(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044547
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B60L 15/20 20060101AFI20240326BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20240326BHJP
B60K 6/442 20071001ALI20240326BHJP
B60K 6/547 20071001ALI20240326BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20240326BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20240326BHJP
B60W 20/40 20160101ALI20240326BHJP
B60K 6/40 20071001ALI20240326BHJP
B60K 11/04 20060101ALI20240326BHJP
B60L 9/18 20060101ALN20240326BHJP
B60K 1/02 20060101ALN20240326BHJP
【FI】
B60L15/20 S ZHV
B60L50/16
B60K6/442
B60K6/547
B60W10/06 900
B60W10/08 900
B60W20/40
B60K6/40
B60K11/04 H
B60L9/18 P
B60K1/02
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150128
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】本荘 拓也
(72)【発明者】
【氏名】竹内 大裕
【テーマコード(参考)】
3D038
3D202
3D235
5H125
【Fターム(参考)】
3D038AA10
3D038AB01
3D038AC23
3D202AA02
3D202BB01
3D202BB11
3D202BB46
3D202EE00
3D202EE23
3D202FF02
3D202FF08
3D235AA02
3D235BB45
3D235CC12
3D235CC13
3D235CC15
3D235CC32
3D235CC42
3D235FF25
3D235FF32
3D235FF38
3D235HH02
3D235HH05
3D235HH32
3D235HH33
3D235HH36
5H125AA01
5H125AB01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA05
5H125CA02
5H125CA09
5H125CD06
5H125CD09
5H125EE05
5H125EE42
5H125EE52
5H125FF22
5H125FF23
5H125FF27
(57)【要約】
【課題】車輪を駆動する駆動ユニットの温度を適切な範囲でできるだけ高く維持可能な車両を提供すること。
【解決手段】制御装置ECUは、温調回路60の制御に関し、通常温度制御と、当該通常温度制御に比して主駆動ユニットDU1の温度が高くなるように制御する昇温制御とを実行可能に構成され、主駆動ユニットDU1を第1駆動モードにより駆動しているときであって、且つ昇温制御を実行しているときに、車両Vの状態に基づき、主駆動ユニットDU1の駆動モードを第1駆動モードに比して主駆動用モータMOT1からの出力が抑制される第2駆動モードに変更可能と判定した場合には、主駆動ユニットDU1の駆動モードを第2駆動モードに変更するとともに、昇温制御を継続し、第2駆動モードに変更不可と判定した場合には、主駆動ユニットDU1の駆動モードを第1駆動モードに維持するとともに、昇温制御を終了して通常温度制御を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1駆動用モータを含んで構成され、少なくとも前記第1駆動用モータの動力によって車輪を駆動可能な第1駆動ユニットと、
前記第1駆動ユニットの温調を行う温調回路と、
前記第1駆動ユニットと、前記温調回路とを制御可能な制御装置と、
を備える車両であって、
前記制御装置は、
第1駆動モードと、当該第1駆動モードに比して前記第1駆動用モータからの出力が抑制される第2駆動モードとを含む複数の駆動モードによって前記第1駆動ユニットを駆動可能に構成されるとともに、
前記温調回路の制御に関し、通常温度制御と、当該通常温度制御に比して前記第1駆動ユニットの温度が高くなるように制御する昇温制御とを実行可能に構成され、
前記第1駆動ユニットを前記第1駆動モードとしているときであって、且つ前記昇温制御を実行しているときに、前記車両の状態に基づき、前記第1駆動ユニットの駆動モードを前記第2駆動モードに変更可能であるか否かを判定し、
前記第2駆動モードに変更可能と判定した場合には、前記第1駆動ユニットの駆動モードを前記第2駆動モードに変更するとともに、前記昇温制御を継続し、
前記第2駆動モードに変更不可と判定した場合には、前記第1駆動ユニットの駆動モードを前記第1駆動モードに維持するとともに、前記昇温制御を終了して前記通常温度制御を実行する、
車両。
【請求項2】
請求項1に記載の車両であって、
前記制御装置は、前記車両の状態として、前記車両の走行速度に基づき、前記第2駆動モードに変更可能であるか否かを判定する、
車両。
【請求項3】
請求項1に記載の車両であって、
前記制御装置は、前記車両の状態として、前記車両の走行に要求される要求駆動力に基づき、前記第2駆動モードに変更可能であるか否かを判定する、
車両。
【請求項4】
請求項1に記載の車両であって、
前記第1駆動ユニットは、エンジンをさらに含んで構成され、前記第1駆動用モータ及び前記エンジンのそれぞれの動力によって前記車輪を駆動可能であり、
前記第1駆動モードは、前記第1駆動用モータ及び前記エンジンのうち、前記第1駆動用モータのみの動力によって前記車輪を駆動する駆動モードであり、
前記第2駆動モードは、前記第1駆動用モータ及び前記エンジンのうち、少なくとも前記エンジンの動力によって前記車輪を駆動する駆動モードである、
車両。
【請求項5】
請求項1に記載の車両であって、
前記第1駆動ユニットは、前記車輪として、前輪及び後輪のうちの一方を駆動可能であり、
前記車両は、
第2駆動用モータを含んで構成され、前記第2駆動用モータの動力によって前記前輪及び前記後輪のうちの他方を駆動可能な第2駆動ユニットをさらに備え、
前記制御装置は、
前記第2駆動ユニットをさらに制御可能であり、
前記第1駆動ユニットの駆動モードを前記第2駆動モードに変更した場合に、前記第1駆動モードに比して前記第1駆動用モータからの出力が抑制される分だけ前記第2駆動用モータからの出力を増加させる、
車両。
【請求項6】
請求項5に記載の車両であって、
前記制御装置は、前記第2駆動用モータの温度が所定値未満であることを条件に、前記第1駆動ユニットの駆動モードを前記第2駆動モードに変更可能と判定する、
車両。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の車両であって、
前記車両は、
前記温調回路としての第1温調回路と、
前記車両が備える電力変換装置の温調を行う第2温調回路と、
前記第1温調回路を循環する第1温調媒体と、前記第2温調回路を循環する第2温調媒体との間の熱交換を行う熱交換器と、
をさらに備え、
前記第2温調回路は、
前記第2温調媒体と外気との間の熱交換を行うラジエータと、
前記熱交換器を迂回する前記第2温調媒体の第1分岐流路と、
前記熱交換器を通る前記第2温調媒体の第2分岐流路と、
前記第2温調媒体の前記第2分岐流路への流量を調整する流量調整弁と、
を備え、
前記制御装置は、
前記第2温調回路をさらに制御可能であり、
前記通常温度制御では、前記昇温制御に比して、前記第2分岐流路への流量が多くなるように前記流量調整弁を制御する、
車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球の気候変動に対する具体的な対策として、低炭素社会又は脱炭素社会の実現に向けた取り組みが活発化している。自動車等の車両においても、CO2排出量の削減やエネルギー効率の改善が要求され、駆動源の電動化が進んでいる。具体的には、駆動輪を駆動する駆動源としてのモータ(「トラクションモータ」とも称される)と、このモータに電力を供給する電源(例えばバッテリ)とを備える車両(以下、「電動車両」とも称する)が開発されている。
【0003】
一般的に、電動車両には、駆動源としてのモータの温調を行う温調システムが搭載される。例えば、下記特許文献1には、車両の動力源となる電動機へオイルを圧送する機械式オイルポンプを有するオイル回路と、電動機に接続されたインバータを冷却するための冷却水を吐出する電動ウォータポンプを有するインバータ冷却回路と、オイルと冷却水との間で熱交換を行う熱交換器と、電動ウォータポンプの出力を制御する制御部とを備える車両用冷却装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
モータを含む駆動ユニットの温度が低いと、駆動ユニットの潤滑を行うオイルの温度も低くなり、駆動ユニットにおけるフリクションロスが増大する。その一方で、駆動ユニットの温度が高くなり過ぎると、駆動ユニットの破損につながる。したがって、駆動ユニットの温度は適切な範囲でできるだけ高く維持することが望まれるが、従来技術にあってはこの点に改善の余地があった。
【0006】
本発明は、車輪を駆動する駆動ユニットの温度を適切な範囲でできるだけ高く維持可能な車両を提供する。そして、延いてはエネルギー効率の改善に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
第1駆動用モータを含んで構成され、少なくとも前記第1駆動用モータの動力によって車輪を駆動可能な第1駆動ユニットと、
前記第1駆動ユニットの温調を行う温調回路と、
