。端末100は、典型的には、1つ又は複数のプロセッサ110、通信インタフェース120、入出力インタフェース130、メモリ140、ストレージ150及びこれらの構成要素を相互接続するための1つ又は複数の通信バス160を含む。
【0092】
1つ又は複数のプロセッサ110は、メモリ140に記憶されるプログラムに含まれるコード、又は、命令によって実現する処理、機能、又は、方法を実行する。プロセッサ110は、限定でなく例として、1又は複数のCPUやGPUを含む。
【0093】
通信インタフェース120は、ネットワークNを介して他の情報処理装置と各種データの送受信を行う。当該通信は、有線、無線のいずれで実行されてもよく、互いの通信が実行できるのであれば、どのような通信プロトコルを用いてもよい。例えば、通信インタフェース120は、ネットワークアダプタ等のハードウェア、各種の通信用ソフトウェア、又はこれらの組み合わせとして実装される。
【0094】
入出力インタフェース130は、照射装置131、フーリエ変換レンズ132、撮像装置133の他、必要に応じて、スクリーン134や、製品情報読取装置135、異常情報入力装置136、端末100に対する各種操作を入力する入力装置、及び、端末100で処理された処理結果を出力する表示装置137などの出力装置を含んでいてもよい。
【0095】
図9に、端末100が光学像を取得する際の模式図を示す。図9では、照射装置131が細線パターン330に対して所定の照射角θで光を照射し、細線パターン330から反射した回折光がフーリエ変換レンズ132を通過し、結像した光学像を撮像装置133が取得する。
【0096】
照射装置131は、細線パターン330に対して所定の光を所定角度で照射できれば特に制限されるものではない。照射装置131における光源は、必要とする波長帯を含む発光波長強度分布を有する光を発光するものであってもよい。光源としては、例えば、ハロゲンランプ、LED及び半導体レーザ等などであってもよく、照射装置131はこれら光源から放射された光を導光する導光路、光ファイバなどを含んでいてもよい。このなかでも、照射装置131としては、小型化、発熱特性、寿命及びコストの点からLEDの使用が好ましい。
【0097】
また、照射装置131は、特定方向以外の光の拡散を抑制すると共に、所定の光学純度を得るためのスリット(不図示)を含んでもよく、細線パターン330に集光させるコリメータレンズ(不図示)を含んでもよい。この場合、コリメータレンズは、必ずしも細線パターン330の面上に焦点を合わせる必要はなく、光源からの光強度を上げ、細線パターン330から反射された回折光の信号強度を向上できれば特に制限されるものではない。
【0098】
フーリエ変換レンズ132は、細線パターン330から反射される回折光を受光し、光学像を撮像装置133に導光できれば特に制限されるものではない。フーリエ変換レンズ132は、焦点距離Fを有し、撮像装置133上にフーリエ変換された回折光による光学像を結像するものである。また、フーリエ変換レンズ132の光路前後には、図示しないスリット、ミラー、フィルタを設けてもよく、複数のフーリエ変換レンズを組み合わせて、フーリエ変換レンズ132としてもよい。複数のフーリエ変換レンズを組み合わせると、撮像装置133上に結像する光学像の解像度が上がり、好ましい。
【0099】
フーリエ変換レンズ132を用いることにより、照射装置131と、細線パターン330と、フーリエ変換レンズ132の距離が変わったとしても、撮像装置133に同様に結像することが可能となる。特に細線パターン330が、線幅5μm以下の複数の細線320で構成され、数百μm程度のピッチで等間隔に配列され、細線パターン330が透明となる場合には、所定角度の光を照射した時に発生する回折光強度は非常に弱くなるが、フーリエ変換レンズ132を用いることにより撮像装置133に集光できるため、光学像を安定して取得することができる。
【0100】
撮像装置133は、フーリエ変換レンズ132によって結像された光学像を、光学的な画像信号を電気信号に変換して出力できれば、特に制限されるものではなく、CMOSセンサや、CCDセンサ、ラインセンサなどが挙げられる。
【0101】
また、撮像装置133として、前記光学像を直接電気信号に変換する機構ではなく、所定の投影面に結像する光学像を、撮像する機構でもよい。図10に、端末100が光学像を取得する際の他の模式図を示す。図9では、フーリエ変換レンズ132により結像した光学像を撮像装置133が直接するのに対して、図10においては、フーリエ変換レンズ132を通過した回折光がスクリーン134上に結像し、スクリーン134上に結像された光学像を撮像装置133が取得する。
【0102】
この場合、スクリーン134に結像した光学像を撮像する撮像装置133としては、CCDカメラや撮像管などを用いることができる。図10においては、照射装置131から照射された光が、細線パターン330から反射され、フーリエ変換レンズ132によりスクリーン134上に結像される。そして、結像された光学像を撮像装置133(CCDカメラ)で撮像する。
【0103】
撮像装置133は、図10に示すようにフーリエ変換レンズ132の軸から外れた位置にあってもよく、軸上に位置してもよい。フーリエ変換レンズ132の軸から外れて位置すると、端末100を小型化でき好ましく、フーリエ変換レンズ132の軸上に位置すると、スクリーン134上に結像された反射回折像が歪まないために、正解情報との照合が容易であるため、好ましい。
【0104】
撮像装置133が取得した光学像に関する光学像情報は、端末100の照合部155により正解情報と照合され、その照合結果は、送受信部152によりネットワークNを介してサーバ400に送信される(図7参照)。なお、端末100は、サーバ400などの他の情報処理装置から正解情報を事前に受信し、照合用データ154に記憶しておいてもよい(図11参照)。
【0105】
なお、撮像装置133は、細線パターン330の特定の領域を撮影可能なように、撮像装置133と細線パターン330との位置を相対的に移動可能なように構成されていてもよい。また、撮像装置133は、取得した撮像画像の特定の領域から、光学像を特定し取得するような画像処理を実行可能なように構成されていてもよい。
【0106】
