(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044575
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ビード移載装置
(51)【国際特許分類】
B29D 30/32 20060101AFI20240326BHJP
B65G 47/90 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B29D30/32
B65G47/90 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150184
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥村 一喜
【テーマコード(参考)】
3F072
4F215
4F501
【Fターム(参考)】
3F072AA22
3F072GC01
3F072GD03
3F072GD09
3F072KA11
3F072KD07
3F072KE07
4F215AH20
4F215VA12
4F215VD12
4F215VM06
4F215VP32
4F501TA12
4F501TC11
4F501TF06
4F501TL31
4F501TV08
(57)【要約】
【課題】ビード移載装置のフックでビードを吊り下げる際に、フックによってビードを傷つけることを抑制する。
【解決手段】ビード移載装置10は、アーム部21、アーム部21の先端部に突設されビードBが載置される爪部22、を有するフック20と、フック20により吊り下げられたビードBを第1位置S1から第2位置S2まで変位させる変位機構30と、アーム部21を支持する第1回転軸42を有し、第1回転軸42を正転方向及び逆転方向へ回動させて、フック20を揺動させる第1揺動機構40と、を備え、フック20が、第1揺動機構40によって、爪部22が略水平方向に延び、ビードBの軸方向について、爪部22がビードBと重なる位置に配置される第1作動位置X1と、爪部22が水平方向に対して傾斜する方向に延び、ビードBの軸方向について、爪部22がビードBと重ならない位置に配置される第1待機位置Y1と、の間で揺動される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環状のビードを、軸方向を略水平とした姿勢で第1位置から第2位置へ移載するビード移載装置であって、
アーム部と、前記アーム部の先端部に突設され前記ビードの内径側上部が載置される爪部と、を有するフックと、
設定された経路に沿って前記フックを変位させて、前記フックにより吊り下げられた前記ビードを前記第1位置から前記第2位置まで変位させる変位機構と、
水平方向に延びると共に前記アーム部を支持する第1回転軸を有し、前記第1回転軸を正転方向及び逆転方向へ回動して、前記フックを揺動させる第1揺動機構と、
を備え、
前記フックが、
前記第1揺動機構によって、
前記爪部が略水平方向に延び、前記ビードの軸方向について、前記爪部が前記ビードと重なる位置に配置される第1作動位置と、
前記爪部が水平方向に対して傾斜する方向に延び、前記ビードの軸方向について、前記爪部が前記ビードと重ならない位置に配置される第1待機位置と、の間で揺動される、ビード移載装置。
【請求項2】
前記第1位置から前記第2位置へ向かう方向について前記フックより前記第2位置側に配置される規制アームと、
水平方向に延びると共に前記規制アームを支持する第2回転軸を有し、前記第2回転軸を正転方向及び逆転方向へ回動して、前記規制アームを揺動させる第2揺動機構と、をさらに備え、
前記規制アームが、
前記第2揺動機構によって、
前記フックに吊り下げられた前記ビードの前面と対面する第2作動位置と、
前記フックに吊り下げられた前記ビードの前面と対面しない第2待機位置と、の間で揺動される、請求項1に記載のビード移載装置。
【請求項3】
前記爪部が、先端側に向かって先細りとなる形状を有する、請求項1又は請求項2に記載のビード移載装置。
【請求項4】