前記第1駆動ユニットと、前記温調回路とを制御可能な制御装置と、
を備える車両であって、
前記制御装置は、
第1駆動モードと、当該第1駆動モードに比して前記第1駆動用モータからの出力が抑制される第2駆動モードとを含む複数の駆動モードによって前記第1駆動ユニットを駆動可能に構成されるとともに、
前記温調回路の制御に関し、通常温度制御と、当該通常温度制御に比して前記第1駆動ユニットの温度が高くなるように制御する昇温制御とを実行可能に構成され、
前記第1駆動ユニットを前記第1駆動モードとしているときであって、且つ前記昇温制御を実行しているときに、前記車両の状態に基づき、前記第1駆動ユニットの駆動モードを前記第2駆動モードに変更可能であるか否かを判定し、
前記第2駆動モードに変更可能と判定した場合には、前記第1駆動ユニットの駆動モードを前記第2駆動モードに変更するとともに、前記昇温制御を継続し、
前記第2駆動モードに変更不可と判定した場合には、前記第1駆動ユニットの駆動モードを前記第1駆動モードに維持するとともに、前記昇温制御を終了して前記通常温度制御を実行する、
車両である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車輪を駆動する駆動ユニットの温度を適切な範囲でできるだけ高く維持可能な車両を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の車両の一実施形態である車両Vの概略構成の一例を示す図である。
【
図2】主駆動ユニットDU1及び電力変換装置PCUの概略構成の一例を示す図である。
【
図3】従駆動ユニットDU2の概略構成の一例を示す図である。
【
図4】温調回路60の概略構成の一例を示す図である。
【
図5】主駆動ユニットDU1がとり得る駆動モードの一例を示す図である。
【
図6】制御装置ECUが実行する処理の一例を示すフローチャート(その1)である。
【
図7】制御装置ECUが実行する処理の一例を示すフローチャート(その2)である。
【
図8】制御装置ECUが実行する処理の一例を示すフローチャート(その3)である。
【
図9】制御装置ECUが実行する処理の他の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の車両の一実施形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図面は、符号の向きに見るものとする。また、以下では、同一または類似の要素には同一または類似の符号を付して、その説明を適宜省略または簡略化することがある。
【0011】
[車両]
図1は、本発明の車両の一実施形態である車両Vの概略構成の一例を示す図である。
図1において、太実線は機械連結を示し、破線は電気配線を示し、実線矢印は制御信号または検出信号を示す。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の車両Vは、機械的に独立した主駆動ユニットDU1と従駆動ユニットDU2とを備える。ここで「機械的に独立した」とは、プロペラシャフト等により一方の動力が機械的に他方に伝達されないことを意味する。
【0013】
主駆動ユニットDU1は、第1駆動モータの一例である主駆動用モータMOT1を含んで構成され、少なくとも主駆動用モータMOT1の動力によって車両Vの前輪FWRを駆動可能に構成される。また、主駆動ユニットDU1は、車両Vが備える温調回路60(例えば後述の第1温調回路61)によって温調(例えば冷却)される。
【0014】
従駆動ユニットDU2は、第2駆動モータの一例である従駆動用モータMOT2を含んで構成され、従駆動用モータMOT2の動力によって車両Vの後輪RWRを駆動可能に構成される。例えば、従駆動ユニットDU2は、外気によって冷却される空冷式とされる。これにより、簡易な構成によって従駆動ユニットDU2を冷却することが可能となる。
【0015】
このように、主駆動ユニットDU1及び従駆動ユニットDU2を備える車両Vは、前輪FWR及び後輪RWRの双方を駆動可能に構成された、いわゆる「四輪駆動車両」となっている。なお、主駆動ユニットDU1は第1駆動ユニットの一例であり、従駆動ユニットDU2は第2駆動ユニットの一例である。
【0016】
なお、本実施形態では、主駆動ユニットDU1を車両Vにおける主要な駆動源、従駆動ユニットDU2を補助的な駆動源とそれぞれ位置付けて、主駆動ユニットDU1の主駆動用モータMOT1(後述)としては体格が比較的大きいモータを採用し、従駆動ユニットDU2の従駆動用モータMOT2(後述)としては主駆動用モータMOT1に比べて体格が小さいモータを採用する。
【0017】
また、車両Vは、バッテリBATと、電力変換装置PCUと、各種センサSNSRと、制御装置ECUとをさらに備える。
【0018】
バッテリBATは、充放電可能な二次電池であり、直列または直並列に接続された複数の蓄電セルを有し、例えば100~400[V]といった高電圧を出力可能に構成される。バッテリBATの蓄電セルとしては、リチウムイオン電池(固体電解質を用いた、いわゆる「全固体電池」を含む)や、ニッケル水素電池等を用いることができる。
【0019】
電力変換装置PCUは、主駆動ユニットDU1(例えば主駆動用モータMOT1)とバッテリBATとの間、及び、従駆動ユニットDU2(例えば従駆動用モータMOT2)とバッテリBATとの間で授受される電力の変換を行う装置である。また、電力変換装置PCUは、主駆動ユニットDU1(例えば後述のジェネレータGEN)と従駆動ユニットDU2(例えば従駆動用モータMOT2)との間で授受される電力の変換を行ってもよい。電力変換装置PCUの詳細については後述するため、ここでの説明を省略する。
【0020】
各種センサSNSRは、車両Vに関する情報(以下、「車両情報」とも称する)を取得するためのセンサである。例えば、各種センサSNSRには、車両Vの走行速度(以下、「車速」とも称する)を検出する車速センサ、アクセルペダルに対する操作量(以下、「AP開度」とも称する)を検出するアクセルペダルセンサ、車両Vの各部(例えば主駆動用モータMOT1)の温度を検出する温度センサ(例えば後述の主駆動用モータ温度センサ61b)等が含まれる。各種センサSNSRによる検出結果は、検出信号として制御装置ECUへ送られる。
【0021】
制御装置ECUは、車両V全体を統括制御する装置(コンピュータ)である。制御装置ECUは、例えば、各種センサSNSRによって取得された車両情報に基づき、電力変換装置PCU、主駆動ユニットDU1、従駆動ユニットDU2、及び温調回路60を制御する。制御装置ECUによる具体的な制御の一例については後述するため、ここでの説明を省略する。
【0022】
制御装置ECUは、例えば、各種演算を行うプロセッサ、各種情報を記憶する非一過性の記憶媒体を有する記憶装置、制御装置ECUの内部と外部とのデータの入出力を制御する入出力装置等を備えるECU(Electronic Control Unit)によって実現される。なお、制御装置ECUは、1つのECUによって実現されてもよいし、複数のECUが協働することによって実現されてもよい。
【0023】
[電力変換装置]
図2は、主駆動ユニットDU1及び電力変換装置PCUの概略構成の一例を示す図である。
図2に示すように、電力変換装置PCUは、電圧制御部VCUと、第1インバータINV1と、第2インバータINV2と、第3インバータINV3とを含んで構成される。
【0024】
電圧制御部VCUは、入力された電圧を所定の電圧に変換して出力する機能を有する。例えば、電圧制御部VCUにはバッテリBATの出力電圧が入力され、電圧制御部VCUは、バッテリBATの出力電圧を昇圧することにより得られた電圧である昇圧電圧を出力する。
【0025】
電圧制御部VCUから出力された昇圧電圧は、第2インバータINV2を介して主駆動用モータMOT1に供給され得る。さらに、昇圧電圧は、第3インバータINV3を介して従駆動用モータMOT2に供給され得る。すなわち、車両Vでは、単一の電圧制御部VCUによって生成された昇圧電圧が主駆動用モータMOT1及び従駆動用モータMOT2のそれぞれに対して共通して供給され得る。
【0026】
また、電圧制御部VCUは、第1インバータINV1、第2インバータINV2、または第3インバータINV3を介して入力された電圧を降圧して、バッテリBATへ出力してもよい。すなわち、電圧制御部VCUは、バッテリBATに入力(すなわち充電)される入力電圧を降圧してもよい。電圧制御部VCUは、例えばDC-DCコンバータによって実現される。
【0027】
第1インバータINV1、第2インバータINV2、及び第3インバータINV3は、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)やMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)等のスイッチング素子(不図示)を複数有し、これら複数のスイッチング素子のスイッチングによって、直流を交流に変換したり、交流を直流に変換したりする機能を有する。
【0028】
例えば、第1インバータINV1には、主駆動ユニットDU1のジェネレータGEN(後述)によって発電された電力(交流)が入力され得る。この場合、第1インバータINV1は、ジェネレータGENから受け付けた交流を直流に変換して、電圧制御部VCU、第2インバータINV2、及び第3インバータINV3の一部または全部へ出力する。
【0029】
第2インバータINV2には、電圧制御部VCUを介して受け付けたバッテリBATの電力(直流)、または第1インバータINV1を介して受け付けたジェネレータGENの電力(直流)が入力され得る。この場合、第2インバータINV2は、バッテリBATまたはジェネレータGENから受け付けた直流を交流に変換して、主駆動ユニットDU1の主駆動用モータMOT1へ出力(すなわち供給)する。また、第2インバータINV2は、主駆動用モータMOT1によって回生発電が行われた場合に、主駆動用モータMOT1から受け付けた電力(交流)を直流に変換して、電圧制御部VCU等へ出力してもよい。
【0030】
