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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044565
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】印刷装置および印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240326BHJP
   B41J 2/145 20060101ALI20240326BHJP
   B41J 2/205 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B41J2/01 205
B41J2/01 129
B41J2/01 123
B41J2/01 451
B41J2/145
B41J2/205
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150159
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100104695
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 明宏
(74)【代理人】
【識別番号】100148459
【弁理士】
【氏名又は名称】河本 悟
(72)【発明者】
【氏名】米谷 和朗
(72)【発明者】
【氏名】池田 佑策
(72)【発明者】
【氏名】坂井 智幸
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB13
2C056EB45
2C056EB58
2C056EB59
2C056EC72
2C056EC79
2C056EE17
2C056EE18
2C056FA04
2C056FA13
2C056FB02
2C056HA42
2C056HA44
2C057AF21
2C057AG14
2C057AG44
2C057AL31
2C057AM28
2C057AN05
2C057BA14
2C057CA01
(57)【要約】
【課題】印刷物の高品質化を可能とするインクジェット印刷装置(印刷媒体にインクを吐出することにより印刷を行う印刷装置)を実現する。
【解決手段】まず、基材上の領域のうちの第2のインク(典型的には、ホワイトインク)が吐出されるべき領域である補正領域が決定される(S10)。次に、補正領域に第2のインクが吐出されるよう濃度データが補正される(S20)。その後、基材への実際の印刷が開始される(S30)。そして、補正領域に第2のインクが吐出され(S40)、補正領域において基材上に吐出された第2のインクの上に第1のインク(典型的には、カラーインク)が吐出される(S50)。
【選択図】図28
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体にインクを吐出することにより印刷を行う印刷装置であって、
前記印刷媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部によって搬送される前記印刷媒体に第1のインクを吐出する、複数のインク吐出口を含む第1のインク吐出ヘッドと、
前記搬送部によって前記印刷媒体が搬送される方向に関して前記第1のインク吐出ヘッドよりも上流側に配置され、前記搬送部によって搬送される前記印刷媒体に第2のインクを吐出する、複数のインク吐出口を含む第2のインク吐出ヘッドと、
前記印刷媒体上の領域のうちの前記第2のインクが吐出されるべき領域である補正領域を決定する補正領域決定部と、
前記補正領域に前記第1のインクが吐出される前に前記補正領域に前記第2のインクが吐出されるように、前記第2のインク吐出ヘッドからの前記第2のインクの吐出を制御するインク吐出制御部と
を備え、
前記印刷媒体上での前記第1のインクの濡れ広がり範囲は、前記印刷媒体上に直接に前記第1のインクが吐出されたときよりも前記印刷媒体上に吐出された前記第2のインク上に前記第1のインクが吐出されたときの方が大きいことを特徴とする、印刷装置。
【請求項2】
前記補正領域決定部は、前記第1のインク吐出ヘッドに含まれる複数のインク吐出口のうちの吐出欠陥を有するインク吐出口である欠陥吐出口の位置に基づいて前記補正領域を決定することを特徴とする、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記補正領域決定部は、前記欠陥吐出口に隣接するインク吐出口に対応するインク吐出口であって前記第2のインク吐出ヘッドに含まれるインク吐出口から前記第2のインクが吐出されるよう、前記補正領域を決定することを特徴とする、請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記補正領域決定部は、複数の色のインクのそれぞれの濃度データからなる印刷データに基づいて、前記欠陥吐出口から吐出されるべき単色のインクであって予め定められた値以上の濃度の単色のインクによる印刷が行われる領域のみが前記補正領域に含まれるように前記補正領域を決定することを特徴とする、請求項2に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記補正領域決定部は、前記搬送部によって前記印刷媒体が搬送される方向に関して前記第2のインクが吐出される1個の画素と前記第2のインクが吐出されない1個の画素とが交互に現れるよう、前記補正領域を決定することを特徴とする、請求項2に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記補正領域決定部は、前記搬送部によって前記印刷媒体が搬送される方向に関して前記第2のインクが吐出される2個の画素と前記第2のインクが吐出されない2個の画素とが交互に現れるよう、前記補正領域を決定することを特徴とする、請求項2に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記第1のインク吐出ヘッドは、千鳥状に配置された複数のインク吐出ヘッドを含み、
前記補正領域決定部は、1つのインク吐出ヘッドによってインクが吐出される領域と他の1つのインク吐出ヘッドによってインクが吐出される領域との重なりが生じる領域が前記補正領域に含まれるように前記補正領域を決定することを特徴とする、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記補正領域決定部は、複数の色のインクのそれぞれの濃度データからなる印刷データに基づいて、単色のインクによる印刷が行われる領域のみが前記補正領域に含まれるように前記補正領域を決定することを特徴とする、請求項7に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記補正領域決定部は、前記搬送部によって前記印刷媒体が搬送される方向に関して前記第2のインクが吐出される1個の画素と前記第2のインクが吐出されない1個の画素とが交互に現れるよう、前記補正領域を決定することを特徴とする、請求項7に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記補正領域決定部は、前記搬送部によって前記印刷媒体が搬送される方向に関して前記第2のインクが吐出される1個の画素と前記第2のインクが吐出されない3個の画素とが交互に現れるよう、前記補正領域を決定することを特徴とする、請求項7に記載の印刷装置。
【請求項11】
前記補正領域決定部は、前記第1のインクの濃度が100%である領域が前記補正領域に含まれるように前記補正領域を決定することを特徴とする、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項12】
前記補正領域決定部は、印刷画像を形成するために前記第2のインクが吐出される領域は前記補正領域に含まれることがないよう、前記補正領域を決定することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項13】
前記第1のインクおよび前記第2のインクは、紫外線硬化型インクであることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項14】
前記第1のインク吐出ヘッドから前記印刷媒体に吐出された前記第1のインクを紫外線照射により硬化させる第1の紫外線照射部と、
前記第2のインク吐出ヘッドから前記印刷媒体に吐出された前記第2のインクを紫外線照射により硬化させる第2の紫外線照射部と、
前記第2の紫外線照射部による紫外線照射を制御する紫外線照射制御部と
を更に備え、
前記補正領域への前記第2のインクの吐出が行われるときには、前記紫外線照射制御部は、前記第2の紫外線照射部による紫外線照射を停止する、または、前記第2の紫外線照射部による紫外線照射の強度を低下させることを特徴とする、請求項13に記載の印刷装置。
【請求項15】
前記第1のインク吐出ヘッドは、互いに異なる色のカラーインクを吐出する、複数の色のそれぞれに対応する複数のインク吐出ヘッドからなり、
前記インク吐出制御部は、前記複数のインク吐出ヘッドのうちの前記補正領域において前記第2のインク上に前記第1のインクとして吐出されるカラーインクに対応するインク吐出ヘッドから前記第1の紫外線照射部までの距離が近いほど前記第2のインク吐出ヘッドから吐出される前記第2のインクのサイズが大きくなるよう、前記第2のインク吐出ヘッドからの前記第2のインクの吐出を制御することを特徴とする、請求項14に記載の印刷装置。
【請求項16】
前記第2のインク吐出ヘッドは、複数のサイズで前記第2のインクを吐出することが可能に構成されており、
前記インク吐出制御部は、前記補正領域には前記第2のインク吐出ヘッドによって前記複数のサイズのうち最も小さいサイズで前記第2のインクが吐出されるよう、前記第2のインク吐出ヘッドからの前記第2のインクの吐出を制御することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項17】
前記印刷媒体の色は、白色であって、
前記第1のインクは、カラーインクであって、
前記第2のインクは、白色インクであることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項18】
前記印刷媒体の色は、透明であって、
前記第1のインクは、カラーインクであって、
前記第2のインクは、透明インクであることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項19】
前記第1のインクと前記第2のインクとは、明度値または色差に基づいて選択されることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項20】
印刷媒体を搬送する搬送部と前記搬送部によって搬送される前記印刷媒体に第1のインクを吐出する第1のインク吐出ヘッドと前記搬送部によって搬送される前記印刷媒体に第2のインクを吐出する第2のインク吐出ヘッドとを備える印刷装置を用いた印刷方法であって、
前記印刷媒体上の領域のうちの前記第2のインクが吐出されるべき領域である補正領域を決定する補正領域決定ステップと、
前記第2のインク吐出ヘッドから前記第2のインクを吐出する第2のインク吐出ステップと、
前記第1のインク吐出ヘッドから前記第1のインクを吐出する第1のインク吐出ステップと
を含み、
前記印刷媒体上での前記第1のインクの濡れ広がり範囲は、前記印刷媒体上に直接に前記第1のインクが吐出されたときよりも前記印刷媒体上に吐出された前記第2のインク上に前記第1のインクが吐出されたときの方が大きく、
