(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044578
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 290/12 20060101AFI20240326BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20240326BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240326BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C08F290/12
B32B15/08 101
B32B27/30 B
H05K1/03 610H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150190
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】野田 信久
【テーマコード(参考)】
4F100
4J127
【Fターム(参考)】
4F100AB17
4F100AB17B
4F100AB33
4F100AB33B
4F100AK12
4F100AK12A
4F100AL01
4F100AL01A
4F100BA02
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA08
4F100GB41
4F100GB43
4F100JG05
4F100JK04
4F100JK06
4F100JK17
4F100YY00A
4J127AA03
4J127AA04
4J127BB041
4J127BB081
4J127BB221
4J127BC031
4J127BC151
4J127BD061
4J127BE051
4J127BE05X
4J127BE241
4J127BE24X
4J127BE251
4J127BE25X
4J127BE511
4J127BE51Y
4J127BG051
4J127BG05X
4J127BG101
4J127BG10X
4J127BG171
4J127BG17X
4J127BG271
4J127BG27Y
4J127CB351
4J127CC291
4J127DA16
4J127EA03
4J127FA38
(57)【要約】
【課題】 誘電率、誘電正接が低く、かつ、銅箔への密着性や折り曲げ性にも優れた樹脂材料を提供する。
【解決手段】 スチレン由来の骨格を有する共重合体を含む樹脂組成物であって、
該スチレン由来の骨格を有する共重合体は、スチレン由来の構造単位と、所定の構造のウレタン結合含有構造単位を必須とし、スチレン由来の構造単位の含有割合、及び、該ウレタン結合含有構造単位と所定の構造の水酸基含有構造単位との合計含有割合、並びに、その他の構造単位の含有割合が特定され、かつ、該樹脂組成物中に含まれる残存モノマー含有量が特定された樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン由来の骨格を有する共重合体を含む樹脂組成物であって、
該スチレン由来の骨格を有する共重合体は、下記式(1);
【化1】
で表されるスチレン由来の構造単位と、下記式(2);
【化2】
(式(2)中、R
1は水素原子又はメチル基を表す。R
2は、炭素数1~4のアルキレン基を表す。R
3は、末端に-CH=CH
2又は-C(CH
3)=CH
2を有する1価の有機基を表す。m1は3~8の数を表し、n1は0~9の数を表す。)で表されるウレタン結合含有構造単位を必須とし、
上記式(1)で表されるスチレン由来の構造単位を70~99.5質量%、上記式(2)で表されるウレタン結合含有構造単位と、下記式(3);
【化3】
(式(3)中、R
4は水素原子又はメチル基を表す。R
5は、炭素数1~4のアルキレン基を表す。m2は3~8の数を表し、n2は0~9の数を表す。)で表される水酸基含有構造単位とを合計で0.5~10質量%、その他の構造単位を0~20質量%有し、
該樹脂組成物中に含まれる残存モノマー含有量が5.0質量%以下であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記その他の構造単位として窒素含有単量体由来の構造単位を有することを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
更に溶解度パラメータが8.4~10.0である有機溶剤を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
電子材料用途に用いられる樹脂組成物であって、
該スチレン由来の骨格を有する共重合体は、下記式(1);
【化4】
で表されるスチレン由来の構造単位と、下記式(2);
【化5】
(式(2)中、R
1は水素原子又はメチル基を表す。R
2は、炭素数1~4のアルキレン基を表す。R
3は、末端に-CH=CH
2又は-C(CH
3)=CH
2を有する1価の有機基を表す。m1は3~8の数を表し、n1は0~9の数を表す。)で表されるウレタン結合含有構造単位を必須とし、
上記式(1)で表されるスチレン由来の構造単位を70~99.5質量%、上記式(2)で表されるウレタン結合含有構造単位と、下記式(3);
【化6】
(式(3)中、R
4は水素原子又はメチル基を表す。R
5は、炭素数1~4のアルキレン基を表す。m2は3~8の数を表し、n2は0~9の数を表す。)で表される水酸基含有構造単位とを合計で0.5~20質量%、その他の構造単位を0~20質量%有することを特徴とする電子材料用樹脂組成物。
【請求項5】
前記その他の構造単位として窒素含有単量体由来の構造単位を有することを特徴とする請求項4に記載の電子材料用樹脂組成物。
【請求項6】
更に溶解度パラメータが8.4~10.0である有機溶剤を含むことを特徴とする請求項4又は5に記載の電子材料用樹脂組成物。
【請求項7】
銅箔と樹脂層とを積層してなる積層体であって、
該樹脂層は、請求項4又は5に記載の電子材料用樹脂組成物を用いて形成されてなることを特徴とする積層体。
【請求項8】
請求項7に記載の積層体を用いてなることを特徴とするプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。より詳しくは、プリント配線板等の材料としての利用可能な樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
社会の様々な分野で大量の情報通信が行われる現代においては通信システムの進歩が常に求められており、2020年から高速、大容量の第5世代移動通通信システム(5G)の利用が開始されている。5G通信の利用開始に伴い、通信装置に使用されるプリント配線板への要求性能は一段と高まっている。
プリント配線板の性能はプリント配線板を構成する銅張積層板の特性に大きく依存している。銅張積層板はガラス繊維等に樹脂を含侵させて加圧、加熱処理してできる樹脂層の両面に銅箔を張り合わせた板である。銅張積層板に使用される樹脂材料として、スチレンとオキサゾリン基を有する重合性モノマーとの共重合体であって、オキサゾリン基を有する重合性モノマーを所定の割合で使用した所定の分子量の共重合体とラジカル重合性の二重結合とカルボキシル基を有する化合物との反応物である高分子化合物(特許文献1参照)や、エチレン性不飽和結合を有するポリスチレン樹脂、架橋剤及び無機充填材を含む樹脂組成物(特許文献2参照)が開示されている。
またこれらと同じスチレン系樹脂として、スチレンとヒドロキシエチルメタクリレートとの共重合体にイソシアネート化合物を反応させてウレタン化したものを塗料や成形品の材料として使用することが開示されている(特許文献3~7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-63182号公報
【特許文献2】特開2022-1628号公報
【特許文献3】特開昭60-38403号公報
【特許文献4】特開平4-149218号公報
【特許文献5】特開平3-75012号公報
【特許文献6】特開平3-75013号公報
【特許文献7】特開平5-49009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