前記フックが左右一対で設けられる、請求項1又は請求項2に記載のビード移載装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤを構成するビードの移載に用いるビード移載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤを構成する要素の一つにビードがある。ビードは、円環状の部材であり、円環状に形成されたワイヤからなるコアの外周側に未加硫ゴムからなり略三角形状の断面を有するエイペックスを接合して構成される。タイヤの製造工程において、ビードは、製造後一旦ストッカ等の所定位置にストックされると共に、ビードを使用する際にストッカから台車に移載され、台車によって使用する工程に搬送される。従来、ストッカから台車へビードを移載する作業には、ビード移載装置が用いられている。ビードを移載する装置としては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。
【0003】
図6は、従来のビード移載装置を示す概略的な模式図である。
図7は、従来のフックの動作を示す概略的な模式図である。
図6に示す従来のビード移載装置100は、フック101と、レール105に沿って走行する走行体104とを備える。フック101は、走行体104に付設されており、走行体104の走行に伴って前後方向へ変位可能に構成される。
【0004】
従来のフック101は、アーム部102と、爪部103とを備える。フック101において、爪部103は、前後方向に向けて略水平に延びている。フック101は、ビードBの内側に爪部103を挿通すると共に、ビードBの内径側の上端部分が爪部103に載置されることで、ビードBを吊り下げることができる。さらに、従来のフック101は、アーム部102と爪部103との間に図示しない変位機構を有し、前記変位機構によって、爪部103がアーム部102に対して前後方向へ変位可能に構成される。
【0005】
図7に示すように、従来のビード移載装置100では、フック101の爪部103にビードBが載置される前には、爪部103を後方側へ変位させて、爪部103とビードBとを離間させておき(
図7左図参照)、その状態から爪部103をビードB側へ前進させることで(
図7の右図参照)、爪部103にビードBが載置される。従来のビード移載装置100では、このようにして、フック101でビードBを吊り下げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のビード移載装置100を用いた場合、フック101の爪部103をビードB側へ前進させたときに、爪部103とビードBとが擦れて、ビードBに傷がつく場合があった。
【0008】
本発明は、ビード移載装置のフックでビードを吊り下げる際に、フックによってビードを傷つけることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係るビード移載装置は、円環状のビードを、軸方向を略水平とした姿勢で第1位置から第2位置へ移載するビード移載装置であって、アーム部と、前記アーム部の先端部に突設され前記ビードの内径側上部が載置される爪部と、を有するフックと、設定された経路に沿って前記フックを変位させて、前記フックにより吊り下げられた前記ビードを前記第1位置から前記第2位置まで変位させる変位機構と、水平方向に延びると共に前記アーム部を支持する第1回転軸を有し、前記第1回転軸を正転方向及び逆転方向へ回動して、前記フックを揺動させる第1揺動機構と、を備え、前記フックが、前記第1揺動機構によって、前記爪部が水平方向に対して傾斜する方向に延び、前記ビードの軸方向について、前記爪部が略水平方向に延び、前記ビードの軸方向について、前記爪部が前記ビードと重なる位置に配置される第1作動位置と、前記爪部が前記ビードと重ならない位置に配置される第1待機位置と、の間で揺動される。
【0010】
上記構成のビード移載装置によれば、フックでビードを吊り下げる際に、ビードとフックとの擦れを抑制することができる。これにより、ビード移載装置のフックでビードを吊り下げる際に、フックによってビードを傷つけることを抑制することができる。
【0011】
(2)本発明の前記(1)の態様のビード移載装置は、前記第1位置から前記第2位置へ向かう方向について前記フックより前記第2位置側に配置される規制アームと、水平方向に延びると共に前記規制アームを支持する第2回転軸を有し、前記第2回転軸を正転方向及び逆転方向へ回動して、前記規制アームを揺動させる第2揺動機構と、をさらに備え、前記規制アームが、前記第2揺動機構によって、前記フックに吊り下げられた前記ビードの前面と対面する第2作動位置と、前記フックに吊り下げられた前記ビードの前面と対面しない第2待機位置と、の間で揺動されると好ましい。