前記第1のインク吐出ステップで前記補正領域に前記第1のインクが吐出される前に、前記第2のインク吐出ステップで前記補正領域に前記第2のインクが吐出されることを特徴とする、印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出する多数のノズルが設けられたインク吐出ヘッド(印刷ヘッド)を有する印刷装置およびそれを用いた印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、インクを基材(印刷用紙など)に吐出することにより印刷を行うインクジェット方式の印刷装置(以下、単に「インクジェット印刷装置」という。)が知られている。インクジェット印刷装置では、一般的には、水性インクを用いて印刷が行われている。しかしながら、近年、例えばラベル印刷向けとして、UVインク(紫外線硬化型インク)を用いて印刷を行うインクジェット印刷装置の開発が進展している。UVインクを用いるインクジェット印刷装置では、インク吐出ヘッドから吐出されたUVインクを基材に定着させるために、UVインクへのUV光(紫外線)の照射が行われる。
【0003】
ところで、インクジェット印刷装置に関し、インク吐出ヘッドに設けられているノズルには個体差がある。それ故、インク吐出ヘッドに設けられている多数のノズルから同じ駆動信号に基づいてインクが吐出された場合であっても、それら多数のノズルから吐出されるインクの量にはばらつきが生じる。そのような状態で印刷が実行された場合、高品質の印刷物は得られない。そこで、全てのノズルから同じようにインクが吐出されるよう印刷データの濃度を補正する濃度均一化補正が行われている。
【0004】
また、インクジェット印刷装置では、長期間の不使用によるインクの固形化などに起因して、インクの吐出不良が生じることがある。インクの吐出不良が生じると、印刷画像において、吐出不良状態のノズル(以下、「欠陥ノズル」という)に対応するドットの欠落すなわちドット抜けが生じる。そこで、欠陥ノズルから吐出されるべきインクが他のノズル(典型的には、欠陥ノズルに隣接するノズル)から吐出されるよう印刷データの濃度を補正するノズル欠け補正が行われている。なお、特開2014-188785号公報に、ノズル欠け補正の一例が開示されている。
【0005】
図29を参照しつつ、濃度均一化補正およびノズル欠け補正について更に説明する。ここでは、5個のノズルに対応する5個の画素部9(1)~9(5)に着目する。5個の画素部9(1)~9(5)では上記5個のノズルから吐出される同じ色のインクによる単色の印刷が行われるものと仮定する。また、RIP処理によって生成された印刷データでは符号91を付した部分に示すように5個の画素部9(1)~9(5)の濃度(網%)はいずれも50であると仮定する。濃度均一化補正により、5個の画素部9(1)~9(5)の濃度が例えば符号92を付した部分に示すように補正される。この例では、同じ駆動信号に基づいて画素部9(1)に対応するノズルからは画素部9(2)に対応するノズルに比べて(5/4)倍のインクが吐出されるので、画素部9(1)の濃度は50の(4/5)倍である40に補正されている。また、同じ駆動信号に基づいて画素部9(4)に対応するノズルからは画素部9(2)に対応するノズルに比べて(5/6)倍のインクが吐出されるので、画素部9(4)の濃度は50の(6/5)倍である60に補正されている。この例では、5個のノズルのうち画素部9(3)に対応するノズルが欠陥ノズルである。そこで、符号92を付した部分に示すデータに対して、ノズル欠け補正が施される。これにより、5個の画素部9(1)~9(5)の濃度は符号93を付した部分に示すように補正される。これに関し、ノズル欠け補正前の画素部9(3)の濃度が40であるので、画素部9(2)の濃度に20が加算され、かつ、画素部9(4)の濃度に20が加算されている。すなわち、画素部9(2)の濃度は70に補正され、画素部9(4)の濃度は80に補正されている。
【0006】
以上のような濃度均一化補正およびノズル欠け補正によって、ノズル間の個体差や欠陥ノズルの存在に起因する印刷画像におけるムラの発生が抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014-188785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、欠陥ノズルが生じた場合に、当該欠陥ノズルから吐出されるべき量のインクがノズル欠け補正が行われることによって他のノズルから吐出されても欠陥が好適に解消された印刷物が得られないことがある。特に、単色高濃度の印刷が行われる領域に対応するノズルに欠陥が生じた場合に、他のノズルから吐出されるインクのドットサイズの大きさが欠陥を解消するのには不十分となりやすい。このように、印刷対象の画像によっては従来のノズル欠け補正では十分な品質の印刷物が得られない。
【0009】
また、一般にインク吐出ヘッドには複数のヘッドモジュールが含まれているが、或るヘッドモジュールによってインクが吐出される領域とそれに隣接するヘッドモジュールによってインクが吐出される領域との重なりが生じる領域において色ムラが生じることがある。さらに、いわゆるベタ画像の印刷品質を高めたいというユーザーの強い要求がある。
【0010】
以上のような事情に鑑み、本発明は、印刷物の高品質化を可能とするインクジェット印刷装置(印刷媒体にインクを吐出することにより印刷を行う印刷装置)を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明は、印刷媒体にインクを吐出することにより印刷を行う印刷装置であって、
前記印刷媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部によって搬送される前記印刷媒体に第1のインクを吐出する、複数のインク吐出口を含む第1のインク吐出ヘッドと、
前記搬送部によって前記印刷媒体が搬送される方向に関して前記第1のインク吐出ヘッドよりも上流側に配置され、前記搬送部によって搬送される前記印刷媒体に第2のインクを吐出する、複数のインク吐出口を含む第2のインク吐出ヘッドと、
前記印刷媒体上の領域のうちの前記第2のインクが吐出されるべき領域である補正領域を決定する補正領域決定部と、
前記補正領域に前記第1のインクが吐出される前に前記補正領域に前記第2のインクが吐出されるように、前記第2のインク吐出ヘッドからの前記第2のインクの吐出を制御するインク吐出制御部と
を備え、
前記印刷媒体上での前記第1のインクの濡れ広がり範囲は、前記印刷媒体上に直接に前記第1のインクが吐出されたときよりも前記印刷媒体上に吐出された前記第2のインク上に前記第1のインクが吐出されたときの方が大きいことを特徴とする。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、
前記補正領域決定部は、前記第1のインク吐出ヘッドに含まれる複数のインク吐出口のうちの吐出欠陥を有するインク吐出口である欠陥吐出口の位置に基づいて前記補正領域を決定することを特徴とする。
【0013】
第3の発明は、第2の発明において、
前記補正領域決定部は、前記欠陥吐出口に隣接するインク吐出口に対応するインク吐出口であって前記第2のインク吐出ヘッドに含まれるインク吐出口から前記第2のインクが吐出されるよう、前記補正領域を決定することを特徴とする。
【0014】
第4の発明は、第2の発明において、
前記補正領域決定部は、複数の色のインクのそれぞれの濃度データからなる印刷データに基づいて、前記欠陥吐出口から吐出されるべき単色のインクであって予め定められた値以上の濃度の単色のインクによる印刷が行われる領域のみが前記補正領域に含まれるように前記補正領域を決定することを特徴とする。
【0015】
第5の発明は、第2の発明において、
前記補正領域決定部は、前記搬送部によって前記印刷媒体が搬送される方向に関して前記第2のインクが吐出される1個の画素と前記第2のインクが吐出されない1個の画素とが交互に現れるよう、前記補正領域を決定することを特徴とする。
【0016】
第6の発明は、第2の発明において、
前記補正領域決定部は、前記搬送部によって前記印刷媒体が搬送される方向に関して前記第2のインクが吐出される2個の画素と前記第2のインクが吐出されない2個の画素とが交互に現れるよう、前記補正領域を決定することを特徴とする。
【0017】
第7の発明は、第1の発明において、
前記第1のインク吐出ヘッドは、千鳥状に配置された複数のインク吐出ヘッドを含み、
前記補正領域決定部は、1つのインク吐出ヘッドによってインクが吐出される領域と他の1つのインク吐出ヘッドによってインクが吐出される領域との重なりが生じる領域が前記補正領域に含まれるように前記補正領域を決定することを特徴とする。
【0018】
第8の発明は、第7の発明において、
前記補正領域決定部は、複数の色のインクのそれぞれの濃度データからなる印刷データに基づいて、単色のインクによる印刷が行われる領域のみが前記補正領域に含まれるように前記補正領域を決定することを特徴とする。
【0019】
第9の発明は、第7の発明において、
前記補正領域決定部は、前記搬送部によって前記印刷媒体が搬送される方向に関して前記第2のインクが吐出される1個の画素と前記第2のインクが吐出されない1個の画素とが交互に現れるよう、前記補正領域を決定することを特徴とする。
【0020】
第10の発明は、第7の発明において、
前記補正領域決定部は、前記搬送部によって前記印刷媒体が搬送される方向に関して前記第2のインクが吐出される1個の画素と前記第2のインクが吐出されない3個の画素とが交互に現れるよう、前記補正領域を決定することを特徴とする。
【0021】
第11の発明は、第1の発明において、
前記補正領域決定部は、前記第1のインクの濃度が100%である領域が前記補正領域に含まれるように前記補正領域を決定することを特徴とする。
【0022】
第12の発明は、第1から第11までのいずれかの発明において、
前記補正領域決定部は、印刷画像を形成するために前記第2のインクが吐出される領域は前記補正領域に含まれることがないよう、前記補正領域を決定することを特徴とする。
【0023】
第13の発明は、第1から第11までのいずれかの発明において、
前記第1のインクおよび前記第2のインクは、紫外線硬化型インクであることを特徴とする。
【0024】
第14の発明は、第13の発明において、
前記印刷装置は、
前記第1のインク吐出ヘッドから前記印刷媒体に吐出された前記第1のインクを紫外線照射により硬化させる第1の紫外線照射部と、
前記第2のインク吐出ヘッドから前記印刷媒体に吐出された前記第2のインクを紫外線照射により硬化させる第2の紫外線照射部と、
前記第2の紫外線照射部による紫外線照射を制御する紫外線照射制御部と
を更に備え、
前記補正領域への前記第2のインクの吐出が行われるときには、前記紫外線照射制御部は、前記第2の紫外線照射部による紫外線照射を停止する、または、前記第2の紫外線照射部による紫外線照射の強度を低下させることを特徴とする。
【0025】
第15の発明は、第14の発明において、
前記第1のインク吐出ヘッドは、互いに異なる色のカラーインクを吐出する、複数の色のそれぞれに対応する複数のインク吐出ヘッドからなり、
前記インク吐出制御部は、前記複数のインク吐出ヘッドのうちの前記補正領域において前記第2のインク上に前記第1のインクとして吐出されるカラーインクに対応するインク吐出ヘッドから前記第1の紫外線照射部までの距離が近いほど前記第2のインク吐出ヘッドから吐出される前記第2のインクのサイズが大きくなるよう、前記第2のインク吐出ヘッドからの前記第2のインクの吐出を制御することを特徴とする。