銅張積層板に使用される樹脂材料には誘電率、誘電正接が低く、かつ、銅箔への密着性や折り曲げ性に優れることが求められる。しかし、樹脂を低誘電率、低誘電正接にするためには一般的に極性を低くする必要があるが、低極性の樹脂は銅箔への密着性や折り曲げ性が低下するという課題があった。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、誘電率、誘電正接が低く、かつ、銅箔への密着性や折り曲げ性にも優れた樹脂材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、誘電率、誘電正接が低く、かつ、銅箔への密着性や折り曲げ性にも優れた樹脂材料について検討し、スチレン由来の構造単位と、所定の構造のウレタン結合含有構造単位とを必須とし、スチレン由来の構造単位の含有割合、及び、ウレタン結合含有構造単位と所定の構造の水酸基含有構造単位との合計含有割合が所定の範囲である共重合体を含む樹脂組成物が、誘電率、誘電正接が低く、かつ、銅箔への密着性や折り曲げ性にも優れ、銅張積層板の樹脂層の材料として好適であることを見出し、本発明に到達したものである。
【0007】
すなわち本発明は、以下のとおりである。
[1]スチレン由来の骨格を有する共重合体を含む樹脂組成物であって、
該スチレン由来の骨格を有する共重合体は、下記式(1);
【0008】
【0009】
で表されるスチレン由来の構造単位と、下記式(2);
【0010】
【0011】
(式(2)中、R1は水素原子又はメチル基を表す。R2は、炭素数1~4のアルキレン基を表す。R3は、末端に-CH=CH2又は-C(CH3)=CH2を有する1価の有機基を表す。m1は3~8の数を表し、n1は0~9の数を表す。)で表されるウレタン結合含有構造単位を必須とし、
上記式(1)で表されるスチレン由来の構造単位を70~99.5質量%、上記式(2)で表されるウレタン結合含有構造単位と、下記式(3);
【0012】
【0013】
(式(3)中、R4は水素原子又はメチル基を表す。R5は、炭素数1~4のアルキレン基を表す。m2は3~8の数を表し、n2は0~9の数を表す。)で表される水酸基含有構造単位とを合計で0.5~10質量%、その他の構造単位を0~20質量%有し、
該樹脂組成物中に含まれる残存モノマー含有量が5.0質量%以下であることを特徴とする樹脂組成物。
【0014】
[2]前記その他の構造単位として窒素含有単量体由来の構造単位を有することを特徴とする[1]に記載の樹脂組成物。
【0015】
[3]更に溶解度パラメータが8.4~10.0である有機溶剤を含むことを特徴とする[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
【0016】
[4]電子材料用途に用いられる樹脂組成物であって、
該スチレン由来の骨格を有する共重合体は、下記式(1);
【0017】
【0018】
で表されるスチレン由来の構造単位と、下記式(2);
【0019】
【0020】
(式(2)中、R1は水素原子又はメチル基を表す。R2は、炭素数1~4のアルキレン基を表す。R3は、末端に-CH=CH2又は-C(CH3)=CH2を有する1価の有機基を表す。m1は3~8の数を表し、n1は0~9の数を表す。)で表されるウレタン結合含有構造単位を必須とし、
上記式(1)で表されるスチレン由来の構造単位を70~99.5質量%、上記式(2)で表されるウレタン結合含有構造単位と、下記式(3);
【0021】
【0022】
(式(3)中、R4は水素原子又はメチル基を表す。R5は、炭素数1~4のアルキレン基を表す。m2は3~8の数を表し、n2は0~9の数を表す。)で表される水酸基含有構造単位とを合計で0.5~20質量%、その他の構造単位を0~20質量%有することを特徴とする電子材料用樹脂組成物。
【0023】
[5]前記その他の構造単位として窒素含有単量体由来の構造単位を有することを特徴とする[4]に記載の電子材料用樹脂組成物。
【0024】
[6]更に溶解度パラメータが8.4~10.0である有機溶剤を含むことを特徴とする[4]又は[5]に記載の電子材料用樹脂組成物。
【0025】
[7]銅箔と樹脂層とを積層してなる積層体であって、
該樹脂層は、[4]~[6]のいずれかに記載の電子材料用樹脂組成物を用いて形成されてなることを特徴とする積層体。
【0026】
[8][7]に記載の積層体を用いてなることを特徴とするプリント配線板。
【発明の効果】
【0027】
本発明の樹脂組成物は、誘電率、誘電正接が低く、かつ、銅箔への密着性や折り曲げ性にも優れ、銅張積層板の樹脂層の材料として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0029】
1.樹脂組成物
本発明の樹脂組成物が含むスチレン由来の骨格を有する共重合体(以下、共重合体1とも記載する)は、上記式(1)で表されるスチレン由来の構造単位と、上記式(2)で表されるウレタン結合含有構造単位を必須とし、上記式(1)で表されるスチレン由来の構造単位を70~99.5質量%、上記式(2)で表されるウレタン結合含有構造単位と、上記式(3)で表される水酸基含有構造単位とを合計で0.5~10質量%、その他の構造単位を0~20質量%有することを特徴とする。
重合体がスチレン由来の構造単位を有すると、重合体が低誘電率、低誘電正接となるが、それだけでは銅箔への十分な密着性は得られない。これに対し、重合体がウレタン結合を有すると重合体が銅箔への密着性に優れたものとなるが、ウレタン結合は重合体の誘電率を上げる要因となる。本発明の共重合体はスチレン由来の構造単位とウレタン結合含有構造単位を必須とし、かつ、共重合体を構成する構造単位の割合を所定の範囲に調整することで、低誘電率、低誘電正接と銅箔への密着性の両立を実現し、更に折り曲げ性にも優れたものとしている。
【0030】
上記共重合体1は、上記式(1)で表されるスチレン由来の構造単位を共重合体1の全構造単位100質量%に対して70~99.5質量%有するが、好ましくは80~99質量%であることが好ましい。より好ましくは、90~98質量%である。
【0031】
上記共重合体1は、共重合体1の全構造単位100質量%に対して、上記式(2)で表されるウレタン結合含有構造単位と上記式(3)で表される水酸基含有構造単位とを合計で0.5~10質量%有するが、上記式(2)で表されるウレタン結合含有構造単位と、上記式(3)で表される水酸基含有構造単位との合計割合は1~9質量%であることが好ましい。より好ましくは、3~8質量%である。
【0032】
上記共重合体1において、上記式(3)で表される水酸基含有構造単位の割合は共重合体1の全構造単位100質量%に対して1質量%以下であることが好ましい。このような割合であると、共重合体1を含む樹脂組成物の硬化物が電気特性や銅箔への密着性により優れたものとなる。上記式(3)で表される水酸基含有構造単位の割合は、より好ましくは、共重合体1の全構造単位100質量%に対して0.5質量%以下であり、更に好ましくは、0.1質量%以下である。
【0033】
上記共重合体1は、上記式(1)で表されるスチレン由来の構造単位、上記式(2)で表されるウレタン結合含有構造単位、及び、上記式(3)で表される水酸基含有構造単位以外のその他の構造単位を含んでいてもよい。
その他の構造単位の割合は、共重合体1の全構造単位100質量%に対して0~20質量%であればよいが、より好ましくは、1~10質量%であり、更に好ましくは、1~5質量%である。
【0034】
上記共重合体1は、下記式(2);
【0035】
【0036】
(式(2)中、R1は水素原子又はメチル基を表す。R2は、炭素数1~4のアルキレン基を表す。R3は、末端に-CH=CH2又は-C(CH3)=CH2を有する1価の有機基を表す。m1は3~8の数を表し、n1は0~9の数を表す。)で表されるウレタン結合含有構造単位を必須とする。
上記式(2)において、R2は、炭素数1~4のアルキレン基を表すが、炭素数1~3のアルキレン基であることが好ましく、炭素数1~2のアルキレン基であることがより好ましい。
上記式(2)において、m1は3~8の数を表すが、4~6であることが好ましい。
上記式(2)において、n1は0~9の数を表すが、0~5であることが好ましい。より好ましくは、0又は1である。
【0037】
上記式(2)において、R3は、末端に-CH=CH2又は-C(CH3)=CH2を有する1価の有機基であれば特に制限されないが、下記式(4);
【0038】
【0039】
(式(4)中、R6、R7は、同一又は異なって、炭素数1~4のアルキレン基を表す。R8は、水素原子又はメチル基を表す。m3は、0又は1の数を表す。)で表される基であるか、又は、下記式(5);
【0040】
【0041】
(式(5)中、R9、R11は同一又は異なって、水素原子又はメチル基を表す。R10は炭素数1~4のアルキレン基を表す。m4、n3はそれぞれ1又は2の数を表し、m4+n3は3である。)で表される基であることが好ましい。