上記構成のビード移載装置によれば、移載中におけるフックからのビードの脱落を抑制することができる。
【0012】
(3)本発明の前記(2)の態様のビード移載装置は、前記爪部が、先端側に向かって先細りとなる形状を有すると好ましい。
上記構成のビード移載装置によれば、ビードとフックとの擦れを抑制することができる。
【0013】
(4)本発明の前記(1)~(3)の何れか1つの態様のビード移載装置は、前記フックが左右一対で設けられると好ましい。
上記構成のビード移載装置によれば、フックが1つである場合に比べて、移載中におけるビードの揺れを抑制することができる。これにより、フックからのビードの脱落を抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、フックでビードを吊り下げる際に、ビードとフックとの擦れを抑制することができる。これにより、ビードの傷つきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係るビード移載装置の全体構成を示す概略的な模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るビード移載装置の部分的な斜視模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るビード移載装置の部分的な側面模式図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るビード移載装置の部分的な正面模式図である。
【
図6】従来のビード移載装置を概略的に示す模式図である。
【
図7】従来のビード移載装置におけるフックの動作を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0017】
[ビード移載装置の全体構成]
図1は、本発明の一実施形態に係るビード移載装置の全体構成を示す概略的な模式図である。
図2は、本発明の一実施形態に係るビード移載装置の部分的な側面模式図である。
図3は、本発明の一実施形態に係るビード移載装置の部分的な正面模式図である。
図4は、本発明の一実施形態に係るビード移載装置の部分的な斜視模式図である。
図1~
図4には、本発明に係るビード移載装置の実施形態であるビード移載装置10を示している。
図1に示すビード移載装置10は、タイヤの製造工程の一部に配置され、ビードBを第1位置S1から第2位置S2に移載するための装置である。以下の説明では、
図1~
図4の各矢印に示すように、前後方向、上下方向、及び左右方向を規定する。以下の説明では、第1位置S1から第2位置S2に向かう方向を前方向、その反対方向を後方向と称し、第1位置S1側から第2位置S2を見た場合に、左手となる水平方向を左方向、右手となる水平方向を右方向と称する。以下の説明では、前後方向及び左右方向に直交する方向を上下方向と称する。
【0018】
図2に示すように、ビード移載装置10による移載の対象物であるビードBは、円環状の部材であり、ワイヤを円環状に形成したコアb1と、コアb1の外周側に接合された未加硫ゴムからなるエイペックスb2と、を備える。
図1に示すように、本実施形態では、製造されたビードBをストックしておくためのストッカ5のロッド部5aを第1位置S1とし、ビードBを搬送するための台車6のロッド部6aを第2位置S2とする。なお、ロッド部5a及びロッド部6aは、左右方向に一対で配置される。ビード移載装置10は、ストッカ5のロッド部5a(第1位置S1)において吊り下げた状態でストックされているビードBを、台車6のロッド部6a(第2位置S2)に移載する。
【0019】
図1~
図4に示すように、ビード移載装置10は、フック20、変位機構30、第1揺動機構40、及び第2揺動機構50を備える。
【0020】
フック20は、ビードBを吊り下げるための部位であり、アーム部21と爪部22とを備える。フック20は、変位機構30及び第1揺動機構40により支持される。
【0021】
アーム部21は、金属製の平板からなる腕状の部位であり、一端側が第1揺動機構40(後で説明する第1回転軸42)に連結される。爪部22は、略棒状の部材で構成される。本実施形態の爪部22は、円錐状の形態を有し、軸方向に延びている。爪部22は、その軸方向をアーム部21の長さ方向に対して直交する方向へ向けて、アーム部21の他端側に設けられる。爪部22は、ビードBの内側に挿通され、当該ビードBの内径側の上端部分に直接接触する。爪部22は、このようにして、ビードBが載置される。