第3インバータINV3には、電圧制御部VCUを介して受け付けたバッテリBATの電力(直流)、または第1インバータINV1を介して受け付けたジェネレータGENの電力(直流)が入力され得る。この場合、第3インバータINV3は、バッテリBATまたはジェネレータGENから受け付けた直流を交流に変換して、従駆動ユニットDU2の従駆動用モータMOT2へ出力(すなわち供給)する(
図3も参照)。また、第3インバータINV3は、従駆動用モータMOT2によって回生発電が行われた場合に、従駆動用モータMOT2から受け付けた電力(交流)を直流に変換して、電圧制御部VCU等へ出力してもよい。
【0031】
[主駆動ユニット]
図2に示すように、主駆動ユニットDU1は、エンジンENGと、ジェネレータGENと、主駆動用モータMOT1と、第1変速機構T1と、これらジェネレータGEN、主駆動用モータMOT1、及び第1変速機構T1を収容するケース11と、を含んで構成される。エンジンENGとしては、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等を用いることができる。ジェネレータGENや主駆動用モータMOT1としては、例えば三相式の交流モータを用いることができる。
【0032】
ケース11には、軸方向に沿ってエンジンENG側から、第1変速機構T1を収容する変速機収容室11aと、主駆動用モータMOT1及びジェネレータGENを収容するモータ収容室11bとが設けられる。
【0033】
変速機収容室11aには、互いに平行に配置された入力軸13、ジェネレータ軸15、モータ軸17、及びカウンタ軸19と、第1デファレンシャル機構D1とが収容される。
【0034】
入力軸13は、エンジンENGのクランク軸12と同軸上に並べて配置される。クランク軸12の回転力は、例えば、不図示のダンパを介して入力軸13に伝達される。入力軸13には、ジェネレータ用ギヤ列Ggを構成するジェネレータドライブギヤ21が設けられる。
【0035】
さらに、入力軸13には、ジェネレータドライブギヤ21に対し、エンジン側に第1クラッチCL1を介して低速側エンジン用ギヤ列GLoを構成する低速側ドライブギヤ23が設けられ、エンジン側とは反対側(以下、「モータ側」とも称する)に高速側エンジン用ギヤ列GHiを構成する高速側ドライブギヤ25が設けられる。第1クラッチCL1は、入力軸13と低速側ドライブギヤ23とを係脱可能に連結するための油圧クラッチであり、いわゆる多板式の摩擦型クラッチである。
【0036】
ジェネレータ軸15には、ジェネレータドライブギヤ21と噛合するジェネレータドリブンギヤ27が設けられる。入力軸13のジェネレータドライブギヤ21とジェネレータ軸15のジェネレータドリブンギヤ27とで、入力軸13の回転をジェネレータ軸15に伝達するためのジェネレータ用ギヤ列Ggが構成される。ジェネレータ軸15のモータ側には、ジェネレータGENが配置される。ジェネレータGENは、ジェネレータ軸15に固定されたロータRと、ケース11に固定されてロータRの外径側に対向配置されたステータSと、を備えて構成される。
【0037】
入力軸13の回転がジェネレータ用ギヤ列Ggを介してジェネレータ軸15に伝達されることで、ジェネレータ軸15の回転でジェネレータGENのロータRが回転する。これにより、エンジンENGの駆動時には、入力軸13から入力されたエンジンENGの動力をジェネレータGENで電力に変換することができる。
【0038】
モータ軸17には、モータ用ギヤ列Gmを構成するモータドライブギヤ29が設けられる。また、モータ軸17には、モータドライブギヤ29よりもモータ側に、主駆動用モータMOT1が配置される。主駆動用モータMOT1は、モータ軸17に固定されたロータRと、ケース11に固定されてロータRの外径側に対向配置されたステータSと、を備えて構成される。
【0039】
カウンタ軸19には、エンジン側から順に、低速側ドライブギヤ23と噛合する低速側ドリブンギヤ31と、第1デファレンシャル機構D1のリングギヤ39と噛合する出力ギヤ33と、第2クラッチCL2を介して入力軸13の高速側ドライブギヤ25と噛合する高速側ドリブンギヤ35と、モータ軸17のモータドライブギヤ29と噛合するモータドリブンギヤ37とが設けられる。第2クラッチCL2は、カウンタ軸19と高速側ドリブンギヤ35とを係脱可能に連結するための油圧クラッチであり、いわゆる多板式の摩擦型クラッチである。
【0040】
入力軸13の低速側ドライブギヤ23とカウンタ軸19の低速側ドリブンギヤ31とで、入力軸13の回転をカウンタ軸19に伝達するための低速側エンジン用ギヤ列GLoが構成される。また、入力軸13の高速側ドライブギヤ25とカウンタ軸19の高速側ドリブンギヤ35とで、入力軸13の回転をカウンタ軸19に伝達するための高速側エンジン用ギヤ列GHiが構成される。ここで、低速側ドライブギヤ23と低速側ドリブンギヤ31とを含む低速側エンジン用ギヤ列GLoは、高速側ドライブギヤ25と高速側ドリブンギヤ35とを含む高速側エンジン用ギヤ列GHiよりも減速比が大きい。
【0041】
したがって、エンジンENGの駆動時に第1クラッチCL1を締結し且つ第2クラッチCL2を解放することで、エンジンENGの動力が大きい減速比で低速側エンジン用ギヤ列GLoを介してカウンタ軸19に伝達される。一方、エンジンENGの駆動時に第1クラッチCL1を解放し且つ第2クラッチCL2を締結することで、エンジンENGの動力が小さい減速比で高速側エンジン用ギヤ列GHiを介してカウンタ軸19に伝達される。なお、第1クラッチCL1及び第2クラッチCL2が同時に締結されることはない。
【0042】
また、モータ軸17のモータドライブギヤ29とカウンタ軸19のモータドリブンギヤ37とで、モータ軸17の回転をカウンタ軸19に伝達するためのモータ用ギヤ列Gmが構成される。主駆動用モータMOT1のロータRが回転すると、モータ軸17の回転がモータ用ギヤ列Gmを介してカウンタ軸19に伝達される。これにより、主駆動用モータMOT1の駆動時には、主駆動用モータMOT1の動力がモータ用ギヤ列Gmを介してカウンタ軸19に伝達される。
【0043】
また、カウンタ軸19の出力ギヤ33と第1デファレンシャル機構D1のリングギヤ39とで、カウンタ軸19の回転を第1デファレンシャル機構D1へ伝達するためのファイナルギヤ列Gfが構成される。したがって、モータ用ギヤ列Gmを介してカウンタ軸19に入力された主駆動用モータMOT1の動力、低速側エンジン用ギヤ列GLoを介してカウンタ軸19に入力されたエンジンENGの動力、及び高速側エンジン用ギヤ列GHiを介してカウンタ軸19に入力されたエンジンENGの動力は、ファイナルギヤ列Gfを介して第1デファレンシャル機構D1に伝達され、第1デファレンシャル機構D1から車軸DSに伝達される。これにより、車軸DSの両端に設けられた一対の前輪FWRを介して、車両Vが走行するための駆動力が出力される。
【0044】
このように構成された主駆動ユニットDU1は、主駆動用モータMOT1の動力を車軸DS(すなわち前輪FWR)に伝達させる動力伝達経路と、エンジンENGの動力を車軸DSに伝達させる低速側の動力伝達経路と、エンジンENGの動力を車軸DSに伝達させる高速側の動力伝達経路と、を有する。なお、主駆動ユニットDU1における低速側の動力伝達経路と高速側の動力伝達経路とのうちの一方を省略することも可能である。
【0045】
[従駆動ユニット]
図3は、従駆動ユニットDU2の概略構成の一例を示す図である。
図3に示すように、従駆動ユニットDU2は、従駆動用モータMOT2と、第2変速機構T2とを含んで構成される。
【0046】
第2変速機構T2は、互いに平行に配置されたモータ出力軸41及び出力軸43と、第2デファレンシャル機構D2とを備える。
【0047】
従駆動ユニットDU2は、従駆動用モータMOT2のモータ出力軸41の一端に駆動ギヤ45が一体回転するように取り付けられており、従駆動用モータMOT2のモータ出力軸41と平行に延びる出力軸43に駆動ギヤ45と噛合する従動ギヤ47と、出力ギヤ49とが出力軸43と一体回転するように取り付けられている。
【0048】
したがって、従駆動用モータMOT2の駆動力が駆動ギヤ45、従動ギヤ47を介して出力軸43に伝達され、出力軸43に伝達された駆動力が、出力ギヤ49から第2デファレンシャル機構D2を経由して後輪RWRに伝達され、反対に、後輪RWRからの駆動力が、第2デファレンシャル機構D2、出力ギヤ49、出力軸43、従動ギヤ47、駆動ギヤ45、モータ出力軸41を経由して従駆動用モータMOT2に伝達される。
【0049】
[温調回路]
図4は、温調回路60の概略構成の一例を示す図である。
図4に示すように、温調回路60は、第1温調回路61と、第2温調回路62と、熱交換器63とを含んで構成される。
【0050】
第1温調回路61は、非導電性の第1温調媒体TCM1が循環し、主駆動用モータMOT1、ジェネレータGEN、及び第1変速機構T1(すなわち主駆動ユニットDU1)の温調を行う。第1温調回路61によって温調される主駆動用モータMOT1には、主駆動用モータMOT1の温度を検出する主駆動用モータ温度センサ61bが設けられる。主駆動用モータ温度センサ61bは、主駆動用モータMOT1の温度の検出値を示す検出信号を制御装置ECUへ出力する。これにより、制御装置ECUは、主駆動用モータMOT1の温度を取得可能である。
【0051】
第2温調回路62は、導電性の第2温調媒体TCM2が循環し、電力変換装置PCUの温調を行う。第2温調回路62によって温調される電力変換装置PCUには、電力変換装置PCUの温度を検出する電力変換装置温度センサ62bが設けられる。電力変換装置温度センサ62bは、電力変換装置PCUの温度の検出値を示す検出信号を制御装置ECUへ出力する。これにより、制御装置ECUは、電力変換装置PCUの温度を取得可能である。
【0052】
熱交換器63は、第1温調回路61を循環する第1温調媒体TCM1と、第2温調回路62を循環する第2温調媒体TCM2との間で熱交換を行う。第1温調媒体TCM1としては、例えば、ATF(Automatic Transmission Fluid)と呼ばれる、主駆動用モータMOT1、ジェネレータGEN、及び第1変速機構T1の潤滑と温調を行うオイルが用いられる。一方、第2温調媒体TCM2としては、例えば、LLC(Long Life Coolant)と呼ばれる冷却水が用いられる。