製品情報読取装置135は、細線パターンが付された照合対象製品に対して付されたシリアルコード又は照合対象製品の画像情報から、照合対象製品を特定可能な製品特定情報を取得する。このような製品情報読取装置135は、読取対象によって、適宜選択することができる。シリアルコードから製品特定情報を取得する製品情報読取装置135は、例えば、RFタグからシリアルコードを読み取る場合であればRFタグリーダであり、QRコードからシリアルコードを読み取る場合であれば撮像装置であり、バーコードからシリアルコードを読み取る場合であればバーコードリーダである。また、照合対象製品の画像情報から製品特定情報を取得する製品情報読取装置135は、例えば、画像情報を取得するための撮像装置である。
【0107】
なお、製品情報読取装置135が撮像装置である場合には、製品情報読取装置135と光学像を取得するための撮像装置133とを同一の装置とすることができる。本明細書においては、製品情報読取装置135と撮像装置133とが同一の撮像装置であるとしても、これらを分けて呼称する。
【0108】
異常情報入力装置136は、人間の目視により確認される積層体300の異常情報を入力可能とする。積層体300が剥離検知可能に構成されている場合、照合対象製品から剥離されたことを示す情報が目視できる場合には、作業者によって異常情報として入力される。入力された異常情報は、メモリ140に一時的に保存される。なお、端末100は、入力された異常情報を通信インタフェース120を介してサーバ400に送信してもよい(図7参照)。
【0109】
メモリ140は、ストレージ150からロードしたプログラムを一時的に記憶し、プロセッサ110に対して作業領域を提供する。メモリ140には、プロセッサ110がプログラムを実行している間に生成される各種データも一時的に格納される。メモリ140は、限定でなく例として、DRAM、SRAM、DDR RAM又は他のランダムアクセス固体記憶装置などの高速ランダムアクセスメモリ等であってよく、これらが組み合わせられてもよい。
【0110】
ストレージ150は、プログラム、各種機能部、及び各種データを記憶する。ストレージ150は、限定でなく例として、磁気ディスク記憶装置、光ディスク記憶装置、フラッシュメモリデバイス、又は他の不揮発性固体記憶装置などの不揮発性メモリ等であってよく、これらが組み合わせられてもよい。ストレージ150の他の例としては、プロセッサ110から遠隔に設置される1つ又は複数の記憶装置を挙げることができる。
【0111】
ストレージ150はプログラム及びデータ構造、又はそれらのサブセットを格納する。プロセッサ110は、ストレージ150に記憶されている各プログラムを読みだして実行することによって、図8に示すように、送受信部152、情報取得部153、及び照合部155として機能するように構成されている。
【0112】
ここで、ストレージ150に格納されたプログラムは、端末100に、細線パターンに対して光を照射する照射ステップと、前記細線パターンから反射された回折光がフーリエ変換レンズを通過することで光学像を結像し、該光学像を取得する撮像ステップと、前記光学像の正解ラベルに関する正解情報と、前記光学像に関する光学像情報と、を照合して、照合結果を生成する照合ステップと、を実行させるものであれば、特に限定されない。
【0113】
オペレーティングシステム151は、例えば、様々な基本的なシステムサービスを処理するとともにハードウェアを用いてタスクを実行するためのプロシージャを含む。
【0114】
送受信部152は、例えば、端末100をサーバ400等の他のコンピュータに、通信インタフェース120、及びインターネット、他の広域ネットワーク、ローカルエリアネットワーク、メトロポリタンエリアネットワークなどの1つ又は複数の通信ネットワークを介して接続するために使用される。
【0115】
情報取得部153は、照射装置131、フーリエ変換レンズ132、撮像装置133、必要に応じてスクリーン134等を介して、光学像情報を取得する処理を実行する。
【0116】
例えば、情報取得部153は、照射装置131から細線パターン330へ照射する光の角度や強度、或いは、細線パターン330に光を当てる位置などを変更するように、照射装置131を制御してもよい。
【0117】
また、情報取得部153は、フーリエ変換レンズ132と撮像装置133の位置や、フーリエ変換レンズ132とスクリーン134の位置を変更するように、各装置の位置関係を制御してもよい。
【0118】
さらに、情報取得部153は、製品情報読取装置135を介して、照合対象製品に付されたシリアルコード又は照合対象製品の画像情報から、照合対象製品を特定可能な製品特定情報を取得する処理を実行してもよい。
【0119】
さらに、情報取得部153は、あらかじめ入力された異常情報を取得する処理を実行してもよい。
【0120】
さらに、情報取得部153は、前記した光学像から、非イメージ情報を取得する、非イメージデータ生成部を有してもよい。
【0121】
ここで、「イメージデータ」とは画像そのもののデータをいい、「非イメージデータ」とは、イメージデータの特徴を示す情報であって、照合処理においてイメージデータと同等に使用できる情報をいう。
【0122】
非イメージデータの具体例としては、例えば、前記した透過型回折格子を有する積層体300へレーザ光を照射して得られる前記光学像において、反射0次光中心に対する各次回折点の距離、反射0次光中心から減衰する次数回折点までの距離、回折像の交差角度などが挙げられる。
【0123】
上記した非イメージデータは、例えば、図示しない非イメージデータ生成部において、前記した光学像情報の画像解析から、生成することができる。
【0124】
照合用データ154は、情報取得部153の指示により、情報取得部153が取得した製品特定情報や光学像情報を記憶したり、照合部155の指示により、正解情報を記憶したりすることができる。また、照合用データ154は、照合部155の指示により、照合結果を記憶してもよい。
【0125】
照合用データ154に記憶される正解情報は、複数の製品特定情報と、該複数の製品特定情報に対応する光学像の正解ラベルに関する情報を含んでいてもよい。なお、本明細書において、「複数の製品特定情報と、該複数の製品特定情報に対応する光学像の正解ラベルに関する情報」を「複数の製品特定情報に対応する正解情報」とも表現することがある。この場合、照合部155は、照合用データ154の中から、製品特定情報に対応する正解情報と、光学像に関する光学像情報と、を照合して、照合結果を生成することができる。
【0126】