【0042】
上記共重合体1は、下記式(3);
【0043】
【0044】
(式(3)中、R4は水素原子又はメチル基を表す。R5は、炭素数1~4のアルキレン基を表す。m2は3~8の数を表し、n2は0~9の数を表す。)で表される水酸基含有構造単位を含むものであってもよい。
上記式(3)において、R5は、炭素数1~4のアルキレン基を表すが、炭素数1~3のアルキレン基であることが好ましく、炭素数1~2のアルキレン基であることがより好ましい。
上記式(2)において、m2は3~8の数を表すが、4~6であることが好ましい。
上記式(2)において、n2は0~9の数を表すが、0~5であることが好ましい。より好ましくは、0又は1である。
【0045】
上記共重合体1の重量平均分子量は、銅箔との接着性と折り曲げ性を向上させる観点から、5000以上が好ましく、10000以上がより好ましい。また銅箔への接着性、塗装作業性、後述する架橋剤との相溶性の点から、20万以下が好ましく、10万以下がより好ましい。
本発明において、共重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー〔東ソー(株)製、品番:HLC-8320GPC、カラム:TSKgel Super Multipore HZ-Mの2本を直列に使用〕を用いて後述する実施例に記載の条件で測定された重量平均分子量(ポリスチレン換算)を意味する。
【0046】
本発明の樹脂組成物は、残存モノマー含有量が5.0質量%以下であることを特徴とする。本発明の樹脂組成物は上記スチレン由来の骨格を有する共重合体を含むものであり、その原料となるモノマーを残留モノマーとして含み得るものであるが、残留モノマーの割合が樹脂組成物100質量%に対して、5.0質量%以下であることで、樹脂組成物の硬化物の性能(電気特性、銅箔との密着性、折り曲げ性)がより良好となり、銅張積層板等の電子部品の材料としてより好適な材料となる。
残存モノマー含有量は、好ましくは、2質量%以下であり、より好ましくは、1質量%以下である。残存モノマー含有量は少ないほど好ましいが、通常は樹脂組成物100質量%に対して、0.1質量%以上は含むことが多い。
【0047】
本発明の樹脂組成物は、スチレン由来の骨格を有する共重合体とともに、溶媒を含むものであってもよい。樹脂組成物が含む溶媒は特に制限されないが、樹脂組成物から硬化塗膜を形成した場合に硬化塗膜に含まれる残留溶媒量が少なくできる点から溶解度パラメータが8.4~10.0の溶媒の使用が好ましい。すなわち、本発明の樹脂組成物が溶解度パラメータが8.4~10.0の溶媒を含むことは本発明の樹脂組成物の好適な実施形態の1つである。
溶解度パラメータが8.4~10.0の有機溶剤としては、例えば、トルエン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0048】
本発明の樹脂組成物は、単独で硬化しても銅箔との接着性、誘電率、誘電正接、折り曲げ性に優れるが、スチレン由来の骨格を有する共重合体と架橋する架橋剤を含むことが好ましい。本発明の樹脂組成物は架橋剤を1種含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
架橋剤は、特に限定されるものではないが、例えば、アリル基、3-シクロヘキセニル基、3-シクロペンテニル基、p-ビニルフェニル基、m-ビニルフェニル基、o-ビニルフェニル基等の不飽和炭化水素基;アクリロイル基、メタクリロイル基、マレイミド基(2,5-ジヒドロ-2,5-ジオキソ-1H-ピロール-1-イル基)等のα,β-不飽和カルボニル基等のラジカル重合性基を有するラジカル重合性架橋剤;ベンゾシクロブテン環を有するベンゾシクロブテン型架橋剤が挙げられる。
上記以外のその他の架橋剤としては、例えば、(メタ)アクリル系架橋剤、スチレン系架橋剤、アリル系架橋剤、マレイミド系架橋剤、ベンゾシクロブテン型架橋剤等が挙げられる。
【0049】
(メタ)アクリル系架橋剤は、2個以上のアクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を有する化合物である。
(メタ)アクリル系架橋剤としては、例えば、シクロヘキサン-1,4-ジメタノールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサン-1,3-ジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレートトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリル酸エステル化合物;ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、3,6,9-トリオキサウンデカン-1,11-ジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等のエーテル含有(メタ)アクリル酸エステル;トリス(3-ヒドロキシプロピル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート等のイソシアヌレート含有(メタ)アクリル酸エステル化合物等が挙げられる。
(メタ)アクリル系架橋剤の市販品としては、例えば、新中村化学工業社製の「A-DOG」(ジオキサングリコールジアクリレート)、共栄社化学社製の「DCP-A」(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)、「DCP」(トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート)、日本化薬株式会社の「KAYARAD R-684」(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)、「KAYARAD R-604」(ジオキサングリコールジアクリレート)等が挙げられる。
【0050】
スチレン系架橋剤は、芳香族炭素原子に直接結合した2個以上のビニル基をする化合物である。
スチレン系架橋剤としては、例えば、ジビニルベンゼン、2,4-ジビニルトルエン、2,6-ジビニルナフタレン、1,4-ジビニルナフタレン、4,4’-ジビニルビフェニル、1,2-ビス(4-ビニルフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ビニルフェニル)プロパン、ビス(4-ビニルフェニル)エーテル等が挙げられる。
【0051】
アリル系架橋剤は、2個以上のアリル基を有する化合物である。
アリル系架橋剤としては、例えば、ジフェン酸ジアリル、トリメリット酸トリアリル、フ タル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジアリル、2,3-ナフタレンカルボン酸ジアリル等の芳香族カルボン酸アリルエステル化合物;1,3,5-トリアリルイソシアヌレート、1,3-ジアリル-5-グリシジルイソシアヌレート等のイソシアヌル酸アリルエステル化合物;2,2-ビス[3-アリル-4-(グリシジルオキシ)フェニル]プロパン等のエポキシ含有芳香族アリル化合物;ビス[3-アリル-4-(3,4-ジヒドロ-2H‐1,3-ベンゾオキサジン-3-イル)フェニル]メタン等のベンゾオキサジン含有芳香族アリル化合物;1,3,5-トリアリルエーテルベンゼン等のエーテル含有芳香族アリル化合物;ジアリルジフェニルシラン等のアリルシラン化合物等が挙げられる。
アリル系架橋剤の市販品としては、日本化成社製の「TAIC」(1,3,5-トリアリルイソシアヌレート)、日触テクノファインケミカル社製の「DAD」(ジフェン酸ジアリル)、和光純薬工業社製の「TRIAM-705」(トリメリット酸トリアリル)、日本蒸留工業社製の商品名「DAND」(2,3-ナフタレンカルボン酸ジアリル)、四国化成工業社製「ALP -d」(ビス[3-アリル-4-(3,4-ジヒドロ-2H-1,3-ベンゾオキサジン-3-イル)フェニル]メタン)、日本化薬社製の「RE-810NM」(2,2-ビス[3-アリル-4-(グリシジルオキシ)フェニル]プロパン)、四国化成社製の「DA-MGIC」(1,3-ジアリル-5-グリシジルイソシアヌレート)等が挙げられる。
【0052】
マレイミド系架橋剤は、2個以上のマレイミド基を有する化合物である。