【0026】
第16の発明は、第1から第11までのいずれかの発明において、
前記第2のインク吐出ヘッドは、複数のサイズで前記第2のインクを吐出することが可能に構成されており、
前記インク吐出制御部は、前記補正領域には前記第2のインク吐出ヘッドによって前記複数のサイズのうち最も小さいサイズで前記第2のインクが吐出されるよう、前記第2のインク吐出ヘッドからの前記第2のインクの吐出を制御することを特徴とする。
【0027】
第17の発明は、第1から第11までのいずれかの発明において、
前記印刷媒体の色は、白色であって、
前記第1のインクは、カラーインクであって、
前記第2のインクは、白色インクであることを特徴とする。
【0028】
第18の発明は、第1から第11までのいずれかの発明において、
前記印刷媒体の色は、透明であって、
前記第1のインクは、カラーインクであって、
前記第2のインクは、透明インクであることを特徴とする。
【0029】
第19の発明は、第1から第11までのいずれかの発明において、
前記第1のインクと前記第2のインクとは、明度値または色差に基づいて選択されることを特徴とする。
【0030】
第20の発明は、印刷媒体を搬送する搬送部と前記搬送部によって搬送される前記印刷媒体に第1のインクを吐出する第1のインク吐出ヘッドと前記搬送部によって搬送される前記印刷媒体に第2のインクを吐出する第2のインク吐出ヘッドとを備える印刷装置を用いた印刷方法であって、
前記印刷媒体上の領域のうちの前記第2のインクが吐出されるべき領域である補正領域を決定する補正領域決定ステップと、
前記第2のインク吐出ヘッドから前記第2のインクを吐出する第2のインク吐出ステップと、
前記第1のインク吐出ヘッドから前記第1のインクを吐出する第1のインク吐出ステップと
を含み、
前記印刷媒体上での前記第1のインクの濡れ広がり範囲は、前記印刷媒体上に直接に前記第1のインクが吐出されたときよりも前記印刷媒体上に吐出された前記第2のインク上に前記第1のインクが吐出されたときの方が大きく、
前記第1のインク吐出ステップで前記補正領域に前記第1のインクが吐出される前に、前記第2のインク吐出ステップで前記補正領域に前記第2のインクが吐出されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
上記第1の発明によれば、印刷装置には、第1のインクを吐出する第1のインク吐出ヘッドと、印刷媒体の搬送方向に関して第1のインク吐出ヘッドよりも上流側に配置された第2のインクを吐出する第2のインク吐出ヘッドとが設けられている。そして、補正領域決定部によって決定された補正領域についての印刷が行われる際には、第1のインクが吐出される前に第2のインクが吐出される。ここで、印刷媒体上での第1のインクの濡れ広がり範囲は、印刷媒体上に直接に第1のインクが吐出されたときよりも印刷媒体上に吐出された第2のインク上に第1のインクが吐出されたときの方が大きい。従って、補正領域では、第1のインクのドットサイズが本来よりも大きくなる。それ故、例えば、欠陥ノズルに対応する領域、或るインク吐出ヘッドによってインクが吐出される領域とそれに隣接するインク吐出ヘッドによってインクが吐出される領域との重なりが生じる領域、ベタ画像の印刷が行われる領域などを補正領域に定めることによって、従来よりも印刷品質を高めることが可能となる。以上のように、印刷物の高品質化を可能とする印刷装置(印刷媒体にインクを吐出することにより印刷を行う印刷装置)が実現される。
【0032】
上記第2の発明によれば、第1のインク吐出ヘッドに欠陥吐出口(欠陥ノズル)が検出されたときに、当該欠陥吐出口の位置を考慮して補正領域が決定される。これにより、欠陥吐出口の存在に起因するムラの発生を抑制することが可能となる。
【0033】
上記第3の発明によれば、欠陥吐出口の存在に起因するムラの発生が効果的に抑制される。
【0034】
上記第4の発明によれば、欠陥吐出口の存在に起因するムラが目立つ領域のみが補正領域に定められるので、第2のインクの無駄な消費が抑制される。
【0035】
上記第5の発明によれば、上記第2の発明と同様の効果が得られる。
【0036】
上記第6の発明によれば、上記第2の発明と同様の効果が得られる。
【0037】
上記第7の発明によれば、或るインク吐出ヘッドによってインクが吐出される領域とそれに隣接するインク吐出ヘッドによってインクが吐出される領域との重なりが生じる領域における色ムラの発生が効果的に抑制される。
【0038】
上記第8の発明によれば、色ムラが目立つ領域のみが補正領域に定められるので、第2のインクの無駄な消費が抑制される。
【0039】
上記第9の発明によれば、上記第7の発明と同様の効果が得られる。
【0040】
上記第10の発明によれば、上記第7の発明と同様の効果が得られる。
【0041】
上記第11の発明によれば、ベタ画像の印刷品質が向上する。
【0042】
上記第12の発明によれば、印刷画像を形成するために用いられるインクを第2のインクとして採用したことに起因して印刷品質が低下することはない。
【0043】
上記第13の発明によれば、紫外線硬化型インクを用いる印刷装置による印刷で得られる印刷物の高品質化が可能となる。
【0044】
上記第14の発明によれば、第2のインクの濡れ広がり範囲が本来よりも大きくなるので、第2のインク上に吐出される第1のインクの濡れ広がり範囲も効果的に大きくなる。従って、より効果的に印刷品質が高められる。
【0045】
上記第15の発明によれば、互いに異なる色のカラーインクを吐出する複数のインク吐出ヘッドのうちのいずれのインク吐出ヘッドから吐出されるカラーインクを第2のインク上に吐出した場合でもカラーインクの濡れ広がり範囲が好適な範囲となる。
【0046】
上記第16の発明によれば、第1のインクの濡れ広がり範囲を広くするために第2のインクが必要以上に消費されるということが防止される。
【0047】
上記第17の発明によれば、第1のインクの濡れ広がり範囲を広くするために用いられる第2のインクは印刷媒体の色と同じ色のインクである。このため、補正領域に吐出された第2のインクの色が印刷画像上で目立つことはない。
【0048】
上記第18の発明によれば、上記第17の発明と同様の効果が得られる。
【0049】
上記第19の発明によれば、プロセスカラーのインクのみを用いて印刷を行う印刷装置においても、従来よりも印刷品質を高めることが可能となる。
【0050】
上記第20の発明によれば、上記第1の発明と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】本発明の第1の実施形態に係る印刷システムの全体構成図である。
図2】上記第1の実施形態におけるインクジェット印刷装置の一構成例を示す模式図である。
図3】上記第1の実施形態における記録部の構成を模式的に示す平面図である。
図4】上記第1の実施形態において、1つのインク吐出ヘッドのインク吐出面の一構成例を示す平面図である。
図5】上記第1の実施形態において、ヘッドモジュールにおけるノズルの配置について説明するための図である。
図6】上記第1の実施形態における印刷制御装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図7】上記第1の実施形態において、ホワイト補正の概要について説明するための図である。
図8】上記第1の実施形態において、ホワイト補正が行われた領域でのインクの吐出について説明するための図である。
図9】フィルム基材上でのカラーインクの濡れ広がりに関する実験の結果の一例を示す図である。
図10】上記第1の実施形態における濃度補正処理部の詳細な機能構成を示すブロック図である。
図11】上記第1の実施形態において、ホワイト補正用のテンプレートの一例を示す図である。
図12】上記第1の実施形態において、補正パターンの作成について説明するための図である。
図13】上記第1の実施形態において、補正パターンの作成について説明するための図である。
図14】上記第1の実施形態において、ホワイト補正用のテンプレートの一例を示す図である。
図15】上記第1の実施形態において、ホワイト補正用のテンプレートの一例を示す図である。
図16】上記第1の実施形態において、ホワイト補正用のテンプレートの一例を示す図である。
図17】上記第1の実施形態における濃度補正の手順について説明するためのフローチャートである。
図18】上記第1の実施形態の第1の変形例において、透明補正の概要について説明するための図である。
図19】上記第1の実施形態の第1の変形例において、透明補正が行われた領域でのインクの吐出について説明するための図である。
図20】上記第1の実施形態の第2の変形例において、イエロー補正の概要について説明するための図である。
図21】上記第1の実施形態の第2の変形例において、イエロー補正が行われた領域でのインクの吐出について説明するための図である。
図22】本発明の第2の実施形態の概要について説明するための図である。
図23】上記第2の実施形態における濃度補正処理部の詳細な機能構成を示すブロック図である。
図24】上記第2の実施形態において、ホワイト補正用のテンプレートの一例を示す図である。
図25】上記第2の実施形態における濃度補正の手順について説明するためのフローチャートである。
図26】本発明の第3の実施形態における濃度補正処理部の詳細な機能構成を示すブロック図である。
図27】上記第3の実施形態において、補正対象ノズルの特定について説明するための図である。
図28】上記第1~第3の実施形態を包括する概念における概略手順を示すフローチャートである。
図29】従来例に関し、濃度均一化補正およびノズル欠け補正について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
【0053】
<1.第1の実施形態>
<1.1 印刷システムの全体構成>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る印刷システムの全体構成図である。この印刷システムは、インクジェット印刷装置10と印刷データ生成装置30とによって構成されている。インクジェット印刷装置10と印刷データ生成装置30とは通信回線4によって互いに接続されている。印刷データ生成装置30は、PDFファイルなどの入稿データに対してRIP処理等を施して印刷データを生成する。印刷データは、複数の色のインクのそれぞれの濃度データからなる。印刷データ生成装置30で生成された印刷データは、通信回線4を介してインクジェット印刷装置10に送信される。インクジェット印刷装置10は、印刷版を用いることなく、印刷データ生成装置30から送信された印刷データに基づいて、フィルムや印刷用紙などの印刷媒体としての基材にインクを吐出することにより印刷を行う。これに関し、本実施形態においては、印刷用のインクにはUVインク(紫外線硬化型インク)が採用される。インクジェット印刷装置10は、印刷機本体100と、印刷機本体100の動作を制御する印刷制御装置200とによって構成されている。
【0054】
<1.2 インクジェット印刷装置の構成>