このように、照合用データ154が複数の製品特定情報に対応する正解情報を予め記憶することにより、照合部155は、照合処理毎にサーバ400に正解情報を照会する必要がなくなる。そのため、端末100とサーバ400の間でやり取りされるデータ量及び回数を低減することができる他、照合処理の高速化を図ることができる。また、その他、端末100とサーバ400との通信障害や、停電、自然災害などによりサーバ400が停止しても、端末100では真贋判定を実施することができ、真贋判定停止による商品流通の停滞を発生させることなく真正品の保証ができる。
【0127】
また、照合用データ154に記憶される正解情報は、複数の製品特定情報のうち、2以上の製品特定情報に対して共通の正解ラベルが設定されたものであってもよい。つまり、異なる照合対象製品に同一の正解ラベルが対応付けられた細線パターンが付されていてもよい。これにより、2以上の異なる製品特定情報に対して、同一の正解ラベルが対応付けられる。
【0128】
上記のように照合用データ154が複数の製品特定情報に対応する正解情報を予め記憶するとしても、流通する製品数は膨大であるため、端末100の記憶容量の制限を受けたり、照合部155が行う照合処理に時間を要したりすることが考えられる。この点、2以上の製品特定情報に対して共通の正解ラベルが設定されることにより、照合用データ154に記憶される正解情報のデータ量を低減することができ、また、照合処理の高速化を図ることができる。また、正解情報のデータ量を低減することに伴い、端末100とサーバ400の間でやり取りされるデータ量及び回数を低減することもできる。
【0129】
なお、異なる照合対象製品に同一の正解ラベルが設定されている態様としては、特に限定されないが、例えば、商品名Sという名称で販売される同一の商品からなる群に同一の正解ラベルが設定されている場合、商品名Sという同一の商品からなる群のうち任意の共通項を有する小群に同一の正解ラベルが設定されている場合、ある製品メーカの製品に同一の正解ラベルが設定されている場合、同時期に製造された製品に同一の正解ラベルが設定されている場合などが挙げられる。
【0130】
照合用データ154に記憶される正解情報は、送受信部152を介して、製品特定情報を管理するサーバ400から受信したものであってもよい。正解情報の受信のタイミングは、特に限定されないが、例えば、照合部155が、照合処理毎に、取得した製品特定情報に対応する正解情報を受信して、照合用データ154に記憶してもよい。また、照合部155が、全ての照合処理毎ではなく、ある照合処理において取得した製品特定情報に対応する正解情報を受信する際に、その照合処理とは関係のない複数の製品特定情報に対応する正解情報も受信し、照合用データ154に記憶してもよい。なお、全ての照合処理毎ではない上記態様を、以下「一部の照合処理毎に」ともいう。さらに、照合部155が、照合処理とは無関係に、定期的又は不定期に、複数の製品特定情報に対応する正解情報とを受信して、照合用データ154に記憶してもよい。
【0131】
特に、照合部155が、一部の照合処理毎に、複数の製品特定情報に対応する正解情報を受信し、照合用データ154に記憶すること、又は、照合部155が、照合処理とは無関係に、定期的又は不定期に、複数の製品特定情報に対応する正解情報を受信して、照合用データ154に記憶すること好ましい。これにより、端末100の照合用データ154には、何らかの正解情報が記憶された状態とすることができるため、照会処理毎に取得した製品特定情報に対応する正解情報を受信する処理を不要とできるか、減らすことができる。そのため、端末100とサーバ400の間でやり取りされるデータ量及び回数を低減することができる他、照合処理の高速化を図ることができる。
【0132】
端末100が、照合用データ154に、2以上の製品特定情報に対して共通の正解ラベルが設定された正解情報を有し、かつ、照合処理毎に、サーバ400から製品特定情報に対応する正解情報を受信しない態様についてさらに説明する。この態様では、端末100は、定期的又は不定期に、複数の製品特定情報に対応する正解情報を受信して、照合用データ154に記憶する。
【0133】
なお、「定期的に正解情報を受信する」とは、期間などの予め定められたタイミングで正解情報を受信することをいう。
【0134】
また、「不定期に正解情報を受信する」とは、状況に応じて正解情報を受信することをいう。そのような状況として、特に限定されないが、例えば、端末100がサーバ400に正解情報を送信するように要求を送信した場合、ある照合処理において取得した製品特定情報に対応する正解情報を受信する際に、その照合処理とは関係のない複数の製品特定情報と該複数の製品特定情報に対応する正解情報も受信する場合、サーバ400の正解データ453に正解情報が登録されたときに、端末100が該正解情報を受信する場合が挙げられる。
【0135】
照合部155は、正解情報と光学像情報とを照合して照合結果を生成する処理を実行する。この際、照合部155は、光学像情報のイメージデータと正解情報におけるイメージデータとを照合してもよいし、光学像情報の非イメージデータと正解情報における非イメージデータとを照合してもよい。
【0136】
また、照合部155は、照合処理毎に、製品特定情報をサーバ400に送信し、その製品特定情報に対応する正解情報をサーバ400から受信して、照合処理を行ってもよいし、一部の照合処理毎に、複数の製品特定情報に対応する正解情報を受信して照合用データ154に記憶し、照合処理の際に照合用データ154を参照して照合処理を行ってもよい。また、照合部155は、照合処理とは無関係に、定期的又は不定期に、正解情報をサーバ400から受信して照合用データ154に記憶し、照合処理の際に照合用データ154を参照して照合処理を行ってもよい。
【0137】
さらに、照合部155が、一部の照合処理毎に又は照合処理とは無関係に、正解情報をサーバ400から受信して照合用データ154に記憶して、これを照合処理に用いる場合において、端末100を通過する照合対象製品の製品特定情報に対応する正解情報が照合用データ154にないときに、照合部155はその製品特定情報をサーバ400に送信し、その製品特定情報に対応する正解情報をサーバ400から受信して、照合処理を行ってもよい。
【0138】
さらに、照合部155は、光学像情報と正解情報に基づいて、光学像情報と正解情報の類似度を算出し、類似度に基づいて、照合結果を生成するようにしてもよい。なお、照合部155は、類似度がある閾値以上若しくは以下、又は、ある値域に入る場合などに、光学像情報と正解情報が一致する又は一致しないという結果を生成してもよい。このような照合に用いる類似度の閾値又は値域は、照合用データ154に記憶される正解情報の一部として含まれていてもよい。