マレイミド系架橋剤としては、例えば、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビフェニルアラルキル型ポリマレイミド等の芳香族マレイミド化合物;N,N’-エチレンジマレイミド、N,N’-テトラメチレンジマレイミド、N,N’-ヘキサメチレンジマレイミド、1-マレイミド-3-マレイミドメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(IPBM)、1,1’-(シクロヘキサン-1,3-ジイルビスメチレン)ビス(1H-ピロール-2,5-ジオン)(CBM)、1,1’-(4,4’-メチレンビス(シクロヘキサン-4,1-ジイル))ビス(1H-ピロール-2,5-ジオン)(MBCM)、ダイマー酸骨格含有ビスマレイミド等の脂肪族マレイミド化合物等が挙げられる。
マレイミド系架橋剤の市販品としては、デザイナーモレキュールズ社製の「BMI-689」(ダイマー酸骨格含有ビスマレイミド)、日本化薬社製の「MIR-3000-70MT」(ビフェニルアラルキル型ポリマレミド)等が挙げられる。
【0053】
ベンゾシクロブテン型架橋剤は、2個以上のベンゾシクロブテン環を有する化合物である。ベンゾシクロブテン型架橋剤は、さらに、エチレン性不飽和基を有することが好ましい。ベンゾシクロブテン型架橋剤は、さらに、オルガノシロキサン骨格を有することが好ましい。
ベンゾシクロブテン型架橋剤の市販品としては、例えば、ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー製の「CYCLOTENE3022」(ジビニルシロキサンビスベンゾシクロブテン)等が挙げられる。
【0054】
本発明の樹脂組成物中の架橋剤の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは、0.5~60質量%であり、より好ましくは、5~40質量%であり、特に好ましくは10~30質量%である。
【0055】
本発明の樹脂組成物は、スチレン由来の骨格を有する共重合体以外のその他の樹脂を含んでいてもよい。
その他の樹脂としては、例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、低誘電エステル系樹脂、マレイミド系樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド系樹脂、シアネート系樹脂等が挙げられ、特に誘電率や誘電正接を向上させる観点から、ビニル基を含有したポリフェニレンエーテル系樹脂(市販品としては、例えばSABIC社製のNoryl SA9000)が挙げられる。
【0056】
本発明の樹脂組成物における上記その他の樹脂の含有割合は、樹脂組成物100質量%に対して、1~50質量%であることが好ましい。より好ましくは、3~40質量%であり、更に好ましくは、5~30質量%である。
【0057】
本発明の樹脂組成物は、充填剤を含んでいてもよい。充填剤は繊維状であっても粉末状であってもよく、シリカ、カーボンブラック、アルミナ、タルク、雲母、ガラスビーズ、ガラス中空球等を挙げることができる。
また本発明の樹脂組成物は、難燃性化合物、その他の添加剤などの併用も可能である。これらは一般に使用されているものであれば、特に限定されるものではない。例えば、難燃性の化合物では、4,4-ジブロモビフェニルなどの臭素化合物、リン酸エステル、リン酸メラミン、リン含有エポキシ樹脂、メラミンやベンゾグアナミンなどの窒素化合物、オキサジン環含有化合物、シリコン系化合物等が挙げられる。
添加剤としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤、光増感剤、染料、顔料、増粘剤、滑剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、光沢剤等、所望に応じて適宜組み合わせて使用することも可能である。
【0058】
本発明の樹脂組成物における充填剤、難燃性化合物、その他の添加剤の含有量は、これらの合計含有量が樹脂組成物100質量%に対して、1~40質量%であることが好ましい。より好ましくは、5~30質量%である。
【0059】
2.電子材料用樹脂組成物
本発明はまた、電子材料用途に用いられる樹脂組成物であって、該スチレン由来の骨格を有する共重合体は、下記式(1);
【0060】
【0061】
で表されるスチレン由来の構造単位と、下記式(2);
【0062】
【0063】
(式(2)中、R1は水素原子又はメチル基を表す。R2は、炭素数1~4のアルキレン基を表す。R3は、末端に-CH=CH2又は-C(CH3)=CH2を有する1価の有機基を表す。m1は3~8の数を表し、n1は0~9の数を表す。)で表されるウレタン結合含有構造単位を必須とし、
上記式(1)で表されるスチレン由来の構造単位を70~99.5質量%、上記式(2)で表されるウレタン結合含有構造単位と、下記式(3);
【0064】
【0065】
(式(3)中、R4は水素原子又はメチル基を表す。R5は、炭素数1~4のアルキレン基を表す。m2は3~8の数を表し、n2は0~9の数を表す。)で表される水酸基含有構造単位とを合計で0.5~20質量%、その他の構造単位を0~20質量%有することを特徴とする電子材料用樹脂組成物でもある。
【0066】
上記電子材料用樹脂組成物が含むスチレン由来の骨格を有する共重合体(以下、共重合体2とも記載する)は、低誘電率、低誘電正接であって、銅箔への密着性や折り曲げ性にも優れるため、プリント配線板の材料以外にも後述する種々の電子部品の材料として使用できる。
【0067】
上記共重合体2は、共重合体2の全構造単位100質量%に対して70~99.5質量%有するが、上記式(1)で表されるスチレン由来の構造単位の割合は、80~99質量%であることが好ましい。より好ましくは、90~98質量%である。
【0068】
上記共重合体2は、共重合体2の全構造単位100質量%に対して、上記式(2)で表されるウレタン結合含有構造単位と上記式(3)で表される水酸基含有構造単位とを合計で0.5~20質量%有するが、上記式(2)で表されるウレタン結合含有構造単位と、上記式(3)で表される水酸基含有構造単位との合計割合は1~10質量%であることが好ましい。より好ましくは、2~9質量%であり、更に好ましくは、3~8質量%である。
【0069】
上記共重合体2において、上記式(3)で表される水酸基含有構造単位の割合は共重合体2の全構造単位100質量%に対して1質量%以下であることが好ましい。このような割合であると、共重合体2を含む樹脂組成物の硬化物が電気特性や銅箔への密着性により優れたものとなる。上記式(3)で表される水酸基含有構造単位の割合は、より好ましくは、共重合体1の全構造単位100質量%に対して0.5質量%以下であり、更に好ましくは、0.1質量%以下である。
【0070】
上記共重合体2は、上記式(1)で表されるスチレン由来の構造単位、上記式(2)で表されるウレタン結合含有構造単位、及び、上記式(3)で表される水酸基含有構造単位以外のその他の構造単位を含んでいてもよい。
その他の構造単位の割合は、共重合体2の全構造単位100質量%に対して0~20質量%であればよいが、より好ましくは、1~10質量%であり、更に好ましくは、1~5質量%である。
【0071】
その他については、共重合体2の好ましい形態は全て上述した共重合体1と同様である。また、上述した共重合体1を含む樹脂組成物についての記載は全て共重合体2を含む電子材料用樹脂組成物にも当てはまるものである。
【0072】
3.スチレン由来の骨格を有する共重合体の製造方法
上記スチレン由来の骨格を有する共重合体(上記共重合体1、2の両方を含む)の製造方法は、上記スチレン由来の骨格を有する共重合体が得られる限り特に制限されないが、スチレンと上記式(3)で表される水酸基含有構造単位を形成する水酸基含有単量体と、必要に応じてその他の単量体とを含む単量体成分を重合させて重合体(以下、前駆体重合体とも記載する)を製造する第一工程と、得られた重合体の上記式(3)で表される水酸基含有構造単位に対して、末端に-CH=CH2又は-C(CH3)=CH2を有するイソシアネート化合物を反応させる第二工程とを含む製造方法が好ましい。
【0073】
<第一工程>
上記第一工程に用いる単量体成分におけるスチレンの含有割合は、単量体成分全体に対して、70~99.5質量%であることが好ましい。より好ましくは、80~99質量%であり、更に好ましくは、90~98質量%である。
単量体成分における水酸基含有単量体の割合は、得られる共重合体の銅箔との密着性を向上させる観点から、単量体成分全体に対して、0.5~20質量%であることが好ましい。より好ましくは、1~10質量%であり、更に好ましくは、2~9質量%であり、特に好ましくは、3~8質量%である。
