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  • 特開-排気制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044561
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】排気制御装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/20 20060101AFI20240326BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20240326BHJP
   F02D 41/22 20060101ALI20240326BHJP
   F02D 9/02 20060101ALI20240326BHJP
   F02D 21/08 20060101ALI20240326BHJP
   F02D 9/04 20060101ALI20240326BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20240326BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
F01N3/20 B ZAB
F01N3/28 301C
F02D41/22
F02D9/02 341G
F02D21/08 Z
F02D9/04 Z
F01N3/08 B
B01D53/94 222
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150154
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 隆行
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 崇大
(72)【発明者】
【氏名】麝嶋 徹
(72)【発明者】
【氏名】西村 裕大
(72)【発明者】
【氏名】村田 康
【テーマコード(参考)】
3G065
3G091
3G092
3G301
4D148
【Fターム(参考)】
3G065AA10
3G065CA27
3G065GA10
3G091AB05
3G091BA01
3G091CA17
3G091EA01
3G091EA02
3G092AA17
3G092DC08
3G092FA15
3G092HA11Z
3G092HE01Z
3G301JA21
3G301MA18
3G301NC02
3G301PA17Z
3G301PE01Z
4D148AA06
4D148AB02
4D148AC02
4D148AC03
4D148CC32
4D148CC61
4D148CD05
4D148DA01
4D148DA20
(57)【要約】
【課題】タービンの耐久性と安全性を確保しつつ、脱硫速度の低下を抑制することができる排気制御装置を提供すること。
【解決手段】排気制御装置は、エンジンからの排気が流れる排気通路において、ターボチャージャのタービンの下流側にNOx浄化触媒が設けられ、タービンとNOx浄化触媒との間に酸化触媒が設けられていない排気系で用いられ、NOx浄化触媒の温度を第1設定温度以上に昇温させ、タービンの出口側の排気の温度を第1設定温度より高い第2設定温度以下に維持し、NOx浄化触媒における脱硫反応に寄与する還元ガスを発生させる制御を実行する制御部と、エンジンの動作中におけるエンジン回転数およびエンジントルクに基づいて、エンジン回転数とエンジントルクとに応じて予め定められた複数の領域のうちのどの領域に相当するかを判定する判定部と、を有する。制御部は、判定された領域に基づいて、制御の内容を変更する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンからの排気が流れる排気通路において、ターボチャージャのタービンの下流側にNOx浄化触媒が設けられ、前記タービンと前記NOx浄化触媒との間に酸化触媒が設けられていない排気系で用いられる排気制御装置であって、
前記NOx浄化触媒の温度を第1設定温度以上に昇温させ、前記タービンの出口側の排気の温度を前記第1設定温度より高い第2設定温度以下に維持し、前記NOx浄化触媒における脱硫反応に寄与する還元ガスを発生させる制御を実行する制御部と、
前記エンジンの動作中におけるエンジン回転数およびエンジントルクに基づいて、前記エンジン回転数と前記エンジントルクとに応じて予め定められた複数の領域のうちのどの領域に相当するかを判定する判定部と、を有し、
前記制御部は、
判定された前記領域に基づいて、前記制御の内容を変更する、
排気制御装置。
【請求項2】
前記複数の領域は、
前記エンジン回転数に関わらず、前記エンジントルクが第1閾値以上である第1領域と、