【0053】
第1温調回路61には、第1ポンプ611と、貯留部612とが設けられる。第1ポンプ611は、エンジンENGの動力と、車両Vの車軸DSの回転力とによって駆動し、第1温調媒体TCM1を圧送する機械式ポンプである。貯留部612は、第1温調回路61を循環する第1温調媒体TCM1を貯留する。貯留部612は、例えば、主駆動用モータMOT1、ジェネレータGEN、及び第1変速機構T1を収容する不図示のハウジングの底部に設けられたオイルパンである。
【0054】
また、第1温調回路61は、第1ポンプ611が設けられた圧送流路610aと、主駆動用モータMOT1及びジェネレータGENが設けられた第1分岐流路610b1と、第1変速機構T1が設けられた第2分岐流路610b2と、第1分岐流路610b1または第2分岐流路610b2に分岐する分岐部613と、を有する。
【0055】
圧送流路610aは、上流側の端部が貯留部612に接続され、第1ポンプ611を通って、下流側の端部が分岐部613に接続される。第1分岐流路610b1は、上流側の端部が分岐部613に接続され、主駆動用モータMOT1及びジェネレータGENを通って、下流側の端部が貯留部612に接続される。第2分岐流路610b2は、上流側の端部が分岐部613に接続され、第1変速機構T1を通って、下流側の端部が貯留部612に接続される。
【0056】
第1温調回路61において、熱交換器63は、第1分岐流路610b1における主駆動用モータMOT1及びジェネレータGENよりも上流に配置される。したがって、第1温調回路61には、第1ポンプ611から圧送された第1温調媒体TCM1が、(i)分岐部613から第1分岐流路610b1を通って、熱交換器63で第2温調媒体TCM2と熱交換することによって冷却され、主駆動用モータMOT1及びジェネレータGENに供給されて主駆動用モータMOT1及びジェネレータGENを潤滑・温調した後、貯留部612に貯留する第1の流路と、(ii)分岐部613から第2分岐流路610b2を通って、第1変速機構T1に供給されて第1変速機構T1を潤滑・温調した後、貯留部612に貯留する第2の流路と、が並列に形成され、貯留部612に貯留した第1温調媒体TCM1が圧送流路610aを流れて第1ポンプ611に供給されて、第1温調媒体TCM1が第1温調回路61を循環する。
【0057】
なお、本実施形態では、第1分岐流路610b1及び第2分岐流路610b2は、第1分岐流路610b1を流れる第1温調媒体TCM1の流量が、第2分岐流路610b2を流れる第1温調媒体TCM1の流量よりも大きくなるように形成されているものとする。
【0058】
第1温調回路61には、第1温調回路61を循環する第1温調媒体TCM1の温度を検出する第1温調回路温度センサ61aが設けられる。本実施形態では、第1温調回路温度センサ61aは、オイルパンである貯留部612に設けられており、貯留部612に貯留する第1温調媒体TCM1の温度を検出する。第1温調回路温度センサ61aは、貯留部612に貯留する第1温調媒体TCM1の温度の検出値を示す検出信号を制御装置ECUへ出力する。これにより、制御装置ECUは、貯留部612に貯留する第1温調媒体TCM1の温度を取得可能である。
【0059】
また、第1温調回路61は、調圧バルブ619が設けられた調圧回路610cをさらに有する。調圧回路610cは、上流側の端部が貯留部612に接続され、下流側の端部が第1ポンプ611より下流側で圧送流路610aに接続される。調圧バルブ619は、逆止弁であってもよいし、ソレノイドバルブ等の電磁弁であってもよい。第1ポンプ611から圧送される第1温調媒体TCM1の液圧が所定圧以上となると調圧バルブ619は開状態となり、第1ポンプ611から圧送される第1温調媒体TCM1の一部が貯留部612に戻される。これにより、第1分岐流路610b1及び第2分岐流路610b2を流れる第1温調媒体TCM1の液圧は、所定圧以下に保持される。
【0060】
第2温調回路62には、第2ポンプ621と、ラジエータ622と、貯留タンク623とが設けられる。第2ポンプ621は、例えば、バッテリBATの電力、またはジェネレータGENによって発電された電力によって駆動し、第2温調媒体TCM2を圧送する電動式ポンプであり、制御装置ECUによって制御される。
【0061】
また、第2ポンプ621には、第2ポンプ621の回転速度を検出する回転速度センサ621aが取り付けられている。回転速度センサ621aは、第2ポンプ621の回転速度の検出値を示す検出信号を制御装置ECUへ出力する。制御装置ECUは、回転速度センサ621aの検出値、すなわち第2ポンプ621の回転速度に基づき、第2ポンプ621の流量を推定可能である。
【0062】
ラジエータ622は、車両Vの前部に配置されており、車両Vの走行時における走行風によって、第2温調媒体TCM2を冷却する放熱装置である。貯留タンク623は、第2温調回路62を循環する第2温調媒体TCM2を一時的に貯留するタンクである。第2温調回路62を循環する第2温調媒体TCM2にキャビテーションが発生した場合でも、第2温調回路62を循環する第2温調媒体TCM2が貯留タンク623で一時的に貯留されることによって、第2温調媒体TCM2に発生したキャビテーションは消滅する。
【0063】
第2温調回路62は、分岐部624及び合流部625を有する。第2温調回路62は、貯留タンク623、第2ポンプ621、及びラジエータ622が、上流側からこの順に設けられる。また、第2温調回路62は、圧送流路620aをさらに有する。圧送流路620aは、上流側の端部が合流部625に接続され、貯留タンク623、第2ポンプ621、及びラジエータ622を通って、下流側の端部が分岐部624に接続される。貯留タンク623に貯留された第2温調媒体TCM2は、圧送流路620aを通って第2ポンプ621で圧送され、ラジエータ622で冷却される。
【0064】
また、第2温調回路62は、電力変換装置PCUが設けられた第1分岐流路620b1と、第1分岐流路620b1に並列に設けられ且つ熱交換器63が設けられた第2分岐流路620b2と、をさらに有する。
【0065】
具体的に説明すると、第1分岐流路620b1は、上流側の端部が分岐部624に接続され、電力変換装置PCUを通って、下流側の端部が合流部625に接続される。第2分岐流路620b2は、上流側の端部が分岐部624に接続され、熱交換器63を通って、下流側の端部が合流部625に接続される。
【0066】
本実施形態では、第2分岐流路620b2における熱交換器63よりも上流部分に、第2分岐流路620b2を流れる第2温調媒体TCM2の流量(換言すると、第1分岐流路620b1を流れる第2温調媒体TCM2の流量)を調整する流量調整弁としてのバルブ装置626が設けられている。
【0067】
本実施形態では、バルブ装置626をON-OFFバルブとする。すなわち、バルブ装置626は、開放時には第2分岐流路620b2を全開状態とする一方、閉鎖時には第2分岐流路620b2を全閉状態とする。なお、バルブ装置626は、ON-OFFバルブに限られず、第2分岐流路620b2を流れる第2温調媒体TCM2の流量を調節可能な可変流量バルブであってもよい。バルブ装置626は、制御装置ECUによって制御される。
【0068】
圧送流路620aにおいて第2ポンプ621で圧送されてラジエータ622で冷却された第2温調媒体TCM2は、分岐部624で第1分岐流路620b1と第2分岐流路620b2とに分岐する。第1分岐流路620b1を流れる第2温調媒体TCM2は、電力変換装置PCUを冷却して合流部625で第2分岐流路620b2及び圧送流路620aと合流する。第2分岐流路620b2を流れる第2温調媒体TCM2は、熱交換器63で第1温調媒体TCM1と熱交換することによって第1温調媒体TCM1を冷却し、合流部625で第1分岐流路620b1及び圧送流路620aと合流する。第1分岐流路620b1を流れた第2温調媒体TCM2と第2分岐流路620b2を流れた第2温調媒体TCM2とは、合流部625で合流して圧送流路620aを流れて貯留タンク623に一時的に貯留される。そして、貯留タンク623に貯留された第2温調媒体TCM2が圧送流路620aを通って第2ポンプ621に再び供給されて、第2温調媒体TCM2が第2温調回路62を循環する。
【0069】
本実施形態では、バルブ装置626の開放時にも、第1分岐流路620b1を流れる第2温調媒体TCM2の流量が、第2分岐流路620b2を流れる第2温調媒体TCM2の流量よりも大きくなるように、第1分岐流路620b1及び第2分岐流路620b2が形成されているものとする。
【0070】
第2温調回路62には、第2温調回路62を循環する第2温調媒体TCM2の温度を検出する第2温調回路温度センサ62aが設けられる。本実施形態では、第2温調回路温度センサ62aは、圧送流路620aにおけるラジエータ622と分岐部624との間の設けられており、ラジエータ622から排出された第2温調媒体TCM2、すなわち電力変換装置PCUに供給される第2温調媒体TCM2の温度を検出し、その検出値を示す検出信号を制御装置ECUへ出力する。これにより、制御装置ECUは、電力変換装置PCUに供給される第2温調媒体TCM2の温度を取得可能である。
【0071】
一例として、第1温調回路61において、主駆動用モータMOT1、ジェネレータGEN、及び第1変速機構T1を冷却した後に貯留部612に貯留した第1温調媒体TCM1の温度が約100[℃]であるとすると、熱交換器63には、約100[℃]の第1温調媒体TCM1が供給される。
【0072】
一方、第2温調回路62において、ラジエータ622で冷却された第2温調媒体TCM2の温度が約40[℃]であるとすると、熱交換器63に供給される第2温調媒体TCM2は、被温調装置である電力変換装置PCUを通らないため、熱交換器63には、約40[℃]の第2温調媒体TCM2が供給される。
【0073】