単量体成分におけるスチレン、水酸基含有単量体以外のその他の単量体の含有割合は、単量体成分全体に対して、0~20質量%であることが好ましい。より好ましくは、1~10質量%であり、更に好ましくは、1~5質量%である。
【0074】
上記式(3)で表される水酸基含有構造単位を形成する単量体としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートのε-カプロラクトン1モル付加物、2-ヒドロキシエチルメタクリレートのε-カプロラクトン2モル付加物、2-ヒドロキシエチルメタクリレートのε-カプロラクトン3モル付加物、あるいは2-ヒドロキシエチルアクリレートのε-カプロラクトン1モル付加物などの、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの有機ラクトン類の付加物(例えば、ダイセル化学工業社製の「プラクセル(登録商標)FM1D」、「プラクセルFM2D」、「プラクセルFM3」、「プラクセルFA1DDM」、「プラクセルFA2D」など)が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0075】
上記スチレン、水酸基含有単量体以外のその他の単量体としては、アルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体、カルボキシル基含有単量体、オレフィン系単量体、ハロゲン含有単量体、窒素含有単量体等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
この中でも、銅箔との密着性や電気特性(誘電率、誘電正接)等の点から、窒素含有単量体が好ましい。すなわち、本発明の樹脂組成物が含むスチレン由来の骨格を有する共重合体は、上記その他の構造単位として窒素含有単量体由来の構造単位を有することが好ましい。
【0076】
上記窒素含有単量体としては、例えば、不飽和ニトリル単量体、マレイミド基含有単量体、アミド基含有単量体、N-置換(メタ)アクリルアミド単量体、下記式(6)で表される単量体、下記式(7)で表される単量体、下記式(8)で表される単量体が挙げられ、これらの中でも下記式(6)で表される単量体、下記式(7)で表される単量体、下記式(8)で表される単量体が好ましい。
【0077】
【0078】
(式中、R12は水素原子または炭素数1~8のアルキル基を表し、R13は炭素数1~6のアルキレン基を表し、R14は水素原子またはメチル基を表し、Xは水素原子、ハロゲン原子 、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、シアノ基またはニトロ基を表す。)
上記式(6)において、R12で表される炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、 メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などの鎖式アルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などの脂環式アルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ベンジル基、フェネチ ル基などの芳香族アルキル基;などが挙げられる。
上記式(6)において、R13で表される炭素数1~6のアルキレン基としては、例えば 、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基などの直鎖状アルキレン基;イソプロピレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、t-ブチレン基、イソペンチレン基、ネオペンチレン基などの分枝鎖状アルキレン基;などが挙げられる。
【0079】
上記式(6)において、Xで表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。Xで表される炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などの鎖式アルキル基:シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基 、シクロオクチル基などの脂環式アルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ベンジル基、フェネチル基などの芳香族アルキル基;などが挙げられる。Xで表される炭素数1~6のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基などが挙げられる。
【0080】
上記式(6)で表される紫外線吸収性単量体としては、特に限定されるものではないが、例えば、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-tert-ブチル-3’-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-5-メト キシ-2H-ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。これらの単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。銅箔との密着性、電気特性(誘電率、誘電正接)、折り曲げ性を向上させる観点から2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾールが特に好ましい。
【0081】
<式(7)で表される単量体>
【化15】
(式中、R
15は水素原子または炭素数1~8のアルキル基を表し、R
16は水素原子またはメチル基を表し、R
17は水素原子または水酸基を表し、R
18は水素原子または炭素数1~6のアルコキシ基を表し、R
19は炭素数1~12の直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキレン基を表す。)
【0082】
上記式(7)で表される紫外線吸収性単量体としては、特に限定されるものではないが、例えば、2-ヒドロキシ-4-[2-(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-[2-(メタ)アクリロイルオキシ]ブトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-[2-(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-[2-(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシ-4’-(2-ヒドロキシトキシ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-4-[2-(メタ)ア クリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-4-[2-(メタ)アクリロイルオキシ]ブトキシベンゾフェノンなどを挙げることができる。これらの単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0083】
<式(8)で表される単量体>
【化16】
(式中、R
20は水素原子またはシアノ基を表し、R
21、R
22はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を表し、R
23は水素原子またはアルキル基を表し、Zは酸素原子またはイミノ基を表す。)
【0084】
上記式(8)で表される単量体の具体例としては、特に限定されるものではないが、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン(例えば、ADEKA社製「アデカスタブ(登録商標)LA87」)、4-(メタ)アクリロイルアミ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン(例えば、ADEKA社製「アデカスタブLA-82」)、4-(メタ)アクリロイルアミノ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンなどを挙げることができ、これらの紫外線安定性単量体は、1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも銅箔との密着性、電気特性(誘電率、誘電正接)、折り曲げ性を向上させる観点から、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンや4-(メタ)アクリロイルオキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジンが特に好ましい。