【0022】
ビード移載装置10において、爪部22は、外周面に角部がない形状を有すると好ましく、この場合、爪部22にビードBが接触したときの擦れを抑制することができる。また、ビード移載装置10において、爪部22は、先端側に向かって先細りとなる形状を有すると好ましく、この場合、爪部22がビードBに接触するときの衝撃及び擦れを緩和することができる。本実施形態で例示した爪部22は、円錐形状を有しており、角部がなく、先端側に向かって先細りとなっている。なお、本実施形態では、円錐形状を有する爪部22を例示しているが、本発明のビード移載装置における爪部の形状はこれに限定されず、例えば、円柱状であってもよい。
【0023】
変位機構30は、フック20及び第1揺動機構40を変位させるための機構である。変位機構30は、前後変位部31及び上下変位部34を備える。前後変位部31は、前後方向に延びる第1レール32と、第1レール32に沿って走行する第1走行体33とを備える。第1走行体33は、図示しない第1走行輪と、前記第1走行輪を駆動する第1モータ33a(
図5参照)とを有しており、第1モータ33aで前記第1走行輪を駆動することにより第1レール32に沿って前後方向に走行(変位)することができる。変位機構30は、前後変位部31によって、第1揺動機構40及びフック20を、前後方向へ変位させることができる。
【0024】
上下変位部34は、第1走行体33から下方に延びる第2レール35と、第2レール35に沿って走行する第2走行体36とを備える。第2走行体36は、図示しない第2走行輪と、前記第2走行輪を駆動する第2モータ36a(
図5参照)とを有しており、第2モータ36aで前記第2走行輪を駆動することにより第2レール35に沿って上下方向に走行(変位)することができる。変位機構30は、上下変位部34によって、第1揺動機構40及びフック20を、上下方向へ変位させることができる。
【0025】
なお、本発明に係るビード移載装置10における変位機構30の構成は、本実施形態で示した構成に限定されず、フック20を前後方向及び上下方向へ変位させることが可能な機構であればよく、例えば、ロボットアーム等であってもよい。また、本実施形態では、変位機構30として、フック20を2つの軸方向(前後方向及び上下方向)に変位可能とする機構を例示しているが、本発明に係るビード移載装置が備える変位機構は、さらに多くの自由度を有する機構であってもよく、例えば、左右方向へ変位する機構や、各軸回りの回動する機構をさらに備えていてもよい。
【0026】
第1揺動機構40は、フック20を揺動させるための機構である。第1揺動機構40は、第1本体部41及び第1回転軸42を備える。第1本体部41は、第2走行体36のケーシングを兼ねている。第1回転軸42は、左右方向へ水平に延びている。第1本体部41は、第1回転軸42を回転駆動する第1駆動源43(
図5参照)を有し、第1駆動源43の駆動によって、第1回転軸42が所定角度だけ、正転方向(
図3における反時計回りの方向)及び逆転方向(
図3における時計回りの方向)へ回転される。第1駆動源43としては、例えば、電動モータ、電動アクチュエータ等を採用することができる。
【0027】
フック20は、ビードBを吊り下げるための部位を構成する。フック20は、アーム部21の一端が、第1回転軸42に固定されている。このため、アーム部21は、第1回転軸42の往復回動に伴って、略前後方向に揺動する。アーム部21は、第1回転軸42が正転方向へ最大限回転した場合、第1作動位置X1に位置し、第1回転軸42が逆転方向へ最大限回転した場合、第1待機位置Y1に位置する。
【0028】
アーム部21が第1作動位置X1に位置する場合、爪部22は、軸方向が略水平となり、略前後方向に延びる姿勢となる。このとき、フック20は、ビードBの軸方向について、爪部22がビードBと重なる位置に配置され、爪部22にビードBを載置することが可能となる。換言すると、アーム部21が第1作動位置X1に位置する場合、爪部22は、ビードBを引っ掛けることができる。なお、本実施形態で示す爪部22は、アーム部21が第1作動位置X1に位置する場合、爪部22の軸方向が、当該爪部22の先端側に向けて先上がりとなる姿勢としてもよい。この場合、爪部22に載置されたビードBが、爪部22からより外れにくくなる。
【0029】