【0139】
例えば、照合部155は、光学像情報と正解情報を参照し、光学像情報の特徴量と正解情報の特徴量とを比較することで、類似度を算出してもよい。例えば、光学像情報や正解情報としてイメージデータを用いる場合には、照合部155は、画像処理により、特徴量を算出してから、類似度を算出してもよい。具体的には、例えば、光学像情報と正解情報中のイメージデータとの、画素値の差分の二乗和、画素値の差分の絶対値の和、正規化相互相関、画像均一度比、相互情報量、カルバック・ライブラー情報量などを類似度として用いることができる。また、光学像情報と正解情報に、例えば、回折スポット像や回折縞模様等を表すパラメータなどの非イメージデータを用いる場合には、これら非イメージデータを上記特徴量として、類似度の算出に用いることができる。具体的には、例えば、光学像情報と正解情報との特徴量の差や比、或いはこれらを変数とする関数などにより類似度を算出してもよい。
【0140】
撮影条件によっては取得する光学像情報に揺らぎが生じることが考えられるため、完全一致の場合にのみ細線パターンが真正品であるとの照合結果を生成すると、本来は一致しているにもかかわらず光学像情報と正解情報が一致しないという照合結果が出力される可能性がある。これに対して、上記のように類似度を用いることにより、光学像情報に揺らぎが生じるような場合においても、光学像情報と正解情報の一致性を適切に判断することができる。この際の、照合結果には、光学像情報と正解情報が一致又は不一致あるいはその類似度に関する情報が含まれていてもよい。またその他、製品特定情報を取得した日時に関する情報、製品特定情報を取得した端末100に関する情報をさらに含んでもよい。
【0141】
なお、照合部155による光学像情報と正解情報とを照合する処理は、細線パターンの真贋判定をすることを意味し、細線パターンの真贋判定をすることは、その細線パターンが付された照合対象製品の真贋判定をすることを意味する。また、生成された照合結果は照合対象製品の真贋判定結果を意味する。
【0142】
以上のような構成を有する端末100により、製品特定情報と光学像情報とを用いて、照合対象製品の真贋判定を行うことが可能となる。また、RFタグや二次元コードなどの照合対象製品に付されたシリアルコードが複製された場合であっても、細線パターンの真贋判定をすることにより、照合対象製品の真贋判定を行うことも可能となる。
【0143】
また、照合部155は、照合結果を、表示装置136に表示制御してもよく、サーバ400に送信してもよいし、照合用データ154に記憶してもよい。
【0144】
照合部155が照合結果をサーバ400に送信し、サーバ400の台帳管理部456が照合結果を台帳データ455に保存することで、各流通拠点の端末100から収集した照合結果に基づいて、メーカが照合対象製品を発送した段階から照合対象製品を追跡することが可能となり、流通過程全体において照合対象製品の真正性を保証することが可能となる。
【0145】
また、照合部155が照合結果を照合用データ154に記憶することで、照合処理毎に、サーバ400へ真贋判定結果を送信する必要がなくなり、サーバ400の通信障害や停電、自然災害などによるサーバ400の停止が起きても、真贋判定を実施することができ、真贋判定停止による商品流通の停滞を発生させることなく真正品の保証ができる。
【0146】
異常情報確認部156は、異常情報が入力されているか否かを確認する。異常情報が入力されている場合には、照射ステップ等の次のステップに進まない等の処理を行ってもよい。また異常情報が入力されている場合には、表示装置137に異常情報を表示してもよい。
【0147】
5.2.サーバ
サーバ400は、特に限定されないが、例えば、照合対象製品に付された細線パターンから得られる光学像に関する光学像情報を取得する他の情報処理装置(端末100)に対して、光学像の正解ラベルに関する正解情報を、送信する照合部と、正解情報と光学像情報とを照合した照合結果を、他の情報処理装置(端末100)から、受信する台帳管理部と、を含む。
【0148】
図11に、サーバ400の構成を示すブロック図を示す。サーバ400は、典型的には、1つ又は複数のプロセッサ410、通信インタフェース420、メモリ440、ストレージ450及びこれらの構成要素を相互接続するための1つ又は複数の通信バス460を含む。プロセッサ410、通信インタフェース420、メモリ440、ストレージ450、及び通信バス460については、上記プロセッサ110、通信インタフェース120、メモリ140、ストレージ150、及び通信バス160と同様の構成が例示される。
【0149】
また、サーバ400は入出力インタフェース430を含んでいてもよい。入出力インタフェース430は、キーボードやマウス、表示装置を含んでいてもよい。その他、入出力インタフェース430は、外付けの入出力インタフェースを接続することで、所定の入力を受け付け、また出力を行ってもよい。
【0150】
ストレージ450はプログラム及びデータ構造、又はそれらのサブセットを格納する。プロセッサ410は、ストレージ450に記憶されている各プログラムを読みだして実行することによって、図11に示すように、送受信部452、照合部454、及び台帳管理部456として機能するように構成されている。
【0151】
ここで、ストレージ450に格納されたプログラムは、特に限定されないが、例えば、サーバ400に、光学像の正解ラベルに関する正解情報を、端末100に対して送信する正解情報送信ステップと、正解情報と光学像情報とを照合した照合結果を、端末100から受信する照合結果受信ステップと、を実行させるものであってもよい。
【0152】
オペレーティングシステム451は、例えば、様々な基本的なシステムサービスを処理するとともにハードウェアを用いてタスクを実行するためのプロシージャを含む。
【0153】
送受信部452は、例えば、サーバ400を端末100等の他のコンピュータに、通信インタフェース420、及びインターネット、他の広域ネットワーク、ローカルエリアネットワーク、メトロポリタンエリアネットワークなどの1つ又は複数の通信ネットワークを介して接続するために使用される。
【0154】
正解データ453には、例えば、ある照合対象製品の製品特定情報と、その照合対象製品に付された細線パターンから取得できる光学像の正解ラベルと、が対応付けられて格納されている。ここで、正解データ453に格納される正解ラベルは、前述のとおり、イメージデータであってもよいし、非イメージデータであってもよいし、その両方であってもよい。