【0085】
上記マレイミド基含有単量体としては、例えば、マレイミド、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-プロピルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-sec-ブチルマレイミド、N-tert-ブチルマレイミド、N-アミルマレイミド、N-ヘキシルマレイミド、N-ヘプチルマレイミド、N-オクチルマレイミド、N-ノニルマレイミド、N-デシルマレイミド、N-デシルマレイミド、N-ウンデシルマレイミド、N-ドデシルマレイミド(N-ラウリルマレイミド)、N-トリデシルマレイミド、N-テトラデシルマレイミド、N-ペンタデシルマレイミド、N-ヘキサデシルマレイミド、N-ヘプタデシルマレイミド、N-オクタデシルマレイミド(N-ステアリルマレイミド)、N-ノナデシルマレイミド、N-アリルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-ヒドロキシフェニルマレイミド、N-メチルフェニルマレイミド、N-ジメチルフェニルマレイミド、N-エチルフェニルマレイミド、N-ジエチルフェニルマレイミド、N-フェニルメチルマレイミド、N-メトキシフェニルマレイミド、N-クロロフェニルマレイミド、N-ジクロロフェニルマレイミド、N-トリクロロフェニルマレイミド、N-トリブロモフェニルマレイミドなどが挙げられる。
【0086】
上記不飽和ニトリル単量体、アミド基含有単量体等のその他の窒素含有単量体としては、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-ビニルピリジン、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルピロール、N-ビニルピロリドン、N-ビニルオキサゾリドン、N-ビニルサクシンイミド、N-ビニルメチルカルバメート、N,N-メチルビニルアセトアミド、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン等が挙げられる。
【0087】
上記第一工程において、単量体成分を重合させる際には、重合開始剤を用いることが好ましい。重合開始剤の量を適宜調整することにより、得られる共重合体の分子量を容易に調整することができる。一般に、重合開始剤の量を少なくすると重合反応時間が長くなる傾向にあるが、得られる共重合体の分子量を高くすることができ、重合開始剤の量を多くすると重合反応時間が短くなる傾向にあるが、得られる共重合体の分子量が低くなる。
重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)などのアゾ化合物;過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩;過酸化水素、ベンゾイルパ-オキサイド、パラクロロベンゾイルパ-オキサイド、ラウロイルパ-オキサイド、過酸化アンモニウムなどの過酸化物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0088】
上記第一工程における重合開始剤の使用量は、重合速度を高め、未反応の単量体成分の残存量を低減させるとともに、得られる共重合体の分子量を制御し、かつ、得られる共重合体の分子量を高める観点から、好ましくは単量体成分100質量%あたり、0.1~10質量%であり、より好ましくは0.3~4質量%以上である。
【0089】
上記重合開始剤を単量体成分に含有させる方法は、特に限定されない。その含有方法としては、例えば、一括仕込み、分割仕込み、連続滴下などが挙げられる。
【0090】
また上記第一工程においては、共重合体の分子量を調整するために、連鎖移動剤を用いてもよい。
連鎖移動剤としては、例えば、チオグリコ-ル酸2-エチルヘキシル、tert-ドデシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、2-メルカプトエタノ-ル、α-メチルスチレン、α-メチルスチレンダイマ-などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの連鎖移動剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0091】
上記第一工程において、単量体成分を重合させる方法としては、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などが挙げられるが、上記第一工程における重合方法は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合法のなかでは、共重合体を容易に調製することができることから、溶液重合法が好ましい。
【0092】
上記第一工程において、単量体成分を溶液重合法によって重合させる場合に使用される溶媒としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;n-ブチルアルコールなどのアルコール系溶媒;プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルなどのエーテル系溶媒;酢酸ブチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのエステル系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒などの有機溶媒が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
これらの溶媒のなかでは、共重合体を含む樹脂組成物を硬化させた場合、硬化塗膜に含まれる残留溶媒量が少なくできる点から溶解度パラメータが8.4~10.0の溶媒の使用が好ましく、例えば、トルエン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンが好ましい。
【0093】
溶媒の量は、単量体成分および重合開始剤を十分に溶解させるとともに、単量体成分を効率よく反応させることができる量であればよく、特に限定されないが、通常、全単量体成分100質量%あたり、50~500質量%程度である。
【0094】
上記第一工程において、単量体成分を重合させる際の雰囲気は、特に限定されないが、重合開始剤の効率を高める観点から、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
【0095】
上記第一工程において、単量体成分を重合させる際の重合反応温度は、特に限定がないが、通常、好ましくは50~200℃、より好ましくは60~150℃である。重合温度は、一定であってもよく、重合反応の途中で変化させてもよい。
上記重合工程において、単量体成分の重合させる重合反応時間は、特に限定がなく、重合反応の進行状況に応じて適宜設定すればよいが、通常、2~20時間程度である。
【0096】
<第二工程>
第二工程は、第一工程で得られた重合体(前駆体重合体)の上記式(3)で表される水酸基含有構造単位に対して、末端に-CH=CH2又は-C(CH3)=CH2を有するイソシアネート化合物を反応させる工程である。
第二工程において、第一工程で得られた重合体の上記式(3)で表される水酸基含有構造単位に対して、末端に-CH=CH2又は-C(CH3)=CH2を有するイソシアネート化合物を反応させる際の、イソシアネート化合物の使用量は特に限定されないが、重合体中の水酸基に対して当量近く又は当量以上のイソシアネート化合物を用いることが好ましい。重合体中の水酸基に対して当量以下のモル数のイソシアネート化合物を用いた場合、重合体中に残存する未反応の水酸基の影響で、樹脂組成物の硬化物の電気特性や銅箔への密着性が低下するおそれがある。
第一工程で得られた重合体に対するイソシアネート化合物の使用量は、第一工程で得られた重合体の水酸基に対して0.8~1.5当量が好ましく、1.0~1.2当量がより好ましい。
【0097】
第二工程において用いる末端に-CH=CH2又は-C(CH3)=CH2を有するイソシアネート化合物としては、例えば、2-イソシアナトエチルメタクリレート(昭和電工株式会社製「カレンズMOI)」)、2-イソシアナトエチルアクリレート(昭和電工株式会社製「カレンズAOI」)、2-(2-メタクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアネート(昭和電工株式会社製「カレンズMOI-EG)」)などのラジカル反応性基を有するイソシアネート化合物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0098】