前記エンジントルクが前記第1閾値未満であり、かつ、前記エンジン回転数が第2閾値未満である第2領域と、
前記エンジントルクが前記第1閾値未満であり、かつ、前記エンジン回転数が第2閾値以上である第3領域と、を含み、
前記制御部は、
判定された前記領域が前記第1領域である場合、
アフター噴射、インテークスロットルバルブの絞り、メイン噴射の噴射タイミングの遅角、および、EGR(Exhaust Gas Recirculation)バルブの絞りを制御し、
判定された前記領域が前記第2領域である場合、
アフター噴射、インテークスロットルバルブの絞り、メイン噴射の噴射タイミングの遅角、および、エキゾーストブレーキバルブの絞りを制御し、
判定された前記領域が前記第3領域である場合、
アフター噴射、インテークスロットルバルブの絞り、および、メイン噴射の噴射タイミングの遅角を制御する、
請求項1に記載の排気制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記インテークスロットルバルブの絞り、前記エキゾーストブレーキバルブの絞り、および、前記EGRバルブの絞りにおいて、前記エンジントルクが低下しないようにバルブの開度を小さくする、
請求項2に記載の排気制御装置。
【請求項4】
前記第2設定温度は、
前記タービンの耐久性と安全性が確保される上限の温度である、
請求項1に記載の排気制御装置。
【請求項5】
前記還元ガスは、
一酸化炭素を含むガスである、
請求項1に記載の排気制御装置。
【請求項6】
前記NOx浄化触媒は、
SCR(Selective Catalytic Reduction)触媒である、
請求項1に記載の排気制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排気制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンから排出される排気に含まれる窒素酸化物(NOx)を浄化する装置として、例えば、尿素水を還元剤として使用するSCR(Selective Catalytic Reduction)触媒が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、従来、エンジンの始動後なるべく早期にSCR触媒を昇温させるために、SCR触媒をターボチャージャのタービンの下流側(例えば直下)に配置する構成が知られている。その構成において、より早期の昇温を実現するために、タービンとSCR触媒との間に酸化触媒(例えば、DOC:Diesel Oxidation Catalyst)を配置しない構成も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6270248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エンジンからの排気には、窒素酸化物のほか、硫黄酸化物(SOx)が含まれる。これがSCR触媒の表面等に付着すると還元効果が低下するため、その除去(以下、脱硫ともいう)が必要とされている。
【0006】
脱硫では、排気を十分に昇温させると、脱硫速度が上がるため、有利である。しかし、脱硫で許容される上限温度は、タービンの耐久性と安全性を確保可能な温度よりも大きい。そのため、上限温度まで排気を昇温させると、タービンの耐久性と安全性を確保できなくなってしまう。
【0007】
このようなことから、上述した従来の構成では、タービンの耐久性と安全性を確保可能な温度を超えないように排気の昇温制御が行われており、その結果として、脱硫速度が低下してしまっていた。
【0008】
本開示の一態様の目的は、タービンの耐久性と安全性を確保しつつ、脱硫速度の低下を抑制することができる排気制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係る排気制御装置は、エンジンからの排気が流れる排気通路において、ターボチャージャのタービンの下流側にNOx浄化触媒が設けられ、前記タービンと前記NOx浄化触媒との間に酸化触媒が設けられていない排気系で用いられる排気制御装置であって、前記NOx浄化触媒の温度を第1設定温度以上に昇温させ、前記タービンの出口側の排気の温度を前記第1設定温度より高い第2設定温度以下に維持し、前記NOx浄化触媒における脱硫反応に寄与する還元ガスを発生させる制御を実行する制御部と、前記エンジンの動作中におけるエンジン回転数およびエンジントルクに基づいて、前記エンジン回転数と前記エンジントルクとに応じて予め定められた複数の領域のうちのどの領域に相当するかを判定する判定部と、を有し、前記制御部は、判定された前記領域に基づいて、前記制御の内容を変更する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、タービンの耐久性と安全性を確保しつつ、脱硫速度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の実施の形態に係るエンジンの構成例を模式的に示す図