図2は、インクジェット印刷装置10の一構成例を示す模式図である。上述したように、このインクジェット印刷装置10は、印刷機本体100と印刷制御装置200とによって構成されている。印刷機本体100は、基材12を供給する基材送出部11と、基材12を印刷機構内部へと搬送するための第1の駆動ローラ13と、印刷機構内部で基材12を搬送するための複数個の支持ローラ14と、基材12へのインクの吐出および基材12に吐出されたインクの硬化を行うことにより基材12に画像を記録する記録部15と、印刷画像(印刷後の基材12)を撮像する撮像部16と、基材12を印刷機構内部から出力するための第2の駆動ローラ17と、印刷後の基材12を巻き取る基材巻取部18とを備えている。後述するように、記録部15には、インクを吐出するインク吐出ヘッドと、インクを硬化させるUV-LED(紫外線を発する発光ダイオード)とが含まれている。印刷制御装置200は、以上のような構成の印刷機本体100の動作を制御する。なお、第1の駆動ローラ13と複数個の支持ローラ14と第2の駆動ローラ17とによって搬送部が実現される。
【0055】
ところで、本実施形態においては、所望の印刷物を得るための印刷を実行する前に、インク吐出ヘッド内のノズルの状態を検査するための検査チャートの印刷が行われる。検査チャートの印刷で得られた印刷画像は撮像部16によって撮像され、それによって得られた撮像データは印刷制御装置200へと送られる。そして、印刷制御装置200において、撮像データに基づき、後述する濃度補正が行われる。
【0056】
図3は、本実施形態における記録部15の構成を模式的に示す平面図である。記録部15には、インクを吐出する複数のインク吐出ヘッド150と、基材12に吐出されたインクを紫外線照射により硬化させるための複数のUV-LED159とが含まれている。より詳しくは、記録部15は、ホワイトインクを吐出するインク吐出ヘッド150(W)と、基材12に吐出されたホワイトインクを紫外線照射により硬化させるためのUV-LED159(b)と、ブルーインクを吐出するインク吐出ヘッド150(B)と、オレンジインクを吐出するインク吐出ヘッド150(O)と、シアンインクを吐出するインク吐出ヘッド150(C)と、マゼンタインクを吐出するインク吐出ヘッド150(M)と、イエローインクを吐出するインク吐出ヘッド150(Y)と、ブラックインクを吐出するインク吐出ヘッド150(K)と、基材12に吐出されたカラーインク(ブルーインク、オレンジインク、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、およびブラックインク)を紫外線照射により硬化させるためのUV-LED159(c)と、予備的に設けられたインク吐出ヘッド150(E)と、インク吐出ヘッド150(E)から基材12に吐出されたインクを紫外線照射により硬化させるためのUV-LED159(a)とによって構成されている。基材12の搬送方向に関してホワイトインク用のインク吐出ヘッド150(W)はカラーインク用のインク吐出ヘッド150(B),150(O),150(C),150(M),150(Y),および150(K)よりも上流側に配置されている。なお、本実施形態においてはインク吐出ヘッド150(E)およびUV-LED159(a)は使用されていないものと仮定する。
【0057】
基材12は図3における下方から上方へと搬送されるので、まず、ホワイトインクが基材12に吐出され、UV-LED159(b)によりホワイトインクの硬化が行われる。そして、ブルーインク、オレンジインク、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、およびブラックインクが順に基材12に吐出され、UV-LED159(c)によりブルーインク、オレンジインク、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、およびブラックインクの硬化が行われる。但し、後述するホワイト補正が行われることによって基材12へのホワイトインクの吐出が行われた場合にはUV-LED159(b)によるホワイトインクの硬化は行われない。従って、ホワイト補正が行われた場合には、硬化されていない状態のホワイトインクの上にカラーインクが吐出される。
【0058】
本実施形態においては、インク吐出ヘッド150(B)、インク吐出ヘッド150(O)、インク吐出ヘッド150(C)、インク吐出ヘッド150(M)、インク吐出ヘッド150(Y)、およびインク吐出ヘッド150(K)によって第1のインク吐出ヘッドが実現され、インク吐出ヘッド150(W)によって第2のインク吐出ヘッドが実現され、UV-LED159(c)によって第1の紫外線照射部が実現され、UV-LED159(b)によって第2の紫外線照射部が実現される。
【0059】
なお、図3に示した記録部15の構成は一例であって、本発明はこれに限定されない。例えば、ブルーインクを吐出するインク吐出ヘッド150(B)やオレンジインクを吐出するインク吐出ヘッド150(O)が設けられていない構成の記録部15を採用することもできる。
【0060】
図4は、1つのインク吐出ヘッド150のインク吐出面の一構成例を示す平面図である。インク吐出ヘッド150は、長方形の一つのヘッドモジュール151により構成されている。ヘッドモジュール151は、インク吐出口としての多数のノズル152を有している。図4に示す例ではヘッドモジュール151の形状は一つの長方形であるが、これには限定されず、複数個の平行四辺形のヘッドモジュールや、複数個の台形のヘッドモジュールで構成するなど様々な構成を採ることができる。なお、ノズルがインク吐出口に相当し、上述した欠陥ノズルが欠陥吐出口に相当する。
【0061】
図5は、ヘッドモジュール151におけるノズル152の配置について説明するための図である。典型的には、ヘッドモジュール151には、それぞれが主走査方向に並べて配置された複数のノズルからなる複数列のノズル群が含まれている。図5に示す例では、4列のノズル群がヘッドモジュール151に含まれている。図5において符号41を付した部分には、各ノズル152から吐出されたインクの基材12上における着弾位置を模式的に示している。1列目のノズル群に含まれるノズル152から吐出されるインクの着弾位置と2列目のノズル群に含まれるノズル152から吐出されるインクの着弾位置と3列目のノズル群に含まれるノズル152から吐出されるインクの着弾位置と4列目のノズル群に含まれるノズル152から吐出されるインクの着弾位置とは互いに異なる位置となるように、ヘッドモジュール151内の複数のノズル152は配置されている。例えば、1列目のノズル群に含まれる各ノズル152から吐出されるインクの着弾位置は、3列目のノズル群に含まれるノズル152から吐出されるインクの着弾位置と4列目のノズル群に含まれるノズル152から吐出されるインクの着弾位置との間の位置となっている。
【0062】
図5に示す例では、符号152(p)を付したノズルから吐出されるインクの着弾位置42と符号152(q)を付したノズルから吐出されるインクの着弾位置43とは隣接している。本明細書では、このようにインクの着弾位置が隣接する2つのノズルを「互いに隣接するノズル」として扱う。上記の例では、符号152(p)を付したノズルと符号152(q)を付したノズルとは互いに隣接するノズルとして扱われる。
【0063】
なお、以下においては、任意の色の名称を「Z」とすると、Zインクを吐出するノズル(Zインク用のインク吐出ヘッド150に含まれているノズル)を「Zインク吐出ノズル」ということがある。例えば、シアンインクを吐出するノズル(シアンインク用のインク吐出ヘッド150(C)に含まれているノズル)を「シアンインク吐出ノズル」ということがある。
【0064】
<1.3 印刷制御装置のハードウェア構成>
図6は、印刷制御装置200のハードウェア構成を示すブロック図である。図6に示すように、印刷制御装置200は、本体210、補助記憶装置221、光ディスクドライブ222、表示部223、キーボード224、およびマウス225などを備えている。本体210は、CPU(プロセッサ)211、メモリ212、第1ディスクインタフェース部213、第2ディスクインタフェース部214、表示制御部215、入力インタフェース部216、および通信インタフェース部217を含んでいる。CPU211、メモリ212、第1ディスクインタフェース部213、第2ディスクインタフェース部214、表示制御部215、入力インタフェース部216、および通信インタフェース部217は、システムバスを介して互いに接続されている。第1ディスクインタフェース部213には補助記憶装置221が接続されている。第2ディスクインタフェース部214には光ディスクドライブ222が接続されている。表示制御部215には、表示部(表示装置)223が接続されている。入力インタフェース部216には、キーボード224およびマウス225が接続されている。通信インタフェース部217には、通信ケーブルを介して印刷機本体100が接続されている。また、通信インタフェース部217は通信回線4に接続されている。補助記憶装置221は磁気ディスク装置などである。光ディスクドライブ222には、CD-ROMやDVD-ROMなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体としての光ディスク29が挿入される。表示部223は液晶ディスプレイなどである。表示部223は、オペレータが所望する情報を表示するために使用される。キーボード224およびマウス225は、この印刷制御装置200に対して作業者が指示を入力するために使用される。
【0065】
補助記憶装置221には、印刷制御プログラム(印刷機本体100による印刷処理の実行を制御するためのプログラム)Pが格納されている。CPU211は、補助記憶装置221に格納された印刷制御プログラムPをメモリ212に読み出して実行することにより、印刷制御装置200の各種機能を実現する。メモリ212は、RAMおよびROMを含んでいる。メモリ212は、補助記憶装置221に格納された印刷制御プログラムPをCPU211が実行するためのワークエリアとして機能する。なお、印刷制御プログラムPは、上記コンピュータ読み取り可能な記録媒体(非一過性の記録媒体)に格納されて提供される。すなわち、ユーザーは、例えば、印刷制御プログラムPの記録媒体としての光ディスク29を購入して光ディスクドライブ222に挿入し、光ディスク29から印刷制御プログラムPを読み出して補助記憶装置221にインストールする。
【0066】
<1.4 ホワイト補正>
本実施形態においては、上述したノズル欠け補正が行われる際に、欠陥ノズルに隣接するノズル(以下、便宜上「欠陥隣接ノズル」という。)に対応するホワイトインク吐出ノズルからホワイトインクが吐出されるよう印刷データに含まれている濃度データを補正する処理が行われる。以下、この処理を「ホワイト補正」という。
【0067】
図7は、ホワイト補正の概要について説明するための図である。なお、説明の便宜上、図7では各インク吐出ヘッド150において複数のノズルが一列に並べて配置されているように示している。また、図7では、UV-LED159を省略している。ここで、シアンインク用のインク吐出ヘッド150(C)に含まれる複数のノズルのうち符号51を付したノズルが欠陥ノズルであると仮定する。このとき、上述したノズル欠け補正が行われることによって、欠陥隣接ノズル(符号52を付したノズルおよび符号53を付したノズル)からは本来よりも多くの量のシアンインクが吐出される。また、ホワイト補正が行われることによって、欠陥隣接ノズルに対応するノズル(符号54を付したノズルおよび符号55を付したノズル)からホワイトインクが吐出される。なお、この例では、シアンインクが第1のインクに相当し、ホワイトインクが第2のインクに相当する。
【0068】
本実施形態においては、ホワイト補正は、欠陥ノズルから吐出されるべき単色のインクであって予め定められた値以上の濃度の単色のインクによる印刷が行われる領域のみについて行われる。従って、上記のようにシアンインク用のインク吐出ヘッド150(C)に欠陥ノズルが含まれている場合、ホワイト補正は、例えば、80%以上の濃度である高濃度のシアン単色の印刷が行われる領域のみについて行われる。但し、混色の印刷が行われる領域についてもホワイト補正が行われるようにしても良い。