第一工程で得られた重合体とイソシアネート化合物との反応は、第一工程で得られた重合体の合成で使用する溶剤の存在下で行われることでよいが、溶剤の使用量は、第二工程を経て得られるスチレン由来の骨格を有する共重合体を含む樹脂組成物中における溶剤の含有量が、樹脂組成物中の全成分を100質量%とした場合に、20~80質量%となる量であることが好ましい。より好ましくは40~60質量%である。
【0099】
上記第二工程の反応の際に、分子中の二重結合間の重合反応を防ぐために、重合禁止剤を反応前に少量加えておくことが好ましい。重合禁止剤の具体例としては、パラメトキシフェノール 、メチルハイドロキノン等が挙げられる。
重合禁止剤の使用量は、第一工程で使用される単量体成分100質量%に対し、0.001~0.5質量%であることが好ましい。
【0100】
本発明のスチレン由来の骨格を有する共重合体を含む樹脂組成物は、ラジカル重合開始剤を含む。
ラジカル重合開始剤は、例えば、加熱時にフリーラジカルを発生させる熱重合開始剤であり得る。ラジカル重合開始剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0101】
上記ラジカル重合開始剤としては、例えば、過酸化物系ラジカル重合開始剤、アゾ系ラジカル重合開始剤等が挙げられる。中でも、過酸化物系ラジカル重合開始剤が好ましい。
過酸化物系ラジカル重合開始剤としては、例えば、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド化合物;tert-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ジ-tert-ヘキシルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、1,4-ビス(1-tert-ブチルパーオキシ-1-メチルエチル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン等のジアルキルパーオキサイド化合物;ジラウロイルパーオキサイド、ジデカノイルパーオキサイド、ジシクロヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4-tert-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等のジアシルパーオキサイド化合物;tert-ブチルパーオキシアセテート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシネオデカノエート、tert-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert-ブチルパーオキシラウレート、(1,1-ジメチルプロピル)2-エチルパーヘキサノエート、tert-ブチル2-エチルパーヘキサノエート、tert-ブチル3,5,5-トリメチルパーヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、tert-ブチルパーオキシマレイン酸等のパーオキシエステル化合物;等が挙げられる。
【0102】
アゾ系ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2 ,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、1-[(1 -シアノ-1-メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチル-バレロニトリル等のアゾニトリル化合物;2,2’-アゾビス[2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-[2-(1-ヒドロキシブチル)]-プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミド)ジハイドレート、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)等のアゾアミド化合物;2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2,2’-アゾビ ス(2-メチルプロパン)等のアルキルアゾ化合物;等が挙げられる。ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、日油社製の「パーブチルC」、「パーブチルA」、「パーブチルP」、「パーブチルL」、「パーブチルO」、「パーブチルND」、「パーブチルZ」、「パーブチルI」、「パークミルP」、「パークミルD」、「パーヘキシルD」、「パーヘキシルA」、「パーヘキシルI」、「パーヘキシルZ」、「パーヘキシルND」、「パーヘキシルO」、「パーヘキシルPV」、「パーヘキシルO」等が挙げられる。
【0103】
樹脂組成物中のラジカル重合開始剤の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.1~5質量%であり、より好ましくは0.3~3質量%である。
【0104】
4.積層体、プリント配線板
本発明の共重合体1を含む樹脂組成物や共重合体2を含む電子材料用樹脂組成物(以下、これらをまとめて本発明の樹脂組成物とも記載する)は、さまざまな基材上に塗布あるいは含浸して使用することができる。例えばPETフィルム上に塗布することにより多層プリント基板の層間絶縁層として、ポリイミドフィルム上に塗布することによりカバーレイとして、また銅箔上に塗布乾燥することにより樹脂付き銅箔として使用することができる。またガラスクロスやガラスペーパー、カーボンファイバー、各種不織布などに含浸させることにより、プリント配線板やCFRPのプリプレグとして使用することができる。更には溶剤を含む本発明の樹脂組成物をPET等のフィルムに塗布し、加熱によって溶剤を除去した後にPET等のフィルムを剥離することによりフィルム状接着剤とすることも出来る。
中でも、本発明の樹脂組成物は、低誘電率、低誘電正接であり、かつ、銅箔への密着性や折り曲げ性にも優れることから、プリント配線板に使用される銅張積層体の材料として好適に使用される。このような本発明の樹脂組成物を用いて得られる積層体、及び、該積層体を用いてなるプリント配線板もまた、本発明の1つである。
【0105】
本発明の樹脂組成物を含む層間絶縁層やカバーレイ、樹脂付き銅箔、プリプレグなどはホットプレス機などで加温加圧成形することにより、硬化物とすることができる。硬化時間は好ましくは30分間~3時間程度、硬化温度は好ましくは120~250℃程度である。
【実施例0106】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0107】
実施例における各種物性の測定方法は以下のとおりである。
<不揮発分量>
合成例にて合成した共重合体溶液1gを秤量し、熱風乾燥機で200℃の温度で15分間乾燥させ、得られた残渣を不揮発分とし、
式:
〔共重合体溶液の不揮発分量(質量%)〕
=(〔残渣の質量〕÷〔共重合体溶液1g〕)×100
に基づいて求めた。
【0108】
<重量平均分子量の測定>
共重合体の重量平均分子量は、以下の測定条件で測定した。
装置:東ソー(株)製、品番:HLC-8320GPC
検出器:RI
カラム:TSKgel SuperMultiporeHZ-M{東ソー(株)製}2本を直列に使用
カラム温度:40℃
流速:0.18ml/分
検量線:標準ポリスチレン
溶離液:テトラヒドロフラン
【0109】
〔側鎖にウレタン結合と炭素-炭素二重結合を有する共重合体(A)の合成〕
合成例1
撹拌機、還流冷却器、滴下装置および温度計を備えた200mL容の反応器内にトルエン30質量部、スチレン96.5質量部と2-ヒドロキシエチルメタクリレート3.5質量部を含有するプレミックス単量体混合物の20%と重合開始剤として2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.4質量部とトルエン10質量部を含有する重合開始剤溶液の20%を仕込み、窒素気流中で反応器の内容物の温度を還流温度(約118℃)に調整した。