図2】本開示の実施の形態に係る排気制御装置の構成例を模式的に示す図
図3】本開示の実施の形態に係る複数の領域の例を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1を用いて、本実施の形態のエンジン1の構成について説明する。図1は、本実施の形態のエンジン1の構成例を模式的に示す図である。
【0014】
エンジン1は、移動体(例えば、自動車、船舶等)に搭載されてもよいし、定置式でもよい。
【0015】
図1に示すように、エンジン1は、エンジン本体2のほかに、吸気通路10と、排気通路20と、ターボチャージャ30と、EGR(Exhaust Gas Recirculation)装置40と、を備える。なお、吸気通路10および排気通路20の中に図示した各矢印は、空気(吸気、排気)の流れを示している。
【0016】
吸気通路10へ吸入された空気は、ターボチャージャ30のコンプレッサ31により圧縮され、インタークーラ11で冷却され、インテークスロットルバルブ12によって流量を調整されて、インテークマニホールド13を経てエンジン本体2に供給される。
【0017】
図示は省略しているが、エンジン本体2には、各気筒に対して燃料の噴射(例えば、メイン噴射、アフター噴射等)を行う燃料噴射装置が設けられている。なお、本実施の形態では、エンジン本体2がディーゼルエンジンである場合を例に挙げて説明するが、これに限定されない。
【0018】
エンジン本体2から排出された排気は、エキゾーストマニホールド21から排気通路20へ排出される。排気通路20へ排出された排気の一部は、EGR装置40(具体的には、EGR上流側通路41)へ流入する。なお、以下では、EGR装置40へ流入した排気を「EGRガス」という。
【0019】
EGR装置40は、EGR上流側通路41、EGRクーラ42、EGR下流側通路43、EGRバルブ44を含む。
【0020】
上流側通路41へ流入したEGRガスは、EGRクーラ42によって冷却された後、EGR下流側通路43を流れ、EGRバルブ44によって流量を調整されて、吸気通路10へ環流される。EGR下流側通路43と吸気通路10とは、インテークスロットルバルブ12よりも下流側において連通している。
【0021】
一方、EGR上流側通路41へ分流しなかった排気は、ターボチャージャ30のタービン32へ流入し、タービン32を回転駆動させる。
【0022】
その後、排気は、タービン32の下流側に設けられたエキゾーストブレーキバルブ23、排気中のNOxを浄化するSCR触媒50(NOx浄化触媒の一例)を経て、大気中へ放出される。
【0023】
図示は省略しているが、エキゾーストブレーキバルブ23の下流側かつSCR触媒50の上流側には、排気通路20内に、還元剤としての尿素水を噴射する尿素水インジェクタが設けられている。排気通路20内に噴射された尿素水からはアンモニアが発生し、このアンモニアがSCR触媒50に供給される。これにより、SCR触媒50において、排気中のNOxが窒素に還元される。
【0024】
また、図1に示すように、タービン32よりも下流側の排気通路20において、タービン32とSCR触媒50との間には、触媒等(例えば、DOC)は設けられていない。
【0025】
なお、SCR触媒50の下流側に、さらに、触媒(例えば、SCR触媒)やフィルタ(例えば、ディーゼル微粒子捕集フィルタ)等が設けられてもよい。
【0026】
以上、エンジン1の構成について説明した。
【0027】
次に、図2を用いて、排気制御装置100の構成について説明する。図2は、排気制御装置100の構成例を模式的に示す図である。
【0028】
なお、図示は省略するが、排気制御装置100は、ハードウェアとして、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などの主記憶装置、コンピュータプログラムを格納したハードディスク、フラッシュメモリなどの補助記憶装置、それらを接続するバス等を有する。以下に説明する排気制御装置100の機能は、CPUが補助記憶装置から読み出したコンピュータプログラムを主記憶装置のRAMに展開して実行することにより実現される。
【0029】
排気制御装置100は、判定部110と、制御部120とを有する。
【0030】
判定部110は、エンジン1の動作中におけるエンジン回転数およびエンジントルクを取得し、それらに基づいて、予め定められた複数の領域のうちのどの領域に相当するかを判定する。
【0031】
なお、判定部110が取得するエンジン回転数およびエンジントルクは、例えば、図示しないセンサで検知された値であってもよいし、それ以外の方法で算出された値であってもよい。
【0032】