この場合、熱交換器63は、熱交換器63に供給された約100[℃]の第1温調媒体TCM1と約40[℃]の第2温調媒体TCM2との間で、熱交換を行う。そして、例えば、熱交換器63からは、約80[℃]の第1温調媒体TCM1が第1温調回路61における第1分岐流路610b1の下流側に排出され、約70[℃]の第2温調媒体TCM2が第2温調回路62における第2分岐流路620b2の下流側に排出される。
【0074】
このようにして、第1温調媒体TCM1は熱交換器63で冷却されるので、温調回路60に第1温調媒体TCM1を冷却するためのラジエータを別途設けなくても、第1温調媒体TCM1を冷却することができる。したがって、温調回路60は、1つのラジエータ622で、第1温調回路61を流れる第1温調媒体TCM1と第2温調回路62を流れる第2温調媒体TCM2とを冷却することができるので、温調回路60を小型化できる。
【0075】
[制御装置]
次に、制御装置ECUによる具体的な制御の一例について説明する。まず、制御装置ECUによる主駆動ユニットDU1及び従駆動ユニットDU2に関する制御について説明する。
【0076】
車両Vの走行に際し、制御装置ECUは、車速センサによって検出された車速、及びアクセルペダルセンサによって検出されたAP開度に基づき、車両Vの駆動力の目標値となる要求駆動力(換言すると車両Vの走行に要求される駆動力)を導出する。そして、制御装置ECUは、車両Vの駆動力が要求駆動力となるように、主駆動ユニットDU1及び従駆動ユニットDU2からの出力を制御する。
【0077】
例えば、制御装置ECUは、主駆動ユニットDU1及び従駆動ユニットDU2のそれぞれの出力配分比率を規定した出力配分マップ(不図示)を参照して、要求駆動力を、主駆動ユニットDU1からの出力と、従駆動ユニットDU2からの出力とに配分する。このとき、制御装置ECUは、主駆動ユニットDU1及び従駆動ユニットDU2のうちの一方(例えば従駆動ユニットDU2)からの出力を0としてもよい。
【0078】
また、本実施形態では、制御装置ECUは、以下に説明する複数の駆動モードによって主駆動ユニットDU1を駆動可能に構成され、主駆動ユニットDU1の駆動モードを適宜切り替えながら車両Vを走行させる。これにより、車両Vの状態に応じた適切な駆動モードで車両Vを走行させることが可能となる。
【0079】
<主駆動ユニットに関する制御>
図5は、主駆動ユニットDU1がとり得る駆動モードの一例を示す図である。
図5に示すように、主駆動ユニットDU1は、駆動モードとして、第1駆動モードの一例であるモータ駆動モードと、第2駆動モードの一例であるエンジン駆動モードとをとり得る。
【0080】
モータ駆動モードは、主駆動用モータMOT1及びエンジンENGのうち、主駆動用モータMOT1のみの動力によって車輪(ここでは前輪FWR)を駆動する駆動モードであり、例えば、後述のEV走行モード及びハイブリッド走行モードを含む。すなわち、モータ駆動モードでは、車輪の駆動に、主駆動用モータMOT1の動力が主に用いられる。
【0081】
エンジン駆動モードは、主駆動用モータMOT1及びエンジンENGのうち、少なくともエンジンENGの動力によって車輪(ここでは前輪FWR)を駆動する駆動モードであり、例えば、後述の低速側エンジン走行モード及び高速側エンジン走行モードを含む。すなわち、エンジン駆動モード(換言すると低速側エンジン走行モード及び高速側エンジン走行モード)では、車輪の駆動に、エンジンENGの動力が主に用いられる。したがって、エンジン駆動モードでは、モータ駆動モードに比して、主駆動用モータMOT1からの出力が抑制され、これに伴い、主駆動用モータMOT1からの発熱も抑制される。
【0082】
<<1.EV走行モード>>
EV走行モードは、主駆動用モータMOT1に対してバッテリBATの電力を供給し、この電力に応じて主駆動用モータMOT1が出力した動力によって車両Vを走行させる駆動モードである。
【0083】
具体的に説明すると、EV走行モードの場合、制御装置ECUは、第1クラッチCL1及び第2クラッチCL2をともに解放する。また、EV走行モードの場合、制御装置ECUは、エンジンENGへの燃料の噴射を停止して、エンジンENGからの動力の出力を停止させる。そして、EV走行モードの場合、制御装置ECUは、主駆動用モータMOT1に対してバッテリBATの電力を供給し、この電力に応じた動力を主駆動用モータMOT1に出力させる(モータ「バッテリ駆動」と図示)。これにより、EV走行モードでは、バッテリBATから供給された電力に応じて主駆動用モータMOT1が出力した動力によって車両Vが走行する。
【0084】
なお、EV走行モードでは、前述したように、エンジンENGからの動力の出力が停止され、且つ第1クラッチCL1及び第2クラッチCL2がともに解放される。したがって、EV走行モードでは、ジェネレータGENに対して動力が入力されず、ジェネレータGENによる発電は行われない(ジェネレータ「発電停止」と図示)。
【0085】
<<2.ハイブリッド走行モード>>
ハイブリッド走行モードは、主駆動用モータMOT1に対して少なくともジェネレータGENが発電した電力を供給し、この電力に応じて主駆動用モータMOT1が出力した動力によって車両Vを走行させる駆動モードである。
【0086】
具体的に説明すると、ハイブリッド走行モードの場合、制御装置ECUは、第1クラッチCL1及び第2クラッチCL2をともに解放する。また、ハイブリッド走行モードの場合、制御装置ECUは、エンジンENGへの燃料の噴射を行って、エンジンENGから動力を出力させる。エンジンENGから出力された動力は、ジェネレータ用ギヤ列Ggを介してジェネレータGENに入力される。これにより、ジェネレータGENによる発電が行われる。
【0087】
そして、ハイブリッド走行モードの場合、制御装置ECUは、ジェネレータGENが発電した電力を主駆動用モータMOT1に供給し、この電力に応じた動力を主駆動用モータMOT1に出力させる(モータ「ジェネレータ駆動」と図示)。ジェネレータGENから主駆動用モータMOT1に供給される電力は、バッテリBATから主駆動用モータMOT1に供給される電力よりも大きい。したがって、ハイブリッド走行モードでは、EV走行モードに比べて、主駆動用モータMOT1から出力される動力(主駆動用モータMOT1の駆動力)を大きくすることができ、車両Vの駆動力として大きな駆動力を得ることができる。
【0088】
なお、ハイブリッド走行モードの場合、制御装置ECUは、必要に応じてバッテリBATの電力も主駆動用モータMOT1に供給し得る。すなわち、制御装置ECUは、ハイブリッド走行モードにおいて、ジェネレータGEN及びバッテリBATの双方から主駆動用モータMOT1に電力を供給し得る。これにより、ジェネレータGENのみによって主駆動用モータMOT1に電力を供給する場合に比べて、主駆動用モータMOT1に供給される電力を増加させることができるので、主駆動用モータMOT1から出力される動力をより大きくすることができ、車両Vの駆動力として一層と大きな駆動力を得ることができる。
【0089】
<<3.低速側エンジン走行モード>>
低速側エンジン走行モードは、エンジンENGが出力した動力を、低速側の動力伝達経路によって前輪FWRに伝達して車両Vを走行させる駆動モードである。
【0090】
具体的に説明すると、低速側エンジン走行モードの場合、制御装置ECUは、エンジンENGへの燃料の噴射を行って、エンジンENGから動力を出力させる。また、低速側エンジン走行モードの場合、制御装置ECUは、第1クラッチCL1を締結する一方、第2クラッチCL2を解放する。これにより、低速側エンジン走行モードでは、エンジンENGから出力された動力が、低速側エンジン用ギヤ列GLo、ファイナルギヤ列Gf及び第1デファレンシャル機構D1を介して、前輪FWRに伝達され、車両Vが走行する。
【0091】
また、低速側エンジン走行モードの場合、エンジンENGから出力された動力は、ジェネレータ用ギヤ列Ggを介してジェネレータGENにも入力されるが、ジェネレータGENによる発電は行われないように制御される。例えば、低速側エンジン走行モードでは、ジェネレータGENとバッテリBATとの間の電力伝達経路に設けられたスイッチング素子(例えば第1インバータINV1のスイッチング素子)がオフとされることで、ジェネレータGENによる発電は行われないように制御される。これにより、低速側エンジン走行モードでは、ジェネレータGENが発電を行うことにより生じる損失を低減できるとともに、ジェネレータGEN等の発熱量を減少させることができる。また、低速側エンジン走行モードにおいて、車両Vの制動時には、主駆動用モータMOT1による回生発電を行って、発電された電力によりバッテリBATを充電するようにしてもよい。
【0092】
また、低速側エンジン走行モードの場合、制御装置ECUは、必要に応じてバッテリBATからの電力を主駆動用モータMOT1に供給し得る。これにより、低速側エンジン走行モードでは、バッテリBATから供給された電力によって主駆動用モータMOT1が出力した動力も用いて車両Vを走行させることができ、エンジンENGの動力のみによって車両Vを走行させる場合に比べて、車両Vの駆動力として一層と大きな駆動力を得ることができる。
【0093】
<<4.高速側エンジン走行モード>>
高速側エンジン走行モードは、エンジンENGが出力した動力を、高速側の動力伝達経路によって前輪FWRに伝達して車両Vを走行させる駆動モードである。
【0094】
具体的に説明すると、高速側エンジン走行モードの場合、制御装置ECUは、エンジンENGへの燃料の噴射を行って、エンジンENGから動力を出力させる。また、高速側エンジン走行モードの場合、制御装置ECUは、第2クラッチCL2を締結する一方、第1クラッチCL1を解放する。これにより、高速側エンジン走行モードでは、エンジンENGから出力された動力が、高速側エンジン用ギヤ列GHi、ファイナルギヤ列Gf及び第1デファレンシャル機構D1を介して、前輪FWRに伝達され、車両Vが走行する。
【0095】