次に、前記のプレミックス単量体混合物の残りの80%は反応器内に90分かけて滴下、また前記の重合開始剤溶液の残りの80%は反応器内に3時間かけて滴下させた。重合開始剤溶液の滴下が終了した時点から1時間後、2時間後、3時間後に追加開始剤としてtert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート0.1質量部を加え、5時間後に冷却して重合反応を終了させ、トルエン27質量部を加えた。生成した水酸基含有共重合体(前駆体共重合体)の重量平均分子量は60000であり、水酸基含有共重合体(前駆体共重合体)溶液の不揮発分は59.7質量%であり、残存モノマー量は0.3%であった。
次に2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(商品名:カレンズMOI、昭和電工社製)を5質量部(前記カレンズMOIのNCO基/水酸基含有共重合体のOH基=1.2モル比)とメトキノン0.003質量部を上記重合反応を行った反応容器に仕込み、95℃に昇温し5時間ウレタン反応を行い冷却し、不揮発分が60%となるようにトルエンを加えた。生成した側鎖にウレタン結合と炭素-炭素不飽和基を有する共重合体(A1)の重量平均分子量は64000であった。
【0110】
合成例2~9
表1に示すモノマー組成で、スチレンと2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートの仕込み量以外は合成例1と同じように溶液重合を行ない、その後2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートで付加反応を行い、冷却し、不揮発分が60%となるようにトルエンを加えた。これにより、側鎖にウレタン結合と炭素-炭素不飽和基を有する共重合体(A2)~(A9)を得た。
【0111】
合成例10
撹拌機、還流冷却器、滴下装置および温度計を備えた200mL容の反応器内にトルエン30質量部、スチレン96.5質量部と2-ヒドロキシエチルメタクリレート3.5質量部を含有するプレミックス単量体混合物の20%と重合開始剤として2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.4質量部とトルエン10質量部を含有する重合開始剤溶液の20%を仕込み、窒素気流中で反応器の内容物の温度を還流温度(約118℃)に調整した。
次に、前記のプレミックス単量体混合物の残りの80%は反応器内に90分かけて滴下、また前記の重合開始剤溶液の残りの80%は反応器内に3時間かけて滴下させた。重合開始剤溶液の滴下が終了した時点から1時間後に冷却して重合反応を終了させ、トルエン27gを加えた。生成した水酸基含有共重合体(前駆体共重合体)の重量平均分子量は59000であり、水酸基含有共重合体(前駆体共重合体)溶液の不揮発分は54.2質量%であり、残存モノマー量は5.8%であった。
次に2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(商品名:カレンズMOI、昭和電工社製)を5質量部(前記カレンズMOIのNCO基/水酸基含有共重合体のOH基=1.2モル比)とメトキノン0.003質量部を仕込み、95℃に昇温し5時間反応を行ってから冷却し、不揮発分が60%となるようにトルエンを加えた。生成した側鎖にウレタン結合と炭素-炭素不飽和基を有する共重合体(A10)の重量平均分子量は62000であった。
【0112】
【表1】
*1)商品名(大塚化学社製)2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクロイルオキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール
*2)商品名(ADEKA社製)2,2,6,6-テトラメチル-4-ピヘリジルメタクリレート
*3)2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)
*4)tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート
*5)商品名(昭和電工社製)2-メタクロイルオキシエチルイソシアネート
【0113】
実施例1~6、比較例1~4
合成例1で得られた側鎖にウレタン結合と炭素-炭素不飽和基を有する共重合体(A1)溶液100質量部、トリアリルイソシアヌレート20質量部、ジクミルパーオキサイド2質量部を加えて均一に混合することにより樹脂組成物を調製した。
次に、この樹脂組成物を硬化させ、銅箔との接着性、誘電率、誘電正接、折り曲げ性を以下の方法に基づいて調べた。
合成例2以降で得られた共重合体(A2)以降についても同様に樹脂組成物を調製し、各種特性を調べた。その結果を表2に示す。
【0114】
<銅箔との接着性(密着性)>
前記で得られた樹脂組成物をアプリケーターを用いて、厚さ12μmの高周波用低粗度銅箔(CF-T4X-SV:福田金属箔粉株式会社製)のマット面上に厚さ50μmで塗布し、90℃で10分間加熱して溶剤を乾燥させて接着剤を有する銅箔をそれぞれ得た。前記で得られたそれぞれの銅箔の接着剤面上に、前記と同じ銅箔のマット面を重ねあわせて真空プレス中で3MPaの圧力で180℃1時間加熱硬化させた後、当該積層体を縦50mm、横25mmの長方形に切断し、得られた試験片を25℃の雰囲気中にて片方の銅箔側から引張速度50mm/minにて90°剥離を行ない、銅箔間の引きはがし強さを調べ、以下の評価基準に基づいて接着性を評価した。
(評価基準)
100点:剥離強度が1.0N/mm以上
80点:剥離強度が0.5N/mm以上1.0N/mm未満
60点:剥離強度が0.2N/mm以上0.5N/mm未満
0点:剥離強度が0.2N/mm未満
【0115】
<硬化物の誘電率、誘電正接>
前記で得られた樹脂組成物をアプリケーターを用いて、ポリイミドフィルム上に厚さ100μmで塗布し、90℃で10分間加熱して溶剤を乾燥させてポリイミドフィルム上に接着剤を作製した後、更に真空オーブンを用いて180℃で1時間加熱することにより、樹脂組成物の硬化物を得た。得られた硬化物の厚さは50μmであった。10GHzにおける誘電率と誘電正接とをネットワークアナライザー8719ET(アジレントテクノロジー製)を用いて空洞共振法によって測定し、以下の評価基準に基づいて硬化物の誘電率、誘電正接を評価した。
(誘電率の評価基準)
100点:誘電率が2.40未満
80点:誘電率が2.40以上2.45未満
60点:誘電率が2.45以上2.50未満
0点:誘電率が2.50以上
(誘電正接の評価基準)
100点:誘電正接が0.001未満
80点:誘電正接が0.001以上0.0025未満
60点:誘電正接が0.0025以上0.004未満
0点:誘電正接が0.004以上
【0116】
<折り曲げ性>
前記で得られた樹脂組成物をアプリケーターを用いて、ポリイミドフィルム上に厚さ100μmで塗布し、90℃で10分間加熱して溶剤を乾燥させてポリイミドフィルム上に作製した後、更に真空オーブンを用いて180℃で1時間加熱することにより、樹脂組成物の硬化物をそれぞれ得た。得られた硬化物の厚さは50μmであった。得られたフィルムを長さ60mm、幅25mmの長方形に切断することにより、試験片を作製した。
前記で得られた試験片を用い、JIS K5600-5-1に規定の円筒形マンドレル法に準じ、試験片の長さ方向に当該試験片の硬化物層がマンドレル(心棒)とは反対面に位置するようにし、直径が4mm、5mm、6mm、8mm、10mmまたは12mmであるマンドレルを用いて試験片をマンドレルに沿って折り曲げ、硬化物層が亀裂または剥がれが生じるときのマンドレルの直径を調べ、以下の評価基準に基づいて折り曲げ性を評価した。
なお、マンドレルの直径が小さいほど、塗膜に亀裂および剥がれが生じがたく、折り曲げ性に優れている。
(評価基準)
100点:硬化物層が亀裂または剥がれが生じるときのマンドレルの直径が5mm以下である。
80点:硬化物層が亀裂または剥がれが生じるときのマンドレルの直径が6mmまたは8mmである。
60点:硬化物層が亀裂または剥がれが生じるときのマンドレルの直径が10mmである。
0点:硬化物層が亀裂または剥がれが生じるときのマンドレルの直径が12mmである。
【0117】
<総合評価>
各試験項目において、評価得点を合計することにより、総合得点を求めた。なお、評価項目に0点が1つでも存在する樹脂組成物は不合格であるため、表2の総合評価の欄に×を付した。
表1、表2に示された結果から、各実施例で得られた樹脂組成物の硬化物は、誘電率、誘電正接が低く、かつ、銅箔への密着性や折り曲げ性に総合的に優れていることが確認された。
【0118】