【0069】
ホワイト補正が行われると、上記の例では、印刷の際に、まず、欠陥隣接ノズルに対応するホワイトインク吐出ノズルから基材12にホワイトインクが吐出される。その後、欠陥隣接ノズルからシアンインクが吐出される。すなわち、ホワイト補正が行われた領域では、模式的には図8に示すように、基材12上に吐出されたホワイトインク6(W)の上にシアンインク6(C)が吐出される。
【0070】
ところで、基材12上でのカラーインク(上記の例では、シアンインク)の濡れ広がり範囲は、基材12上に直接に当該カラーインクが吐出されたときよりも基材12上に吐出されたホワイトインクの上に当該カラーインクが吐出されたときの方が大きい。これに関する実験の結果の一例を図9に示す。図9で符号61を付した部分には、或るフィルム基材上に直接にカラーインクを吐出したときに得られた(インクの)ドットサイズを示しており、図9で符号62を付した部分には、当該或る基材上にホワイトインクを吐出した後にカラーインクを吐出したときに得られた(インクの)ドットサイズを示している。いずれのカラーインクについても予め基材にホワイトインクを吐出しておくことによって濡れ広がり範囲が大きくなる(カラーインクのドットサイズが擬似的に大きくなる)ことが把握される。以上に鑑み、欠陥隣接ノズルからのカラーインクの吐出が行われる位置(基材12上の位置)に予めホワイトインクを吐出しておくことによって、欠陥隣接ノズルから吐出されたカラーインクが基材12上で十分に広がり、ノズル欠け補正による効果(欠陥を解消してムラの発生を抑制する効果)が高められる。
【0071】
また、通常はホワイトインクが吐出された後には紫外線照射によるホワイトインクの硬化が行われるが、本実施形態においては、ホワイト補正により対象の領域へのホワイトインクの吐出が行われるときには、UV-LED159(b)によるホワイトインクへの紫外線照射が停止される。このようにホワイトインクへの紫外線照射を停止することによって、ホワイトインクの濡れ広がり範囲が大きくなり、ホワイトインク上に吐出されるカラーインクの濡れ広がり範囲も効果的に大きくなる。
【0072】
<1.5 濃度補正>
本実施形態に係るインクジェット印刷装置10では、従来から行われている濃度均一化補正およびノズル欠け補正に加えて、上述したホワイト補正が行われる。本明細書では、濃度均一化補正、ノズル欠け補正、およびホワイト補正を含む一連の処理を「濃度補正」という。印刷制御装置200で印刷制御プログラムPが実行されることによって、濃度補正を実行するための機能的構成要素である濃度補正処理部が実現される。
【0073】
<1.5.1 機能構成>
図10は、本実施形態における濃度補正処理部24の詳細な機能構成を示すブロック図である。図10に示すように、濃度補正処理部24は、補正係数算出部241と欠陥ノズル検出部242と基材判定部243と印刷データ保持部(画像メモリ)244とホワイト補正判定部245と補正対象ノズル特定部246と補正パターン作成部247とインク吐出制御部248とUV-LED設定部249とを含んでいる。インク吐出制御部248は、第1の補正処理部2481と第2の補正処理部2482とを含んでいる。
【0074】
補正係数算出部241は、上述した検査チャートの印刷画像を撮像部16が撮像することによって得られた撮像データ70に基づいて、濃度均一化補正を実行するための補正係数71を算出する。例えば、或るノズルに着目したときに、当該ノズルからインクが吐出されることによって得られる濃度が本来の(4/5)倍の濃度であれば、当該ノズルに対応する補正係数71は1.25に定められる。
【0075】
欠陥ノズル検出部242は、撮像データ70に基づいて、カラーインク用のインク吐出ヘッド150に含まれている多数のノズルの中から吐出不良状態のノズルである欠陥ノズルを検出する。そして、欠陥ノズルを特定する欠陥ノズル情報72が欠陥ノズル検出部242から出力される。なお、欠陥ノズルが全く検出されなかった場合には、インク吐出制御部248内の第1の補正処理部2481で濃度均一化補正のみが行われる。
【0076】
基材判定部243は、例えば設定済みの印刷条件に基づいて、印刷媒体として印刷に使用される基材を判定する。そして、基材を特定する基材情報73が基材判定部243から出力される。
【0077】
印刷データ保持部244は、印刷データ生成装置30から送信された印刷データ(RIP処理済みのデータ)74を一時的に保持する。なお、印刷データ保持部244は、ハードウェアとしてのメモリ212(図6参照)によって実現される。
【0078】
ホワイト補正判定部245は、欠陥ノズル情報72と基材情報73と印刷データ74とに基づいて、ホワイト補正を実行するか否かを判定する。そして、その判定結果75がホワイト補正判定部245から出力される。これに関し、本実施形態においては、基材情報73に基づいて、印刷に使用される基材が白色の基材以外の場合にはホワイト補正を実行しない旨の判定が行われる。また、欠陥ノズル情報72と印刷データ74とに基づいて、欠陥ノズルが存在している場合であって当該欠陥ノズルおよびその近傍のノズルからインクが吐出される領域に当該欠陥ノズルから吐出されるべき色のインクによる単色高濃度の印刷が行われる領域が含まれている場合に、ホワイト補正を実行する旨の判定が行われる。換言すれば、欠陥ノズルが存在していても、当該欠陥ノズルおよびその近傍のノズルからインクが吐出される領域に当該欠陥ノズルから出力されるべき色のインクによる単色高濃度の印刷が行われる領域が含まれていなければ、ホワイト補正を実行しない旨の判定が行われる。このようにして、欠陥ノズルの存在に起因するムラが目立つ領域についてのみホワイト補正が行われるので、ホワイトインクの無駄な消費が抑制される。
【0079】
補正対象ノズル特定部246は、ホワイト補正判定部245から出力された判定結果75がホワイト補正を実行する旨を示していれば、欠陥ノズル情報72と印刷データ74とに基づいて、ホワイトインク用のインク吐出ヘッド150(W)に含まれる多数のノズルの中からホワイト補正用にホワイトインクを吐出するノズル(以下、「補正対象ノズル」という。)を特定する。そして、補正対象ノズルを特定する補正対象ノズル情報76が補正対象ノズル特定部246から出力される。
【0080】
ところで、本実施形態においては、ホワイト補正により印刷領域内の画素部にどのようなパターンでホワイトインクを吐出するのかを定めたテンプレートが用意されており、当該テンプレートは補正対象ノズル特定部246および補正パターン作成部247によって参照される。例えば、図11に示すようなテンプレートが用意されている。図11に関し、符号64を付した列の画素部は欠陥ノズルに対応する画素部であって、網掛けを施した画素部がホワイトインクの吐出対象となる画素部である。なお、主走査方向に関して、各ノズルは1つの画素部に対応している。図11に示す例では、符号64Lを付した列および符号64Rを付した列に網掛けを施した画素部が含まれている。従って、ホワイトインク用のインク吐出ヘッド150(W)に含まれる多数のノズルのうち符号64Lを付した列の画素部にインクを吐出するノズルおよび符号64Rを付した列の画素部にインクを吐出するノズルが補正対象ノズル特定部246によって補正対象ノズルとして特定される。
【0081】
補正パターン作成部247は、補正対象ノズル情報76と印刷データ74とに基づいて、印刷領域全体での上述したテンプレートに示したようなパターンを表す補正パターン77を作成する。本実施形態においては、この補正パターン77に基づきホワイトインクが吐出されるべき領域が補正領域として扱われる。従って、補正パターン77を作成することは、補正領域を決定することに相当する。
【0082】
上述したように、本実施形態においては、単色高濃度の印刷が行われる領域のみについてホワイト補正が行われる。ここで、例えば、図12で符号57を付した点線部分にインクを吐出するシアンインク吐出ノズルに欠陥が生じていて、かつ、符号58を付した矩形領域でシアンインクによる単色高濃度の印刷が行われるものと仮定する。このとき、シアンインクによる単色高濃度の印刷が行われる領域のみについてホワイト補正が行われるよう、補正パターン作成部247によって作成される補正パターン77は図13に示すようなものとなる。
【0083】
インク吐出制御部248は、印刷データ74に含まれる濃度データを補正し、補正後の濃度データ78に基づいて各インク吐出ヘッド150からのインクの吐出を制御する。上述したように、インク吐出制御部248は、第1の補正処理部2481と第2の補正処理部2482とを含んでいる。ホワイト補正判定部245から出力された判定結果75がホワイト補正を実行しない旨を示していれば、印刷データ74に含まれる濃度データを補正する処理が第1の補正処理部2481によって行われ、上記判定結果75がホワイト補正を実行する旨を示していれば、印刷データ74に含まれる濃度データを補正する処理が第2の補正処理部2482によって行われる。
【0084】
第1の補正処理部2481は、補正係数71と欠陥ノズル情報72と印刷データ74とに基づいて、濃度均一化補正およびノズル欠け補正を行う。これにより、印刷データ74に含まれる濃度データに補正が施され、各インク吐出ヘッド150からのインクの吐出を制御するための濃度データ78が生成される。
【0085】
第2の補正処理部2482は、補正係数71と欠陥ノズル情報72と補正パターン77と印刷データ74とに基づいて、濃度均一化補正、ノズル欠け補正、およびホワイト補正を行う。これにより、印刷データ74に含まれる濃度データに補正が施され、各インク吐出ヘッド150からのインクの吐出を制御するための濃度データ78が生成される。
【0086】
ところで、ホワイトインク用のインク吐出ヘッド150(W)を含む各インク吐出ヘッド150は、複数のサイズでインクを吐出することが可能に構成されている。詳しくは、インク吐出ヘッド150内の各ノズルに対応してピエゾ素子(圧電素子)が設けられており、ピエゾ素子に与える駆動信号の電圧波形を変化させることによってノズルから吐出されるインクのサイズを変化させることが可能となっている。本実施形態においては、補正領域には複数のサイズのうち最も小さいサイズでホワイトインクが吐出されるよう、第2の補正処理部2482による濃度データの補正が行われる。すなわち、インク吐出制御部248は、補正領域には複数のサイズのうち最も小さいサイズでホワイトインクが吐出されるよう、インク吐出ヘッド150(W)からのホワイトインクの吐出を制御する。これにより、カラーインクの濡れ広がり範囲を広くするためにホワイトインクが必要以上に消費されるということが防止される。但し、補正領域に対して最も小さいサイズ以外のサイズでホワイトインクが吐出されるようにしても良い。
【0087】
なお、カラーインクがインク吐出ヘッド150から基材12に吐出されてからUV-LED159(c)からの紫外線照射によって硬化されるまでの時間は、カラーインクの色毎に異なる。図3を参照すると、例えば、ブラックインクがインク吐出ヘッド150(K)から基材12に吐出されてから硬化されるまでの時間はブルーインクがインク吐出ヘッド150(B)から基材12に吐出されてから硬化されるまでの時間に比べて顕著に短くなることが把握される。それ故、ホワイト補正に関して、インク吐出ヘッド150(W)から吐出されるホワイトインクのサイズを一定にした場合、ブラックインクの濡れ広がり範囲がブルーインクの濡れ広がり範囲に比べて小さくなることが考えられる。そこで、補正領域においてホワイトインクの上に吐出されるカラーインクに対応するインク吐出ヘッド150からUV-LED159(c)までの距離が近いほどホワイトインクのサイズが大きくなるようにインク吐出ヘッド150(W)からのホワイトインクの吐出を制御するようにしても良い。