また、高速側エンジン走行モードの場合も、エンジンENGから出力された動力は、ジェネレータ用ギヤ列Ggを介してジェネレータGENにも入力されるが、ジェネレータGENによる発電は行われないように制御される。これにより、高速側エンジン走行モードでは、ジェネレータGENが発電を行うことにより生じる損失を低減できるとともに、ジェネレータGEN等の発熱量を減少させることができる。また、高速側エンジン走行モードにおいても、車両Vの制動時には、主駆動用モータMOT1による回生発電を行って、発電された電力によりバッテリBATを充電するようにしてもよい。
【0096】
また、高速側エンジン走行モードの場合、制御装置ECUは、必要に応じてバッテリBATからの電力を主駆動用モータMOT1に供給し得る。これにより、高速側エンジン走行モードでは、バッテリBATから供給された電力によって主駆動用モータMOT1が出力した動力も用いて車両Vを走行させることができ、エンジンENGの動力のみによって車両Vを走行させる場合に比べて、車両Vの駆動力として一層と大きな駆動力を得ることができる。
【0097】
ところで、エンジン駆動モード(すなわち低速側エンジン走行モード及び高速側エンジン走行モード)では、エンジンENGから出力された動力を車輪(ここでは前輪FWR)に直接伝達して車輪を駆動するため、主駆動用モータMOT1やジェネレータGENの発熱量を小さくできる。その一方で、エンジン駆動モードでは、エンジンENGと車輪とを直結する際のギヤ比に骨格上の制約(すなわちハードウェア的な制約)があるため、ハイブリッド走行モード等のモータ駆動モードに比べて、対応可能な車両Vの駆動力の範囲が狭くなる。
【0098】
これに対し、ハイブリッド走行モード等のモータ駆動モードでは、バッテリBATやジェネレータGENからの電力を主駆動用モータMOT1に供給し、主駆動用モータMOT1から出力された動力を車輪(ここでは前輪FWR)に伝達して車輪を駆動する。このため、対応可能な車両Vの駆動力の範囲をエンジン駆動モードよりも広くできる。特に、ハイブリッド走行モードでは、より大きな駆動力に対応することも可能である。その一方で、ハイブリッド走行モード等のモータ駆動モードでは、主駆動用モータMOT1やジェネレータGENを駆動することになるため、これらの発熱量がエンジン駆動モードに比べて大きくなる。
【0099】
<温調回路に関する制御>
次に、制御装置ECUによる温調回路60に関する制御について説明する。温調回路60の制御に関し、制御装置ECUは、通常温度制御と、当該通常温度制御に比して主駆動ユニットDU1の温度が高くなるように制御する昇温制御とを実行可能に構成される。
【0100】
例えば、制御装置ECUは、通常温度制御では、昇温制御に比して、第2分岐流路620b2への第2温調媒体TCM2の流量が多くなるようにバルブ装置626を制御する。これにより、通常温度制御では、昇温制御に比して、熱交換器63を通る第2温調媒体TCM2を多くでき、熱交換器63を介した第1温調媒体TCM1と第2温調媒体TCM2との間の熱交換を促進することが可能となる。したがって、第1温調媒体TCM1の熱を第2温調媒体TCM2に伝えて第1温調媒体TCM1の温度を低下させ、第1温調媒体TCM1によって温調される主駆動ユニットDU1の温度を低くすることが可能となる。
【0101】
換言すると、制御装置ECUは、昇温制御では、第2分岐流路620b2への第2温調媒体TCM2の流量をバルブ装置626によって少なくすることで、熱交換器63を通る第2温調媒体TCM2を少なくして、熱交換器63を介した第1温調媒体TCM1と第2温調媒体TCM2との間の熱交換を抑制する。これにより、第1温調媒体TCM1の熱が第2温調媒体TCM2に伝わるのを抑制して、第1温調媒体TCM1と主駆動ユニットDU1との温度を高くすることが可能となる。
【0102】
ところで、主駆動ユニットDU1の温度が低いと、主駆動ユニットDU1の潤滑を行うオイルである第1温調媒体TCM1の温度も低くなり、主駆動ユニットDU1におけるフリクションロスが増大する。その一方で、主駆動ユニットDU1の温度が高くなり過ぎると、主駆動ユニットDU1の破損につながる。したがって、主駆動ユニットDU1の温度は、適切な範囲でできるだけ高く維持することが望まれる。
【0103】
そこで、制御装置ECUは、主駆動ユニットDU1をモータ駆動モード(例えばハイブリッド走行モード)としているときであって、且つ昇温制御を実行しているときに、車両Vの状態に基づき、主駆動ユニットDU1の駆動モードをエンジン駆動モードに変更可能であるか否かを判定する。そして、制御装置ECUは、エンジン駆動モードに変更可能と判定した場合には、主駆動ユニットDU1の駆動モードをモータ駆動モードからエンジン駆動モードに変更するとともに、昇温制御を継続する。一方、制御装置ECUは、エンジン駆動モードに変更不可と判定した場合には、主駆動ユニットDU1の駆動モードをエンジン駆動モードに変更しないでモータ駆動モードに維持するとともに、昇温制御を終了して通常温度制御を実行する。これにより、車両Vの状態を考慮しつつ、主駆動ユニットDU1の温度を適切な範囲でできるだけ高く維持することが可能となる。したがって、主駆動ユニットDU1の温度が低いことに起因したフリクションロスを低減でき、主駆動ユニットDU1の効率向上を図ることが可能となる。
【0104】
例えば、制御装置ECUは、車両Vの状態として、車両Vの走行速度(すなわち車速)に基づき、エンジン駆動モードに変更可能であるか否かを判定する。これにより、主駆動ユニットDU1の駆動モードをエンジン駆動モードに変更可能であるか否かを適切に判定することが可能となる。より具体的には、例えば、現在の車速ではハードウェア的にエンジン駆動モードに変更できないにもかかわらず、エンジン駆動モードに変更可能と判定してしまうのを回避することが可能となる。
【0105】
また、制御装置ECUは、車両Vの状態として、例えば要求駆動力に基づき、エンジン駆動モードに変更可能であるか否かを判定してもよい。これにより、主駆動ユニットDU1の駆動モードをエンジン駆動モードに変更可能であるか否かを適切に判定することが可能となる。より具体的には、例えば、エンジン駆動モードに変更すると要求駆動力分の駆動力を確保できなくなってしまうにもかかわらず、エンジン駆動モードに変更可能と判定してしまうのを回避することが可能となる。
【0106】
[制御装置が実行する処理]
以下、制御装置ECUが実行する処理の一例について具体的に説明する。
図6は、制御装置ECUが実行する処理の一例を示すフローチャート(その1)である。
図7は、制御装置ECUが実行する処理の一例を示すフローチャート(その2)である。
図8は、制御装置ECUが実行する処理の一例を示すフローチャート(その3)である。なお、ここでは、主駆動ユニットDU1の駆動モードをハイブリッド走行モードとしており、且つ昇温制御を実行している場合に、制御装置ECUが実行する処理の一例を説明する。
【0107】
図6に示すように、まず、制御装置ECUは、主駆動用モータ温度センサ61bによって検出された主駆動用モータMOT1の温度を含む各種センサSNSRの検出結果(すなわち車両情報)を取得する(ステップS1)。
【0108】
次に、制御装置ECUは、ステップS1で取得した主駆動用モータMOT1の温度に基づき、主駆動用モータMOT1の温度上昇率dT/dtを導出する(ステップS2)。具体的には、制御装置ECUは、直近に取得した主駆動用モータMOT1の温度(以下、「今回値」とも称する)と、その1つ前に取得した主駆動用モータMOT1の温度(以下、「前回値」とも称する)との差分を、前回値が取得されてから今回値が取得されるまでの時間で除した値を、主駆動用モータMOT1の温度上昇率dT/dtとして導出する。
【0109】
次に、制御装置ECUは、ステップS1で取得した主駆動用モータMOT1の温度(具体的には今回値)が所定値(一例として、ここでは75[℃]とする)よりも高いか否かを判定する(ステップS3)。主駆動用モータMOT1の温度が75[℃]以下と判定した場合(ステップS3:No)、制御装置ECUは、ステップS1へ復帰する。すなわち、この場合、主駆動ユニットDU1の駆動モードはハイブリッド走行モードに維持され、昇圧制御も継続される。
【0110】
一方、主駆動用モータMOT1の温度が75[℃]よりも高いと判定した場合(ステップS3:Yes)、制御装置ECUは、主駆動用モータMOT1の温度上昇率dT/dtが0よりも大きいか否かを判定する(ステップS4)。温度上昇率dT/dtが0以下と判定した場合(ステップS4:No)、すなわち、主駆動用モータMOT1の温度が上昇傾向にないと判定した場合、制御装置ECUは、ステップS1へ復帰する。すなわち、この場合も、主駆動ユニットDU1の駆動モードはハイブリッド走行モードに維持され、昇圧制御も継続される。
【0111】
一方、温度上昇率dT/dtが0よりも大きいと判定した場合(ステップS4:Yes)、すなわち、主駆動用モータMOT1の温度が上昇傾向にあると判定した場合、制御装置ECUは、主駆動ユニットDU1の駆動モードをエンジン駆動モードに変更可能であるか否かを判定する(ステップS5)。
【0112】
例えば、制御装置ECUは、現在の車速が所定値以上であって、且つ、エンジン駆動モードによる現在の車速に応じた最大駆動力が要求駆動力以上である場合に、エンジン駆動モードへの変更が可能と判定する。ここで、所定値は、車両Vがハードウェア的にエンジン駆動モードで走行することが可能な速度とされ、第1変速機構T1の特性等を勘案して定められる。
【0113】
このように、制御装置ECUは、現在の車速や要求駆動力に基づき、主駆動ユニットDU1の駆動モードをエンジン駆動モードに変更可能であるか否かを判定することで、エンジン駆動モードへの変更の可否を適切に判定することが可能となる。
【0114】
そして、エンジン駆動モードへの変更が可能と判定した場合(ステップS5:Yes)、制御装置ECUは、第1クラッチCL1または第2クラッチCL2を締結することによりエンジン駆動モードに変更して(ステップS6)、
図7に示すステップS7へ進む。なお、このようにエンジン駆動モードに変更できた場合には、エンジン駆動モードへの変更によって主駆動用モータMOT1からの出力(すなわち発熱)を抑制できるようになるため、制御装置ECUは、昇温制御を継続する。すなわち、この場合、通常温度制御への切り替えは行われない。