アーム部21が第1待機位置Y1に位置する場合、爪部22は、水平方向に対して傾斜した方向に向いて、先下がりの姿勢となる。このとき、フック20は、ビードBの軸方向について、爪部22がビードBから離間した(重ならない)位置に配置され、爪部22にビードBを載置することができなくなる。換言すると、アーム部21が第1待機位置Y1に位置する場合、爪部22は、ビードBを引っ掛けることができない。アーム部21が第1作動位置X1から第1待機位置Y1に回動した場合、爪部22に載っていたビードBは、爪部22をすべり落ちてフック20から脱落する。
【0030】
以上に説明した通り、ビード移載装置10において、フック20は、第1揺動機構40によって、第1作動位置X1と第1待機位置Y1との間で揺動される。なお、第1作動位置X1に位置するアーム部21と、第1待機位置Y1に位置するアーム部21とが成す角度は、ビードBの径、爪部22の形状及び大きさ等に応じて、適宜設定する。
【0031】
第2揺動機構50は、規制アーム25を揺動させるための機構である。第2揺動機構50は、第2本体部51及び第2回転軸52を備える。第2回転軸52は、前後方向へ水平に延びている。第2本体部51は、第2回転軸52を回転駆動する第2駆動源53(
図5参照)を有し、第2駆動源53の駆動によって、第2回転軸52を所定角度だけ、正転方向(
図4における反時計回りの方向)及び逆転方向(
図4における時計回りの方向)へ回転させることができる。第2駆動源53としては、例えば、電動モータ、電動アクチュエータ等を採用することができる。
【0032】
規制アーム25は、爪部22に載置されたビードBが当該爪部22から脱落するのを抑制するための部位を構成する。規制アーム25は、規制部26を備える。規制部26は、平板状である規制アーム25の先端側の一部を後方側へ屈曲させて構成される。このため、規制部26とビードBの前面との離間距離は、規制アーム25における規制部26以外の部位とビードBの前面との離間距離に比べて小さい。規制部26は、爪部22に載置されたビードBの前面と対面して、当該ビードBの前方への変位を規制する。規制アーム25は、一端が第2回転軸52に固定されており、他端に規制部26が設けられる。規制アーム25は、第2回転軸52の往復回動に伴って、略左右方向に揺動する。規制アーム25は、第2回転軸52が正転方向へ最大限回転した場合、第2作動位置X2に位置し、第2回転軸52が逆転方向へ最大限回転した場合、第2待機位置Y2に位置する。
【0033】
規制アーム25が第2作動位置X2に位置する場合、規制部26は、ビードBの前面と対面する位置に配置される。このとき、規制部26と爪部22との間に形成される隙間は、ビードBの厚みに比べて小さいと好ましく、この場合、ビードBが、規制部26と爪部22との間を通過して脱落することがない。
【0034】
図2及び
図4に示すように、ビード移載装置10は、フック20を左右一対で設けている。このため、ビード移載装置10では、フック20が一つだけである場合に比べて、フック20で吊り下げたビードBが(特に左右方向へ)揺れにくい。なお、本実施形態で示すビード移載装置10は、左右一対のフック20を備えているが、本発明に係るビード移載装置は、フックの個数が一つであってもよい。
【0035】
[制御装置]
図5は、ビード移載装置の制御ブロック図である。ビード移載装置10は、
図5に示す制御装置15をさらに備える。制御装置15は、ビード移載装置10の動作を制御する装置である。制御装置15は、ビードBを第1位置S1から第2位置S2まで移載するための制御プログラムがインストールされたパーソナルコンピュータや、その他の制御デバイスにより構成される。
図5に示すように、制御装置15は、変位機構30、第1揺動機構40、及び第2揺動機構50に接続され、各機構30,40,50の動作を制御する。
【0036】
図1及び
図5に示すように、制御装置15は、変位機構30における第1モータ33aの動作を制御し、前後方向における第1走行体33(フック20)の位置を調整する。制御装置15は、変位機構30における第2モータ36aの動作を制御し、上下方向における第2走行体36(第1本体部41及びフック20)の位置を調整する。制御装置15は、第1揺動機構40における第1駆動源43の動作を制御し、アーム部21の回動位置を、第1作動位置X1又は第1待機位置Y1に切り換える。制御装置15は、第2揺動機構50における第2駆動源53の動作を制御し、規制アーム25の回動位置を、第2作動位置X2又は第2待機位置Y2に切り換える。
【0037】