【0088】
UV-LED設定部249は、ホワイト補正判定部245から出力された判定結果75に基づいて、ホワイトインク用のUV-LED159(b)に紫外線照射制御信号79を与えることによって当該UV-LED159(b)による紫外線照射を制御する。具体的には、上記判定結果75がホワイト補正を実行する旨を示していれば、UV-LED設定部249は、UV-LED159(b)による紫外線照射を停止する。従って、ホワイト補正が行われる場合には、印刷の際に、インク吐出ヘッド150(W)から基材12に吐出されたホワイトインクへのUV-LED159(b)からの紫外線照射は行われない。上記判定結果75がホワイト補正を実行しない旨を示していれば、UV-LED設定部249は、UV-LED159(b)による紫外線照射を維持する。なお、上記判定結果75がホワイト補正を実行する旨を示している場合に関して、UV-LED設定部249がUV-LED159(b)による紫外線照射の強度を低下させるようにしても良い。すなわち、ホワイトインクの上にカラーインクが吐出されたときに当該カラーインクの濡れ広がり範囲が十分に広い範囲となるのであれば、UV-LED159(b)によるホワイトインクへの紫外線照射を必ずしも停止させる必要はない。
【0089】
なお、本実施形態においては補正係数算出部241による補正係数71の算出および欠陥ノズル検出部242による欠陥ノズルの特定は撮像データ70に基づいて行われるが、本発明はこれに限定されない。撮像部16を備えていないインクジェット印刷装置10が採用されている場合には、検査チャートの印刷画像を作業者が目視で確認することによって補正係数71の算出や欠陥ノズルの特定が行われるようにしても良い。
【0090】
また、基材判定部243に代えて作業者による基材情報73の入力を受け付ける構成要素を備える構成を採用して当該構成要素が受け付けた基材情報73に基づいてホワイト補正判定部245による処理(ホワイト補正を実行するか否かを判定する処理)が行われるようにしても良い。
【0091】
本実施形態においては、補正パターン作成部247によって補正領域決定部が実現され、UV-LED設定部249によって紫外線照射制御部が実現される。
【0092】
<1.5.2 補正パターンのテンプレート>
上記においては、補正パターン作成部247で作成される補正パターン77の元となるテンプレートとして図11に示すテンプレートが用意されているものとして説明した。しかしながら、採用可能なテンプレートは、図11に示すテンプレートには限定されない。例えば、図14に示すテンプレートや図15に示すテンプレートや図16に示すテンプレートなどを採用することもできる。また、図11図14図16に示したテンプレート以外のテンプレートを採用することもできる。
【0093】
図11または図15に示すテンプレートが採用された場合には、ホワイトインク用のインク吐出ヘッド150(W)に含まれる多数のノズルのうち符号64Lを付した列の画素部にインクを吐出するノズルと符号64Rを付した列の画素部にインクを吐出するノズルとが補正対象ノズルとして特定される。図14または図16に示すテンプレートが採用された場合には、ホワイトインク用のインク吐出ヘッド150(W)に含まれる多数のノズルのうち符号64を付した列の画素部にインクを吐出するノズルと符号64L1を付した列の画素部にインクを吐出するノズルと符号64R1を付した列の画素部にインクを吐出するノズルと符号64L2を付した列の画素部にインクを吐出するノズルと符号64R2を付した列の画素部にインクを吐出するノズルとが補正対象ノズルとして特定される。
【0094】
また、ホワイトインクが吐出される画素部に関して基材12の搬送方向に着目すると、図11または図14に示すテンプレートが採用された場合には、ホワイトインクが吐出される1個の画素部とホワイトインクが吐出されない1個の画素部とが交互に現れ、図15または図16に示すテンプレートが採用された場合には、ホワイトインクが吐出される2個の画素部とホワイトインクが吐出されない2個の画素部とが交互に現れる。
【0095】
<1.5.3 手順>
以下、図17を参照しつつ、本実施形態における濃度補正の手順について説明する。なお、処理対象の印刷データ74は既に印刷データ保持部244(図10参照)に保持されているものと仮定する。
【0096】
濃度補正の開始後、まず、カラーインク用のインク吐出ヘッド150(詳しくは、ブルーインク用のインク吐出ヘッド150(B)、オレンジインク用のインク吐出ヘッド150(O)、シアンインク用のインク吐出ヘッド150(C)、マゼンタインク用のインク吐出ヘッド150(M)、イエローインク用のインク吐出ヘッド150(Y)、およびブラックインク用のインク吐出ヘッド150(K))内のノズルの状態を検査するための検査チャートの印刷が記録部15で行われる(ステップS110)。そして、検査チャートの印刷で得られた印刷画像が撮像部16によって撮像される(ステップS112)。これにより、撮像部16から撮像データ70が出力される。
【0097】
その後、補正係数算出部241によって、濃度均一化補正を実行するための補正係数71が撮像データ70に基づいて算出される(ステップS114)。次に、欠陥ノズル検出部242によって、撮像データ70に基づいて、カラーインク用のインク吐出ヘッド150に含まれている多数のノズルのうちの欠陥ノズルの検出が行われる(ステップS116)。
【0098】
欠陥ノズルの検出後、基材判定部243によって、印刷に使用される基材(印刷媒体)の判定が行われる(ステップS118)。そして、ホワイト補正判定部245によって、印刷に使用される基材が白色の基材であるか否かが判定される(ステップS120)。その結果、印刷に使用される基材が白色の基材であれば処理はステップS121に進み、印刷に使用される基材が白色の基材でなければ処理はステップS130に進む。
【0099】
ステップS121では、更にホワイト補正判定部245によって、印刷データ74とステップS116で検出された欠陥ノズルの情報(上記欠陥ノズル情報72)とに基づいて、ホワイト補正を実行する必要性があるか否かの判定が行われる。その結果、ホワイト補正を実行する必要性があれば処理はステップS122に進み、ホワイト補正を実行する必要性がなければ処理はステップS130に進む。
【0100】
ステップS122では、補正対象ノズル特定部246によって、印刷データ74とステップS116で検出された欠陥ノズルの情報(上記欠陥ノズル情報72)とに基づいて、上述した補正対象ノズルの特定が行われる。
【0101】
次に、補正パターン作成部247によって、印刷データ74とステップS122で特定された補正対象ノズルの情報(上記補正対象ノズル情報76)とに基づいて、上述した補正パターン77が作成される(ステップS124)。換言すれば、基材12上の領域のうちカラーインクの濡れ広がり範囲を広くする目的でホワイトインクが吐出されるべき領域である補正領域が決定される。
【0102】
補正パターン77の作成後、UV-LED設定部249による制御に基づいて、ホワイトインク用のUV-LED159(b)からの紫外線照射が停止される(ステップS126)。これにより、上述したように、ホワイト補正が行われる場合には、インク吐出ヘッド150(W)から基材12に吐出されたホワイトインクへのUV-LED159(b)からの紫外線照射は行われない。
【0103】
UV-LED159(b)からの紫外線照射が停止された後、第2の補正処理部2482によって、ステップS114で算出された補正係数71とステップS116で検出された欠陥ノズルの情報(上記欠陥ノズル情報72)とステップS124で作成された補正パターン77と印刷データ74とに基づいて、濃度均一化補正、ノズル欠け補正、およびホワイト補正が行われる(ステップS128)。
【0104】
ステップS130では、第1の補正処理部2481によって、ステップS114で算出された補正係数71とステップS116で検出された欠陥ノズルの情報(上記欠陥ノズル情報72)と印刷データ74とに基づいて、濃度均一化補正およびノズル欠け補正が行われる。
【0105】
ステップS128の処理またはステップS130の処理が終了することによって、この濃度補正は終了する。
【0106】
以上のような手順で濃度補正が行われた後、当該濃度補正で得られた濃度データ78に基づいてインク吐出制御部248が各インク吐出ヘッド150からのインクの吐出を制御することによって基材12への実際の印刷が行われる。その際、図3から把握されるように、基材12へのインクの吐出は、ホワイトインク、ブルーインク、オレンジインク、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクの順で行われる。ここで、例えばシアンインク吐出ノズルに欠陥が検出されたケースに着目すると、補正領域では、まず基材12上にホワイトインクが吐出され、その後、ホワイトインクの上にシアンインクが吐出される。
【0107】
<1.6 効果>
本実施形態によれば、カラーインク用のインク吐出ヘッド150に欠陥ノズルが検出されたときに、当該欠陥ノズルおよびその近傍のノズルからインクが吐出される領域(基材12上の領域)のうち当該欠陥ノズルから吐出されるべき色のインクによる単色高濃度の印刷が行われる領域について、欠陥隣接ノズルに対応するホワイトインク吐出ノズルからホワイトインクが吐出されるよう濃度データを補正するホワイト補正が行われる。ここで、基材12上でのカラーインクの濡れ広がり範囲は、基材12上に直接に当該カラーインクが吐出されたときよりも基材12上に吐出されたホワイトインクの上に当該カラーインクが吐出されたときの方が大きい。従って、ホワイト補正後の濃度データに基づいて各インク吐出ヘッド150からインクが吐出されることによって、ホワイト補正の対象となった領域においてカラーインクが基材12上で十分に広がり、従来に比べてノズル欠け補正による効果(欠陥を解消してムラの発生を抑制する効果)が高められる。すなわち、単色高濃度の印刷が行われる領域に対応するノズルに欠陥が生じている場合であっても、欠陥ノズルの存在に起因する印刷画像におけるムラの発生が効果的に抑制される。なお、カラーインクの濡れ広がり範囲を広くするために用いられるインク(ホワイトインク)の色は基材12の色と同じである。従って、カラーインクの濡れ広がり範囲を広くするために基材12上に吐出されたインクの色が印刷画像上で目立つことはない。以上のように、本実施形態によれば、印刷物の高品質化を可能とするインクジェット印刷装置10が実現される。また、欠陥ノズルの存在に起因するムラの発生が効果的に抑制されるので、従来に比較して再印刷の必要性が少なくなり、基材やインクの消費量の削減が可能となる。このように、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に貢献することができる。
【0108】
<1.7 変形例>
第1の実施形態においては、ノズル欠け補正が行われることによる基材12上でのカラーインクの濡れ広がり範囲を大きくするために、対象の領域において基材12にカラーインクが吐出される前に基材12にホワイトインクが吐出されていた。しかしながら、本発明はこれに限定されない。そこで、カラーインクの濡れ広がり範囲を大きくするためにホワイトインク以外のインクを利用する例を第1の実施形態の変形例として以下に説明する。なお、ここで説明する第1の変形例および第2の変形例は、後述する第2の実施形態および第3の実施形態にも適用することができる。
【0109】