【0115】
次に、制御装置ECUは、
図7に示すように、主駆動用モータ温度センサ61bによって検出された主駆動用モータMOT1の温度を含む各種センサSNSRの検出結果を取得し(ステップS7)、ステップS7で取得した主駆動用モータMOT1の温度に基づき主駆動用モータMOT1の温度上昇率dT/dtを導出する(ステップS8)。
【0116】
そして、制御装置ECUは、主駆動用モータMOT1の温度上昇率dT/dtが0よりも小さくなったか否かを判定する(ステップS9)。温度上昇率dT/dtが0よりも小さくなっていないと判定した場合(ステップS9:No)、すなわち、主駆動用モータMOT1の温度が低下傾向になっていないと判定した場合、制御装置ECUは、ステップS7へ復帰する。
【0117】
一方、温度上昇率dT/dtが0よりも小さくなったと判定した場合(ステップS9:Yes)、すなわち、主駆動用モータMOT1の温度が低下傾向になったと判定した場合、制御装置ECUは、主駆動用モータMOT1の温度の許容値を拡大して(ステップS10)、一連の処理を終了する。
【0118】
例えば、主駆動用モータMOT1の温度の許容値を拡大した場合、制御装置ECUは、温調回路60(例えば第1温調回路61)によって主駆動用モータMOT1(すなわち主駆動ユニットDU1)を冷却する際の目標値となる目標温度を、当該許容値の拡大前に比べて高めることで、主駆動用モータMOT1の温度がより高くなることを許容する。これにより、主駆動用モータMOT1の温度を上昇させて、主駆動用モータMOT1のフリクションロスを低減し、主駆動用モータMOT1の効率向上を図ることが可能となる。
【0119】
一方、
図6に示したステップS5でエンジン駆動モードへの変更が不可と判定した場合(ステップS5:No)、制御装置ECUは、昇温制御を終了して(ステップS11)、
図8に示すステップS12へ進む。この場合、昇温制御は終了するものの、主駆動ユニットDU1の駆動モードはハイブリッド走行モードに維持される。これにより、要求駆動力分の駆動力を確保でき、車両Vの駆動力が不足することによるヘジテーションの発生等を抑制することが可能となる。
【0120】
次に、制御装置ECUは、
図8に示すように、通常温度制御を実行する。具体的には、制御装置ECUは、バルブ装置626を開くとともに(ステップS12)、ラジエータ622や第2ポンプ621等の冷却デバイスへの指示値を変更して(ステップS13)、ラジエータ622のファンを駆動させたり第2ポンプ621の流量を増大させたりする。これにより、主駆動用モータMOT1等の主駆動ユニットDU1に対する第1温調回路61の冷却効果を増加させ、主駆動ユニットDU1をより冷却することが可能となる。
【0121】
そして、制御装置ECUは、主駆動用モータ温度センサ61bによって検出された主駆動用モータMOT1の温度を含む各種センサSNSRの検出結果を取得し(ステップS14)、ステップS14で取得した主駆動用モータMOT1の温度に基づき主駆動用モータMOT1の温度上昇率dT/dtを導出する(ステップS15)。
【0122】
そして、制御装置ECUは、主駆動用モータMOT1の温度上昇率dT/dtが0よりも小さくなったか否かを判定する(ステップS16)。温度上昇率dT/dtが0よりも小さくなっていないと判定した場合(ステップS16:No)、すなわち、主駆動用モータMOT1の温度が低下傾向になっていないと判定した場合、制御装置ECUは、ステップS14へ復帰する。この場合、制御装置ECUは、通常温度制御を継続する。
【0123】
一方、温度上昇率dT/dtが0よりも小さくなったと判定した場合(ステップS16:Yes)、すなわち、主駆動用モータMOT1の温度が低下傾向になったと判定した場合、制御装置ECUは、通常温度制御を終了して昇温制御を開始し(ステップS17)、一連の処理を終了する。
【0124】
以上に説明したように、本実施形態によれば、車速や要求駆動力等の車両Vの状態に応じて、主駆動ユニットDU1の駆動モードをエンジン駆動モードに変更して昇温制御を継続させたり、主駆動ユニットDU1の駆動モードをハイブリッド走行モードに維持しつつ昇温制御を終了して通常温度制御を実行したりすることができる。これにより、車両Vの状態を考慮しつつ、主駆動ユニットDU1の温度を適切な範囲でできるだけ高く維持することが可能となる。これにより、主駆動ユニットDU1の温度が低いことに起因したフリクションロスを低減でき、主駆動ユニットDU1の効率向上を図ることが可能となる。したがって、車両Vのエネルギー効率の改善に寄与することが可能となる。
【0125】
なお、以上に説明した例では、エンジン駆動モードに変更することによって主駆動用モータMOT1からの出力を抑制するようにしたが、これに限られない。
【0126】
例えば、制御装置ECUは、従駆動ユニットDU2(例えば従駆動用モータMOT2)からの出力を増加させることによって主駆動用モータMOT1からの出力を抑制するようにしてもよい。
【0127】
この場合、主駆動ユニットDU1は、例えば、通常モードと、通常モードに比して主駆動ユニットDU1の出力配分比率が小さい(すなわち主駆動用モータMOT1からの出力を抑制可能な)主駆動ユニット負荷低減モードとをとり得るように構成される。ここで、通常モードは第1駆動モードの他の一例であり、主駆動ユニット負荷低減モードは第2駆動モードの他の一例である。
【0128】
そして、制御装置ECUは、例えば、通常モードとしている場合には、第1出力配分マップ(不図示)を参照して、主駆動ユニットDU1及び従駆動ユニットDU2の出力配分比率を決定することで、主駆動ユニットDU1の出力配分比率が大きくなるようにする。一方、制御装置ECUは、主駆動ユニット負荷低減モードとしている場合には、第1出力配分マップよりも主駆動ユニットDU1の出力配分比率が小さくなるようにした第2出力配分マップ(不図示)を参照して、主駆動ユニットDU1及び従駆動ユニットDU2の出力配分比率を決定することで、主駆動ユニットDU1の出力配分比率が小さくなるようにする。
【0129】
なお、通常モードは、従駆動ユニットDU2の出力配分比率が0[%](すなわち主駆動ユニットDU1の出力配分比率が100[%])である二輪駆動モードであってもよく、主駆動ユニット負荷低減モードは、従駆動ユニットDU2の出力配分比率が0[%]よりも大きい四輪駆動モードであってもよい。
【0130】
そして、制御装置ECUは、車速や要求駆動力等の車両Vの状態に応じて、主駆動ユニットDU1の駆動モードを主駆動ユニット負荷低減モードに変更して昇温制御を継続させたり、主駆動ユニットDU1の駆動モードを通常モードに維持しつつ昇温制御を終了して通常温度制御を実行したりする。
【0131】
以下、
図9等を参照して、従駆動ユニットDU2からの出力を増加させることによって主駆動用モータMOT1からの出力を抑制するようにした場合の一例について説明する。
【0132】
図9は、制御装置ECUが実行する処理の他の一例を示すフローチャートである。例えば、制御装置ECUは、主駆動ユニットDU1の駆動モードを通常モードとしており、且つ昇温制御を実行している場合に、
図9等に示す処理を実行する。
図9におけるステップS1~ステップS4の処理は、
図6におけるステップS1~ステップS4の処理と同様であるため、その説明を省略する。
【0133】
本例では、ステップS4で主駆動用モータMOT1の温度上昇率dT/dtが0よりも大きいと判定した場合(ステップS4:Yes)、制御装置ECUは、主駆動ユニットDU1及び従駆動ユニットDU2の出力配分比率が変更可能であるか否か、すなわち主駆動ユニット負荷低減モードに変更可能であるか否かを判定する(ステップS21)。
【0134】
例えば、制御装置ECUは、従駆動ユニットDU2の温度が所定値未満である場合に、主駆動ユニットDU1及び従駆動ユニットDU2の出力配分比率が変更可能(すなわち主駆動ユニット負荷低減モードに変更可能)と判定する。
【0135】
このように、従駆動用モータMOT2の温度が所定値未満であることを条件に主駆動ユニットDU1及び従駆動ユニットDU2の出力配分比率を変更可能(すなわち主駆動ユニット負荷低減モードに変更可能)と判定するように構成することで、従駆動用モータMOT2の温度が高いときに従駆動ユニットDU2の出力配分比率を大きくしてしまうのを回避することが可能となる。これにより、主駆動ユニットDU1及び従駆動ユニットDU2の出力配分比率の変更によって、従駆動用モータMOT2の温度が高くなり過ぎることを抑制することが可能となる。なお、従駆動ユニットDU2の温度は、従駆動ユニットDU2の温度(例えば従駆動用モータMOT2の温度)を検出する温度センサを車両Vに設けることにより取得することができる。
【0136】
そして、主駆動ユニットDU1及び従駆動ユニットDU2の出力配分比率が変更可能と判定した場合(ステップS21:Yes)、制御装置ECUは、主駆動ユニットDU1の駆動モードを主駆動ユニット負荷低減モードに変更することにより、主駆動ユニットDU1の出力配分比率を低下させる一方で、従駆動ユニットDU2の出力配分比率を増加させて(ステップS22)、
図7に示したステップS7へ進む。
【0137】
より具体的には、ステップS22において、制御装置ECUは、主駆動ユニットDU1の駆動モードを主駆動ユニット負荷低減モードに変更した場合に、通常モードに比して主駆動用モータMOT1からの出力が抑制される分だけ従駆動用モータMOT2からの出力を増加させるようにする。これにより、主駆動ユニット負荷低減モードに変更しても、要求駆動力分の駆動力を確保でき、車両Vの駆動力が不足することによるヘジテーションの発生等を抑制することが可能となる。
【0138】
一方、主駆動ユニットDU1及び従駆動ユニットDU2の出力配分比率が変更不可と判定した場合(ステップS21:No)、制御装置ECUは、昇温制御を終了して(ステップS23)、
図8に示したステップS12へ進む。なお、この場合、制御装置ECUは、主駆動ユニットDU1の駆動モードを通常モードに維持する。
【0139】