[ビード移載装置による移載動作について]
図1に示すように、ビード移載装置10は、第1位置S1(ロッド部5a)に準備されているビードBを、第2位置S2(ロッド部6b)に移載する。円環状のビードBは、軸方向を略水平方向に向けた姿勢で、ビード移載装置10により搬送される。
【0038】
図1左図に示すように、ビード移載装置10では、第1位置S1(ロッド部5a)にあるビードBをフック20で吊り下げる。このときフック20は、まず変位機構30によって、第1位置S1にあるビードBを吊り下げることができる位置に位置決めされると共に、第1揺動機構40によって、アーム部21が第1待機位置Y1に位置される。次に、フック20は、第1揺動機構40によって、フック20(アーム部21)が第1作動位置X1に回動される。このとき、ビードBは、その内側に爪部22が挿通され、当該爪部22に載置される。このように、本発明に係るビード移載装置10は、フック20を回動させて、ビードBを吊り下げるように構成される。
【0039】
次に、ビード移載装置10では、第2揺動機構50により、規制アーム25を第2待機位置Y2から第2作動位置X2に回動させて、ビードBの前面と対向する位置に規制部26を配置する。このように、本発明に係るビード移載装置10は、フック20に吊り下げられたビードBの前面に規制部26を配置して、ビードBの前方への変位を規制するように構成される。
【0040】
次に、
図1中図に示すように、ビード移載装置10では、変位機構30を作動させて、ビードBを第1位置S1(ロッド部5a)から第2位置S2(ロッド部6a)まで搬送する。このとき、フック20は、第1揺動機構40によって、第1作動位置X1に位置する状態が維持される。またこのとき、規制アーム25は、第2揺動機構50によって、規制部26がビードBの前面に位置する状態が維持される。
【0041】
ビード移載装置10では、ビードBの前面と対向する位置に規制部26を配置した状態で、ビードBを第1位置S1から第2位置S2に搬送する。このため、ビード移載装置10では、ビードBが搬送中に前後左右へ揺れたとしても、規制部26によって前方への変位が規制され、これにより、爪部22からのビードBの脱落が抑制される。ビード移載装置10では、変位機構30によって、ビードBの内側にロッド部6aが挿通されるように当該ビードBの上下方向の位置を調整しながら、ビードBを第2位置S2(ロッド部6a)まで搬送する。
【0042】
次に、
図1右図に示すように、ビード移載装置10では、ビードBの前方への搬送が完了した後、第2揺動機構50を作動させて、規制アーム25を第2待機位置Y2に回動させると共に、第1揺動機構40を作動させて、フック20(アーム部21)を第1待機位置Y1に回動させる。このときビードBは、爪部22を滑り落ちてロッド部6aに受け渡され、ロッド部6aに吊り下げられた状態となる。ビード移載装置10は、このようにして、ビードBを第1位置S1から第2位置S2に移載する。
【0043】
ビード移載装置10では、ビードBの第2位置S2への移載を完了した後、変位機構30によって、フック20を第2位置S2から第1位置S1に変位させる。ビード移載装置10では、以上の動作を繰り返して、ストッカ5に準備されたビードBを、台車6に移載する。
【0044】
[ビードの傷つきについて]
図7に示すように、従来のビード移載装置100は、爪部103を後方から前方へ変位させることによって、爪部103にビードBを載置するように構成される。このような構成のビード移載装置100では、爪部103が前方へ変位してビードBに接触した時点から、さらに前方へと変位する間、ビードBに爪部103が擦り続けられることとなる。
【0045】
一方、
図1に示すように、ビード移載装置10は、爪部22を第1回転軸42回りの周方向へ変位させて、爪部22にビードBを載置するように構成される。このような構成のビード移載装置10において、爪部22は、ビードBが載置される位置に到達する直前まで、ビードBと接触しない。このため、爪部22がビードBを擦りながら周方向へ変位する変位量(距離)は、ビード移載装置100において爪部103がビードBを擦りながら前方向へ変位する変位量(距離)に比べて小さい。このため、本発明に係るビード移載装置10では、フック20でビードBを吊り下げる際に、ビードBとフック20との擦れを抑制することができる。
【0046】