【0155】
図12に、正解データ453の一例を示す。図12(a)に示されるように、正解データ453には、例えば、「製品特定情報」、「光学像の種類」、及び「模様パラメータ」が対応付けられて格納されていてもよい。なお、正解データ453には、「光学像の種類」等に代えて、正解画像のイメージデータが格納されていてもよい。また、図12(b)に示されるように、正解データ453には、「製品特定情報」、「正解ラベルID」が対応付けられて格納されていてもよい。
【0156】
正解データ453において、製品特定情報と正解ラベルは、一対一対応してもよいが、図12(a)や(b)に示されるように、複数の製品特定情報のうち、2以上の製品特定情報に対して共通の正解ラベル(Type A)が設定されたものであってもよい。つまり、異なる照合対象製品に同一の正解ラベルが対応付けられた細線パターンが付されていてもよい。これにより、2以上の異なる製品特定情報に対して、同一の正解ラベルが対応付けられる。
【0157】
上記のように照合用データ154が複数の製品特定情報に対応する正解情報を予め記憶するとしても、流通する製品数は膨大であるため、端末100の記憶容量の制限を受けたり、照合部155が行う照合処理に時間を要したりすることが考えられる。この点、2以上の製品特定情報に対して共通の正解ラベルが設定されることにより、照合用データ154に記憶される正解情報のデータ量を低減することができ、また、正解ラベルの検索等に要する時間が短くなり照合処理の高速化を図ることができる。さらに、正解情報のデータ量を低減することに伴い、端末100とサーバ400の間でやり取りされるデータ量及び回数を低減することもできる。
【0158】
さらに、例えば、正解データ453として図13(a)に示すように製品特定情報と細線パターンの発行期間とを対応付けて記憶してもよい。この場合、例えば、図13(b)に示すように細線パターンの発行期間と、模様の種類及び模様パラメータと、を別途対応付けて記憶しておき、細線パターンの発行期間に対応する模様のパラメータ等を正解ラベルといて用いて照合処理を行ってもよい。
【0159】
これにより、所定の期間で発行された細線パターンは、所定の正解情報を有するものとして、照合処理を行うことができる。そのため、サーバ400から端末100への正解情報の送信を照合処理毎に行う必要はなく、その頻度を低減することができる。また、正解ラベルの検索等に要する時間が短くなり照合処理の高速化を図ることができる。
【0160】
また、正解データ453として、図14に示すデータでは、例えば、製品特定情報として、製品メーカID(MakerID00001…)が付されている。これにより、ある製品メーカの商品をまとめて端末100に通過させるような場合には、サーバ400から端末100への正解情報の送信を照合処理毎に行う必要はなく、その頻度を低減することができる。また、正解ラベルの検索等に要する時間が短くなり照合処理の高速化を図ることができる。
【0161】
照合部454は、照合対象製品に付された細線パターンから得られる光学像に関する光学像情報を取得する端末100に対して、光学像の正解ラベルに関する正解情報を送信する処理を実行する。
【0162】
正解情報の送信のタイミングは、特に限定されないが、例えば、照合部454は、照合処理毎に、端末100から製品特定情報を受信し、受信した製品特定情報に対応する正解情報を正解データ453から抽出し、その抽出した正解情報を端末100へ送信してもよい。また、照合部454が、全ての照合処理毎ではなく、端末100からある製品特定情報を受信し、その製品特定情報に対応する正解情報を端末100に送信する際に、その製品特定情報とは関係のない複数の製品特定情報に対応する正解情報も端末100へ送信してもよい。なお、全ての照合処理毎ではない上記態様を、以下「一部の照合処理毎に」ともいう。さらに、照合部454が、照合処理とは無関係に、定期的又は不定期に、複数の製品特定情報に対応する正解情報を正解データ453から抽出し、端末100へ送信してもよい。
【0163】
上述したとおり、照合部454が端末100へ送信する正解情報は、複数の製品特定情報と、該複数の製品特定情報に対応する光学像の正解ラベルに関する情報と、を含んでもよい。また、複数の製品特定情報のうち、2以上の製品特定情報に対して共通の正解ラベルが設定されたものであってもよい。
【0164】
台帳データ455は、製品特定情報と照合結果が対応付けられたデータであり、台帳データ455はその製品特定情報に付したフラグなど、製品特定情報ごとに任意の情報が含まれていてもよい。
【0165】
図15に、台帳データ455に含まれる所定の製品特定情報と、その照合対象製品が各端末を通過した時にその製品特定情報に対応付けられる情報の更新の一例を示す。「端末ID」は、本システムが端末100を一意に識別するための識別情報である。「日時」は、端末100が真贋判定を行った日時であり、「照合結果」は、端末100が行った真贋判定の結果である。
【0166】
図15に示すように、製品特定情報としては、出荷前は製品特定情報のみが記録されており、メーカから照合対象製品が搬出され端末100を通過した際には、その端末100の端末IDと、照合結果とその時間に関する情報が製品特定情報に対応付けて記録される。そして、流通業者の拠点に設置された端末100を通過した際には、その端末100の端末IDと、照合結果とその時間に関する情報が製品特定情報に対応付けて記録される。また、流通業者の拠点に設置された端末100を通過して搬出された際にも、その端末100の端末IDと、照合結果とその時間に関する情報が製品特定情報に対応付けて記録される。
【0167】
このように、台帳データ455に含まれる製品特定情報には、端末100を通過するごとに、端末ID、時間及び照合結果の情報のセットが追加されていく。そのため、製品特定情報に対応付けられた情報を参照することで、照合対象製品が通過した端末100の設置拠点とその通過日時、及び、判定結果を取得することができる。
【0168】
なお、図15では、製品特定情報に対して、端末ID等が順次対応付けられていくデータ形式を示したが、製品特定情報を管理するデータはこれに限られるものではなく、テーブル形式など任意のデータ形式で管理されてもよい。
【0169】