このように、制御装置ECUは、車両Vの状態に応じて、主駆動ユニットDU1の駆動モードを主駆動ユニット負荷低減モードに変更して昇温制御を継続させたり、主駆動ユニットDU1の駆動モードを通常モードに維持しつつ昇温制御を終了して通常温度制御を実行したりするようにしてもよい。このようにしても、車両Vの状態を考慮しつつ、主駆動ユニットDU1の温度を適切な範囲でできるだけ高く維持することが可能となる。これにより、主駆動ユニットDU1の温度が低いことに起因したフリクションロスを低減でき、主駆動ユニットDU1の効率向上を図ることが可能となる。したがって、車両Vのエネルギー効率の改善に寄与することが可能となる。
【0140】
また、制御装置ECUは、車両Vの状態に応じて、主駆動ユニットDU1の駆動モードをエンジン走行モードに変更するとともに、主駆動ユニット負荷低減モードに変更して昇温制御を継続させるようにしてもよい。さらに、制御装置ECUは、主駆動ユニットDU1の駆動モードをハイブリッド走行モード及び通常モードに維持しつつ、昇温制御を終了して通常温度制御を実行するようにしてもよい。
【0141】
以上、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0142】
例えば、前述した実施形態では、主駆動ユニットDU1が前輪FWRを駆動し、従駆動ユニットDU2が後輪RWRを駆動するものとしたが、主駆動ユニットDU1が後輪RWRを駆動し、従駆動ユニットDU2が前輪FWRを駆動するものとしてもよい。
【0143】
さらに、前述した実施形態では、主駆動ユニットDU1を車両Vの主要な駆動源とし、従駆動ユニットDU2を補助的な駆動源としたが、主駆動ユニットDU1を補助的な駆動源とし、従駆動ユニットDU2を車両Vの主要な駆動源としてもよい。
【0144】
また、前述した実施形態では、主駆動ユニットDU1をいわゆる「平行軸式」のハイブリッド機構としたが、これに限られない。例えば、主駆動ユニットDU1をいわゆる「同軸式」のハイブリッド機構としてもよい。
【0145】
さらに、前述した実施形態では、車両Vを、主駆動ユニットDU1により前輪FWRを、従駆動ユニットDU2により後輪RWRを、それぞれ駆動可能な四輪駆動車両としたが、これに限られない。例えば、従駆動ユニットDU2を車両Vに設けず、車両Vを、主駆動ユニットDU1により前輪FWRのみを駆動可能な二輪駆動車両としてもよい。この場合、制御装置ECUは、主駆動用モータMOT1からの出力を抑制する際には、主駆動ユニットDU1の駆動モードをエンジン駆動モードにすればよい。
【0146】
また、前述した実施形態では、主駆動ユニットDU1にエンジンENGを設けて、車両Vをハイブリッド電気自動車としたが、これに限られない。例えば、エンジンENGを主駆動ユニットDU1に設けず、車両Vを電気自動車としてもよい。この場合、制御装置ECUは、主駆動用モータMOT1からの出力を抑制する際には、主駆動ユニットDU1の駆動モードを主駆動ユニット負荷低減モードにすればよい。
【0147】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、前述した実施形態において対応する構成要素などを示しているが、これに限定されるものではない。
【0148】
(1) 第1駆動用モータ(主駆動用モータMOT1)を含んで構成され、少なくとも前記第1駆動用モータの動力によって車輪(前輪FWR)を駆動可能な第1駆動ユニット(主駆動ユニットDU1)と、
前記第1駆動ユニットの温調を行う温調回路(温調回路60、第1温調回路61)と、
前記第1駆動ユニットと、前記温調回路とを制御可能な制御装置(制御装置ECU)と、
を備える車両(車両V)であって、
前記制御装置は、
第1駆動モード(モータ駆動モード、通常モード)と、当該第1駆動モードに比して前記第1駆動用モータからの出力が抑制される第2駆動モード(エンジン駆動モード、主駆動ユニット負荷低減モード)とを含む複数の駆動モードによって前記第1駆動ユニットを駆動可能に構成されるとともに、
前記温調回路の制御に関し、通常温度制御と、当該通常温度制御に比して前記第1駆動ユニットの温度が高くなるように制御する昇温制御とを実行可能に構成され、
前記第1駆動ユニットを前記第1駆動モードとしているときであって、且つ前記昇温制御を実行しているときに、前記車両の状態に基づき、前記第1駆動ユニットの駆動モードを前記第2駆動モードに変更可能であるか否かを判定し、
前記第2駆動モードに変更可能と判定した場合には、前記第1駆動ユニットの駆動モードを前記第2駆動モードに変更するとともに、前記昇温制御を継続し、
前記第2駆動モードに変更不可と判定した場合には、前記第1駆動ユニットの駆動モードを前記第1駆動モードに維持するとともに、前記昇温制御を終了して前記通常温度制御を実行する、
車両。
【0149】
(1)によれば、車両の状態に応じて、第1駆動ユニットの駆動モードを第2駆動モードに変更して昇温制御を継続させたり、第1駆動ユニットの駆動モードを第1駆動モードに維持しつつ昇温制御を終了して通常温度制御を実行したりすることができる。これにより、車両の状態を考慮しつつ、第1駆動ユニットの温度を適切な範囲でできるだけ高く維持することが可能となる。これにより、第1駆動ユニットの温度が低いことに起因したフリクションロスを低減でき、第1駆動ユニットの効率向上を図ることが可能となる。
【0150】
(2) (1)に記載の車両であって、
前記制御装置は、前記車両の状態として、前記車両の走行速度に基づき、前記第2駆動モードに変更可能であるか否かを判定する、
車両。
【0151】
(2)によれば、第1駆動ユニットの駆動モードを第2駆動モードに変更可能であるか否かを適切に判定することが可能となる。
【0152】
(3) (1)または(2)に記載の車両であって、
前記制御装置は、前記車両の状態として、前記車両の走行に要求される要求駆動力に基づき、前記第2駆動モードに変更可能であるか否かを判定する、
車両。
【0153】
(3)によれば、第1駆動ユニットの駆動モードを第2駆動モードに変更可能であるか否かを適切に判定することが可能となる。
【0154】
(4) (1)から(3)のいずれかに記載の車両であって、
前記第1駆動ユニットは、エンジン(エンジンENG)をさらに含んで構成され、前記第1駆動用モータ及び前記エンジンのそれぞれの動力によって前記車輪を駆動可能であり、
前記第1駆動モードは、前記第1駆動用モータ及び前記エンジンのうち、前記第1駆動用モータのみの動力によって前記車輪を駆動する駆動モード(モータ駆動モード)であり、
前記第2駆動モードは、前記第1駆動用モータ及び前記エンジンのうち、少なくとも前記エンジンの動力によって前記車輪を駆動する駆動モード(エンジン駆動モード)である、
車両。
【0155】
(4)によれば、車両の状態に応じて、エンジンの動力によって車輪を駆動する第2駆動モードに変更して昇温制御を継続させたり、第1駆動用モータのみの動力によって車輪を駆動する第1駆動モードを維持しながら通常温度制御を実行したりすることができる。
【0156】
(5) (1)から(4)のいずれかに記載の車両であって、
前記第1駆動ユニットは、前記車輪として、前輪(前輪FWR)及び後輪(後輪RWR)のうちの一方を駆動可能であり、
前記車両は、
第2駆動用モータ(従駆動用モータMOT2)を含んで構成され、前記第2駆動用モータの動力によって前記前輪及び前記後輪のうちの他方を駆動可能な第2駆動ユニット(従駆動ユニットDU2)をさらに備え、
前記制御装置は、
前記第2駆動ユニットをさらに制御可能であり、
前記第1駆動ユニットの駆動モードを前記第2駆動モードに変更した場合に、前記第1駆動モードに比して前記第1駆動用モータからの出力が抑制される分だけ前記第2駆動用モータからの出力を増加させる、
車両。
【0157】
(5)によれば、第1駆動ユニットの駆動モードを第2駆動モードに変更しても、車両の駆動力を維持できる。
【0158】
(6) (5)に記載の車両であって、
前記制御装置は、前記第2駆動用モータの温度が所定値未満であることを条件に、前記第1駆動ユニットの駆動モードを前記第2駆動モードに変更可能と判定する、
車両。
【0159】
(6)によれば、第2駆動モードへの変更によって、第2駆動用モータの温度が高くなり過ぎることを抑制できる。
【0160】
(7) (1)から(6)のいずれかに記載の車両であって、
前記車両は、
前記温調回路としての第1温調回路(第1温調回路61)と、
前記車両が備える電力変換装置(電力変換装置PCU)の温調を行う第2温調回路(第2温調回路62)と、
前記第1温調回路を循環する第1温調媒体(第1温調媒体TCM1)と、前記第2温調回路を循環する第2温調媒体(第2温調媒体TCM2)との間の熱交換を行う熱交換器(熱交換器63)と、
をさらに備え、
前記第2温調回路は、
前記第2温調媒体と外気との間の熱交換を行うラジエータ(ラジエータ622)と、
前記熱交換器を迂回する前記第2温調媒体の第1分岐流路(第1分岐流路620b1)と、
前記熱交換器を通る前記第2温調媒体の第2分岐流路(第2分岐流路620b2)と、
前記第2温調媒体の前記第2分岐流路への流量を調整する流量調整弁(バルブ装置626)と、
を備え、
前記制御装置は、
前記第2温調回路をさらに制御可能であり、
前記通常温度制御では、前記昇温制御に比して、前記第2分岐流路への流量が多くなるように前記流量調整弁を制御する、
車両。
【0161】
(7)によれば、通常温度制御では、昇温制御に比して、熱交換器を通る第2温調媒体を多くして、熱交換器を介した第1温調媒体と第2温調媒体との間の熱交換を促進し、第1駆動ユニットの温度を低くすることができる。
【符号の説明】
【0162】
60 温調回路
61 第1温調回路(温調回路)
62 第2温調回路
63 熱交換器
620b1 第1分岐流路
620b2 第2分岐流路
622 ラジエータ
626 バルブ装置(流量調整弁)
DU1 主駆動ユニット(第1駆動ユニット)
DU2 従駆動ユニット(第2駆動ユニット)
ECU 制御装置
ENG エンジン
FWR 前輪(車輪)
MOT1 主駆動用モータ(第1駆動用モータ)
MOT2 従駆動用モータ(第2駆動用モータ)
RWR 後輪(車輪)
TCM1 第1温調媒体
TCM2 第2温調媒体
V 車両