<1.7.1 第1の変形例>
本変形例においては、ラベル用の透明基材への印刷が行われる。そして、第1の実施形態におけるホワイトインクに代えて透明インクが用いられる。これを実現するために、記録部15(図3)に設けられているインク吐出ヘッド150(E)が、透明インクを吐出するインク吐出ヘッドとして用いられる。また、第1の実施形態におけるホワイト補正に代えて、カラーインクの濡れ広がり範囲が大きくなるようインク吐出ヘッド150(E)から透明インクが吐出されるように濃度データを補正する処理(以下、この処理を「透明補正」という。)が行われる。
【0110】
ここで、シアンインク用のインク吐出ヘッド150(C)に含まれる複数のノズルのうち図18で符号511を付したノズルが欠陥ノズルであると仮定する。このとき、上述したノズル欠け補正が行われることにより、欠陥隣接ノズル(符号512を付したノズルおよび符号513を付したノズル)からは本来よりも多くの量のシアンインクが吐出される。また、透明補正が行われることにより、欠陥隣接ノズルに対応する透明インク吐出ノズル(符号514を付したノズルおよび符号515を付したノズル)から透明インクが吐出される。
【0111】
透明補正が行われると、上記の例では、印刷の際に、まず、欠陥隣接ノズルに対応する透明インク吐出ノズルから基材(透明基材)12に透明インクが吐出される。その後、欠陥隣接ノズルからシアンインクが吐出される。すなわち、透明補正が行われた領域では、模式的には図19に示すように、基材(透明基材)12上に吐出された透明インク6(T)の上にシアンインク6(C)が吐出される。
【0112】
<1.7.2 第2の変形例>
本変形例においては、ブラックインク吐出ノズルに欠陥が生じたときに、ノズル欠け補正による効果を高めるために、対象の領域において基材12にブラックインクが吐出される前に基材12にブラックインクよりも明度値が高いイエローインクが吐出される。また、第1の実施形態におけるホワイト補正に代えて、ブラックインクの濡れ広がり範囲が大きくなるようインク吐出ヘッド150(Y)からブラックインクよりも明度値が高いイエローインクが吐出されるように濃度データを補正する処理(以下、この処理を「イエロー補正」という。)が行われる。
【0113】
なお、ノズル欠け補正による効果を高める目的でイエローインクの吐出が行われる領域は、印刷画像を形成するためにイエローインクが吐出される領域以外の領域に限られる。イエローインクの吐出が行われる領域をこのように限定することによって、ブラックインクの濡れ広がり範囲を大きくするためのインクにイエローインクを採用したことに起因する印刷品質の低下が防止される。
【0114】
ここで、ブラックインク用のインク吐出ヘッド150(K)に含まれる複数のノズルのうち図20で符号521を付したノズルが欠陥ノズルであると仮定する。このとき、上述したノズル欠け補正が行われることにより、欠陥隣接ノズル(符号522を付したノズルおよび符号523を付したノズル)からは本来よりも多くの量のブラックインクが吐出される。また、イエロー補正が行われることにより、欠陥隣接ノズルに対応するイエローインク吐出ノズル(符号524を付したノズルおよび符号525を付したノズル)からイエローインクが吐出される。
【0115】
イエロー補正が行われると、印刷の際に、まず、欠陥隣接ノズルに対応するイエローインク吐出ノズルから基材12にイエローインクが吐出される。その後、欠陥隣接ノズルからブラックインクが吐出される。すなわち、イエロー補正が行われた領域では、模式的には図21に示すように、基材12上に吐出されたイエローインク6(Y)の上にブラックインク6(K)が吐出される。
【0116】
さらに他の例として、ブラックインク吐出ノズルに欠陥が生じたときに、ノズル欠け補正による効果を高めるために、対象の領域において基材12にブラックインクが吐出される前に基材12にブラックインクと色差があまりないブルーインクを吐出するようにしてもよい。かかる場合、第1の実施形態におけるホワイト補正に代えて、ブラックインクの濡れ広がり範囲が大きくなるようインク吐出ヘッド150(B)からブラックインクと色差があまりないブルーインクが吐出されるように濃度データを補正する処理(以下、この処理を「ブルー補正」という。)を行い、イエロー補正の場合と同様の吐出制御を行うようにしてもよい。
【0117】
本変形例では、ホワイトインクや透明インクは用いられない。従って、プロセスカラーのインクのみを用いて印刷を行うインクジェット印刷装置においても、本変形例の構成を採用することによって、ブラックインク吐出ノズルについての欠陥ノズルの存在に起因する印刷画像におけるムラの発生を効果的に抑制することが可能となる。
【0118】
<2.第2の実施形態>
<2.1 概要>
一般に、記録部15を構成するホワイトインクを吐出するインク吐出ヘッド150(W)と、ブルーインクを吐出するインク吐出ヘッド150(B)と、オレンジインクを吐出するインク吐出ヘッド150(O)と、シアンインクを吐出するインク吐出ヘッド150(C)と、マゼンタインクを吐出するインク吐出ヘッド150(M)と、イエローインクを吐出するインク吐出ヘッド150(Y)と、ブラックインクを吐出するインク吐出ヘッド150(K)とは、各々、複数のインク吐出ヘッド150を含んで構成されている。例えば、インク吐出ヘッド150(W)と、インク吐出ヘッド150(B)と、インク吐出ヘッド150(O)と、インク吐出ヘッド150(C)と、インク吐出ヘッド150(M)と、インク吐出ヘッド150(Y)と、インク吐出ヘッド150(K)とは、各々図22に示すように複数のインク吐出ヘッド150を千鳥状に配置して構成されている。そこで、或るインク吐出ヘッド150によってインクが吐出される領域とそれに隣接するインク吐出ヘッド150によってインクが吐出される領域との重なりが生じる領域(以下、「ヘッド繋ぎ領域」という。)において色ムラが生じることがある。例えば、図22で符号66を付した部分に含まれているノズルからインクが吐出される領域や図22で符号67を付した部分に含まれているノズルからインクが吐出される領域において色ムラが生じることがある。そこで、本実施形態においては、第1の実施形態とは異なり、同じ領域(基材12上の領域)に対して複数のインク吐出ヘッド150からインクが吐出されることに起因するこのような印刷品質の低下を抑制するために、ホワイト補正が行われる。
【0119】
印刷システムの全体構成(図1参照)、インクジェット印刷装置10の構成(図2参照)、記録部15の構成(図3参照)、インク吐出ヘッド150のインク吐出面の構成(図4参照)、ヘッドモジュール151におけるノズル152の配置(図5参照)、および印刷制御装置200のハードウェア構成(図6参照)については、第1の実施形態と同様である。
【0120】
<2.2 濃度補正>
以下、本実施形態における濃度補正について説明する。
【0121】
<2.2.1 機能構成>
図23は、本実施形態における濃度補正処理部24の詳細な機能構成を示すブロック図である。図23図10とから把握されるように、本実施形態における濃度補正処理部24には、第1の実施形態における構成要素に加えてホワイト補正候補領域取得部251が含まれている。補正係数算出部241、欠陥ノズル検出部242、基材判定部243、印刷データ保持部244、補正パターン作成部247、インク吐出制御部248、およびUV-LED設定部249は、第1の実施形態と同様の動作を行う。
【0122】
ホワイト補正候補領域取得部251は、インク吐出ヘッド150内のヘッドモジュール151の位置に関する情報を含むヘッド情報80に基づいて、ホワイト補正を行う領域の候補とするホワイト補正候補領域81を求める。本実施形態においては、例えば図22で符号66,67を付した部分に含まれているノズルからインクが吐出される領域のようなヘッド繋ぎ領域がホワイト補正候補領域81とされる。
【0123】
ホワイト補正判定部245は、基材情報73とホワイト補正候補領域81と印刷データ74とに基づいて、ホワイト補正を実行するか否かを判定する。そして、その判定結果75がホワイト補正判定部245から出力される。これに関し、本実施形態においては、第1の実施形態と同様、基材情報73に基づいて、印刷に使用される基材が白色の基材以外の場合にはホワイト補正を実行しない旨の判定が行われる。また、ホワイト補正候補領域81と印刷データ74とに基づいて、ホワイト補正候補領域81内に単色の印刷が行われる領域が含まれている場合に、ホワイト補正を実行する旨の判定が行われる。このようにして、色ムラが目立つ領域についてのみホワイト補正が行われるので、ホワイトインクの無駄な消費が抑制される。なお、本実施形態においては単色の印刷が行われる領域のみについてホワイト補正が行われるが、混色の印刷が行われる領域についてもホワイト補正が行われるようにしても良い。
【0124】
補正対象ノズル特定部246は、ホワイト補正判定部245から出力された判定結果75がホワイト補正を実行する旨を示していれば、ホワイト補正候補領域81と印刷データ74とに基づいて、ホワイトインク用のインク吐出ヘッド150(W)に含まれる多数のホワイトインク吐出ノズルの中から補正対象ノズルを特定する。そして、補正対象ノズルを特定する補正対象ノズル情報76が補正対象ノズル特定部246から出力される。なお、ホワイト補正候補領域81に対応するヘッドモジュール部分には多数のノズルが含まれているので、通常、第1の実施形態に比べて多数のホワイトインク吐出ノズルが補正対象ノズルとして特定される。従って、ホワイトインクの吐出対象となる領域(補正領域)が第1の実施形態に比べて広くなるように補正パターン作成部247で補正パターン77が作成される。
【0125】
ところで、本実施形態においては、補正パターン77の元となるテンプレートとして予め複数のテンプレートが用意され、印刷データ74から求められる印字率に基づいて、採用するテンプレートが決定される。例えば、図14に示すテンプレートと図24に示すテンプレートとが予め用意され、印字率が所定の閾値よりも高ければ図14に示すテンプレートが採用され、印字率が所定の閾値以下であれば図24に示すテンプレートが採用される。なお、図24に示すテンプレートが採用された場合には、図14に示すテンプレートが採用された場合と同様、ホワイトインク用のインク吐出ヘッド150(W)に含まれる多数のノズルのうち符号64を付した列の画素部にインクを吐出するノズルと符号64L1を付した列の画素部にインクを吐出するノズルと符号64R1を付した列の画素部にインクを吐出するノズルと符号64L2を付した列の画素部にインクを吐出するノズルと符号64R2を付した列の画素部にインクを吐出するノズルとが補正対象ノズルとして特定される。また、ホワイトインクが吐出される画素部に関して基材12の搬送方向に着目すると、図24に示すテンプレートが採用された場合には、ホワイトインクが吐出される1個の画素部とホワイトインクが吐出されない3個の画素部とが交互に現れる。
【0126】
<2.2.2 手順>
以下、図25を参照しつつ、本実施形態における濃度補正の手順について説明する。ステップS210~ステップS216の処理については、第1の実施形態(図17参照)におけるステップS110~ステップS116の処理と同様である。
【0127】
ステップS217では、ホワイト補正候補領域取得部251によって、上述したホワイト補正候補領域81が求められる。ステップS218~ステップS220の処理については、第1の実施形態におけるステップS118~ステップS120の処理と同様である。
【0128】