なお、上記では、正解データ453と、台帳データ455とを区別して説明したが、正解データ453は台帳データ455の一部であってもよい。この場合、例えば、台帳データ455の製品特定情報に、「PRODUCT00001(製品特定情報)-Type A(正解ラベルID)-」のように正解ラベルIDなどの非イメージデータを対応付けて記録するようにしてもよい。これにより、台帳データ455においても、ある照合対象製品の製品特定情報と、その照合対象製品に付された細線パターンから取得できる光学像の正解ラベルと、を対応付けて格納することができる。
【0170】
台帳管理部456は、正解情報と光学像情報とを照合した照合結果を、端末100から受信する処理を実行する。また、台帳管理部456は、端末100から受信した照合結果に基づいて、製品特定情報を管理する台帳データ455を更新する処理を実行してもよい。
【0171】
また、その他、台帳管理部456は、台帳データ455に記録された情報を送信したり、台帳データ455を更新したりする機能を有する。例えば、台帳管理部456は、端末100やクライアント端末などからの要求に応じて、台帳データ455を参照し、要求された流通情報のレポートを出力し、他の情報処理端末に送信してもよい。
【0172】
ここでいう「他の情報処理装置」とは、例えば、図7におけるメーカ、物流業者、販売業者が保有する任意の情報処理装置(以下、「クライアント端末」ともいう)が含まれる。ここで、クライアント端末は、照合対象製品の流通に関与する事業者が保有する端末であり、本システムにアクセス可能な端末以外の端末をいう。
【0173】
なお、本実施形態において、サーバ400は、単独で上記サービスを提供してもよいし、複数のサーバ400が共同して、上記サービスを提供してもよい。
【0174】
本実施形態において、端末100とサーバ400は、台帳データを記憶する分散型台帳(以下「ブロックチェーン」ともいう。)を構成する情報処理装置として機能してもよい。また、分散型台帳を構成する情報処理装置には、上記クライアント端末が含まれていてもよい。
【0175】
本実施形態では、台帳データを記憶する分散型台帳(ブロックチェーン)は、パブリック型、プライベート型、コンソーシアム型のいずれであってもよい。また、例えば、照合対象製品の流通に関与する事業者が管理するコンソーシアム型の場合においても、台帳データの管理においては、端末100、サーバ400、及びクライアント端末が同一の権限を有してもよいし、サーバ400が台帳データの管理の権限を有し、端末100及びクライアント端末が台帳データを参照する権限を有するようにしてもよい。なお、ここで「管理」には、分散型台帳の更新と認証が含まれ、更新と認証は別々の情報処理装置(サーバ400)で行ってもよい。
【0176】
以降においては、サーバ400のみが台帳データを記憶する分散型台帳の管理の権限を有する態様について記載するが、本実施形態のシステムはこれに限定されるものではない。例えば、サーバ400以外の情報処理装置(クライアント端末等)が分散型台帳の管理をする機能を有していてもよい。また、台帳データは分散型台帳に限定されるものではなく、一又は複数のサーバ400の記憶部に記憶されるデータベースの形式であってもよい。
【0177】
6.動作処理
本実施形態の端末100は、細線パターンと前記細線パターンよりも張付面側に位置する機能層とを有する偽造防止用透明積層体であって、前記機能層のインコヒーレント誘起性をΔP20%以上である偽造防止用透明積層体に対して光を照射する照射ステップと、前記細線パターンから反射された回折光がフーリエ変換レンズを通過することで光学像を結像し、該光学像を取得する撮像ステップと、前記光学像の正解ラベルに関する正解情報と、前記光学像に関する光学像情報と、を照合して、照合結果を生成する照合ステップと、を実行する。
【0178】
また、本実施形態のサーバ400は、照合対象製品に付された細線パターンから得られる光学像に関する光学像情報を取得する他の情報処理装置(端末100)に対して、前記光学像の正解ラベルに関する正解情報を、送信する正解情報送信ステップと、前記正解情報と、前記光学像情報とを、照合した照合結果を、前記他の情報処理装置(端末100)から受信する照合結果受信ステップと、を実行してもよい。
【0179】
以下、このように構成された本実施形態のシステムの動作処理について説明する。
【0180】
6.1.第1実施形態
図16には、照合処理毎に、サーバ400が端末100から製品特定情報を受信し、受信した製品特定情報に対応する正解情報を正解データ453から抽出し、その抽出した正解情報を端末100へ送信して、端末100が照合処理を実行する情報処理方法の処理シーケンスを示す(第1実施形態)。
【0181】
ステップS1001において、端末100の異常情報確認部156は、異常情報の有無を確認する。剥離された形跡が目視により確認される場合、あらかじめ端末100の異常情報入力装置136により異常情報が入力される。端末100の異常情報確認部156は、その照合結果を、端末100の表示装置に表示するよう制御してもよい(結果表示ステップ)。
【0182】
ステップS1002において、端末100の情報取得部153は、照射装置131、フーリエ変換レンズ132、及び撮像装置133を介して、照合対象製品に付された積層体300の細線パターンから光学像情報を取得し(光学像取得ステップ)、製品情報読取装置135を介して、照合対象製品に付された製品特定情報を取得する(製品情報取得ステップ)。この際、情報取得部153は、光学像情報を取得した端末100の端末IDとその取得日時を同時に取得するようにしてもよい。
【0183】
ステップS1003において、端末100の情報取得部153は、製品特定情報をサーバ400に送信するよう送受信部152に指示する。この際、情報取得部153は、製品特定情報を取得した端末100の端末IDとその取得日時を同時にサーバ400に送信するようにしてもよい。
【0184】
ステップS1004,S1005において、サーバ400の照合部454は、正解データ453を参照し、端末100から受信した製品特定情報に基づいて、正解情報を取得する。そして、照合部454は、特定した正解情報を、端末100に送信するよう送受信部452に指示する(正解情報送信ステップ)。
【0185】
この際、照合部454は、正解情報として、イメージデータに代えて非イメージデータを送信するようにしてもよいし、イメージデータと非イメージデータの両方を送信するようにしてもよい。非イメージデータを送信することにより、サーバ400から端末100が受信するデータ量を減らすことが可能となる。そのため、送受信するデータ量が大きいことにより発生する、照合処理の遅延を回避することができる。
【0186】