ここで、図3を用いて、予め定められた複数の領域の具体例について説明する。図3は、複数の領域の一例を模式的に示す図である。図3において、縦軸はエンジントルクを示し、横軸はエンジン回転数を示す。
【0033】
図3に示すように、領域A、B、Cは、エンジン回転数とエンジントルクとに応じて定められている。領域Aは、エンジン回転数に関わらず、エンジントルクが第1閾値a以上の領域である(第1領域の一例)。領域Bは、エンジントルクが第1閾値a未満であり、かつ、エンジン回転数が第2閾値b未満の領域である(第2領域の一例)。領域Cは、エンジントルクが第1閾値a未満であり、かつ、エンジン回転数が第2閾値b以上の領域である(第3領域の一例)。
【0034】
このような領域A~Cを示すデータ(例えば、マップデータ)は、判定部110にとって既知である。
【0035】
なお、以下では、判定部110によって判定された領域を「判定領域」という。
【0036】
制御部120は、インテークスロットルバルブ12、エキゾーストブレーキバルブ23、およびEGRバルブ44それぞれの開度を調整したり、燃料噴射装置を動作させたりすることにより、排気を昇温させるとともに、還元ガス(例えば、一酸化炭素を含むガス)を発生させる。
【0037】
具体的には、制御部120は、SCR触媒50の温度を第1設定温度(例えば、500度)以上に昇温させ、タービン32の出口側の排気の温度を第1設定温度より高い第2設定温度(例えば、700度)以下に維持し、SCR触媒50における脱硫反応に寄与する還元ガスを発生させる制御を実行する。
【0038】
第2設定温度は、例えば、タービン32の耐久性と安全性が確保される(換言すれば、タービン32に不具合が発生しない)上限の温度である。
【0039】
また、制御部120は、判定領域に基づいて、上述した制御の内容を変更する。
【0040】
例えば、判定領域が領域Aである場合、制御部120は、アフター噴射、インテークスロットルバルブ12の絞り、メイン噴射の噴射タイミングの遅角、および、EGRバルブ44の絞りを制御する。
【0041】
例えば、判定領域が領域Bである場合、制御部120は、アフター噴射、インテークスロットルバルブ12の絞り、メイン噴射の噴射タイミングの遅角、および、エキゾーストブレーキバルブ23の絞りを制御する。
【0042】
例えば、判定領域が領域Cである場合、制御部120は、アフター噴射、インテークスロットルバルブ12の絞り、および、メイン噴射の噴射タイミングの遅角を制御する。
【0043】
なお、制御部120は、インテークスロットルバルブ12の絞り、エキゾーストブレーキバルブ23の絞り、および、EGRバルブ44の絞りにおいて、エンジントルクが低下しないようにバルブの開度を小さくする。また、メイン噴射の噴射タイミングの遅角において、遅角量は、予め定められたマップ(エンジン回転数とエンジントルクに応じて遅角量が定められたデータ)に基づいて決定される。
【0044】
以上、排気制御装置100の構成について説明した。
【0045】
以上説明したように、本実施の形態の排気制御装置100は、エンジン本体2からの排気が流れる排気通路20において、ターボチャージャ30のタービン32の下流側にSCR触媒50が設けられ、タービン32とSCR触媒50との間に酸化触媒が設けられていない排気系で用いられる排気制御装置であって、SCR触媒50の温度を第1設定温度以上に昇温させ、タービン32の出口側の排気の温度を第1設定温度より高い第2設定温度以下に維持し、SCR触媒50における脱硫反応に寄与する還元ガスを発生させる制御を実行する制御部120と、エンジン本体2の動作中におけるエンジン回転数およびエンジントルクに基づいて、エンジン回転数とエンジントルクとに応じて予め定められた複数の領域のうちのどの領域に相当するかを判定する判定部110と、を有し、制御部120は、判定された領域に基づいて、制御の内容を変更することを特徴とする。
【0046】
この特徴により、エンジン回転数とエンジントルクに応じて、排気の昇温と還元ガスの発生の両方を実現することができる。すなわち、タービンの耐久性と安全性を確保しつつ、脱硫速度の低下を抑制することができる。
【0047】
なお、本開示は、上記実施の形態の説明に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本開示の排気制御装置は、NOx浄化触媒の脱硫に有用である。
【符号の説明】
【0049】
1 エンジン
2 エンジン本体
10 吸気通路
11 インタークーラ
12 インテークスロットルバルブ
13 インテークマニホールド
20 吸気通路
21 エキゾーストマニホールド
23 エキゾーストブレーキバルブ
30 ターボチャージャ
31 コンプレッサ
32 タービン
40 EGR装置
41 EGR上流側通路
42 EGRクーラ
43 EGR下流側通路
44 EGRバルブ
50 SCR触媒
100 排気制御装置
110 判定部
120 制御部
図1
図2
図3