ステップS221では、ホワイト補正判定部245によって、印刷データ74とステップS217で求められたホワイト補正候補領域81とに基づいて、ホワイト補正を実行する必要性があるか否かの判定が行われる。その結果、ホワイト補正を実行する必要性があれば処理はステップS222に進み、ホワイト補正を実行する必要性がなければ処理はステップS230に進む。なお、ホワイト補正候補領域81内に単色の印刷が行われる領域が含まれている場合に、ホワイト補正を実行する必要性がある旨の判定が行われる。
【0129】
ステップS222では、補正対象ノズル特定部246によって、印刷データ74とステップS217で求められたホワイト補正候補領域81とに基づいて、上述した補正対象ノズルの特定が行われる。
【0130】
ステップS224~ステップS230の処理については、第1の実施形態におけるステップS124~ステップS130の処理と同様である。
【0131】
<2.3 効果>
本実施形態によれば、上述したヘッド繋ぎ領域のうちの単色の印刷が行われる領域について、所定のパターンに基づいて特定されるホワイトインク吐出ノズルからホワイトインクが吐出されるよう濃度データを補正するホワイト補正が行われる。上述したように、基材12上でのカラーインクの濡れ広がり範囲は、基材12上に直接に当該カラーインクが吐出されたときよりも基材12上に吐出されたホワイトインクの上に当該カラーインクが吐出されたときの方が大きい。従って、ホワイト補正後の濃度データに基づいて各インク吐出ヘッド150からインクが吐出されることによって、ホワイト補正の対象となった領域においてカラーインクが基材12上で十分に広がり、ヘッド繋ぎ領域での色ムラの発生が効果的に抑制される。以上より、印刷物の高品質化を可能とするインクジェット印刷装置10が実現される。なお、ヘッド繋ぎ領域での色ムラの発生が効果的に抑制されるので、従来に比較して再印刷の必要性が少なくなり、基材やインクの消費量の削減が可能となる。このように、SDGsの達成に貢献することができる。
【0132】
<3.第3の実施形態>
<3.1 概要>
インクジェット印刷装置を用いていわゆるベタ画像の印刷が行われた場合に、印刷条件や使用する基材によっては、ノズルから吐出されたインクのドットサイズの大きさが不十分な大きさとなりユーザーの満足する印刷品質が得られないことがある。そこで、本実施形態においては、ベタ画像の印刷品質を高めるためにホワイト補正が行われる。
【0133】
印刷システムの全体構成(図1参照)、インクジェット印刷装置10の構成(図2参照)、記録部15の構成(図3参照)、インク吐出ヘッド150のインク吐出面の構成(図4参照)、ヘッドモジュール151におけるノズル152の配置(図5参照)、および印刷制御装置200のハードウェア構成(図6参照)については、第1の実施形態と同様である。
【0134】
<3.2 濃度補正>
以下、本実施形態における濃度補正について説明する。
【0135】
<3.2.1 機能構成>
図26は、本実施形態における濃度補正処理部24の詳細な機能構成を示すブロック図である。図26図10とから把握されるように、本実施形態における濃度補正処理部24は、第1の実施形態における濃度補正処理部24と同様の構成要素を含んでいる。補正係数算出部241、欠陥ノズル検出部242、基材判定部243、印刷データ保持部244、補正パターン作成部247、インク吐出制御部248、およびUV-LED設定部249は第1の実施形態と同様の動作を行うが、ホワイト補正判定部245および補正対象ノズル特定部246は第1の実施形態とは異なる動作を行う。
【0136】
ホワイト補正判定部245は、基材情報73と印刷データ74とに基づいて、ホワイト補正を実行するか否かを判定する。そして、その判定結果75がホワイト補正判定部245から出力される。これに関し、本実施形態においては、第1の実施形態と同様、基材情報73に基づいて、印刷に使用される基材が白色の基材以外の場合にはホワイト補正を実行しない旨の判定が行われる。また、印刷データ74に基づいて、印刷領域内にベタ画像を形成する領域(カラーインクの濃度が100%である領域)が存在している場合に、ホワイト補正を実行する旨の判定が行われる。以上より、印刷に使用される基材が白色の基材であって、かつ、印刷領域内にベタ画像を形成する領域が存在していれば、ホワイト補正を実行する旨の判定が行われる。
【0137】
補正対象ノズル特定部246は、ホワイト補正判定部245から出力された判定結果75がホワイト補正を実行する旨を示していれば、印刷データ74に基づいて、ホワイトインク用のインク吐出ヘッド150(W)に含まれる多数のホワイトインク吐出ノズルの中から補正対象ノズルを特定する。そして、補正対象ノズルを特定する補正対象ノズル情報76が補正対象ノズル特定部246から出力される。本実施形態においては、ベタ画像を形成する色およびベタ画像を形成する領域(範囲)に基づいて、補正対象ノズルが特定される。例えば、印刷データ74によれば、図27で符号85を付した網掛け領域がシアンのベタ画像を形成する領域であって、図27で符号86を付した網掛け領域がマゼンタのベタ画像を形成する領域であって、図27で符号87を付した網掛け領域がイエローのベタ画像を形成する領域であると仮定する。この場合、例えば図14に示したようなホワイト補正用のテンプレートに基づいて、網掛け領域85に対応する複数のホワイトインク吐出ノズルの中から網掛け領域85にホワイトインクを吐出する補正対象ノズルが特定され、網掛け領域86に対応する複数のホワイトインク吐出ノズルの中から網掛け領域86にホワイトインクを吐出する補正対象ノズルが特定され、網掛け領域87に対応する複数のホワイトインク吐出ノズルの中から網掛け領域87にホワイトインクを吐出する補正対象ノズルが特定される。なお、通常、ベタ画像を形成する領域は多数のノズルに対応しているので、第2の実施形態と同様、第1の実施形態に比べて多数のホワイトインク吐出ノズルが補正対象ノズルとして特定される。従って、ホワイトインクの吐出対象となる領域(補正領域)が第1の実施形態に比べて広くなるように補正パターン作成部247で補正パターン77が作成される。
【0138】
<3.2.2 手順>
本実施形態における濃度補正の手順について、図17に示したフローチャートを参照しつつ説明する。ステップS110~ステップS120の処理およびステップS124~ステップS130の処理については、第1の実施形態と同様である。
【0139】
ステップS121では、ホワイト補正判定部245によって、印刷データ74に基づいて、ホワイト補正を実行する必要性があるか否かの判定が行われる。その結果、ホワイト補正を実行する必要性があれば処理はステップS122に進み、ホワイト補正を実行する必要性がなければ処理はステップS130に進む。本実施形態においては、印刷領域内にベタ画像を形成する領域が存在している場合に、ホワイト補正を実行する必要性がある旨の判定が行われる。
【0140】
ステップS122では、補正対象ノズル特定部246によって、印刷データ74に基づいて、上述した補正対象ノズルの特定が行われる。その際、ベタ画像を形成する領域に対応する複数のホワイトインク吐出ノズルの中からホワイト補正用のテンプレートに基づいて補正対象ノズルが特定される。
【0141】
<3.3 効果>
本実施形態によれば、ベタ画像の印刷が行われる領域について、所定のパターンに基づいて特定されるホワイトインク吐出ノズルからホワイトインクが吐出されるよう濃度データを補正するホワイト補正が行われる。上述したように、基材12上でのカラーインクの濡れ広がり範囲は、基材12上に直接に当該カラーインクが吐出されたときよりも基材12上に吐出されたホワイトインクの上に当該カラーインクが吐出されたときの方が大きい。従って、ホワイト補正後の濃度データに基づいて各インク吐出ヘッド150からインクが吐出されることによって、ベタ画像の印刷が行われる領域においてカラーインクが基材12上で十分に広がり当該カラーインクのドットサイズが従来よりも大きくなる。これにより、ベタ画像の印刷品質が向上する。以上より、印刷物の高品質化を可能とするインクジェット印刷装置10が実現される。
【0142】
<4.まとめ>
第1~第3の実施形態をまとめると、概略的には図28に示す手順で処理が行われる。まず、基材12上の領域のうちの第2のインク(典型的には、ホワイトインク)が吐出されるべき領域である補正領域の決定が行われる(ステップS10)。次に、ステップS10で決定された補正領域に第2のインクが吐出されるよう、第2のインク用のインク吐出ヘッド150からのインクの吐出を制御するための濃度データを補正する処理が行われる(ステップS20)。その後、基材12への実際の印刷が開始される(ステップS30)。そして、補正領域に第2のインクが吐出される(ステップS40)。次に、補正領域において、基材12上の吐出された第2のインクの上に第1のインク(典型的には、カラーインク)が吐出される(ステップS50)。なお、ステップS10が補正領域決定ステップに相当し、ステップS40が第2のインク吐出ステップに相当し、ステップS50が第1のインク吐出ステップに相当する。
【0143】
<5.その他>
本発明は、上記各実施形態(変形例を含む)に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、上記各実施形態ではUVインクを用いて印刷を行うインクジェット印刷装置10を例示しているが、紫外線以外の放射線の照射によって硬化するインクを用いて印刷を行うインクジェット印刷装置が採用されている場合にも本発明を適用することができる。
【0144】
<6.付記>
以上の開示から以下に記す構成の印刷装置も考えられる。
【0145】
印刷媒体にインクを吐出することにより印刷を行う印刷装置であって、
前記印刷媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部によって搬送される前記印刷媒体に第1のインクを吐出する、複数のインク吐出口を含む第1のインク吐出ヘッドと、
前記搬送部によって前記印刷媒体が搬送される方向に関して前記第1のインク吐出ヘッドよりも上流側に配置され、前記搬送部によって搬送される前記印刷媒体に第2のインクを吐出する、複数のインク吐出口を含む第2のインク吐出ヘッドと、
プロセッサと、
プログラムを格納するメモリと
を備え、
前記印刷媒体上での前記第1のインクの濡れ広がり範囲は、前記印刷媒体上に直接に前記第1のインクが吐出されたときよりも前記印刷媒体上に吐出された前記第2のインク上に前記第1のインクが吐出されたときの方が大きく、
前記メモリに格納された前記プログラムが前記プロセッサによって実行されると、前記プログラムは前記プロセッサに以下の(A)および(B)の動作を実行させることを特徴とする、印刷装置:
(A)前記印刷媒体上の領域のうちの前記第2のインクが吐出されるべき領域である補正領域を決定する。
(B)前記補正領域に前記第1のインクが吐出される前に前記補正領域に前記第2のインクが吐出されるように、前記第2のインク吐出ヘッドからの前記第2のインクの吐出を制御する。
【符号の説明】
【0146】
10…インクジェット印刷装置
15…記録部
16…撮像部
24…濃度補正処理部
100…印刷機本体
150…インク吐出ヘッド
151…ヘッドモジュール
152…ノズル
159…UV-LED
200…印刷制御装置
241…補正係数算出部
242…欠陥ノズル検出部
243…基材判定部
244…印刷データ保持部
245…ホワイト補正判定部
246…補正対象ノズル特定部
247…補正パターン作成部
248…インク吐出制御部
249…UV-LED設定部
251…ホワイト補正候補領域取得部
2481…第1の補正処理部
2482…第2の補正処理部
図1
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