ステップS1006において、端末100の照合部155は、光学像情報と正解情報とを照合して、照合結果を生成する(照合ステップ)。この際、端末100が受信した正解情報が非イメージデータである場合には、端末100の照合部155は、正解情報をイメージデータへ変換、又は、光学像情報を非イメージデータに変換してから、上記照合処理をするようにしてもよい。
【0187】
ステップS1007において、端末100の照合部155は、照合結果をサーバ400に送信するよう送受信部152に指示する(照合結果送信ステップ,照合結果受信ステップ)。この際、照合部155は、照合結果を生成した端末100の端末IDとその生成日時を同時にサーバ400に送信するようにしてもよい。
【0188】
また、ステップS1007において、照合結果が正解情報と光学像情報が不一致であるというものである場合、端末100の照合部155は、その照合結果を、端末100の表示装置に表示するよう制御してもよい(結果表示ステップ)。
【0189】
ステップS1008において、サーバ400の台帳管理部456は、端末100から受信した照合結果に基づいて、台帳データ455を更新する(台帳更新ステップ)。より具体的には、台帳管理部456は、照合結果に基づいて、例えば、「G0011(端末ID)-T1001(日時)-True(照合結果)」を、台帳データ455に記録する。
【0190】
以上により、本実施形態に係るシステムは、照合対象製品の真贋判定を行うことができ、流通している照合対象製品が真正品であることを保証することができる。また、本システムによれば、各端末100を通過した対象製品の真贋に関する情報や、通過した場所や時間に関する物流情報を蓄積することも可能となる。
【0191】
6.2.第2実施形態
また、図17には、一部の照合処理毎に、又は、照合処理とは無関係に、定期的又は不定期に、サーバ400が製品特定情報と該製品特定情報に対応する正解情報を端末100へ送信し、端末100は予め受信した正解情報に基づいて、照合処理を実行する情報処理方法の処理シーケンスを示す(第2実施形態)。
【0192】
ステップS1101,S1102において、サーバ400の照合部454は、一部の照合処理毎に、又は、照合処理とは無関係に、定期的又は不定期に、正解情報を端末100へ送信し、端末100の照合部155は、受信した正解情報を照合用データ154に記憶する。
【0193】
この際、照合部454が端末100へ送信する正解情報は、複数の製品特定情報と、該複数の製品特定情報に対応する光学像の正解ラベルと、を含んでもよい。また、複数の製品特定情報のうち、2以上の製品特定情報に対して共通の正解ラベルが設定されたものであってもよい。
【0194】
また、照合部454は、正解ラベルとして、イメージデータに代えて非イメージデータを送信するようにしてもよいし、イメージデータと非イメージデータの両方を送信するようにしてもよい。非イメージデータを送信することにより、サーバ400から端末100が受信するデータ量を減らすことが可能となる。そのため、送受信するデータ量が重いことにより発生する、照合処理の遅延を回避することができる。
【0195】
その後、ステップS1103,S1104,S1105,S1106,S1107は、それぞれステップS1001,S1002,S1006,S1007,S1008と同様の処理を行うことができる。
【0196】
以上のように、正解情報の取得ステップ(S1101~S1102)と、確認ステップ(S1103)及び照合ステップ(S1104~S1107)とを切り離し、事前に正解情報を取得しておくことで、照合処理をより高速に実行できるほか、サーバの通信障害や停電、自然災害などによるサーバ停止等により、端末100とサーバ400とが一時的に通信不能となった場合でも、真贋判定を実施することができ、真贋判定停止による商品流通の停滞を発生させることなく、真正品の判定保証ができる。
【実施例0197】
以下、実施例により本実施形態をさらに具体的に説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。
【0198】
<インコヒーレント誘起性ΔP>
インコヒーレント誘起性ΔP(%)は、下記の式(1)から算出した。
ΔP=(P-P)/P×100 (1)
(式中、Pは、2枚の偏光板により測定する偏光度、Pは、前記2枚の偏光板に細線パターンよりも張付面側に位置する機能層を挟んで測定する偏光度である。)
(偏光度測定方法)
上述のP及びPに係る偏光度は、つぎのように測定した。
2枚の偏光板をその吸収軸方向が同一になるように重ね、平行位透過率(T)を測定する。つぎに2枚の偏光板をその吸収軸が直行するように重ね、直行位透過率(T)を測定する。式(2)から、偏光度(P)を求めた。
=100×〔(T-T)/(T+T)〕 (2)
つぎに、機能層のサンプルを2枚の偏光板の間に挟み、上記と同様に、サンプルを透過した場合の、平行位透過率(Tps)、直行位透過率(Tcs)を測定した。式(3)から、機能層透過後の偏光度(P)を求めた。
=100×〔(Tps-Tcs)/(Tps+Tcs)〕 (3)
つぎに、上述のP及びPから各サンプルのインコヒーレント誘起性ΔPを求めた。
各透過率は、分光光度計(株式会社島津製作所製UV-2200)を用いて635nmの波長で測定した。
細線パターンよりも張付面側に位置する機能層全体のインコヒーレント誘起性ΔPは、機能層全体で測定してもよいし、上述の方法により各層の偏光度(Psi)を求め、各層のPsi/100の総乗した値を機能層全体の偏光度(P)としてもよい。
【0199】
<ヘイズ測定方法>
JIS K 7136:2000に準拠して機能層のヘイズ(Hz)を測定した。
【0200】
<反射回折光の輝度値>
偽造防止用透明積層体を、白色紙(株式会社トーヨー製、反射率1.7%(@635nm))に機能層の張付面側から貼合し、波長635nmのレーザー光(COHERENT製 VHK LDモジュール635nm×0.95mW)を照射して、反射回折光の輝度値を測定した。反射回折光の輝度値は、カメラモジュールRaspberryPi Camera V2)で測定し、回折光が観察されない領域の輝度に対するS/N比として算出した。
【0201】
次に、偽造防止用透明積層体を、鏡面Siウェハー上にCrを50nm製膜し形成した鏡面反射体(反射率55%(@635nm))上に張付面側から貼合し、白色紙に貼合した場合と同様に反射回折光の輝度を測定した。前記鏡面反射体に貼合して得られた輝度値を前記白色紙に貼合して得られた輝度値で除し、輝度比を算出した。
【0202】
<可視光透過率測定方法>