さらに、ビード移載装置10では、爪部22の形状を円錐形状としているため、爪部22の形状を円柱形状とした場合に比べると、ビードBと接触する部位が先下がりに傾斜している分だけ、爪部22がビードBに接触するまでに要するアーム部21の回動量が大きくなる。換言すると、このような構成のビード移載装置10では、爪部22の形状を円柱形状とした場合に比べて、爪部22がより遅いタイミングでビードBと接触する。このため、本発明に係るビード移載装置10では、爪部22がビードBを擦りながら周方向へ変位する変位量(距離)がより小さくなる。このため、本発明に係るビード移載装置10では、フック20とビードBとの擦れによる傷つきをより抑制することができる。
【0047】
さらに、本発明に係るビード移載装置10において、円錐形状である爪部22は、外周面に角部を有していないため、外周面に角部がある形状の爪部を採用した場合に比べて、ビードBをより傷つけにくくなっている。
【0048】
[各実施形態の作用効果]
(1)以上に説明した本実施形態のビード移載装置10は、円環状のビードBを、軸方向を略水平とした姿勢で第1位置S1から第2位置S2へ移載する装置である。ビード移載装置10は、アーム部21と、アーム部21の先端部に突設されビードBの内径側上部が載置される爪部22と、を有するフック20と、設定された経路に沿ってフック20を変位させて、フック20により吊り下げられたビードBを第1位置S1から第2位置S2まで変位させる変位機構30と、水平方向に延びると共にアーム部21を支持する第1回転軸42を有し、第1回転軸42を正転方向及び逆転方向へ回動して、フック20を揺動させる第1揺動機構40と、を備える。ビード移載装置10では、フック20(アーム部21)が、第1揺動機構40によって、爪部22が略水平方向に延び、ビードBの軸方向について、爪部22がビードBと重なる位置に配置される第1作動位置X1と、爪部22が水平方向に対して傾斜する方向に延び、ビードBの軸方向について、爪部22がビードBと重ならない位置に配置される第1待機位置Y1と、の間で揺動される。
【0049】
このような構成のビード移載装置10によれば、フック20にビードBが載置される際に、ビードBとフック20との擦れを抑制することができる。これにより、ビード移載装置10のフック20にビードBが載置される際に、フック20によってビードBを傷つけることを抑制することができる。
【0050】
(2)以上に説明した本実施形態のビード移載装置10は、第1位置S1から第2位置S2へ向かう前後方向についてフック20より第2位置S2側に配置される規制アーム25と、水平方向に延びると共に規制アーム25を支持する第2回転軸52を有し、第2回転軸52を正転方向及び逆転方向へ回動して、規制アーム25を揺動させる第2揺動機構50と、をさらに備える。ビード移載装置10では、規制アーム25が、第2揺動機構50によって、フック20に吊り下げられたビードBの前面と対面する第2作動位置X2と、フック20に吊り下げられたビードBの前面と対面しない第2待機位置Y2と、の間で揺動される。
このような構成のビード移載装置10によれば、第1位置S1から第2位置S2への移載中において、フック20からビードBが脱落することを抑制することができる。
【0051】
(3)以上に説明した本実施形態のビード移載装置10は、爪部22が、円錐形状を有しており、先端側に向かって先細りとなる形状を有する。
このような構成のビード移載装置10によれば、ビードBとフック20との擦れを抑制することができる。
【0052】
(4)以上に説明した本実施形態のビード移載装置10は、フック20が左右一対で設けられる。
このような構成のビード移載装置10によれば、フック20が1つである場合に比べて、移載中におけるビードBの揺れを抑制することができる。これにより、フック20からのビードBの脱落を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上説明されたビード移載装置は、タイヤの製造に用いるビードを移載する用途だけでなく、傷がつくことを嫌う円環状のワークを移載する用途に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
10:ビード移載装置
20:フック
21:アーム部
22:爪部
25:規制アーム
30:変位機構
40:第1揺動機構
42:第1回転軸
50:第2揺動機構
S1:第1位置
S2:第2位置
X1:第1作動位置
Y1:第1待機位置
X2:第2作動位置
Y2:第2待機位置