JIS R83106に準拠して、機能層の波長400nmから波長780nmの透過率を測定し、各波長の比視感度の波長分布から得られる重価係数を乗じ、加重平均して求めた。
【0203】
<実施例1>
片面に易接着層が形成されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製、製品名コスモシャインA4160、フィルム厚50μm)をコア層として用いて、易接着層が形成されていない一方の面上に酸化ケイ素粒子2質量%、導電性の有機シラン化合物1質量%、2-プロパノール65質量%、1-ブタノール25質量%、水7質量%の組成物を塗布し、乾燥して、酸化ケイ素を含有した厚さ50nmの酸化ケイ素含有膜の第1最外層を形成して、透明基材を得た。
【0204】
次いで、粒子径21nmの酸化第一銅ナノ粒子20質量部と、分散剤(ビッグケミー社製、製品名:Disperbyk-145)4質量部と、界面活性剤(セイミケミカル社製、製品名:S-611)1質量部と、エタノール75質量部とを混合・分散し、酸化第一銅ナノ粒子の含有割合が20質量%のインクを調製した。
【0205】
そして、転写媒体表面にインクを塗布し、インクが塗布された転写媒体表面と導電性パターンの溝を有する版を対向させて、押圧、接触して、版の凸部表面に転写媒体表面上の一部のインクを転移させた。その後、残ったインクがコーティングされた転写媒体表面と透明基材とを対向させて、押圧、接触させ、透明基材の第1最外層の上に所望の導電性パターン状のインクを転写させた。次いで、NovaCentrix社製Pulseforge1300を用いて室温環境下で細線パターン状のインク(分散体塗布膜)をフラッシュランプアニールにより焼成した。形成した金属製細線パターンは、図1に示すメッシュパターンであり、線幅(W1)2μm、ピッチ(P1)60μmであった。
【0206】
次に、機能層の一部として、上記メッシュパターン上に、両面粘着層(DIC株式会社製、製品名:Exp.T544)をラミネートした。さらに、リンテック社製TPシールC(NT)VOID*を粘着層上に貼合し偽造防止用透明積層体を形成した。
【0207】
得られた偽造防止用透明積層体を白色紙(株式会社トーヨー製、反射率1.7%(@635nm))に張付面側から貼合し、反射回折光の輝度値を測定したところ、輝度値は50であった。
続いて、偽造防止用透明積層体を鏡面反射体(反射率55%(@635nm))に張付面側から貼合し、反射回折光の輝度を測定して、輝度値として341の値を得た。対象物の反射率による反射回折光の輝度値変化は、6.8倍であり、同一条件下での判定が可能であった。
【0208】
<実施例2>
機能層の一部として、厚さ1mmの薄膜射出成型により成形した透明ポリスチレンシート(株式会社光製)を貼合した以外は、実施例1と同様に偽造防止用透明積層体を作成し、両面粘着層(DIC株式会社製、製品名:Exp.T544)を介して白色紙又は鏡面反射体に貼合し、それぞれの輝度値とその輝度比を測定した。白色紙、鏡面反射体における輝度値は、各々50、275であり、対象物の反射率による反射回折光の輝度値変化は、5.5倍であり、同一条件下での判定が可能であった。薄膜射出成型により、微小領域でのレタデーションムラが大きくなっていると推定される。
【0209】
<実施例3>
機能層の一部として、リンテック社製TPシールC(M)を使用した以外は、実施例1と同様に偽造防止用透明積層体を作成し、白色紙と鏡面反射体の輝度値と各々の輝度比を測定した。白色紙、鏡面反射体における輝度値は、各々、49、292であり、対象物の反射率による反射回折光の輝度値変化は、5.9倍であり、同一条件下での測定が可能であった。
【0210】
<比較例1>
両面粘着層(DIC株式会社製、製品名:Exp.T544)上にリンテック社製TPシールC(NT)VOID*貼り付けなかったこと以外は、実施例1と同様に偽造防止用透明積層体を作成し、白色紙と鏡面反射体の輝度値と各々の輝度比を測定した。白色紙、鏡面反射体における輝度値は、各々、51、472であり、対象物の反射率により反射回折光の輝度値変化が大きく9.3倍であり、同一条件下での判定は困難であった。特に、鏡面反射体における輝度値が大きすぎるため、隣接する他の反射次数の回折点の観察が困難であった。
【0211】
<比較例2>
実施例3における、リンテック社製TPシールC(M)の代わりに、リンテック社製ボイドシールLTC01582クリアーを使用した以外は、実施例3と同様に偽造防止用透明積層体を作成し、白色紙と鏡面反射体の輝度値と各々の輝度比を測定した。白色紙、鏡面反射体における輝度値は、各々、50、425であり、対象物の反射率により反射回折光の輝度値変化が大きく8.4倍であり、同一条件下での判定は困難であった。特に、鏡面反射体における輝度値が大きすぎるため、隣接する他の反射次数の回折点の観察が困難であった。
【0212】
【表1】
【0213】
【表2】
【0214】
比較例1、2では、対象物の反射率の影響が大きく、同一条件での反射回折点の観察が著しく困難であったのに対し、実施例1、実施例2に示す、インコヒーレント誘起性を示す機能層を有する偽造防止用透明積層体においては、対象物の反射率の影響を抑制し、張り付ける対象物の表面の性状による影響を受けにくい、偽造防止用透明積層体が得られている。
【符号の説明】
【0215】
100…端末、110…プロセッサ、120…通信インタフェース、130…入出力インタフェース、131…照射装置、132…フーリエ変換レンズ、133…撮像装置、134…スクリーン、135…製品情報読取装置、136…異常情報入力装置、137…表示装置、140…メモリ、150…ストレージ、151…オペレーティングシステム、152…送受信部、153…情報取得部、154…照合用データ、155…照合部、156…異常情報確認部、160…通信バス、300…偽造防止用透明積層体、310…透明基材、320…細線、330…細線パターン、340…機能層、341…粘着層、342…インコヒーレント誘起層、343…透明支持体、344…パターン層、345…低弾性率層、346…高弾性率層、400…サーバ、410…プロセッサ、420…通信インタフェース、430…入出力インタフェース、440…メモリ、450…ストレージ、451…オペレーティングシステム、452…送受信部、453…正解データ、454…照合部、455…台帳データ、456…台帳管理部、460…通信バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17